説明

インク供給部を備えたインクジェット記録装置

【課題】 インク充填されたインクジェット記録装置において、装置を反転したり、振動を加えても、インク漏れが無い装置を提供する。
【解決手段】 インクタンクを取り外すことでインク供給針と大気導入針のそれぞれの穴を閉塞することでインクタンクを外したさいに装置内に残ったインクが漏れるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク供給部を備えたインクジェット記録装置、特に一度インク充填した後、装置を輸送する際、厳しい輸送条件下でも、インクを外部に漏らさないインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の記録方式のうち、吐出口(ノズル)からインクを吐出させて記録紙等の被記録媒体上に記録を行うインクジェット記録方式は、低騒音のノンインパクト記録方式で高密度かつ高速の記録動作が可能であるため、近年では広く採用されている。
【0003】
一般的なインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを搭載するキャリアを駆動する手段と、記録紙を搬送する搬送手段と、これらを制御するための制御手段などを備えている。また、インクジェットヘッドのノズル部分からインクを吐出するためのエネルギを発生するために、ピエゾ素子などの電気機械変換体を用いてインクに加圧するもの、レーザなどの電磁波を照射して発熱させるもの、発熱により発泡させるもの、あるいは発熱抵抗体を有する電気熱変換体素子によって液体を加熱させ発泡させるものなどがある。その中でも熱エネルギを利用してインク滴を吐出させる方式のインクジェット記録装置は、ノズルを高密度に配列させることができるため高解像度の記録を行うことが可能である。特に電気熱変換体素子をエネルギ発生素子として用いたインクジェットヘッドは、小型化が容易であり、最近の半導体製造分野において技術の進歩と信頼性の向上が著しいIC技術やマイクロ加工技術を応用して、その長所を十分に活用することにより高密度実装化が容易でかつ製造コストを低くできる。
【0004】
熱エネルギを利用してインク滴を吐出させる方式の従来のインクジェット記録装置の一例において、記録ヘッド101の吐出ノズル101gは微細な穴であり、ノズルに特に弁機構はなく、ノズル内部を負圧に保つことによりノズルにインクのメニスカス(後で詳述)を張らせ、ノズルからのインクの漏れ、大気からの空気の進入をなくしている。インクの吐出は吐出ノズル101g近傍に配置されたヒータの膜沸騰エネルギにより吐出ノズル101gのインクを押し出すことにより行われ、吐出後吐出ノズル101gの毛細管力により再びノズル内にインクを満たすサイクルが繰り返され、インクはチューブ106、インク供給ユニット105を介して随時水頭差にて負圧を維持しているメインタンク104から吸い上げられる。
【0005】
画像を形成していくには、上記多数の吐出ノズルに対し選択的にエネルギを与え、各ノズルから吐出したインクを随時メインタンク104から供給していく構成が用いられている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
以下に図7により、従来のインク供給系の詳細構成を説明する。
【0007】
記録ヘッド101の内部には、微細な穴である吐出ノズル101gにごみが詰まるのを防止するための微細なメッシュ構造のフィルタ101cと、フィルタ101cと吐出ノズル101gとを結ぶ流路101fと、フィルタ101cの上流で、インクジェット記録装置本体に設置されたメインタンク104からチューブ106を介して供給されるインクを一定量蓄えるサブタンク101bとが配置されている。
【0008】
メインタンク104は、供給ユニット105に対して着脱可能な構成であり、その底部に、第1のタンク接続手段としてのゴム栓104bで密封されたインク供給口と、第2のタンク接続手段としてのゴム栓104cで密封された大気導入口とを有する。メインタンク104は、単体では気密な容器であり、インク109はメインタンク104内にそのまま収容される。
【0009】
インク供給ユニット105は、メインタンク104からインク109を取り出し、記録ヘッド101にインクを供給するための第1の装置接続手段としてのインク供給針105aと、メインタンク104内へ大気連通口105gからの大気を導入させるための第2の装置接続手段としての大気導入針105bとを有する。インク供給針105aおよび大気導入針105bは、メインタンク104のインク供給口および大気導入口の位置に対応させて配置されており、メインタンク104がインク供給ユニット105に装着されることで、インク供給針105aおよび大気導入針105bがそれぞれゴム栓104b、104cを貫通し、メインタンク104の内部に侵入する構成となっている。すなわち、メインタンク104がインク供給ユニット105に装着されることで、記録ヘッド101からインク供給針105aまでの流路と、大気導入針105bから大気連通口105gの流路とが1本の流路として連通する。
