説明

インク供給装置

【課題】インクカートリッジの非装着時に供給針の開口部を確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができるインク供給装置を提供すること。
【解決手段】ホルダ30のキャップ34に第1係合部41を形成し、インクカートリッジ50の供給口51に第2係合部42を形成し、ホルダ30へのインクカートリッジ50の装着にともなって、第1係合部41と第2係合部42との係合によりキャップ34と供給口51とが合着するとともに、キャップスプリング36の付勢力に逆らってキャップ34が封止位置から非封止位置に移動し、ホルダ30からのインクカートリッジ50の離脱にともなって、第1係合部41と第2係合部42との係合およびキャップスプリング36の付勢力によってキャップ34が非封止位置から封止位置に移動した後、第1係合部41と第2係合部42との係合が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給装置に関し、詳しくは、インクカートリッジのインクをインクジェット記録装置に供給するインク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインク供給装置としては、インクジェット方式の画像形成装置の本体装置に対して着脱可能なインクカートリッジから、供給針を用いてインク流路を接続している場合、本体装置にインクカートリッジを挿入することで供給針の流路が開口し、本体装置からインクカートリッジを取り外すことで供給針の開口部を封止する構成とするとともに、供給針の開口部から漏れたインクに対して、インク受けや吸収体を配置するようした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、インクカートリッジが装着されていない状態では、供給針(インク供給針)と同軸上に移動可能なキャップ(バルブ)を、付勢部材(圧縮バネ)により付勢して供給針の先端側面の開口部(供給口)を封止する封止位置に移動させるようになっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、供給針とキャップの摺動部にインクが固着してキャップが摺動し難くなった場合には、インクカートリッジが装着されていないときに、供給針の開口部を覆うキャップが封止位置に戻ることができず、供給針の開口部が封止されない状態となり、インク漏れが発生してしまっていた。
【0005】
また、キャップを封止位置に付勢するスプリングの力を強めることでキャップの摺動不良を防止するようにした場合、キャップを封止位置に戻すことができるようになる代わりに、インクカートリッジを装着する際に要求される操作力が増大してしまい、操作性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、インクカートリッジの非装着時に供給針の開口部を確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができるインク供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインク供給装置は、インクカートリッジが装着されるホルダと、前記ホルダに着脱可能に装着される前記インクカートリッジと、を有し、前記ホルダに前記インクカートリッジが装着された状態では、前記インクカートリッジの供給口に前記ホルダの供給針が挿入されて連通接続し、前記供給針を介して前記インクカートリッジ内のインクを前記ホルダから外部に供給するインク供給装置において、前記ホルダが、前記供給針の先端側であって前記供給針の先端側面の開口部を封止する封止位置と、前記供給針の基端側であって前記開口部を露出させる非封止位置と、の間で前記供給針の長手方向に移動可能な封止部材と、前記封止部材を前記非封止位置から前記封止位置の方向に付勢する付勢部材と、前記封止部材の前記供給口に対向する側に形成された第1係合部と、を有し、前記インクカートリッジが、前記供給口に形成され、前記ホルダへの前記インクカートリッジの装着により前記第1係合部と係合するとともに、前記ホルダからの前記インクカートリッジの離脱により前記第1係合部との係合が解除される第2係合部と、を有し、前記ホルダへの前記インクカートリッジの装着にともなって、前記第1係合部と前記第2係合部との係合により前記封止部材と前記供給口とが合着するとともに、前記付勢部材の付勢力に逆らって前記封止部材が前記封止位置から前記非封止位置に移動し、前記ホルダからの前記インクカートリッジの離脱にともなって、前記第1係合部と前記第2係合部との係合および前記付勢部材の付勢力によって前記封止部材が前記非封止位置から前記封止位置に移動した後、前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除されることを特徴とする。
【0008】
この構成により、インクカートリッジ側の供給口とホルダ側の封止部材とが第1係合部と第2係合部において係合することで、封止部材がインクの固着により移動し難くなった場合であっても、インクカートリッジをホルダから取り外す動作によって、封止部材を供給針の開口部を封止する封止位置に移動させることができ、インク漏れを防止することができる。
