説明

インク滴噴射方法およびインク滴噴射装置

【課題】 噴射するインク液滴の大きさを、中玉と、該中玉のほぼ半分程度の小玉と、前記中玉のほぼ2倍の大玉の3種類とするインク滴噴射方法において、それぞれのインク液滴の液滴量を一定に維持すると共に、インク液滴の大きさが異なってもインク液滴間での噴射速度を合致させて、それぞれの大きさのインク液滴の着弾位置の精度を向上することが可能なインク滴噴射方法を提供することである。
【解決手段】 予め所定の噴射速度で前記小玉を噴射する小玉用駆動電圧パルスを設定しておき、前記小玉用駆動電圧パルスの駆動電圧にてそれぞれの大きさの前記インク液滴を噴射すると共に、前記中玉と前記大玉に対応するそれぞれの噴射パルスおよび噴射安定化パルスのパルス幅とこれら二つのパルス間の休止している時間幅を所定の時間とすることで、前記小玉の噴射速度と合致する噴射速度で、それぞれの所定の大きさの前記インク液滴を噴射する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式によるインク滴噴射方法およびインク滴噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式による印字装置であるインクジェットプリンタヘッドは、インク供給源からインク供給通路を介してヘッドユニットのインク供給口へインクを供給し、該ヘッドユニットに装着されるプレート型の圧電アクチュエータにより、多数のノズル孔と連通する圧力室に所定の圧力を選択的に付与して、前記ノズル孔からそれぞれのインクを吐出する構成とされている。
【0003】
前記インクジェット方式は原理が単純であり、多階調化やカラー化が容易であると共に、印字に使用するインク液滴のみを噴射するドロップ・オン・デマンド型の印字装置が、噴射効率の良さやランニングコストの安さ等から急速に普及している。
【0004】
前記印字装置を構成するインク噴射装置の一例を図4(a)(b)に示す。図4(a)に示すインク噴射装置200は、この紙面厚み方向に延びる細長い溝形状のインク室213とインクの入らない空間215とを側壁217を挟んで複数配列したアクチュエータ基板201と、カバープレート202からなる。その側壁217は、側壁の高さ方向に相互に反対方向P1,P2に分極された下部壁211と、上部壁209とからなっている。各インク室213の長さ方向の一端は、ノズル218を有し、他端にはインクを供給するマニホールドを有する。空間215のマニホールド側の端部はインクが浸入しないように閉鎖されている。各側壁217の両側面には電極219、221が金属層として設けられている。具体的には、インク室213を挟んで隣接する両側壁217、217と、その各両側の電極219、221を、一組のアクチュエータとして、インク室213内側の側壁217の全ての電極219が接地され、また空間215側の空間内電極221、221は、電気的に接続されて、駆動信号を与える出力回路に接続されている。
【0005】
そして、インク室213を挟んで隣接する空間内電極221に、出力回路が電圧を印加することによって、側壁217の上下各部が、インク室213の容積を増加する方向に圧電厚みすべり変形する。例えば図4(b)に示すようにインク室213bを駆動する場合には、全てのインク室内電極219を接地した状態で該インク室213bを挟んで隣接する空間内電極221c、221dに電圧Vが印加されると、側壁217c、217dに矢印V方向の電界が発生し、側壁217c、217dの上下各部がそれぞれインク室213bの容積を増加する方向に圧電厚みすべり変形する。このときノズル218b付近を含むインク室213b内の圧力が減少する。この状態を圧力波のインク室213内での片道伝播時間Tだけ維持する。すると、その間図示しないマニホールドからインクが供給される。
【0006】
なお、上記片道伝播時間Tはインク室213内の圧力波が、インク室213の長手方向に伝播するのに必要な時間であり、インク室213の長さL(不図示:紙面の厚み方向の長さ)とこのインク室213内部のインク中での音速aによりT=L/aと決まる。
【0007】
圧力波の伝播理論によると、上記の電圧の印加からちょうどT時間がたつとインク室213内の圧力が逆転し、正の圧力に転じるが、このタイミングに合わせて空間内電極221c、221dに印加されている電圧を0(V=0)に戻す。
【0008】
すると、側壁217c、217dが変形前の状態に戻り、インクに圧力が加えられる。そのとき、前記正に転じた圧力と、側壁217c、217dが変形前の状態に戻ることにより発生した圧力とが加え合わされ、比較的高い圧力がインク室213bのノズル218b付近の部分に生じて、インク液滴がノズル218bから噴射される。
【0009】
さらに詳しく説明すると、上記の電圧の印加から電圧を0(V=0)に戻すまでの時間が前記片道伝播時間Tからずれると、インク液滴を噴射するためエネルギー効率が低下し、前記片道伝播時間Tのほぼ偶数倍となったときには全く噴射が行われなくなるので、通常上記の電圧の印加から電圧を0(V=0)に戻すまでの時間は、前記片道伝播時間Tに一致した場合に最もエネルギー効率が高くインク液滴の飛翔速度は最大となるため、少なくともほぼ奇数倍とすることが望ましい。
【0010】
近年、階調表現のために、噴射するインク液滴の大きさを可変にすることが望まれている。この場合に印字品質を向上させるために噴射するインク液滴の大きさを、大玉、中玉、小玉の3種類とし、これらのインク液滴の大きさを安定して確実に噴射することが必要である。
【0011】
