説明

インク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置

【課題】インク・ヘッドの維持管理や保守などのメンテナンスを良好に行う。
【解決手段】インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと上記インク・ヘッド・ユニットから上記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に上記媒体上を第1の方向に沿って移動しながら、上記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより上記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの上記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に媒体上を移動する第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動自在に配設された上記インク・ヘッドをメンテナンスするメンテナンス手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置に関し、さらに詳細には、数値制御により記録紙などの媒体上に印刷、例えば、高速かつ高解像度でのカラー印刷などを行うインク・ジェット・プリンタのインク・ヘッドの維持管理や保守などのメンテナンスを行う際に用いて好適なインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置に関する。
【0002】
なお、本明細書において「媒体」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステル等の樹脂材料やアルミ、鉄、木材の様な材料などの各種の材料が含まれるものとする。
【0003】
また、本明細書において「インク・ジェット方式」とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインク・ジェット技術による印刷方式を意味するものとする。
【背景技術】
【0004】
従来より、マイクロ・コンピューターによって全体の動作を制御され、給紙装置によって供給された記録紙上に記録紙の幅方向(なお、本明細書においては、当該記録紙の幅方向を、「主走査方向」と適宜称することとする。)で移動するインク・ヘッドを用い、インク・ジェット方式により所定の印刷を行うにしたインク・ジェット・プリンタが知られている。
【0005】
また、こうしたインク・ジェット・プリンタの中で、記録紙に印刷を行うためのインクとして、紫外線で硬化するUVインクを使用したものも知られるようになってきた。
【0006】
ここで、UVインクを使用するインク・ジェット・プリンタにおいては、UVインクをインク・ジェット方式により記録紙上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと、記録紙上に吐出されたUVインクに対して紫外線を照射して硬化させる光照射手段としての紫外線ランプとを一体的に記録紙上で移動させる。これにより、記録紙上に落下したUVインクの飛滴に対して紫外線ランプから紫外線が照射され、当該UVインクの飛滴が記録紙上で硬化することにより記録紙上に印刷が行われるものである。
【0007】
また、上記したインク・ジェット・プリンタには、インク・ヘッドを構成するインク・ヘッド・ユニットの下面に配設されUVインクを記録紙に対して吐出する際の吐出口としての複数個のインク・ジェット・ノズルを覆うキャップが配設されている。このキャップは、印刷を行わないときに待機しているインク・ヘッドのインク・ジェット・ノズルを保護して、インク・ジェット・ノズルでUVインクが固まってしまったり、インク・ジェット・ノズルにごみなどが付着するのを防止するものである。
【0008】
また、上記したインク・ジェット・プリンタにおいては、インク・ジェット・ノズルが位置するインク・ヘッド・ユニットの下面に当接可能なワイパーが配設されており、このワイパーによって、インク・ヘッド・ユニットの下面に残留したUVインクや付着した異物などの付着物を除去するようになされている。
【0009】
これらキャップやワイパーによるメンテナンスにより、インク・ヘッドの動作状態が維持され、UVインクを使用したインク・ジェット・プリンタにおいて良好な印刷結果が得られるものである。
【0010】
しかしながら、上記したようにしてインク・ヘッドと一体的に紫外線ランプが移動しながら印刷が行われるので、紫外線ランプから照射された紫外線が、UVインクの飛滴が落下した記録紙上だけではなく、キャップやワイパーにも照射される恐れがあった。
【0011】
そして、紫外線がインク・ヘッドをメンテナンスするためのキャップやワイパーに照射されてしまうと、インク・ヘッド・ユニットを被覆した際にキャップに残留したUVインクや、インク・ヘッド・ユニットに当接した際にワイパーに付着したUVインクが、照射された紫外線によってキャップやワイパーにおいて硬化してしまうことになる。
【0012】
すると、UVインクが硬化しているキャップがインク・ヘッド・ユニットの下面を覆ったり、UVインクが硬化しているワイパーがインク・ヘッド・ユニットの下面に当接したりしてメンテナンスが行われるので、インク・ジェット・ユニットの下面に位置しているUVインクを吐出する吐出口たるインク・ジェット・ノズルが破損する恐れがあり、印刷結果の低下を招来してしまうという問題点があった。
【0013】
なお、本願出願人が特許出願時に知っている先行技術は、上記において説明したようなものであって文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、インク・ヘッドの維持管理や保守などのメンテナンスを良好に行うことができるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと上記インク・ヘッド・ユニットから上記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に上記媒体上を第1の方向に沿って移動しながら、上記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより上記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの上記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に媒体上を移動する第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動自在に配設された上記インク・ヘッドをメンテナンスするメンテナンス手段を有するようにしたものである。
