インク相変化の間の圧力と温度との協調方法
【課題】相変化インクの通過を可能にするように構成されるインクジェットプリンタのインク流路構成を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリは、相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路を含む。インク流路へは、インクへ圧力を加えるために加圧ユニットが流体的に結合される。加えられる圧力は、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中に制御ユニットによって制御される。相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液相にあり、かつインク流路の別の領域におけるインクの別の部分は固相にある。液相から固相へ、または固相から液相への転移の間、少なくともインクの液相部分へ定圧または可変圧力が加えられることが可能である。
【解決手段】インクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリは、相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路を含む。インク流路へは、インクへ圧力を加えるために加圧ユニットが流体的に結合される。加えられる圧力は、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中に制御ユニットによって制御される。相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液相にあり、かつインク流路の別の領域におけるインクの別の部分は固相にある。液相から固相へ、または固相から液相への転移の間、少なくともインクの液相部分へ定圧または可変圧力が加えられることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述される実施形態は、インクジェット印刷に用いられる方法及びデバイスに関する。実施形態の中には、相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路を含むインクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリに関するものがある。インク流路へは、インクへ圧力を加えるために加圧ユニットが流体的に結合されることが可能である。制御ユニットは、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力とインクの温度とを協調させるために用いられる。相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液相にあり、かつインク流路の別の領域におけるインクの別の部分は固相にある。インク流路におけるインクが液相から固相へ転移している、または固相から液相へ転移している時間中、液相にあるインクの少なくとも一部に圧力が加えられてもよい。制御ユニットに関連して動作する加圧ユニットは、インクへ定圧を加えても、可変圧力を加えてもよい。
【0002】
1つまたは複数の能動的または受動的な熱素子は、インクを加熱または冷却するように構成されてもよい。能動的な熱ユニットが使用されれば、制御ユニットは、能動的な熱ユニットによってインクへ供給される熱エネルギーを制御するように用いられてもよい。制御ユニットは、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成するように熱素子を制御することができる。インク流路を画定するプリントヘッドアッセンブリのコンポーネント上には、1つまたは複数の温度センサが位置合わせされてもよい。温度センサは、インクの温度によって変調される電気信号を発生する。制御ユニットは電気信号を受信し、かつこの電気信号に応答してインクへ加えられる圧力を制御する。
【0003】
実施形態の中には、インクジェットプリンタの操作方法を包含するものがある。圧力は、インクジェットプリンタのインク流路内のインクへ加えられる。圧力は、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中のインクの温度と協調される。インクの相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの第1の部分は液相にあり、かつインク流路の第2の領域におけるインクの第2の部分は固相にある。圧力を温度に協調させることは、印加される圧力及びインク温度の一方または双方を制御することを含んでもよい。インクの温度は、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成する、または修正するように制御されてもよい。
【0004】
実施形態の中には、プリントヘッドアッセンブリを包含するものがある。プリントヘッドアッセンブリは、インクを印刷媒体の方へ予め決められたパターンに従って選択的に噴出するように構成されるインクジェットを有するプリントヘッドを含む。インク流路は、プリントヘッドアッセンブリのコンポーネントによって画定され、かつ相変化インクによるインク流路に沿ったインクジェットへの通過を可能にするように構成される。またプリントヘッドアッセンブリは、インクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニットも含む。制御ユニットはインクへ加えられる圧力を制御し、かつインク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力とインクの温度とを協調させる。
【0005】
実施形態の中には、インクジェットプリンタのインク内のボイドを低減する方法を含むものがある。インクジェットプリンタのインク流路におけるインクの温度は、インクが液相から固相へ転移している時間中に決定される。インクへ加えられる圧力は、転移の間にインクの温度と協調される。圧力を協調させることは、可変圧力を温度の関数として協調させることを含む。転移の間にインク内の温度勾配を生成かつ/または修正するためには、1つまたは複数の熱素子が制御されてもよい。圧力は、温度勾配と協調されることが可能である。例えば、熱素子は、インク流路へ段階的なゾーン加熱を行なうように制御されてもよい。段階的なゾーン加熱は、温度勾配を生成するために、インク流路の第1のゾーンを加熱することと、第1のゾーンの加熱後にインク流路の第2のゾーンを加熱することを含む。上述の方法は、相変化インクジェットプリンタにおける実装に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ボイド及び泡低減機能を組み込んだインクジェットプリンタの部分を示す内部ビューである。
【図2】ボイド及び泡低減機能を組み込んだインクジェットプリンタの部分を示す内部ビューである。
【図3】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図4】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図5】インク流路におけるボイド及び泡を低減するためのアプローチを組み込んだプリントヘッドアッセンブリを示す図である。
【図6】インク流路に沿った温度勾配を示す。
【図7】インク流路に沿った温度勾配を示す。
【図8】リザーバにおいてインク流路へ加えられる圧力を示す図である。
【図9】インク流路へ受動的に圧力を加えるための様々なアプローチを示す。
【図10】インク流路へ受動的に圧力を加えるための様々なアプローチを示す。
【図11】インクが位相を変えつつある間にインク流路におけるボイド及び泡を低減するためのプロセスを示すフロー図である。
【図12】インクが固相から液相へ転移しているプリントヘッドアッセンブリの動作の間にインク内の泡及びボイドを低減するためのプロセスを示すフロー図である。
【図13】インクの一部分を固相状態にさせかつインクの別の部分を液相状態にさせる温度勾配の存在を包含した泡低減動作の後の印刷品質と、温度勾配なしの標準的な泡低減の後の印刷品質とを比較したグラフである。
【図14】リザーバにおけるインクを液体状態にさせ、一方でプリントヘッドにおけるインクを固体のままにさせる温度勾配の存在を包含する泡低減動作の間にインクジェット及びベントから膨出するインクを示す写真である。
【図15】泡低減プロセス後の図14のプリントヘッドを示す写真である。
【図16】インク流路に沿って温度勾配が存在する時間中に圧力の印加を包含する泡及びボイドの低減を示すフロー図であり、温度勾配は、インクの第1の部分を固相状態にさせかつインクの第2の部分を液相状態にさせる。
【図17】インク流路に沿った温度勾配の存在及び圧力印加と温度との協調を包含する泡及びボイドの低減を示すフロー図である。
【図18】インク流路におけるインクの液相から固相への転移に伴う圧力と温度との協調を示す。
【図19】インクが液相から固相へ転移している時間中に圧力を加えかつ圧力と温度とを協調させることによって達成された印刷品質結果を、圧力の印加なしで達成された印刷品質結果と比較したものである。
【図20】インク内のボイド及び泡を低減するためにジェットスタック内に生成され得る温度勾配を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
インクジェットプリンタは、液体インクの小さい液滴を予め決められたパターンに従って印刷媒体上へ噴出することによって動作する。実装によっては、インクは、用紙等の最終印刷媒体上へ直に噴出される。実装によっては、インクは、例えば印刷ドラムである中間印刷媒体上へ噴出され、次いで中間印刷媒体から最終印刷媒体へ転写される。インクジェットプリンタの中には、インクジェットを供給するために液体インクのカートリッジを使用するものがある。プリンタの中には、室温では固体であって印刷媒体表面へ噴射される前に溶融される相変化インクを用いるものがある。室温で固体である相変化インクは、効果的には、インクが、液体インクの場合に典型的に用いられるパッケージまたはカートリッジなしに固形で移送されかつインクジェットプリンタ内へ装填されることを可能にする。実装によっては、固体インクは、溶融インクを中間ドラム上へページ幅のパターンで噴射するページ幅プリントヘッド内で溶融される。中間ドラム上のパターンは、加圧ニップを介して用紙上へ転写される。
【0008】
液体状態では、インクは、インクジェット経路の通過を遮る可能性がある泡及び/または粒子を含む場合がある。例えば、泡は、固体インクプリンタにおいて、プリンタがパワーダウンされる際のインクの凝固及びプリンタが使用のためにパワーアップされる際のインクの溶融に伴って発生するインクの凝固−溶融サイクルに起因して形成される可能性がある。インクは、凝固して固体になるにつれて収縮し、インク内には後に空気で充填されるボイドが形成される。固体インクがインク噴射に先行して溶融するとき、ボイド内の空気は液体インク内の泡になる可能性がある。
【0009】