そのために、インクが充填されたインク流路の容積を変化させるためのアクチュエータに駆動電圧パルスを印加してインクノズルからインク液滴を吐出させ、1画素分の印字を1回から複数回のインク液滴の吐出により形成する際に、前記駆動電圧パルスを、インクを噴射する噴射パルスとインク内の圧力波振動を抑制する噴射安定化パルスとから構成して、前記噴射パルスおよび前記噴射安定化パルスのパルス幅とこれら二つのパルス間の休止している時間幅を制御することで、噴射するインク液滴の大きさを、大玉、中玉、小玉の3種類としたインク滴噴射方法が既に公開されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−301206号公報(第1−11頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
階調印字のための大玉用,中玉用,小玉用の各々の駆動パルス信号における少なくとも1つの噴射パルスおよび少なくとも1つの噴射安定化パルスの各々の立ち上がりのタイミングおよびパルス幅(すなわち時間幅)を求める場合、従来では、まず、基準となる中玉を作成し、その中玉を作成した際の駆動パルス信号のプロフィールを基に、小玉,大玉の液滴量がそれぞれ中玉の液滴量の略半分程度,略2倍程度となるように、小玉用,大玉用のそれぞれの駆動パルス信号における少なくとも1つの噴射パルスおよび少なくとも1つの噴射安定化パルスの立ち上がりのタイミング及びパルス幅が決定される。なお、その場合、中玉用の駆動パルス信号における少なくとも1つの噴射パルスの各々のパルス幅は、前述の片道伝搬時間Tに一致した噴射時間1Tとなるようなパルス幅とされる。
【0013】
したがって、例えば、1つの噴射パルスを有する中玉用の駆動パルス信号に基づいて小玉用および大玉用の駆動パルス信号を求める場合、片道伝搬時間Tよりも短いパルス幅をもつ1つの噴射パルスを有する小玉用駆動パルス信号が得られ、また、それぞれが片道伝搬時間Tよりも短いパルス幅をもつ2つの噴射パルスを有する大玉用駆動パルス信号が得られる。
【0014】
噴射する液滴量を小玉、中玉、大玉の三種類として階調印字を行ったところ、印字品質が必ずしも一定でないことが判った。そのために、噴射する液滴の大きさを変えて階調印字を行う場合でも、さらに印字精度を向上することが望まれる。
【0015】
印字品質が不良となる原因には、大玉、中玉、小玉のそれぞれのインク液滴の液滴量の誤差や、各液滴の噴射速度(飛翔速度とも言う)が相違している場合が考えられる。そのために、大玉、中玉、小玉のそれぞれのインク液滴の液滴量を一定に維持することに加えて、それぞれの噴射速度を合致させることが望まれる。
【0016】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、噴射するインク液滴の大きさを、中玉と、該中玉のほぼ半分程度の小玉と、前記中玉のほぼ2倍の大玉の3種類とするインク滴噴射方法において、それぞれのインク液滴の液滴量を一定に維持すると共に、インク液滴の大きさが異なってもインク液滴間の噴射速度を合致させて、それぞれの大きさのインク液滴の着弾位置の精度を向上することが可能なインク滴噴射方法あるいはインク滴噴射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、インク流路の容積を変化させるアクチュエータに複数のパルスを有する駆動電圧パルスを印加してインクノズルからインク液滴を吐出させ、1画素分の印字を少なくとも1つのインク液滴の吐出により形成する際に、噴射するインク液滴の大きさを、所定の液滴量を有する中玉と、該設定液滴量より少ない液滴量の小玉と、前記設定液滴量より多い液滴量の大玉の3種類とするインク滴噴射方法であって、前記1画素分の印字をする際には、前記小玉を形成するために、少なくとの1つの液滴を所定の噴射速度で噴射すべく第1駆動パルス信号を設定しておき、前記中玉若しくは大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、前記第1駆動パルス信号と同じ電圧を有し、前記中玉若しくは前記大玉に対応する複数のパルスの各々の幅および複数のパルスの各々間の休止している時間幅を、それぞれ、所定の時間とした第2駆動パルス信号を設定しておき、前記小玉の噴射速度と合致する噴射速度で、それぞれの大きさの前記インク液滴を噴射する構成としたことを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、形成するドットの大きさによらず、例えば、請求項3にあるような、所定の液滴量を有する中玉と、該中玉のほぼ半分程度の液滴量の小玉と、前記中玉のほぼ2倍程度の液滴量の大玉の3種類を形成するとしても、それぞれのインク液滴の大きさを維持することができると共に、液滴の噴射速度をほぼ同じとしているので、それぞれの大きさのインク液滴の着弾位置の精度が向上して、印字品質を良好に保つことができる。
請求項2に係る発明は、中玉を形成する際には、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、中玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種である中玉用信号をアクチュエータに印加して液滴を噴射させ、大玉を形成する際には、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、大玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種であって、前記中玉用信号とは異なる大玉用信号をアクチュエータに印加して液滴を噴射させることを特徴としているので、きめ細かい設定および制御が可能となる。
