説明

インサート、その製造方法及びそのインサートを有する長尺成形品の製造方法

【課題】単位長さ当たりの重量が軽く、短冊部に確実に分離可能なインサートとその製造方法、そのインサートを使用した長尺成形品を提供する。
【解決手段】インサート30は、多数の短冊部31と、圧延と引張により形成された連結部を備えた梯子状の形状である。短冊部31の間にはスリットを形成し、スリットは、長手方向における幅の広い第1スリット34と、第1スリット34よりも幅の狭い第2スリット35が交互に形成される。連結部は、幅方向における幅の狭い第1連結部32と、第1連結部よりも幅方向の幅の広い第2連結部33とが交互に形成される。短冊部31と、第1スリット34と、第2スリット35の長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)であり、第1連結部32と第2連結部33の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)で形成されたインサートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアやトランクリッド等の扉体と車体の開口部との間をシールするために使用する、押出成形により成形された自動車用ウエザストリップ等の、長尺成形品に使用するインサート、インサートの製造方法及びインサートを有する長尺成形品の製造方法である。
【背景技術】
【0002】
自動車用ウエザストリップ110等の長尺成形品は、図9に示すように、自動車の車体の開口部の周縁に設けられている。フランジに取付けられる取付基部としての断面略U字形のトリム部112と、扉体に当接して車体と扉体との間をシールする中空シール部118から構成されている。トリム部112の内部には、トリム部112の把持力を大きくするため、帯状金属板を打ち抜き等して形成されたインサート130が埋設されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このインサート130は、図10に示すように、多数の短冊部131を幅方向に並べ、短冊部131の両側の端部付近を長手方向に連結部で連結した平面視で梯子状の形状である。そして、連結部は幅が狭く破断させやすい第1連結部132と、幅が広く破断させにくい短冊部131を2個ずつ連結する第2連結部133を有し、第1連結部132と短冊部131とで囲む第1スリット134と、第2連結部133と短冊部131とで囲む第2スリット135が形成されている。
【0004】
このインサート130は、長尺成形品の製造時、すなわち、押出成形機に移送され、ゴム状弾性体の被覆層を形成するときには、引取等の都合上、連結部は連結されたままの状態である。しかしながら、長尺成形品として使用するときには、フランジのコーナー部に沿って曲げて装着するとき等のトリム部112の可撓性を高めるために連結部を分離させている。
【0005】
このため、長尺成形品としての押出成形後のインサート130は、短冊部131が2個ずつ組合されて第1連結部132の部位で破断、分離させ、破断後はトリム部112内で、2個の短冊部131と、その2個の短冊部131を連続する上下の第2連結部133と、第2スリット135とで構成されたインサート130として存在する。
【0006】
この特許文献1に記載のインサート130は、帯状金属板を打ち抜き等して形成されているため、第1スリット134と第2スリット135の部分は無駄となり、加工くずが発生し、コストアップとなる。また、破断させる第1連結部132の板厚(肉厚)が他の部分と同じであり、破断させにくかった。なお、すべての連結部を破断させた方が、トリム部112の可撓性は向上するものの、全ての連結部を屈曲疲労破断させるのは、工程が長くなり、生産性が悪くなる。また、破断させやすくするために連結部の幅を狭くすると、被覆層の押出成形時に破断してしまうという問題もある。
【0007】
このため、図11に示すように、帯状金属板236に、側端部分の連結部を残して、交互にインサートの幅方向における長さの長い第1切断線237と短い第2切断線238を入れ、連結部よりも端の部分には端切断線239を入れて、連結部予定部位(切断線が設けられていない部位)を圧延する。そして、長い第1切断線237、短い第2切断線238と端切断線239の隙間を広げて、第1スリット234(図12におけるCの幅寸法)と第2スリット235(図12におけるCの幅寸法)を形成し、連結部は、第1連結部232(図12におけるAの幅寸法)と第2連結部233(図12におけるBの幅寸法)を形成するものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
この場合は、図12に示すように、インサート230は、圧延のみで圧延部分である連結部が圧延量だけ長手方向に延ばされるため、第1スリット234と第2スリット235の幅は略同じであり、その幅も大きくすることができなかった。(圧延量を大きくすると、被覆層の押出成形時に破断してしまう問題があるため。)そのため、インサート230において、短冊部231の幅(図12におけるD)の占める割合が大きく、単位長さ当たりの短冊部231の数が多くなり、インサート230の重量が増加し、自動車の軽量化の要請に反することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭55−8168号公報
【特許文献2】特開昭56−91931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、単位長さ当たりの重量が軽く、長尺成形品の押出工程では分離せず、押出工程後に短冊部に確実に分離可能なインサートとその製造方法、そのインサートを使用した長尺成形品の製造方法を得ることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、帯状金属板を加工して形成され、長尺成形品の内部に埋設されるインサートにおいて、
インサートは、帯状金属板から多数の短冊部を幅方向に並べるように、かつ短冊部の両側の端部付近を長手方向に連結部で連結した梯子状となるように、連結部が圧延と引張力が付与されて形成されており、
短冊部と短冊部の間にはスリットが形成され、スリットは、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットが交互にインサートの長手方向に沿って形成され、連結部は、第1スリットの側端に形成されたインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成された隣接する第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とが交互にインサートの長手方向に沿って形成され、
短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)に設定され、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成されたインサートである。
【0012】
請求項1の本発明では、インサートは、帯状金属板から多数の短冊部を幅方向に並べるように、かつ、短冊部の両側の端部付近を長手方向に連結部で連結した梯子状の形状に形成されている。このため、梯子状の形状のインサートを長尺成形品製造用の押出成形機に供給して、押出成形するときに短冊部の先端が、バラバラに曲がることがなく、スムースに押出成形をすることができる。
【0013】