【0016】
従って、本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、メンテナンス手段を第2の方向に沿って移動することにより、第1の方向に沿ってインク・ヘッドと一体的に移動する光照射手段から照射される光の照射範囲外にメンテナンス手段を位置させることでき、光照射手段からの光がメンテナンス手段に照射されるのを防止して、良好な動作状態を維持したメンテナンス手段によってインク・ヘッドのメンテナンスを良好に行うことができる。
【0017】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと上記インク・ヘッド・ユニットから上記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に上記媒体上を上記媒体の幅方向に沿って移動しながら、上記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより上記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの上記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に媒体の幅方向に沿って移動する上記媒体の幅方向に沿った第1の経路と直交する方向に沿った第2の経路で移動自在に配設され、上記第1の経路と上記第2の経路とが交差する交差箇所に上記インク・ヘッドが位置するときには、上記交差箇所において上記インク・ヘッドの下方側に位置して上記インク・ヘッドをメンテナンスし、上記交差箇所とは異なる上記第1の経路上に上記インク・ヘッドが位置するときは、上記交差箇所とは異なる上記第2の経路上に待機するメンテナンス手段を有するようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと上記インク・ヘッド・ユニットから上記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に上記媒体上を上記媒体の幅方向に沿って移動しながら、上記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより上記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの上記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に移動する媒体の幅方向と直交する方向に沿って移動自在に配設された移動部材と、上記移動部材に載置され、上記インク・ヘッドのインク・ヘッド・ユニットからインクが吐出される吐出口が位置する部分を覆うノズル・キャップ部を備えたキャップ装置と、上記媒体の幅方向と直交する方向に沿って上記キャップ装置と並ぶようにして上記移動部材に載置され、上記インク・ヘッドの上記インク・ヘッド・ユニットからインクが吐出される吐出口が位置する部分に当接するブレードを備えたワイパー装置とを有するようにしたものである。
【0019】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクはUVインクであり、上記光照射手段は紫外線ランプであるようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置は、インク・ヘッドの維持管理や保守などのメンテナンスを良好に行うことができるようになるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面に基づいて、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0022】
図1には、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置の実施の形態の一例を備えたインク・ジェット・プリンタの概略構成斜視説明図が示されている。
【0023】
また、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置を備えたインク・ジェット・プリンタにおいても、媒体としては、記録紙を用いるものとし、当該記録紙は、幅方向たる主走査方向において所定の長さを有するとともに、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙の長手方向に搬送されるようになされている。なお、主走査方向と直交する方向(即ち、記録紙の搬送方向かつ記録紙の長手方向)を、以下、「副走査方向」と称する。
【0024】
このインク・ジェット・プリンタ100は、基台部材112に支持され主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材114と、ベース部材114の左右両端でベース部材114に直交して配設された側方部材116L、116Rと、左右2つの側方部材116L、116Rを連結する中央壁118と、中央壁118の壁面に平行して主走査方向に移動自在に配設されたワイヤー120と、ワイヤー120に固定的に配設されたインク・ヘッド・ホルダー122と、側方部材116R内に配設されてそれぞれ異なる色の液体状のUVインクを貯留した4つのインク・カートリッジ124と、側方部材116R内に移動自在に配設されたメンテナンス・ユニット30とを有して構成されている。
【0025】
なお、こうしたインク・ジェット・プリンタ100の全体の動作は、図示しないマイクロ・コンピュータによって制御されている。
【0026】
ここで、インク・ヘッド・ホルダー122には、異なる色のUVインクをインク・ジェット方式によりそれぞれ記録紙上に吐出する4つのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18を備えたインク・ヘッド10と、主走査方向におけるインク・ヘッド10の両側にそれぞれ配置されて記録紙上に吐出されたUVインクに対して紫外線を照射して硬化させる光照射手段としての紫外線ランプ20,22とが搭載されている。
【0027】
インク・ヘッド10を構成するインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18はそれぞれ同様な構成を備えており、主走査方向における左方側から右方側に向かう順で、インク・ヘッド・ユニット12、インク・ヘッド・ユニット14、インク・ヘッド・ユニット16、インク・ヘッド・ユニット18と主走査方向に沿ってインク・ヘッド・ホルダー122内に順次配置されている。
