説明

インゴットスライス台用組成物及びそれを用いたインゴットスライス台

【課題】従来と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足するとともに、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を実現し、さらに高いガラス転移点を実現するインゴットスライス台用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)ビニルエステル樹脂と、(b)スチレン,ビニルトルエン,ジビニルベンゼン,α−メチルスチレン,クロルスチレン,酢酸ビニル,アジピン酸ジビニルエステル,ジアリルフタレート,メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,オクチル(メタ)アクリレート,ジ(メタ)アクリロオキシエチル等の反応性モノマーと、(c)シリカ、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー、タルク等の充填材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用インゴットをスライスして複数枚のウェーハを得る際に、半導体用インゴットを接着固定するインゴットスライス台用組成物及びそれを用いたインゴットスライス台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Si、GaAs、CdTe等の半導体チップは、半導体素子としての機能を発生させるべく一連の製造プロセスを経たウェーハを切り出して製造される。そのウェーハは、半導体用インゴットの側面を切断用台(インゴットスライス台)の円弧面に接着剤で固定した状態で、ワイヤーソー等によって切断用台(インゴットスライス台)と共に薄く切断して製造される。インゴットスライス台の円弧面は、インゴットを完全に切断するために、インゴットと共に切断されるが、インゴットスライス台の下部は切断されずに櫛刃状に残されるため、多数枚のウェーハは、櫛刃状のインゴットスライス台に一体的に保持された状態で、次工程に搬送される。
このようなインゴットスライス台に関する従来の技術としては、例えば、(特許文献1)に「アクリル樹脂に対して、水酸化アルミニウム等の無機フィラーを40〜60重量%配合して得られた成形材料を成形して得られるシリコンスライス台」、「不飽和ポリエステル樹脂に対して、水酸化アルミニウム等の無機フィラーを40〜60重量%配合して得られた成形材料を成形して得られるシリコンスライス台」が開示されている。
【特許文献1】特許第3853039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)半導体の製造プロセスには高い生産性や信頼性が要求されるため、ウェーハの切断にも高い精度が必要とされる。このため、ウェーハの切断精度や生産性に大きな影響を与えるインゴットスライス台には、高強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の種々の特性が要求される。さらに、重要な要求特性の一つとして、インゴットスライス台の線膨張率がインゴットの材質であるSi、GaAs、CdTe等の線膨張率に近いことが挙げられる。線膨張率の差が大きいと、切断時の僅かな温度変化により切断寸法の精度が低下するからである。
一般に、アクリル樹脂の室温付近の線膨張率は7〜8×10−5/℃であり、不飽和ポリエステル樹脂で成形されたインゴットスライス台の室温付近の線膨張率は6〜8×10−5/℃である。いずれも、インゴットの代表的な材質であるシリコンの線膨張率(20〜50℃において2.4×10−6/℃)よりも遥かに大きいという課題を有していた。
(2)他の重要な要求特性の一つとして、インゴットスライス台のガラス転移点が高いことが挙げられる。ガラス転移点が高ければ高いほど、ガラス転移点より低い室温では常に柔軟性に乏しい高剛性材質となるため、多数枚のウェーハを保持した櫛刃状のインゴットスライス台を搬送する際に、ウェーハが揺れてウェーハ同士が接触して損傷する等の問題を防止できるからである。そこで、信頼性を高めるため、より高温のガラス転移点を有するインゴットスライス台が求められていた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、従来と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足するとともに、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を実現し、さらに高いガラス転移点を実現するインゴットスライス台用組成物及びインゴットスライス台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明のインゴットスライス台用組成物及びそれを用いたインゴットスライス台は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のインゴットスライス台用組成物は、ビニルエステル樹脂と、反応性モノマーと、充填材と、を含有した構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ビニルエステル樹脂と、反応性モノマーと、無機質充填材と、を含有しているので、硬化後は、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を示し、さらに高いガラス転移点を実現できる。低い線膨張率によって、切断時の温度変化に依存し難く高い切断寸法精度を確保でき、高いガラス転移点によって剛性が大きく、多数枚のウェーハを保持した櫛刃状のインゴットスライス台を搬送する際に、ウェーハが揺れてウェーハ同士が接触して損傷する等の問題を防止できる。