実施形態の中には、圧力の印加をインク流路内のインクの温度と協調させることによって相変化インク内のボイド及び/または泡を減らすことを包含するものがある。事例によっては、印加される圧力は、液体インクをボイド内へ押しやり、かつ気泡をインク噴射口またはベントへと押しやる働きをすることができる。圧力は、例えば加圧された空気またはインクである圧力源から印加されてもよく、かつインク流路に沿った1つまたは複数のポイントにおいて印加されることが可能である。事例によっては、圧力と温度との協調は、インクが予め決められた温度値に達することに応答して圧力を加えることを包含する。実装によっては、圧力の印加は、インク流路に沿って温度勾配を生成かつ/または保持することと協調されることも可能である。圧力は継続的であることも、可変性であることも可能であり、かつ/または印加圧力の量は、温度及び/または温度勾配の関数であることが可能である。実装によっては、圧力は、インク流路におけるインクの相転移の間に複数の圧力パルスで印加されることが可能である。
【0010】
図1及び図2は、本明細書で論じているようなボイド及び泡低減アプローチを組み込んだインクジェットプリンタ100の部分を示す内部ビューである。プリンタ100は、ドラム120をプリントヘッドアッセンブリ130に対して移動させかつ用紙140をドラム120に対して移動させるように構成される移送機構110を含む。プリントヘッドアッセンブリ130は完全に、または部分的にドラム120の長さに沿って延びてもよく、かつ例えば1つまたは複数のインクリザーバ131、例えば各色毎に1つのリザーバ、と、幾つかのインクジェットを含むプリントヘッド132とを含んでもよい。ドラム120が移送機構110によって回転されるにつれて、プリントヘッド132のインクジェットはインクジェット開口を介してインクの液滴をドラム120上へ所望されるパターンで溶着する。用紙140がドラム120の周りを進むにつれて、ドラム120上のインクのパターンは加圧ニップ160を介して用紙140へ転写される。
【0011】
図3及び図4は、ある例示的なプリントヘッドアッセンブリを示すさらなる詳細図である。当初リザーバ131(図2)内に含まれる溶融インクの経路は、ポート210を介してプリントヘッドのメインマニホールド220へ流入する。図4において最も良く分かるように、事例によっては、1つのインクカラーにつき1つのマニホールド220の方式で4つのメインマニホールド220が重ね合わされて存在し、かつこれらのマニホールド220は各々編み込まれたフィンガマニホールド230へ接続する。インクは、フィンガマニホールド230を通過して、インクジェット240内へ進む。図4に示されているマニホールド及びインクジェットの幾何学的配置は矢印の方向へ反復され、所望されるプリントヘッドの長さ、例えばドラム全幅が達成される。事例によっては、プリントヘッドはインク液滴を噴出させるために圧電トランスデューサ(PZT)を用いるが、インク液滴を噴出させる他の方法も既知であって、このようなプリンタもまた本明細書に記述されているボイド及び泡低減アプローチを用いてもよい。
【0012】
図5は、本明細書において論じられるボイド及び泡低減アプローチのうちの幾つかを示す、ある例示的なプリントヘッドアッセンブリ500の断面図である。プリントヘッドアッセンブリ500は、相変化インクを含むように構成されるインクリザーバ510を含む。リザーバは、ジェットスタックを含むプリントヘッド520へ流体的に結合される。ジェットスタックは、先に論じたようにマニホールド及びインクジェットを含んでもよい。図5に示されているプリントヘッドアッセンブリ500において、インク流路は、リザーバ510、サイホン515、プリントヘッド吸込路517及びプリントヘッド520等のプリントヘッドアッセンブリ500の様々なコンポーネントによって画定されるインクの流体経路である。プリントヘッドはジェットスタック525を含み、かつプリントヘッド520内のインク流路は、図3及び図4に示されているように、メインマニホールド、フィンガマニホールド及びインクジェット等であるジェットスタック525を含む。インク流路はリザーバ510を横断し、サイホン515、プリントヘッド吸込路517、プリントヘッド520、ジェットスタック525を介してプリントヘッドの自由表面530へ至る。プリントヘッドアッセンブリ500は、2つの自由表面530、531を有する。一方の自由表面531は、リザーバ510におけるインク流路の入力側に存在する。もう一方の自由表面530は、ジェットスタック525のベント及び/または噴射口におけるインク流路の出力側に存在する。プリントヘッドアッセンブリ500内にインク流路を形成する1つまたは複数の流路構造体は、流路構造体間にある程度の熱減結合を達成するために、空隙540または他の絶縁物によって互いから分離されてもよい。
【0013】
プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿ってインクを加熱及び/または冷却するように構成される1つまたは複数の熱素子543−547を含む。図5に描かれているように、第1の熱素子546はリザーバ510上またはその近くに位置合わせされてもよく、かつ第2の熱素子547はプリントヘッド520上またはその近くに位置合わせされてもよい。熱素子543−547は、例えばインク流路を能動的に加熱または能動的に冷却するユニットである能動的な熱素子546、547であってもよく、かつ/または例えばパッシブヒートシンク、パッシブヒートパイプ等である受動的な熱素子543−545であってもよい。実装によっては、熱素子543−547は、制御ユニット550によって起動、停止かつ/または別途制御されてもよい。制御ユニットは、例えば、マイクロプロセッサベースの回路ユニット及び/またはプログラム可能論理アレイ回路または他の回路エレメントを備えてもよい。制御ユニット550は、プリンタの制御ユニットに統合されてもよく、スタンドアロンユニットであってもよい。実装によっては、制御ユニット550は、プリントヘッドアッセンブリの泡低減動作の間にインク流路へ加えられる温度及び圧力を制御するように構成される制御ユニットを備えてもよい。泡の低減は、プリンタの起動時、停止時または運転中の他の任意の時間に発生してもよい。
【0014】
能動的な熱素子546、547の場合、制御ユニット550は能動的な熱素子546、547を起動しかつ/または停止することができ、かつ/または制御ユニット550はその他、所望される設定温度を達成するために能動的な熱素子546、547のエネルギー出力を修正してもよい。能動的な熱素子はシステムに熱エネルギーを能動的に供給し、かつ冷却エレメントであっても、加熱エレメントであってもよい。能動的な冷却は、例えばガスまたは液体等の冷却材の流れを制御することによって、かつ/または圧電冷却器の使用を介して達成されてもよい。能動的な加熱は、抵抗加熱または誘導加熱によって達成されてもよい。幾つかの受動的な熱素子545の場合、制御ユニット550は、受動的な熱素子545を起動、停止かつ/または別途制御してもよい。例えば、受動的な熱素子545の制御は、制御ユニット550により、ヒートシンクフィンを散開または引っ込める信号を発生することによって達成されてもよい。実装によっては、プリントヘッドアッセンブリ500は、制御ユニット550によって制御されない1つまたは複数の熱素子543、544も含んでもよい。プリントヘッドは、例えば1つまたは複数の断熱性の熱素子543によって断熱されてもよい。
【0015】
場合により、プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿って、またはプリントヘッドアッセンブリ500上の他の場所に位置合わせされる1つまたは複数の温度センサ560を含んでもよい。温度センサ560は、インク(またはインク流路を形成するコンポーネント510、515、517、529、525)の温度を検出し、かつ検出された温度によって変調された電気信号を発生することができる。事例によっては、制御ユニット550は、熱ユニット545−547の動作を制御するために、センサ信号を用いて熱ユニット545−547へフィードバック信号を発生する。
【0016】
場合により、プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿った1つまたは複数の位置でインクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニット555を含む。加圧ユニット555は、少なくとも1つの圧力源と、インク流路へアクセスするために結合される1つまたは複数の入力ポート556と、インク流路へ加えられる圧力を制御するために使用されることが可能な1つまたは複数のバルブ557とを含んでもよい。圧力源は、例えば圧縮空気または圧縮インクを含んでもよい。加圧ユニット555は、制御ユニット550によって制御可能であってもよい。実装によっては、制御ユニット550は、温度センサの信号及び/または検出された圧力信号を基礎として加圧ユニットを制御するためにフィードバック信号を発生してもよい。
【0017】
ボイド及び泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路に沿って温度勾配を生成することを包含するものがある。インクは、液相から固相へ、または固相から液相へと位相を変えていてもよい。インクが液相から固相へ転移する場合、インクは収縮し、固相インク内にボイドを残す。これらのボイドは、最終的に空気で満たされる場合があり、これにより、インクが固相から液相へ転移する際にインク内に気泡が形成される。インクが温度勾配の存在下で位相を変える間、インク流路の第1の領域におけるインクの第1の部分は液相にあってもよく、一方でインク流路の第2の領域におけるインクの第2の部分は固相にある。
【0018】
インクが液相から固相へ変わる際のインク流路に沿った温度勾配は、インクが凝固する間に形成されるボイドの数を減らすために生成されてもよい。例えばプリントヘッドに近い第1の領域においてインクの第1の部分を固体に保持し、かつ例えばリザーバに近い第2の領域においてインクの別の部分を液体に保持することは、相転移の間に形成されるボイドの数を低減するためにリザーバ領域からの液体インクが凝固フロントに近いインク部分へ流れ込むことを可能にする。
【0019】
インクが固相から液相へ変わりつつあるときのインク流路に沿った温度勾配は、凝固インク内に存在する空気を除去するために、例えばパージプロセスの間に用いられてもよい。インク内のボイドは、凝固の間に、液体インクのポケットが凝固インクによって取り込まれる際に形成される。液体インクのポケットが凝固するにつれて、インクは収縮し、ボイドが形成される。ボイドは、ボイドをプリントヘッドアッセンブリの自由表面へ繋ぐインク内のマイクロチャネルを介して空気で満たされる可能性がある。温度勾配は、インクが固相から液相へ変わりつつある時間中にインク流路内で生成されることが可能である。温度勾配は、リザーバにおける、かつリザーバに近いインクは液体であって、プリントヘッドの方に近いインクは固体であるといったものであってもよい。温度勾配は、リザーバの方に近い液相インクからの液体インクが固相インク内のエアポケットへと流れ込み、空気を凝固インクからプリントヘッドアッセンブリの自由表面の1つへと繋がるマイクロチャネルを介して押し出すことを可能にする。
【0020】
図6は、プリントヘッドアッセンブリ内に温度勾配を生成するように制御ユニット(不図示)によって制御可能な複数の熱素子645を含むプリントヘッドアッセンブリ600を示す。図6に描かれているように、複数の熱素子645は、リザーバ610、サイホン615及び/またはプリントヘッド入口617を含むインク流路部分に沿って位置合わせされてもよい。或いは、または追加的に、熱素子645は、例えばジェットスタックのマニホールドの内部、上またはその近くを含むプリントヘッド620の内部、上またはその近くに位置合わせされる場合もある。
