説明

インクジェット記録装置

【課題】 色材を含まないクリアインクの吐出不良を検出するテストパターンを、クリアインクと色材を含むインクとを用いて記録する。テストパターン画像に不良が発生した場合、色材を含むインクの吐出不良であってもクリアインクの吐出不良だとユーザに認識されてしまうため、クリアインクを吐出する吐出口列がクリーニングされ、無駄なインクが消費されてしまう。
【解決手段】 テストパターンに用いる色材を含むインクを吐出する吐出口列は、クリアインクを吐出する吐出口列をキャップするキャップと共通してキャップされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材を含まないインクと色材を含むインクを用いるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録素子(ノズル)を多数集積配列して構成されるノズル列を備えた記録ヘッド用いて画像を形成するインクジェット画像形成装置において、近年色材を含むインクに加えて色材を含まないインク、いわゆるクリアインクを用いるものが知られている。クリアインクには、記録物の光沢性を向上するための機能、記録物の堅牢性を向上させるための機能、記録物の発色を向上させるための機能など、記録装置の特徴にあわせてさまざまな機能を持つものが知られている。
【0003】
記録ヘッドのノズルからインクを吐出するインクジェット記録形成装置においては、正常にノズルからインクが吐出されずに吐出不良を起こした場合、記録画像にスジが入るなどの画質劣化が生じてしまう。そのため、それぞれのインクの吐出状態を確認する手段を備えるものが知られている。インクの吐出状態の確認手段として、例えばインクの吐出状態を直接光学的に検出する方式などが知られているが、この方式は、検出素子を本体に搭載することで製造コストが上昇してしまう。現在では、吐出不良を検出するためのテストパターンを記録媒体に記録し、吐出状態を目視で検出する方式が広く用いられている。
【0004】
一方、このテストパターンを用いて吐出不良を検出する方法において、色材を含まないクリアインク用のパターンは、色材を含む有色インク用のパターンと同じものを用いることはできない。すなわち、クリアインクの吐出不良を検出するためのテストパターンは、有色インクのテストパターンと同様のパターンでは目視による吐出状態の確認が困難であるため、特殊なパターンを用いる必要がある。
【0005】
特許文献1では、有色インク用パターンは、それぞれの色のインクを使用してパターンを記録し、クリアインク用パターンは、クリアインクで記録したパターン領域に、他の有色インクを用いたパターンを重ねて記録する。クリアインクの使用量を有色インクのにじみを引き起こす程度に多く記録媒体に付与し、その後に同じ領域に有色インクを用いたパターンを形成することにより、クリアインクの吐出状態が良い場合には有色インクがにじみを起こし、クリアインクが吐出されない場合に比べて濃く見えるようになる。このような構成でクリアインク用パターンを形成することにより、吐出不良を検出するための素子を搭載せずとも、クリアインクの吐出状態を目視で確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−22216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようにクリアインクの吐出不良を検出するクリアインク用パターンに他の有色インクを用いた場合、クリアインクの吐出不良以外の要因によってクリアインク用パターンに画像に異変が生じることがある。すなわち、有色インクの吐出不良によってクリアインク用テストパターンに画像不良が生じる場合である。一般に、ユーザーは、クリアインク用パターンに画像不良が生じた場合、クリアインクのノズルに吐出不良があると認識すると考えられる。つまり、クリアインクノズルではなく有色インクノズルの吐出不良が原因の画像不良であっても、クリアインク用パターンにおける画像不良であるため、クリアインクノズルの吐出不良だと認識してしまいやすい。このような場合、ユーザは、クリアインクノズルに対して、吐出状態を正常に戻すためのノズル面のクリーニングや、ノズルに異常をもたらしている原因物質を徐供するために吐出口からインクを強制的に排出する動作を実行すると想定され、無駄にインクを消費してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、色材を有する有色インクと、色材を含まないクリアインクとを用いて記録を行うインクジェット記録装置において、クリアインクの吐出状態を確認するパターンに異常があった場合でも、無駄なインク消費を抑制しながら吐出不良を回復させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような課題を解決するための本発明のインクジェット記録装置は、色材を含まない第1のインクを吐出可能な第1吐出口列と、色材を含む第2のインクを吐出可能な第2吐出口列とを含む複数の吐出口列が配列された記録ヘッドが、記録媒体に対する相対走査中に前記記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記複数の吐出口列のうち少なくとも1列の吐出口列をそれぞれキャップする複数のキャップ手段と、前記複数のキャップ手段からそれぞれ独立してインクを吸引可能な吸引手段と、前記第1のインクと前記第2のインクとを用いて第1のインク用テストパターンを記録するテストパターン記録手段とを有し、前記複数のキャップ手段のうちの1つは、前記第1吐出口列と前記第2吐出口列とを共通にキャップすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、色材を有する有色インクと、色材を含まないクリアインクを用いて記録可能なインクジェット記録装置において、クリアインクの吐出状態を確認するパターンに異常があった場合でも無駄なインク消費を抑制して、ノズルの状態を適切に回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】吐出状態確認パターンの概要図である。
【図2】画像形成装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】電気的回路の構成を示す概略図である。
【図4】メイン基板の電気的構成を示す概略図である。
【図5】ノズル列構成を示す概略図である。
【図6】ノズル列とキャップの関係を示す概略図である。
【図7】吐出状態確認パターンの記録方法を示す概略図である。
【図8】吐出状態確認パターンの記録方法を示す概略図である。
【図9】吐出状態確認パターンのドット配置を示す図である。
【図10】吐出状態確認パターンのドット配置を示す図である。
【図11】吐出状態確認パターンのドット配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は、色材を含む有色インクと色材を含まないクリアインクを用いて記録を行うインクジェット記録装置において実施可能である。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1に係る画像形成装置の全体構成について、図2を用いて説明する。図2は一般的なインクジェット画像形成装置の全体構成を示したものである。駆動源となるモータ2の回転をベルト4を介して伝達することにより、シャーシ9上においてキャリッジ1が往復運動可能な構成となっている。キャリッジ1の位置はリニアエンコーダ3の変位量を不図示のエンコーダ受光部で検出しながらモータ2を制御することにより制御する。記録媒体10の搬送方向については、搬送ローラ5がモータ6の回転を駆動源としてベルト8を介して回転することにより、キャリッジ1の直線運動に対して直行する方向に記録媒体10を搬送する。記録媒体10の搬送量は、搬送ローラ5に取り付けられたロータリエンコーダ7の変位角度をエンコーダ受光部11で検出しながらモータ6を制御することにより、搬送ローラ5の回転量をコントロールして記録媒体10の搬送量を制御する。本実施例において、キャリッジ1には図5に示すような記録ヘッドが搭載されている。記録ヘッドはP0101〜P0112の12本の吐出口列で構成されており、それぞれの吐出口列からそれぞれの色のインクを吐出することにより画像を形成する。本実施例において吐出口列P0101〜P0112はそれぞれグレー、フォトブラック、ライトグレー、ダークグレー、ライトシアン、マゼンタ、イエロー、ライトマゼンタ、マットブラック、シアン、レッド、クリアの各色のインクが吐出可能となっている。また、吐出口列はP0101〜P0104の4つが第1グループP0110、P0111〜P0104の4つが第2グループ、P0109〜P0112が第3グループを構成している。それぞれの吐出口列のグループは図6(b)に示すようにそれぞれ個別のキャップ部材P0120、P0121、P0122によってキャップ可能となっており、画像形成を行わない間はキャップ部材P0120〜P0122で吐出口グループP0110〜P0112をキャップすることで吐出口からのインクの蒸発や吐出口への異物の混入を防いでいる。また、吐出口に異常がある場合や所定のタイミングで自動的に吐出口グループP0110〜P0112にキャップ部材P0120〜P0122をキャップした状態でキャップ部材に接続されたチューブP0130、P0131、P0132の先に接続された図示しないインク排出機構によりインクを強制的に排出可能となっている。インク排出機構はキャップ部材P0120、P0121、P0122のそれぞれに対して独立にインク排出を実施可能となっている。画像形成を実施するばあいには、キャップ部材P0120〜P0122を上下動させる機構を駆動させることにより吐出口グループP0110〜P0112を離間させる。
