説明

インク組成物及びこれを用いた記録方法、記録物

【課題】 種々の記録媒体、特に光沢を有する記録媒体に対して優れた光沢感を有する画像を得ることが可能であって、ブロンズ現象が少なく、定着性やグロスチェンジ等の耐擦性も良好なインク組成物を提供すること。
【解決手段】 色材として水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤と添加剤として樹脂エマルジョンを少なくとも含有するインク組成物であって、水不溶性ポリマーの重量平均分子量が50000〜150000であり、樹脂エマルジョンは少なくとも該水不溶性ポリマーと構成成分が同一構造を持ち、その分子量が該水不溶性ポリマーに対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーからなることを特徴とするインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインク組成物に関する。さらに詳しくは、インクジェット記録方式に用いるのに好適なインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの小滴を飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷方法である。近年のインクジェット記録技術の革新的な進歩により、これまで写真やオフセット印刷の分野であった高精細な画像記録(印刷)にもインクジェット記録方法を用いられるようになってきており、一般に用いられる普通紙やインクジェット記録用の専用紙(マット系、光沢系)に対してのみならず、印刷本紙等の記録媒体にも高品質な記録が求められてきている。
【0003】
インクジェット記録に用いられるインクとしては、一般に着色剤となる色材と水と水溶性有機化合物、界面活性剤等を含むインク組成物が知られている。
着色剤としては、染料あるいは顔料が用いられ、特にカラーインクは色の彩度の高さ、透明性、水への溶解性が高い等の理由から水溶性染料が使用される場合が多い。しかし、このような染料は一般的に耐光性や耐ガス性の点が不十分であり、また、水溶性であることから、耐水性にも問題があるため、水溶性染料を用いたインクにより記録された記録物は、記録画像の保存性に劣るという欠点を有している。これに対して、水に不溶な着色剤は、耐水性の面において有利である。特に水に不溶な着色剤の中でも顔料はこうした耐光性、耐ガス性、耐水性に優れた色材であるため、この色材特性を活かした顔料インクの開発が進められてきており、例えば、顔料を界面活性剤や高分子分散剤で分散した水性顔料インクや顔料表面に水分散可能な官能基を付与させた自己分散顔料を用いた水性顔料インク、顔料を水分散可能な樹脂で被覆した着色微粒子を用いた水性顔料インクなどが提案されている。
【0004】
このような顔料インクは、顔料粒子(顔料含有の着色微粒子も含む)がインク液中で安定分散しているものであるが、インクが紙などの記録媒体に付着した後、インクが乾燥する過程で、水分や、揮発性の溶剤類が蒸発することにともなって、安定分散系が崩れ、顔料の凝集が起こりやすい。凝集した顔料が紙などの記録媒体上に析出すると、表面の平滑性が失われ、光沢性の低下や印刷画像の均一性が劣化し、高画質な画像を得られないという問題がある。また、析出した顔料の反射光によって、本来の色相とは異なる色相の色が見えるようになり(ブロンズ現象)、均一な所望の色相の画像が得られないという問題があった。また、表面に析出した顔料が擦れによって剥がれてしまうという定着性や、指などで触った際に表面の顔料が擦れたり、つぶれたりして、光沢感が変わるというグロスチェンジなどの耐擦性にも問題があった。
【0005】
顔料インクの画像品質については、光沢性や分散性等を向上させる目的で、インク中に分散している顔料の粒子径を限定すること(特許文献1参照)や、顔料と顔料誘導体を同時に含有させること(特許文献2参照)や、にじみや発色性を向上させる目的で、ポリマー微粒子を含有させること(特許文献3参照)や、無機微粒子を含有させること(特許文献4参照)や、普通紙における印字濃度とインクジェット専用紙における光沢性を向上させる目的で、顔料を含有する水不溶性ビニルポリマー分散体を含有するインク(特許文献5参照)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、このような顔料インクにおいても、光沢性や印刷画像の均一性には不十分であり、特に紙表面に凝集した顔料の反射光によって、本来の色相とは異なる色相の色に見えてしまう(ブロンズ現象)や、インクの定着性やグロスチェンジといった耐擦性に対しては、水溶性染料インクの品質に対して劣るという課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2002−356637号公報
【特許文献2】特開2002−294134号公報
【特許文献3】特開2001−123098号公報
【特許文献4】特開平11−209671号公報
【特許文献5】特開2005−41994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、種々の記録媒体、特に光沢を有する記録媒体に対してブロンズ現象のなく、優れた光沢感を有する画像を得ることが可能なインク組成物であって、耐擦性が良好な、特にインクジェット記録方式に用いるのに好適なインク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは鋭意検討の結果、 色材として水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤と添加剤として樹脂エマルジョンを少なくとも含有するインク組成物であって、水不溶性ポリマーの重量平均分子量が50000〜150000であり、樹脂エマルジョンは少なくとも該水不溶性ポリマーと構成成分が同一構造を持ち、その分子量が該水不溶性ポリマーに対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーからなることを特徴とするインク組成物によって、前記課題を解決し得るとの知見を得た。本発明は、かかる知見に基づくものであり、本発明の構成は以下の通りである。
