説明

インク中の櫛形ポリエーテルアルカノールアミン

従来伝統的に分散させることが困難であった顔料を分散させることができ、同時に粘度を許容すべきレベルに保持する新規分散剤を含む、インクとして有用な組成物が提供される。本明細書に記載された分散剤を使用すると、顔料の充填量が高く且つ通常使用される粘度の範囲内で存在する広い範囲の種類のインクをつくることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2004年5月13日出願の米国暫定特許願第60/570,600号の優先権を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、顔料の分散剤がポリエーテルアルカノールアミンの櫛形ポリマー(comb
polymer)である顔料を含んだ非水性および水性のインクに関する。また本発明はインクジェット・プリンターに使用できる顔料を含んだ水性インクに関する。
【背景技術】
【0003】
顔料を着色剤として使用する場合、顔料、水、分散剤等を含む濃縮された顔料分散物を水、樹脂、水溶性の有機媒質、および他の成分と混合することによってインク組成物がつくられる。特許文献1には、(a)実質的に顔料、分散剤、ポリシロキサン表面活性剤、および/またはアルカンジオール、多価アルコールおよび水から成る混合物をつくり、(b)この混合物を分散させ顔料分散物をつくる段階を含んで成る顔料分散物の製造法が記載されている。この特許にはまた上記顔料分散物からつくられたインク組成物が請求されている。
【0004】
顔料を含んだインク組成物では一般に、顔料の粒子が凝集し担体から沈降するのを防ぐ役目をする分散剤によって顔料の分散物を安定化させる。特許文献2には、顔料、水性媒質、および安定剤としてアクリル酸/アクリレート・ブロック共重合体を含んで成るインク組成物が記載されている。特許文献3では、親水性のポリアクリル酸の骨格と疎水性部分の側鎖を含んで成るグラフト重合体を水性インク組成物中で使用している。特許文献4には、水性インク分散物の中にイオン性の親水性区画および芳香族の疎水性区画を有する重合体が顔料の表面に接着された状態で含まれているインクジェット・プリンター用の水性インク分散物が記載されている。
【0005】
特許文献5は、スチレン/マレイン酸無水物(SAM)共重合体とアルコールとの反応生成物から成る分散剤を顔料分散剤として含む平判印刷用のインクに関する。特許文献6では、短い炭素鎖をもたないヒドロキシ末端の枝分れした重合体をインクジェット用のインクに使用している。
【0006】
従来法の顔料を含んだインク組成物は顔料分散物に対して許容し得る安定性を示しているが、インクの粘度をさらに低下させ、良好な印刷密度を賦与し、顔料の充填量を増加させ、老化した後の剪断によるシンニング(thinning)を低下させるためには、顔料を含んだインクに対する改善された分散剤がなお必要とされている。従って本発明の目的は、顔料を含んだ改善されたインク組成物を提供することである。
【特許文献1】米国特許第6,818,053号明細書。
【特許文献2】米国特許第5,085,698号明細書。
【特許文献3】米国特許第5,589,522号明細書。
【特許文献4】米国特許第4,597,794号明細書。
【特許文献5】米国特許第5,948,843号明細書。
【特許文献6】米国特許第5,302,197号明細書。
【発明の開示】
【0007】
本発明の概要
本発明の一具体化例は、
(a)溶媒成分;
(b)顔料成分;および
(c)構造
【0008】
【化1】

【0009】
をもった実質的に水溶性の分散剤を顔料を分散させるのに効果的な量で含んで成るインク組成物に関する。上記式においてRはC〜C100脂肪族又は芳香族のヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【0010】
【化2】

【0011】
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができる。ここでRはC〜約C24のヒドロカルビル基であり;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではない。またnは1〜約50の任意の整数であり、sは0または1である。本発明の好適な形においては、ヒドロカルビル基が芳香族の場合nは1〜約10の任意の整数ある。他の具体化例においては、ヒドロカルビル基が脂肪族の場合nは約1〜50の任意の整数ある。
【0012】
本発明の他の具体化例においては、
(a)溶媒成分;
(b)顔料成分;および
(c)構造
【0013】
【化3】

【0014】
をもった水溶性の分散剤を顔料を分散させるのに効果的な量で含んで成るインクとして有用な物質組成物が提供される。上記式においてRはC〜C100の脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【0015】
【化4】

