説明

インク組成物、画像記録方法およびラミネート体

【課題】画像の変色が生じにくい、中空構造を有する有機粒子を含むインク組成物を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるインク組成物は、中空構造を有する有機粒子と、中空構造を有する無機粒子と、を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、画像記録方法およびラミネート体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録において、白色の色材を含有するインク組成物の需要がある。白色の色材としては、酸化チタンの粉末が典型的な例であり、分散剤等とともにインク組成物に配合されることが多い。また、近年では、色材として、特許文献1に開示されているような中空の樹脂粒子が利用されることもある。
【0003】
一方、従来から、印刷物の保護等を行う目的で、各種印刷物に対してラミネートを施すことが行われている(例えば、特許文献2参照)。印刷物に対するラミネートの一般的な態様としては、表面に接着層を有するシートまたはフィルムを、印刷物に対して熱融着等によって貼り合わせて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4880465号公報
【特許文献2】特開2000−318093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、色材として中空の樹脂粒子を用いて形成した印刷物に対してラミネートを施す場合、色材の本来の色味が損なわれてしまうことがあった。具体例としては、白色の色材として中空の樹脂粒子を用いた印刷物に対してラミネートを行ったときに、白色の印刷部分の白色度が低下する、あるいは透明化してしまうことがあった。発明者らは、このような不具合が、中空の樹脂粒子の内部に望ましくない物質が侵入することに由来して生じるとの知見を得て、本発明を為すに至った。
【0006】
本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、画像の変色が生じにくい、中空構造を有する有機粒子を含むインク組成物を提供することにある。本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する有機粒子を含んでいて、変色が生じにくい画像を形成することができる画像記録方法を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、中空構造を有する有機粒子を含むインク組成物によって画像が形成された記録物に対してラミネートを行ったラミネート体であって、該画像の変色が生じにくいラミネート体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
[適用例1]
本発明にかかるインク組成物の一態様は、
中空構造を有する有機粒子と、
中空構造を有する無機粒子と、
を含有することを特徴とする。
【0009】
本適用例のインク組成物によれば、変色の生じにくい画像を記録することができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1において、
前記有機粒子の含有量が、前記無機粒子の含有量に対して、0.6以上2以下であることができる。
【0011】
本適用例のインク組成物によれば、さらに変色の生じにくい画像を記録することができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記有機粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることができる。
【0013】
本適用例のインク組成物によれば、さらに変色の生じにくい画像を記録することができる。
【0014】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記有機粒子の含有量は、5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0015】
本適用例のインク組成物によれば、さらに変色の生じにくい画像を記録することができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記無機粒子の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることができる。
【0017】
本適用例のインク組成物によれば、さらに変色の生じにくい画像を記録することができる。
【0018】
[適用例6]
本発明にかかる画像記録方法の一態様は、
記録媒体上に、中空構造を有する有機粒子を含有する第1インク組成物を用いて、画像を形成する第1画像形成工程と、
前記第1インク組成物によって形成された画像上に、中空構造を有する無機粒子を含有する第2インク組成物を用いて、画像を形成する第2画像形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、中空構造を有する有機粒子を含んでいて、変色が生じにくい画像を形成することができる。
【0020】
[適用例7]
適用例6において、
前記第1画像形成工程において、前記記録媒体の単位面積あたりに付着される前記有機粒子の質量が、前記第2画像形成工程において、前記記録媒体の単位面積あたりに付着される前記無機粒子の質量に対して、0.2以上2以下であることを特徴とする、
本適用例によれば、中空構造を有する有機粒子を含んでいて、さらに変色が生じにくい画像を形成することができる。
【0021】
[適用例8]
本発明にかかるラミネート体の一態様は、
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、中空構造を有する有機粒子および中空構造を有する無機粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成されたシートと、
を含むことを特徴とする。
【0022】
本適用例のラミネート体によれば、画像層の中空構造を有する有機粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお以下の実施形態は、本発明の一例を説明するものである。そのため、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で実施される各種の変形例も含む。なお、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0024】
1.インク組成物
本実施形態のインク組成物は、有機粒子、および無機粒子を含む。本実施形態のインク組成物は、溶剤として水を含有する水系、および溶剤として水を含有しない非水系のいずれであってもよい。
【0025】
1.1.有機粒子
本実施形態のインク組成物は、色材として中空構造を有する有機粒子を含有する。中空構造を有する有機粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている有機粒子(樹脂粒子)を好ましく用いることができる。
【0026】
ここで、中空構造とは、粒子に少なくとも屈折率の異なる物質が内包される構造のことを指し、例えば、いわゆるコア・シェル構造、すなわち空間がシェル(殻)によって取り囲まれた構造のことを指す。また、中空構造のコア(殻によって取り囲まれた内側)の物質は、液体でも気体でもよい。
【0027】
中空構造を有する有機粒子の機能の一つとしては、インク組成物における色材となることが挙げられる。すなわち、中空構造を有する有機粒子は、少なくとも記録媒体に付着された後に、無彩色または有彩色を呈することができる。例えば、着色されていない中空構造を有する有機粒子は、コアとシェルの屈折率の差に起因する光の散乱により、記録媒体に付着されたときに、無彩色である白色から灰色を呈することができる。また、中空構造を有する有機粒子には、着色が可能であり、記録媒体に付着されたときに、彩度(色彩)を付与することも可能である。このような色彩は、例えば、コアまたはシェルに配置される物質を着色することや、着色しなくても、コアまたはシェルの光学的な寸法を変化させることによって、彩度を付与することができる。