【0009】
したがって、インクカートリッジの非装着時に供給針の開口部を確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記ホルダが、前記非封止位置よりも前記供給針の基端側に前記封止部材が移動することを規制する規制部材を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、封止部材は、規制部材による規制によって非封止位置よりも供給針の基端側には移動しないので、ホルダへのインクカートリッジの装着にともなって、少なくとも封止部材が非封止位置に移動を完了した状態では、第1係合部と第2係合部とが係合することができる。
【0012】
このため、付勢部材の付勢力を弱くしても、ホルダへのインクカートリッジの装着により、第1係合部と第2係合部とが係合することができるので、付勢部材の付勢力を弱めてインクカートリッジの挿入時の操作力を低減し操作性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記封止部材および前記供給口が、前記第1係合部と前記第2係合部に代わって、マグネットおよび前記マグネットに磁気吸着可能な金属の何れか一方をそれぞれ備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成により、マグネットおよびこのマグネットに磁気吸着可能な金属により、封止部材と供給口とがスムーズに合着するため、ホルダに対するインクカートリッジの挿入および取り外し動作の操作性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記第1係合部と前記第2係合部をそれぞれ2つ以上設けたことを特徴とする。
【0016】
この構成により、例えば、2つの第1係合部のそれぞれが2つの第2係合部と係合することにより、第1係合部と第2係合部との係合に起因する封止部材の傾きを防止でき、封止部材が安定した姿勢を維持できるので、より確実にインク漏れを防止することができる。
【0017】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記供給口が、前記供給針が挿入される供給口ゴムシールと、前記供給口ゴムシールの外側に配置された吸収体と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、供給口に吸収体を設けることで、供給針に付着したインクを吸い取ることができ、インク飛散を防止できる。
【0019】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記封止部材の位置が前記封止位置と前記非封止位置の何れであるかを検出する封止部材位置検出手段を備えることを特徴とする。
【0020】
この構成により、封止部材位置検出手段により封止部材の位置を検出することにより、ホルダにインクカートリッジが装着されているか否かを確認することができる。
【0021】
また、本発明に係るインク供給装置は、前記封止部材位置検出手段が、前記封止部材の位置が前記封止位置であることを検出した場合は、エラー信号を出力することを特徴とする。
【0022】
この構成により、封止部材が供給針の開口部を封止する封止位置に戻らなかった場合、前記封止部材位置検出手段によりエラー信号が出力されるので、インク供給装置を備える画像形成装置は、このエラー信号に基づいて、例えば、エラー報知を行ったり、動作を停止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、インクカートリッジの非装着時に供給針の開口部を確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができるインク供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置を備える画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のインクカートリッジの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のインクカートリッジの内部構成を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のホルダの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のホルダの構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のキャップの詳細な構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダへ挿入する場合の動作を示す図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダへ挿入する場合の動作を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダへ挿入する場合の動作を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダから引き抜く場合の動作を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダから引き抜く場合の動作を示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置においてインクカートリッジをホルダから引き抜く場合の動作を示す図である。