【0010】
尚、インク供給針105aおよび大気導入針105bがそれぞれゴム栓104b、104cを挿入する際に、インクが針穴から漏れ出すことを防止するため、挿入途中でいったん針穴をゴム栓で閉塞させ、挿入が完了すると連通するように、ゴム栓の厚みが針穴の大きさよりも厚く構成することが必要である。
【0011】
また、周囲環境の温度変化により、記録ヘッド101内及び、メインタンク104内の空気が膨張した場合に大気連通口105gからインクがあふれることを防止するために、大気導入針105bと大気連通口105gの間にあふれたインクを一時収容するバッファ室105fを構成している。
【0012】
以上の構成により、記録ヘッド101内のインクが消費されると、その負圧により、インクが随時メインタンク104からインク供給ユニット105およびインク供給チューブ106を介して記録ヘッド101へ供給される。その際、メインタンク104から供給されたインクと同量の空気が、大気連通口105gからバッファ室105f、大気導入針105bを経て、メインタンク104内に導入される。
【0013】
しかし、上記構成だけでは、サブタンク101b内に、チューブ106などの樹脂材料を透過して侵入する空気や、インク内に溶存していた空気が蓄積してしまう問題があり、サブタンク101bのインクが空になると上記インク供給が不可能になってしまう不都合がある。
【0014】
このため、記録ヘッド101からインク供給針105aまでの流路に遮断弁110と、吐出ノズル101gを吸引する吸引キャップ107a、吸引ポンプ107cを含む回復ユニット107の連動動作により、蓄積した空気を除去する手段を構成している。
【0015】
空気の除去動作について説明する。
【0016】
まず、遮断弁110を閉鎖し、吸引キャップ107aを記録ヘッド101の吐出ノズル101gを覆うように押しつける。続いて、吸引ポンプ107cにより吐出ノズル101gを吸引する。するとサブタンク101bを含む、吸引キャップ107aから遮断弁110までの流路内は徐々に減圧され、記録ヘッド101内のインクと空気の一部を吸い出す。ここで、遮断弁110を開放することで、減圧されていた記録ヘッド101内にインクが流れ込み、吸引キャップ107aを開くことで動作は完了する。空気の一部を含む吸引ポンプ107cで吸引された分のインクが充填されるため、蓄積した空気を減少させることができる。
【0017】
また、上記構成を利用して、吐出ノズル101gにインクの増粘物が詰まった場合は、遮断弁110を開いたまま、回復ユニット107の吸引キャップ107aと吸引ポンプ107cにて吐出ノズル101gからインクを勢いよく引き出すことでインク吐出特性の回復がなされる。
【特許文献1】特開2002−307709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来例においては、周囲の温度上昇、気圧変化により、メインタンク104のインク109がバッファ室105fに流れ込んだ状態で、メインタンク104をインク供給ユニット105から外すと、大気導入針105bからバッファ室105f、大気連通口105gまでの経路は両端を開放したインク容器にインクが入っている状態になる。また、インク供給針105aから記録ヘッド101までの経路では一端が開放、他端がメニスカス力で保持されたインク容器にインクが入っている状態である。そのため、本体輸送等で本体を傾けたり、あるいは、振動・衝撃を与えることにより、バッファ室105fに残っているインクや途中経路に残っているインクがインク供給針105aや大気導入針105bから漏れて、装置内を汚してしまう問題もある。
【0019】
また仮に針穴から漏れたインクを、本体に吸収する流路を設けたとしても、輸送時に本体を反転させた場合等を考えると、ユーザーが触れる部分にインクがまわらない保証はない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、