(1)色材として水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤と添加剤として樹脂エマルジョンを少なくとも含有するインク組成物であって、水不溶性ポリマーの重量平均分子量が50000〜150000であり、樹脂エマルジョンは少なくとも該水不溶性ポリマーと構成成分が同一構造を持ち、その分子量が該水不溶性ポリマーに対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーからなることを特徴とするインク組成物。
(2)前記着色剤が水に不溶な着色剤であることを特徴とする(1)に記載のインク組成物。
(3)前記水不溶性ポリマー及び樹脂エマルジョンを構成するポリマーが分岐型ポリマーであることを特徴とする(1)または(2)に記載のインク組成物。
(4)前記樹脂エマルジョンの平均粒子径が20〜200nmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のインク組成物。
(5)前記着色剤が顔料であり、少なくとも水と水溶性有機化合物を含み、インク組成物中の顔料粒子の平均粒子径が50〜150nmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載のインク組成物。
(6)前記水溶性有機化合物として、少なくとも多価アルコール類と固体湿潤剤とグリコールのブチルエーテル類とを併用することを特徴とする(5)に記載のインク組成物。
(7)多価アルコール類がグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールから選択される2種類以上の併用であり、固体湿潤剤がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンまたは尿素であり、ブチルグリコール類がジエチレングリコールモノブチルエーテル又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする(5)または(6)に記載のインク組成物。
(8)インクジェット記録方式に用いられることを特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載の組成物。
(9)(1)〜(8)の何れかに記載のインク組成物を記録媒体に付着させて印字を行う記録方法。
(10)(1)〜(8)の何れかに記載のインク組成物において、インクの液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
(11)(9)または(10)に記載の記録方法によって記録が行われた記録物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のインク組成物を、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のインク組成物は、水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤と樹脂エマルジョンを少なくとも含有するインク組成物であって、水不溶性ポリマーの重量平均分子量が50000〜150000であり、樹脂エマルジョンは少なくとも該水不溶性ポリマーと類似構造を持ち、その分子量が該水不溶性ポリマーに対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーからなることを特徴とするインク組成物であることを特徴とする。
これらの各構成要素について詳細に説明する。
【0011】
[色材]
本発明の色材は、少なくとも水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤であり、この色材に用いられる水不溶性ポリマーは、疎水性基をもつモノマーと親水性基を持つモノマーとのブロック共重合体樹脂からなり、少なくとも塩生成基をもつモノマーを含有しているもので、中和後に25℃の水100gに対する溶解度が1g未満であるポリマーをいう。
【0012】
本発明の水不溶性ポリマーによって被覆されていた着色剤に用いられる水不溶性ポリマーは、疎水性基をもつモノマーと親水性基を持つモノマーとのブロック共重合体樹脂からなり、少なくとも塩生成基をもつモノマーを含有しているもので、中和後に25℃の水100gに対する溶解度が1g未満であるポリマーをいう。
【0013】
疎水性基を持つモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類や酢酸ビニル等のビニルエステル類やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0014】
親水性基を持つモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコールモノメタクリレートなどがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。特に、ポリエチレングリコール(2〜30)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(1〜15)・プロピレングリコール(1〜15)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体)(1〜30)メタクリレートなどの分岐鎖を構成するモノマー成分を用いることによって、印刷画像の光沢性が向上する。