【図14】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のホルダにストッパを備えた構成を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のキャップにマグネットを備えるようにした構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のキャップの第1係合部の他の例を示す図である。
【図17】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のインクカートリッジの供給口に吸収体を設けた構成を示す図である。
【図18】本発明の一実施の形態に係るインク供給装置のホルダにキャップの位置を検出するキャップ位置センサを設けた構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
まず、構成について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係るインク供給装置を備える画像形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【0028】
図1に示すように、画像形成装置としてのインクジェット記録装置100は、装置本体101と、装置本体101に装着された用紙を装填するための給紙トレイ102と、装置本体101に着脱自在に装着されて画像が記録された用紙をストックするための排紙トレイ103とを備えている。また、装置本体101の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体101の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装着するためのインク供給装置10を有し、このインク供給装置10の上面には操作ボタンや表示器などの操作表示部105が設けられている。
【0029】
このインク供給装置10には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えばブラック(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液収容手段としての記録液カートリッジであるインクカートリッジ50k、50c、50m、50y(以下、色を区別しないときは単に「インクカートリッジ50」という。)を、装置本体101の前面側から後方側に向って挿入して装着可能とし、このインク供給装置10の前面側には、インクカートリッジ50を着脱するときに開く前カバー(インクカートリッジカバー)106が開閉可能に設けられている。また、インクカートリッジ50k、50c、50m、50yは縦置き状態で横方向に並べて装着する構成となっている。
【0030】
また、操作表示部105には、各色のインクカートリッジ50k、50c、50m、50yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ50k、50c、50m、50yの残量がニアーエンドおよびエンドになったことを表示するための各色の残量表示部108k、108c、108m、108yを配置している。更に、この操作表示部105には、電源ボタン109、用紙送り/印刷再開ボタン110、キャンセルボタン111も配置されている。
【0031】
図2は、インク供給装置の概略構成を示す斜視図である。
【0032】
図2に示すように、インク供給装置10は、主に、ケース20と、ホルダ30と、このホルダに着脱されるインクカートリッジ50と、を備えている。
【0033】
ケース20は、インクカートリッジ50が装着されるとき各色毎のインクカートリッジ50が対応する色のホルダ30に正しく装着されるようにガイドする溝等を有している。また、ホルダ30は、各色毎の供給針33(図5参照)を有している。このホルダ30とケース20によってインクカートリッジ50が各色毎に固定されている。
【0034】
また、インクカートリッジ50を取り外すときは、各色毎に矢印A方向に引き抜くことができ、インクカートリッジ交換が可能な構成になっている。なお、例えばCMYKの4色のインクカートリッジ50が装着可能であって、図2には2個のインクカートリッジ50が装着された状態が示されている。
【0035】
図3は、インクカートリッジの構成を示す斜視図である。図4は、インクカートリッジの内部構成を示す断面図である。
