説明

インク供給方法

【課題】 記録装置の装着部への着脱性が容易で、着脱によるインク容器から記録装置のヘッドに至るインク流路上に気泡の発生、異物によるインク流路の閉塞、保存時及び再装着時にインク漏れがない記録装置のヘッドへのインク供給方法の提供。
【解決手段】 弾性部材により密封されたインク導入管を有するインク導出部と、インク収納部とを有するインク容器を収納したインクカートリッジを、該インク導出部に穿孔貫通する中空針を有するインクジェット記録装置の装着部に装着し、該インク容器中のインクをインクジェット記録装置ヘッドに供給するインク供給方法において、該弾性部材のJIS−A硬度が25〜45°、圧縮永久歪が30%(70℃・24h)以下、引裂強度が15〜40N/mmで、該中空針の外径が1.0〜2.5mmであることを特徴とするインク供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク導出部とインク収納部を有するインク容器を収納したインクカートリッジから、インクジェット記録装置(以下、記録装置とも言う)のインクジェット記録装置ヘッド(以下、ヘッドとも言う)にインクを供給するインク供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近ではデジタル機器の進歩は著しく、デジタル機器から出力される情報を可視化するための記録装置もデジタル機器の進歩に合わせますます精緻化が望まれており、更に画像サイズも大型化している。記録装置には、ヘッドにインクを供給するためにインク導出部とインク収納部とを有するインク容器を収納したインクカートリッジが使用されている。
【0003】
画像サイズの大型化に伴い使用されるインクの量も増加するため、インク収納部も大型化されてきている。インク収納部の大型化に伴い、各種熱可塑性樹脂フィルムを積層した多層材料を使用したインク収納部とインク導出部を有するインク容器が、作り易さ、コストの点から使用されている。又、インク収納部の大型化に伴い、一度にインクカートリッジ内のインクを使い切ることなく複数回に分けて記録装置から外したり装着することが頻繁行われる様になっている。この場合、記録装置からの着脱に伴い気泡、異物等が発生し、インク容器からインクジェット記録装置のヘッドに至るインク流路を閉塞した場合、当然のことながらインクが流れないため白く抜けたり、色が不足する状態になり製品にならなくなる。特に大型サイズの画面の場合はやり直しの時間とコストが掛かるため、出来るだけ新品のインクカートリッジを使用して、夜間連続運転で途中に停止しない様にして作製しているのが一般的である。このため、途中でインクが入っているインクカートリッジを記録装置から外し、昼間に他の画面作製に再使用することでインクの無駄を無くしている。この様な使用状況から、記録装置に使用するインクカートリッジに対して次の機能が要求されている。
【0004】
1)記録装置からの着脱に伴いインク漏れがなく、繰り返し使用することが可能であること。
【0005】
2)繰り返し使用に伴い、インク容器への気体の進入、異物の混入がないこと。
【0006】
3)インクジェット記録装置へのインクカートリッジの着脱性が容易であること。
【0007】
これらの要求に対応するためインクカートリッジから記録装置のヘッドにインクを供給する方法としては、例えば、インクカートリッジのインク容器の弾性部材で密封したインク導出部のインク導入管に記録装置の装着部の中空針を貫通し、ヘッドにインクを供給した後、中空針を抜くことでインクカートリッジの再使用を可能にするインク供給方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のインク供給方法は、インクジェット記録装置へのインクカートリッジの着脱性が容易であるが次の事項に付き満足となっていない。
【0009】
1)繰り返し使用した場合、インク導入管を密封している弾性部材の中空針を貫通した箇所からのインクの漏出対策(保存時及び再装着時)及び空気のインク収納部への進入対策が不十分である。
【0010】
2)インク導入管を密封している弾性部材を中空針により穿孔貫通する際、中空針の中空部に弾性部材の微細な穿孔ゴミが入り込み、インク供給が不安定になる。
【0011】
これらの状況から、記録装置の装着部への着脱性が容易で、着脱によるインク容器から記録装置のヘッドに至るインク流路上に気泡の発生、異物によるインク流路の閉塞がない記録装置のヘッドへのインク供給方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2001−260374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、その目的は、記録装置の装着部への着脱性が容易で、着脱によるインク容器から記録装置のヘッドに至るインク流路上に気泡の発生、異物によるインク流路の閉塞、保存時及び再装着時にインク漏れがない記録装置のヘッドへのインク供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0014】