【0016】
によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができる。ここでRは水素およびC〜約C24のヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく;またnは1〜約50の任意の整数であり、sは0または1である。本発明の好適な形においては、ヒドロカルビル基が芳香族の場合nは1〜約10の任意の整数ある。他の具体化例においては、ヒドロカルビル基が脂肪族の場合nは約1〜20の任意の整数ある。
【0017】
本発明によるポリエーテルアルカノールアミン櫛形ポリマーは顔料を解膠し、立体的な(steric)安定化を行う。解膠された顔料は粒径が小さいために高度の光沢と色の強さが得られる。これに加えて、本発明の櫛形ポリマーは粘度を減少させ、その結果平準化(leveling)が改善され、顔料を高度に充填することが可能になる。
【0018】
本発明の詳細な説明
本発明による仕上げられた液体インクの実質的な成分は、組成物中において凝集を起こすことに対して顔料を安定化させる役目をする本発明によってつくられた櫛形ポリマーである。
【0019】
本発明の一具体化例によるインク組成物に使用するのに適した櫛形ポリマーは、一官能性のアミン末端ポリエーテルをポリオールのグリシジルエーテルと反応させることによって製造される。このような方法で得られる生成物は便宜上ポリエーテルアルカノールアミンと呼ぶことができる。本発明の一好適具体化例に従えば、アミン末端ポリエーテル(ATP)反応物は、アミンの窒素原子上に存在する反応性水素原子の総数が存在するすべてのポリオールエーテル中に存在するエポキシド基の量に少なくとも化学量論的に等しくなるのを保証するのに十分な量で存在している。
【0020】
他の広義の観点において、本発明によれば一官能性のアミン末端ポリエーテル(「ATP」)をポリオールのグリシジルエーテルと反応させることを含んで成る方法が提供される。本発明の他の具体化例による方法は、1種またはそれ以上のエポキシ樹脂(制限なくビスフェノールAおよびその誘導体並びに類似物(analogs)を含む)を、親水性の骨格(例えばポリエチレンオキシド(PEO)骨格)をもったATPと高温において反応させ、多数の親水性の枝分れをもった熱可塑性ポリエタノールアミンを得ることを特徴とする方法である。このような生成物の重合体分子量および物理的性質は、原料の選択、および2種の原料の割合によって制御することができる。
【0021】
本発明のポリエタノールアミン組成物は、ビスフェノールA(またはビスフェノールF)のジグリシジルエーテルを分子量250〜3500の一官能性のポリエーテルアミンと反応させることにより製造することができる。ポリエーテル(ポリオキシアルキレンとしても知られている)の重合鎖はエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、またはこれらの材料の任意の組み合わせの重合体をベースにしており、またシアノエチル化されたポリオキシアルキレングリコールから誘導される材料を含んでいることができる。
【0022】
本明細書に記載された水溶性の櫛形材料を製造するための本発明の反応は、好ましくは約50〜150℃の範囲の任意の温度で行われる。反応時間は独立に変化し、約2〜約10時間の間の任意の時間であることができる。本発明の一具体化例における櫛形ポリマーは該ポリマーの少なくとも5重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっていることが好ましい。他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも10重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも15重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも20重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも25重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも30重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも35重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも40重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに一具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも45重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。さらに他の具体化例の櫛形ポリマーは好ましくは該ポリマーの少なくとも50重量%が水に溶解する程度の水溶性をもっている。他の具体化例のポリマーはすべての割合で水と混じり合うことができる。
【0023】
本発明の一具体化例による櫛形ポリマーを製造する一般的な反応図式は次の通りである:
【0024】
【化5】

【0025】
この場合少なくとも2個のエポキシ官能末端基を含むエポキシ樹脂を1級アミンと反応させる。上記反応においてRはC〜C100のヒドロカルビル基であり、従ってエポキシ反応物は官能性が少なくとも2のエポキシ樹脂であることができ、本明細書の下記のグリシジルエーテルの項に列記された材料を何の制限もなく含んでいる。さらに当業界の通常の専門家にとっては、本発明による分散剤をつくるのに使用される原料の量をコントロールすることは容易である。一具体化例においては、エポキシ樹脂が過剰に存在しており、その結果末端がエポキシ樹脂でキャッピングされた分散剤の分子が得られる。他の具体化例においては、分散剤を製造するために過剰のアミンを使用し、その結果アミン基で末端がキャッピングされた分散剤の分子が得られる。
【0026】
上記式において、nは約1〜約50の整数であり;Rは分子構造の一部として互いに連結された少なくとも2個のアルコキシ基を含むヒドロカルビル基であることができる。即ち基Rは基
【0027】
【化6】

【0028】
であることができる。ここでRはC〜約C24のヒドロカルビル基であり;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく、sは0または1である。
【0029】
アミン成分
上記のような基Rは、構造
【0030】
【化7】