連結部とスリットは圧延と引張力が付与されて、特定の比率の厚みと幅に形成されているために、帯状金属板を加工するときに加工屑が発生せず、スリットを形成することができる。また、第1連結部を他の部分(短冊部)よりも薄肉で幅狭に形成することができ、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができる。また、長尺成形品に埋設された後も、U字形に曲げられた短冊部の存在によって、長尺成形品の取付基部であるトリム部のフランジに対する把持力を、向上させることができる。
【0014】
短冊部と短冊部の間には、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、インサートの長手方向における幅の狭い第2スリットが交互に形成されている。このため、幅の広い第1スリットにより単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができ、インサートの重量を低減でき、車輌の軽量化に貢献することができる。
【0015】
連結部は、第1スリットの側端に形成されインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成され隣接する第1連結部よりインサートの幅方向における幅の広い、第2連結部とが交互に形成される。このため、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、他の部位(短冊部)よりも薄肉で幅狭に形成された第1連結部のみで容易に分離することができ、短冊部を2個ずつ連結したままで分離させることができ、長尺成形品の柔軟性と、インサートの剛性を確保することができる。
【0016】
短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)に設定された。このため、第1スリットの幅を大きくして単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができ、インサートの重量を低減でき、車輌の軽量化に貢献することができる。第1スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、65〜104であるが、第1スリットの幅が65未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、インサートの重量を低減できず、104を超える場合にはインサートの剛性が低下して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力が低下する。
【0017】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、24〜53であるが、第2スリットの幅が23未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、53を超える場合にはインサートの第2連結部の強度が低下して、第1連結部の分離工程で第2連結部が分離する恐れが生じる。
【0018】
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されたため、インサート分離工程で第1連結部で容易に分離することができ、第2連結部では分離せずに短冊部を2個ずつ連結したままでインサートを分離させることができる。第1連結部の幅方向における幅20に対して、第2連結部の幅方向における幅の比が28未満の場合には、インサートの第2連結部の強度が低下して、第1連結部の分離工程で第2連結部が分離する恐れが生じる。第2連結部の幅方向における幅の比が33を超える場合には、圧延時に第2スリットの幅が広がり難くなり、単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができずインサートの重量低減が少なくなる。
【0019】
請求項2の本発明は、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(75〜95):(32〜43)に設定され、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成されたインサートである。
【0020】
請求項2の本発明では、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(75〜95):(32〜43)に設定されたため、長尺製品に使用した場合に、インサートの把持力を充分に有するとともに、インサートの軽量化を達成することができる。
第1スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、75〜95であるが、この範囲では、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの剛性を確実に確保して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力を確保することができる。
【0021】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、32〜43であるが、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの第2連結部の強度を確保して、第1連結部の分離工程で第2連結部の分離を確実に防止できる。
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成されたため、押出成形時のインサートの剛性の低下と分離を防止して、押出成形を高速ですることができる。
【0022】
請求項3の本発明は、短冊部と連結部の板厚の比は20:(10〜13)であるインサートである。
【0023】
請求項3の本発明では、短冊部と連結部の板厚の比は20:(10〜13)であるため、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができる。また、圧延と引張力が付与されて連結部が長手方向に引き延ばされて形成されているため、第1スリットの幅を第2スリットの幅よりも大きくすることができる。
短冊部の板厚20に対して、連結部の板厚の比が10未満では、連結部の強度が不足して、押出成形工程で第1連結部が分離したり、インサートの分離工程において第2連結部が分離したりする恐れがある。短冊部の板厚20に対して、連結部の板厚の比が13を超える場合では、連結部の強度が大きくインサートの分離工程において第1連結部が分離しない恐れがある。
さらに、連結部の板厚の比が10未満では、圧延が過剰気味となり、連結部が分離されやすくなり、必要工程以外で分断されてしまう恐れがあり、連結部の板厚の比が13を超える場合には、車輌の軽量化に貢献できない。
【0024】
請求項4の本発明は、帯状金属板から加工され、短冊部とスリットと、短冊部の両側の端部付近の連結部で連結した梯子状の形状をなし、長尺成形品の内部に埋設されるインサートの製造方法において、
帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて短冊部と短冊部の間にスリットを形成し、スリットは、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成し、連結部は、第1スリットの側端に形成されたインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成され第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、圧延ロールと引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成し、