【0015】
塩生成基をもつモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンカルボン酸、マレイン酸などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0016】
さらに、片末端に重合成官能基を有するスチレン系マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマーなどのマクロモノマーやその他のモノマーを併用することもできる。
【0017】
本発明の水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の重合法により、モノマーを共重合させることによって得られるが、特に溶液重合法が好ましく、重合の際には、公知のラジカル重合剤や重合連鎖移動剤を添加してもよい。
【0018】
本発明の水不溶性ポリマーによって被覆されていた着色剤は、例えば、上記の水不溶性ポリマーをメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルエーテルなどの有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に着色剤を添加し、次いで中和剤及び水を添加して混練、分散処理を行うことにより水中油滴型の分散体を調整し、得られた分散体から有機溶媒を除去することによって、水分散体として得ることができる。混練、分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機などを用いることができる。
中和剤は、エチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が好ましく、得られる水分散体のpHが6〜10であることが好ましい。
【0019】
また、被覆する水不溶性ポリマーとしては、重量平均分子量が10000〜150000程度のものが、着色剤、特に顔料を安定的に分散させる点で好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分析方法により測定することができる。
本発明の水不溶性ポリマーによって被覆されていた着色剤に用いられる着色剤としては、「染料便覧」(出版元;丸善株式会社)等に記載の既存の染料、顔料を用いることができる。
本発明の着色剤は、水に不溶の着色剤であることが好ましく、より好ましい着色剤は顔料である。本発明に用いることができる顔料としては、公知の無機顔料及び有機顔料のいずれも用いることができ、カラーインデックスに記載されているピグメントイエロー、ピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー、ピグメントブラック等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、黄色4号、5号、205号、401号;橙色228号、405号;青色1号、404号等の有機顔料や、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられる。例えば、C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,17,24,34,35,37,42,53,55,74,81,83,95,97,98,100,101,104,108,109,110,117,120,128,138,150,153,155,174,180,198、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、202、209、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16、C.I.ピグメントブラック1,7等であり、複数の顔料を用いてインク組成物を形成することもできる。
【0020】
これらの顔料は、0.5〜8重量%の範囲で本発明のインク中に含有されることが好ましい。含有量が0.5重量%未満では印字濃度(発色性)が不充分である場合があり、また8重量%よりも大きいと光沢メディア上での光沢性劣化やノズルの目詰まり、吐出の不安定を起こす等の信頼性に不具合が生じる場合がある。
【0021】
さらに、着色剤と水不溶性ポリマーの比率が、着色剤:水不溶性ポリマー=1:0.2〜1:1の比率にあることが、分散安定性や、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点、光沢メディア上での光沢性の観点から好ましい。詳しくは、水不溶性ポリマーが着色剤に対して、20%より少ないと安定分散ができず、着色剤の凝集が発生し、着色剤に対して100%より多いとブロンズ現象は小さくなってくるが、発色が低下し、光沢メディア上での光沢も劣化するためである。
また、発色や光沢メディア上での光沢性の観点から、インク組成物中での顔料粒子の平均粒子径が50〜150nmの範囲であることが好ましい。尚、これらの平均粒子径は、Microtrac UPA150(マイクロトラック社製)や粒度分布測定機LPA3100(大塚電子(株)製)等の粒径測定によって得ることができる。
【0022】
なお、本発明の水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤は、着色剤が水不溶性ポリマーによって完全に被覆されずに、一部の着色剤が露出した形状でもよい。
【0023】
[樹脂エマルジョン]