(請求項1)
弾性部材により密封されたインク導入管を有するインク導出部と、インク収納部とを有するインク容器を収納したインクカートリッジを、該インク導出部に穿孔貫通する中空針を有するインクジェット記録装置の装着部に装着し、該インク容器中のインクをインクジェット記録装置ヘッドに供給するインク供給方法において、該弾性部材のJISK6253−93に準じて測定されたJIS−A硬度が25〜45°、JISK6262−93に準じて測定された圧縮永久歪が30%(70℃・24h)以下、JISK6252に準じて測定された引裂強度が15〜40N/mmで、該中空針の外径が1.0〜2.5mmであることを特徴とするインク供給方法。
【0015】
(請求項2)
前記インク容器中のインクの粘度が1.0〜15.0mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のインク供給方法。
【発明の効果】
【0016】
記録装置の装着部への着脱性が容易で、着脱によるインク容器から記録装置のヘッドに至るインク流路上に気泡の発生、異物によるインク流路の閉塞、保存時及び再装着時にインク漏れがない記録装置のヘッドへのインク供給方法を提供することが出来、安心してインクカートリッジの繰り返し使用が可能となり、品質が高い大型画像サイズの作製が容易になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1〜図9を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
図1はインクカートリッジに収納されているインク容器の斜視図を示す。
【0019】
図中、1はインク容器を示す。インク容器1はインク導出部2とインク収納部3とを有している。4aはインク収納部3を作っている熱可塑性フィルムの上面を示し、4bはインク収納部3を作っている熱可塑性フィルムの下面を示す。5、6はインク収納部3を作るためのシール部を示す。シール部5はインク収納部3をセンターシール方式で作製した場合のシール部を示す。シール部5インク収納部3の作製方法によりインク収納部の両側にあっても良い。7はインク導出部2の基材を示す。8は基材7に設けられたインク収納部3との接合部を示す。インク収納部3を該接合部8に接合する方法は、接合部8をインク収納部3に挿入した後、熱溶着、接着剤等で密封接着することで接合することが出来る。9は接合部8にインク収納部3を接合したシール部を示す。10はインクジェット記録装置のインク供給部1への装着部を示す。11は装着部10に設けられた筒状のインク導入管を示す。12aはインク導入管11の内部に設けられた弾性部材17(図2を参照)の脱落を防止する脱落防止部材18(図2を参照)を嵌合固定する穴を示し、反対側にもう1つ12b(図5を参照)として設けてある。13は流量調整部を密閉する部材を示す。密閉する方法としてはインク導出部2を作製した後、アルミ箔をラミネートし部材で熱溶着で密封しても良いし、インク導出部2を作製する時、同時にインサート成形で密封してもかまわない。尚、インク収納部3はインク導出部2を取り付けてある側を前部とし、反対側を後部とする。インク導出部2は接合部8を取り付けてある側を裏面とし、反対側を表面とする。
【0020】
図2は図1に示されるA−A′に沿った概略断面図である。
【0021】
図中、14は筒状のインク導入管11の内部に作られたインク溜部を示し、インク導入管11の内壁と一体化した薄板15により外部と隔離されている。16はインクジェット記録装置にインク流出が下向きになるように装着することでインクジェット記録装置のインク供給手段である中空針30(図8を参照)が差し込まれ、穿孔により開口されるインク導入管11の開口部を示す。17はインクジェット記録装置のインク供給手段である中空針30(図8を参照)を差し込むことにより薄板15が穿孔され開口した際、インク漏れが生じるのを防ぐ弾性部材を示し、記録装置のインク供給手段である中空針30(図8を参照)は弾性部材17を穿孔貫通し薄板15も穿孔することでインク溜部14のインクを記録装置のヘツドに供給可能となる。弾性部材17の形状は開口部16の内壁と少なくとも線状に連続的に密着する形状でも良いし、面状で連続的に密着する形状であっても良い。18は弾性部材17の脱落防止部材を示す。脱落防止部材18により弾性部材17は、薄板15と脱落防止部材18の間にインク導入管の内壁と接触する状態でインク導入管の内部に固定された状態で挿入されている。