【0031】
を有するアミンを、前記のような少なくとも二官能性のエポキシ基と反応させることによって本発明の重合体分散剤の中に導入することができる。上記の構造式で種々の変数は前記定義のとおりである。即ち上記の構造は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシドのランダム重合体およびブロック重合体の両方並びに共重合体を含む基Rを含んでいる。本発明の一つの好適な形に従えば、アミン反応物の分子量は約100〜12,000の間の任意の分子量である。このようなアミンの混合物を用いて本発明で提供される重合体を製造する場合、好適な分子量は存在するすべてのアミンの平均分子量であり、当業界の専門家には認識されているようにこのようなアルコキシル化されたアミンの製造では常にアミンの混合物が得られる。
【0032】
従って本発明に使用されるモノアミン官能基をもったアミン末端ポリエーテルは分子量が約100〜12,000のモノアミンを含み、これは米国テキサス州、HoustoneのHuntsman LLCからJEFFAMINE(R)およびSURFONAMINE(R)の商品名で市販されているもの、並びにポリオキシアルキレン化された1級アミンを含んで成る他社から提供された同様な化合物を含んでいる。好適なアミン末端ポリエーテルは約1,000〜3,000の分子量をもっている。これらの特定の材料はメトキシ末端であるが、本発明を実施するのに使用されるアミン末端ポリエーテルはメトキシ基のメチル基が水素または高級炭化水素、例えば炭素数最高18の置換基を含んで成るエチル、プロピル、ブチル等で置き換えられた他の基でキャッピングされていることができる。アミン末端基が1級アミン基であることが特に好適である。即ち、本発明の一具体化例に有用な一官能性のアミン末端ポリエーテルは一般的な構造
【0033】
【化8】

【0034】
をもっている。ここでRおよびRはそれぞれ独立に水素およびC〜C−ヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;Rは独立に水素、メチル、メトキシ、エトキシ、およびヒドロキシから成る群から選ばれ;nは約5〜100の範囲の整数であり、またこの構造にはその異性体が含まれるものとする。このような材料は米国、テキサス州のHuntsman LLCから市販されている。
【0035】
グリシジルエーテル成分
本発明の組成物をつくるのに用いられるグリシジルエーテルは一般に「エポキシ樹脂」として知られており、通常の市販のエポキシ樹脂を含む種々のエポキシ樹脂を含んでいる。これに加えて、2種またはそれ以上のエポキシ樹脂を含む混合物を互いに任意の割合で組み合わせて使用し、これを本明細書に記載されたアミンと反応させることができる。一般に、エポキシ樹脂はグリシド化(glycidated)した樹脂、脂環式樹脂、エポキシ化した油等であることができる。グリシド化した樹脂はしばしばグリシジルエーテル、例えばエピクロロヒドリンとビスフェノール化合物、例えばビスフェノールAとの反応生成物としてつくられる。C〜C28−アルキルグリシジルエーテル;C〜C28−アルキル−および−アルケニル−グリシジルエステル;C〜C28−アルキル−、モノ−およびポリ−フェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4、4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニルメタン)のポリグリシジルエーテル;NOVOLAC(R)樹脂のポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸(hydrocarboxylic acid)の塩をジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルでエステル化して得られたジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2個のハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィンを縮合させて得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’−ジグリシジルアニリン;4−グリシジルオキシ−N,N’−ジグリシジルアニリン;N,N’−ジメチル−N,N’−ジグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン;N,N’−ジグリシジル−4−アミノフェニルグリシジルエーテル;およびこれらの組合せである。本発明を実施するのに使用し得る市販のエポキシ樹脂には、これだけには限定されないが、ARALDITE(R)GY6010樹脂(Huntsman Advanced Materials)、ARALDITE(R)6010樹脂(Huntsman Advanced Materials)、EPON(R)828樹脂(Resolution Polymers)、およびDER(R)331樹脂(the Dow Chemical Co.)、HeloxyTM68、EponexTM1510、およびARALDITE(R)MV 0500が含まれる。
【0036】
一般に本発明のポリマーは芳香族ポリエポキシドと一官能性のアミン末端ポリエーテルとを当量基準で芳香族ポリエポキシドを過剰に存在させて反応させることにより得ることができ、この場合原料のエポキシド基の約40〜約75%を反応させ、エポキシ当量対アミン当量の比は1.10:1〜2.5:1の間の任意の値にする。米国特許第6,506,821B1号明細書には、芳香族ポリエポキシドをポリオキシアルキレンアミンと3.6:1〜10:1の当量比(エポキシの当量:アミンの当量)で反応させて得られるエポキシ樹脂が記載されている。これらの樹脂はエポキシド基の含量が多いから、水に不溶であり、顔料の分散剤としては不適当である。米国特許出願第20050020735号明細書には、(1)一官能性または多官能性の芳香族ポリエポキシドを(2)ポリオキシアルキレンモノアミンと反応させることによりつくられる分散剤が記載されている。この際エポキシド基の90〜100%を反応させる。本発明のポリマーも脂肪族ポリエポキシドを一官能性のアミン末端ポリエーテルと反応させることにより得られる。しかし本発明においては予想外にも、過剰のエポキシ樹脂を使用すると、顔料を加えた組成物の粘度が当業界の専門家が通常予測するよりも遥かに低下することが見出された。一好適具体化例においては、本発明の分散剤をつくるのに使用される反応混合物中のエポキシ基対アミノ水素原子(1級アミンの窒素原子に結合した水素)の比は約1.1:1〜2.5:1の範囲にある。このようにすることより反応混合物中においてエポキシ基が90%より少ない量しか反応しないようにすることができるが、このことはエポキシ成分が芳香族の場合、本発明の材料を製造する上において特に有利である。
【0037】
このように当業界の専門家は、添付特許請求の範囲請求項1および16に記載されているように、本発明の分散剤の基Rが上記のような材料から誘導されたヒドロカルビル残基であることを理解且つ認識するであろう。
【0038】
一般に、アミン末端ポリエーテルおよびポリオールのグリシジルエーテルは、ポリエーテルのアミン基が実質的にすべてのグリシジルエーテルのエポキシド官能基と反応して消費され得るような量で存在していることが好適である。即ち、反応の際アミン末端ポリエーテルの量はポリオールのグリシジルエーテル中のエポキシドの量に化学量論的に等しいかまたはそれより多い。反応後に未反応のエポキシド官能基が残っているとしても、得られる反応生成物はそれを殆ど含んでいない。
【0039】
1級アミンの最初に使用される量に依存して、最終生成物の中に2級または3級アミンのいずれかが生成することが可能である。従ってATPが2個のエポキシド基と反応して3級アミンを生じた場合におけるような反復単位を含んだ生成物が生じる可能性がある。この結果は下記の代表的な式で記述することができる。
RNHCHCHOHCH−[−O−A−O−CHCHOHCHNRCHCHOHCH−O−]−A−O−CHCHOHCH−NRH
ここでRはATPのキャッピングされたポリエーテルの部分であり、Aはヒドロカルビル基、例えばビスフェノールAの炭化水素部分を表し;xは0(3級アミンが存在しない場合)から約100の間で変動することができる。このような生成物を生じる反応は好ましくは周囲圧力において約80〜約150℃の範囲で行われる。
【0040】
本発明によるインク組成物の櫛形ポリマー成分は、典型的には該インク組成物の中に存在するすべての顔料の全重量に関し約0.5〜約25重量%の量をなしている。好適具体化例に従えば、本発明によるインク組成物の櫛形ポリマー成分は、典型的には該インク組成物の中に存在するすべての顔料の全重量に関し約1〜約10重量%の量をなしている
本発明によるインク組成物の第2の成分は顔料成分であり、これは典型的には不溶性の着色材料、例えばフタロシアニンである。しかし、広範囲の有機および/または無機性の顔料が本発明によるインク組成物の中に存在することができる。無機性の顔料の代表的な例はカーボンブラック、二酸化チタン、および酸化鉄である。有機性の顔料の代表的な例はアゾ顔料(例えばアゾ・レーキ、不溶性のアゾ顔料、縮合したアゾ顔料、およびキレート・アゾ顔料)、多環式顔料(例えばフタロシアニン顔料、ペリレン類およびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料)、レーキ顔料(例えば塩基性染料のレーキ、および酸性染料のレーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、およびアニリン黒色昼光蛍
光顔料である。例えば水性相に分散させた顔料、または表面を表面活性剤或いは重合した分散剤(例えばグラファイト)で処理した顔料のような他の顔料も使用することができる。
【0041】
本発明によるインク組成物の中に存在する顔料の量は構造に依存して変化することができるが、インク組成物の全重量に関し約1〜約30重量%、好ましくは約2〜約10重量%の量で存在することができる。
【0042】
担体媒質(溶媒)成分
本発明によるインク組成物の第3の成分は溶媒であり、これはしばしば担体媒質と呼ばれる。担体媒質は水性または非水性であることができる。水性の場合、担体媒質は水であるか、または水および水にかなり溶解する少なくとも1種の有機溶媒の混合物を含んで成っている。一つの好適な水溶性の有機溶媒は1種またはそれ以上の多価アルコールを含んで成っている。多価アルコールにはエチレングリコール、プロピレングリコール;ジオール、例えばブタンジオール、ペンタンジオールが含まれる。グリコールおよびグリコールエステルも有用であり、これらは例えばグリセリン、プロピレングリコールラウレート;ポリアルキルグリコール、例えばポリエチレングリコール;および多価アルコールの低級アルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびエチレングリコールモノブチルエーテルを含んでいる。
【0043】
他の適切な水溶性の有機溶媒には低級アルコールおよび1分子当たり約8個より少ない炭素原子をもつそれらのすべての異性体、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;ケトン、例えばアセトン;エーテル、例えばジオキサン;エステル、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、およびラクタム、例えば2−ピロリドンが含まれる。
【0044】
本発明によるインク組成物の中に存在する溶媒の量はインクの全重量に関し約50〜約99.8%、好ましくは約70〜約99.8%の範囲内の任意の量である。或る与えられた最終用途の組成物に適した特定のインク組成物の選択は、当業界の専門家に一般的に認識され価値が認められているように、特定の用途の要求、例えば所望の表面張力および粘度、選ばれた顔料、顔料を加えたインクジェット用のインクの乾燥時間、およびインクを印刷する紙の種類に依存する。
【0045】
他の添加物
本発明によるインク組成物は、種々の成分を組み合わせ、これらを通常の料理用配合機の中で混合することにより適切に製造することができる。顔料を湿らせ、インクの表面張力を変化させ、紙の中へのインクの浸透を制御するために、随時表面活性剤を加えることができる。表面活性剤の例には非イオン性、両性、陰イオン性、双性イオン性、および陽イオン性の表面活性剤が含まれ、当業界の通常の専門家はこの分野で使用される表面活性剤についての知識をもっているであろう。他の添加物、例えば接合剤(樹脂)、殺生物剤、加湿剤、キレート化剤、粘度調節剤、および泡防止剤も本発明によるインク組成物の中に存在することができる。随時、アクリルおよび非アクリル性の重合体を加え、耐水性および滲み耐性のような性質を改善することができる。これらは溶媒をベースにした、乳化物の、或いは水溶性の重合体であることができる。
【0046】
インク組成物中で使用する場合、本発明のポリエーテルアルカノールアミン櫛形ポリマーは顔料を解膠し、立体的な安定化を行う。解膠された顔料の粒径は小さいために高度の光沢と色の強度が得られる。平準化が改善され、顔料の充填量を高くすることが可能である。その他の利点として本発明の櫛形ポリマーは粘度を減少させる。
【0047】
一般的な意味において本発明の櫛形ポリマーを製造することができる1級アミンは一般式
【0048】
【化9】