【0028】
また、2つの紫外線ランプ20,22もそれぞれ同様な構成を備えていて、主走査方向に沿ってインク・ヘッド10の両側においてインク・ヘッド・ホルダー122内に順次配置されており、具体的には、主走査方向における最も左方側に配置されたインク・ヘッド・ユニット12の左方側に隣接して紫外線ランプ20が配置され、主走査方向における最も右方側に配置されたインク・ヘッド・ユニット18の右方側に隣接して紫外線ランプ22が配置されている。主走査方向に沿った紫外線ランプ20と紫外線ランプ22との間の長さはL1(図3(a)参照)である。
【0029】
なお、詳細な図示は省略するが、インク・ヘッドを構成する4つのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18a(図4参照)にはそれぞれ、UVインクを記録紙に対して吐出する際の吐出口としての複数個のインク・ジェット・ノズルが配設されている。これら複数個のインク・ジェット・ノズルは副走査方向に一列に並んで配置され、副走査方向における全長がL2(図3(a)参照)であるインク・ジェット・ノズル列を形成しており、インク・ヘッド・ホルダー122の底面部に穿設された孔からインク・ヘッド・ホルダー122の外部に位置するように配設されている。そして、インク・ヘッド・ユニット12,14,16,18のインク・ジェット・ノズルと紫外線ランプ20,22とは、それぞれ記録紙に対向するようにして配設されている。
【0030】
また、上記したように、4つのインク・カートリッジ124のそれぞれに収容されている液体状のインクは紫外線で硬化するUVインクであり、それぞれ異なる色のインクであるが、具体的には、側方部材116R内に配設されたインク・カートリッジ124からインク・チューブ(図示せず。)によって搬送されて、インク・ヘッド・ユニット12には黒色(ブラック)のインクが供給され、インク・ヘッド・ユニット14には青色(シアン)のインクが供給され、インク・ヘッド・ユニット16には赤色(マゼンタ)のインクが供給され、インク・ヘッド・ユニット18には黄色(イエロー)のインクが供給されるようになされている。
【0031】
なお、インク・ジェット方式によりインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18のインク・ジェット・ノズルから記録紙へ向けてUVインクが吐出されると、当該吐出されたUVインクの飛滴が記録紙上に落下することになるが、当該記録紙上に落下したUVインクの飛滴に対しては紫外線ランプ20,22から紫外線が照射されて、当該UVインクの飛滴が記録紙上で硬化することになり、こうして記録紙上に印刷が行われることになる。
【0032】
ここで、ワイヤー120に固定的に配設されたインク・ヘッド・ホルダー122は、ワイヤー120がモーターなどの駆動装置(図示せず)によって巻き取られて主走査方向に移動すると、このワイヤー120の移動に伴って中央壁118の壁面に沿って主走査方向に移動する。
【0033】
このため、インク・ヘッド・ホルダー122に固定的に配設されたインク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22も、インク・ヘッド・ホルダー122の移動に伴って記録紙上を主走査方向に移動する。即ち、側方部材116R側から側方部材116L側へと主走査方向における行き方向で移動するとともに、側方部材116L側から側方部材116R側へと主走査方向における帰り方向で移動する。
【0034】
また、印刷を行わないときなど所定のタイミングで、インク・ヘッド・ホルダー122は帰り方向で移動して側方部材116R内の基準位置に留まり、インク・ヘッド・ホルダー122に配設されたインク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22が側方部材1
16R内に位置するようになされている。なお、図1においては、側方部材116R内の基準位置に位置するインク・ヘッド・ホルダー122、インク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22を破線で示している。
【0035】
ここで、インク・ヘッド・ホルダー122が側方部材116R内において留まる基準位置は、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200(図3(a)参照)における交差箇所400と一致するように設定されている。
【0036】
そして、インク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22が待機する側方部材116R内には、4つのインク・カートリッジ124の他に、図1においては破線で示されているメンテナンス・ユニット30が配設されている。図2には、図1に示すインク・ジェット・プリンタの要部を拡大しメンテナンス・ユニットを中心に示した概略構成斜視説明図が示されている。
【0037】
このメンテナンス・ユニット30は、側方部材116R内の固定系上において副走査方向に延長するとともに互いに平行な位置関係で配設された2本のガイド・レール38−1,38−2上に移動自在に配設された略箱状体のメンテナンス・ホルダー32と、当該メンテナンス・ホルダー32に配設されたキャップ装置34と、副走査方向においてキャップ装置34より前方側に位置するようにしてメンテナンス・ホルダー32に配設されたワイパー装置36とを有して構成されている。
【0038】
従って、共にメンテナンス・ホルダー32に配設されているキャップ装置34とワイパー装置36とは、メンテナンス・ホルダー32内において主走査方向に沿って並んで配設されてはおらず、副走査方向において重なり合うようにして、副走査方向における後方側から前方側に向かう順で、キャップ装置34、ワイパー装置36と互いに副走査方向に沿って並んでメンテナンス・ホルダー32に順次配置されている。
【0039】
ここで、メンテナンス・ユニット30のメンテナンス・ホルダー32は、内部32aを形成するいずれも略矩形形状の底面部32b、左側面部32c、右側面部32dならびに背面部30eを備えている。即ち、メンテナンス・ホルダー32は、内部が中空の直方体形状の箱の6面のうち、略矩形形状の正面部ならびに上面部の部分が省略された略箱状体である。
【0040】
なお、メンテナンス・ホルダー32の主走査方向に沿った全長、即ち、左側面部32cから右側面部32dまでの間の長さL3(図2ならびに図3(a)参照)は、主走査方向に沿った紫外線ランプ20と紫外線ランプ22との間の長さL1(図3(a)参照)に比べて短くなるようにして寸法設定されている。