(1)装置に対して着脱自在なインクタンクはインクタンク単体で密閉状態、装置側の2つの装置接続手段を挿入すると連通状態となる2つのタンク接続手段が設けられ、第1のタンク接続手段には記録ヘッドへインクを供給するインク供給路に連通する第1の装置接続手段が挿入連通され、第2のタンク接続手段には大気と連通した大気連通室に連通する第2の装置接続手段が挿入連通され、インクタンクを装置にセットすると、インクタンクの内部を経由してインク供給路と大気連通室が連通する構成において、第1の装置接続手段と第2の装置接続手段の夫々に対し、連通状態と密閉状態を作ることができる、第1のシール手段と第2のシール手段を具備し、前記インクタンクの着脱行為に連動し、第1の装置接続手段、もしくは第2の装置接続手段の一方、あるいは両方の装置接続手段と、それに対応する、第1のシール手段、あるいは第2のシール手段が相対的な位置関係を変えて、インク供給路もしくは大気連通室に連通する連通状態と、密閉させる密閉状態の2つの状態を作れるように構成し、インクタンクが本体に装着させていない場合、第1の装置接続手段、第2の装置接続手段は密閉状態にする。
【0021】
(2)インクタンクを取り出す事ができるイジェクト機構を有する構成において、インクタンクの取り出し動作に連動し、前記イジェクト機構が前記第1のシール手段と第2のシール手段を移動させる。
【0022】
(3)インクタンクの装着動作に連動し、インクタンクが前記第1のシール手段と第2のシール手段を移動させる。
【0023】
(4)第1の装置接続手段、第2の装置接続手段の密閉状態の位置において、第1の装置接続手段、第2の装置接続手段に対し、前記第1のシール手段、及び、第2のシール手段の保持力を増加させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のインク供給部を備えたインクジェット記録装置によれば、インクタンクを装着している状態では従来例と同様の流路構成であり、通常の印字、空気除去動作及びノズルの回復が正常に実行できる。
【0025】
更に、インクタンクを取り外すことで前記第1の装置接続手段(インク供給針)と第2の装置接続手段(大気導入針)のそれぞれの穴を閉塞する構成を付加することにより、流路内のインクの動きを止めるとともに、インク流路内のインクが装置外部に漏れるのを防止することができる。
【0026】
振動、温度、気圧の変化に対してもインクが、本体の外部に漏れない。つまりインクタンクを完全に挿入している場合には従来例と同様の流路構成であり、空気除去動作及びノズルの回復が正常に実行できる。
【0027】
またインクタンクを取り外すことで、前記第1の装置接続手段、あるいは第2の装置接続手段を閉塞する構成を付加することにより、流路内のインクの動きを止めることで、インクの漏れをなくす事ができる。
【0028】
また、各インクごとに、本発明の機構を設けることで、ユーザーに余分な指示をすることもなく、インクタンクを装填した状態、あるいは、インク供給路内にインクを満ちた状態、どんな状態でも、装置外へのインク漏れを生じる事なく、輸送することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施例)
図1は、本発明の一実施形態によるインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図である。
【0031】
図1に示すインクジェット記録装置は、記録ヘッド201の往復移動(主走査)と、一般記録紙、特殊紙、OHPフィルム等の記録用シートSの所定ピッチごとの搬送(副走査)とを繰り返しつつ、これらの動きと同期させながら記録ヘッド201から選択的にインクを吐出させ、記録用シートSに付着させることで、文字や記号、画像等を形成するシリアル型の記録装置である。
【0032】
図1において、記録ヘッド201は、2本のガイドレールに摺動自在に支持され不図示のモータ等の駆動手段によりガイドレールに沿って往復移動されるキャリッジ202に着脱可能に搭載されている。記録用シートSは、搬送ローラ203により、記録ヘッド201のインク吐出面に対面し、かつ、インク吐出面との距離を一定に維持するように、キャリッジ202の移動方向と交差する方向(例えば、直交する方向である矢印A方向)に搬送される。
【0033】
記録ヘッド201は、それぞれ異なる色のインクを吐出するための複数のノズル列を有する。記録ヘッド201から吐出されるインクの色に対応して、複数の独立したメインタンク204が、インク供給ユニット205に着脱可能に装着される。インク供給ユニット205と記録ヘッド201とは、それぞれインクの色に対応した複数のインク供給チューブ206によって接続され、メインタンク204をインク供給ユニット205に装着することで、メインタンク204内に収納された各色のインクを、記録ヘッド201の各ノズル列に独立して供給することが可能となる。
【0034】
記録ヘッド201の往復移動範囲内で、かつ、記録用シートSの通過範囲外の領域である非記録領域には、回復ユニット207が、記録ヘッド201のインク吐出面と対面するように配置されている。