請求項4に係る発明は、前記駆動電圧パルスを、少なくとも1つのインク液滴を噴射するための少なくとも1つの噴射パルスと、インク室内の圧力波振動を抑制するための少なくとも1つの噴射安定化パルスとから構成したことを特徴としている。
上記構成を有する請求項4に係る発明によれば、いずれの駆動電圧パルスも噴射パルスと噴射安定化パルスがセットになっているため、常に安定した液滴の吐出を可能としている。
【0019】
請求項5に係る発明は、インク内の圧力波の片道伝播時間をTとした時に、前記第1駆動パルス信号を設定した後で、前記第2駆動パルス信号に含まれる噴射パルスのパルス幅を前記片道伝播時間Tより短く設定したことを特徴としている。
また、請求項6に係る発明は、インク内の圧力波の片道伝播時間をTとした時に、前記第1駆動パルス信号を設定した後で、前記第2駆動パルス信号に含まれる噴射パルスのパルス幅を前記片道伝播時間Tより長く設定したことを特徴としている。
【0020】
上記の構成を有する請求項5若しくは6に係る発明によれば、中玉と大玉との噴射パルスを前記片道伝播時間Tより短いパルス幅と長いパルス幅とのいずれかを選択して設定することができ、広範囲なプログラム設定が可能となる。
【0021】
請求項7に係る発明は、前記第1駆動パルス信号の前記噴射パルスのパルス幅、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.75T−0.6T−0.35T)の時に、前記中玉の前記第2駆動パルス信号の前記噴射パルスのパルス幅、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.74T−1.725T−1.525T)、もしくは(1.3T−1.725T−1.525T)であることを特徴としている。
【0022】
上記の構成を有する請求項7に係る発明によれば、小玉の噴射速度と合致した噴射速度の中玉を、片道伝播時間Tより短いパルス幅と長いパルス幅とのそれぞれに設定することができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、前記大玉の第2駆動パルス信号が、二つの前記噴射パルスと一つの前記噴射安定化パルスを含み、第一噴射パルスのパルス幅、該第一噴射パルスと第二噴射パルスとの間の休止している時間幅、該第二噴射パルスのパルス幅、前記第二噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.72T−1T−0.72T−1.925T―1.4T)、もしくは(1.6T−1T−1.6T−1.925T―1.4T)であることを特徴としている。
【0024】
上記の構成を有する請求項8に係る発明によれば、小玉の噴射速度と合致した噴射速度の大玉を、片道伝播時間Tより短いパルス幅と長いパルス幅とのそれぞれに設定することができる。
上記の目的を達成するために請求項9に係る発明は、設定量のインクによって構成される中玉、前記設定量より少ない量のインクによって構成される小玉、前記設定量より多い量のインクによって構成される大玉、の中から選ばれるドットを形成するインク噴射装置であって、ノズルと、前記ノズルに繋がるインク室と、前記インク室の容積を変化させることによってインク液滴をノズルから噴射させるアクチュエータと、1画素に相当するドットを形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、複数のパルスを有する駆動パルス信号をアクチュエータに印加するコントローラとを備え、前記コントローラが、小玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、小玉用に設定され、前記液滴を設定噴射速度で噴射させる第1駆動パルス信号を前記駆動パルス信号としてアクチュエータに印加する小玉形成制御部と、中玉あるいは大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、中玉あるいは大玉用に設定され、前記第1駆動パルス信号と同じ電圧を有し、複数のパルスの各々の幅および複数のパルスの各々間の休止時間が、それぞれ所定値となるようにされており、前記中玉あるいは大玉を形成する液滴を、前記小玉の前記設定噴射速度と等しくして噴射させる第2駆動パルス信号を前記駆動パルス信号としてアクチュエータに印加する小玉以外形成制御部と、を備えることを特徴としている。
上記の構成を有する請求項9に係る発明によれば、形成するドットの大きさによらず、ドットを構成する液滴の噴射速度を略同じとすることが出来る。その結果、インク液滴の着弾位置の精度が向上し、印字品質を良好に保つことが可能となる。
請求項10に係る発明は、前記小玉以外形成制御部は、中玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、中玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種である信号をアクチュエータに印加する中玉形成制御部と、大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、大玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種であって、前記中玉用の信号とはことなる信号をアクチュエータに印加する大玉形成制御部とを備えることを特徴としており、中玉用の制御部と大玉用の制御部とを有するので、きめ細かい設定および制御が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、形成するドットの大きさによらず、ドットを構成する液滴の噴射速度を略同じとすることが出来る。