【0006】
ここで、ビニルエステル樹脂は、エポキシ樹脂と酸との付加反応物であり、エポキシ樹脂の両末端に反応性不飽和基を有するものである。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型,ノボラック型,ビスフェノール変性型,含ブロム型等の種々のエポキシ樹脂を用いることができる。
エポキシ樹脂と付加反応させる酸としては、通常、不飽和一塩基酸が使用される。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート・マレート、ヒドロキシエチルアクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート、ジシクロペンタジエン・マレート等を用いることができる。
これらの付加反応によって得られたビスフェノール型,ノボラック型,ビスフェノール変性型,含ブロム型等のビニルエステル樹脂の1種若しくは2種以上を用いることができる。
【0007】
反応性モノマーとしては、ビニル性不飽和基を有する化合物が用いられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;酢酸ビニル、アジピン酸ジビニルエステル等のビニルエステル類;ジアリルフタレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロオキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。これらの化合物の1種若しくは2種以上を用いることができる。なかでも、スチレンは相溶性能、重合反応性に優れるため、好適に用いられる。
反応性モノマーは、ビニルエステル樹脂と反応性モノマーの総量に対して30〜60重量%の範囲で配合されるのが好ましい。反応性モノマーの割合が30重量%より少なくなるとインゴットスライス台の耐水性が悪くなり、無機質充填材と混合する際の作業性も低下する。60重量%を超えるとインゴットスライス台にクラックが入ったり、インゴットスライス台の表面状態が悪くなったりする。
【0008】
充填材としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダー、タルク等を用いることができる。これらの一種を単独で用いることができ、複数種を混合して用いることもできる。
なかでも、水酸化アルミニウムを単独で若しくは他の充填材に混合して用いるのが好ましい。インゴットスライス台の要求特性の一つである熱伝導率を高くできるからである。
充填材は平均粒径が0.1〜100μmのものが好適に用いられる。平均粒径が100μmより大きくなると、インゴットスライス台の靭性が低下し耐衝撃性が低下する傾向がみられ、0.1μmより小さくなると、分散性が低下して充填材の凝集が起こる場合があるため、いずれも好ましくない。
充填材は、表面を予めシランカップリング剤でコーティング処理を施したものが好適に用いられる。ビニルエステル樹脂と充填材との密着性や分散性を向上させることができ、インゴットスライス台の機械的特性等の要求特性のバラツキを少なくすることができるからである。
【0009】
インゴットスライス台用組成物は、公知の手段を用いて硬化させることができる。例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等の硬化剤の存在下加熱する方法、硬化剤と有機石鹸類やアミン化合物等の促進剤とを配合する方法、感光剤の存在下に赤外線,紫外線等の電磁波を照射する方法等により硬化させることができる。
また、必要に応じて、減粘剤、離型剤、着色剤等を配合することができる。
【0010】
硬化剤を配合したインゴットスライス台用組成物を調製する場合には、例えば、ビニルエステル樹脂と反応性モノマーを混合し、さらに充填材、硬化剤、必要に応じて各種添加剤を所定の割合で配合し、撹拌機等により混合撹拌して混合する。
混合撹拌したインゴットスライス台用組成物を、3〜50Torr程度の減圧下で5〜30分間撹拌することにより脱泡する。脱泡されたインゴットスライス台用組成物を、減圧状態から開圧し、所定の金型内へ注入して、この金型を50〜110℃の温度で30〜120分間加熱することにより、ビニルエステル樹脂と反応性モノマーとの共重合反応を進行させて硬化成形を行い、インゴットスライス台を製造できる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインゴットスライス台用組成物であって、前記充填材が、前記ビニルエステル樹脂と前記反応性モノマーの総量100重量部に対して130〜300重量部の割合で配合された構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)充填材が、ビニルエステル樹脂と反応性モノマーの総量100重量部に対して130〜300重量部の割合で配合されることにより、成形時の作業性や成形硬化時の寸法精度を向上させるともに、ガラス転移点や線膨張率のバラツキを小さくすることができる。
【0012】