【0036】
図3に示すように、インクカートリッジ50のホルダ30側には、ホルダ30側にインクを供給するための供給口51が設けられている。
【0037】
図4に示すように、インクカートリッジ50は、インクカートリッジケース52の中にインクが充填されたインク袋53が設けられた構造となっており、インク袋53は、インクカートリッジケース52の一側面部の供給口51に繋がっている。供給口51には、供給口51を封止する供給口ゴムシール55が設けられている。供給口ゴムシール55は、供給口51の先端に設けられた筒状の供給口カバー54によって供給口51に固定されている。
【0038】
インクカートリッジ50がホルダ30に装着されると、供給口51の供給口ゴムシール55に、ホルダ30の供給針33(図5参照)が刺さって流路が接続され、インクカートリッジ50内のインクは、図示しないポンプで外部、すなわち、インクジェット記録装置100の印字ヘッドに供給される。
【0039】
また、供給口51には、ホルダ30側のキャップ34(図6参照)と係合する第2係合部42が設けられている。図4において、第2係合部42の実体は、供給口カバー54の後端部の供給口51との段差部分である。
【0040】
図5は、インク供給装置のホルダの構成を示す斜視図である。図6は、ホルダの構成を示す断面図である。
【0041】
図5、図6に示すように、ホルダ30は、インクカートリッジ50の供給口51と流路接続する中空状の供給針33が設けられている。また、ホルダ30には、供給針33の長手方向(図6の左右方向)にスライド動作可能であって供給針33の先端を覆うことが可能な筒状のキャップ34が設けられ、このキャップ34の中には、供給針33の先端部側面の開口部33aを封止する供給針ゴムシール35が装着されている。キャップ34および供給針ゴムシール35は、キャップスプリング36によって供給針33の先端側(図6の左方向)に付勢されている。
【0042】
キャップ34および供給針ゴムシール35は、このキャップスプリング36の付勢力により、インクカートリッジ50がホルダ30に装着されていない場合は、供給針33の先端を覆うとともに供給針33の先端側面の開口部33aを封止する位置である封止位置に移動する。図6において、キャップ34および供給針ゴムシール35は、封止位置に配置されている。
【0043】
また、キャップ34および供給針ゴムシール35は、インクカートリッジ50がホルダ30に装着された場合は、インクカートリッジ50の供給口51に押圧されて、キャップスプリング36の付勢力に逆らって、図6において供給針33の基端部側である右方向に移動し、供給針33の先端が露出するとともに供給針33の先端側面の開口部33aが開放される位置である非封止位置に配置される。
【0044】
図7は、キャップ34の詳細な構成を示す斜視図である。図7に示すように、キャップ34の先端にはインクカートリッジ50の供給口51と係合する第1係合部41が設けられている。
【0045】
図8、9、10を参照して、インクカートリッジ50をホルダ30へ挿入する場合の動作を説明する。
【0046】
図8に示すように、インクカートリッジ50を矢印B方向(右方向)に移動し、インクカートリッジ50がホルダ30に挿入開始した状態では、ホルダ30側のキャップ34の第1係合部41と、インクカートリッジ50側の供給口51の第2係合部42はまだ接触しない。
【0047】
図8の状態からさらにインクカートリッジ50をホルダ30へ挿入すると、図9に示すように、ホルダ30側のキャップ34の先端と、インクカートリッジ50側の供給口51が接触し、キャップ34に設けられた第1係合部41と供給口51の第2係合部42とが係合し、キャップ34と供給口51とが合着する。ただし、この状態では、まだ供給針33の先端と供給口ゴムシール55は接触しておらず、流路接続はしていない。
【0048】
図9の状態からさらにインクカートリッジ50をホルダ30へ挿入すると、図10に示すように、キャップ34と供給口51とが第1係合部41と第2係合部42との係合により合着したまま、キャップ34および供給針ゴムシール35は、キャップスプリング36の付勢力に逆らって、非封止位置に移動する。また、供給針33が供給口ゴムシール55を突き破り、流路接続が完了する。なお、この状態では、図示しないロック機構によってインクカートリッジ50はホルダ30に固定される。
【0049】
図11、12、13を参照して、インクカートリッジ50をホルダ30から引き抜く場合の動作について説明する。
【0050】
図11に示すように、インクカートリッジ50がホルダ30にセット完了した状態においては、キャップ34と供給口51とが第1係合部41と第2係合部42との係合により合着したまま、供給針33が供給口ゴムシール55を突き破り、流路接続している。
【0051】
図11の状態からインクカートリッジ50を矢印A方向(左方向)に引き抜くと、図12に示すように、キャップ34と供給口51とが第1係合部41と第2係合部42との係合により合着した状態なので、キャップ34および供給針ゴムシール35は、キャップ34と供給口51との係合およびキャップスプリング36の付勢力により、供給口51とともに移動して、封止位置に戻る。