19は接合部8に設けられたインク供給管を示し、インク供給管19はインク溜部14と連通しており、インク収納部3のインクはインク供給管19によりインク溜部14に溜められる様になっている。20a、20bは装着部10の記録装置のインク供給部の装着部と突き当たる突き当て面に設けられた記録装置の各インク供給部に特有に係合する誤装着防止凹状部を示す。誤装着防止凹状部20a(20b)は、突き当て面に複数配置されており、インク容器1(図1を参照)に収納されたインクの種類により少なくとも一箇所は深くしておき、インクカートリッジ24(図6を参照)が記録装置に装着される際、記録装置側に付いている凸状物の長さ、配置が一致することで嵌め込み装着が出来る様になっている。他の符号は図1と同義である。
【0022】
図3は弾性部材の概略図である。図3の(a)は開口部の内壁と全面連続接触するタイプを示し、図3の(b)は開口部の内壁と部分面が連続接触するタイプを示し、図3の(c)は開口部の内壁と線で連続接触するタイプを示す。図3の(d)は(a)で表されるタイプの変形を示し、図3の(e)は(b)で表されるタイプの変形を示し、図3の(f)は(c)で表されるタイプの変形を示す。
【0023】
図中、21は脱落防止部材18(図2を参照)を受ける部分を示し、22は開口部16(図2を参照)の内壁と接触する部分を示す。接触することでインクの漏れを防止している。
【0024】
図4はインク導入管に設けられた脱落防止部材の概略斜視図を示す。
【0025】
図中、18a、18bは脱落防止部材18の外壁に設けられた爪を示す。爪18a(18b)は脱落防止部材18をインク導入管11(図1を参照)の開口部16(図2を参照)に開けられた穴12a(図1を参照)、12b(図5を参照)に嵌め込まれることで固定することが可能となっている。
【0026】
図5は図1で示されるB−B′に沿った概略断面図である。
【0027】
図中、19は前記に示す如くインク供給管を示し、インク溜部14の中心軸とインク供給管19の中心軸が直交するようにインク溜部14と連通している。23はインク収納部3を接合部8により強固に接合するため接合部8の上面8aと下面8bとに設けられた凹状の溝を示す。他の符号は図1、2と同義である。
【0028】
図6はインクカートリッジの概略斜視図である。図6の(a)はインクカートリッジの上面から見た概略斜視図である。図6の(b)はインクカートリッジの下面から見た概略斜視図である。
【0029】
図中、24はインクカートリッジを示す。24aは上面を示し、24bは下面を示す。25は上面24aに設けられた、インク残量及びインク色確認用の窓部を示し、使用の際は窓部を押すことで周囲に付けられたミシン目26に沿って抜くことが可能である。27はインクジェット記録装置のインク供給部と本発明のインクカートリッジを接合するためにインクカートリッジの下面24bに設けられた切り欠け部を示す。使用の際、押すことで周囲に付けられたミシン目26に沿って抜くことが可能である。インクカートリッジ本体の上面24a又は下面24bにはインクの色、内容量、取り扱い方法等を含めた意匠印刷を設けて合ってもかまわない。
【0030】
図7は図6に示すインクカートリッジのC−C′に沿った概略断面図を示す。
【0031】
図中、28はインク容器1のインク収納部3を載せる台座の積載部を示す。台座の高さはインク収納部3のインク残量を出来る限り減らすためにインク収納部3の下面4bが接合部8の下面8bとほぼ同じ高さになるように合わせるのが好ましく、且つインク収納部3の前後で高さは同じであることが好ましい。29はインクの供給補助とインク残量を出来る限り減らすため、インク収納部1の上面4aに載置された流出補助部材を示す。他の符号は図1と同義である。
【0032】
図8は記録装置に装着し、インク導入管の弾性部材を記録装置のインク供給手段である中空針により穿孔貫通された状態を示す図5に示すインク導出部の拡大概略断面図である。尚、本図では記録装置、記録装置の装着部、インク収納部、インクカートリッジの外箱は省略してある。
【0033】
図中、30は記録装置のインク供給手段である中空針を示し、30aは中空針の上部近傍に設けられたインク導入口を示し、30bは中空部を示す。他の符号は図5と同義である。インク溜部14に溜められたインクはインク導入口30aから中空部30bを介してヘッドへの供給が可能となっている。
【0034】
図9は図8のXで示される部分の拡大概略断面図である。
図中、Pは中空針30の内径を示す。内径Pは、必要とする流速、流量の確保、針の折れ、曲がりに対する強度を考慮し、外径−0.3mm以下が好ましい。Qは中空針30の外径を示す。外径Qは、1.0〜2.5mmである。外径Qが1.0mm未満の場合は、針の強度を保ちながら、針の中空部で必要とする流速を得ることが困難となり、インク抜けが発生する恐れがあるるため好ましくない。外径Qが2.5mmを越える場合は、インク導入管の弾性部材に針を刺した時、インクの漏れを防止するために、弾性部材を大きくしなければならず、この結果、インク容器を必要以上に大きくすることになり記録装置の装着部への装着性、取り扱い性が悪くなるため好ましくない。