本発明の樹脂エマルジョンは、少なくとも前記の水不溶性ポリマーと類似構造で、疎水性基をもつモノマーと親水性基を持つモノマーとのブロック共重合体樹脂からなり、少なくとも塩生成基をもつモノマーを含有しているものである。ここで、類似構造とは、着色剤を被覆する水不溶性ポリマーと構成成分が同一ということである。
【0024】
疎水性基を持つモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類や酢酸ビニル等のビニルエステル類やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0025】
親水性基を持つモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコールモノメタクリレートなどがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。特に、ポリエチレングリコール(2〜30)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(1〜15)・プロピレングリコール(1〜15)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体)(1〜30)メタクリレートなどの分岐鎖を構成するモノマー成分を用いることによって、印刷画像の光沢性が向上する。
【0026】
塩生成基をもつモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンカルボン酸、マレイン酸などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
【0027】
さらに、片末端に重合成官能基を有するスチレン系マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマーなどのマクロモノマーやその他のモノマーを併用することもできる。
【0028】
本発明の水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の重合法により、モノマーを共重合させることによって得られるが、特に溶液重合法が好ましく、重合の際には、公知のラジカル重合剤や重合連鎖移動剤を添加してもよい。
【0029】
重合で得られた樹脂を有機溶媒に溶解させ、中和剤及び水を添加して分散処理を行い、得られた分散体から有機溶媒を除去することによって、樹脂エマルジョンとして得ることができる。
中和剤は、エチルアミン、トリメチルアミン等の3級アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が好ましく、得られる水分散体のpHが6〜10であることが好ましい。
【0030】
この樹脂エマルジョンと水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤を併用することにより、着色剤に対して水不溶性ポリマーの比率が増えるにしたがって発生する発色低下や、光沢メディア上での光沢劣化を防ぐことができ、さらにインク組成物中の樹脂成分の増量にともない、定着性やグロスチェンジといった耐擦性が向上する。
【0031】
一般にポリマー分散の着色剤分散体に添加剤としての樹脂エマルジョン等のポリマーを併用すると、分散剤であるポリマーと添加剤であるポリマーにおいて、着色剤に対して吸脱着が起こり、分散安定性が崩れ、保存安定性が劣化するという問題があるが、本発明の樹脂エマルジョンは着色剤を被覆する水不溶性ポリマーと類似構造をもつことで、インク組成物中に併用される場合に水不溶性ポリマーと樹脂エマルジョンの吸脱着が起こった場合も安定分散が可能である。
また、本発明の樹脂エマルジョンは該水不溶性ポリマーの分子量に対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーであることにより、定着性が良好で、信頼性が高いインク組成物を提供できる。これは、樹脂エマルジョンの重量平均分子量が水不溶性ポリマーの分子量に対して、1.5倍より小さい場合は定着作用が不十分であり、4倍を超える場合は吐出安定性などの信頼性に不具合を与えるためである。
さらに、樹脂エマルジョンの平均粒子径が、20〜200nmの範囲にあることが、分散安定性や記録画像の光沢性やブロンズ改善の観点から好ましい。尚、これらの平均粒子径は、Microtrac UPA150(Microtrac社製)や粒度分布測定機LPA3100(大塚電子(株)製)等の粒径測定によって得ることができる。
【0032】
[水溶性有機化合物]
本発明のインクジェット記録方法に好適なインク組成物であり、水と水溶性有機化合物を含有する。水は主溶媒であり、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存を可能にする点で好ましい。
【0033】
上記水溶性有機化合物として、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレンフリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテンー1,4−ジオール、2−エチルー1,3−ヘキサンジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール類、トリメチロールエタン、メチロールプロパン、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、尿素類等のいわゆる固体湿潤剤、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルー2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができ、これらの水溶性有機化合物は、インク組成物の適正な物性値(粘度等)の確保、印刷品質、信頼性の確保という観点で、インク組成物中に10〜50重量%含まれることが好ましい。