【0049】
によって定義される。ここでRはC〜約C24のヒドロカルビル基であり;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく、sは0または1である。s=0の場合、この材料はHuntsman社から市販されているSURFONAMINE(R)アミンである。s=1の材料をつくるためには、所望のポリオキシアルキル化されたアルコールをアクリロニトリルと反応させ、次いで例えば当業界に公知のシアノエチル化法によりニトリルを還元して1級アミンにする。一般にアクリロニトリル(過剰に存在する)と分子量2000のMPEGの混合物を適当な反応器中で約50〜60℃においてAMBERLYST(R)A−26触媒(樹脂上のNHOH)上に通す。得られる流出流から過剰のアクリロニトリルを抽出し、粗製のシアノエチル化生成物を水素の存在下において圧力約200psi、温度150〜200℃でコバルト触媒上に通す。最終生成物から軽質分を除去し、融点約50〜52℃の黄褐色の固体を得る。
【0050】
特許文献にはシアノエチル化の方法に関する多数の従来法が記載されている。これらの中には米国特許第6,794,530号明細書およびそこで引用されているすべての文献が何の制限もなく含まれている。これらはすべて引用により本明細書に包含される。
【0051】
下記実施例により本発明を例示する。これらの実施例はいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0052】
櫛形ポリマーの製造
【製造例1】
【0053】
小さい広口ガラス瓶に分子量が1000でPO/EO比が3/19のSURFONAMINETML−100アミン(1OOg、0.2モル当量)およびEPONEXTM1510(水素化されたビスフェノールA樹脂、45g、0.2モル当量)を加えた。この混合物をかき回して均一な灰色がかった白色の溶液にし、7時間120℃の炉の中に入れた。最終ポリマーは室温において固体であり、水溶性である。
【製造例2】
【0054】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン(0.2モル当量)200gを、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に45gのEPONEXTM1510(0.2当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が2977であり、重量平均分子量が5574である。原料のエポキシド基の約75%が反応する。
【製造例3】
【0055】
小さい広口ガラス瓶に分子量が500でPO/EO比が2/9のSURFONAMINETML−55アミン(5g、0.02モル当量)、および2.7gのネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、HeloxyTM68(0.02モル当量)を加えた。この混合物をかき回して均一な灰色がかった白色の溶液にし、3時間120℃の炉の中に入れた。最終ポリマーは室温において粘稠な液体であり、水溶性である。
【製造例4】
【0056】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン200g(0.2当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に33.75gのEPONEXTM1510(0.15当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が2940であり、重量平均分子量が4805である。原料のエポキシド基の約96%が反応する。
【製造例5】
【0057】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン200g(0.2当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に56.25gのEPONEXTM1510(0.25当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が1925であり、重量平均分子量が4271である。原料のエポキシド基の約64%が反応する。
【製造例6】
【0058】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン200g(0.2モル当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に47gのARALDITMGY6010(188当量をもったビスフェノールAのジグリシジルエーテル)、0.25当量を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が2411であり、重量平均分子量が5370である。原料のエポキシド基の約69%が反応する。
【製造例7】
【0059】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン200g(0.2当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に56.4gのARALDITMGY6010ジグリシジルエーテル(0.30当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が1679であり、重量平均分子量が4306である。原料のエポキシド基の約58%が反応する。
【製造例8】
【0060】
分子量が2000でPO/EO比が約2/42の熔融したSURFONAMINETML−200アミン200g(0.2当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に65.8gのARALDITMGY6010(0.35当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が1345であり、重量平均分子量が3787である。原料のエポキシド基の約58%が反応する。
【製造例9】
【0061】
分子量が約2188でEOを約49モル含む熔融した164.1gの賦活されたメチルポリエチレングリコール(AMPEG(R)2000グリコール)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルのフラスコの中に入れる。次に42.3gのARALDITMGY6010樹脂(0.225当量)を加える。フラスコを130℃に7時間加熱し、次いで70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。
【対象例】
【0062】
現在インクおよび同様な組成物に使用するための分散剤として市販されており、最終的な種々の用途に多少とも適している材料を下記に示す。
【0063】
実施例1:スチレン−メタクリレート共重合体(分子量約12,000、スチレン30重量%、メタクリル酸70重量%)。この種の共重合体は米国特許第4,597,794号明細書に記載されている。
【0064】
実施例2:スチレン−メタクリレート共重合体(分子量約12,000、スチレン50重量%、メタクリル酸50重量%)。この種の共重合体は米国特許第4,597,794号明細書に記載されている。
【0065】
実施例3:メタクリル酸/メタクリル酸無水物/SURFONAMINE(R)B−30アミン。
【0066】
実施例4:SURFYNOL(R)CT−136表面活性剤、Air Products Company社製の顔料研磨用表面活性剤。
【0067】
実施例5:DISPERBYK−190分散剤、BYK−Chemie,Inc.製の顔料分散剤。
【0068】
実施例6:SURFONAMINE(R)L−100アミン、米国、テキサス州のHuntsman LLC製造、販売。
【0069】
実施例7:SURFONAMINE(R)L−200アミン、米国、テキサス州のHuntsman LLC製造、販売。
【0070】
実施例8:SURFONAMINE(R)L−300アミン、米国、テキサス州のHuntsman LLC製造、販売。
【0071】
実施例9:SURFONAMINE(R)L−207アミン、米国、テキサス州のHuntsman LLC製造、販売。
【0072】
実施例10:SURFYNOL(R)CT−324表面活性剤、Air Products Company製の顔料研磨用表面活性剤。
【0073】
実施例11:分子量が2000でPO/EOが約2/42の200gの熔融したSURFONAMINETML−207アミン(0.2当量)を、機械的撹拌機および温度計を備えた1リットルの丸底フラスコの中に入れて米国特許出願第20050020735号明細書に記載された材料を製造する。次いで37.6gのARALDITETMGY60
10(0.2当量)を加える。フラスコを120℃に7時間加熱し、次に70℃まで温度を下げた後、生成物を取り出す。得られたポリエタノールアミンは室温で固体であり、水溶性である。このものは数平均分子量が4609であり、重量平均分子量が6155である。表面張力は100ppmにおいて51ダイン/cmであり、原料の約88%が反応する。
【0074】
予備混合物(顔料濃縮物)の組成
予備混合物(顔料濃縮物)の調製