【0052】
図12の状態からさらにインクカートリッジ50を引き抜くと、図13に示すように、キャップ34および供給針ゴムシール35は、封止位置で停止し、キャップ34と供給口51との係合が解除された状態になる。
【0053】
このように、本実施の形態では、インクカートリッジ50をホルダ30に装着すると、キャップ34と供給口51が係合され、インクカートリッジ50を取り外す時には、キャップ34が供給口51とともに封止位置に移動するため、供給針33とキャップ34の摺動部にインクが固着してもキャップ34を封止位置に戻すことができ、キャップ34の戻り動作不良を防止することができる。
【0054】
図14は、ホルダにストッパを備えた構成を示す断面図である。
【0055】
図14に示すように、キャップ34の右側には、非封止位置よりも供給針33の基端側(右側)にキャップ34が移動することを規制するストッパ43が設けられている。
【0056】
このため、第1係合部41と第2係合部42とを係合させるために必要が力が大きかったり、キャップスプリング36の付勢力が弱い等の理由により、インクカートリッジ50の装着時にキャップ34が非封止位置に移動完了するまでにキャップ34と供給口51とが係合できなかった場合であっても、ストッパ43を設けることにより、キャップ34の右側端部がストッパ43に当接するとキャップ34はその位置から供給針33の基端側への移動が規制され、キャップ34と供給口51とが圧接し、第1係合部41と第2係合部42とが係合状態となる力が確保されるので、キャップ34と供給口51とが係合することができる。
【0057】
また、ストッパ43を設けることにより、付勢力の弱いキャップスプリング36を使用しても、インクカートリッジ50の装着時にキャップ34と供給口51とを係合することができるようになるため、インクカートリッジ50の装着に必要な操作力を低減することができる。
【0058】
図15は、キャップにマグネットを備えるようにした構成を示す斜視図である。
【0059】
図15に示すように、キャップ34の先端部にマグネット44を設けるとともに、供給口カバー54(図4参照)をマグネット44に磁気吸着可能な金属(磁性のある金属)で構成すると好適である。この場合、インクカートリッジ50をホルダ30に装着すると、キャップ34と供給口51の供給口カバー54とが磁気吸着により合着し、インクカートリッジ50を取り外す時には、キャップ34が供給口51とともに封止位置に移動するため、供給針33とキャップ34の摺動部にインクが固着してもキャップ34を封止位置に戻すことができ、キャップ34の戻り動作不良を防止することができる。
【0060】
なお、供給口カバー54に用いる磁気吸着可能な金属として、例えば、鉄にクロムを10.5%以上混ぜた400系ステンレス(SUS430等)を用いることで、供給口カバー54が錆びることなく、キャップ34と供給口51の供給口カバー54とを磁気吸着により合着させることができる。
【0061】
図16は、キャップ34の第1係合部の他の例を示す図である。
【0062】
図16に示すように、キャップ34の第1係合部41を2つ設けると好適である。この場合、図4において、供給口カバー54の後端部の供給口51との段差部分の上側と下側の2箇所が第2係合部42となる。第1係合部41と第2係合部42を2対以上設けてもよい。第1係合部41と第2係合部42を複数設けることにより、キャップ34の姿勢を安定化させることができ、係合開始時、係合中、係合解除時の第1係合部41と第2係合部42との間での係合に関わる力の偏りによりキャップ34が傾斜することを防止することができる。
【0063】
図17は、インクカートリッジの供給口に吸収体を設けた構成を示す図である。
【0064】
図17に示すように、インクカートリッジ50において、供給口カバー54と供給口ゴムシール55の間に吸収体45を設けると好適である。これにより、供給針33に付着したインクを吸収体45で吸い取ることができ、インクの飛散を防止することができる。
【0065】
図18は、ホルダにキャップの位置を検出するキャップ位置センサを設けた構成を示す図である。
【0066】
図18に示すように、ホルダ30に、キャップ34の位置を検出するキャップ位置センサ46を設け、キャップ34の破損等の不具合によってキャップ34が封止位置に戻らなかった場合に、キャップ位置センサ46が、エラー信号を出力するようにすると好適である。この場合、インクジェット記録装置100は、キャップ位置センサ46からエラー信号を受け取ると、操作表示部105にエラー表示をしてユーザに報知を行い、さらに運転動作を停止する。
【0067】