【0021】
図6が示すように、複数の熱素子645は、インク流路に沿って生成される温度勾配のゾーン制御を可能にするようにインク流路に沿って配置されることが可能である。複数の熱素子645を用いるゾーン別の熱制御は、インク流路の様々な領域の制御された加熱または冷却を包含し、かつインク流路に沿った温度勾配のより正確な制御を可能にする。事例によっては、温度勾配は、図6の矢印が示すように、リザーバ610において、またはその近くでより高いインク温度、THを達成し、かつプリントヘッド620において、またはその近くでより低いインク温度、TLを達成するように制御される。このシナリオでは、リザーバ610における、またはリザーバ610の方に近いインクの温度はインクの融点より上に保持されることが可能であり、よってこのゾーンにおけるインクは液体である。プリントヘッド620における、またはプリントヘッド620の方に近いインクの温度はインクの融点より低く、よって凝固される。図6は、リザーバ610におけるより高い温度からプリントヘッド620におけるより低い温度へ転移する温度勾配を示しているが、代替実装におけるゾーン別の熱制御は、リザーバにおけるより低い温度からプリントヘッドにおけるより高い温度へ転移する温度勾配を生成してもよい。
【0022】
図7は、二股に分けられたもう1つの温度勾配を生成するためのゾーン別熱制御に用いられてもよい複数の熱素子745を示す。図7に描かれているように、インク流路の第1の領域における第1の温度勾配は、リザーバ710内のゾーンにおけるより高い温度、TH1からサイホンエリア715内の第1のゾーンにおけるより低い温度、TL1へ転移する。第2の温度勾配は、サイホンエリア715内の第2のゾーンにおけるより高い温度、TH2からプリントヘッド720の自由表面730に近いより低い温度、TL2へ転移する。サイホン715の第2のゾーンは、通気孔(図7には示されていない)へ繋がるより大きい容量の領域であってもよい。二股に分けられた温度勾配は、液体インクをプリントヘッドアッセンブリの複数の自由表面へ向かって移動させることに役立つ場合がある。
【0023】
ボイド及び泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中に圧力源からの圧力をインクに加えることを含むものがある。圧力源は、例えば加圧されたインク、空気または他の物質であってもよい。圧力は、インク流路に沿った任意のポイントにおいて加えられることが可能であり、かつ制御ユニットによって制御されることが可能である。事例によっては、制御ユニットは、圧力の印加をインクの温度と協調して制御する。例えば、圧力は、システムの熱力学を基礎としてインクがある特定の温度であることが予期される時点で、または温度センサによりインク流路のある特定のロケーションにおけるインクが予め決められた温度に達していることが示される時点で加えられることが可能である。事例によっては、圧力の量及び/またはロケーションは、例えばインク流路のゾーン別加熱または冷却によって達成される温度勾配と協調して適用されることが可能である。
【0024】
図8は、インクが位相を変えつつある時間中のインクへの圧力870の印加を示す。例えば、事例によっては、リザーバ810内のインクをインクの溶融温度を超える温度、例えば90゜Cを超える温度にするために、リザーバヒータ845のみが起動される。リザーバヒータ845はリザーバ810内のインクが溶融するに足る高さの設定温度にまで到達されるが、設定温度はこのように高く、よって/またはプリントヘッド820内のインクも溶融するほど長くは保持されない。リザーバ810内のインクとプリントヘッド820内のインクとの十分な温度差は、リザーバ810内のインクは液体でありながらプリントヘッド820内のインクを凝固したままにするように保たれる。例えば、使用されるインク及びプリントヘッドアッセンブリのジオメトリに依存して、リザーバが90゜Cであるとき、リザーバ温度とプリントヘッド温度との温度差が約5゜Cから約15゜Cまでの範囲内であれば、リザーバインクが液体でありながらプリントヘッドインクは凝固して保たれる。リザーバ内のインクが液体でありかつプリントヘッド内のインクが凝固したままである間、圧力870は、例えばリザーバの自由表面831に加えられる。圧力870は、液体インクのリザーバ810から凝固インク内のボイド及びエアポケットへの移動を促進する。液体インクのボイド及びエアポケットへの移動はボイドを除去し、かつ凝固インク内に存在するマイクロチャネル(亀裂)を介して空気をプリントヘッドの自由表面830から押し出させる。
【0025】
図9及び図10は、インク流路におけるインクへの圧力を受動的に増大させるためのアプローチを示す。図9に描かれているように、インク流路の全てまたは一部はインクへの圧力を高めるために傾斜されてもよい。プリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントは、プリントヘッドアッセンブリ900のインク流路全体が図9において傾斜されているように傾けられる。他の実施形態では、インク流路の一部を画定するコンポーネントのみが傾斜されてもよい。プリントヘッドアッセンブリ900は、この傾斜を達成すべくプリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントを方向づけるように構成される配向機構975を含むことが可能である。実装によっては、プリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントは、インク流路内のインクに対する圧力を高めるために、インク相変化の間に1つの位置に方向づけられてもよい。コンポーネントは、例えばプリンタの運転中である他の時間期間中に別の位置に方向づけられてもよい。事例によっては、プリントヘッドの配向機構は、制御ユニットにより、例えばインク流路の温度、圧力及び/または温度勾配を基礎として制御されることが可能である。図9に示されているようなリザーバ910の傾斜は、インク内の泡をリザーバ910の自由表面まで上昇させるように実装される場合もある。
【0026】
図10は、インクへ加える圧力を高めるためのプロセスの別の例を描いている。この例において、リザーバ1010は先の、または通常のインクレベル1076を超えて過度に満たされ、これにより、プリントヘッドアッセンブリ1000のインク流路に沿って圧力が増大される。事例によっては、過充填インク1077は、プリンタのパワーアップシーケンスの間にリザーバ1010へ追加されてもよい。或いは、過充填インク1077は、プリンタのパワーダウンシーケンスの間にリザーバ1010へ追加されてもよい。
【0027】
先に論じたように、インク流路における温度勾配、インクの加圧及び/または温度、温度勾配及びボイド及び/または泡低減用圧力間の協調の使用は、インクが固相から液相へ転移しているとき、例えばプリンタのパワーアップシーケンスの間に行われてもよい。図11は、インクが固相から液相へ転移している時間中にボイド及び/または泡を低減するためのある例示的なプロセスを示すフロー図である。図11に示されているプロセスは、例えばプリンタのパワーアップに伴ってインク流路からボイド及び/または泡をパージするために用いられてもよい。1110、1120において、リザーバ及びプリントヘッドは位相シーケンスで加熱される。プリントヘッドの方へ近いインクがインクを凝固したままにする温度に保持されながら、まずリザーバがリザーバ内のインクを溶融する温度にまで加熱される。リザーバ内のインクとプリントヘッド内のインクとの間の温度勾配は、プリントヘッド自由表面におけるシステムの通気及びインク噴射口を介するインクフローシステムの減圧を促進する。1105における、リザーバ及びプリントヘッドの位相シーケンスでの加熱により生成される温度勾配は、ボイド内へのインクの半制御式移動及び泡の低減をもたらす。リザーバ及び/またはプリントヘッドの温度上昇速度は、ボイド/泡の最適な低減を達成するように制御される。1105においてインク流路沿いに温度勾配が生成された後、1130では、場合により、ボイド及び泡低減をさらに増進させるためにインクへ圧力が加えられてもよい。例えば、圧力の印加は、本明細書に記述されているもの等の1つまたは複数の能動的及び受動的加圧技法によって達成されてもよい。
【0028】
図12のフロー図には、上述のプロセスのさらに詳細なシーケンスが示されている。1210において、リザーバヒータは、約100゜Cの設定温度で起動される。1220において、リザーバは約8分で100゜Cに達するが、この時点でプリントヘッドの温度は約86゜Cである。次に、1230において、リザーバの設定温度が約115゜Cまで高められ、1240では、リザーバにおいてこの温度が約10分後に到達される。この時点で、プリントヘッドは約93゜Cである。この時点で、1250においてプリントヘッドヒータが起動される。1260では、プリントヘッドヒータの起動から約12分後に、例えば約4psigから10psigまでのパージ圧力がインクへ加えられる。このプロセスの実装により、泡低減動作の間にプリントヘッドからインクが滴ることが回避される。プリントヘッドヒータの起動前は、インクジェットにインクワックスの小玉が現出し、かつパージベントではインクワックスのより大きい玉が泡立ってガスの逃げを示している。プリントヘッドヒータの起動後は、インクワックスの玉はプリントヘッド内へ引っ込み、プリントヘッドの表面は清浄になる。図12に記述されているプロセスは、溶融範囲を有する混合体でありかつ典型的には約85゜Cで完全な液体であるインクに適用可能である。約12゜Cより大きい温度勾配は、リザーバ内のインクが液体であるときにプリントヘッドにおけるインクを凝固状態に保つ。
【0029】
図12に関連して記述されたプロセスによって生成される温度勾配は、ボイド/泡がインクシステムから押し出されることを可能にする。これに対して、温度勾配が存在しない場合、即ち、リザーバ及びプリントヘッドの双方が略同時に略同一温度まで加熱される場合、リザーバとプリントヘッドとの流体結合部、例えばプリントヘッドアッセンブリのサイホンエリアに空気が捕捉される可能性がある。インクが、例えば起動動作の間に固体状態から液体状態へ転移するとき、幾分かのインクはプリントヘッドから押し出されることがある。インクは、室温(20゜C)から115゜Cへの温度上昇に起因するインクの膨張(約18%)及びインクへの圧力を増大させるガスの膨張からの圧力によってプリントヘッドの外へ押し出される。「ドルーリング」と呼ばれる場合もあるプリントヘッドからのインクの垂れ落ちは望ましくなく、またインクを無駄にする。ドルーリングは、典型的には、プリントヘッドからの空気の一掃に効果的に寄与せず、かつ多色プリントヘッド上では、異なるカラーインクによるノズルの交差汚染を引き起こす。
【0030】
これに対して、インク流路に沿って温度勾配を生成する制御された温度上昇は、インクジェット及びプリントヘッドベントから滴下するインクを最小限に抑えてボイド及び泡がシステムから発散されることを可能にする。図11及び図12に示されているプロセスは、気泡を追い出すために固相インク内に形成されるマイクロチャネルを用いる。制御されたインクの流れ及び温度上昇からの加圧は、ボイドを排除しかつプリントヘッドを介してエアポケットを追い出す働きをし、よって印刷動作の間にインク内に存在する泡が低減される。
【0031】