短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)となり、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成することを特徴とするインサートの製造方法である。
【0025】
請求項4の本発明では、帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて短冊部と短冊部の間にスリットを形成した。このため、連結部を圧延ロールで圧延し、引取りロールで引張ることにより、帯状金属板を加工するときに加工屑が発生せず、スリットを形成することができる。また、連結部を他の部分よりも薄肉に形成することができ、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、薄肉の連結部で容易に分離することができる。
【0026】
スリットは、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成する。このため、幅の広い第1スリットにより単位長さ当たりの短冊部の数の少ないインサートを製造することができ、インサートの重量を低減でき、車輌の軽量化に貢献することができる。
【0027】
連結部は、第1スリットの側端に形成されたインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成され第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、圧延ロールと引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成される。このため、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができ、短冊部を2本ずつ連結したままで分離させることができ、長尺製品の柔軟性と、インサートの剛性を確保することができる。
【0028】
短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)であるため、第1スリットの幅を大きくして単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができ、インサートの重量を低減でき、車輌の軽量化に貢献することができる。
第1スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、65〜104であるが、第1スリットの幅が65未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、インサートの重量を低減できず、104を超える場合にはインサートの剛性が低下して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力が低下する。
【0029】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、24〜53であるが、第2スリットの幅が24未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、53を超える場合にはインサートの第2連結部の強度が低下して、第1連結部の分離工程で第2連結部が分離する恐れが生じる。
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成するため、第1連結部で容易に分離することができ、短冊部を2本ずつ連結したままで分離させることができる。
【0030】
請求項5の本発明は、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となり、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成するインサートの製造方法である。
【0031】
請求項5の本発明では、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となるため、インサートを使用して長尺製品を製造した場合に、インサートを有する長尺製品が把持力を充分に有するとともに、インサートの軽量化を達成することができる。
第1スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、75〜95であるが、この範囲では、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの剛性を確実に確保して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力を確保することができる。
【0032】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、32〜43であるが、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの第2連結部の強度を確保して、第1連結部の分離工程で第2連結部の分離を確実に防止できる。
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成するため、押出成形時のインサートの剛性の低下を防止して、押出成形を高速ですることができる。
【0033】
請求項6の本発明は、短冊部と連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成するインサートの製造方法である。
【0034】
請求項6の本発明では、短冊部と連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成するため、圧延と引張力が付与されて連結部が長手方向に引き延ばされて形成されているため、第1スリットの幅を第2スリットの幅よりも大きくするように製造することができる。また、長尺製品の製造において、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができる。
短冊部の板厚20に対して、連結部の板厚の比が10未満では、連結部の強度が不足して、押出成形工程で第1連結部が分離したり、インサートの分離工程において第2連結部が分離したりする恐れがある。短冊部の板厚20に対して、連結部の板厚の比が13を超える場合では、連結部の強度が大きくインサートの分離工程において第1連結部が分離しない恐れがある。
さらに、連結部の板厚の比が10未満では、圧延が過剰気味となり、連結部が分離されやすくなり、必要工程以外で分断されてしまう恐れがあり、連結部の板厚の比が13を超える場合には、車輌の軽量化に貢献できない。
【0035】
請求項7の本発明は、圧延ロールの移送速度より引取ロールの移送速度を速くして、圧延ロール部位でのインサートを200〜250Nの引張力で引き取るインサートの製造方法である。
【0036】
請求項7の本発明では、圧延ロールの移送速度より引取りロールの移送速度を速くして、圧延ロール部位でのインサートを200〜250Nの引張力で引き取るため、連結部を圧延するときに第1スリットと、第2スリットの長手方向の幅を大きく広げることができる。200N未満では、第1スリットが充分開くことがなく、250Nを越えると第1スリットが開き過ぎてしまうこととなる。
【0037】
