説明

インストルメントパネル構造

【課題】車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができるインストルメントパネル構造を提供する。
【解決手段】ボルト62及びナット66による締結力(軸力)によって、切欠き部74の所定の位置(切欠き部74の開口部74A側)でブラケット54及びブラケット68がボルト62及びナット66を介して締結される。しかし、当該締結力よりも大きい衝撃荷重が入力されると、ボルト62を介してブラケット54が切欠き部74の形状に沿ってインパネリインフォース14側へ移動する。このとき、ボルト62及びナット66と切欠き部74の周縁部との間で摺動抵抗が発生し、これによって、衝撃エネルギーが吸収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスプレイの視認性を高めるため、インストルメンタルパネルの上部にディスプレイが立設されたインストルメントパネル構造が開示されている。なお、この他にも特許文献2〜8にインストルメントパネル構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−091405号公報
【特許文献2】特開2006−088976号公報
【特許文献3】特開2003−212001号公報
【特許文献4】特開2003−034162号公報
【特許文献5】特開2001−146120号公報
【特許文献6】特開2010−095198号公報
【特許文献7】特開2008−290508号公報
【特許文献8】特開2005−132290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、インストルメントパネルの一般面(意匠面)よりもディスプレイが突出するため、車両の衝突時に乗員が当該ディスプレイに二次衝突する可能性もある。このため、この先行技術は、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができるインストルメントパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、車室前部に設けられたインストルメントパネルと、前記インストルメントパネル上面に配設されたディスプレイと、前記インストルメントパネルの裏側に設けられ、車両幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントと、前記ディスプレイが前記インストルメントパネルリインフォースメントによって支持されるように当該ディスプレイとインストルメントパネルリインフォースメントとを連結すると共に、衝撃荷重による衝撃エネルギーを吸収する支持部材と、を有している。
【0007】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、車室前部に設けられたインストルメントパネル上面にディスプレイが配設されている。また、インストルメントパネルの裏側には、車両幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントが設けられている。
【0008】
ディスプレイがインストルメントパネルリインフォースメントによって支持されるように、当該ディスプレイとインストルメントパネルリインフォースメントとが支持部材によって連結されている。一般的に、インストルメントパネルリインフォースメントは強度及び剛性の高い部材で形成されている。このため、支持部材を介して、当該インストルメントパネルリインフォースメントによってディスプレイを支持することで、ディスプレイが大型化し質量が大きくなったとしても当該ディスプレイを十分に支持することができる。
【0009】
その一方で、車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突する際、この支持部材によって衝撃荷重による衝撃エネルギーが吸収される。当該支持部材によって衝撃エネルギーを吸収する方法として、例えば、支持部材の変形(弾性変形や塑性変形)による方法や支持部材とディスプレイ又は支持部材とインストルメントパネルリインフォースメントとの連結状態が解除される過程で生じる抗力(摺動抵抗など)による方法などが挙げられる。
【0010】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1に記載のインストルメントパネル構造において、前記支持部材は、前記ディスプレイに固定される第1ブラケットと、前記インストルメントパネルリインフォースメントに固定される第2ブラケットと、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとを接合し、衝撃荷重が入力されると接合状態が解除される接合部と、を含んで構成されている。
【0011】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、支持部材は第1ブラケット及び第2ブラケットを含んで構成されている。第1ブラケットはディスプレイに固定され、第2ブラケットはインストルメントパネルリインフォースメントに固定される。
【0012】
ここで、第1ブラケットと第2ブラケットとは接合部によって接合されており、衝撃荷重が入力されると当該接合部における接合状態が解除されるようになっている。このように、接合部における接合状態が解除される過程で、衝撃エネルギーが吸収される。なお、ここでの「接合」には、ボルト、溶接、接着等による接合方法が含まれる。
【0013】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2に記載のインストルメントパネル構造において、前記接合部は、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの何れか一方に設けられ、車両前後方向に沿って形成された長孔状のスライド部と、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの何れか他方に設けられ、前記スライド部と共に締結具が挿入される孔部と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、接合部は長孔状のスライド部及び孔部を含んで構成されている。スライド部は第1ブラケット及び第2ブラケットの何れか一方に設けられ、孔部は第1ブラケット及び第2ブラケットの何れか他方に設けられている。スライド部は車両前後方向に沿って形成されており、当該スライド部と共に孔部に締結具が挿入される。
【0015】
そして、スライド部の所定の位置で締結具を介して第1ブラケット及び第2ブラケットが位置決めされた状態で締結されることとなるが、この締結具による締結力(軸力)よりも大きい衝撃荷重が入力されると、締結具がスライド部の形状に沿って相対移動する。つまり、第1ブラケットが第2ブラケットに対して移動する。このとき、締結具とスライド部の周縁部との間で摺動抵抗が発生し、これによって、衝撃エネルギーが吸収される。
【0016】
また、インストルメントパネル上面にディスプレイは配設されているため、車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突する際、当該ディスプレイには車両後方の斜め上方から車両前方の斜め下方へ向かって衝撃荷重が入力される場合がある。このため、スライド部が第1ブラケット又は第2ブラケットにおいて車両前後方向に沿って形成されることで、第1ブラケットが第2ブラケットに対して衝撃荷重方向にスライドすることとなる。このため、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃をより安定的に緩和することができる。
【0017】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項3に記載のインストルメントパネル構造において、前記接合部において当該第1ブラケットは前記第2ブラケットの上に配置されている。