【0041】
そして、メンテナンス・ホルダー32の底面部32bの外壁面32bbには、左側面部32c近傍においてガイド・レール38−1が係合可能な係合部40−1,40−2が形成されており、右側面部32d近傍においてガイド・レール38−2が係合可能な係合部40−3,40−4が形成されている。
【0042】
また、メンテナンス・ホルダー32の右側面部32dの外壁面32ddには係止部42が形成されている。この係止部42は、モーター44の回転軸44aの先端部に固定されたプーリー46とプーリー48との間に無端状に張設された駆動ベルト50に固定されている。
【0043】
従って、モーター44が駆動されて回転軸44aとともにプーリー46が回転にすると、プーリー46の回転に伴い駆動ベルト50も回転し、駆動ベルト50に係止部42が固定されたメンテナンス・ホルダー32が、係合部40−1,40−2,40−3,40−4が係合するガイド・レール38−1,38−2に沿って副走査方向に移動される。
【0044】
具体的には、モーター44の回転軸44aが矢印A方向に回転した場合には、プーリー48は矢印B方向に回転して、駆動ベルト50に固定されたメンテナンス・ホルダー32が、副走査方向の後方側から前方側に向かって矢印C方向で移動する(図2参照)。
【0045】
反対に、モーター44の回転軸44aが矢印D方向に回転した場合には、プーリー48は矢印E方向に回転して、駆動ベルト50に固定されたメンテナンス・ホルダー32が、副走査方向の前方側から後方側に向かって矢印F方向で移動する(図2参照)。
【0046】
そして、上記したようにして移動するメンテナンス・ユニット30のメンテナンス・ホルダー32には、キャップ装置34とワイパー装置36とが配設されているので、これらキャップ装置34とワイパー装置36も、メンテナンス・ホルダー32の移動に伴って側方部材116R内において副走査方向に移動する。
【0047】
ここで、メンテナンス・ホルダー32の係合部40−1,40−2,40−3,40−4が係合する2本のガイド・レール38−1,38−2は、側方部材116R内の固定系上において副走査方向に延長されて配設されているものであるが、より詳細には、インク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22が載置されたインク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200と直交するようにして配設されている(図3(a)参照)。
【0048】
つまり、メンテナンス・ホルダー32がガイド・レール38−1,38−2に沿って副走査方向に移動する移動経路300は、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200と交差箇所400において直交している。
【0049】
従って、メンテナンス・ホルダー32が副走査方向に移動する移動経路300の副走査方向における最も前方側に位置は、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200より副走査方向において前方側に位置し、また、メンテナンス・ホルダー32が副走査方向に移動する移動経路300の副走査方向における最も後方側の位置は、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200より副走査方向において後方側に位置している。
【0050】
また、メンテナンス・ホルダー32の内部32aに配設されたキャップ装置34は、メンテナンス・ホルダー32の左側面部32c、右側面部32dならびに背面部30eに固定的に配設された台部60と、台部60に形成された4つのノズル・キャップ部62,64,66,68とを備えている。
【0051】
4つのノズル・キャップ部62,64,66,68はそれぞれ同様な構成を備えており、例えば樹脂によって形成され、延長方向に沿って全長L4(図2ならびに図3(a)参照)を有するケース62a,64a,66a,68aと、当該ケース62a,64a,66a,68a内に配設されたスポンジ62b,64b,66b,68bとを有して構成されている。
【0052】
なお、ノズル・キャップ部62,64,66,68のケース62a,64a,66a,68aの全長L4は、インク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aに一列に並んで配置されたインク・ジェット・ノズル列の副走査方向における全長L2に比べて長くなるようにして寸法設定されている。
【0053】
そして、ケース62a,64a,66a,68aの全長L2を有する延長方向を副走査方向と一致させた状態で、4つのノズル・キャップ部62,64,66,68は主走査方向における左方側から右方側に向かう順で、ノズル・キャップ部62、ノズル・キャップ部64、ノズル・キャップ部66、ノズル・キャップ部68と主走査方向に沿って台部60に順次配置されている。こうして台部60に主走査方向に沿って一列に並んでいる4つのノズル・キャップ部62,64,66,68同士の間隔は、インク・ヘッド・ホルダー122に配設されたインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18同士の間隔に対応して設定されているものである。
【0054】
また、台部60に配設されたノズル・キャップ部62,64,66,68の高さ方向(図1ならびに図2参照)における高さ位置は、側方部材116R内の基準位置に留まるインク・ヘッド・ホルダー122(図1における破線参照)に配設されたインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aが位置する高さ位置と略一致するように各種寸法が設定されている。
【0055】
このため、インク・ヘッド・ホルダー122が移動経路200(図3(a)参照)で主走査方向に沿って移動し、側方部材116R内において基準位置に留まるとき、即ち、インク・ヘッド・ホルダー122に配設されたインク・ヘッド10が交差箇所400に位置するときに、メンテナンス・ホルダー32が移動経路300(図3(a)参照)で副走査方向に沿って移動して交差箇所400に位置すると、キャップ装置34のノズル・キャップ部62がインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12の下面12aを被覆可能なものであり、ノズル・キャップ部64がインク・ヘッド・ユニット14の下面14aを被覆可能なものであり、ノズル・キャップ部66がインク・ヘッド・ユニット16の下面16aを被覆可能なものであり、ノズル・キャップ部68がインク・ヘッド・ユニット18の下面18aを被覆可能なものである。