【0028】
なお、無彩色、および有彩色との文言は、日本工業規格JIS Z8105の番号3008、および03009、並びに、日本工業規格JIS Z8113の番号03010、および03011に定義されるものであるが、本明細書では、無彩色とは、多少の色相を有してもよいものとする。
【0029】
またなお、本明細書において「白色のインク」とは、エプソン純正写真用紙<光沢>(セイコーエプソン社製)に、該用紙が被覆される量のインクが吐出された印字物の明度(L*)と色度(a*、b*)が、Gretag Macbeth Spectrolino(X-Rite社製)の測色器を用いて計測した場合に、70≦L*≦100、−3.5≦a*≦1、−5≦b*≦1.5の範囲を示すインクのことをいう。
【0030】
中空構造を有する有機粒子のシェル(殻)の材質としては、樹脂などの有機化合物により形成される。また、中空構造を有する有機粒子のシェル(殻)の材質としては、有機分子と無機化合物とによってなるいわゆる有機・無機ハイブリッド体であってもよい。一方、コアに配置される物質については、特に限定されず、液体や気体とすることができる。なお、シェルの材質を、例えば、高分子化合物(樹脂)とすることや、シェルの厚みを小さくすること等により、コアに配置される物質をシェルを介して外部と置換することができる。そのため、例えば、有機粒子が、記録媒体に付着されたときには、粒子の内部の水分等の液体が、乾燥して外気と置き換わることによって、コアを空洞(実質的には大気)とすることができる。また、例えば、有機粒子は、インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞はインク組成物の媒質で満たされることができ、そのため、外部の媒質と近い比重を有するようになるため、インク組成物中における分散安定性を確保することができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0031】
中空構造を有する有機粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、好ましくは0.2μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.4μm以上0.8μm以下である。中空構造を有する有機粒子の外径がこのような範囲にあれば、インク組成物中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、所望の色を呈することができる。また、外径が1.0μmを超えると、有機粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、所望の色が得られない場合がある。また、中空構造を有する有機粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、0.1μm以上0.8μm以下程度が適当である。
【0032】
中空構造を有する有機粒子の平均粒子径d50は、例えば、粒径加積曲線を用いて測定される。粒径加積曲線とは、水等の分散媒に分散された粒子について、粒子の直径、および当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を、統計的に処理して得られる曲線の一種である。本明細書における粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸にとり、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度および数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸にとったものである。
【0033】
そして、粒径d50とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が50%(0.50)となるときの、横軸の値すなわち粒子の直径のことをいう。
【0034】
有機粒子の粒径加積曲線は、例えば、動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置を使用することによって求めることができる。動的光散乱法は、分散している有機粒子にレーザー光を照射し、その散乱光を光子検出器で観測するものである。一般に分散している粒子は、通常ブラウン運動をしている。粒子の運動の速度は、粒子直径の大きな粒子ほど大きく、粒子直径の小さな粒子ほど小さい。ブラウン運動をしている粒子にレーザー光を照射すると、散乱光において、各粒子のブラウン運動に対応した揺らぎが観測される。この揺らぎを測定し、光子相関法等により自己相関関数を求め、キュムラント法およびヒストグラム法解析等を用いることで粒子の直径や、直径に対応した粒子の頻度(個数)を求めることができる。本実施形態にかかる有機粒子のようにサブミクロンサイズの粒子を含む試料に対しては、動的光散乱法が適しており、動的光散乱法により比較的容易に粒径加積曲線を得ることができる。動的光散乱法に基づく粒子径分布測定装置としては、例えばナノトラックUPA−EX150(日機装株式会社製)、ELSZ−2、DLS−8000(以上、大塚電子株式会社製)、LB−550(株式会社堀場製作所製)等が挙げられる。
【0035】
一方、有機粒子の粒径加積曲線は、該有機粒子を含有するインク組成物、該インク組成物が付着された状態(例えば印刷物)、または、ラミネート体を形成した後の状態においても、例えば、電子顕微鏡法によって測定することができる。この方法は、電子顕微鏡写真から粒子の大きさを計測するもので、当該写真を、例えば画像処理して計測することにより、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。具体的には、個々の粒子の短軸径と長軸径を計測し、その面積と等しい円の直径(円相当直径)を算術的に求め、一定の視野から例えば50個以上の粒子をランダムに選択して求める方法が挙げられる。この方法によれば、インク組成物中に有機粒子以外の粒子(例えば顔料や後述の無機粒子)が含有されている場合でも、電子顕微鏡画像上で、粒子を選別することができるため、粒子の粒径加積曲線を求めることができる。また、この測定における信頼性を高めたい場合には、計測する粒子の個数を増して求めるとよい。なお、ラミネート体である場合には、電子顕微鏡観察の試料として、ラミネート用シートを基材(紙等の記録媒体)から剥離したものとすることができ、当該剥離面(ラミネート用シート側または基材側)の表面を観察することにより、粒径加積曲線を求めることができる。
【0036】
さらに、本実施形態の有機粒子を含有するインク組成物において、有機粒子の粒径加積曲線を求める方法として、その他にも、遠心分離を利用する方法(以下、これを遠心法ということがある。)が挙げられる。遠心法の具体例としては、適宜な長さの遠心チューブにインク組成物を充填し、遠心操作を行った後、チューブの特定の位置(深さ)の範囲の遠心物を採取する。有機粒子の比重と、インク組成物の他の成分の比重との差によって、遠心後の遠心チューブ内における有機粒子の存在位置が特定されるため、例えば、特定の範囲には、有機粒子が濃化している。そのため、当該遠心チューブの適宜な位置から、インク組成物の一部を採取し、これを上述の動的光散乱法等により測定することにより、インク組成物における有機粒子の粒径加積曲線を求めることができる。
【0037】
上記中空構造を有する有機粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは8質量%以上15質量%以下である。中空構造を有する有機粒子の含有量(固形分)がこの範囲にあれば、例えば、インク組成物中の粒子の分散を良好に保つことができる。一方、中空構造を有する有機粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。また、5質量%未満であると、白色度等の所望の色濃度が不足する傾向が生じることがある。