組成 1 重量%
Regal(R)660R(カーボンブラック) 38.0
分散剤 2.0
Joncryl(R)63(30.5%のS.C Johnson
Polymer製スチレン・アクリル樹脂、接合剤) 25.53
Byk(R)022(BYK−Chemie製の泡消し剤) 0.7
水 33.77
100%の活性物質に関し

組成 2 重量%
Magruder(R)YE 1400(黄色顔料) 38.7
分散剤 2.0
Joncryl(R)63(30.5%のS.C Johnson
Polymer製スチレン・アクリル樹脂、接合剤) 27
Byk(R)022(BYK−Chemie製の泡消し剤) 1.0
水 31.3
100%の活性物質に関し
【0075】
上記2種の組成による材料の調製法では、Joncryl(R)63接合剤、水、分散剤をビーカーの中に秤り込み、Silverson L4RT−A混合機を用いて均一になるまで弱い剪断をかけて混合する。次に顔料(カーボンブラックまたは黄色顔料)を三つの部分に分けて加え、各部分の添加の間で十分混合して粒子に湿り気を与える。顔料を完全に混入した後、この組成物(予備混合物という)を高剪断下において10分間混合し、顔料粒子を湿らせ、塊をほぐす工程を開始する。
【0076】
下記の実施例では本発明および従来法の組成物の粘度を比較する。
【0077】
[実施例12]
製造例2〜8(本発明)、実施例11、実施例1、実施例3、および実施例5から得られる分散剤を使用した予備組成物2の粘度を表1に示す。粘度が遥かに低いことに反映されているように、本発明の分散剤は競合製品(実施例1、3、5、および11)に比べ、黄色顔料を分散させる上において極めて効果的であることがこの表から分かる。
【0078】
【表1】

【0079】
[実施例13]
製造例2、5、および製造例7、8(本発明)、および実施例11から得られる分散剤を使用した予備組成物1の粘度を表2に示す。粘度が遥かに低いことに反映されているように、本発明の分散剤は従来法の製品である実施例11に比べ、カーボンブラックを分散させる上において極めて効果的であることがこの表から分かる。
【0080】
【表2】