【0056】
一方、メンテナンス・ホルダー32の内部32aに配設されたワイパー装置36は、4つの凸部を備えたブレード70と、ブレード70を支持し駆動ベルト74,76に固定された支持板72(図4参照)とを備えている。支持板72は、例えば、板金により形成されている。
【0057】
ブレード70は、例えば、所定の厚みを有するゴムなどの弾性部材よりなり、支持板72によって支持される基部70a(図4参照)と、基部70aから突設された4つの凸部70b,70c,70d,70eとを有して構成されている。これら4つの凸部70b,70c,70d,70eは、インク・ヘッド・ホルダー122に配設されたインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18同士の間隔に対応して形成されているものである。
【0058】
より詳細には、凸部70b,70c,70d,70eの主走査方向に沿った長さL5(図2参照)は、インク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aの主走査方向に沿った長さに対応して寸法設定されている。
【0059】
また、図4に示す動作状態において駆動ベルト74,76の上方側に位置するブレード70の凸部70b,70c,70d,70eの高さ方向における高さ位置は、側方部材116R内の基準位置に留まるインク・ヘッド・ホルダー122(図1における破線参照)に配設されたインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aが位置する高さ位置と略一致するように各種寸法が設定されている。
【0060】
このため、インク・ヘッド・ホルダー122が移動経路200(図3(a)参照)で主走査方向に沿って移動し、側方部材116R内において基準位置に留まるとき、即ち、インク・ヘッド・ホルダー122に配設されたインク・ヘッド10が交差箇所400に位置するときに、メンテナンス・ホルダー32が移動経路300(図3(a)参照)で副走査方向に沿って移動して交差箇所400に位置すると、ワイパー装置36のブレード70の凸部70bがインク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12の下面12aに当接可能なものであり、ブレード70の凸部70cがインク・ヘッド・ユニット14の下面14aに当接可能なものであり、ブレード70の凸部70dがインク・ヘッド・ユニット16の下面16aに当接可能なものであり、ブレード70の凸部70eがインク・ヘッド・ユニット18の下面18aに当接可能なものである。
【0061】
また、ワイパー装置36としては上記したブレード70ならびに支持板72の他に、メンテナンス・ホルダー32の左側面部32cには、モーター78が外壁面32cc側に位置するようにして配設されている。このモーター78の回転軸78aは、左側面部32cならびに右側面部32dをそれぞれ貫通して、軸線方向を主走査方向に一致させた状態で回転自在に配設されている。そして、モーター78の回転軸78aのメンテナンス・ホルダー32の内部32aに位置する部分には、プーリー80とプーリー82とが固定されている。
【0062】
また、モーター78の回転軸78aと平行するようにして、回転軸84がその両端部を左側面部32cならびに右側面部32dにそれぞれ貫通させて、軸線方向を主走査方向に一致させた状態で回転自在に配設されている。この回転軸84のメンテナンス・ホルダー32の内部32aに位置する部分には、プーリー86とプーリー88とが固定されている。
【0063】
そして、メンテナンス・ホルダー32の左側面部32c側においては、プーリー80とプーリー86との間に駆動ベルト74が無端状に張設されており、右側面部32dにおいては、プーリー82とプーリー88との間に駆動ベルト76が無端状に張設されている。
【0064】
従って、モーター78が駆動されて回転軸78aとともにプーリー80,82が回転にすると、プーリー80,82の回転に伴い駆動ベルト74,76も回転し、駆動ベルト74,76に支持板72が固定されたブレード70が副走査方向に移動される。
【0065】
具体的には、モーター78の回転軸78aが矢印G方向に回転した場合には、プーリー86,88は矢印H方向に回転して、図4に示す動作状態において駆動ベルト74,76上方側に位置するブレード70が、副走査方向の前方側から後方側に向かって矢印J方向で移動する(図4参照)。
【0066】
反対に、モーター78の回転軸78aが矢印K方向に回転した場合には、プーリー86,88は矢印M方向に回転して、図4に示す動作状態において駆動ベルト74,76上方側に位置するブレード70が、副走査方向の後方側から前方側に向かって矢印N方向で移動する(図4参照)。
【0067】
以上の構成において、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置を備えたインク・ジェット・プリンタ100の動作を説明する。
【0068】
まず、記録上に印刷を行う場合には、ワイヤー120の巻き取りによりワイヤー120が移動すると、このワイヤー120の移動に伴って、インク・ヘッド・ホルダー122に搭載されたインク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22が、給紙装置(図示せず)によってベース部材114上に供給された記録紙上を主走査方向における行き方向および帰り方向(図1参照)に一体的に往復移動する。
【0069】
この際、紫外線ランプ20,22は点灯しており、主走査方向における行き方向ならびに帰り方向においては、インク・ヘッド10はインク・チューブによって搬送されたUVインクをそれぞれのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18から記録紙へ向けて吐出する。そして、インク・ヘッド10から吐出されたUVインクの飛滴は記録紙上の所定の位置に落下し、記録紙上に落下したUVインクの飛滴は紫外線ランプ20,22からの紫外線の照射により硬化され、主走査方向における行き方向ならびに帰り方向における印刷とが行われて、双方向印刷により記録紙上に所定の印刷が行われることになる。
【0070】
上記したようにしてインク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22とが主走査方向に沿って一体的に往復移動しながら印刷を行う際には、インク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22が載置されたインク・ヘッド・ホルダー122は、主走査方向に沿って移動経路200で移動するものである(図3(a)において破線で示したインク・ヘッド・ホルダー122参照)。