【0038】
中空構造を有する有機粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、例えば以下のような公知の方法を適用することができる。中空構造を有する有機粒子の調製方法としては、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空構造を有する有機粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
【0039】
乳化重合法に用いるビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、粒子の光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空構造を有する有機粒子を得ることができる。
【0040】
乳化重合法に用いる界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。また、乳化重合法に用いる重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。この際の水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
【0041】
1.2.無機粒子
本実施形態のインク組成物は、中空構造を有する無機粒子を含有する。
【0042】
無機粒子が有する中空構造は、上述の有機粒子と同様に、粒子に少なくとも屈折率の異なる物質が内包される構造のことを指し、例えば、いわゆるコア・シェル構造、すなわち空間がシェル(殻)によって取り囲まれた構造のことを指す。また、中空構造のコア(殻によって取り囲まれた内側)の物質は、液体でも気体でもよい。
【0043】
中空構造を有する無機粒子の機能の一つとしては、インク組成物が記録媒体上に付着され、水、溶媒等が記録媒体に浸透し、または蒸発したときに、有機粒子に対して無機粒子が静電的な相互作用により吸着することが挙げられる。無機粒子は通常比重が高いため、有機粒子に対し、沈降する速度が早い。中空構造を有する無機粒子は中空であるために、中空構造を持たない無機粒子に比べ比重が軽くなるため、沈降速度が遅くなり、有機粒子近傍により存在しやすくなる。これにより、有機粒子の周囲が無機粒子によって覆われ、有機粒子の内部の空間への他の物質の侵入を抑制させることができる。
【0044】
このような中空構造を有する無機粒子は、少なくとも記録媒体に付着された後に、無色透明であることができる他、無彩色または有彩色を呈することができる。例えば、着色されていない中空構造を有する無機粒子は、コアとシェルの屈折率の差に起因する光の散乱により、記録媒体に付着されたときに、無彩色である白色から灰色を呈することができる。また、中空構造を有する無機粒子には、着色が可能であり、記録媒体に付着されたときに、彩度(色彩)を付与することも可能である。このような色彩は、例えば、コアまたはシェルに配置される物質を着色することや、着色しなくても、コアまたはシェルの光学的な寸法を変化させることによって、彩度を付与することができる。
【0045】
中空構造を有する無機粒子のシェル(殻)の材質としては、シリコン、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、ジルコニウム、などの金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物、および、各種ガラス、シリカ等の無機化合物が挙げられる。また、中空構造を有する無機粒子のシェル(殻)の材質は、これらの無機物質と樹脂等の有機物質のハイブリッド体であってもよい。
【0046】
一方、無機粒子のコアに配置される物質については、特に限定されず、液体や気体とすることができる。なお、無機粒子は、記録媒体に付着されたときには、粒子の内部の水分等の液体が、乾燥して外気と置き換わることによって、コアを空洞(実質的には大気)とすることもできる。
【0047】
また、例えば、無機粒子は、インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞はインク組成物の媒質で満たされることができ、そのため、外部の媒質と近い比重を有するようになるため、インク組成物中における分散安定性を確保することができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
【0048】
中空構造を有する無機粒子の平均粒子径(外径)(d50)は、好ましくは10nm以上200nm以下であり、より好ましくは20nm以上100nm以下である。中空構造を有する無機粒子の外径がこのような範囲にあれば、インク組成物中の分散を良好に保つことができ、また、記録媒体に付着された際に、所望の色を呈することができる。また、外径が200nmを超えると、無機粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがある。また、中空構造を有する無機粒子の内径(すなわち、上述したコアの外径)は、1nm以上180nm以下程度が適当である。さらに、無機粒子の内部に形成される中空構造は、複数であってもよく、すなわち、一つの無機粒子の中に複数のコア(空間)が存在していてもよい。
【0049】
無機粒子の粒径加積曲線は、有機粒子の粒径加積曲線と同様にして求めることができる。中空構造を有する無機粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。中空構造を有する有機粒子の含有量(固形分)がこの範囲にあれば、例えば、インク組成物中の無機粒子の分散を良好に保つことができる。一方、中空構造を有する無機粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。また、0.1質量%未満であると、白色度等の所望の色濃度が不足する傾向が生じることがある。
【0050】
中空構造を有する無機粒子は、市販のものを用いることができる。一方、中空構造を有する無機粒子を製造する場合、その製造方法としては、特に限定されず、例えば、熱による発泡を利用して製造する方法、液相中でエマルションを利用して製造する方法、および、後に除去できる性質を有するコア(テンプレート)の周囲に所望の無機化合物のシェルを形成した後に、酸化、溶解等によりコアを除去して空洞を形成する方法などが挙げられる。
【0051】
1.3.その他の成分
(1)水
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水を含有することができる。インク組成物に使用可能な水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水などである。上述の粒子の分散の妨げにならない程度であれば、水中にはイオン等が存在してもよい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、カビやバクテリアの発生を長期間抑制することができ、インク組成物を長期に安定に保つことができるためより好ましい。
【0052】
本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物における水の含有量は、有機粒子および無機粒子の分散が維持できる範囲で限定されないが、インク組成物の全量に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。インク組成物における水の含有量が、この範囲内であると、有機粒子および無機粒子の分散性がより良好となり保存安定性をさらに高めることができる。
【0053】