さらに、本発明においては、水溶性有機化合物として、少なくとも多価アルコール類と固体湿潤剤とグリコールのブチルエーテル類とを併用することで、印刷品質、吐出安定性、目詰まり回復性等の信頼性に優れるインク組成物を提供できる。これは、多価アルコール類、固体湿潤剤が保水性(保湿性)と普通紙等の記録メディアへのインク組成物の浸透性の制御に好適であり、グリコールのブチルエーテル類が吐出安定性と記録メディアへのインク組成物の浸透性の制御に好適であり、これらを併用することで、さらに印刷品質、吐出安定性、目詰まり回復性等の信頼性の高いインク組成物を提供できる。
特に好ましい水溶性有機化合物として、多価アルコール類がグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールから選択される2種類以上の併用であり、固体湿潤剤がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンまたは尿素であり、ブチルグリコール類がジエチレングリコールモノブチルエーテル又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0034】
[その他の添加剤]
さらに、インクの記録媒体への濡れ性を制御し、均一な光沢性を付与したり、記録媒体への浸透性やインクジェット記録方法における印字安定性を得るために表面張力調整剤を含有することが好ましい。表面張力調整剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤やポリエーテル変性シロキサン類が好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の例としては、サーフィノール420、440、465、485、104、STG(エアープロダクツ社製品)、オルフィンPD−001、SPC、E1004、E1010(日信化学工業(株)製品)、アセチレノールE00、E40、E100、LH(川研ファインケミカル(株)製品)等が挙げられる。またポリエーテル変性シロキサン類としては、BYK−346、347、348、UV3530(ビックケミー社製品)などが挙げられる。これらは、インク組成物中に複数種用いてもよく、表面張力20〜40mN/mに調整されることが好ましく、インク中には0.1〜3.0重量%含まれる。
【0035】
さらに、本発明のインク組成物には、pH調整剤を含有することが好ましい。
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類等を用いることが出来るが、好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンから選択される少なくとも1種類のpH調整剤を含み、pH6〜10に調整されることが好ましい。pHがこの範囲を外れると、インクジェットプリンタを構成する材料等に悪影響を与えたり、目詰まり回復性が劣化する。
【0036】
また、必要に応じて、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐・防カビ剤等を添加することも出来る。
【0037】
発明のインクはペン等の筆記具類、スタンプ等に好適に使用することができるが、インクジェット記録用インクセットとしてさらに好適に使用できる。本発明においてインクジェット記録方式とは、インクを微細なノズルより液滴として吐出して、その液滴を記録媒体に付着させる方式を意味する。具体的に以下に説明する。
【0038】
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印可し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
【0039】
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
【0040】
第三の方法は圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0041】
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
【0042】
以上のいずれの方式も本発明のインク組成物を用いたインクジェット記録方法に使用することができる。
【0043】
本発明の記録物は、少なくとも上記インク組成物を用いて記録が行われたものである。この記録物は、本発明のインク組成物を用いることにより、発色に優れ、光沢感のある記録物、さらには耐擦性が良好な記録物として提供される。
【0044】
<実施例>
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
[着色剤分散液の調整]
水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤を分散粒子とする着色剤分散液を下記の方法によって調整した。
【0046】
(水不溶性ポリマー1〜3の合成)
有機溶媒(メチルエチルケトン)20重量部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03重量部、重合開始剤、表1に示す各モノマーを用い、窒素ガス置換を十分に行った反応容器内に入れて75℃攪拌下で重合し、モノマー成分100重量部に対してメチルエチルケトン40重量部に溶解した2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル0.9重量部を加え、80℃で1時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