【0015】
次に実施例1に係る電気的回路の構成について図3を用いて説明する。図3は、本実施例における画像形成装置の電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。本実施例における記録装置では、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106等によって構成されている。電源ユニットE0015はメイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給している。キャリッジ基板E0013は、キャリッジM4000に搭載されたプリント基板ユニットであり、ヘッドコネクタE0101を通じて記録ヘッドH1001との信号の授受やヘッド駆動電源の供給をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を介して行う。また、キャリッジM4000の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出して、更にその出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を介してメイン基板E0014へと出力する。
【0016】
メイン基板E0014は、本実施例におけるインクジェット画像形成装置の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットであり、その基板上にホストインタフェースE0017を有しており、不図示のホストコンピュータからの受信データをもとに記録動作の制御を行う。また、キャリッジM4000を主走査させるための駆動源となるキャリッジモータE0001、記録媒体を搬送するための駆動源となるLFモータE0002など、各種モータと接続されて各機能の駆動を制御している。更にLFエンコーダセンサのようなプリンタ各部の動作状況を検出する様々なセンサに対して、制御信号および検出信号の送受信を行うためのセンサ信号E0104に接続される。また、メイン基板E0014は、CRFFC E0012および電源ユニットE0015にそれぞれ接続されるとともに、さらにパネル信号E0107を介してフロントパネルE0106と情報の授受を行うためのインターフェースを有している。
【0017】
次に実施例1に係るメイン基板E0014の内部構成について図4を用いて説明する。図4は、本実施例における画像形成装置のメイン基板E1004の内部構成を示すブロック図である。
【0018】
図において、E1102はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であり、制御バスE1014を通じてROM E1004に接続され、ROM E1004に格納されたプログラムに従って各種制御を行っている。例えば、各種センサに関連するセンサ信号E0104の送受信を行うほか、エンコーダ信号E1020の状態等を検出している。また、ホストインターフェースE0017の接続およびデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、画像形成装置の制御を司っている。
【0019】
E1010は電源制御回路であり、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。
【0020】
ホストインターフェースE0017は、ASIC E1102からのホストインターフェース信号E1028を、外部に接続されるホストインターフェースケーブルE1029に伝達し、またこのケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
【0021】
一方、電源ユニットE0015からは電力が供給される。供給された電力は、メイン基板E0014内外の各部へ必要に応じて電圧変換された上で供給される。また、ASIC E1102からの電源ユニット制御信号E4000が電源ユニットE0015に接続され、画像形成装置の低消費電力モード等を制御する。
【0022】
ASIC E1102は1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路であり、前述したモータ制御信号E1106、電源制御信号E1024および電源ユニット制御信号E4000等を出力する。そして、ホストインターフェースE0017との信号の授受を行い、センサ信号E0104を通じて各種センサ類を制御するとともに状態を検知する。
【0023】
さらにASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッドH1001の記録動作を制御する。ここに示すエンコーダ信号(ENC)E1020はCRFFC E0012を通じて入力されるエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012を通じてキャリッジ基板E0013に接続され、ヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッドH1001に供給されるとともに、記録ヘッドH1001からの各種情報をASIC E1102に伝達する。
【0024】
図中、E3007はDRAMであり、記録用のデータバッファ、ホストコンピュータからの受信データバッファ等として、また各種制御動作に必要なワーク領域としても使用されている。また、E1005はEEPROMであり、記録履歴等各種情報を記憶し必要に応じて呼び出すのに使用される。ヘッド制御信号E1021を監視することで、記録ヘッドへのドット吐出信号をノズルごとにカウントしその累積を算出した数値を記録履歴としてEEPROM E1005に記憶し、必要に応じてその値を呼び出して制御を切り替えることが可能である。
【0025】
次に実施例1に関わる吐出状態の確認パターンについて図1を用いて説明する。
【0026】
図1は本実施例における吐出口例P0101〜P0112の吐出状態を目視で確認するためのパターンである。本実施例においてはユーザが任意にこの目視パターンを出力可能となっており、記録物に異常を感じた場合の確認のために出力したり、画像記録前に吐出口の状態確認のために出力することが想定される。吐出口列グループ1の各色はそれぞれのインクの吐出口から吐出されるドットのみでパターンP0001〜P0004が形成され、吐出口列グループ2の各色もそれぞれのインクの吐出口から吐出されるドットのみでパターンP0005〜P0008が形成される。吐出口列グループ3については同様にそれぞれ対応するインクの吐出口から吐出されるドットのみでパターンP0009〜P0011が形成されるが、クリアインクを吐出する吐出口列P0112に対応する確認パターンP0012は、クリアインクだけではなく、マットブラックインクも用いて形成される。
【0027】
図7を用いてクリアインク吐出口列P0112の確認パターンP0012の形成方法について説明する。記録媒体に対して記録ヘッドを4回記録走査(スキャン)することで確認パターンP0012は形成される。P0140は1回目のスキャンで記録するデータの概要を示している。記録データの縦の長さは吐出口列の長さと同じであり、本実施例においては1200dpiで1024ノズル分の幅を持っている。横の幅は1200dpi単位で600画素分であり、600画素分の空白をあけて2つパターンを並べている。P0140のパターンは図9(c)に詳細を示すように、1200dpi単位の格子の全てにドットを配置するように構成されている。1回目のスキャンの記録データP0140を記録媒体上に形成した時点では記録媒体上にはクリアインクのドットしか存在しないためP0144に示すように見た目には色がついて見えない状態である。2回目のスキャンではP0140と同じ記録データP0141を再度記録媒体上の同じ領域に記録する。更に3回目のスキャンでもP0140と同じ記録データP0142を再々度記録媒体上の同じ領域に記録する。2回目、3回目のスキャンが終わった時点でも記録媒体上にはクリアインクのドットしか存在しないために見た目には色がついて見えない状態である。4スキャン目には記録データP0143を3回目までと同じ記録媒体上の領域に形成する。本実施例において記録データP0143はマットブラックを用いて形成し、P0143のパターンは図9(a)に示すように、1200dpi単位の格子に縦に2つドットが重なったかたまりが点在するパターンとなっている。図9(a)には1200dpiで縦16画素、横48画素分のみ表しているが、このサイズを最小単位として縦1024画素、横2400画素に繰り返してパターンを形成する。4回目のスキャンが終わった時点ではP0147に示すように、1スキャン目〜3スキャン目までクリアインクで記録を行った領域は相対的に濃く、クリアインクで記録を行わなかった領域は相対的に薄く見える。これは1スキャン目〜3スキャン目までクリアインクで記録を行った領域は記録媒体のインク吸収限界量を超えてクリアインクを付与され、4スキャン目でマットブラックインクを付与されると記録媒体が吸収しきれなくなり記録媒体上でにじむためである。記録媒体上で図9(a)のような点在するドットを有色インクで形成した場合、にじみの生じない領域のドットに比べて、にじみの生じる領域のドットは記録媒体の表面上で広がり、その結果相対的に濃く見えるのである。なお本実施例においては、図1に示す確認パターンのマットブラックの確認パターンP0009は、図7に示すクリアインクの確認パターンの4スキャン目のデータを流用している。