【0035】
本発明に係る中空針の材質は特に限定はなく、例えば、SUS等が挙げられる。本発明に係る中空針は、一般にインクジェット記録装置に使用されている中空針を使用することが可能である。
【0036】
インク導出部を密封するのに使用する弾性部材は、JISK6253−93に準じて測定されたJIS−A硬度が25〜45°、JISK6262−93に準じて測定された圧縮永久歪が30%(70℃・24h)以下、JISK6253に準じて測定された引裂強度が15〜40N/mmでり、これらを同時に満たしている必要がある。
【0037】
JIS−A硬度が25°未満の場合は、圧縮永久歪及び引裂強度が条件を満たしていたとしても、針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、弾性部材が伸び過ぎてしまうため、弾性部材のカスが発生し、このカスがインクに入り込み、中空針を介してヘッドに供給され、ヘッドを詰まらせる恐れがあるため好ましくない。JIS−A硬度が45°を越える場合は、圧縮永久歪及び引裂強度が条件を満たしていたとしても、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しする時、弾性部材が強く針に押し付けられるため、摩擦による弾性部材のカスが発生することにより、このカスがインクに入り込み、中空針を介してヘッドに供給され、ヘッドを詰まらせる恐れがあるため好ましくない。
【0038】
本発明において、圧縮永久歪が30%(70℃・24h)以下とは、2〜30%(70℃・24h)を示し、2〜3%が好ましい。又、0〜2%未満の場合も条件によっては効果を奏する場合もある。圧縮永久歪が30%を越える場合は、JIS−A硬度及び引裂強度が条件を満たしていたとしても、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、弾性部材の戻りが悪く、保存時に中空針の抜き刺しした箇所からインク漏れが発生する恐れがあるため好ましくない。
【0039】
引裂強度が15N/mm未満の場合は、JIS−A硬度及び圧縮永久歪が条件を満たしていたとしても、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、中空針の抜き刺しした箇所に引き裂きによる空間が発生し、記録装置の装着部へ装着する時に、中空針の抜き刺しした箇所からインク漏れ、及び空気の混入が発生する恐れがあるため好ましくない。引裂強度が40N/mmを越える場合は、JIS−A硬度及び圧縮永久歪が条件を満たしていたとしても、記録装置の装着部へ装着する時に、インク導入管の弾性部材への中空針の差し込みに力を必要とすることになり、取り扱い性が悪くなるため好ましくない。
【0040】
本発明に係る弾性部材としては、例えば、合成ゴム、熱可塑性樹脂等が挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム(ポリジメチルシロキサン)、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム等から本発明に係るJIS−A硬度、圧縮永久歪及び引裂強度の範囲を同時に満たしている材質を適宜選択して使用することが可能である。
【0041】
本発明に係るインク導出部に使用する材質は特に限定はないが、コスト面、作り易さの面から熱可塑性樹脂を使用するのが最も好ましい。製造方法もごく一般的な実用プラスチック成形加工便覧 全日本プラスチック成形工業連合会編に記載されている如き射出成形方法で製造することが出来る。使用する熱可塑性樹脂としては射出成形が出来れば特に限定はないが例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリプロピレン等一般の樹脂が使用出来る。
【0042】
図1〜図9に示す様なインク導出部と中空針を使用するインク供給方法により、次の効果が得られる。
【0043】
1)インクカートリッジの記録装置へ装着に伴う、インク漏れ、カスによるヘッドの詰まりがなくなり安心して使用することが可能となった。
【0044】
2)インクカートリッジの記録装置への複数回の使用が可能となり、無駄なくインクを使用することが可能となった。
【0045】
3)記録装置へ装着がワンタッチで出来るため、取り扱い性が向上した。
【0046】
本発明に係るインクの粘度は、ヘッドの微細化、生産性等を考慮して、1.0〜15.0mPa・sであるこが好ましい。
【0047】