請求項8の本発明は、インサート加工工程で帯状金属板を加工し、金属製のインサートを形成し、押出工程で長尺成形品の内部にインサートを埋設するように押出成形機に移送してゴム状弾性材料で被覆して被覆層を設け、インサート分離工程でインサートの短冊部を分離する、各工程を備えた長尺成形品の製造方法において、
インサート加工工程は、帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて短冊部と短冊部の間にはスリットを形成し、スリットは、インサートの長手方向の幅における広い第1スリットと、第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成し、連結部は、第1スリットの側端に形成されインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成され第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、圧延ロールと引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成し、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)となり、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成し、
押出工程は、長尺成形品の取付基部の内部にインサートを埋設するようにインサートを押出成形機に移送してゴム状弾性材料で被覆して被覆層を形成し、インサート分離工程に被覆層を備えたインサートを移送し、
インサート分離工程は、インサートを2個ずつ短冊部が一体となるようにそれぞれ第1スリット部位で分離させて製造する長尺成形品の製造方法である。
【0038】
請求項8の本発明では、インサート加工工程は、帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて短冊部と短冊部の間にはスリットを形成した。このため、連結部を圧延ロールで圧延し、引取りロールで引張ることにより、帯状金属板を加工するときに加工屑が発生せず、スリットを形成することができる。また、連結部を他の部分よりも薄肉に形成することができ、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、薄肉の連結部で容易に分離することができる。
【0039】
スリットは、インサートの長手方向の幅における広い第1スリットと、第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成する。このため、幅の広い第1スリットにより単位長さあたりの短冊部の数が少ないインサートを製造することができ、インサートの重量を低減でき、長尺成形品の重量を軽減できるため、車輌の軽量化に貢献することができる。
【0040】
連結部は、第1スリットの側端に形成されインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、第2スリットの側端に形成され第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、圧延ロールと引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成する。このため、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができ、短冊部を2個ずつ連結したままで分離させることができ、長尺製品の柔軟性と、取付基部の把持力を向上させることができる。
【0041】
短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)となるため、第1スリットの幅を大きくして単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができ、インサートの重量を低減でき、長尺成形品の重量を軽減させ、車輌の軽量化に貢献することができる。
第1スリットの長手方向における幅が、短冊部の長手方向における幅100に対して、65〜104であるが、第1スリットの幅が65未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、インサートの重量を低減できず、104を超える場合にはインサートの剛性が低下して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力が低下する。
【0042】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、24〜53であるが、第2スリットの幅が24未満では単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができず、53を超える場合にはインサートの第2連結部の強度が低下して、第1連結部の分離工程で第2連結部が分離する恐れが生じる。
【0043】
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成したため、第1連結部で容易に分離することができ、短冊部を2本ずつ連結したままで分離させることができる。第1連結部の幅方向における幅20に対して、第2連結部の幅方向における幅の比が28未満の場合には、インサートの第2連結部の強度が第1連結部の強度に対して低下して、第1連結部の分離工程で第2連結部が分離する恐れが生じる。第2連結部の幅方向における幅の比が33を超える場合には、第2スリットの幅が小さくなり、単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができずインサートの重量低減が少なくなる。
【0044】
押出工程は、長尺成形品の取付基部の内部にインサートを埋設するようにインサートを押出成形機に移送してゴム状弾性材料で被覆して被覆層を形成し、インサート分離工程に被覆層を備えたインサートを移送し、インサート分離工程は、インサートを2個ずつ短冊部が一体となるようにそれぞれ第1スリット部位で分離させて製造する。このため、長尺成形品の取付基部がフランジを把持する力を向上させるとともに、長尺成形品の柔軟性を向上させることができる。
【0045】
請求項9の本発明は、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となり、第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成する長尺成形品の製造方法である。
【0046】
請求項9の本発明では、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となるため、インサートを使用して長尺製品を製造した場合に、長尺成型品が把持力を充分に有するとともに、長尺成形品の軽量化を達成することができる。
第1スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、75〜95であるが、この範囲では、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの剛性を確実に確保して、インサートを埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力を確保することができる。
【0047】