なお、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、水以外の成分の含有量が5質量%以上50質量%以下であることを示している。本明細書では、水以外の成分のことを固形分と称することがあり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下であるということは、インク組成物における固形分の濃度が5質量%以上50質量%以下であることを指している。
【0054】
(2)浸透助剤
本実施形態のインク組成物は、必要に応じて、浸透助剤を含有してもよい。浸透助剤としては、多価アルコール類が挙げられる。多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4以上8以下のアルカンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびグリコールエーテル類が挙げられる。
【0055】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルがインク組成物に配合されると、さらに良好な記録品質を得ることができる。
【0056】
このような浸透助剤の機能の一つとしては、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることが挙げられる。また、これらのアルカンジオールは、インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インク組成物の乾燥を防止し、インクジェット記録ヘッド部分における目詰まりを防止する効果も有する場合がある。
【0057】
また、アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4ないし8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。さらにこの中でも炭素数が6ないし8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、インク組成物の記録媒体への浸透性を高める作用が特に良好であるためより好ましい。
【0058】
本実施形態のインク組成物に浸透助剤を含有させる場合には、浸透助剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
【0059】
また、多価アルコールは、複数の機能を有することができ、上記浸透助剤としての機能の他の機能の一つとしては、インクの乾燥を抑制することが挙げられ、インク組成物をインクジェット式記録装置に適用した場合に、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止する効果を高めることができる。さらに、多価アルコールは、一分子内の水酸基の数が、疎水性領域の大きさに対してより多い化合物であるほうが、水分を捕捉する機能が高くインク組成物の乾燥を抑制する効果が高い。
【0060】
(3)界面活性剤
本実施形態のインク組成物は、界面活性剤を含有することができる。本実施形態のインク組成物に好適な界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤およびポリシロキサン系界面活性剤の少なくとも一種が挙げられる。これらの界面活性剤がインク組成物に配合されると、記録媒体の被記録面への濡れ性が高まり、インク組成物の記録媒体への浸透性をさらに向上させることができる。
【0061】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えばオルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えばBYK−347、BYK−348、BYK−UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。さらに、本実施形態のインク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
【0062】
本実施形態のインク組成物に界面活性剤を含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。
【0063】
(4)pH調整剤
本実施形態のインク組成物は、pH調整剤を含有することができる。本実施形態のインク組成物に好適なpH調整剤としては、特に制限されず、例えばリン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの少なくとも一種が挙げられる。またこれらのうち、pH調整剤としてトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミンを選択すると、インク組成物のpHの調整がより容易となる。インク組成物にpH調整剤を含有させる場合には、その含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%であり、より好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0064】
(5)その他の成分
本実施形態のインク組成物は、例えば画像の記録媒体への定着を目的として、樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、シアノアクリレート、アクリルアミド、オレフィン、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、塩化ビニリデンの単独重合体または共重合体、あるいはその変性体、あるいはポリウレタン、フッ素樹脂、天然樹脂等が挙げられる。なお、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でもよい。また、樹脂として、ポリウレタンを用いる場合には、インク組成物における分散性、記録媒体に付着した際の記録媒体への接着性が良好な点で、ポリカーボネート系またはポリエーテル系のポリウレタンが好ましい。さらに、ポリウレタンを用いる場合は、該ポリウレタンの合成は、公知の方法を適用することができ、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、を反応させる方法を用いることができる。
【0065】
樹脂の機能の一つとしては、有機粒子および無機粒子を記録媒体に定着させることが挙げられる。
【0066】
本実施形態のインク組成物は、必要に応じて、重合開始剤を含有してもよい。例えば、インク組成物が、重合性官能基を有する化合物を含む場合、熱を加えたり、放射線を照射したりすることにより、重合することができるが、その重合の速度をより高める必要がある場合には、熱重合開始剤や放射線重合開始剤を添加することができる。
【0067】
なお、水性のインク組成物とする場合には、重合開始剤は、必ずしも水溶性でなくてもよく、油溶性であってもよいし、難溶性であってもよい。これは、例えば、重合開始剤が油溶性である場合には、重合開始剤は、水系のインク組成物において、油相に存在することになり、また、難溶性であれば、重合開始剤は、例えば、画像形成工程の後、記録媒体上で水分がある程度除去された際に、重合性官能基に接触するようになり、所望の作用を発揮することができる。さらに、重合開始剤は、相間を移動する性質を有してもよく、インク組成物に応じて、かつ、必要に応じて適宜選択されることができる。
【0068】
本実施形態のインク組成物は、有機粒子および無機粒子によって、例えば、白色(無彩色)等の画像を形成することができるが、さらに他の色材を含有してもよい。このような色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。本実施形態のインク組成物に添加することができる色材の色としては、有彩色でも無彩色でもよい。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に色彩を付与することができる。
【0069】
色材としては、顔料および染料が挙げられ、通常のインクに使用することのできる色材を特に制限なく用いることができる。インク組成物に色材を含有させる場合には、例えば、記録媒体に塗布されたときに形成される画像に、金属光沢を付与することができる。