インク内の泡は、間欠的なインク噴射、弱いインク噴射及び/またはプリントヘッドの1つまたは複数のインクジェットから印刷できない噴射を含む可能性がある印刷欠陥に繋がる、という理由で望ましくない。これらの望ましくない印刷欠陥を、本明細書では間欠的な、弱い、または欠落したイベント(IWM)と称する。本明細書において論じられる様々な実装は、インク内の泡に起因するIWM率を減じることに役立つ。IWM率は、泡低減方法の有効性の指針である。泡がインクジェットに取り込まれれば、ジェットは適正に発射せず、間欠的な、弱い、または欠落したジェットになる。
【0032】
図12に関連して論じられているようなインクの段階的加熱による温度勾配の生成を包む泡低減プロセスの有効性を、リザーバ及びプリントヘッド内のインクが同時に加熱される一般的な泡低減プロセスと比較した。泡の低減の間の段階的加熱及び同時的加熱の双方で、プリントヘッドアッセンブリは角度約33度で傾斜された。これらの試験において、間欠的な、弱い、または欠落した(IWM)印刷イベントの割合が泡低減プロセスの間にインクジェットから出射したインク質量の関数として決定された。望まれることは、低い出射インク質量及び低いIWM率の双方を達成することにある。図13は、試験の結果を比較したものである。図13から認識できるように、大部分の事例において、標準的な同時加熱による泡低減プロセスよりも、図12に描かれている段階的加熱による泡低減プロセスを用いる方が、少ない出射インク質量で所望されるIWM率を達成することが可能である。
【0033】
また、段階的加熱によるアプローチは、起動動作の間にプリントヘッドからインクが滴下することも回避する。図14の写真に描かれているように、プリントヘッドヒータの起動前、プリントヘッドのインクは93゜Cである。インクジェットにはインクの小玉が現出し、かつパージベントにはインクワックスのより大きい玉が泡立ってガスの逃げを示している。図15の写真は、プリントヘッドヒータが起動され、かつプリントヘッド内のインク温度が約115゜Cまで上昇された後のプリントヘッドを示している。インク玉はプリントヘッド内へ引っ込み、プリントヘッドの表面は清浄である。
【0034】
アプローチの中には、インクが液相から固相へ変わりつつある時間中にインクへ圧力をかけることを包含するものがある。図16のフロー図は、このプロセスを例示している。1610では、インクが液相から固相へ転移している時間中に、インク流路に沿って温度勾配が存在する。例えば、温度勾配は、流路のある領域におけるインクは液体であり、一方で流路の別の領域におけるインクは固体である、という類のものであってもよい。1620では、インクが液相から固相へ変わりつつある時間中にインクへ圧力が加えられる。圧力は、インクが溶融する際に気泡となる可能性もあるインク内のボイドを減じる働きをする。
【0035】
ボイド/泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中の温度と印加圧力との協調を包含するものがある。インクは、固相から液相へ変化していても、液相から固相へ変化していてもよい。インクが位相を変えつつある時間中、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液体であり、一方でインク流路の第2の領域におけるインクの別の部分は固体である。液体インクの加圧はインクをボイド内へと押しやり、かつ凝固インク内のチャネルを介して気泡を押し出す。印加圧力とインク温度との協調の実装は、インク流路に沿って温度勾配を生成するゾーン加熱を伴う場合も伴わない場合もある。
【0036】
図17のフロー図は、例えばプリンタの電源遮断シーケンスの間である、インク流路におけるインクが液相から固相へと位相を変えつつある時に、インク内のボイド/泡を低減するためのプロセスを示している。プロセスは、1710においてインクの温度を決定(または推定)することと、1740において温度と協調して圧力を加えることに依存する。事例によっては、インクの温度は、インクの温度を検出するために流路に沿って配置される温度センサを用いて決定される。事例によっては、インクの温度は、熱素子の設定温度及びプリントヘッドアッセンブリの熱応答関数を知ることによって推定されてもよい。場合により、1720において、インク流路に沿って温度勾配を生成しかつ/または保持するためにゾーン加熱/冷却が用いられてもよい。1730において、検出されたインク温度が予め決められた温度まで降下すれば、1740においてインクへ圧力が加えられる。
【0037】
実装によっては、インクへ可変圧力が加えられ、印加される圧力はインクの温度及び/またはインク流路の温度勾配と協調される。図18は、インクが液相から固相へ転移している時間中のリザーバの温度、プリントヘッドの温度及びインクへ加えられる圧力を含む3つのグラフを描いている。時間t=0では、プリントヘッド及びリザーバの双方でインク温度は115゜Cであり、かつインクはインク流路全体に渡って液体である。時間t=0において、リザーバとプリントヘッドとの間のインク流路内に温度勾配を生成するために、プリントヘッドヒータの設定温度は81.5゜Cへ調節され、リザーバヒータの設定温度は僅かに高い温度に調節される。インクが冷却するにつれて、リザーバ内のインクとプリントヘッド内のインクとの温度差は増大し、最終的に約12分で設定温度87゜C(リザーバ)及び81.5゜C(プリントヘッド)に到達する。約12分において、リザーバにおけるインクに約0.5psiの圧力が加えられる。プリントヘッド及びリザーバの温度が徐々に下がるにつれて圧力は増大されるが、プリントヘッドとリザーバとの間の温度勾配は保たれる。約16分では、リザーバの温度は86゜Cであって、プリントヘッドの温度は80゜Cであり、かつ圧力は8spiに増大される。プリントヘッド及びリザーバのヒータは止められ、圧力は、プリントヘッド及びリザーバの継続的な冷却に伴って約8分間、約8psiに保持される。
【0038】
図18に示されているような圧力と温度との協調を含むプロセスの有効性を、インクが凝固していく間にインクを加圧しない、または温度と圧力とを協調させない標準的な冷却プロセスと比較した。これらの試験では、間欠的な、弱い、または欠落した(IWM)印刷イベントの割合によって決定されるような泡形成の低減が、出射するインク質量の関数として決定された。望まれることは、低い出射インク質量及び低いIWM率の双方を達成することにある。図19は、試験の結果を比較したものである。図18から認識できるように、泡低減プロセスの間にインクへ圧力を加えることによって、少ない出射インク質量(即ち、パージ質量)で所望されるIWM率を達成することが可能である。この試験における装置は、約0.8gのインクを含むインクジェット及びフィンガマニホールド及び約1.4グラムのインクを含むインクジェットスタックを含んでいたことに留意されたい。冷却中に印加される圧力を用いた試験では、IWM率は、約1.2グラムのパージ質量の後に約19%から2%未満まで低下した。1.4グラムパージの後は、8ジェットが欠落したグループは存在しなかった。この試験は、出射するインクの量がジェットスタックの容量に等しいことから、サイホン領域の泡の低減における加圧凝固処置の有効性を例証している。ジェットスタック内のインクのみがパージされることから、これは、IWM印刷試験にサイホンからのインクが用いられることを意味する。サイホンからの泡の取り込みは、IWMイベントを引き起こす。取り込みは全く観察されないことから、これは、サイホンにほぼ泡が存在しないことの証拠である。
【0039】
図18に示されているプリントヘッドアッセンブリの冷却の温度/温度勾配/圧力プロファイルは、圧力と温度及び/またはプリントヘッドアッセンブリの温度勾配との協調の1つの例示である。圧力、温度及び温度勾配の値は、温度及び圧力の他の協調プロセスにおけるプリントヘッドアッセンブリの特性に従って他の値が選択されることも可能である。
【0040】
本明細書では、ボイド/泡を低減するための温度勾配の使用を示す例を、リザーバとプリントヘッドとの間に温度勾配を生成することに関連して論じた。或いは、または追加的に、ボイド/泡を低減するためにプリントヘッドまたはジェットスタック内の温度勾配が実装されてもよい。例えば、図20を参照すると、プリントヘッドのジェットスタック2021内に1つまたは複数の温度勾配が生成されてもよい。例えば、温度勾配は、ジェットスタックの縁へ向かってより高い温度、THを、かつインク噴射口及びベントが位置決めされるジェットスタックの中心へ向かってより低い温度、TLを含んでもよい。所定のプリントヘッド設計では、温度勾配をジェットスタックのz方向に沿って生成することが可能である場合もある。しかしながら、多くのプリントヘッドのジェットスタック設計はz方向に薄く、かつインク流路は主としてy方向である。温度勾配は、例えば、ジェットスタックの異なる部分における例えばヒートシンク及び/または断熱材である別々の受動的な熱素子を使用することにより、能動的な加熱または冷却エレメントを用いて生成されてもよい。
【技術分野】
【0001】
本明細書に記述される実施形態は、インクジェット印刷に用いられる方法及びデバイスに関する。実施形態の中には、相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路を含むインクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリに関するものがある。インク流路へは、インクへ圧力を加えるために加圧ユニットが流体的に結合されることが可能である。制御ユニットは、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力とインクの温度とを協調させるために用いられる。相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液相にあり、かつインク流路の別の領域におけるインクの別の部分は固相にある。インク流路におけるインクが液相から固相へ転移している、または固相から液相へ転移している時間中、液相にあるインクの少なくとも一部に圧力が加えられてもよい。制御ユニットに関連して動作する加圧ユニットは、インクへ定圧を加えても、可変圧力を加えてもよい。
【0002】
1つまたは複数の能動的または受動的な熱素子は、インクを加熱または冷却するように構成されてもよい。能動的な熱ユニットが使用されれば、制御ユニットは、能動的な熱ユニットによってインクへ供給される熱エネルギーを制御するように用いられてもよい。制御ユニットは、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成するように熱素子を制御することができる。インク流路を画定するプリントヘッドアッセンブリのコンポーネント上には、1つまたは複数の温度センサが位置合わせされてもよい。温度センサは、インクの温度によって変調される電気信号を発生する。制御ユニットは電気信号を受信し、かつこの電気信号に応答してインクへ加えられる圧力を制御する。
【0003】
実施形態の中には、インクジェットプリンタの操作方法を包含するものがある。圧力は、インクジェットプリンタのインク流路内のインクへ加えられる。圧力は、インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中のインクの温度と協調される。インクの相変化の間、インク流路の第1の領域におけるインクの第1の部分は液相にあり、かつインク流路の第2の領域におけるインクの第2の部分は固相にある。圧力を温度に協調させることは、印加される圧力及びインク温度の一方または双方を制御することを含んでもよい。インクの温度は、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成する、または修正するように制御されてもよい。