【0035】
次に、このインクジェット記録装置のインク供給系の詳細な構成について図を参照して説明する。図2、3は、図1に示すインクジェット記録装置のインク供給経路を説明するための図であり、説明を簡単にするため、1色の経路についてのみ示している。図2は、インクタンクを本体に取り付けた際の、主にインク供給ユニットの構成を示した図、図3はインクタンクを本体から取り外した直後、図4はタンクカバーを閉じた状態(インクタンク無し)である。
【0036】
図2〜4において、3はヘッド内の負圧を高める際に閉じる弁、4はインクタンクから記録ヘッドへインクを供給するための第1の装置接続手段としてのインク供給針で、先端付近に穴が開いている。5は大気と開放された大気連通路へ連通するための第2の装置接続手段としての大気導入針でインク供給針と同様に先端付近に穴が開いている。6は第1のタンク接続手段としてのゴム栓でインク供給針4が挿入されている場合、適正なシール性を確保しており、インク供給針4が非挿入の際も、シール性を確保しインクの漏れを抑えている。7は第2のタンク接続手段としてのゴム栓でゴム栓6同様のシール性を確保している。
【0037】
8はインク供給針4の長手方向に適正な摩擦抵抗力を持ちながら摺動可能な供給針穴シール材、9は供給針穴シール材8と同様の機能を有し、大気導入針5の長手方向に適正な摩擦抵抗で摺動可能な大気針穴シール材、10は本体に設けられた廃インク吸収体、11はインクタンク下面を押し上げてタンクを取り出すためのタンクイジェクタ、12はタンクイジェクタ11を上方に持ち上げるためのタンクカバー、12aはタンクカバー12を回動可能に支持された回転軸、12bはタンクカバー12に対し、タンクイジェクタ11が回動可能な回転軸、12cはタンクカバーを開閉する時につまむレバー、12dはタンクカバーの閉じた状態を保持するため、本体側の受け部(不図示)に引掛けるラッチ、13は大気連通流路、15はタンク挿入時に温度変化により、ヘッドからインクが漏れ出す事を防止するためのバッファ室、201は記録ヘッド、204はインクタンク、205はインク供給ユニット、206は記録ヘッドとインクタンクをつなぐチューブを示している。
【0038】
次に、図2を使って、インクタンクが装置にセットさせている状態を説明する。
【0039】
この状態では、インクタンク204は本体に挿入されており、インク供給針4先端の穴は、インクタンク204のインク内にあり、タンクとインク供給路が連通した状態である。同様に大気導入針5の穴も、それぞれがインクタンク204とバッファ室15を連通した状態である。
【0040】
これは第1、及び第2の装置接続手段としてのインク供給針4と大気導入針5の流路を開放することにより、記録ヘッド201から大気連通流路13までインク流路として閉じ、本体を傾けたり、振動を与えてもバッファ室15に入っているインクが大気連通路13にて本体廃インク吸収体10に導かれるだけで、廃インク吸収体10以外にインクが漏れることはない。また、温度、気圧変化等があっても、同様に、廃インク吸収体10以外にインクが漏れることはない。
【0041】
次にインクタンクが本体にセットさせている状態から、外された状態に至るまでの動きについて、図2、図3、図4を使って説明する。
【0042】
図2において、タンクカバー2のレバー2cを左方向に押し込むことで、ラッチ12dが外れるので、そのまま上方に持ち上げると、タンクカバー12は、回転軸12a中心に反時計周りに開く事になる。タンクイジェクタ11の上端は、タンクカバー12に設けた回転軸12b回りに回動可能なので、タンクカバーの開く操作に連動して、タンクイジェクタ11は上方に持ち上げられる事になる。タンクイジェクタ11のタンク受け面上方には、供給針穴シール材8及び大気針穴シール材9がインクタンク204下面と接した状態でいる。この供給針穴シール材8と大気針穴シール材9はインク供給針4及び大気導入針5に対し、適正な摩擦力で保持されており、インク供給針4の軸方向に重力が作用したり、あるいは振動や衝撃などにより弱い外力が作用しても、ずれる事はない。このタンクイジェクタ11の上方への移動に伴い、供給針穴シール材8及び大気針穴シール材9と、これらに上方に位置するインクタンク204は一緒に持ち上げられる。この上方への動きは、図3に示すように、タンクカバー12、あるいはタンクイジェクタ11が不図示のストッパに突き当たるまで、あるいは供給針穴シール材8と大気針穴シール材9が所定の位置でロック固定されるまで移動する。このストッパに突き当たる位置、あるいはロック位置とは、供給針穴シール材8と大気針穴シール材9が、インク供給針4及び大気導入針5の先端付近の穴を完全にシールできる位置であると、同時にインクタンク204がインク供給針4及び大気導入針5から抜ける位置でもある。図5にインク供給針4と供給針穴シール材8の位置関係示をしている。供給針シール材8の両端にはシール性と保持力を高めるために、インク供給針の全周に沿って、針外径より、小さめの内径の細いリブが設けられている。