すなわちマットブラックの確認パターンP0009は記録データP0143を1回のスキャンで記録して完成となる。このようにして形成された確認パターンに異常がある場合の見え方について図7(a)と図7(b)を用いて説明する。図7(a)はクリアインクの確認パターンP0012において矢印で示す位置に相当するクリアインクの吐出口が吐出不良を起こしている場合の見え方を示している。クリアインクが吐出不良を起こしているため、本来相対的に濃く見えるはずの領域が一部薄く見えるためにユーザはパターンに異常があると認識できる。一方、図7(b)はクリアインクの確認パターンP0012において矢印で示す位置に相当するマットブラックの吐出口が吐出不良を起こしている場合の見え方を示している。マットブラックインクが吐出不良を起こしているため、本来相対的に濃く見えるはずの領域の一部と本来相対的に薄く見えるはずの領域の一部が白く見える。このマットブラックインク吐出不良の場合のドット配置を詳細に表した図9(b)について説明する。図9(b)は図9(a)のパターンを形成する際に矢印の位置に吐出不良の吐出口(不吐ノズル)が存在する場合のドットの配置を表したものである。不吐ノズルが存在する位置のドットはどれも吐出されなくなってしまうため、白丸で示したドットは本来形成されるはずであるが吐出不良のために形成されなくなってしまう。したがって、本来2ドットが隣接してひとつのかたまりを形成していたパターンの一部が本来の半分のドットで形成されていることになる。したがって本来よりも薄くなったドットのかたまりが横に連なって視認されるために図7(b)のように見えるのである。
【0028】
この場合クリアインクの確認パターンであるので、クリアインクに吐出不良がなく、マットブラックに吐出不良がある状態でクリアインクの確認パターンに異常が見受けられるのは本来好ましくない。というのもユーザはクリアインクの確認パターンP0012に異常があればクリアインクの吐出口列のクリーニングやインクの強制排出を行うことでその異常を解消させようとするからである。しかし、本発明ではクリアインクの確認パターンP0012に異常をもたらす要因になりうるマットブラックの吐出口列P0109はクリアインクの吐出口列P0112と同じ吐出口列のグループ3P0112に属している。吐出口列のクリーニングやインクの強制排出はキャップ毎に一括して実施されるため、同一キャップがキャップする同一の吐出口列のグループにマットブラックとクリアインクの吐出口が属していれば、クリアインクの確認パターンP0012の異常を引き起こす可能性のある色は吐出口列グループ3P0112のクリーニングやインクの強制排出を行うことでどちらも対処可能となるのである。言い換えれば、もしクリアインクの確認パターンP0012にマットブラックではなく別の吐出口グループの色を用いており、その色の吐出口列に吐出不良があった場合、クリアインクの確認パターンに異常が見つかってユーザがクリアインクの吐出口列グループであるグループ3P0112に対するクリーニングやインクの強制排出を何度繰り返したところでクリアインクの確認パターンP0112は異常が解消することは期待できない。したがってユーザは何度も無駄なクリーニングやインクの強制排出を繰り返すことにより、適切な対処ができないばかりか、無駄にインクを消費してしまうことになるのである。
【0029】
本実施例ではクリアインクの確認パターンに用いる有色インクとしてマットブラックを用いたが、これに限定されるものではない。クリアインクの吐出口列と同一のキャップでキャップされる吐出口列に該当するインクであれば問題ない。ただし、色材濃度の低いインクより高いインクを用いた方がクリアインクの確認パターンの視認性としては好ましく、イエローのように明度の高いインクは視認性として好ましくない。
【実施例2】
【0030】
実施例1では、クリアインクの確認パターンに有色インクであるマットブラックを用い、マットブラックの確認パターンと同一のパターンを同一の記録方法でクリアインクの確認パターンにも形成する場合について説明した。実施例2ではクリアインクの確認パターンにマットブラックの確認パターンと同一のパターンを形成するが記録方法が異なる場合について説明する。なお、記録装置の構成等は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0031】