【0081】
[実施例14]
製造例7の分散剤を水中で15%まで希釈し、炉の中で4日間50℃において老化させた後、その性能を新しい試料と比較した。表3には組成物2を用いた際のその結果を示す。この表から分かるように、老化させた試料は新しい試料と同じような性能を示し、このことは試験条件下における分散剤が安定性をもっている証拠である。
【0082】
【表3】

【0083】
このように本発明は、インク、被膜等の調合に有用な分散剤材料の全く新しい種類を規定するものであり、またこのように規定された分散剤材料を含んで成るインク組成物を含んでいる。
【0084】
本明細書および添付特許請求の範囲において使用されている「ヒドロカルビル」と言う言葉は、置換基または原子団に対して参照された場合、当業界の専門家に公知のその通常の意味において使用されるものとする。特定的に述べれば、この言葉は分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性をもつ基を意味する。ヒドロカルビル置換基または原子団の例には、(1)炭化水素(例えばアルキル、アルケニル、アルキニルを含む)置換基、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニルを含む)置換基、および芳香族、脂肪族および脂環式の置換基をもった芳香族置換基、並びに環が分子の他の部分で完結している環式置換基(例えば2個の置換基が一緒になって脂環式の基をつくる場合);(2)置換基をもった炭化水素置換基、即ち本発明の文脈において主として炭化水素の基の特性を変えない非炭化水素性の基(例えばハロゲン(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルフォキシ)を含む炭化水素置換基;(3)ヘテロ置換基、即ち主として炭化水素の特性をもっているが本発明の文脈において環または結合鎖の中に炭素以外の原子を含みそれ以外は炭素原子から構成される置換基が含まれる。ヘテロ原子には硫黄、酸素、窒素が含まれ、これらの原子はピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基に含まれる。一般に、ヒドロカルビル基の中の炭素原子10個当たり2個以上の、好ましくは1個より多くの非炭化水素性置換基は存在しない。典型的にはヒドロカルビル基の中には非炭化水素性の置換基は存在しないであろう。
【0085】
本発明は或る種の好適具体化例に関連して説明され開示されているが、本明細書および添付特許請求の範囲を読んで理解すれば、その明らかに同等な変更および改変は当業界の専門家にとっては明白であるという事実が考慮されなければならない。本発明の説明は添付された種々の請求項の任意の一つと残りの一つまたはそれ以上の請求項との任意の組み合わせによって定義される主題を含むものであり、この中には任意の従属請求項の特徴および/または限定が単独で或いは他の任意の一つまたはそれ以上の従属請求項の特徴および/または限定と組み合わされ、また任意の一つまたはそれ以上の独立請求項の特徴および/または限定と組み合わされて導入され、この場合残りの従属請求項は元の文章で読まれてこのように変更された独立請求項に適用されることが含まれる。このことはまた一つまたはそれ以上の独立請求項の特徴および/または限定が他の独立請求項の特徴および/または限定と組み合わされて変更された独立請求項が得られ、この場合残りの従属請求項は元の文章で読まれてこのように変更された独立請求項に適用されることを含んでいる。従ってここに開示された本発明はこのような変更および改変のすべてを含むことを意図するものであり、本明細書の上記のおよび他の内容の観点から添付特許請求の範囲によってだけ限定を受けるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクとして有用な物質組成物であって、該組成物は
(a)溶媒成分;
(b)顔料成分;および
(c)顔料を分散させるのに効果的な量の水溶性の分散剤を含んで成り、
該分散剤は構造
【化1】

但し上記式においてRはC〜C100の脂肪族ヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【化2】

によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができ、ここでRは水素およびC〜約C24のヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であることができるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく、またnは1〜約50の任意の整数であり、sは0または1であることができる、
をもっていることを特徴とする物質組成物。
【請求項2】
該組成物はカーボンブラック、二酸化チタン、および酸化鉄から成る群から選ばれる無機物質を含んでいることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
該顔料成分は、アゾ顔料、多環式顔料、塩基性染料のレーキ顔料、および酸性染料のレーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、およびアニリン黒色昼光蛍光顔料から成る群から選ばれる有機性顔料を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項4】
該顔料は、フタロシアニン顔料、ペリレン類およびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料から成る群から選ばれる多環式顔料を含んで成ることを特徴とする請求項3記載の組成物。
【請求項5】
該溶媒は水を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
該溶媒は多価アルコール;グリコール;ジオール;グリコールエステル:グリコールエーテル;ポリアルキルグリコール;多価アルコールの低級アルキルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子をもつアルコール;ケトン;エーテル;エステル;およびラクタムから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項7】
該溶媒はエチレングリコール、プロピレングリコール;ブタンジオール、ペンタンジオール;グリセリン;プロピレングリコールラウレート;ポリエチレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子をもつアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;アセトン;ジオキサン;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸t−ブチル;および2−ピロリドンから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項8】
該溶媒の量は該組成物の全重量に関し約50〜99重量%の間の任意の値であることを特徴とする請求項1−7のいずれか一つに記載された組成物。
【請求項9】
該インクは基質に被覆して乾燥させた場合、黒、赤、黄、青、緑、およびマゼンタから成る群から選ばれる色として現れることを特徴とする請求項1−8のいずれか一つに記載されたインク組成物。
【請求項10】
請求項1に記載された分散剤のインク組成物中における使用。
【請求項11】
水、顔料、および請求項1に記載された分散剤を含んで成ることを特徴とする水性分散液。
【請求項12】
上記請求項のいずれか一つに記載された有機溶媒、顔料、および請求項1記載の分散剤を含んで成ることを特徴とする非水性分散液。
【請求項13】
該顔料は上記請求項のいずれか一つに記載された顔料を含んで成ることを特徴とする請求項11または12記載の組成物。
【請求項14】
セルロースまたはオレフィン重合体を含んで成る基質に被覆したまたは被覆しようとするインクの中における、請求項1記載の組成物の分散剤成分に対して規定された制限の範囲内の分散剤の使用。
【請求項15】
請求項1に記載された組成物の分散剤成分の定義の範囲内に入る材料を含んで成ることを特徴とする液体インク組成物。
【請求項16】
インクとして有用な物質組成物であって、該組成物は
(a)溶媒成分;
(b)顔料成分;および
(c)顔料を分散させるのに効果的な量の水溶性の分散剤を含んで成り、
該分散剤は構造
【化3】