本発明に係るインクとしては、粘度が1.0〜15.0mPa・sであれば特に限定することはなく、例えば、特開平10−330661号、特開2000−239979、特開2000−239980、特開2002−12800、特開2003−96340、特開2004−18544、特開2004−51820等に記載されているインクが挙げられる。
【0048】
本発明に係わるインクカートリッジの外箱に使用する材料としては、板紙、段ボール等の紙材料、熱可塑性樹脂など一般的に箱に使用されている材料であれば何でも使用可能であるが環境負荷低減の面から紙製であることが好ましい。紙材料としては、最新紙加工便覧 株式会社テックタイムスに記載されている如き一般的な板紙である白板紙又は段ボールを使用して作ることが可能である。板紙としては坪量300〜700g/m2が好ましく、より好ましくは400〜600g/m2である。300g/m2未満では取り扱い及び輸送に耐える強度を保つことが困難となる場合がある。700g/m2を越えた場合は、外箱を製造する時の作業性が悪くなる場合もあるし、又、過剰品質になり環境負荷が増加する場合もある。厚さは260〜1140μmが好ましく、より好ましくは480〜920μmであり、260μm未満では取り扱い及び輸送に耐える強度を保つことが困難となる場合がある。1140μmを越えた場合は過剰包装となり環境負荷が大きくなる場合がある。
【0049】
段ボールとしては最新紙加工便覧 株式会社テックタイムスに記載されている如き一般的なAフルート〜Eフルートの両面段ボール、複両面段ボールが好ましく使用されるが特に限定はない。インク容器の大きさに従い適宜選択することが出来る。
【0050】
本発明のインクカートリッジ表面には、中のインクを識別するための表示がされており、表示方法としてはカートリッジの表面に直接印刷で表示しても良いし、識別するための表示が施されたラベルを貼着する方式であっても良い。
【0051】
本発明に係るインク容器のインク収納部に使用する材料としては、多層熱可塑性フィルムが好ましい。多層熱可塑性フィルムの剛性は、1)酸素透過率、2)インク導出部の接合部との接合強度、3)取り扱い性を考慮すると、7.9×10-7〜1.9×10-6Nm2が好ましく、より好ましくは6.7×10-7〜3.1×10-6Nm2である。
【0052】
多層熱可塑性フィルムの厚さは前記剛性と関連し、剛性の好ましい範囲を維持し、厚さは、1)インク収納部としての強度、2)取り扱い性、3)環境負荷を考慮すると73〜123μmが好ましく、より好ましくは83〜113μmである。
【0053】
多層熱可塑性フィルムには無機物蒸着膜、アルミ蒸着膜を使用しても良い。無機物蒸着膜としては薄膜ハンドブックp879〜p901(日本学術振興会)、真空技術ハンドブックp502〜p509、p612、p810(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版p132〜p134(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されている如き無機膜が挙げられる。例えば、Cr23、Ta23、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si34、単結晶Si、アモルファスSi、W、AI23等が用いられる。これらの中でも最も好ましい無機物蒸着膜としては、蒸着膜の強さ、透明性の点からアルミナ(AI23)が挙げられる。無機蒸着膜を作る方法としては真空技術ハンドブック及び包装技術Vol29No.8に記載されている如き一般的な方法、例えば抵抗又は高周波誘導加熱法、エレクトロビーム(EB)法、プラズマ(PCVD)等により作ることが出来る。蒸着膜の厚さとしては40〜200nmの範囲が好ましく、より好ましくは50〜180nmの範囲である。
【0054】
無機蒸着層の基材として使用する熱可塑性樹脂フィルムとしてはエチレンテトラフルオロエチル共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、2軸延伸ポリプロピレン(0PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン6(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスチレン(PES)など一般の包装用フィルムに使用されているフィルム材料を使用することが出来る。
【0055】