【0043】
または、図6に示すように、インク供給針の穴の上下(場合によっては、片方でもよい)に、円周方向に絞りを設けることにより、シール性を確保しつつ、シール材の保持力を増加させる事ができる。また、シール性を高めるために、シール材の両端のリブを2つ以上に増やすことも効果的である。
【0044】
タンクイジェクタで持ち上げられて、保持された位置は様々な要因で、上下方向にばらつく可能性もあり、各シール材のシール長は穴径に対し、余裕をみた寸法、例えば、2倍程度の寸法にする方が望ましい。
【0045】
図4は、その後、インクタンクを取り除き、タンクカバーを閉じた状態である。この状態では、インク供給針4、大気導入針5はともに、先端の穴が、供給針穴シール材8、大気針穴シール材9により、塞がれている。
【0046】
この供給針穴シール材8と大気針穴シール材9はインク供給針4及び大気導入針5に対し、適正な保持力で保持されており、インク供給針4の軸方向に重力が作用したり、あるいは振動や衝撃などにより弱い外力が作用しても、ずれる事はない。
【0047】
以上のインクタンクを抜く動作によって、記録ヘッド201から大気導入針シール材8までのインク供給路は、記録ヘッド201のノズル出口のメニスカスを除けば、密閉状態となり、内部のインクは、静止している状況にある。
【0048】
メニスカスとは細い管内、または管出口にできる、液体表面が作る曲面の事で、ガラス管と水のように両者間の付着力が強いと液体表面がくぼみ、ガラス管と水銀のように両者間の付着力が弱ければ、盛り上がる事になる。
【0049】
記録ヘッド等の極細管にできるメニスカスの力はかなり強いもので、実験結果によると、衝撃加速度2G程度の振動でも壊れることはなかった。仮に、衝撃加速度2G以上の振動や衝撃が作用しヘッドのメニスカスが破壊しても、記録ヘッド201のノズル面には、ノズル面全体を覆うようにキャップ(不図示)が設けられているために、ノズルからあふれたインクが外部に漏れる事は無い。
【0050】
また温度、気圧変化に関しても、同様に、ある程度の容積膨張は記録ヘッド201のメニスカス力で保持できる。仮に、保持できなくなり、メニスカスが破壊してもインクが外部に漏れる事はない。
【0051】
一方、反対側のインク供給針4側は、針の穴は塞いでいるので、振動、衝撃、温度、気圧変化等により、インクが漏れる事はない。
【0052】
また、大気導入針5も、インクタンクを抜くと同時に針穴を塞いでおり、大気導入針5を含む、大気連通流路13までの区間のインクは、やはり静止した状態になる。また温度変化等による、容積変化がおきても(特にバッファ室17)、大気連通路13を介して、廃インク吸収体10に導かれるだけなので、問題ない。
【0053】
次に、インクタンク204が外された状態の装置に、タンクを装着する動作について、図4、図3、図2を使って簡単に説明する。
【0054】
図4において、インク供給針4及び大気導入針5に対し、供給針穴シール材8及び大気針穴シール材9は適正な保持力により、保持されており、多少の衝撃、振動では、ズレ落ちないようになっている。この状態から、タンクカバー12を所定の手順に沿って開けると、タンクイジェクタ11のタンク受け面が、供給針穴シール材8及び大気針穴シール材9に接する位置まで移動してくる。その状態のインク供給ユニット205に対し、インクタンク204を入れると、インク供給針4及び大気導入針5は、インクタンク204の下部のゴム栓6、7に突き当たる事にある(図3)。
【0055】
その後、タンクカバー12を回転軸12a中心に時計回りに回転させていくと、タンクカバー12がインクタンク上面に突き当たるまではタンクイジェクタ11のみが下がっていく。タンクカバー12がインクタンク204に接触した後、さらに押し込むと、インクタンク204が供給針穴シール材8と大気針穴シール材9を下方に押し込むことになり、これらの動きはタンクカバー12のラッチ12dが引掛るまで続く(図2)。
【0056】
この状態ではインクタンク204は本体に挿入されており、インク供給針4の穴はインクタンク204のインク内にあり、タンクとインク供給路が連通した状態である。同様に大気導入針5の穴も、それぞれがタンクとバッファ室を連通した状態である。
【0057】