(着色剤分散液1)
水不溶性ポリマー1として得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた5部をメチルエチルケトン15部に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてポリマーを中和した。さらに、C.I.ピグメントイエロー74を15部加え、水を加えながら分散機で混練した。
得られた混練物にイオン交換水100部を加え攪拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%のイエロー顔料の水分散体を得た。
【0049】
(着色剤分散液2)
水不溶性ポリマー2として得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた6部をメチルエチルケトン45部に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてポリマーを中和した。さらに、C.I.ピグメントバイオレット19を18部加え、水を加えながら分散機で混練した。
得られた混練物にイオン交換水120部を加え攪拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%のマゼンタ顔料の水分散体を得た。
【0050】
(着色剤分散液3)
水不溶性ポリマー3として得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた8部をメチルエチルケトン15部に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてポリマーを中和した。さらに、C.I.ピグメントブルー15:4を12部加え、水を加えながら分散機で混練した。
得られた混練物にイオン交換水100部を加え攪拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が20重量%のシアン顔料の水分散体を得た。
【0051】
[樹脂エマルジョンの調製]
樹脂エマルジョンを構成するポリマーは表1に示すモノマーに代えて、表2に示すモノマーを用い、前述の水不溶性ポリマー1〜3の合成と同様の方法で調整することができる。
【0052】
【表2】

【0053】
(樹脂エマルジョン1)
水不溶性ポリマー4として得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた5部をメチルエチルケトン15部に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液を用いてポリマーを中和した。この中和物にイオン交換水100部を加え攪拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去して固形分濃度が15重量%の樹脂エマルジョン1を得た。
【0054】
(樹脂エマルジョン2)
水不溶性ポリマー5として得られたポリマー溶液を樹脂エマルジョン1と同様にして、固形分濃度が15重量%の樹脂エマルジョン2を得た。
【0055】
(樹脂エマルジョン3)
水不溶性ポリマー6として得られたポリマー溶液を樹脂エマルジョン1と同様にして、固形分濃度が15重量%の樹脂エマルジョン3を得た。
【0056】
[インクの調製]
表3に示す割合で各成分を混合し、室温にて2時間攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過して、各インクを調製した。ただし表3中に示す添加量は全て重量%濃度として表わされており、着色剤分散液の( )内の数字は着色剤の固形分濃度が表わされている。またイオン交換水の「残量」とは、インク全量が100部となるようにイオン交換水を加えることを意味する。
【0057】
【表3】

【0058】
(試験1)平均粒子径
粒度分布計(マイクロトラック社製のUPA−150)を用いて、各インク組成物を純水で1000倍希釈、希釈液の粒度分布を測定し、体積平均粒子径を求めた。
【0059】
(試験2)ブロンズ
各インク組成物について、インクジェットプリンタPX−V600を用いて、100%及び50%Dutyのパッチパターンを作成し、EPSON写真用紙<光沢>、(商品名:セイコーエプソン株式会社製)に1440dpiの解像度で印刷を行い、蛍光灯(F11光源)下で、印刷物の角度を変えて目視で観察し、反射光の色相変化について以下の基準に基づいて判定した。
A;いずれのパッチも反射光が白く、違和感のない色相が観察できる
B;いずれかのパッチでやや反射光に色が確認できるが、違和感のない色相が観察できる
C;印刷物の反射光に色が確認でき、違和感がある。
【0060】
(試験3)光沢性
試験2の印刷物について、光沢計GM−268(コニカミノルタ社製)を用いて20°光沢(G20)を測定し、光沢度の平均値の結果から以下の基準に基づいて判定した。
なお、光沢性は印刷物の一般に鏡面光沢の指標として用いる60°光沢が高い値を示しても見た目の光沢感と一致しないことがわかり、鋭利検討の結果、視野角20°での光沢度が見た目の光沢感と一致してくることが判明したため、本発明においては、視野角20°の光沢を指標値とした。
A;60≦G20
B;45≦G20<60
C;G20<45
【0061】
(試験4)定着性
試験2の印刷物について、印刷後、記録物を24時間自然乾燥させた後、ゼブラ社製のイエロー水性蛍光ペンZEBRA PEN2(登録商標)を用いて、印刷文字を筆圧300g/15mmで擦り、汚れの有無を目視で観察した。その結果を下記基準に基づき判定した。