これにより、キャップ位置センサ46を備えることで、インクカートリッジ50の装着の有無を確認することができ、また、エラー信号の出力およびインクジェット記録装置100側でのエラー報知と動作停止をすることで、キャップ34の破損等の不具合をユーザに知らせることができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態に係るインク供給装置10は、ホルダ30が、供給針33の先端側であって供給針33の先端側面の開口部33aを封止する封止位置と、供給針33の基端側であって開口部33aを露出させる非封止位置と、の間で供給針33の長手方向に移動可能なキャップ34と、キャップ34を非封止位置から封止位置の方向に付勢するキャップスプリング36と、キャップ34の供給口51に対向する側に形成された第1係合部41と、を有し、インクカートリッジ50が、供給口51に形成され、ホルダ30へのインクカートリッジ50の装着により第1係合部41と係合するとともに、ホルダ30からのインクカートリッジ50の離脱により第1係合部41との係合が解除される第2係合部42と、を有し、ホルダ30へのインクカートリッジ50の装着にともなって、第1係合部41と第2係合部42との係合によりキャップ34と供給口51とが合着するとともに、キャップスプリング36の付勢力に逆らってキャップ34が封止位置から非封止位置に移動し、ホルダ30からのインクカートリッジ50の離脱にともなって、第1係合部41と第2係合部42との係合およびキャップスプリング36の付勢力によってキャップ34が非封止位置から封止位置に移動した後、第1係合部41と第2係合部42との係合が解除されることを特徴とする。
【0069】
この構成により、インクカートリッジ50側の供給口51とホルダ30側のキャップ34とが第1係合部41と第2係合部42において係合することで、キャップ34がインクの固着により移動し難くなった場合であっても、インクカートリッジ50をホルダ30から取り外す動作によって、キャップ34を供給針33の開口部33aを封止する封止位置に移動させることができ、インク漏れを防止することができる。
【0070】
したがって、インクカートリッジ50の非装着時に供給針33の開口部33aを確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、ホルダ30が、非封止位置よりも供給針33の基端側にキャップ34が移動することを規制するストッパ43を備えたことを特徴とする。
【0072】
この構成により、キャップ34は、ストッパ43による規制によって非封止位置よりも供給針33の基端側には移動しないので、ホルダ30へのインクカートリッジ50の装着にともなって、少なくともキャップ34が非封止位置に移動を完了した状態では、第1係合部41と第2係合部42とが係合することができる。
【0073】
このため、キャップスプリング36の付勢力を弱くしても、ホルダ30へのインクカートリッジ50の装着により、第1係合部41と第2係合部42とが係合することができるので、キャップスプリング36の付勢力を弱めてインクカートリッジ50の挿入時の操作力を低減し操作性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、キャップ34および供給口51が、第1係合部41と第2係合部42に代わって、マグネット44およびこのマグネット44に磁気吸着可能な金属の何れか一方をそれぞれ備えたことを特徴とする。
【0075】
この構成により、マグネット44およびこのマグネット44に磁気吸着可能な金属により、キャップ34と供給口51とがスムーズに合着するため、ホルダ30に対するインクカートリッジ50の挿入および取り外し動作の操作性を向上させることができる。
【0076】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、第1係合部41と第2係合部42をそれぞれ2つ以上設けたことを特徴とする。
【0077】
この構成により、例えば、2つの第1係合部41のそれぞれが2つの第2係合部42と係合することにより、第1係合部41と第2係合部42との係合に起因するキャップ34の傾きを防止でき、キャップ34が安定した姿勢を維持できるので、より確実にインク漏れを防止することができる。
【0078】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、供給口51が、供給針33が挿入される供給口ゴムシール55と、供給口ゴムシール55の外側に配置された吸収体45と、を備えることを特徴とする。
【0079】
この構成により、供給口51に吸収体45を設けることで、供給針33に付着したインクを吸い取ることができ、インク飛散を防止できる。
【0080】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、キャップ34の位置が封止位置と非封止位置の何れであるかを検出するキャップ位置センサ46を備えることを特徴とする。
【0081】
この構成により、キャップ位置センサ46によりキャップ34の位置を検出することにより、ホルダ30にインクカートリッジ50が装着されているか否かを確認することができる。
【0082】
また、本実施の形態に係るインク供給装置10は、キャップ位置センサ46が、キャップ34の位置が封止位置であることを検出した場合は、エラー信号を出力することを特徴とする。
【0083】