第2スリットの長手方向における幅の寸法比率が、短冊部の長手方向における幅100に対して、32〜43であるが、単位長さあたりの短冊部の数を少なくするとともに、インサートの第2連結部の強度を確保して、第1連結部の分離工程で第2連結部の分離を確実に防止できる。
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成されたため、押出成形時のインサートの剛性の低下と分離を防止して、押出成形を高速ですることができる。
第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成するため、長尺成形品の押出成形時のインサートの剛性の低下を防止して、押出成形を高速ですることができる。
【0048】
請求項10の本発明は、短冊部と連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成する長尺成形品の製造方法である。
【0049】
請求項10の本発明では、短冊部と連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成するため、圧延と引張力が付与されて連結部が長手方向に引き延ばされて形成されているため、第1スリットの幅を第2スリットの幅よりも大きくするように製造することができる。また、長尺製品の製造において、インサートを長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部で容易に分離することができる。
さらに、連結部の板厚の比が10未満では、圧延が過剰気味となり、連結部が分離されやすくなり、必要工程以外で分断されてしまう恐れがあり、連結部の板厚の比が13を超える場合には、車輌の軽量化に貢献できない。
【0050】
請求項11の本発明は、長尺成形品は、自動車の開口部周縁をシールするウエザストリップである長尺成形品の製造方法である。
【0051】
請求項11の本発明では、長尺成形品は、自動車の開口部周縁をシールするウエザストリップであるため、ウエザストリップの金属インサートを埋設された取付基部を曲げ加工することができ、取付基部を断面略U字形にすることができる。取付基部に埋設される金属インサートにより取付基部の把持力を高くすることができ、断面略U字形の取付基部で自動車のドアや開口部のフランジに強固に把持することができる。また、湾曲した部分にもその湾曲に沿ってウエザストリップを取付けることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明は、短冊部と、第1スリットと、第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)であるため、第1スリットの幅を大きくして単位長さあたりの短冊部の数を少なくすることができ、インサートの重量を低減でき、車輌の軽量化に貢献することができる。第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)であるため、第1連結部で容易に分離することができ、第2連結部では分離せずに短冊部を2個ずつ連結したままでインサートを分離させることができる。
押出工程においては、インサートが分離せず、インサート分離工程において第1連結部のみを容易に分離でき、取付基部の把持力を高くした長尺成形品を容易に製造する方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のインサートとその製造段階の一部平面図である。
【図2】本発明のインサートの製造方法におけるインサート加工工程を示す模式図である。
【図3】本発明のインサートの製造方法におけるインサート加工機の内部の工程を示す模式図である。
【図4】本発明のインサートの製造方法におけるインサート加工機のスリッターロールの一部断面図である。
【図5】本発明のインサートの製造方法におけるインサート加工機の圧延ロールの平面を有するロールの一部断面図である。
【図6】本発明のインサートの製造方法におけるインサート加工機の圧延ロールの突部を有するロールの一部断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の製造方法により製造される自動車用ウエザストリップの断面形状である。
【図8】本発明の実施の形態の製造方法における、ウエザストリップを押出成形する工程の模式図である。
【図9】従来のウエザストリップとインサートの一部切欠き斜視図である。
【図10】従来のインサートの一部平面図である。
【図11】従来の他のインサートの製造工程における帯状金属板の加工状態を示す図である。
【図12】従来の他のインサートの一部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の実施の形態を図1〜図8に基づき説明する。本発明について自動車用ウエザストリップを例に取り説明するが、本発明のインサートを有して押出成形により成形される他の長尺成形品にも使用することができる。
図1は、本発明のインサート30とその製造段階の平面図であり、図2〜6はインサート30の製造工程とその各部分であり、図7は本発明のインサート30を使用したウエザストリップ10の断面図であり、図8はそのウエザストリップ10の製造工程を示す模式図である。
【0055】
まず、インサート30とその製造工程について説明し、次にウエザストリップ10とその製造工程について説明する。
インサート30の形状は、図1に示すように、帯状金属板36から加工して形成されるものであって、多数の短冊部31を幅方向に並べるように、かつ、短冊部31の両側の端部付近を長手方向に連結部で連結した梯子状の形状に形成したものである。
【0056】
連結部は、後述する第1スリット34の側端に形成されたインサート30の幅方向における幅の狭い第1連結部32(図1におけるA)と、第2スリット35の側端に形成された隣接する第1連結部32よりインサート30の幅方向における幅の広い第2連結部33(図1におけるBの幅寸法)とが交互に形成されている。
このため、インサート30を長尺成形品に埋設して押出成形後に、短冊部31よりも薄肉で幅狭に形成された第1連結部32のみで容易に分離することができ、短冊部31を2個ずつ連結したままで分離させることができ、長尺成形品の柔軟性と、インサート30の剛性を確保することができる。
【0057】
短冊部31と、第1スリット34と、第2スリット35の長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)に設定することが必要である。第1スリット34の幅を100として、短冊部31に対して65〜104の幅にすると、第1スリット34の幅を大きくして単位長さあたりの短冊部31の数を少なくすることができ、インサート30の重量を低減でき、インサート30を埋設したウエザストリップ等の長尺成形品を使用する車輌の軽量化に貢献することができる。
【0058】
第1スリット34の長手方向における幅が、短冊部31の長手方向における幅100に対して、65未満では単位長さあたりの短冊部31の数を少なくすることができず、インサート30の重量を低減できず、104を超える場合には短冊部31の数が少なくなり、インサート30の剛性が低下して、インサート30を埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力が低下する。
【0059】
第2スリット35の長手方向における幅の寸法比率が、短冊部31の長手方向における幅100に対して、24〜53である。第2スリット35の幅が24未満では単位長さあたりの短冊部31の数を少なくすることができず、53を超える場合にはインサート30の第2連結部33の強度が低下して、第1連結部32の分離工程で第2連結部33が分離する恐れが生じる。