【0070】
インク組成物に使用可能な染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料を使用することができる。
【0071】
インク組成物に使用可能な顔料としては、無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
【0072】
無機顔料としては、例えば。カーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。顔料の色としては、黒色、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであってもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックを含有させることが例示できる。
【0073】
本実施形態のインク組成物に使用可能な有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などを使用することができる。顔料の色としては、イエロー、マゼンダ、シアンなどが挙げられる。本実施形態のインク組成物に色材を含有させる場合、色材を複数含有するものであってもよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアンの基本3色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加えることができる。すなわち、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルーを含有させることが例示できる。
【0074】
また、インク組成物に顔料を含有させる場合には、当該顔料を分散させるための顔料分散剤をさらに添加してもよい。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。このような分散剤としては、通常のインクにおいて用いられている任意の分散剤を用いることができる。インク組成物に顔料分散剤を含有させる場合の含有量としては、インク組成物中の色材の含有量に対して、5〜200質量%、好ましくは30〜120質量%であり、分散すべき色材によって適宜選択するとよい。
【0075】
また、本実施形態のインク組成物には、白色の顔料を使用してもよい。インク組成物に使用可能な白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の周期表第IV族の元素の酸化物が挙げられる。白色顔料としては、その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ(酸化アルミニウム)、カオリン、クレー(粘土鉱物)、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0076】
本実施形態のインク組成物に顔料を含有させる際には、顔料はその平均粒径が10nm以上200nm以下の範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50nm以上150nm以下程度のものである。本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物に色材を含有させる場合は、色材の添加量は、0.1質量%以上25質量%以下程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下程度の範囲である。
【0077】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物には、有機溶剤を添加してもよい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、またはエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)の他、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を用いることができる。
【0078】
また、本実施形態の画像形成工程で使用されるインク組成物は、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、防腐剤、および防かび剤などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0079】
本実施形態のインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
【0080】
なお、本実施形態のインク組成物は、他の用途にも適用が可能であり、例えば、筆記具、スタンプ、記録計、ペンプロッター、インクジェット記録装置等に適用することができる。例えば用途が、インクジェット記録方式の印刷である場合、インク組成物の20℃における粘度は、好ましくは2mPa・s以上10mPa・s以下であり、より好ましくは3mPa・s以上5mPa・s以下である。インク組成物の20℃における粘度が前記範囲内にあると、ノズルからインク組成物が適量吐出され、インク組成物の飛行曲がりや飛散を一層低減することができるため、ラミネート体の形成方法に使用する場合により好適である。
【0081】
1.4.有機粒子および無機粒子の含有量
本実施形態のインク組成物において、有機粒子および無機粒子の含有量は、上述のとおりであるが、インク組成物中における有機粒子および無機粒子の含有量の比(有機粒子の量:無機粒子の量)は、2:3ないし2:1であることがより好ましい。言い換えると、インク組成物中の有機粒子の含有量が、無機粒子の含有量に対して、0.6以上2以下(質量換算)であることがより好ましい。このようにすれば、有機粒子の周囲を覆うために十分な量の無機粒子が存在することになり、インク組成物によって記録媒体に記録された画像における有機粒子の発色の変化をさらに抑制することができる。
【0082】
1.5.作用効果
本実施形態のインク組成物は、上述のように、少なくとも有機粒子および無機粒子を含有する。これにより、インク組成物が記録媒体に付着されたときに、有機粒子の周囲に無機粒子が吸着され、有機粒子の内部の空間への他の物質の侵入が抑制される。そのため、記録媒体に記録された画像における有機粒子の発色の変化を抑制することができる。なお、本実施形態のインク組成物によって記録媒体上に形成された画像は、該記録媒体とともにラミネートが施された場合、ラミネートのための密着層に接することになるが、有機粒子の内部の空間への他の物質の侵入が抑制されているため、ラミネート体を形成する場合において、記録された画像における有機粒子の発色の変化を抑制する効果が非常に優れている。
【0083】
2.画像記録方法
本実施形態の画像記録方法は、記録媒体上に、上述のインク組成物を用いて、画像を形成することにより行われる。
【0084】
2.1.記録媒体
本実施形態で使用される記録媒体としては、インクジェット記録装置によってインク組成物の液滴を付着させるまたは塗布することができるものであれば特に限定されない。本実施形態で使用される記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、多孔性フィルム、布(繊維製品)、多孔性セラミックスシート等の吸収性記録媒体が挙げられ、またプラスチック、ガラス等のインク吸収性を有さない基材の被塗布面にインク受容層やインク吸収層が形成されたものであってもよい。
【0085】
また、記録媒体は、グロス系、マット系、ダル系のいずれであってもよい。記録媒体の具体例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および、インク受容層などが形成された塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0086】
2.2.画像記録方法の具体的手法