その結果、インク液滴の着弾位置の精度が向上し、印字品質を良好に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図1から図3に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明に係る駆動電圧パルスの波形を示しており、(a)には小玉用の駆動電圧パルスを示し、(b)には中玉用の駆動電圧パルスを示し、(c)には大玉用の駆動電圧パルスを示している。図2はそれぞれの駆動電圧パルスにおける噴射速度を示す一覧図である。図3はインク噴射装置を示しており、インク室が変形していない状態を示す断面図である。
【0028】
本実施の形態のインク噴射装置は、アクチュエータと流路ブロックから構成される。このうちアクチュエータは、図4に基づいて説明した圧電体層のすべり変形を利用したアクチュエータ200の変わりに、圧電体の縦振動を利用したアクチュエータ100を有している。
【0029】
このアクチュエータ100は、図3に示すように、その表面に電極層が形成された七枚の圧電体層121a、122a、121b、122b、121c、122c、121dおよび電極層の形成がされていない二枚の圧電体層123a、123bの積層体である。このアクチュエータ100は、複数のインク室113が形成された流路ブロック130に各インク室113に跨るように固定されている。これらの圧電体層は、図3の下(インク室113側)から上に向かって順に積層されている。
【0030】
電極の形成されている圧電体層のうち、最下層に位置する圧電体層121aをはじめとして、圧電体層121b、121c、121dには、各インク室113に跨るようにして延在する共通電極111bが形成されている。また、圧電体層122a、122b、122cの表面には、対応するインク室113に個別に対向するように個別電極111aが形成されている。
【0031】
これらの圧電体層が交互に積層することで、個別電極111aと共通電極111b間に電圧が印加されたときに、実際に伸縮変形する活性部(圧力発生部)124がアクチュエータ100中のインク室113側に形成される。この活性部124は、図3中において破線で囲まれた領域に相当する。一方、インク室113と反対側に位置する二枚の圧電体層123a、123bは、活性部124の変位を規制するように働き、全体として、電圧が印加されることによりアクチュエータ100はインク室113側に変位するようになっている。なお、圧電体層の厚さはそれぞれ30μmで、アクチュエータ100としては約270μmの厚さを有している。
【0032】
一方、このアクチュエータ100が固定される流路ブロック130の表面には、上述のように複数のインク室113が形成されている。この流路ブロック130は、主にインク室113が形成された流路部材130aとインクを吐出する複数のインクノズル118が形成されたノズルプレート130bとから構成されている。インク室113は、全体として、紙面に垂直な方向に細長い矩形形状を有しており、一端がインクノズル118に連通し、他端が図示しないマニホールドに連通している。またその外形寸法は、深さ40μm、幅250μmおよび長さ1700μmである。
【0033】
本実施の形態のインク噴射装置は、個別電極111aと共通電極111bとの間に電圧が印加されると、図3中では破線で囲まれた領域の圧電体層が圧電効果により積層方向に伸びる。これによって、アクチュエータ100は、インク室113に向かって凸状に変形するので、インク室113の容積が減少する。本実施の形態においては、所謂「引き打ち(fill-before-fire)」の駆動方式が採用されている。この「引き打ち」の駆動方式によれば、通常時(すなわち、非噴射状態)においては、全ての個別電極111aに電圧を印加した状態を維持して、全てのインク室113の容積が減少した状態に維持される。そして、駆動指令を受けた際においては、インク液滴吐出のタイミングの直前に、前記指令に対応する個別電極に印加された電圧を解除して(すなわち、印加電圧を0にして)、対応するインク室の容積を元の容積に戻す(つまり、容積を増加させる)。容積が元に戻ることで、マニホールドからインク室にインクが引き込まれる。その後再び電圧が個別電極111aに印加させて、またインク室の容積を減少させることで、当該インク室からインク液滴を吐出させる。尚、背景技術の欄でも記述したが、「引き打ち」の駆動方式では、吐出の前にインクの供給がなされ、そのインク供給時の圧力変動に重畳するようなタイミングで吐出方向への圧力変動(インク室の容積減少)を行うことで、効率的なインクと出を行うことも出来る。
【0034】
上述のようにインク室113の容積を変化させるために、アクチュエータ100には駆動電圧パルスが印加される。前記駆動電圧パルスは、前記通常時において個別電極に印加されている電圧を0にして少なくとも1つのインク液滴を噴射するための少なくとも1つの噴射パルスと、前記通常時において個別電極に印加されている電圧を0にしてインク内の圧力波振動を抑制する噴射安定化パルスとから構成している。本実施の形態の説明においては、前記少なくとも1つの噴射パルスにおけるパルス幅および前記噴射安定化パルスにおけるパルス幅は、いずれも、個別電極111aに電圧が印加されていない(電圧0)の期間を意味している。また、噴射パルスと噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅および前記噴射パルス各々の間の休止している時間幅は、いずれも、個別電極111aに電圧が印加されている期間を意味している。