図8を用いてクリアインク吐出口列P0112の確認パターンP0012の形成方法について説明する。記録媒体に対して記録ヘッドを6回走査(スキャン)することで確認パターンP0012は形成される。1回目のスキャンデータP0150〜3回目のスキャンデータP0152は実施例1における1回目のスキャンデータP0140〜3回目のスキャンデータP0142と同様であり、3回目のスキャンが終わった時点では記録媒体上にはクリアインクのドットしか存在しないために見た目には色がついて見えない状態である。4スキャン目には記録媒体をノズル列長の半分に相当する量だけ戻し、記録データP0153に示すようにノズル列長の下半分だけを用いて3回目までと同じ記録媒体上の領域に形成する。本実施例においても記録データP0153はマットブラックを用いて形成し、P0153のパターンは図11(a)に示すように、1200dpi単位の格子に縦2つドットが重なったかたまりが点在するパターンとなっているが、そのうちの白い画素のデータのみをP153では記録する。図11(a)には1200dpiで縦16画素、横48画素分のみを表しているが、このサイズを最小単位として縦512画素、横2400画素に繰り返してパターンを形成する。4回目のスキャンが終わった時点ではP0159に示すように、パターンの上半分だけが視認できる状態となっている。5スキャン目には記録媒体をノズル列長の半分に相当する量だけ進め、記録データP0154に示すように全ノズル列長を用いて3回目までと同じ記録媒体上の領域に形成する。記録データP0154もマットブラックを用いて形成し、P0154のパターンは図11(a)のうちの白い画素のデータをノズル列の下半分を用いて形成し、グレーの画素のデータをノズル列の上半分を用いて形成する。5回目のスキャンが終わった時点ではP0160に示すように、パターンの上半分が濃く、下半分が薄く視認できる状態となっている。6スキャン目には記録媒体をノズル列長の半分に相当する量だけ進め、記録データP0155に示すようにノズル列長の上半分だけを用いて3回目までと同じ記録媒体上の領域に形成する。記録データP0155もマットブラックを用いて形成し、P0155のパターンは図11(a)のうちのグレーの画素のデータをノズル列の上半分を用いて形成する。このように実施例2ではクリアインクの確認パターンP0012におけるマットブラックのパターンデータを分割して複数のスキャンで形成している。6回目のスキャンが終わるとP0161に示すように、パターンが完成し、実施例1と同様に1スキャン目〜3スキャン目までクリアインクで記録を行った領域は相対的に濃く、クリアインクで記録を行わなかった領域は相対的に薄く見える。なお、図1に示す確認パターンのマットブラックの確認パターンP0009は実施例1と同じで図7の記録データP0143を1回のスキャンで記録して完成となる。このようにして形成された確認パターンに異常がある場合の見え方について図8(a)と図8(b)を用いて説明する。図8(a)はクリアインクの確認パターンP0012において矢印で示す位置にクリアインクが吐出不良を起こしているため、本来相対的に濃く見えるはずの領域が一部薄く見えるためにユーザはパターンに異常があると認識できる。一方、図8(b)はクリアインクの確認パターンP0012においてマットブラックの吐出口が吐出不良を起こしている場合の見え方を示している。マットブラックインクが吐出不良を起こしているため、本来相対的に濃く見えるはずの領域の一部と本来相対的に薄く見えるはずの領域の一部が白く見える。図8(b)は実施例1の図7(b)と比較すると、マットブラックの吐出口の吐出不良の状態は同じでも視認性が異なる。図8(b)はマットブラックのデータを複数のスキャンに分割して記録(いわゆるマルチパス記録)しているため白く見える領域は増えているが、白く抜けにくいマルチパス記録を用いているため実施例1の図7(b)に比べてマットブラックの吐出不良を視認しにくくなっている。このマットブラックインク吐出不良の場合のドット配置を詳細に表した図11(b)について説明する。図11(b)は図11(a)のパターンを形成する際に矢印の位置に吐出不良の吐出口(不吐ノズル)が存在する場合のドットの配置を表したものである。実施例1の場合と異なりマルチパスで記録を行っていることから、1回目の記録で図11(b)の矢印の位置に不吐ノズルがあった場合は1回目の記録で形成される白い画素のドットだけが形成される。したがってパターンの最小繰り返し単位の中では矢印の位置の白い画素のドットに相当する白丸で表した1ドット分だけ1回目の記録で減ってしまうことになる。しかし、マルチパス記録のため2回目の記録走査では不吐ノズルは別の領域に移動することから、2回目の記録走査では矢印の位置のドットは別のノズルを用いて吐出することになる。したがって、再度同じ位置に吐出不良のノズルが割りあたらない限り2回目の記録走査で形成されるグレーの画素のドットは矢印の位置であっても記録されることになる。このようにマルチパスの効果によって、図11(b)に示すパターンの最小単位のうち記録されないドットは1ドットだけということになる。これによりクリアインクの確認パターンにおけるマットブラックの吐出不良検出感度を下げることができるため、よりクリアインクの吐出不良以外の要因でクリアインク吐出不良検出パターンに異常が発生する懸念を減らすことができる。
【0032】