ここで、ビニルエステル樹脂と反応性モノマーの総量100重量部に対する充填材の配合割合が130重量部より少なくなるにつれ、充填材の種類や粒径にもよるが、成形時に樹脂と充填材が分離したり硬化時の収縮が大きくなり寸法精度が低下したりする傾向や、ガラス転移点の低下や線膨張率が上昇する傾向がみられ、300重量部よりより多くなるにつれ、インゴットスライス台用組成物を混合撹拌し金型に注入する成形作業が困難になり作業性が低下する傾向がみられるとともに、インゴットスライス台の靭性が低下し耐衝撃性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0013】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のインゴットスライス台用組成物であって、前記充填材において、平均粒径10〜30μmの細粒100重量部に対し、平均粒径50〜100μmの粗粒が50〜250重量部の割合で配合された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)成形時に樹脂と充填材が分離したり硬化時の収縮が大きくなったりするのを防止し、品質の安定性を高めることができる。
【0014】
ここで、細粒100重量部に対する粗粒の配合割合が50重量部より少なくなるにつれ、インゴットスライス台の靭性が低下し耐衝撃性が低下する傾向がみられ、250重量部より多くなるにつれ、成形時に樹脂と充填材が分離したり硬化時の収縮が大きくなり寸法精度が低下したりする傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
【0015】
本発明の請求項4に記載のインゴットスライス台は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載のインゴットスライス台用組成物が硬化され成形された構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)従来のインゴットスライス台と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足するとともに、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を実現し、さらに高いガラス転移点を実現することができる。低い線膨張率によって、切断時の温度変化に依存し難く高い切断寸法精度を確保でき、高いガラス転移点によって剛性が大きく、多数枚のウェーハを保持した櫛刃状のインゴットスライス台を搬送する際に、ウェーハが揺れてウェーハ同士が接触して損傷する等の問題を防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のインゴットスライス台用組成物及びそれを用いたインゴットスライス台によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)ビニルエステル樹脂と、反応性モノマーと、無機質充填材と、を含有しているので、硬化後は、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率と、高いガラス転移点を実現するインゴットスライス台用組成物を提供できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)成形硬化時の寸法精度を向上させるともに、成形時の作業性やガラス転移点や線膨張率のバラツキを小さくすることができる品質の安定性に優れたインゴットスライス台用組成物を提供できる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)成形時に樹脂と充填材が分離したり硬化時の収縮が大きくなったりするのを防止し、品質の安定性を高めることができるインゴットスライス台用組成物を提供できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)従来と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足し、さらに室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を実現し、さらに高いガラス転移点を実現するインゴットスライス台を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜8)
ビニルエステル樹脂の反応性モノマー(スチレンモノマー)溶液(ビニルエステル60wt%、スチレン40wt%。BM型粘度計(ロータNo2、30回転)による25℃における粘度は3〜5dPa・s)に、充填材、硬化剤、促進剤を配合し、撹拌機を用いて混合撹拌することにより、インゴットスライス台用組成物を得た。各実施例におけるインゴットスライス台用組成物の配合量を表1に示す。なお、表1に記載した配合量の数値の単位は重量部である。
また、表1中、充填材は次のとおりである。水酸化アルミニウム(細粒):平均粒径20μm;水酸化アルミニウム(粗粒):平均粒径70μm;ガラスパウダー:平均粒径20μm;炭酸カルシウム:平均粒径6μm;タルク:平均粒径13μm。
【0021】
【表1】

【0022】
(比較例1〜3)
不飽和ポリエステル樹脂の反応性モノマー(スチレンモノマー)溶液(不飽和ポリエステル70wt%、スチレン30wt%。BM型粘度計(ロータNo2、30回転)による25℃における粘度は18〜21dPa・s)に、充填材、硬化剤を配合し、撹拌機を用いて混合撹拌することにより、インゴットスライス台用組成物を得た。各比較例におけるインゴットスライス台用組成物の配合量を表1に示す。
【0023】