本実施形態の画像記録方法おける画像形成の方法としては、記録媒体に対して画像を形成することができる方法であれば、特に限定されず、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーションなどの方法により行うことができる。しかし、上述のインク組成物は、インクジェット式記録ヘッドによって吐出させ、記録媒体に付着させることが好ましい。以下では、インクジェット記録装置を用いて、記録媒体上に上述のインク組成物を吐出し、記録媒体上に付着させてドット群を形成する方法の一例を示す。
【0087】
インクジェット式記録ヘッドの方式としては、例えば、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏光電極に与えて記録する方式またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式(静電吸引方式)、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式(ピエゾ方式)、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式(サーマルジェット方式)等が挙げられる。本実施形態の画像形成工程では、上記いずれのインクジェット式記録ヘッドを用いてもよい。
【0088】
本実施形態の画像記録方法で用いるインクジェット記録装置としては、上記のインクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、キャリッジなどを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドには、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの少なくとも4色のインクセットを収容するインクカートリッジを備えて、フルカラー印刷ができるように構成されてもよい。本実施形態では、これらのインクカートリッジの少なくとも1つに、あるいはさらに専用のカートリッジを設けてこれに、上述のインク組成物を充填し設置する。また、それ以外のカートリッジには、通常のインクなどが充填されてもよい。インクジェット記録装置は、内部に専用のコントロールボード等を備えており、インクジェット式記録ヘッドのインクの吐出タイミングおよびヘッド駆動機構の走査を制御することができる。
【0089】
以上のような画像記録方法により、記録媒体上に、上述のインク組成物を用いて画像を形成することができる。記録媒体上に形成される画像の態様としては、特に限定されず、記録媒体の全面、または一部にインク組成物を付着させることができる。
【0090】
本実施形態の画像記録方法によれば、上述のインク組成物を使用して記録媒体上に画像を記録するため、中空構造を有する有機粒子を含んでいて、変色が生じにくい画像を形成することができる。
【0091】
2.3.画像記録方法の変形例
変形例にかかる画像記録方法は、第1インク組成物を用いて、画像を形成する第1画像形成工程と、第2インク組成物を用いて、画像を形成する第2画像形成工程と、を含む。
【0092】
2.3.1.第1インク組成物および第2インク組成物
本変形例で用いる第1インク組成物は、中空構造を有する有機粒子を含有する。例えば、本変形例で用いる第1インク組成物は、上記実施形態で述べたインク組成物の無機粒子を含有しないものに相当する。本変形例で用いる第2インク組成物は、中空構造を有する無機粒子を含有する。例えば、本変形例で用いる第2インク組成物は、上記実施形態で述べたインク組成物の有機粒子を含有しないものに相当する。
【0093】
2.3.2.第1画像形成工程
変形例にかかる画像記録方法は、中空構造を有する有機粒子を含有する第1インク組成物を用いて、画像を形成する第1画像形成工程を有する。第1画像形成工程は、「2.2.画像記録方法の具体的手法」の項で述べたと同様の方法によって行うことができる。これにより、記録媒体上に、第1インク組成物を用いて画像を形成することができる。
【0094】
2.3.3.第2画像形成工程
変形例にかかる画像記録方法は、中空構造を有する無機粒子を含有する第2インク組成物を用いて、画像を形成する第2画像形成工程を有する。第2画像形成工程は、「2.2.画像記録方法の具体的手法」の項で述べたと同様の方法によって行うことができる。第2画像形成工程では、第1画像形成工程で形成された第1インク組成物の画像上に、第2インク組成物を付着させて行われる。
【0095】
第1画像形成工程および第2画像形成工程は、インクジェット記録装置を用いて第1画像形成工程を行った後、再度同一のまたは異なるインクジェット記録装置を用いて第2画像形成工程を行うというように逐次的に行われてもよい。また、第1画像形成工程および第2画像形成工程は、同一のインクジェット記録装置を用いて行ってもよい。この場合には、例えば、該インクジェット記録装置のインクカートリッジの1つに、第1インク組成物を充填し設置し、該インクジェット記録装置のインクカートリッジの他の1つに、第2インク組成物を充填し設置する。これにより、同一のインクジェット記録装置によって、第1画像形成工程および第2画像形成工程を行うことができる。
【0096】
以上のように、記録媒体上に第1インク組成物の画像を形成し、その画像上に中空構造を有する無機粒子を含有する第2インク組成物を用いて画像を形成することができる。
【0097】
変形例にかかる画像記録方法において、第1画像形成工程によって記録媒体の単位面積あたりに付着される有機粒子の質量は、第2画像形成工程によって記録媒体の単位面積あたりに付着される前記無機粒子の質量に対して、0.2以上2以下であることがより望ましい。このようにすれば、有機粒子の数と無機粒子の数のバランスが良好となり、さらに変色しにくい画像を記録することができる。
【0098】
2.3.4.作用効果
変形例の画像記録方法によれば、記録媒体上に、有機粒子および無機粒子を含む画像を記録することができる。詳しくは、第1画像形成工程において、第1インク組成物が記録媒体に付着され有機粒子を含む画像が形成された後、第2画像形成工程が行われ、第2インク組成物が、有機粒子を含む画像上に付着される。このとき、有機粒子の周囲に無機粒子が吸着されることになるため、有機粒子の内部の空間への他の物質の侵入を抑制することのできる画像を記録することができる。これにより、中空構造を有する有機粒子を含んでいて、変色が生じにくい画像を記録することができる。
【0099】
3.ラミネート体の形成方法
本実施形態のラミネート体の形成方法は、画像形成工程とラミネート工程とを含む。
【0100】
3.1.画像形成工程
画像形成工程は、「2.画像記録方法」の項で述べた具体的手法および変形例と実質的に同様であるため、説明を省略する。
【0101】
3.2.ラミネート工程
ラミネート工程は、画像形成工程を経ることによって、記録媒体に画像が形成された後、該記録媒体の少なくとも画像が形成された部分に、シートを密着させる工程である。本工程で使用するシートは、本明細書では、「ラミネート用シート」または単に「シート」と称することがある。シートは、少なくとも基材および密着層を有する。シートは、基材および密着層の他に、他の機能を発揮する層を有してもよい。また、ラミネート用シートは、記録媒体の両面に設けられてもよく、このようにすれば、より記録媒体および画像を保護する作用を高めることができる。
【0102】
一般的にシートは、熱ラミネート用である場合、密着層(糊層、シーラント層などと称される場合がある)が熱可塑性樹脂で構成されており、加熱によって熱可塑性樹脂を軟化・溶融させて糊状にし、被着物に圧着させるものである。かかる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂(IO)、エチレン・αーオレフィン共重合体、アモルファスポリエステルなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、およびそれらの変性体などが挙げられる。密着層の厚さは、例えば15μm以上100μm以下とすることができる。