【0035】
前記噴射安定化パルスは、少なくとも一つの噴射パルスの印加により発生し、そして残留した前記インク室113内の圧力波振動を減少させるためのものである。この噴射安定化パルスは、例えば、噴射パルスにより生じるインク室113内の圧力が上昇するタイミングでインク室113の容積を元に戻して圧力を下げ、次に圧力が低下するタイミングでインク室113の容積を減少させて圧力を増加させる様に作用して、この作用により前出の残留圧力波振動を抑制するものである。
【0036】
本実施の形態においては、噴射パルスの後で噴射安定化パルスを発しているので、吐出するインク液滴の液滴量を常に一定に維持しておくことができる。
【0037】
そのために、噴射するインク液滴の量を変化するには、印加する電圧を変化するか、もしくは、噴射パルスのパルス幅を変化するか、もしくは、噴射パルスと噴射安定化パルスとのタイミングを変化することで行うことができる。
【0038】
上記のように、インク液滴の量を増減すると共に、その液滴量を一定に維持することは可能であるが、ただ、それぞれ所定の液滴量を有する小玉、中玉、大玉のインク液滴を噴射しても、それぞれの液滴の噴射速度が合致していないと、印字状態が安定しない。
【0039】
次に本実施の形態に係る小玉、中玉、大玉のそれぞれのインク液滴を噴射する駆動電圧パルスについて図1および図2により説明する。
【0040】
図1(a)には小玉用の駆動電圧パルスを示しており、波形A1は従来の駆動電圧パルスであり、波形A2は本発明に係る新規の駆動電圧パルスを示している。また、図1(b)には中玉用の駆動電圧パルスを示しており、波形B1は従来の駆動電圧パルスであり、波形B2と波形B3は本発明に係る新規の駆動電圧パルスを示している。さらに、図1(c)には大玉用の駆動電圧パルスを示しており、波形C1は従来の駆動電圧パルスであり、波形C2と波形C3は本発明に係る新規の駆動電圧パルスを示している。
【0041】
従来は中玉用の駆動電圧パルスB1を基準として、それぞれ、小玉用駆動電圧パルスA1と大玉用駆動電圧パルスC1とを設定していた。
【0042】
そのために、中玉用の駆動電圧パルスB1における噴射パルスEのパルス幅E2を、前記片道伝播時間Tに合致した時間とし、印加電圧をV1としている。また、この時に、前記中玉のほぼ半分程度の液滴量である小玉用の駆動電圧パルスA1の噴射パルスEのパルス幅E1は0.75Tであり、前記片道伝播時間Tよりも短くしている。さらに、前記中玉のほぼ二倍程度の液滴量である大玉用の駆動電圧パルスC1は、第一噴射パルスおよび第二噴射パルスのパルス幅E3が共に1.2Tであり、その際の、印加電圧は共に中玉用の駆動電圧パルスB1と同じくV1(例えば23ボルト)としている。
【0043】
従来の小玉用の駆動電圧パルスA1は、噴射パルスEのパルス幅E1、前記噴射パルスEと噴射安定化パルスGとの間の休止している時間幅F1、前記噴射安定化パルスGのパルス幅G1を(0.75T−0.6T−0.35T)としている。
【0044】
また、従来の中玉用の駆動電圧パルスB1は、噴射パルスEのパルス幅E2、前記噴射パルスEと噴射安定化パルスGとの間の休止している時間幅F2、前記噴射安定化パルスGのパルス幅G2を(1T−1.725T−1.525T)としている。
【0045】
さらに、従来の大玉用の駆動電圧パルスC1は、第一噴射パルスのパルス幅E3、該第一噴射パルスと第二噴射パルスとの間の休止している時間幅F3、該第二噴射パルスのパルス幅E3、前記第二噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅F4、前記噴射安定化パルスのパルス幅G3をそれぞれ(1.2T−1T−1.2T−1.925T―1.4T)としている。
【0046】
また、上記した従来の液滴量はそれぞれ、小玉が5pl(ピコリットル)で中玉が10plで大玉が20plである。
【0047】
しかし、この時の噴射速度を計測したところ、印加電圧V1が23ボルトで気温25℃のときに、図2に示すように、従来の小玉(波形A1)の噴射速度が6.8m/sであり、中玉(波形B1)の噴射速度が9.2m/sであり、大玉(波形C1)の噴射速度が9.2m/sであった。つまり、中玉と大玉とは、所望される噴射速度である9m/sとなっているが、小玉の噴射速度がそれよりも遅くなっていることが明らかとなった。
【0048】
この噴射速度と液滴量は、ノズル出口から0.5mm地点のインク液滴をストロボ撮影することで噴射速度を計測すると共に、多数回の噴射実験後のインク容積を計測して、該容積から一回分のインク液滴量を求めることができる。
【0049】
前記小玉用の駆動電圧パルスA1は噴射パルスEのパルス幅E1(0.75T)の後直ちに(0.6T後に)噴射安定化パルスGを付与しているので、噴射された液滴が引き戻される影響力を受けることでその噴射速度が減少している。
【0050】
このように、従来のインクの噴射方法では、中玉の噴射条件を基準にして5plという少量の液滴を噴射するには、噴射速度の低下が避けられない。さらに微小の液滴が要求される高画質化の要求に対応するためには、噴射パルスEのパルス幅E1をさらに狭くすればよいが、ますます中玉や大玉からの噴射速度の乖離が大きくなる。さらに、噴射パルスEのパルス幅E1を狭くすると、インクの噴射特性が不安定になることもあり、実用上限界が近い。もちろん、噴射速度の低下を補うために、小玉を噴射するときだけ駆動電圧を高くする方法もあるが、これには新たに別の駆動電源を用意する必要があるので、大型や高コスト化という点で不利となる。