本実施例ではクリアインクの確認パターンに用いる有色インクとしてマットブラックを用いたが、これに限定されるものではない。本実施例のようにクリアインクの吐出口列と同一のキャップでキャップされる吐出口列に該当するインクを用いることが好ましい。ただし、色材濃度の低いインクより高いインクを用いた方がクリアインクの確認パターンの視認性としては好ましく、イエローのように明度の高いインクは視認性として好ましくない。
【0033】
また本実施例ではクリアインクの確認パターンに用いる有色インクのパターンを所定の記録エリアに対して2回の記録走査で完成させる例を説明したが、これに限定されるものではない。より多くの記録走査で完成させる構成とすることで、クリアインクの吐出不良以外の要因でクリアインク吐出不良検出パターンにn異常が発生する懸念をより低減することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
実施例1では、クリアインクの確認パターンに有色インクであるマットブラックを用い、マットブラックの確認パターンと同一のパターンを同一の記録方法でクリアインクの確認パターンにも形成する場合について説明した。実施例3ではクリアインクの確認パターンにマットブラックの確認パターンとは異なるパターンを形成する場合について説明する。なお、記録装置の構成等は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0035】
本実施例においても実施例1と同様の記録方法であるため、クリアインク吐出後列P0112の確認パターンP0012の形成は図8に示すとおりである。4スキャン目には記録データP0143を3回目までのスキャンと同じ記録媒体上の領域に形成する。本実施例においては記録データP0143はマットブラックを用いて形成し、P0143のパターンは図10(a)に示すように、1200dpi単位の格子に縦に4つドットが重なったかたまりが点在するパターンとなっている。なお本実施例においては、図1に示す確認パターンのマットブラックの確認パターンP0009は図9(a)を用いており、1200dpi単位の格子に縦に2つドットが重なったかたまりが点在するパターンとなっている。このように形成されたクリアインクの確認パターンに異常がある場合の見え方について図7(d)を用いて説明する。図7(d)はクリアインクの確認にパターンP0012において矢印で示す位置に相当するマットブラックの吐出口が吐出不良を起こしている場合の見え方を示している。マットブラックインクが吐出不良を起こしているため、本来相対的に濃く見えるはずの領域の一部と本来相対的に薄く見えるはずの領域の一部が白く見える。このマットブラックインクの吐出不良の場合のドット配置を詳細に表した図10(b)について説明する。図10(b)は図10(a)のパターンを形成する際に矢印の位置に吐出不良の吐出口(不吐ノズル)が存在する場合のドットの配置を表したものである。不吐ノズルが存在する位置のドットは白丸で示してあり、これらが吐出不良のために形成されなくなってしまうドットである。すなわち、本来4ドットが隣接してひとかたまりを形成していたパターンの一部図10(b)の最小繰り返し単位中の2つのかたまりが本来の3/4のドットで形成されていることになる。したがって本来よりも薄くなったドットのかたまりが横に連なるが、実施例1の場合はひとつのドットのかたまりが2つであったために吐出不良が生じた場合にはそれぞれのドットのかたまりは本来の1/2で形成されていた。したがって、実施例3の場合は実施例1の場合に比べてドットのかたまりが吐出不良からうける影響が減っていることになる。したがって、実施例3ではクリアインクの確認パターンにおけるマットブラックの吐出不良検出感度を下げることができるため、よりクリアインクの吐出不良以外の要因でクリアインク吐出不良検出パターンに異常が発生する懸念を減らすことができる。
【0036】
本実施例ではクリアインクの確認パターンに用いる有色インクとしてマットブラックを用いたが、これに限定されるものではない。本実施例のようにクリアインクの吐出口列と同一のキャップでキャップされる吐出口列に該当するインクを用いることが好ましい。ただし、色材濃度の低いインクより高いインクを用いた方がクリアインクの確認パターンの視認性としては好ましく、イエローのように明度の高いインクは視認性として好ましくない。
【0037】
また、本実施例ではクリアインクの確認パターン中のマットブラックインクのパターンを4ドットが重なるかたまりのパターンとし、マットブラックインクの確認パターンを2ドットが重なるかたまりのパターンとして説明したが、これに限定されるものではない。クリアインクの確認パターン中の有色インクのパターンのドット集中度合いが、有色インクの確認パターンのドット集中度合いよりも高ければよい。
【0038】