【0071】
こうした印刷の最中において、メンテナンス・ユニット30は、メンテナンス・ホルダー32がガイド・レール38−1,38−2に沿って移動経路300(図3(a)参照)で副走査方向に移動することにより、移動経路300の副走査方向における最も後方側の位置に位置している(図2ならびに図3(a)に示す状態参照)。
【0072】
即ち、この移動経路300の副走査方向における最も後方側の位置が、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200より副走査方向において後方側に位置しているので、メンテナンス・ユニット30は交差箇所400とは異なる移動経路300上に待機しているものである。
【0073】
このように印刷中においてメンテナンス・ユニット30は移動して所定の位置に待機しているので、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動経路200で移動しながら印刷が進行し、当該印刷中に紫外線ランプ20,22が点灯していても、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線がメンテナンス・ユニット30に照射されることはない。
【0074】
そして、所定の印刷が終了した後などの所定のタイミングで、インク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22とが載置されたインク・ヘッド・ホルダー122は帰り方向で移動して(図3(a)に示す矢印P参照)、側方部材116R内の基準位置、即ち、インク・ヘッド・ホルダー122が主走査方向に沿って移動する移動経路200における交差箇所400に位置するようになる(図4において破線で示したインク・ヘッド10ならびに紫外線ランプ20,22参照)。
【0075】
その後、図2ならびに図3(a)に示す状態で待機しているメンテナンス・ユニット30において、モーター44の回転軸44aが矢印A方向に回転し、プーリー48は矢印B方向に回転して、駆動ベルト50に固定されたメンテナンス・ホルダー32が、副走査方向の後方側から前方側に向かって矢印C方向で移動する。
【0076】
そして、移動経路300で副走査方向に沿って移動するメンテナンス・ホルダー32は交差箇所400に位置するようになり(図3(b)ならびに図4に示す状態参照)、メンテナンス・ホルダー32に載置されたキャップ装置34の4つのノズル・キャップ部62,64,66,68がそれぞれ、インク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aをそれぞれ被覆する。
【0077】
こうして印刷を行わずに基準位置に位置するインク・ヘッド・ホルダー122に載置されたインク・ヘッド10の4つのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18それぞれの下面12a,14a,16a,18aのインク・ジェット・ノズル列が、メンテナンス・ユニット30のキャップ装置32のノズル・キャップ部62,64,66,68によって保護され、インク・ジェット・ノズルでUVインクが固まってしまったり、インク・ジェット・ノズルにごみなどが付着するのを防止できる。
【0078】
この際、移動経路200と移動経路300との交差箇所400において、インク・ヘッド・ホルダー122に載置されたインク・ヘッド10の下方側に位置するメンテナンス・ユニット30は、メンテナンス・ホルダー32の主走査方向に沿った全長L3が、主走査方向に沿った紫外線ランプ20と紫外線ランプ22との間の長さL1に比べて短くなるようにして寸法設定されているので、交差箇所400において紫外線ランプ20,22が点灯していても、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線がメンテナンス・ホルダー32の内部32aに入射することが回避されている。
【0079】
そして、所定量の印刷が終了した後などの所定のタイミングで、図4に示す状態で基準位置に位置するインク・ヘッド10のクリーニングがなされる。
【0080】
より詳細には、例えば、図4に示すようにキャップ装置32によってキャップされた状態からインク・ヘッド10のクリーニングを行うときには、モーター44の回転軸44aが矢印D方向に回転し、プーリー48は矢印E方向に回転して、駆動ベルト50に固定されたメンテナンス・ホルダー32が、副走査方向の前方側から後方側に向かって矢印F方向で所定量だけ移動する。
【0081】
この際、図2に示す状態において駆動ベルト74,76より下方側に位置していたブレードは、モーター78による駆動ベルト74,76の駆動に伴って、駆動ベルト74,76の上方側に位置するように設定されている(図4に示す矢印G,H,J,K,M,N参照)。
【0082】
そして、図5に示すように、メンテナンス・ホルダー32に載置されたワイパー装置36のブレード70の4つの凸部70b,70c,70d,70eがそれぞれ、インク・ヘッド10のインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18の下面12a,14a,16a,18aにそれぞれ当接する。
【0083】
この状態でさらに、モーター78による駆動ベルト74,76の駆動に伴って、ブレード70が矢印J方向あるいは矢印N方向に移動することにより、インク・ヘッド10の4つのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18それぞれの下面12a,14a,16a,18aに、ブレード70の4つの凸部70b,70c,70d,70eが所定の圧力で当接して、インク・ヘッド・ユニット12,14,16,18それぞれの下面12a,14a,16a,18aに残留したUVインクや付着した異物などの付着物を除去できクリーニングができる。
【0084】
そして、印刷を再び開始するときには、移動経路200と移動経路300との交差箇所400において、インク・ヘッド・ホルダー122に載置されたインク・ヘッド10の下方側に位置するメンテナンス・ユニット30(図3(b)、図4ならびに図5参照)が、メンテナンス・ホルダー32の移動に伴って交差箇所400から離れ、移動経路300の副走査方向における最も後方側の位置に待機する(図2ならびに図3(a)に示す状態参照)。
【0085】