この構成により、キャップ34が供給針33の開口部33aを封止する封止位置に戻らなかった場合、キャップ位置センサ46によりエラー信号が出力されるので、インク供給装置10を備えるインクジェット記録装置100は、このエラー信号に基づいて、例えば、エラー報知を行ったり、動作を停止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、本発明に係るインク供給装置は、インクカートリッジの非装着時に供給針の開口部を確実に封止してインク漏れが発生することを防止することができるという効果を有し、インクカートリッジのインクをインクジェット記録装置に供給するインク供給装置として有用である。
【符号の説明】
【0085】
10 インク供給装置
20 ケース
30 ホルダ
33 供給針
33a 開口部
34 キャップ(封止部材)
35 供給針ゴムシール
36 キャップスプリング(付勢部材)
41 第1係合部
42 第2係合部
43 ストッパ(規制部材)
44 マグネット
45 吸収体
46 キャップ位置センサ(封止部材位置検出手段)
50、50k、50c、50m、50y インクカートリッジ
51 供給口
52 インクカートリッジケース
53 インク袋
54 供給口カバー
55 供給口ゴムシール
100 インクジェット記録装置
105 操作表示部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2003−341086号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジが装着されるホルダと、前記ホルダに着脱可能に装着される前記インクカートリッジと、を有し、前記ホルダに前記インクカートリッジが装着された状態では、前記インクカートリッジの供給口に前記ホルダの供給針が挿入されて連通接続し、前記供給針を介して前記インクカートリッジ内のインクを前記ホルダから外部に供給するインク供給装置において、
前記ホルダが、
前記供給針の先端側であって前記供給針の先端側面の開口部を封止する封止位置と、前記供給針の基端側であって前記開口部を露出させる非封止位置と、の間で前記供給針の長手方向に移動可能な封止部材と、
前記封止部材を前記非封止位置から前記封止位置の方向に付勢する付勢部材と、
前記封止部材の前記供給口に対向する側に形成された第1係合部と、を有し、
前記インクカートリッジが、
前記供給口に形成され、前記ホルダへの前記インクカートリッジの装着により前記第1係合部と係合するとともに、前記ホルダからの前記インクカートリッジの離脱により前記第1係合部との係合が解除される第2係合部と、を有し、
前記ホルダへの前記インクカートリッジの装着にともなって、前記第1係合部と前記第2係合部との係合により前記封止部材と前記供給口とが合着するとともに、前記付勢部材の付勢力に逆らって前記封止部材が前記封止位置から前記非封止位置に移動し、
前記ホルダからの前記インクカートリッジの離脱にともなって、前記第1係合部と前記第2係合部との係合および前記付勢部材の付勢力によって前記封止部材が前記非封止位置から前記封止位置に移動した後、前記第1係合部と前記第2係合部との係合が解除されることを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記ホルダが、前記非封止位置よりも前記供給針の基端側に前記封止部材が移動することを規制する規制部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記封止部材および前記供給口が、前記第1係合部と前記第2係合部に代わって、マグネットおよび前記マグネットに磁気吸着可能な金属の何れか一方をそれぞれ備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記第1係合部と前記第2係合部をそれぞれ2つ以上設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記供給口が、前記供給針が挿入される供給口ゴムシールと、前記供給口ゴムシールの外側に配置された吸収体と、を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のインク供給装置。
【請求項6】
前記封止部材の位置が前記封止位置と前記非封止位置の何れであるかを検出する封止部材位置検出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のインク供給装置。
【請求項7】
前記封止部材位置検出手段が、前記封止部材の位置が前記封止位置であることを検出した場合は、エラー信号を出力することを特徴とする請求項6に記載のインク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−111176(P2012−111176A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263578(P2010−263578)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】