説明

インサートカラー

【課題】使用条件に合わせて簡単に製造できるインサートカラーを提供する。
【解決手段】インサートカラー1は、樹脂部材3が備えたネジ挿通孔31の周囲に配置される。インサートカラーは、円筒状を呈しており、軸心方向に沿って螺旋状に延びた溝2が外周面に形成されている。溝の幅W及びピッチXは、以下の式1で表される条件を満たすよう定められている。


式中、Hはインサートカラーの高さ,Rはインサートカラーの半径,F2は樹脂部材に対するインサートカラーの密着強度,Tは前記ネジ挿通孔を通して螺着されるネジの締め付けトルク,Kはネジを締め付けるトルク係数,Dはネジの呼び径,τは樹脂部材の剪断強度を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートカラーに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示されたインサートカラーは、軸心方向に沿って螺旋状に延びた溝を外周面に備えており、樹脂部材が備えるネジ挿通孔の周囲に配置される。溝は、ネジ挿通孔を通してネジが螺着される際に加えられる回転力で回転するのを防止するため、ネジが螺着されるネジ孔と逆ネジ方向に傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3103899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のインサートカラーでは、ネジの頭部から加えられる軸力で溝内に収容された樹脂部材の凸部に剪断力が働き、凸部が破損する虞がある。このため、凸部の破損を防止できる溝をインサートカラーの使用条件に合わせて簡単に製造することが望まれていた。
【0005】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決できるインサートカラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明のインサートカラーは、樹脂部材が備えたネジ挿通孔の周囲に配置される円筒状のインサートカラーであって、外周面には軸心方向に沿って螺旋状に延びた溝を備え、以下の式1で表される条件を満たすことを特徴とする。
【数1】

式中、Hは前記インサートカラーの高さ,Rは前記インサートカラーの半径,Xは前記溝のピッチ,Wは前記溝の幅,F2は前記樹脂部材に対する前記インサートカラーの密着強度,Tは前記ネジ挿通孔を通して螺着されるネジの締め付けトルク,Kはトルク係数,Dは前記ネジの呼び径,τは樹脂部材3の剪断強度を示す。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用条件に合った溝を備えたインサートカラーを簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態のインサートカラーが樹脂部材に配置された状態示す側面図である。
【図2】図1のインサートカラーを示す斜視図である。
【図3】インサートカラーの外周面に形成される溝を示す展開図である。
【図4】図1の凸部が破損した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0010】
図1に示すインサートカラー1は、樹脂部材3が備えたネジ挿通孔31の周囲に配置されおり、インサート成型で樹脂部材3に密着している。樹脂部材3は、ネジ挿通孔31に挿通されたネジが相手側部材4のネジ孔41に螺着することで、相手側部材4に結合される。インサートカラー1は、図2に示すように、円筒状を呈しており、外周面には溝2を備えている。溝2は、インサートカラー1の軸心方向に沿ってネジ孔41と逆ネジ方向に螺旋状に延びている。
【0011】
溝2のピッチX及び幅Wは、インサートカラー1の高さをH,インサートカラー1の半径をR,樹脂部材3に対するインサートカラー1の密着強度をF2,ネジ孔41に螺着されたネジの締め付けトルクをT,ネジを締め付けるトルク係数をK,ネジの呼び径をD,樹脂部材3の剪断強度をτとすると、以下の式3の関係を満たすよう定められている。
【数3】

【0012】
ここで、溝2のピッチXは、インサートカラー1の周方向に沿った溝2の周回数を表している。例えば、図3(a)に示すように、1本の溝2がインサートカラー1の外周面を1周している場合にはピッチX1=1となる。また、図3(b)に示すように、1本の溝2がインサートカラー1の外周面を2周している場合にはピッチX1=2となる。また、複数の溝2がインサートカラー1の外周面に形成されている場合、ピッチXは、各溝2のピッチXを合計した数となる。
【0013】
相手側部材4のネジ孔41にインサートカラー1を通してネジが螺着される際、インサートカラー1にはネジの頭部から以下の式4で表される軸力F1が加えられる。
【数4】

【0014】
このため、溝2内に位置した樹脂部材3の凸部32には、ネジ孔41と反対側に位置した溝2の側面から以下の式5で表される剪断力F3が加えられることとなる
【数5】

【0015】
凸部32は、溝2と同じ幅W及びピッチXでインサートカラー1の外周面に沿って延びていることから、断面積は以下の式6で表される断面積Sとなる。
【数6】

【0016】
このため、凸部32の剪断に必要な力は、以下の式7で表されるF4となる。
【数7】

【0017】
図4に示すように、溝2から凸部32に加えられる剪断力F3が凸部32の剪断に必要な力F5を上回ると、凸部32が破損する虞がある。しかしながら、インサートカラー1は、上記式1の条件を満たすよう形成されているので、凸部32に加えられる剪断力F3を凸部32の剪断に必要な力F5が上回り、凸部32の破損が防止される。
【0018】
インサートカラー1は、上記式3の関係を満たすよう溝2のピッチX及び幅Wが定められているので、溝2の幅Wが予め定められている場合には、インサートカラー1の使用条件に合わせて上記式3の関係を満足するピッチXを定めることができる。
【0019】
このため、インサートカラー1を形成する金属製のパイプの外周面に刃物で溝2を形成する際には、インサートカラー1の使用条件に合ったピッチ数の溝2が形成されるよう、パイプ回転速度及び刃物の移動速度を定めることで、インサートカラー1を簡単に製造できる。
【0020】
本実施形態によれば、インサートカラー1の使用条件に応じて変わるインサートカラー1の高さH,半径R,並びに樹脂部材3に対する密着強度F2、ネジの締め付けトルクT,トルク係数K,並びに呼び径D、及び樹脂部材3の剪断強度τに合わせて、溝2のピッチX及び幅Wを定めることで、ネジの頭部から加えられる荷重に十分に耐えられるインサートカラー1を簡単に製造することができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、樹脂部材3が備えたネジ孔41と逆ネジ方向に溝2が螺旋状に延びている場合について説明したが、ネジ孔41と同方向に延びていてもよい。また、インサートカラー1を形成するパイプの材質は、金属には限定されない。
【符号の説明】
【0022】
1 インサートカラー
2 溝
3 樹脂部材
31 ネジ挿通孔
32 凸部
4 相手側部材
41 ネジ孔
H インサートカラーの高さ
R インサートカラーの半径
W 溝の幅
X 溝のピッチ
F2 樹脂部材に対するインサートカラーの密着強度
T ネジの締め付けトルク
K トルク係数
D ネジの呼び径
τ 樹脂部材の剪断強度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂部材が備えたネジ挿通孔の周囲に配置される円筒状のインサートカラーであって、
外周面には軸心方向に沿って螺旋状に延びた溝を備え、
以下の式1で表される条件を満たすことを特徴とするインサートカラー。
【数1】

式中、Hは前記インサートカラーの高さ,Rは前記インサートカラーの半径,Xは前記溝のピッチ,Wは前記溝の幅,F2は前記樹脂部材に対する前記インサートカラーの密着強度,Tは前記ネジ挿通孔を通して螺着されるネジの締め付けトルク,Kは前記ネジを締め付けるトルク係数,Dは前記ネジの呼び径,τは樹脂部材の剪断強度を示す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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