蒸着フィルムシートを介して用いられる熱可塑性樹脂フィルムとしては一般の包装材料として使用されている高分子フィルム(例えば機能性包装材料の新展開株式会社東レリサーチセンター記載の高分子フィルム)である低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、未延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエステル(PET)、セロハン、ポリビニルアルコール(PVA)、延伸ビニロン(OV)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン(PVDC)等が使用出来る。
【0056】
又、これら熱可塑性フィルムは、必要に応じて異種フィルムと共押出しで作った多層フィルム、延伸角度を変えて張り合わせて作った多層フィルム等も当然使用出来る。更に必要とする包装材料の物性を得るために使用するフィルムの密度、分子量分布を組み合わせて作ることも当然可能である。最内層の熱可塑性フィルムとしては低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒を使用して製造した低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又、これらフィルムと高密度ポリエチレン(HDPE)フィルムの混合使用したフィルムが使用されている。特にこれらの中でも溶融温度、強度の点からメタロセン触媒を使用して製造したLLDPEが好ましく一般に市販されているものであれば充分に使用出来る。例えば宇部興産(株)製のユメリット、ダウ・ケミカル日本製のAFFINITY、エリート、日本ポリオレフィン(株)製のハーモレックスLL、日本ポリケム(株)製のカーネル57L、三井化学(株)製エボリュー、積水フィルム西日本(株)製ラミロンスーパー、タマポリ(株)製SEシリーズ、東セロ(株)製トーセロT.U.X−FCS、T.U.X−TCS、二村化学工業(株)製太閤FL、三菱化学興人パックス(株)製メタロエース、和田化学工業(株)製WMX、住友化学(株)製FV202等が挙げられる。
【0057】
無機物蒸着層を使用しない場合は、上述の熱可塑性フィルムの中から適宜選択し必要に応じて単体でも良いし又は、2種以上のフィルムを積層させて用いることが出来る。例えばCPP/OPP、PET/OPP/LDPE、Ny/OPP/LDPE、CPP/OPP/EVOH、サランUB/LLDPE(ここでサランUBとは旭化成工業株式会社製の塩化ビニリデン/アクリル酸エステル系共重合樹脂を原料とした2軸延伸フィルムを示す)K−OP/PP、K−PET/LLDPE、K−Ny/EVA(ここでKは塩化ビニリデン樹脂をコートしたフィルムを示す)等が使用されている。
【0058】
上記積層フィルムの製造方法としては、コンバーテック1990年5月号40〜48頁に記載されている如き一般的に知られている各種の方法が用いられ、例えばウェットラミネート法、ドライラミネート法、ホットメルトラミネート法、押出しラミネート法、熱ラミネート法を利用して作ることが可能である。使用材料によっては多層インフレーション方式により作ることが出来る。
【0059】
積層する際に使用される接着剤としてはコンバーテック1996年1月号18〜22頁、1997年10月号13〜17頁、21〜25頁に記載されている如き一般的に知られている接着剤が使用出来る。
【0060】
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
実施例1
以下に示す材料を使用してインクカートリッジを作製した。
【0062】
(インク容器の作製)
インク導出部のインク導出管を表1に示す様に物性を変えた図3のdに示す形状の弾性部材で密封し、図1に示すインク容器を作製しa〜rとした。弾性部材の直径はインク導入管の外径よりも800%大きくした。尚、インク容器は、インク収納部にはPET12μm/アルミ箔9μm/ONy15μm/LLDPE20μm/黒LLDPE50μmの構成を有する多層熱可塑性フィルムを使用し、センターシール方式で筒状とした後、一方の開放口にLDPEを使用し射出成型で作製した図5に示されるインク導出部の接合部材を挿入し、熱溶着で接合した。この後、インクを減圧条件下で充填し、片方の開放口を熱溶着でシールすることで作製した。
【0063】
作製したインク容器のインク収納部の大きさは、短辺側の長さが131mm、長辺側の長さが370mm、容量1000mlとした。インク導出部のインク導入管の内径は3.0mm、外径は5.0mmとした。使用した多層熱可塑性フィルムの剛性は1.3×10-6Nm2であった。尚、剛性は島津製作所(株)製引っ張り試験器PSC−100を用いて測定した値である。
【0064】
使用したインクの粘度は、Pyhsica社製レオメーターMCR300で測定した結果、6.0mPa・sであった。インクの構成を以下に示す。
【0065】
イエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 160)25質量部
グリセリン(50dyne/cm) 10質量部
クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物 (花王(株)製 デモール C) 10質量部
2−(2エチルヘキシル)スルホコハク酸ソーダ 0.05質量部
ノニルフェノール酸化エチレン10モル付加物 1質量部
水 40質量部
上記、混合物に直径0.5mmのセラミックビーズを使用して、アイメックス社(旧名、五十嵐製作所)製サンドグラインダーで回転数2500rpmで5時間分散した。この分散液を、染料濃度が5%になる様に、水/グリセリン=1:4で希釈してインクを作製、4kPaの減圧下で、一時間、脱気した。
【0066】
(外箱の作製)
坪量450g/m2、厚さ590μmの板紙を使用し図2の展開図に示される型の箱を作製した。開放口の寸法は、幅135mm、高さ70mmとした。
(インクカートリッジの作製)
作製したインク容器No.a〜sを作製した外箱に収納しインクカートリッジを作製し試料1−1〜1−19とし表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
(記録装置の中空針の準備)
表2に示す様に外径と内径とを変えたSAS製の中空針を準備しA〜Fとした。中空針は図9に示してある形状のものを使用した。
【0069】
【表2】

【0070】
評価
準備したインクカートリッジNo.1−1〜1−19に付き、インク漏れ及びインク抜けの発生有無に付き以下に示す評価方法で試験し、以下の評価ランクに従って評価した結果を表3〜表5に示す。
【0071】
インク漏れ
記録装置としてコニカミノルタ(株)製のTP−Vを使用し、装填部の中空針を準備した中空針No.A〜Fに変え、準備したインクカートリッジNo.1−1〜1−19を装填し、着脱を5回繰り返して行い、インク導出部を下向きにして1昼夜保存した時のインク漏れ及び、記録装置に再装着した時のインク漏れの有無を目視で確認した・
インク抜け
1昼夜保存した各インクカートリッジNo.1−1〜1−19を記録装置(コニカミノルタ(株)製のTP−V)に再装着しA1サイズの大きさに画像形成を行い試料を作製し1001〜1114とした。得られた試料No.1001〜1114に付きインク抜けの有り、無しを目視で確認し、以下に示す評価ランクに基づき評価した。
【0072】
インク抜けの評価ランク
○:インク抜けが認められない
△:実技上問題とならない程度のインク抜けが3箇所以下認められる
×:インク抜けが目立ち製品とならない。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
試料No.1001、1007、1013、1019、1025、1031、1037、1043、1049、1055、1061、1067、1073、1079、1085、1091、1097、1103、1109はいずれも中空針が細く必要とするインク流速及び流量が得られずインク抜けが発生した。試料No.1012、1018、1024、1030、1036、1042、1048、1054、1060、1066、1072、1078、1084、1090、1096、1102、1108、1114は、インク漏れ、インク抜けの発生が認められなかったが、中空針が太いため弾性部材の直径を大きくする必要があり、このためインク容器を大きくしなければならずコストが上がるため実用化は困難と判定した。試料No.1001〜1007は弾性部材が伸び過ぎてしまい、弾性部材のカスが発生し、このカスがインクに入り込み、中空針を介してヘッドに供給され、ヘッドが詰まりインク抜けが発生した。試料No.1031〜1036は、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺した時、弾性部材が強く針に押し付けられることにより、摩擦による弾性部材のカスが発生し、このカスがインクに入り込み、中空針を介してヘッドに供給され、ヘッドが詰まりインク抜けが発生した。
【0077】
試料No.1079〜1084に使用したインクカートリッジNo.1−14は、は中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、中空針の抜き刺しした箇所に引き裂きによる空間が発生し、空気の混入が発生し、この空気によりヘッドが詰まりインク抜けが発生した。
【0078】
試料No.1109〜1114に使用したインクカートリッジNo.1−19は、インク漏れ、インク抜けの発生が認められないが、記録装置の装着部へ装着する時に、インク導入管の弾性部材への中空針の差し込みに力を必要とすることになり、取り扱い性が悪くなるため実用化は困難と判定した。
【0079】
試料No.1073〜1078に使用したインクカートリッジNo.1−13は、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、弾性部材の戻りが悪く、中空針の抜き刺しした箇所から保存時にインク漏れが発生し、再装填時にはインク漏れは認められなかった。