それから、インク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22とが載置されたインク・ヘッド・ホルダー122は行き方向で移動して(図3(a)に示す矢印Q参照)、移動経路200上を移動して印刷を行う。
【0086】
このように、先にメンテナンス・ユニット30が交差箇所400とは異なる移動経路300上に待機してから、インク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22が移動経路200上を移動するため、紫外線ランプ20,22が点灯していても、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線がメンテナンス・ユニット30に照射されることはない。
【0087】
上記したようにして、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置の実施の形態の一例を備えたインク・ジェット・プリンタ10においては、インク・ヘッド10の維持管理や保守などのメンテナンスを行うキャップ装置34ならびにワイパー装置36により構成されるメンテナンス・ユニット30を、インク・ヘッド10と紫外線ランプ20,22とが一体的に移動する主走査方向とは異なる副走査方向に沿って移動自在に配設するようにしたため、点灯する紫外線ランプ20,22がインク・ヘッド10と一体的に移動しながら印刷が進行しても、当該印刷の最中にはメンテナンス・ユニット30を副走査方向に移動させて、紫外線の照射範囲外にメンテナンス・ユニット30を退避することができる。
【0088】
このため、本発明によれば、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線が、キャップ装置34やワイパー装置36に照射されるのを防止することができる。
【0089】
従って、インク・ヘッド・ユニット12,14,16,18を被覆した際にノズル・キャップ部62,64,66,68に残留したUVインクや、インク・ヘッド・ユニット12,14,16,18に当接した際にブレード70に付着したUVインクが、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線によって硬化することがない。また、紫外線ランプ20,22から照射された紫外線によって、メンテナンス・ユニット30全体が劣化することも回避できる。
【0090】
このため、本発明によれば、紫外線によって硬化したUVインクが付着しているキャップ装置34やワイパー装置36によってメンテナンスが行われるようなことはなく、良好な動作状態を維持しているメンテナンス・ユニット30によって、インク・ヘッド10の維持管理や保守などのメンテナンスを良好に行うことができる。従って、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置の実施の形態の一例を備えたインク・ジェット・プリンタ10においては、UVインクを使用して高品質な印刷結果を得ることができる。
【0091】
また、本発明によれば、インク・ジェット・プリンタ10が動作中には常時、紫外線ランプ20,22を点灯させるようにしても、メンテナンス・ユニット30を副走査方向に移動させて紫外線の照射範囲外に退避させれば、紫外線が照射されずにメンテナンス・ユニット30の良好な動作状態を維持することができる。
【0092】
このため、メンテナンス・ユニット30に紫外線が照射されないようにするためだけに、紫外線ランプ20,22を消灯させるなどの複雑な制御は必要なく、簡単な制御系で効果的に良好な動作状態を維持することができる。また、紫外線ランプ20,22の点灯・消灯を切り換えるためのシャッターなどの構成物を別途付加する必要もない。
【0093】
また、上記したインク・ジェット・プリンタ10においては、キャップをするキャップ装置34とクリーニングをするワイパー装置36とを、副走査方向に沿って並ぶようにしてメンテナンス・ホルダー32に載置しているので、主走査方向におけるインク・ジェット・プリンタ10の全長を延長することがなく、複数の機能を有する装置により構成されているメンテナンス・ユニット30を配設しているにもかかわらず、小型化に適した構成を有するものである。
【0094】
また、当該キャップ装置34とワイパー装置36とからなるメンテナンス・ユニット30全体が移動自在な構成なので、メンテナンス・ユニット30自体の整備や交換などが非常に容易な構成となっている。
【0095】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に説明するように変形してもよい。
【0096】
(1)上記した実施の形態においては、メンテナンス・ホルダー32にはキャップ装置34とワイパー装置36とが載置されるようにしたが、これら装置の構成は上記した実施の形態に限られるものではないことは勿論であり、キャップ装置34を昇降自在としたり、ワイパー装置36のブレードを各種材料により構成したりあるいはブラシに変更するなど、各種変更が可能なものである。
【0097】
また、キャップ装置34とワイパー装置36とのいずれか一方をメンテナンス・ホルダー32に載置するようにしたり、あるいは、キャップ装置34やワイパー装置36とは異なるメンテナンスを行う装置をメンテナンス・ホルダー32に載置してメンテナンス・ユニット30を構成するようにしてもよい。
【0098】
(2)上記した実施の形態においては、印刷中にはメンテナンス・ユニット30が移動経路300の副走査方向における最も後方側の位置に位置するようにしたが(図3(a)参照)、これに限られるものではないことは勿論であり、例えば、メンテナンス・ユニット30が移動経路300の副走査方向における最も前方側の位置して、交差箇所400とは異なる移動経路300上に待機するようにしてもよい。さらに、メンテナンス・ユニット30が待機している位置においてメンテナンス・ホルダー32が所定の部材で覆われように構成してもよい。
【0099】
(3)上記した実施の形態においては、2つの紫外線ランプ20,22を配設し、インク・ヘッド10は4つのインク・ヘッド・ユニット12,14,16,18を有するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、印刷の手法や印刷に必要な色彩などに応じて、紫外線ランプの総数や各種の色のインクを吐出するインク・ヘッド・ユニットの総数を適宜に増減するようにしてもよい。
【0100】