但し上記式においてRはC〜C100の脂肪族または芳香族のヒドロカルビル基であることができ;Rは構造
【化4】

によって定義されるアルコキシル化されたヒドロカルビル基であることができ、ここでRは水素およびC〜約C24のヒドロカルビル基から成る群から選ばれ;X、X、X、X、X、およびXはそれぞれそれが存在する場合独立に水素、メチル、およびエチルから成る群から選ばれるが、但し同じアルコキシ単位に結合した2個のX基の少なくとも一つは水素であり、p、q、およびrは互いに独立に0〜約100の間の0を含む整数であるが、但しp、q、およびrの少なくとも一つは0ではなく;またnは1〜約20の任意の整数であり、sは0または1であることができる、
をもっていることを特徴とする物質組成物。
【請求項17】
該組成物はカーボンブラック、二酸化チタン、および酸化鉄から成る群から選ばれる無機物質を含んでいることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項18】
該顔料成分は、アゾ顔料、多環式顔料、塩基性染料のレーキ顔料、および酸性染料のレーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、およびアニリン黒色昼光蛍光顔料から成る群から選ばれる有機性顔料を含んで成ることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項19】
該顔料は、フタロシアニン顔料、ペリレン類およびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、およびキノフタロン顔料から成る群から選ばれる多環式顔料を含んで成ることを特徴とする請求項18記載の組成物。
【請求項20】
該溶媒は水を含んで成ることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項21】
該溶媒は、多価アルコール;グリコール;ジオール;グリコールエステル:グリコールエーテル;ポリアルキルグリコール;多価アルコールの低級アルキルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子をもつアルコール;ケトン;エーテル;エステル;およびラクタムから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項22】
該溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール;ブタンジオール、ペンタンジオール;グリセリン;プロピレングリコールラウレート;ポリエチレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル;1分子当たり約8個より少ない炭素原子をもつアルコー
ル、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;アセトン;ジオキサン;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸t−ブチル;およびN−メチル−2−ピロリドンから成る群から選ばれる1種またはそれ以上の有機溶媒を含んで成ることを特徴とする請求項16記載の組成物。
【請求項23】
該溶媒の量は該組成物の全重量に関し約50〜99重量%の間の任意の値であることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載された組成物。
【請求項24】
該インクは基質に被覆して乾燥させた場合、黒、赤、黄、青、緑、およびマゼンタから成る群から選ばれる色として現れることを特徴とする上記請求項のいずれか一つに記載されたインク組成物。
【請求項25】
請求項16に記載された分散剤のインク組成物中における使用。
【請求項26】
水、顔料、および請求項16に記載された分散剤を含んで成ることを特徴とする水性分散液。
【請求項27】
上記請求項のいずれか一つに記載された有機溶媒、顔料、および請求項16記載の分散剤を含んで成ることを特徴とする非水性分散液。
【請求項28】
該顔料は上記請求項のいずれか一つに記載された顔料を含んで成ることを特徴とする請求項26または27記載の組成物。
【請求項29】
セルロースまたはオレフィン重合体を含んで成る基質に被覆したまたは被覆しようとするインクの中における、請求項16記載の組成物の分散剤成分に対して規定された制限の範囲内の分散剤の使用。
【請求項30】
請求項16に記載された組成物の分散剤成分の定義の範囲内に入る材料を含んで成ることを特徴とする液体インク組成物。

【公表番号】特表2007−537328(P2007−537328A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513124(P2007−513124)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/008126
【国際公開番号】WO2005/113677
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(501269166)ハンツマン・ペトロケミカル・コーポレーシヨン (5)
【Fターム(参考)】