なお、実施例2ではクリアインクの確認パターンにおけるマットブラックの記録方法をマルチパス化し、実施例3ではクリアインクの確認パターンにおけるマットブラックのドット集中度を高めたが、この2つを組み合わせて確認パターンを形成しても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 キャリッジ
2 モータ
3 リニアエンコーダ
4 ベルト
5 搬送ローラ
6 モータ
7 ロータリエンコーダ
8 ベルト
9 シャーシ
10 記録媒体
11 エンコーダ受光部
E0001 キャリッジモータ
E0002 LFモータ
E0004 エンコーダセンサ
E0005 エンコーダスケール
E0012 フレキシブルフラットケーブル
E0013 キャリッジ基板
E0014 メイン基板
E0015 電源ユニット
E0017 ホストインターフェース
E0101 ヘッドコネクタ
E0104 センサ信号
E0106 フロントパネル
E0107 パネル信号
E0101 ヘッドコネクタ
E1004 ROM
E1005 EEPROM
E1010 電源制御回路
E1014 制御バス
E1020 エンコーダ信号
E1021 ヘッド制御信号
E1024 電源制御信号
E1028 ホストインターフェース信号
E1029 ホストインターフェースケーブル
E1102 ASIC
E1106 モータ制御信号
E3007 DRAM
E4000 電源ユニット制御信号
P0001〜P0012 確認パターン
P0101〜P0112 吐出口列
P0201〜P0203 吐出口グループ
P0120〜P0122 キャップ
P0130〜P0132 チューブ
P0140〜P0147 確認パターン
P0150〜P0161 確認パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材を含まない第1のインクを吐出可能な第1吐出口列と、色材を含む第2のインクを吐出可能な第2吐出口列とを含む複数の吐出口列が配列された記録ヘッドが、記録媒体に対する相対走査中に前記記録媒体にインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数の吐出口列のうち少なくとも1列の吐出口列をそれぞれキャップする複数のキャップ手段と、
前記複数のキャップ手段からそれぞれ独立してインクを吸引可能な吸引手段と、
前記第1のインクと前記第2のインクとを用いて第1のインク用テストパターンを記録するテストパターン記録手段とを有し、
前記複数のキャップ手段のうちの1つは、前記第1吐出口列と前記第2吐出口列とを共通にキャップすることを特徴とする。
【請求項2】
前記テストパターン記録手段は、前記第1のインクと前記第2のインクとの両方を用いて記録する領域と、前記第2のインクのみを用いて記録する領域との両方を有するように前記第1のインク用テストパターンを記録することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記テストパターン記録手段は、前記第2のインクのみを用いて第2のインク用テストパターンをさらに記録し、前記第1のインク用テストパターンを記録する領域に対して前記第2のインクを記録するための走査回数は、前記第2のインク用テストパターンを記録する領域に対して前記第2のインクを記録するための走査回数よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
色材を含まない第1のインクを含む複数種類のインクをそれぞれ吐出可能な吐出口列を持ち、非記録媒体にそれぞれのインクを吐出口から吐出することにより画像を形成する画像形成装置において、
非記録媒体にそれぞれのインクを吐出することにより各吐出口列の吐出状態を検出可能なパターンを形成する検出パターン形成手段と、ノズル列に対してノズル列からインクを強制的に排出可能なキャップ手段を持ち、
前記キャップ手段は複数の吐出口列のうちひとつ以上のノズル列に対して一括してキャップすることが可能な複数のキャップを有し、各キャップ手段からはユーザ選択に応じてそれぞれ独立して各キャップからインクの強制排出が可能であり、
前記色材を含まない第1のインクと色材を有する第2のインクは同一のキャップで共通にキャップされ、検出パターンのうち色材を含まない第1のインクの検出パターンは第1のインクを用いてパターンを形成する領域に色材を有する第2のインクを用いてパターンを形成することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−51161(P2012−51161A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194049(P2010−194049)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】