(4)上記した実施の形態においては、記録紙上に紫外線を照射する紫外線ランプ20,22とUVインクとを用いるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、紫外線とは異なる放射線の可視光や電子線あるいはその他の光を照射する光照射手段を用い、記録紙上に照射される光によって固化あるいは増粘する性質を有する各種インクを用いるようにしてもよい。
【0101】
(5)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、UVインクなどの記録紙上に照射される光によって固化あるいは増粘する性質を有する各種インクを用いたインク・ジェット・プリンタに対して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、本発明によるインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置の実施の形態の一例を備えたインク・ジェット・プリンタを示す概略構成斜視説明図である。
【図2】図2は、図1に示すインク・ジェット・プリンタの要部を拡大しメンテナンス・ユニットを中心に示した概略構成斜視説明図である。
【図3】図3(a)(b)は、図1に示すIII矢視図に対応してメンテナンス・ユニットの動作を模式的に示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示すメンテナンス・ユニットの動作状態を示す概略構成斜視説明図である。
【図5】図5は、図2に示すメンテナンス・ユニットの動作状態を示す概略構成斜視説明図である。
【符号の説明】
【0104】
10 インク・ヘッド
12、14、16、18 インク・ヘッド・ユニット
20、22 紫外線ランプ
30 メンテナンス・ユニット
32 メンテナンス・ホルダー
34 キャップ装置
36 ワイパー装置
100 インク・ジェット・プリンタ
112 基台部材
114 ベース部材
116L、116R 側方部材
122 インク・ヘッド・ホルダー
124 インク・カートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと前記インク・ヘッド・ユニットから前記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に前記媒体上を第1の方向に沿って移動しながら、前記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより前記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの前記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、
インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に媒体上を移動する第1の方向とは異なる第2の方向に沿って移動自在に配設された前記インク・ヘッドをメンテナンスするメンテナンス手段
を有することを特徴とするインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置。
【請求項2】
インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと前記インク・ヘッド・ユニットから前記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に前記媒体上を前記媒体の幅方向に沿って移動しながら、前記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより前記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの前記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、
インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に媒体の幅方向に沿って移動する前記媒体の幅方向に沿った第1の経路と直交する方向に沿った第2の経路で移動自在に配設され、前記第1の経路と前記第2の経路とが交差する交差箇所に前記インク・ヘッドが位置するときには、前記交差箇所において前記インク・ヘッドの下方側に位置して前記インク・ヘッドをメンテナンスし、前記交差箇所とは異なる前記第1の経路上に前記インク・ヘッドが位置するときは、前記交差箇所とは異なる前記第2の経路上に待機するメンテナンス手段
を有することを特徴とするインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置。
【請求項3】
インク・ジェット方式により所定のインクを媒体上に吐出するインク・ヘッド・ユニットを備えたインク・ヘッドと前記インク・ヘッド・ユニットから前記媒体上に吐出されたインクに対して光を照射する光照射手段とが、一体的に前記媒体上を前記媒体の幅方向に沿って移動しながら、前記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクにより前記媒体に対して印刷を行うインク・ジェット・プリンタの前記インク・ヘッドのメンテナンスを行うインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、
インク・ヘッドと光照射手段とが一体的に移動する媒体の幅方向と直交する方向に沿って移動自在に配設された移動部材と、
前記移動部材に載置され、前記インク・ヘッドのインク・ヘッド・ユニットからインクが吐出される吐出口が位置する部分を覆うノズル・キャップ部を備えたキャップ装置と、
前記媒体の幅方向と直交する方向に沿って前記キャップ装置と並ぶようにして前記移動部材に載置され、前記インク・ヘッドの前記インク・ヘッド・ユニットからインクが吐出される吐出口が位置する部分に当接するブレードを備えたワイパー装置と
を有することを特徴とするインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置において、
前記インク・ヘッド・ユニットから吐出されるインクはUVインクであり、
前記光照射手段は紫外線ランプである
ことを特徴とするインク・ジェット・プリンタにおけるメンテナンス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35826(P2006−35826A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223410(P2004−223410)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【Fターム(参考)】