A;同一部分を2回擦っても全く汚れが生じない。
B;1回の擦りまでは汚れが生じないが、2回の擦りでは汚れが発生する。
C;1回の擦りで汚れが発生する。
【0062】
(試験5)グロスチェンジ
試験2の印刷物について、印刷後、記録物を約2時間自然乾燥させた後、指で軽く擦り、印刷面の光沢変化の有無を目視で観察した。その結果を下記基準に基づき判定した。
A;指で擦った跡が判別できず、光沢変化がない
B;指で擦った跡がやや判別できるが、光沢変化は殆どない
C;指で擦った跡が判別できる
【0063】
(試験6)保存安定性
アルミパックにインクを50g入れた状態で70℃の環境下に1週間放置した。放置後、異物(沈降物)の発生の有無について、また、異物の発生がないものについては、更に物性(粘度、表面張力、pH、粒子径)の変化について、下記基準に基づき判定した。
A;異物の発生がなく、物性の変化もない。
B;異物の発生はないが、物性が若干変化する。
C;異物が発生するか、物性が著しく変化する。
【0064】
(試験7)吐出安定性
試験2での印刷の際の印字開始からインクエンドまでにインクのドット抜けや飛行曲がりが発生するか、また発生した場合に正常印刷への復帰動作として行うプリンタクリーニングが何回必要であったかを評価し、下記基準に基づき判定した。
A;発生しないかクリーニング1回。
B;クリーニング2又は4回。
C;クリーニング5回以上。
【0065】
(試験8)目詰まり回復性
インクジェットプリンタPX−V600を用いて、各インクをヘッドに充填し、全ノズルよりインクが吐出していることを確認した後、インクカートリッジがない状態で、かつホームポジション外の位置(ヘッドがプリンタに備えたキャップの位置からずれており、ヘッドにキャップがされていない状態)で40℃の環境下に1週間放置した。放置後に、再び全ノズルよりインク組成物が吐出するまでに要したクリーニングの回数を調べ、下記基準に基づき判定した。
A;クリーニング1回。
B;クリーニング2〜5回。
C;クリーニング6回以上
以上の評価結果を表4にまとめる。
【0066】
【表4】

【0067】
表3から明らかなように、本発明のインク組成物によれば、種々の記録媒体、特に光沢を有する記録媒体に対して優れた光沢感を有する画像を得ることが可能なインク組成物であって、ブロンズ現象が少なく、定着性やグロスチェンジ等の耐擦性も良好である。また、保存安定性に優れ、吐出安定性や目詰まり回復性が良好で信頼性が高く、インクジェット記録方式に用いるのに好適なインクセットである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は前述の実施の形態に限定される物でなく、筆記具用インク、オフセット印刷用インク等の用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材として水不溶性ポリマーによって被覆されている着色剤と添加剤として樹脂エマルジョンを少なくとも含有するインク組成物であって、水不溶性ポリマーの重量平均分子量が50000〜150000であり、樹脂エマルジョンは少なくとも該水不溶性ポリマーと構成成分が同一構造を持ち、その分子量が該水不溶性ポリマーに対して、1.5倍〜4倍の重量平均分子量のポリマーからなることを特徴とするインク組成物。
【請求項2】
前記着色剤が水に不溶な着色剤であることを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記水不溶性ポリマー及び樹脂エマルジョンを構成するポリマーが分岐型ポリマーであることを特徴とする請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記樹脂エマルジョンの平均粒子径が20〜200nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記着色剤が顔料であり、少なくとも水と水溶性有機化合物を含み、インク組成物中の顔料粒子の平均粒子径が50〜150nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記水溶性有機化合物として、少なくとも多価アルコール類と固体湿潤剤とグリコールのブチルエーテル類とを併用することを特徴とする請求項5に記載のインク組成物。
【請求項7】
多価アルコール類がグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールから選択される2種類以上の併用であり、固体湿潤剤がトリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンまたは尿素であり、ブチルグリコール類がジエチレングリコールモノブチルエーテル又はトリエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項5または6に記載のインク組成物。
【請求項8】
インクジェット記録方式に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物を記録媒体に付着させて印字を行う記録方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のインク組成物において、インクの液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の記録方法によって記録が行われた記録物。

【公開番号】特開2006−273892(P2006−273892A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90809(P2005−90809)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】