【0060】
また、短冊部31と、第1スリット34と、第2スリット35の長手方向における幅の比は、100:(75〜95):(32〜43)にすることが好ましい。この場合には、長尺製品に使用した場合に、インサート30の把持力を充分に有するとともに、インサート30の軽量化を達成することができる。
第1スリット34の長手方向における幅が、短冊部31の長手方向における幅100に対して、75〜95である場合には、単位長さあたりの短冊部31の数を少なくするとともに、インサート30の剛性を確実に確保して、インサート30を埋設した長尺成形品の取付基部であるトリム部の把持力を確保することができる。
【0061】
第2スリット35の長手方向における幅が、短冊部31の長手方向における幅100に対して、32〜43である場合には、単位長さあたりの短冊部31の数を少なくするとともに、インサート30の第2連結部33の強度を確保して、第1連結部32の分離工程で第2連結部33が分離を確実に防止できる。
【0062】
本発明の実施の形態では、短冊部31と第1連結部32と第2連結部33の板厚の比は20:(10〜13)である。このため、圧延と引張力が付与されて第1連結部32と第2連結部33が長手方向に引き延ばされて形成されているため、第1スリット34の幅を第2スリット35の幅よりも大きくすることができる。また、第1連結部32が破断しやすく、インサート30を長尺成形品に埋設して押出成形後に、第1連結部32で容易に分離することができる。
なお、第1スリット34と第2スリット35に対応する第1連結部32と第2連結部33の側端側には、それぞれ第1凹部34aと第2凹部35aを形成することができる。この場合は、第1連結部32と第2連結部33の幅を規定して圧延及び引張力が付与されやすくなっている。
【0063】
短冊部31の板厚20に対して、第1連結部32と第2連結部33の板厚の比が10未満では、第1連結部32と第2連結部33の強度が不足して、押出成形工程で第1連結部32が分離したり、インサート30の分離工程において第2連結部33が分離したりする恐れがある。短冊部31の板厚20に対して、第1連結部32と第2連結部33の板厚の比が13を超える場合では、第1連結部32と第2連結部33の強度が大きくインサート30の分離工程において第1連結部32が分離しない恐れがある。
【0064】
本実施の形態では、具体的にインサート30の幅方向の長さが28mmで、短冊部31の厚さが0.45mmのものにおいて、第1連結部32(図1におけるA)の幅寸法は2.4〜2.6mmの間で設定することができ、具体的には、2.5mmである。このため、第1連結部32は所定の剛性を有することができ、後述するウエザストリップ等の長尺成形品の押出工程では切断しない。第2連結部33(図1におけるBの幅寸法)の幅寸法は3.7〜3.9mmの間で設定することができ、具体的には、3.8mmである。本実施の形態では、上記範囲において、第1連結部32と第2連結部33を形成したが、20:(28〜33)の範囲で適宜寸法を変えて形成することができる。
【0065】
本実施の形態では、個々の短冊部31のインサート30の長手方向における幅(図1におけるDの幅寸法)は、2.3mmであり、インサート30の幅方向における長さ(短冊部31を含む全体の幅方向の長さ)は約28mmである。
なお、このDの幅寸法は、2.05〜2.55mmの間で設定することができ、好ましくは、2.2〜2.4mmの間で設定する。また、長さ寸法は26mm〜48mmの間で設定することができる。
【0066】
本実施の形態では、第1スリット34の幅は約1.9mmである。第1スリット34の幅は1.65〜2.15mmの間で設定することができ、好ましくは、1.8〜2.1mmの間で設定する。
第2スリット35の幅は約0.85mmである。第2スリット35の幅は0.60〜1.10mmの間で設定することができ、好ましくは、0.75〜0.95mmの間で設定する。本実施の形態では、上記範囲において、短冊部31と第1スリット34と第2スリット35を形成したが、100:(65〜104):(24〜53)の範囲で適宜寸法を変えて形成することができる。
【0067】
短冊部31の両側の側端は、第1連結部32と第2連結部33で連結されているため、梯子状の形状のインサート30を押出成形機に供給して、ゴム状弾性材料とともに押出成形するときにそれぞれの短冊部31の先端がバラバラに曲がることがなく、スムースに押出成形機に供給することができ、押出成形を容易にすることができる。
【0068】
連結部の第1連結部32と第2連結部33は圧延と引張力が付与されて形成されている。このため、帯状金属板36を加工するときに加工屑が発生せず、短冊部31と短冊部31の間に後述する第1スリット34と第2スリット35を形成することができる。また、連結部を他の部分(短冊部31の中央部分)よりも薄肉に形成することができる。また、これに加え引張力が付与されているので、第1連結部32を第2連結部33よりも幅狭に形成することができる。そのため、このインサート30をウエザストリップ10に埋設して押出成形後に、インサート分離工程において、薄肉で幅狭の第1連結部32のみを容易に分離させ、第2連結部33は分離させないようにすることができる。
【0069】
本実施の形態では、圧延前の帯状金属板36の板厚は0.45mmであり、圧延後の連結部の肉厚は0.23mmである。
圧延前の帯状金属板36の板厚は0.35〜0.55mmのものを使用することができる。圧延後の連結部の肉厚は0.15〜0.35mmのものを使用することができる。
【0070】
なお、第1スリット34の幅が1.65mmよりも小さくなる場合には、単位長さ当たりの短冊部31の数が増え、車輌の軽量化に貢献できず、2.15mmより大きくなる場合には、圧延が過剰となり、連結部が分断されて、インサート30の成形ができなくなる恐れがある。また、第2スリット35の幅が0.60mmよりも小さくなると、軽量化に貢献できず、1.10mmよりも大きくなると、圧延が過剰となることと、第2連結部33でも分離されてしまう恐れがある。
さらに、帯状金属板36の板厚が0.33mmより薄いと圧延が過剰気味となり、連結部が分離されやすくなり、必要工程以外で分断されてしまう恐れがあり、板厚が0.55mmより大きいと車輌の軽量化に貢献できない。
【0071】
次に、インサート30の製造方法について、図2〜図6に基づき説明する。
インサート30の製造は、まず長い帯状金属板36を巻きつけた回転リール40bを有する帯状金属板供給機40から、帯状金属板36を端末検知機42、端末カット機44、自動溶接機46、自動焼き鈍し機48を順に経由してインサート加工機50まで延ばして、それぞれの装置に装着する。この端末検知機42、端末カット機44、自動溶接機46、自動焼き鈍し機48は、帯状金属板36が1つの回転リール40bからの供給が無くなるまでは、特に作動せず、帯状金属板36を通過させる。
【0072】
インサート加工機50に入った帯状金属板36は、インサート加工機50により長い帯状の金属板から、上述した、図1に示すようなインサート30に加工される。
帯状金属板36の加工工程におけるインサート加工機50は、図3に示すように、帯状金属板36に切断線を入れるスリッターロール51と、切断線を入れていない部分を圧延する圧延ロール52と、帯状金属板36を引っ張る引取りロール53である。
【0073】