【0004】
実施形態の中には、プリントヘッドアッセンブリを包含するものがある。プリントヘッドアッセンブリは、インクを印刷媒体の方へ予め決められたパターンに従って選択的に噴出するように構成されるインクジェットを有するプリントヘッドを含む。インク流路は、プリントヘッドアッセンブリのコンポーネントによって画定され、かつ相変化インクによるインク流路に沿ったインクジェットへの通過を可能にするように構成される。またプリントヘッドアッセンブリは、インクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニットも含む。制御ユニットはインクへ加えられる圧力を制御し、かつインク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力とインクの温度とを協調させる。
【0005】
実施形態の中には、インクジェットプリンタのインク内のボイドを低減する方法を含むものがある。インクジェットプリンタのインク流路におけるインクの温度は、インクが液相から固相へ転移している時間中に決定される。インクへ加えられる圧力は、転移の間にインクの温度と協調される。圧力を協調させることは、可変圧力を温度の関数として協調させることを含む。転移の間にインク内の温度勾配を生成かつ/または修正するためには、1つまたは複数の熱素子が制御されてもよい。圧力は、温度勾配と協調されることが可能である。例えば、熱素子は、インク流路へ段階的なゾーン加熱を行なうように制御されてもよい。段階的なゾーン加熱は、温度勾配を生成するために、インク流路の第1のゾーンを加熱することと、第1のゾーンの加熱後にインク流路の第2のゾーンを加熱することを含む。上述の方法は、相変化インクジェットプリンタにおける実装に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ボイド及び泡低減機能を組み込んだインクジェットプリンタの部分を示す内部ビューである。
【図2】ボイド及び泡低減機能を組み込んだインクジェットプリンタの部分を示す内部ビューである。
【図3】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図4】ある例示的なプリントヘッドを示す図である。
【図5】インク流路におけるボイド及び泡を低減するためのアプローチを組み込んだプリントヘッドアッセンブリを示す図である。
【図6】インク流路に沿った温度勾配を示す。
【図7】インク流路に沿った温度勾配を示す。
【図8】リザーバにおいてインク流路へ加えられる圧力を示す図である。
【図9】インク流路へ受動的に圧力を加えるための様々なアプローチを示す。
【図10】インク流路へ受動的に圧力を加えるための様々なアプローチを示す。
【図11】インクが位相を変えつつある間にインク流路におけるボイド及び泡を低減するためのプロセスを示すフロー図である。
【図12】インクが固相から液相へ転移しているプリントヘッドアッセンブリの動作の間にインク内の泡及びボイドを低減するためのプロセスを示すフロー図である。
【図13】インクの一部分を固相状態にさせかつインクの別の部分を液相状態にさせる温度勾配の存在を包含した泡低減動作の後の印刷品質と、温度勾配なしの標準的な泡低減の後の印刷品質とを比較したグラフである。
【図14】リザーバにおけるインクを液体状態にさせ、一方でプリントヘッドにおけるインクを固体のままにさせる温度勾配の存在を包含する泡低減動作の間にインクジェット及びベントから膨出するインクを示す写真である。
【図15】泡低減プロセス後の図14のプリントヘッドを示す写真である。
【図16】インク流路に沿って温度勾配が存在する時間中に圧力の印加を包含する泡及びボイドの低減を示すフロー図であり、温度勾配は、インクの第1の部分を固相状態にさせかつインクの第2の部分を液相状態にさせる。
【図17】インク流路に沿った温度勾配の存在及び圧力印加と温度との協調を包含する泡及びボイドの低減を示すフロー図である。
【図18】インク流路におけるインクの液相から固相への転移に伴う圧力と温度との協調を示す。
【図19】インクが液相から固相へ転移している時間中に圧力を加えかつ圧力と温度とを協調させることによって達成された印刷品質結果を、圧力の印加なしで達成された印刷品質結果と比較したものである。
【図20】インク内のボイド及び泡を低減するためにジェットスタック内に生成され得る温度勾配を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
インクジェットプリンタは、液体インクの小さい液滴を予め決められたパターンに従って印刷媒体上へ噴出することによって動作する。実装によっては、インクは、用紙等の最終印刷媒体上へ直に噴出される。実装によっては、インクは、例えば印刷ドラムである中間印刷媒体上へ噴出され、次いで中間印刷媒体から最終印刷媒体へ転写される。インクジェットプリンタの中には、インクジェットを供給するために液体インクのカートリッジを使用するものがある。プリンタの中には、室温では固体であって印刷媒体表面へ噴射される前に溶融される相変化インクを用いるものがある。室温で固体である相変化インクは、効果的には、インクが、液体インクの場合に典型的に用いられるパッケージまたはカートリッジなしに固形で移送されかつインクジェットプリンタ内へ装填されることを可能にする。実装によっては、固体インクは、溶融インクを中間ドラム上へページ幅のパターンで噴射するページ幅プリントヘッド内で溶融される。中間ドラム上のパターンは、加圧ニップを介して用紙上へ転写される。
【0008】
液体状態では、インクは、インクジェット経路の通過を遮る可能性がある泡及び/または粒子を含む場合がある。例えば、泡は、固体インクプリンタにおいて、プリンタがパワーダウンされる際のインクの凝固及びプリンタが使用のためにパワーアップされる際のインクの溶融に伴って発生するインクの凝固−溶融サイクルに起因して形成される可能性がある。インクは、凝固して固体になるにつれて収縮し、インク内には後に空気で充填されるボイドが形成される。固体インクがインク噴射に先行して溶融するとき、ボイド内の空気は液体インク内の泡になる可能性がある。
【0009】
実施形態の中には、圧力の印加をインク流路内のインクの温度と協調させることによって相変化インク内のボイド及び/または泡を減らすことを包含するものがある。事例によっては、印加される圧力は、液体インクをボイド内へ押しやり、かつ気泡をインク噴射口またはベントへと押しやる働きをすることができる。圧力は、例えば加圧された空気またはインクである圧力源から印加されてもよく、かつインク流路に沿った1つまたは複数のポイントにおいて印加されることが可能である。事例によっては、圧力と温度との協調は、インクが予め決められた温度値に達することに応答して圧力を加えることを包含する。実装によっては、圧力の印加は、インク流路に沿って温度勾配を生成かつ/または保持することと協調されることも可能である。圧力は継続的であることも、可変性であることも可能であり、かつ/または印加圧力の量は、温度及び/または温度勾配の関数であることが可能である。実装によっては、圧力は、インク流路におけるインクの相転移の間に複数の圧力パルスで印加されることが可能である。
【0010】
図1及び図2は、本明細書で論じているようなボイド及び泡低減アプローチを組み込んだインクジェットプリンタ100の部分を示す内部ビューである。プリンタ100は、ドラム120をプリントヘッドアッセンブリ130に対して移動させかつ用紙140をドラム120に対して移動させるように構成される移送機構110を含む。プリントヘッドアッセンブリ130は完全に、または部分的にドラム120の長さに沿って延びてもよく、かつ例えば1つまたは複数のインクリザーバ131、例えば各色毎に1つのリザーバ、と、幾つかのインクジェットを含むプリントヘッド132とを含んでもよい。ドラム120が移送機構110によって回転されるにつれて、プリントヘッド132のインクジェットはインクジェット開口を介してインクの液滴をドラム120上へ所望されるパターンで溶着する。用紙140がドラム120の周りを進むにつれて、ドラム120上のインクのパターンは加圧ニップ160を介して用紙140へ転写される。
【0011】
図3及び図4は、ある例示的なプリントヘッドアッセンブリを示すさらなる詳細図である。当初リザーバ131(図2)内に含まれる溶融インクの経路は、ポート210を介してプリントヘッドのメインマニホールド220へ流入する。図4において最も良く分かるように、事例によっては、1つのインクカラーにつき1つのマニホールド220の方式で4つのメインマニホールド220が重ね合わされて存在し、かつこれらのマニホールド220は各々編み込まれたフィンガマニホールド230へ接続する。インクは、フィンガマニホールド230を通過して、インクジェット240内へ進む。図4に示されているマニホールド及びインクジェットの幾何学的配置は矢印の方向へ反復され、所望されるプリントヘッドの長さ、例えばドラム全幅が達成される。事例によっては、プリントヘッドはインク液滴を噴出させるために圧電トランスデューサ(PZT)を用いるが、インク液滴を噴出させる他の方法も既知であって、このようなプリンタもまた本明細書に記述されているボイド及び泡低減アプローチを用いてもよい。
【0012】
図5は、本明細書において論じられるボイド及び泡低減アプローチのうちの幾つかを示す、ある例示的なプリントヘッドアッセンブリ500の断面図である。プリントヘッドアッセンブリ500は、相変化インクを含むように構成されるインクリザーバ510を含む。リザーバは、ジェットスタックを含むプリントヘッド520へ流体的に結合される。ジェットスタックは、先に論じたようにマニホールド及びインクジェットを含んでもよい。図5に示されているプリントヘッドアッセンブリ500において、インク流路は、リザーバ510、サイホン515、プリントヘッド吸込路517及びプリントヘッド520等のプリントヘッドアッセンブリ500の様々なコンポーネントによって画定されるインクの流体経路である。プリントヘッドはジェットスタック525を含み、かつプリントヘッド520内のインク流路は、図3及び図4に示されているように、メインマニホールド、フィンガマニホールド及びインクジェット等であるジェットスタック525を含む。インク流路はリザーバ510を横断し、サイホン515、プリントヘッド吸込路517、プリントヘッド520、ジェットスタック525を介してプリントヘッドの自由表面530へ至る。プリントヘッドアッセンブリ500は、2つの自由表面530、531を有する。一方の自由表面531は、リザーバ510におけるインク流路の入力側に存在する。もう一方の自由表面530は、ジェットスタック525のベント及び/または噴射口におけるインク流路の出力側に存在する。プリントヘッドアッセンブリ500内にインク流路を形成する1つまたは複数の流路構造体は、流路構造体間にある程度の熱減結合を達成するために、空隙540または他の絶縁物によって互いから分離されてもよい。
【0013】
プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿ってインクを加熱及び/または冷却するように構成される1つまたは複数の熱素子543−547を含む。図5に描かれているように、第1の熱素子546はリザーバ510上またはその近くに位置合わせされてもよく、かつ第2の熱素子547はプリントヘッド520上またはその近くに位置合わせされてもよい。熱素子543−547は、例えばインク流路を能動的に加熱または能動的に冷却するユニットである能動的な熱素子546、547であってもよく、かつ/または例えばパッシブヒートシンク、パッシブヒートパイプ等である受動的な熱素子543−545であってもよい。実装によっては、熱素子543−547は、制御ユニット550によって起動、停止かつ/または別途制御されてもよい。制御ユニットは、例えば、マイクロプロセッサベースの回路ユニット及び/またはプログラム可能論理アレイ回路または他の回路エレメントを備えてもよい。制御ユニット550は、プリンタの制御ユニットに統合されてもよく、スタンドアロンユニットであってもよい。実装によっては、制御ユニット550は、プリントヘッドアッセンブリの泡低減動作の間にインク流路へ加えられる温度及び圧力を制御するように構成される制御ユニットを備えてもよい。泡の低減は、プリンタの起動時、停止時または運転中の他の任意の時間に発生してもよい。
【0014】
能動的な熱素子546、547の場合、制御ユニット550は能動的な熱素子546、547を起動しかつ/または停止することができ、かつ/または制御ユニット550はその他、所望される設定温度を達成するために能動的な熱素子546、547のエネルギー出力を修正してもよい。能動的な熱素子はシステムに熱エネルギーを能動的に供給し、かつ冷却エレメントであっても、加熱エレメントであってもよい。能動的な冷却は、例えばガスまたは液体等の冷却材の流れを制御することによって、かつ/または圧電冷却器の使用を介して達成されてもよい。能動的な加熱は、抵抗加熱または誘導加熱によって達成されてもよい。幾つかの受動的な熱素子545の場合、制御ユニット550は、受動的な熱素子545を起動、停止かつ/または別途制御してもよい。例えば、受動的な熱素子545の制御は、制御ユニット550により、ヒートシンクフィンを散開または引っ込める信号を発生することによって達成されてもよい。実装によっては、プリントヘッドアッセンブリ500は、制御ユニット550によって制御されない1つまたは複数の熱素子543、544も含んでもよい。プリントヘッドは、例えば1つまたは複数の断熱性の熱素子543によって断熱されてもよい。
【0015】
場合により、プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿って、またはプリントヘッドアッセンブリ500上の他の場所に位置合わせされる1つまたは複数の温度センサ560を含んでもよい。温度センサ560は、インク(またはインク流路を形成するコンポーネント510、515、517、529、525)の温度を検出し、かつ検出された温度によって変調された電気信号を発生することができる。事例によっては、制御ユニット550は、熱ユニット545−547の動作を制御するために、センサ信号を用いて熱ユニット545−547へフィードバック信号を発生する。
【0016】
場合により、プリントヘッドアッセンブリ500は、インク流路に沿った1つまたは複数の位置でインクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニット555を含む。加圧ユニット555は、少なくとも1つの圧力源と、インク流路へアクセスするために結合される1つまたは複数の入力ポート556と、インク流路へ加えられる圧力を制御するために使用されることが可能な1つまたは複数のバルブ557とを含んでもよい。圧力源は、例えば圧縮空気または圧縮インクを含んでもよい。加圧ユニット555は、制御ユニット550によって制御可能であってもよい。実装によっては、制御ユニット550は、温度センサの信号及び/または検出された圧力信号を基礎として加圧ユニットを制御するためにフィードバック信号を発生してもよい。
【0017】
ボイド及び泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中にインク流路に沿って温度勾配を生成することを包含するものがある。インクは、液相から固相へ、または固相から液相へと位相を変えていてもよい。インクが液相から固相へ転移する場合、インクは収縮し、固相インク内にボイドを残す。これらのボイドは、最終的に空気で満たされる場合があり、これにより、インクが固相から液相へ転移する際にインク内に気泡が形成される。インクが温度勾配の存在下で位相を変える間、インク流路の第1の領域におけるインクの第1の部分は液相にあってもよく、一方でインク流路の第2の領域におけるインクの第2の部分は固相にある。
【0018】
インクが液相から固相へ変わる際のインク流路に沿った温度勾配は、インクが凝固する間に形成されるボイドの数を減らすために生成されてもよい。例えばプリントヘッドに近い第1の領域においてインクの第1の部分を固体に保持し、かつ例えばリザーバに近い第2の領域においてインクの別の部分を液体に保持することは、相転移の間に形成されるボイドの数を低減するためにリザーバ領域からの液体インクが凝固フロントに近いインク部分へ流れ込むことを可能にする。
【0019】
インクが固相から液相へ変わりつつあるときのインク流路に沿った温度勾配は、凝固インク内に存在する空気を除去するために、例えばパージプロセスの間に用いられてもよい。インク内のボイドは、凝固の間に、液体インクのポケットが凝固インクによって取り込まれる際に形成される。液体インクのポケットが凝固するにつれて、インクは収縮し、ボイドが形成される。ボイドは、ボイドをプリントヘッドアッセンブリの自由表面へ繋ぐインク内のマイクロチャネルを介して空気で満たされる可能性がある。温度勾配は、インクが固相から液相へ変わりつつある時間中にインク流路内で生成されることが可能である。温度勾配は、リザーバにおける、かつリザーバに近いインクは液体であって、プリントヘッドの方に近いインクは固体であるといったものであってもよい。温度勾配は、リザーバの方に近い液相インクからの液体インクが固相インク内のエアポケットへと流れ込み、空気を凝固インクからプリントヘッドアッセンブリの自由表面の1つへと繋がるマイクロチャネルを介して押し出すことを可能にする。
【0020】
図6は、プリントヘッドアッセンブリ内に温度勾配を生成するように制御ユニット(不図示)によって制御可能な複数の熱素子645を含むプリントヘッドアッセンブリ600を示す。図6に描かれているように、複数の熱素子645は、リザーバ610、サイホン615及び/またはプリントヘッド入口617を含むインク流路部分に沿って位置合わせされてもよい。或いは、または追加的に、熱素子645は、例えばジェットスタックのマニホールドの内部、上またはその近くを含むプリントヘッド620の内部、上またはその近くに位置合わせされる場合もある。
【0021】
図6が示すように、複数の熱素子645は、インク流路に沿って生成される温度勾配のゾーン制御を可能にするようにインク流路に沿って配置されることが可能である。複数の熱素子645を用いるゾーン別の熱制御は、インク流路の様々な領域の制御された加熱または冷却を包含し、かつインク流路に沿った温度勾配のより正確な制御を可能にする。事例によっては、温度勾配は、図6の矢印が示すように、リザーバ610において、またはその近くでより高いインク温度、THを達成し、かつプリントヘッド620において、またはその近くでより低いインク温度、TLを達成するように制御される。このシナリオでは、リザーバ610における、またはリザーバ610の方に近いインクの温度はインクの融点より上に保持されることが可能であり、よってこのゾーンにおけるインクは液体である。プリントヘッド620における、またはプリントヘッド620の方に近いインクの温度はインクの融点より低く、よって凝固される。図6は、リザーバ610におけるより高い温度からプリントヘッド620におけるより低い温度へ転移する温度勾配を示しているが、代替実装におけるゾーン別の熱制御は、リザーバにおけるより低い温度からプリントヘッドにおけるより高い温度へ転移する温度勾配を生成してもよい。
【0022】
図7は、二股に分けられたもう1つの温度勾配を生成するためのゾーン別熱制御に用いられてもよい複数の熱素子745を示す。図7に描かれているように、インク流路の第1の領域における第1の温度勾配は、リザーバ710内のゾーンにおけるより高い温度、TH1からサイホンエリア715内の第1のゾーンにおけるより低い温度、TL1へ転移する。第2の温度勾配は、サイホンエリア715内の第2のゾーンにおけるより高い温度、TH2からプリントヘッド720の自由表面730に近いより低い温度、TL2へ転移する。サイホン715の第2のゾーンは、通気孔(図7には示されていない)へ繋がるより大きい容量の領域であってもよい。二股に分けられた温度勾配は、液体インクをプリントヘッドアッセンブリの複数の自由表面へ向かって移動させることに役立つ場合がある。
【0023】
ボイド及び泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中に圧力源からの圧力をインクに加えることを含むものがある。圧力源は、例えば加圧されたインク、空気または他の物質であってもよい。圧力は、インク流路に沿った任意のポイントにおいて加えられることが可能であり、かつ制御ユニットによって制御されることが可能である。事例によっては、制御ユニットは、圧力の印加をインクの温度と協調して制御する。例えば、圧力は、システムの熱力学を基礎としてインクがある特定の温度であることが予期される時点で、または温度センサによりインク流路のある特定のロケーションにおけるインクが予め決められた温度に達していることが示される時点で加えられることが可能である。事例によっては、圧力の量及び/またはロケーションは、例えばインク流路のゾーン別加熱または冷却によって達成される温度勾配と協調して適用されることが可能である。
【0024】
図8は、インクが位相を変えつつある時間中のインクへの圧力870の印加を示す。例えば、事例によっては、リザーバ810内のインクをインクの溶融温度を超える温度、例えば90゜Cを超える温度にするために、リザーバヒータ845のみが起動される。リザーバヒータ845はリザーバ810内のインクが溶融するに足る高さの設定温度にまで到達されるが、設定温度はこのように高く、よって/またはプリントヘッド820内のインクも溶融するほど長くは保持されない。リザーバ810内のインクとプリントヘッド820内のインクとの十分な温度差は、リザーバ810内のインクは液体でありながらプリントヘッド820内のインクを凝固したままにするように保たれる。例えば、使用されるインク及びプリントヘッドアッセンブリのジオメトリに依存して、リザーバが90゜Cであるとき、リザーバ温度とプリントヘッド温度との温度差が約5゜Cから約15゜Cまでの範囲内であれば、リザーバインクが液体でありながらプリントヘッドインクは凝固して保たれる。リザーバ内のインクが液体でありかつプリントヘッド内のインクが凝固したままである間、圧力870は、例えばリザーバの自由表面831に加えられる。圧力870は、液体インクのリザーバ810から凝固インク内のボイド及びエアポケットへの移動を促進する。液体インクのボイド及びエアポケットへの移動はボイドを除去し、かつ凝固インク内に存在するマイクロチャネル(亀裂)を介して空気をプリントヘッドの自由表面830から押し出させる。
【0025】