【0051】
ところで、この噴射速度を高速にするには、駆動電圧パルスの波形を変更するかもしくは、印加電圧を高くすることで行うことができる。
【0052】
しかし、予め定めた前記駆動電圧パルスの波形を変更するよりも、印加電圧を変える方が容易である。また、駆動電源は少ない方が回路への負担が軽くなるばかりか、コスト面でも有利となる。そこで、噴射する液滴の大きさによらずに、共通の電源を用いることとし、小玉の噴射速度が、前記中玉や前記大玉の噴射速度であり、所望される噴射速度である約9m/sとなる印加電圧を求めることにした。
【0053】
そこで、上記の小玉用のパルス波形を守って、小玉の噴射速度を上記の中玉と大玉の噴射速度に合致させる印加電圧を求めることにし、従来の印加電圧V1(例えば23ボルト)に対して印加電圧V2(例えば25ボルト)を得た。
【0054】
次いで、この印加電圧V2にてそれぞれ10plの液滴量を有する中玉と、20plの液滴量を有する大玉との駆動電圧パルスを求めたところ、それぞれ噴射パルスのパルス幅を変えるだけで、所望の液滴量と噴射速度を得ることができた。さらに、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅と前記噴射安定化パルスのパルス幅とをそのまま維持した波形であり、中玉の駆動電圧パルスB2、B3、および、大玉の駆動電圧パルスC2、C3を得ることができた。
【0055】
このように、印加電圧をV1(例えば23ボルト)からV2(例えば25ボルト)に変更すると共に、それぞれ噴射パルスのパルス幅を前記片道伝播時間Tより短いパルス幅、もしくは前記片道伝播時間Tより長いパルス幅に変えるだけで、中玉用の駆動電圧パルスB2、B3、および、大玉用の駆動電圧パルスC2、C3を得ることができる。
【0056】
本実施の形態に係る中玉の駆動電圧パルスB2は、その噴射パルスのパルス幅E4、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅F2、前記噴射安定化パルスのパルス幅G2が(0.74T−1.725T−1.525T)である。さらに駆動電圧パルスB3の、噴射パルスのパルス幅E5、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅F2、前記噴射安定化パルスのパルス幅G2が(1.3T−1.725T−1.525T)である。
【0057】
上記のように、駆動電圧パルスA2で小玉を噴射する際に、前記片道伝播時間Tより短いパルス幅E4の噴射パルスを用いる駆動電圧パルスB2と、前記片道伝播時間Tより長いパルス幅E5の噴射パルスを用いる駆動電圧パルスB3との二種類の駆動電圧パルスで、前記小玉のほぼ二倍程度の液滴量の中玉を噴射することができる。
【0058】
次に、本実施の形態に係る大玉の駆動電圧パルスC2は、第一噴射パルスのパルス幅E6、該第一噴射パルスと第二噴射パルスとの間の休止している時間幅F3、該第二噴射パルスのパルス幅E6、前記第二噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅F4、前記噴射安定化パルスのパルス幅G3が(0.72T−1T−0.72T−1.925T―1.4T)である。さらに駆動電圧パルスC3の、第一噴射パルスのパルス幅E7、該第一噴射パルスと第二噴射パルスとの間の休止している時間幅F3、該第二噴射パルスのパルス幅E7、前記第二噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅F4、前記噴射安定化パルスのパルス幅G3が(1.6T−1T−1.6T−1.925T―1.4T)である。
【0059】
上記のように、駆動電圧パルスA2で小玉を噴射し、駆動電圧パルスC2あるいはC3で大玉を噴射する際に、前記片道伝播時間Tより短いパルス幅E6の噴射パルスを用いる駆動電圧パルスC2と、前記片道伝播時間Tより長いパルス幅E7の噴射パルスを用いる駆動電圧パルスC3との二種類の駆動電圧パルスで、前記中玉のほぼ二倍程度の液滴量の大玉を噴射することができる。
【0060】
この時のそれぞれのインク液滴の噴射速度を前述した通りの方法で計測したところ図2に示すように、小玉(波形A2)の噴射速度が9.0m/sであり、波形B2の中玉の噴射速度が9.1m/sであり、波形C2の大玉の噴射速度が9.2m/sであった。また、波形B3の中玉の噴射速度が9.3m/sであり、波形C3の大玉の噴射速度が9.2m/sであった。つまり、小玉と中玉と大玉とのいずれの大きさのインク液滴でもその噴射速度をほぼ9m/sに合致させることができる。
【0061】
上記のように、1画素分の印字を1回から複数回のインク液滴の吐出により形成する際に、噴射するインク液滴の大きさを、所定の液滴量を有する中玉と、該中玉のほぼ半分程度の液滴量の小玉と、前記中玉のほぼ2倍程度の液滴量の大玉の3種類とするインク滴噴射方法において、前記駆動電圧パルスを、インクを噴射する噴射パルスEとインク内の圧力波振動を抑制する噴射安定化パルスGとから構成すると共に、噴射特性が他に比べて不安定になりやすい小玉に対して、予め所定の噴射速度で前記小玉を噴射する小玉用駆動電圧パルスV2を設定しておき、前記小玉用駆動電圧パルスの駆動電圧にてそれぞれの大きさの前記インク液滴を噴射すると共に、前記中玉と前記大玉に対応するそれぞれの前記噴射パルスEおよび前記噴射安定化パルスGのパルス幅とこれら二つのパルス間の休止している時間幅Fを所定の時間とすることで、噴射するインク液滴の大きさを、中玉と、該中玉のほぼ半分程度の小玉と、前記中玉のほぼ2倍の大玉としても、それらの液滴の大きさを維持すると共にその噴射速度を、インクジェット方式の印字に適した噴射速度に合致することができ、それぞれのインク液滴の着弾位置の精度を向上して、印字品質を良好とすることができる。