帯状金属板36に切断線を入れるスリッターロール51により、図1に示すように、帯状金属板36の中央部を側端側の一部を残し、幅方向に長い第1切断線37と、短い第2切断線38を交互に入れる。そして、第1切断線37と第2切断線38に対応して両側の側端から中央よりの部分を残して、帯状金属板36の側端から若干の寸法だけ端切断線39を入れる。
本実施の形態では、28mmの幅の帯状金属板36に対して、第1切断線37は20.6mmであり、第2切断線38は18.0mmであり、端切断線39は1.2mm程度である。
【0074】
スリッターロール51は、図3と図4に示すように、第1スリッターロール51aと第2スリッターロール51bとで形成され、帯状金属板36を上下に挟んでいる。第1スリッターロール51aと第2スリッターロール51bの外周に形成されたスリッター歯51c、51dで帯状金属板36をせん断し、切断線を入れる。スリッター歯51c、51dは、第1スリット34と、第2スリット35の長さに対応した幅方向の長さに形成されている。
【0075】
そして、圧延ロール52で、切断線が形成されていない部分を圧延する。圧延ロール52は、図5と図6に示すように、表面が平らな平ロール52bと、切断線が形成されていない部分に対応した部分に凸部52cが形成された凸ロール52aから形成される。凸ロール52aと平ロール52bとで帯状金属板36を挟んで、切断線が形成されていない部分を圧延する。そして、連結部である第1連結部32と第2連結部33を形成する。
【0076】
このとき、帯状金属板36は、引取りロール53で引取られる。引取りロール53は上ロール53aと下ロール53bから構成され、上ロール53aと下ロール53bとで帯状金属板36を挟持して、引張って引取る。このとき、圧延ロール52の移送速度(回転速度)より引取りロール53の移送速度(回転速度)を速くして、圧延ロール52部位において圧延された帯状金属板36に200〜250Nの引張力が付与されて引き取られる。
【0077】
これにより、帯状金属板36の切断線を入れていない部分、即ち、インサート30の連結部である第1連結部32と第2連結部33を圧延すると同時に第1スリット34と、第2スリット35に対して長手方向における幅を広げる力が付与されるが、第1スリット34は広げられ、第2スリット35は少ししか広げられない。すなわち、200N未満では、第1スリット34も少ししか開くことができず、250Nを越えると第2スリット35が大きく開いてしまうこととなる。第2スリット35が開くと軽量化の点では好ましいが、所定部位(第1連結部32)でインサート30を分断させることが難しくなる。
【0078】
上述のように加工されたインサート30は、インサートアキュームレーター54に移送される。インサートアキュームレーター54は、帯状のインサート30を、上下に交互に設けられた回転ロール54a、54bの間にジグザグ状に取付けている。この回転ロール54a、54bは、回転自在でかつ、上方の回転ロール54aまたは下方の回転ロール54bが上下自在に昇降できるように取付けられている。そのため、インサート30の取付長さを、インサート30を移送させつつ、回転ロール54a、54bを上下させることにより調整することができる。
【0079】
インサートアキュームレーター54を出たインサート30は、脱脂装置55に移送される。脱脂装置55では、インサート30の表面に付着した油脂を除去する。この脱脂工程により、上記のようにウエザストリップ10のトリム部11を形成する押出成形された合成ゴムや、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性材料の被覆層とインサート30の密着性を良くすることができ、耐久性や外観形状がよい。
【0080】
次に脱脂装置55を出たインサート30は、プレフォーム曲げ機56に移送される。ウエザストリップ10では、若干山形に曲げられる。このプレフォーム工程により、ウエザストリップ10を押出成形するときに中空シール部18や、カバーリップ17が互いに干渉することなく、また、表面に耐摩耗性を向上するためのシリコン膜等を塗布することが容易になる。
【0081】
次に、上記のインサート30を使用した長尺成形品であるウエザストリップ10を図7に基づいて説明する。図7はウエザストリップ10の断面図である。ウエザストリップ10は、自動車の車体開口部周縁等に形成されたフランジに取付けられる取付基部であるトリム部11と、カバーリップ17と、中空シール部18とを有する。
【0082】
トリム部11は、車外側側壁12、車内側側壁13と底壁14から構成され、断面略U字形をなし、内部にインサート30が埋設され、上部に車室内側に延びるカバーリップ17が設けられている。このカバーリップ17は、所定箇所で部分的に切取られる場合もある。また、上記のインサート30によりトリム部11の剛性が高まり、車体やドアのフランジに強固に取付けることができる。
【0083】
さらに、インサート30は、第1連結部32で分離され、トリム部11の把持力を維持しつつ、ウエザストリップ10の柔軟性を高めている。トリム部11の断面略U字形の内面には2本の車外側保持リップ15と2本の車内側保持リップ16が設けられている。トリム部11の内部にドアや車体開口縁のフランジが挿入され、車外側保持リップ15と車内側保持リップ16により保持されて、ウエザストリップ10が装着される。
【0084】
中空シール部18は、車外側側壁12の外面に一体的に形成されている。
トリム部11は、ゴム、熱可塑性エラストマー、軟質合成樹脂等のゴム状弾性材料のソリッド材又は微発泡材で形成され、中空シール部18は、ゴムや熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性材料のスポンジ材で構成されている。
【0085】
次に、図8に基づき、上述の方法で製造されたインサート30を使用した長尺成形品であるウエザストリップ10の製造方法について説明する。
図8は、ウエザストリップ10の製造工程の模式図である。
上述のように製造されたインサート30を、従来技術と同様に押出成形機1に送り、インサート30に合成ゴム、熱可塑性エラストマー等のゴム状弾性材料による被覆層を被覆させて、トリム部11や中空シール部18を形成し、ウエザストリップ10を成形する。その後、ゴムの場合には、加硫槽2に移送し、熱風やUHFにより加熱、加硫する。なお、トリム部11はソリッド材で形成し、中空シール部18はスポンジ材で形成することが好ましい。
【0086】
加硫した連続したウエザストリップ10は、引取機3により引取られたのち、インサート分離機4によりウエザストリップ10の可撓性を向上させるために、インサート30の第1連結部32のみを分離させる。インサート分離機4は、複数の上分離ロール4aと下分離ロール4bの間にウエザストリップ10をジグザグ状に通して、ウエザストリップ10を繰り返し折り曲げ、インサート30の第1連結部32を疲労破断させて分離させるものである。
【0087】
インサート30の第1連結部32が分離されたウエザストリップ10は、曲げ機5に移送され、上曲げロール5aと下曲げロール5bにより図7に示すように、トリム部11を断面略U字形に折り曲げる。折り曲げられたウエザストリップ10は、従来の技術で述べたと同様に、切断、端部型成形等の加工が行われ、ウエザストリップ10として製品となる。
【符号の説明】
【0088】
1 押出成形機
10 長尺成形品(ウエザストリップ)
11 トリム部
30 インサート
31 短冊部
32 第1連結部
33 第2連結部
34 第1スリット
35 第2スリット
36 帯状金属板
51 スリッターロール
52 圧延ロール
53 引取りロール
238 第2切断線