図9及び図10は、インク流路におけるインクへの圧力を受動的に増大させるためのアプローチを示す。図9に描かれているように、インク流路の全てまたは一部はインクへの圧力を高めるために傾斜されてもよい。プリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントは、プリントヘッドアッセンブリ900のインク流路全体が図9において傾斜されているように傾けられる。他の実施形態では、インク流路の一部を画定するコンポーネントのみが傾斜されてもよい。プリントヘッドアッセンブリ900は、この傾斜を達成すべくプリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントを方向づけるように構成される配向機構975を含むことが可能である。実装によっては、プリントヘッドアッセンブリ900のコンポーネントは、インク流路内のインクに対する圧力を高めるために、インク相変化の間に1つの位置に方向づけられてもよい。コンポーネントは、例えばプリンタの運転中である他の時間期間中に別の位置に方向づけられてもよい。事例によっては、プリントヘッドの配向機構は、制御ユニットにより、例えばインク流路の温度、圧力及び/または温度勾配を基礎として制御されることが可能である。図9に示されているようなリザーバ910の傾斜は、インク内の泡をリザーバ910の自由表面まで上昇させるように実装される場合もある。
【0026】
図10は、インクへ加える圧力を高めるためのプロセスの別の例を描いている。この例において、リザーバ1010は先の、または通常のインクレベル1076を超えて過度に満たされ、これにより、プリントヘッドアッセンブリ1000のインク流路に沿って圧力が増大される。事例によっては、過充填インク1077は、プリンタのパワーアップシーケンスの間にリザーバ1010へ追加されてもよい。或いは、過充填インク1077は、プリンタのパワーダウンシーケンスの間にリザーバ1010へ追加されてもよい。
【0027】
先に論じたように、インク流路における温度勾配、インクの加圧及び/または温度、温度勾配及びボイド及び/または泡低減用圧力間の協調の使用は、インクが固相から液相へ転移しているとき、例えばプリンタのパワーアップシーケンスの間に行われてもよい。図11は、インクが固相から液相へ転移している時間中にボイド及び/または泡を低減するためのある例示的なプロセスを示すフロー図である。図11に示されているプロセスは、例えばプリンタのパワーアップに伴ってインク流路からボイド及び/または泡をパージするために用いられてもよい。1110、1120において、リザーバ及びプリントヘッドは位相シーケンスで加熱される。プリントヘッドの方へ近いインクがインクを凝固したままにする温度に保持されながら、まずリザーバがリザーバ内のインクを溶融する温度にまで加熱される。リザーバ内のインクとプリントヘッド内のインクとの間の温度勾配は、プリントヘッド自由表面におけるシステムの通気及びインク噴射口を介するインクフローシステムの減圧を促進する。1105における、リザーバ及びプリントヘッドの位相シーケンスでの加熱により生成される温度勾配は、ボイド内へのインクの半制御式移動及び泡の低減をもたらす。リザーバ及び/またはプリントヘッドの温度上昇速度は、ボイド/泡の最適な低減を達成するように制御される。1105においてインク流路沿いに温度勾配が生成された後、1130では、場合により、ボイド及び泡低減をさらに増進させるためにインクへ圧力が加えられてもよい。例えば、圧力の印加は、本明細書に記述されているもの等の1つまたは複数の能動的及び受動的加圧技法によって達成されてもよい。
【0028】
図12のフロー図には、上述のプロセスのさらに詳細なシーケンスが示されている。1210において、リザーバヒータは、約100゜Cの設定温度で起動される。1220において、リザーバは約8分で100゜Cに達するが、この時点でプリントヘッドの温度は約86゜Cである。次に、1230において、リザーバの設定温度が約115゜Cまで高められ、1240では、リザーバにおいてこの温度が約10分後に到達される。この時点で、プリントヘッドは約93゜Cである。この時点で、1250においてプリントヘッドヒータが起動される。1260では、プリントヘッドヒータの起動から約12分後に、例えば約4psigから10psigまでのパージ圧力がインクへ加えられる。このプロセスの実装により、泡低減動作の間にプリントヘッドからインクが滴ることが回避される。プリントヘッドヒータの起動前は、インクジェットにインクワックスの小玉が現出し、かつパージベントではインクワックスのより大きい玉が泡立ってガスの逃げを示している。プリントヘッドヒータの起動後は、インクワックスの玉はプリントヘッド内へ引っ込み、プリントヘッドの表面は清浄になる。図12に記述されているプロセスは、溶融範囲を有する混合体でありかつ典型的には約85゜Cで完全な液体であるインクに適用可能である。約12゜Cより大きい温度勾配は、リザーバ内のインクが液体であるときにプリントヘッドにおけるインクを凝固状態に保つ。
【0029】
図12に関連して記述されたプロセスによって生成される温度勾配は、ボイド/泡がインクシステムから押し出されることを可能にする。これに対して、温度勾配が存在しない場合、即ち、リザーバ及びプリントヘッドの双方が略同時に略同一温度まで加熱される場合、リザーバとプリントヘッドとの流体結合部、例えばプリントヘッドアッセンブリのサイホンエリアに空気が捕捉される可能性がある。インクが、例えば起動動作の間に固体状態から液体状態へ転移するとき、幾分かのインクはプリントヘッドから押し出されることがある。インクは、室温(20゜C)から115゜Cへの温度上昇に起因するインクの膨張(約18%)及びインクへの圧力を増大させるガスの膨張からの圧力によってプリントヘッドの外へ押し出される。「ドルーリング」と呼ばれる場合もあるプリントヘッドからのインクの垂れ落ちは望ましくなく、またインクを無駄にする。ドルーリングは、典型的には、プリントヘッドからの空気の一掃に効果的に寄与せず、かつ多色プリントヘッド上では、異なるカラーインクによるノズルの交差汚染を引き起こす。
【0030】
これに対して、インク流路に沿って温度勾配を生成する制御された温度上昇は、インクジェット及びプリントヘッドベントから滴下するインクを最小限に抑えてボイド及び泡がシステムから発散されることを可能にする。図11及び図12に示されているプロセスは、気泡を追い出すために固相インク内に形成されるマイクロチャネルを用いる。制御されたインクの流れ及び温度上昇からの加圧は、ボイドを排除しかつプリントヘッドを介してエアポケットを追い出す働きをし、よって印刷動作の間にインク内に存在する泡が低減される。
【0031】
インク内の泡は、間欠的なインク噴射、弱いインク噴射及び/またはプリントヘッドの1つまたは複数のインクジェットから印刷できない噴射を含む可能性がある印刷欠陥に繋がる、という理由で望ましくない。これらの望ましくない印刷欠陥を、本明細書では間欠的な、弱い、または欠落したイベント(IWM)と称する。本明細書において論じられる様々な実装は、インク内の泡に起因するIWM率を減じることに役立つ。IWM率は、泡低減方法の有効性の指針である。泡がインクジェットに取り込まれれば、ジェットは適正に発射せず、間欠的な、弱い、または欠落したジェットになる。
【0032】
図12に関連して論じられているようなインクの段階的加熱による温度勾配の生成を包む泡低減プロセスの有効性を、リザーバ及びプリントヘッド内のインクが同時に加熱される一般的な泡低減プロセスと比較した。泡の低減の間の段階的加熱及び同時的加熱の双方で、プリントヘッドアッセンブリは角度約33度で傾斜された。これらの試験において、間欠的な、弱い、または欠落した(IWM)印刷イベントの割合が泡低減プロセスの間にインクジェットから出射したインク質量の関数として決定された。望まれることは、低い出射インク質量及び低いIWM率の双方を達成することにある。図13は、試験の結果を比較したものである。図13から認識できるように、大部分の事例において、標準的な同時加熱による泡低減プロセスよりも、図12に描かれている段階的加熱による泡低減プロセスを用いる方が、少ない出射インク質量で所望されるIWM率を達成することが可能である。
【0033】
また、段階的加熱によるアプローチは、起動動作の間にプリントヘッドからインクが滴下することも回避する。図14の写真に描かれているように、プリントヘッドヒータの起動前、プリントヘッドのインクは93゜Cである。インクジェットにはインクの小玉が現出し、かつパージベントにはインクワックスのより大きい玉が泡立ってガスの逃げを示している。図15の写真は、プリントヘッドヒータが起動され、かつプリントヘッド内のインク温度が約115゜Cまで上昇された後のプリントヘッドを示している。インク玉はプリントヘッド内へ引っ込み、プリントヘッドの表面は清浄である。
【0034】
アプローチの中には、インクが液相から固相へ変わりつつある時間中にインクへ圧力をかけることを包含するものがある。図16のフロー図は、このプロセスを例示している。1610では、インクが液相から固相へ転移している時間中に、インク流路に沿って温度勾配が存在する。例えば、温度勾配は、流路のある領域におけるインクは液体であり、一方で流路の別の領域におけるインクは固体である、という類のものであってもよい。1620では、インクが液相から固相へ変わりつつある時間中にインクへ圧力が加えられる。圧力は、インクが溶融する際に気泡となる可能性もあるインク内のボイドを減じる働きをする。
【0035】
ボイド/泡を低減するアプローチの中には、インクが位相を変えつつある時間中の温度と印加圧力との協調を包含するものがある。インクは、固相から液相へ変化していても、液相から固相へ変化していてもよい。インクが位相を変えつつある時間中、インク流路の第1の領域におけるインクの一部は液体であり、一方でインク流路の第2の領域におけるインクの別の部分は固体である。液体インクの加圧はインクをボイド内へと押しやり、かつ凝固インク内のチャネルを介して気泡を押し出す。印加圧力とインク温度との協調の実装は、インク流路に沿って温度勾配を生成するゾーン加熱を伴う場合も伴わない場合もある。
【0036】
図17のフロー図は、例えばプリンタの電源遮断シーケンスの間である、インク流路におけるインクが液相から固相へと位相を変えつつある時に、インク内のボイド/泡を低減するためのプロセスを示している。プロセスは、1710においてインクの温度を決定(または推定)することと、1740において温度と協調して圧力を加えることに依存する。事例によっては、インクの温度は、インクの温度を検出するために流路に沿って配置される温度センサを用いて決定される。事例によっては、インクの温度は、熱素子の設定温度及びプリントヘッドアッセンブリの熱応答関数を知ることによって推定されてもよい。場合により、1720において、インク流路に沿って温度勾配を生成しかつ/または保持するためにゾーン加熱/冷却が用いられてもよい。1730において、検出されたインク温度が予め決められた温度まで降下すれば、1740においてインクへ圧力が加えられる。
【0037】