【0062】
さらに、インク内の圧力波の片道伝播時間をTとした時に、前記小玉用駆動電圧パルスを設定した後で、前記中玉と大玉との前記噴射パルスをそれぞれ前記片道伝播時間Tより短いパルス幅または前記片道伝播時間Tより長いパルス幅の両方に設定することができ、少なくとも一方の駆動電圧パルスを用いてプログラムを設定可能であり、広範囲なプログラム設定が可能となる。
【0063】
本実施の形態のインク滴噴射装置は、図5に示すコントローラ300を備えている。コントローラ300は、ハードウェア的には、CPU,ROM,RAM等を含むコンピュータと、駆動回路とを含んで構成される。コントローラ300はすでに公知のハード構成のものを採用すればよい。ここでは、そのハード構成についての説明は省略する。コントローラ300は、接続されている電源302から供給される電力を利用して、入力されるプリントデータ信号に基づいてアクチュエータ100に出力する駆動パルス信号を発生させる。
【0064】
図中では、コントローラ300は、機能ブロックにて示されている。コントローラ300は、小玉を形成するための駆動パルス信号をアクチュエータ100に出力する機能部としての小玉形成制御部304と、小玉以外のドットを形成するための駆動パルス信号をアクチュエータ100に出力する機能部としての小玉以外形成制御部306を備えている。その小玉以外形成制御部306は、中玉,大玉のそれぞれを形成するための駆動パルス信号をアクチュエータ100に出力するための機能部として、それぞれ、中玉形成制御部308,大玉形成制御部310を備えている。小玉形成制御部304,中玉形成制御部308,大玉形成制御部310は、形成するドットに応じて選択的に機能し、前述したような態様の駆動パルス信号を発生させ、その信号をアクチュエータ100に出力する。駆動パルス信号についての詳しい説明は、上述したため、ここでは省略する。
【0065】
なお、上述した実施の形態では、インク液滴を吐出するために、所謂「引き打ち(fill-before-fire)」の駆動方式を採用している。しかしながら、通常時(すなわち、非噴射状態)においては個別電極に電圧を印加せず、駆動指令を受けた際においては個別電極に選択的に電圧を印加させ、対応するインク室の容積を減少させて当該インク室からインク液滴を吐出させ、その後速やかに電圧を解除してインク室の容積を戻してマニホールドからインクを供給する、所謂「押し打ち(fire-before-fill)」の駆動方式を採用しても、本願発明は同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る駆動電圧パルスの波形を示しており、(a)には小玉用の駆動電圧パルスを示し、(b)には中玉用の駆動電圧パルスを示し、(c)には大玉用の駆動電圧パルスを示している。
【図2】それぞれの駆動電圧パルスにおける噴射速度を示す一覧図である。
【図3】本実施の形態のインク噴射装置を示しており、インク室が変形していない状態を示す断面図である。
【図4】別のインク噴射装置を示しており、(a)はインク流路が変形していない状態を示す断面図であり、(b)はインク流路が変形した状態を示す断面図である。
【図5】コントローラの機能を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
A1 駆動電圧パルス(従来の小玉)
A2 駆動電圧パルス(新規の小玉)
B1 駆動電圧パルス(従来の中玉)
B2 駆動電圧パルス(新規の中玉)
B3 駆動電圧パルス(新規の中玉)
C1 駆動電圧パルス(従来の大玉)
C2 駆動電圧パルス(新規の大玉)
C3 駆動電圧パルス(新規の大玉)
E 噴射パルス
E1〜E7 パルス幅
G 噴射安定化パルス
T 片道伝播速度
100 アクチュエータ
113 インク室
118 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク流路の容積を変化させるアクチュエータに複数のパルスを有する駆動電圧パルスを印加してインクノズルからインク液滴を吐出させ、1画素分の印字を少なくとも1つのインク液滴の吐出により形成する際に、噴射するインク液滴の大きさを、所定の液滴量を有する中玉と、該設定液滴量より少ない液滴量の小玉と、前記設定液滴量より多い液滴量の大玉の3種類とするインク滴噴射方法であって、
前記1画素分の印字をする際には、
前記小玉を形成するために、少なくとの1つの液滴を所定の噴射速度で噴射すべく第1駆動パルス信号を設定しておき、
前記中玉若しくは大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、前記第1駆動パルス信号と同じ電圧を有し、前記中玉若しくは前記大玉に対応する複数のパルスの各々の幅および複数のパルスの各々間の休止している時間幅を、それぞれ、所定の時間とした第2駆動パルス信号を設定しておき、
前記小玉の噴射速度と合致する噴射速度で、それぞれの大きさの前記インク液滴を噴射する構成としたことを特徴とするインク滴噴射方法。
【請求項2】