得られたインゴットスライス台用組成物を、8Torrの減圧下で15分間撹拌することにより脱泡した後、減圧状態を開圧した。次に、脱泡したインゴットスライス台用組成物を金型内に注入し60〜120分間硬化成形させた後、脱型し70℃,120分間のキュアーにより、幅150mm、長さ300mm、厚さ15mmの直方体状の供試体を得た。
なお、実施例8におけるインゴットスライス台用組成物は、実施例1〜7と比較すると、インゴットスライス台用組成物を混合撹拌し金型に注入する成形作業が困難となる傾向がみられた。
【0024】
(評価試験)
以上のようにして得られた実施例と比較例の供試体について、各試験方法に規定された寸法に切り出し、曲げ強さ(JIS−K6911に基づく)、ガラス転移点(JIS−K7197に基づく)、線膨張率(JIS−K7197に基づく)及び熱伝導率(JIS−R2251、JIS−R2616に準拠)を測定した。曲げ強さ及びガラス転移点についてはn=5とし、測定値の最大値と最低値を除いた3点の平均値を求めた。線膨張率及び熱伝導率については、n=2の測定値の平均値を求めた。実施例と比較例における測定値の平均値を表1に示す。
表1から、実施例4,5、比較例2を比較することにより、充填材の種類や樹脂との配合比がほぼ同等のときは、「曲げ強さ」において、実施例は比較例よりも高い値を示すことがわかった。さらに、実施例1〜8のガラス転移点は118〜127℃であり、比較例1〜3のガラス転移点は69〜90℃であることから、実施例は比較例より「ガラス転移点」が高いことが明らかとなった。また、実施例1〜8の線膨張率(50〜60℃)は3.76〜5.22×10−5−1であり、比較例1〜3の線膨張率(50〜60℃)は7.53〜8.13×10−5−1であることから、実施例は比較例より「線膨張率」が低いことが明らかとなった。
【0025】
これにより、ビニルエステル樹脂を使用した実施例のインゴットスライス台は、曲げ強さが大きく、高いガラス転移点によって室温付近における剛性も高いため、多数枚のウェーハを保持した櫛刃状のインゴットスライス台を搬送する際に、ウェーハが揺れてウェーハ同士が接触して損傷する等の問題を防止するという機能を実現できる。また、低い線膨張率によって、切断時の温度変化に依存し難く、高い切断寸法精度を確保するという機能を実現できる。
なお、実施例2,4,5,6,7,8を比較することにより、ビニルエステル樹脂に対する充填材の配合量が少なくなるにつれ、線膨張率が増加するとともに熱伝導率が低下する傾向となることが確認された。
また、実施例2(ビニルエステル樹脂と反応性モノマーの総量100重量部に対して充填材(水酸化アルミニウム)225重量部を配合)と、実施例1(ビニルエステル樹脂と反応性モノマーの総量100重量部に対して充填材(水酸化アルミニウムとガラスパウダーの混合物)220重量部を配合)と、を比較すれば、水酸化アルミニウムのみを充填材とすることにより、熱伝導率を高められることが確認された。
【0026】
次に、実施例2のインゴットスライス台用組成物を用いて製品サイズのインゴットスライス台を製造し、インゴットをインゴットスライス台に接着しスライスしてウェーハを製造したところ、ウェーハの平滑度及び反りは製品規格を満足し、かつ切断時及び運搬時にウェーハに割れ等の問題が生じることはなく、接着性、剥離性等も問題なかった。他の実施例のインゴットスライス台用組成物においても同様の結果が得られた。
以上のことから、本実施例によれば、従来と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足し、さらに低線膨張率と高ガラス転移点を実現するインゴットスライス台用組成物及びインゴットスライス台を提供できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、半導体用インゴットを接着固定するインゴットスライス台用組成物及びそれを用いたインゴットスライス台に関し、従来と同等以上の機械的強度、耐油性、絶縁性、低硬度、軽量性等の特性を満足するとともに、室温付近の線膨張率が約4×10−5/℃の低膨張率を実現し、さらに高いガラス転移点を有するインゴットスライス台用組成物及びインゴットスライス台を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルエステル樹脂と、反応性モノマーと、充填材と、を含有していることを特徴とするインゴットスライス台用組成物。
【請求項2】
前記充填材が、前記ビニルエステル樹脂と前記反応性モノマーの総量100重量部に対して130〜300重量部の割合で配合されていることを特徴とする請求項1に記載のインゴットスライス台用組成物。
【請求項3】
前記充填材において、平均粒径10〜30μmの細粒100重量部に対し、平均粒径50〜100μmの粗粒が50〜250重量部の割合で配合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインゴットスライス台用組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の内いずれか1に記載のインゴットスライス台用組成物が硬化され成形されていることを特徴とするインゴットスライス台。

【公開番号】特開2010−67712(P2010−67712A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231137(P2008−231137)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(591287978)太陽インダストリー株式会社 (4)
【Fターム(参考)】