実装によっては、インクへ可変圧力が加えられ、印加される圧力はインクの温度及び/またはインク流路の温度勾配と協調される。図18は、インクが液相から固相へ転移している時間中のリザーバの温度、プリントヘッドの温度及びインクへ加えられる圧力を含む3つのグラフを描いている。時間t=0では、プリントヘッド及びリザーバの双方でインク温度は115゜Cであり、かつインクはインク流路全体に渡って液体である。時間t=0において、リザーバとプリントヘッドとの間のインク流路内に温度勾配を生成するために、プリントヘッドヒータの設定温度は81.5゜Cへ調節され、リザーバヒータの設定温度は僅かに高い温度に調節される。インクが冷却するにつれて、リザーバ内のインクとプリントヘッド内のインクとの温度差は増大し、最終的に約12分で設定温度87゜C(リザーバ)及び81.5゜C(プリントヘッド)に到達する。約12分において、リザーバにおけるインクに約0.5psiの圧力が加えられる。プリントヘッド及びリザーバの温度が徐々に下がるにつれて圧力は増大されるが、プリントヘッドとリザーバとの間の温度勾配は保たれる。約16分では、リザーバの温度は86゜Cであって、プリントヘッドの温度は80゜Cであり、かつ圧力は8spiに増大される。プリントヘッド及びリザーバのヒータは止められ、圧力は、プリントヘッド及びリザーバの継続的な冷却に伴って約8分間、約8psiに保持される。
【0038】
図18に示されているような圧力と温度との協調を含むプロセスの有効性を、インクが凝固していく間にインクを加圧しない、または温度と圧力とを協調させない標準的な冷却プロセスと比較した。これらの試験では、間欠的な、弱い、または欠落した(IWM)印刷イベントの割合によって決定されるような泡形成の低減が、出射するインク質量の関数として決定された。望まれることは、低い出射インク質量及び低いIWM率の双方を達成することにある。図19は、試験の結果を比較したものである。図18から認識できるように、泡低減プロセスの間にインクへ圧力を加えることによって、少ない出射インク質量(即ち、パージ質量)で所望されるIWM率を達成することが可能である。この試験における装置は、約0.8gのインクを含むインクジェット及びフィンガマニホールド及び約1.4グラムのインクを含むインクジェットスタックを含んでいたことに留意されたい。冷却中に印加される圧力を用いた試験では、IWM率は、約1.2グラムのパージ質量の後に約19%から2%未満まで低下した。1.4グラムパージの後は、8ジェットが欠落したグループは存在しなかった。この試験は、出射するインクの量がジェットスタックの容量に等しいことから、サイホン領域の泡の低減における加圧凝固処置の有効性を例証している。ジェットスタック内のインクのみがパージされることから、これは、IWM印刷試験にサイホンからのインクが用いられることを意味する。サイホンからの泡の取り込みは、IWMイベントを引き起こす。取り込みは全く観察されないことから、これは、サイホンにほぼ泡が存在しないことの証拠である。
【0039】
図18に示されているプリントヘッドアッセンブリの冷却の温度/温度勾配/圧力プロファイルは、圧力と温度及び/またはプリントヘッドアッセンブリの温度勾配との協調の1つの例示である。圧力、温度及び温度勾配の値は、温度及び圧力の他の協調プロセスにおけるプリントヘッドアッセンブリの特性に従って他の値が選択されることも可能である。
【0040】
本明細書では、ボイド/泡を低減するための温度勾配の使用を示す例を、リザーバとプリントヘッドとの間に温度勾配を生成することに関連して論じた。或いは、または追加的に、ボイド/泡を低減するためにプリントヘッドまたはジェットスタック内の温度勾配が実装されてもよい。例えば、図20を参照すると、プリントヘッドのジェットスタック2021内に1つまたは複数の温度勾配が生成されてもよい。例えば、温度勾配は、ジェットスタックの縁へ向かってより高い温度、THを、かつインク噴射口及びベントが位置決めされるジェットスタックの中心へ向かってより低い温度、TLを含んでもよい。所定のプリントヘッド設計では、温度勾配をジェットスタックのz方向に沿って生成することが可能である場合もある。しかしながら、多くのプリントヘッドのジェットスタック設計はz方向に薄く、かつインク流路は主としてy方向である。温度勾配は、例えば、ジェットスタックの異なる部分における例えばヒートシンク及び/または断熱材である別々の受動的な熱素子を使用することにより、能動的な加熱または冷却エレメントを用いて生成されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリであって、
インク流路であって、前記インク流路に沿った相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路と、
インクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニットと、
インクへ加えられる圧力を制御し、かつ前記インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる前記圧力とインクの温度とを協調させるように構成される制御ユニットとを備えるプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項2】
インクを加熱または冷却するように構成される1つまたは複数の熱素子をさらに備える、請求項1に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項3】
前記熱素子は前記制御システムによって制御される能動的な熱素子である、請求項2に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項4】
前記加圧ユニットはインクへ可変圧力を加えるように構成される、請求項3に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項5】
前記制御ユニットは、インクが位相を変えつつある時間中に前記インク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成すべく前記熱素子を制御するように構成され、前記温度勾配は、前記インク流路内のインクの一部分を固相にしかつ前記インク流路内のインクの第2の部分を液相にする、請求項2に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項6】
前記インク流路を画定するコンポーネント上へ位置合わせされる1つまたは複数の温度センサをさらに備え、前記温度センサは、インクの温度によって変調される電気信号を発生するように構成され、かつ、
前記制御ユニットは前記電気信号を受信しかつ前記電気信号に応答してインクへ加えられる圧力を制御するように構成される、請求項1から請求項5までの任意の請求項に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項7】
インクジェットプリンタの動作方法であって、
前記インクジェットプリンタのインク流路におけるインクへ圧力を加えることと、
前記インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力をインクの温度と協調させることを含む方法。
【請求項8】
前記相変化は固相から液相への転移を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記相変化は液相から固相への転移を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
インクが位相を変えつつある時間中に前記インク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成するように前記インクの温度を制御することをさらに含み、前記温度勾配は、前記インク流路内のインクの一部分を固相にしかつ前記インク流路内のインクの第2の部分を液相にする、請求項7から請求項9までの任意の請求項に記載の方法。
【請求項1】
インクジェットプリンタのためのプリントヘッドアッセンブリであって、
インク流路であって、前記インク流路に沿った相変化インクの通過を可能にするように構成されるインク流路と、
インクへ圧力を加えるように構成される加圧ユニットと、
インクへ加えられる圧力を制御し、かつ前記インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる前記圧力とインクの温度とを協調させるように構成される制御ユニットとを備えるプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項2】
インクを加熱または冷却するように構成される1つまたは複数の熱素子をさらに備える、請求項1に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項3】
前記熱素子は前記制御システムによって制御される能動的な熱素子である、請求項2に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項4】
前記加圧ユニットはインクへ可変圧力を加えるように構成される、請求項3に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項5】
前記制御ユニットは、インクが位相を変えつつある時間中に前記インク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成すべく前記熱素子を制御するように構成され、前記温度勾配は、前記インク流路内のインクの一部分を固相にしかつ前記インク流路内のインクの第2の部分を液相にする、請求項2に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項6】
前記インク流路を画定するコンポーネント上へ位置合わせされる1つまたは複数の温度センサをさらに備え、前記温度センサは、インクの温度によって変調される電気信号を発生するように構成され、かつ、
前記制御ユニットは前記電気信号を受信しかつ前記電気信号に応答してインクへ加えられる圧力を制御するように構成される、請求項1から請求項5までの任意の請求項に記載のプリントヘッドアッセンブリ。
【請求項7】
インクジェットプリンタの動作方法であって、
前記インクジェットプリンタのインク流路におけるインクへ圧力を加えることと、
前記インク流路におけるインクが位相を変えつつある時間中にインクへ加えられる圧力をインクの温度と協調させることを含む方法。
【請求項8】
前記相変化は固相から液相への転移を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記相変化は液相から固相への転移を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
インクが位相を変えつつある時間中に前記インク流路の少なくとも一部に沿って温度勾配を生成するように前記インクの温度を制御することをさらに含み、前記温度勾配は、前記インク流路内のインクの一部分を固相にしかつ前記インク流路内のインクの第2の部分を液相にする、請求項7から請求項9までの任意の請求項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−162078(P2012−162078A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22485(P2012−22485)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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