中玉を形成する際には、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、中玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種である中玉用信号をアクチュエータに印加して液滴を噴射させ、大玉を形成する際には、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、大玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種であって、前記中玉用信号とは異なる大玉用信号をアクチュエータに印加して液滴を噴射させることを特徴とする請求項1に記載のインク噴射方法。
【請求項3】
前記小玉の液適量は前記中玉の設定液適量の略半分であり、前記大玉の液適量は前記中玉の設定液適量の略2倍であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク噴射方法。
【請求項4】
前記駆動電圧パルスを、少なくとも1つのインク液滴を噴射するための少なくとも1つの噴射パルスと、インク室内の圧力波振動を抑制するための少なくとも1つの噴射安定化パルスとから構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク噴射方法。
【請求項5】
インク内の圧力波の片道伝播時間をTとした時に、前記第1駆動パルス信号を設定した後で、前記第2駆動パルス信号に含まれる噴射パルスのパルス幅を前記片道伝播時間Tより短く設定したことを特徴とした請求項1〜4のいずれかに記載のインク滴噴射方法。
【請求項6】
インク内の圧力波の片道伝播時間をTとした時に、前記第1駆動パルス信号を設定した後で、前記第2駆動パルス信号に含まれる噴射パルスのパルス幅を前記片道伝播時間Tより長く設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク滴噴射方法。
【請求項7】
前記第1駆動パルス信号の前記噴射パルスのパルス幅、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.75T−0.6T−0.35T)の時に、前記中玉の前記第2駆動パルス信号の前記噴射パルスのパルス幅、前記噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.74T−1.725T−1.525T)、もしくは(1.3T−1.725T−1.525T)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインク滴噴射方法。
【請求項8】
前記大玉の第2駆動パルス信号が、二つの前記噴射パルスと一つの前記噴射安定化パルスを含み、第一噴射パルスのパルス幅、該第一噴射パルスと第二噴射パルスとの間の休止している時間幅、該第二噴射パルスのパルス幅、前記第二噴射パルスと前記噴射安定化パルスとの間の休止している時間幅、前記噴射安定化パルスのパルス幅が(0.72T−1T−0.72T−1.925T―1.4T)、もしくは(1.6T−1T−1.6T−1.925T―1.4T)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク滴噴射方法。
【請求項9】
設定量のインクによって構成される中玉、前記設定量より少ない量のインクによって構成される小玉、前記設定量より多い量のインクによって構成される大玉、の中から選ばれるドットを形成するインク噴射装置であって、
ノズルと、前記ノズルに繋がるインク室と、前記インク室の容積を変化させることによってインク液滴をノズルから噴射させるアクチュエータと、1画素に相当するドットを形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、複数のパルスを有する駆動パルス信号をアクチュエータに印加するコントローラとを備え、
前記コントローラが、
小玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、小玉用に設定され、前記液滴を設定噴射速度で噴射させる第1駆動パルス信号を前記駆動パルス信号としてアクチュエータに印加する小玉形成制御部と、
中玉あるいは大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射させるべく、中玉あるいは大玉用に設定され、前記第1駆動パルス信号と同じ電圧を有し、複数のパルスの各々の幅および複数のパルスの各々間の休止時間が、それぞれ所定値となるようにされており、前記中玉あるいは大玉を形成する液滴を、前記小玉の前記設定噴射速度と等しくして噴射させる第2駆動パルス信号を前記駆動パルス信号としてアクチュエータに印加する小玉以外形成制御部と、
を備えることを特徴とするインク滴噴射装置。
【請求項10】
前記小玉以外形成制御部は、中玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、中玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種である信号をアクチュエータに印加する中玉形成制御部と、大玉を形成するために、少なくとも1つの液滴を噴射すべく、大玉用に設定された前記第2の駆動信号の一種であって、前記中玉用の信号とはことなる信号をアクチュエータに印加する大玉形成制御部とを備えたことを特徴とする請求項11記載のインク滴噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−56241(P2006−56241A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209930(P2005−209930)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】