239 端切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状金属板を加工して形成され、長尺成形品の内部に埋設されるインサートにおいて、
該インサートは、上記帯状金属板から多数の短冊部を幅方向に並べるように、かつ該短冊部の両側の端部付近を長手方向に連結部で連結した梯子状となるように、該連結部が圧延と引張力が付与されて形成されており、
上記短冊部と短冊部の間にはスリットが形成され、該スリットは、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、該第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットが交互に上記インサートの長手方向に沿って形成され、上記連結部は、上記第1スリットの側端に形成されたインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、上記第2スリットの側端に形成された隣接する上記第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とが交互に上記インサートの長手方向に沿って形成され、
上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(65〜104):(24〜53)に設定され、上記第1連結部と上記第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成されたインサート。
【請求項2】
上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比は、100:(75〜95):(32〜43)に設定され、上記第1連結部と上記第2連結部の幅方向における幅の比は、20:(28〜33)に設定されて形成された請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
上記短冊部と上記連結部の板厚の比は20:(10〜13)である請求項1又は請求項2に記載のインサート。
【請求項4】
帯状金属板から加工され、短冊部とスリットと、上記短冊部の両側の端部付近の連結部で連結した梯子状の形状をなし、長尺成形品の内部に埋設されるインサートの製造方法において、
上記帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、該切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて上記短冊部と短冊部の間にスリットを形成し、該スリットは、インサートの長手方向における幅の広い第1スリットと、該第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成し、上記連結部は、上記第1スリットの側端に形成されたインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、上記第2スリットの側端に形成され上記第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、上記圧延と上記圧延ロールと引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成し、
上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)となり、上記第1連結部と上記第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成することを特徴とするインサートの製造方法。
【請求項5】
上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となり、上記第1連結部と上記第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成する請求項4に記載のインサートの製造方法。
【請求項6】
上記短冊部と上記連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成する請求項4又は請求項5に記載のインサートの製造方法。
【請求項7】
上記圧延ロールの移送速度より上記引取ロールの移送速度を速くして、上記圧延ロール部位でのインサートを200〜250Nの引張力で引き取る請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載のインサートの製造方法。
【請求項8】
インサート加工工程で帯状金属板を加工し、金属製のインサートを形成し、押出工程で長尺成形品の内部に上記インサートを埋設するように押出成形機に移送してゴム状弾性材料で被覆して被覆層を設け、インサート分離工程で上記インサートの短冊部を分離する、各工程を備えた長尺成形品の製造方法において、
上記インサート加工工程は、上記帯状金属板に、側端部分を残して、交互に幅方向に長短の切断線を入れ、圧延ロールと引取ロールに移送し、該切断線のない側端部分を圧延と引張を加えて上記短冊部と短冊部の間にはスリットを形成し、該スリットは、インサートの長手方向の幅における広い第1スリットと、該第1スリットよりもインサートの長手方向における幅の狭い第2スリットを交互に形成し、上記連結部は、上記第1スリットの側端に形成されインサートの幅方向における幅の狭い第1連結部と、上記第2スリットの側端に形成され上記第1連結部よりもインサートの幅方向における幅の広い第2連結部とを、上記圧延ロールと上記引取ロールの回転速度の差から生じる引張力により、インサートの長手方向に沿って交互に形成し、上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(65〜104):(24〜53)となり、上記第1連結部と第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成し、
上記押出工程は、上記長尺成形品の取付基部の内部に上記インサートを埋設するように上記インサートを押出成形機に移送してゴム状弾性材料で被覆して被覆層を形成し、上記インサート分離工程に被覆層を備えた上記インサートを移送し、
上記インサート分離工程は、上記インサートを2個ずつ短冊部が一体となるようにそれぞれ上記第1スリット部位で分離させて製造する長尺成形品の製造方法。
【請求項9】
上記短冊部と、上記第1スリットと、上記第2スリットの長手方向における幅の比が、100:(75〜95):(32〜43)となり、上記第1連結部と上記第2連結部の幅方向における幅の比が、20:(28〜33)となるようにインサートを形成する請求項8に記載の長尺成形品の製造方法。
【請求項10】
上記短冊部と上記連結部の板厚の比が、20:(10〜13)となるようにインサートを形成する請求項8又は請求項9項に記載の長尺成形品の製造方法。
【請求項11】
上記長尺成形品は、自動車の開口部周縁をシールするウエザストリップである請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載の長尺成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−147995(P2011−147995A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257551(P2010−257551)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】