これは第1、及び第2の装置接続手段としてのインク供給針4と大気導入針5の流路を開放することにより、記録ヘッド201から大気連通流路13までインク流路として閉じ、本体を傾けたり、振動を与えてもバッファ室15に入っているインクが大気連通路13にて本体廃インク吸収体10に導かれるだけで、廃インク吸収体10以外にインクが漏れることはない。また、温度、気圧変化等があっても、同様に、廃インク吸収体10以外にインクが漏れることはない。
【0058】
以上構成にする事によって、インクタンクの有無に関わらず、どの方向に本体を傾けて輸送しても、インクが本体外部にもれることはない。また同様に、温度、気圧などによってもインクが本体外部に漏れることはない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】第1の実施例のインクジェット記録装置の概略の構成を示す斜視図
【図2】第1の実施例のインクジェット記録装置のインク供給系の説明図(インクタンク装着時)
【図3】第1の実施例のインクジェット記録装置のインク供給系の説明図(インクタンク非装着時)
【図4】第1の実施例のインクジェット記録装置のインク供給系の説明図(インクタンク非装着時)
【図5】第1の実施例の供給針穴シール材
【図6】第1の実施例の供給針穴シール材
【図7】従来のインクジェット記録装置におけるインク供給系の説明図
【符号の説明】
【0060】
201 記録ヘッド
202 キャリッジ
203 搬送ローラ
204 メインタンク
205 インク供給ユニット
206 インク供給チューブ
207 回復ユニット
3 弁
4 第一の装置接続手段としてのインク供給針
5 第二の装置接続手段としての大気導入針
6 第1のタンク接続手段としてのゴム栓
7 第2のタンク接続手段としてのゴム栓
8 供給針穴シール材
9 大気針穴シール材
10 廃インク吸収体
11 タンクイジェクタ
12 タンクカバー
13 大気連通流路
15 バッファ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置に対して着脱自在なインクタンクはインクタンク単体で密閉状態、装置側の2つの装置接続手段を挿入すると連通状態となる2つのタンク接続手段が設けられ、第1のタンク接続手段には記録ヘッドへインクを供給するインク供給路に連通する第1の装置接続手段が挿入連通され、第2のタンク接続手段には大気と連通した大気連通室に連通する第2の装置接続手段が挿入連通され、インクタンクを装置にセットすると、インクタンクの内部を経由してインク供給路と大気連通室が連通する構成において、
第1の装置接続手段と第2の装置接続手段の夫々に対し、連通状態と密閉状態を作ることができる、第1のシール手段と第2のシール手段を具備し、
前記インクタンクの着脱行為に連動し、第1の装置接続手段、もしくは第2の装置接続手段の一方、あるいは両方の装置接続手段と、それに対応する、第1のシール手段、あるいは第2のシール手段が相対的な位置関係を変えて、インク供給路もしくは大気連通室に連通する連通状態と、密閉させる密閉状態の2つの状態を作れるように構成し、インクタンクが本体に装着させていない場合、第1の装置接続手段、第2の装置接続手段は密閉状態にする事を特徴とするインク供給部を備えたインクジェット記録装置。
【請求項2】
インクタンクを取り出す事ができるイジェクト機構を有する構成において、インクタンクの取り出し動作に連動し、前記イジェクト機構が前記第1のシール手段と第2のシール手段を移動させることを特徴とする請求項1記載のインク供給部を備えたインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクタンクの装着動作に連動し、インクタンクが前記第1のシール手段と第2のシール手段を移動させることを特徴とする請求項2記載のインク供給部を備えたインクジェット記録装置。
【請求項4】
第1の装置接続手段、第2の装置接続手段の密閉状態の位置において、第1の装置接続手段、第2の装置接続手段に対し、前記第1のシール手段、及び、第2のシール手段の保持力を増加させる事を特徴とする請求項3記載のインク供給部を備えたインクジェット記録装置。
【請求項5】
各色インクタンクごとに独立して可動する機構を備えたこと特徴とする請求項3、または請求項4記載のインク供給部を備えたインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−168153(P2006−168153A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362902(P2004−362902)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】