【0080】
試料No.1079〜1084に使用したインクカートリッジ1−14は、中空針のインク導入管の弾性部材への抜き刺しにより、中空針の抜き刺しした箇所に引き裂きによる空間が発生し、記録装置の装着部へ装着する時に、中空針の抜き刺しした箇所からインク漏れ発生した。保存時にはインク漏れの発生は認められなかった。本発明の有効性が確認された。
【0081】
実施例2
実施例1に示したインクカートリッジNo.1−3を作製する時、インク収納部に充填するインクの粘度を表6に示す様に変えた他は全て同じ条件でインクカートリッジを作製し2−1〜2−5とした。尚、インクは実施例1と同じインクを使用し、粘度をグリセリンの添加量により変えて作製した。
【0082】
【表6】

【0083】
評価
準備したインクカートリッジNo.2−1〜2−6に付き、インク漏れ及びインク抜けの発生有無に付き以下に示す評価方法で試験し、以下の評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
インク漏れ
記録装置としてコニカミノルタ(株)製のTP−Vを使用し、装填部の中空針を準備した中空針No.B〜Eに変え、準備したインクカートリッジNo.2−1〜2−6を装填し、着脱を5回繰り返して行い、インク導出部を下向きにして1昼夜保存した時のインク漏れ及び、記録装置に再装着した時のインク漏れの有無を目視で確認した・
インク抜け
1昼夜保存した各インクカートリッジNo.2−1〜2−6を記録装置(コニカミノルタ(株)製のTP−V)に再装着しA1サイズの大きさに画像形成を行い試料を作製し201〜224とした。得られた試料No.201〜224に付きインク抜けの有り、無しを目視で確認し、実施例1と同じ評価ランクに基づき評価した。
【0084】
【表7】

【0085】
試料No.201〜224に使用したカートリッジNo.2−1〜2−6は、いずれも保存時及び再装着時にもインク漏れの発生は認められなかった。又、試料No.201〜224にはインク抜けの発生も認められなかった。本発明の有効性が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】インクカートリッジに収納されているインク容器の斜視図を示す。
【図2】図1に示されるA−A′に沿った概略断面図である。
【図3】弾性部材の概略図である。
【図4】インク導入管に設けられた脱落防止部材の概略斜視図を示す。
【図5】図1で示されるB−B′に沿った概略断面図である。
【図6】インクカートリッジの概略斜視図である。
【図7】図6に示すインクカートリッジのC−C′に沿った概略断面図を示す。
【図8】インク導入管の弾性部材を記録装置のインク供給手段である中空針により穿孔貫通された状態を示す図5に示すインク導出部の拡大概略断面図である。
【図9】図8のXで示される部分の拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 インク容器
2 インク導出部
3 インク収納部
11 インク導入管
16 開口部
17 弾性部材
18 脱落防止部材
19 インク供給管
24 インクカートリッジ
28 積載部
29 流出補助部材
30 中空針
30a インク導入口
30b 中空部
P 内径
Q 外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材により密封されたインク導入管を有するインク導出部と、インク収納部とを有するインク容器を収納したインクカートリッジを、該インク導出部に穿孔貫通する中空針を有するインクジェット記録装置の装着部に装着し、該インク容器中のインクをインクジェット記録装置ヘッドに供給するインク供給方法において、該弾性部材のJISK6253−93に準じて測定されたJIS−A硬度が25〜45°、JISK6262−93に準じて測定された圧縮永久歪が30%(70℃・24h)以下、JISK6252に準じて測定された引裂強度が15〜40N/mmで、該中空針の外径が1.0〜2.5mmであることを特徴とするインク供給方法。
【請求項2】
前記インク容器中のインクの粘度が1.0〜15.0mPa・sであることを特徴とする請求項1に記載のインク供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−130719(P2006−130719A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320341(P2004−320341)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】