【0103】
また、ラミネート用シートは、市販のものを用いてもよいが、例えば、タンデム押出ラミネート、サンドイッチ押出ラミネート、ドライラミネート、など一般的に用いられている手法を用いて、基材と密着層を形成して製造することができる。この場合の加工温度は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは200〜280℃である。また、このような加工においては、例えば、基材と密着層の間にオゾン処理を施す等の操作を付加してもよい。
【0104】
3.2.1.基材
基材の形状は、例えば、薄膜状、フィルム状、シート状とすることができる。基材の厚みは特に限定されず、例えば、10μm以上2mm以下とすることができる。基材の機能の一つとしては、少なくとも記録媒体のインク組成物が付着した部位を覆って、当該部分を外力等から保護することが挙げられる。また基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であることが好ましい。さらに、基材は、記録媒体に形成された画像を基材を通して視認できる程度以上に透明であれば、着色されていてもよい。
【0105】
基材の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびポリスチレン、並びにそれらの共重合体、並びにそれらの変性体が挙げられる。また、これらの材質は、基材において延伸等により一軸または多軸の配向性が付与されてもよい。
【0106】
基材の厚みは、好ましくは6μm以上100μm以下、より好ましくは7μm以上40μm以下である。また基材には、滑剤、アンチブッロキング剤、安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、その他の添加剤が配合されていてもよい。
【0107】
3.2.2.密着層
密着層は、基材の一方の面に形成されている。密着層の厚みは、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。密着層の機能の一つとしては、記録媒体に接着、圧着または融着されることにより、記録媒体と基材とを密着させることが挙げられる。
【0108】
密着層は、例えば、記録媒体に対して、接着または熱融着可能な材質で形成される。密着層は、例えば、粘着剤や、熱可塑性樹脂により形成されることができる。熱可塑性樹脂の種類としては、特に限定されず、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアクリル酸、エチレン酢酸ビニル共重合体、およびそれらの変性体などが挙げられる。
【0109】
3.2.3.ラミネートの態様
本工程におけるラミネートの態様は、一般的な方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、画像が記録された記録媒体を、ラミネート用シートによって挟持し、この積層体を、プレスまたはローラーによって圧着させる方法が挙げられる。このとき、密着層が粘着剤を含む場合は、加熱等を行う必要はない。
【0110】
一方、密着層が熱可塑性樹脂を含む場合には、ラミネート工程は、加熱して行われることが好ましい。ラミネート工程において加熱を行う場合には、加熱によって達成される温度は、40℃以上200℃以下が好ましい。
【0111】
3.3.ラミネート体
上記のラミネート体の形成方法によって形成されるラミネート体は、記録媒体と、記録媒体上に形成され、中空構造を有する有機粒子および中空構造を有する無機粒子を含む画像層と、少なくとも前記画像層を覆うように形成されたシートと、を含む。
【0112】
このようなラミネート体は、画像層の粒子に基づく色が変化しにくく、画像の信頼性を高めることができる。また、インク組成物の項で述べたように、中空構造を有する有機粒子の平均粒子径d50が、0.4μm以上0.8μm以下であるようにすれば、画像層の色の変化をさらに抑制することができる。
【0113】
なお、上述のインク組成物によって、記録媒体に形成された画像において、中空構造を有する有機粒子を白色の色材として用いる場合、画像の白色度は、日本工業規格(JIS)Z8715:1999「色の表現方法−白色度」に記載された指標(例えば白色度指数)によって数値化することができる。このような数値を得るための測定は、例えば、日本工業規格(JIS)Z8722:2000「色の測定方法−反射および透過物体色」に記載された方法によって行うことができる。また、このような測定が可能な装置としては、一般に市販されている装置を用いることができる。一方、簡易的に白色度を評価する場合には、例えばLab表色系を評価可能な装置を用いて、L*値(明度)を用いて行うことができる。
【0114】
4.実施例、比較例および例
以下、実施例、比較例および例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0115】
4.1.インク組成物およびラミネート体
4.1.1.インク組成物
表1に示す配合量で、中空構造を有する有機粒子、中空構造を有する無機粒子、中空構造を有さない粒子、多価アルコール、樹脂、浸透助剤、界面活性剤、pH調整剤、水、および有機溶剤を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、実施例1〜7、および比較例1〜3の各インク組成物を得た。なお、表1の実施例1〜7、および比較例1〜3に記載されている数値の単位は、質量%であり、粒子、樹脂についてはいずれも固形分換算である。
【0116】
【表1】

【0117】
中空構造を有する有機粒子は、市販品「SX8782(D)」(JSR株式会社製)を用いた。SX8782(D)は、外径1.0μm・内径0.8μmの水分散タイプであり、固形分濃度が20.5%である。また、「SX8782(D)」の熱分解温度は、300℃〜330℃である。
【0118】
中空構造を有する無機粒子は、市販品「シリナックス」(日鉄鉱業株式会社製)を用いた。シリナックスは、外径100nm・内径80nmの水分散タイプであり、固形分濃度が10%である。
【0119】
中空構造を有さない粒子としては、市販品「クォートロン PL−20」(扶桑化学工業株式会社製)を用いた。クォートロンは、材質がコロイダルシリカであり、平均粒子径220nmの水分散タイプの固形分濃度が20%である。
【0120】
樹脂としては、「レザミンD2020」(大日精化工業株式会社製ポリエーテル系アニオン性ポリウレタン、Tg=−30℃、平均粒子径=100μm、自己乳化型ディスパージョン)である。
【0121】
多価アルコールは、試薬として入手したグリセリンを用いた。
【0122】
浸透助剤としては、試薬として入手した1,2−ヘキサンジオールを用いた。
【0123】
界面活性剤としては、「BYK−348」(ポリシロキサン系界面活性剤)または「BYK−U3500」(ポリエーテル変性ポリシロキサン系界面活性剤)(いずれもビックケミー・ジャパン株式会社製)を用いた。
【0124】
pH調整剤としては、試薬として入手したトリエタノールアミンを用いた。
【0125】
水は、試薬として入手したイオン交換水を用いた。
【0126】
有機溶剤は、試薬として入手したイソプロピルアルコールを用いた。
【0127】
4.1.2.インク組成物の評価方法
(吐出性評価)
表1に記載された各例のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。そしてインクカートリッジをプリンタに装着し、記録媒体として、インクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)100枚に対して、連続してテストパターンの印刷を行い以下の評価基準で評価を行った。
【0128】
各例の画像を観察して、
A:ノズル抜け(画像の抜け)が100枚にわたってない
B:ノズル抜けが30枚以上の時点で生じた
C:ノズル抜けが30枚以内の時点で生じた
とし、各例の結果を表1に併記した。
【0129】
4.2.ラミネート体
4.2.1.ラミネート用シート
ラミネート用シートは、密着層にポリアクリル酸を含有するラミネート用シートであって、三井化学株式会社製、商品名「アルマテックスHWS1140」を入手して用いた。このポリアクリル酸のTgは、40℃である。
【0130】
4.2.2.ラミネート体の作成
まず、表1に記載された各例のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。そしてインクカートリッジをプリンタに装着し、記録媒体として、インクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して印刷を行った。印刷は、720×720dpiの解像度で行い、パターンは、100%dutyのベタパターンとした。得られた印刷物は、目視観察では白色を呈した。なお、ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いたもので、印刷には用いなかった。
【0131】
なお、本明細書において、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
次に、得られた印刷物を乾燥させた後、ラミネート用シートによって狭持し、フジプラ株式会社製、型式LPA3301ラミネート装置によって、ラミネート体を形成した。そして、ラミネートは、温度を約70℃、シートの搬送速度を600mm/分に設定して行った。
【0132】
4.2.3.ラミネート体の評価方法
(ラミネート体の評価)
各実施例および各比較例のラミネート体のエージング試験を行った。
【0133】
まず、各実施例および各比較例のラミネート体の白色度を、それぞれL*値を測定することによって評価した。測定は、標準黒色紙に各試料を載せて行った。用いた装置は、Gretag Macbeth SpectroscanおよびSpectrolino(X−Rite社製)であり、光源はD50とした。
【0134】
次に各試料のエージングを、それぞれ60℃にて1週間実施した。そして、再び各試料のラミネート体の白色度を、それぞれ上記と同様にL*値によって評価した。
【0135】
評価基準は、
A:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3未満
B:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が3以上5未満
C:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が5以上10未満
D:ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が10以上
とし、各試料の結果を表1に併記した。なお、ラミネート直後のL*値とエージング後のL*値の差が大きいほど、目視観察では白さが低下して透明感を生じる傾向があった。
【0136】
4.3.評価結果
表1をみると、実施例の試料は、いずれも、ラミネート後のエージング特性に優れていた。すなわち、中空構造を有する有機粒子および中空構造を有する無機粒子を含む実施例のインク組成物を用いて形成したラミネート体は、画像の透明化が生じにくいことが判明した。これに対して、有機粒子を含み無機粒子を含まない比較例1、有機粒子および中空構造を有さない粒子を含む比較例2、および有機粒子を含まない比較例3のインク組成物を用いて形成したラミネート体は、画像の透明化が生じやすいことが判明した。
【0137】
一方、無機粒子の含有量の比較的大きい実施例5および実施例6のインク組成物において、吐出性が若干悪くなっていた。また、無機粒子の含有量の小さい実施例1のインク組成物において、画像の透明化が若干生じていた。
【0138】
4.4.画像記録方法およびラミネート体の例
4.4.1.ラミネート体の作成
表1に記載された比較例1のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのブラックインク室に充填し、表1に記載された比較例3のインク組成物を、インクジェットプリンタ(「PX−G930」セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのマゼンダインク室に充填した。そしてインクカートリッジをプリンタに装着し、記録媒体として、インクジェット用専用記録用紙(「OHPシート」セイコーエプソン株式会社製)に対して、比較例1のインク組成物が比較例3のインク組成物よりも先んじて付着するようにして、ベタパターンの印刷を行って、例1〜6の記録物を作成した。このとき、第1画像形成工程として、比較例1のインク組成物の印字濃度(duty)を100%とし、第2画像形成工程として、比較例3のインク組成物の印字濃度(duty)を各例において、表2に記載したように変化させて記録物を作成した。
【0139】
【表2】

【0140】
4.4.2.評価方法
「4.2.3.ラミネート体の評価方法」の項で述べたと同様にして、ラミネート体のエージング試験を行った。
【0141】
4.5.評価結果
表2をみると、例の試料は、いずれも、ラミネート後のエージング特性に優れていた。すなわち、有機粒子を含むインク組成物を用いて第1画像形成工程を行った後、無機粒子を含むインク組成物を用いて第2画像形成工程を行うことにより形成したラミネート体は、画像の透明化が生じにくいことが判明した。一方、画像における無機粒子の含有量に対する有機粒子の含有量が、質量比で0.2以上2以下である例2ないし4では、画像の透明化を防止する効果が強く現れることが判明した。
【0142】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する有機粒子と、
中空構造を有する無機粒子と、
を含有することを特徴とする、インク組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記有機粒子の含有量が、前記無機粒子の含有量に対して、0.6以上2以下であることを特徴とする、インク組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記有機粒子の平均粒子径d50は、0.4μm以上0.8μm以下であることを特徴とする、インク組成物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記有機粒子の含有量は、5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、インク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
前記無機粒子の含有量は、0.5質量%以上20質量%以下であることを特徴とする、インク組成物。
【請求項6】
記録媒体上に、中空構造を有する有機粒子を含有する第1インク組成物を用いて、画像を形成する第1画像形成工程と、
前記第1インク組成物によって形成された画像上に、中空構造を有する無機粒子を含有する第2インク組成物を用いて、画像を形成する第2画像形成工程と、
を含むことを特徴とする、画像記録方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1画像形成工程において、前記記録媒体の単位面積あたりに付着される前記有機粒子の質量が、前記第2画像形成工程において、前記記録媒体の単位面積あたりに付着される前記無機粒子の質量に対して、0.2以上2以下であることを特徴とする、
【請求項8】
記録媒体と、
前記記録媒体上に形成され、中空構造を有する有機粒子および中空構造を有する無機粒子を含む画像層と、
少なくとも前記画像層を覆うように形成されたシートと、
を含むことを特徴とする、ラミネート体。

【公開番号】特開2012−7089(P2012−7089A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144611(P2010−144611)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】