【0018】
車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突する際、例えば、当該ディスプレイには車両後方の斜め上方から車両前方の斜め下方へ向かって衝撃荷重が入力される。このため、ディスプレイを介して第1ブラケットへ入力される衝撃荷重には、車両下方へ向かう分力が作用する。
【0019】
第1ブラケットと第2ブラケットとを接合する接合部において、当該第1ブラケットが第2ブラケットの下に配置された場合、当該衝撃荷重によって第1ブラケットは第2ブラケットから離間する方向へ変形する可能性がある。しかし、請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、当該接合部において、第1ブラケットは第2ブラケットの上に配置されているため、第1ブラケットへ伝達された衝撃荷重を、当該第1ブラケットの下に配置された第2ブラケットへ確実に伝達することができる。
【0020】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記インストルメントパネルリインフォースメントが円筒状を成し、前記第2ブラケットにおける前記インストルメントパネルリインフォースメントとの固定部は、当該インストルメントパネルリインフォースメントの外周面の上部側に面接触する円弧片である。
【0021】
車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突する際、例えば、当該ディスプレイには車両後方の斜め上方から車両前方の斜め下方へ向かって衝撃荷重が入力される。このため、ディスプレイを介して第1ブラケットへ入力される衝撃荷重には、車両下方へ向かう分力が作用することとなる。
【0022】
このため、請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、第2ブラケットにおけるインストルメントパネルリインフォースメントとの固定部として、インストルメントパネルリインフォースメントの外周面の上部側に面接触する円弧片が設けられている。これにより、第1ブラケットから第2ブラケットへ伝達された衝撃荷重によって作用する車両下方へ向かう分力によって、第2ブラケットの固定部がインストルメントパネルリインフォースメントの外周面から剥がれないようにすることができる。
【0023】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2〜5の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記第1ブラケットにおける前記ディスプレイとの固定部は、車両上方へ向かって折り曲げられ当該ディスプレイの裏面に面接触される合わせ片である。
【0024】
車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突する際、当該ディスプレイには車両後方の斜め上方から衝撃荷重が入力される場合がある。このため、請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、第1ブラケットにおけるディスプレイとの固定部として、車両上方へ向かって折り曲げられ当該ディスプレイの裏面に面接触する合わせ片が設けられている。これにより、ディスプレイの車両後方の斜め上方から入力された衝撃荷重を合わせ片で受け、当該合わせ片を介して第1ブラケットで受けた衝撃荷重を、当該第1ブラケットの下に配置された第2ブラケットへ効果的に伝達することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、支持部材を複数の部材で構成することによって、衝撃エネルギーを吸収する方法の幅が広がる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、第1ブラケットが第2ブラケットに対して移動するときの荷重を設定しやすい、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、ディスプレイに入力された衝撃荷重が第1ブラケットから第2ブラケットへ伝達され、第1ブラケットが第2ブラケットに対して効果的に移動することができる、という優れた効果を有する。
【0029】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、ディスプレイに衝撃荷重が入力された際、第2ブラケットのインストルメントパネルリインフォースメントからの剥がれを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、合わせ片が車両下方へ向かって折り曲げられた場合と比較して、効率良く荷重伝達がなされる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたディスプレイや当該ディスプレイを支持する支持部材等を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断された断面図である。
【図3】インストルメントパネル構造の要部となるディスプレイや支持部材等が拡大された分解斜視図である。
【図4】図3の要部のみが拡大された分解斜視図である。
【図5】(A)は、ブラケット同士の締結状態を示す斜視図であり、(B)はブラケット同士の締結が解除された状態を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造の変形例を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車両幅方向をそれぞれ示す。
【0033】
(インストルメントパネルの構造)
図1には本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネル10を車室内側から見た斜視図が示されており、図2には、図1の2−2線に沿って切断された断面図が示されている。
【0034】
図1に示されるように、車室前部に設けられたインストルメントパネル10は、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインストルメントパネルリインフォースメント14(以下、「インパネリインフォース14」という)に取り付けられており、空調装置26等を車両上側から覆っている。なお、ここでは、インストルメントパネル10の車幅方向左側にコンビネーションメータ16が設けられており、この車両11は左ハンドル仕様となっているが、右ハンドル仕様でも良い。
【0035】
このインストルメントパネル10の車両幅方向両側には、サイドレジスタ18、20がそれぞれ設けられており、インストルメントパネル10の車両幅方向中央部には、レジスタとしての一対のセンターレジスタ22、24が設けられている。図2に示されるように、空調装置26には当該空調装置26によって温度調整された空気を送出する送出口としてのセンターレジスタ用送出口28とデフロスタ用送出口30とが設けられている。
【0036】
図1及び図2に示されるように、デフロスタ用送出口30にはデフロスタ31と接続されるダクト32が取り付けられており、当該ダクト32を介してデフロスタ用送出口30とデフロスタ31とが接続されている。また、センターレジスタ用送出口28にはセンターレジスタ22、24と接続されるダクト34が取り付けられている。
【0037】
ダクト34の根元部36は1つとなっており、当該根元部36からはダクト部38とダクト部40が分岐している。ダクト部38及びダクト部40は直線状に形成されており、ダクト部38がセンターレジスタ22に接続され、ダクト部40がセンターレジスタ24に接続されている。なお、サイドレジスタ18、20は、空調装置26に設けられた図示しないサイドレジスタ用送出口に取り付けられたダクトを介して、当該サイドレジスタ用送出口と接続されている。
【0038】
ところで、インストルメントパネル10の表側10A(車室内側)には、インストルメントパネル10の車両幅方向の中央部上面に収容凹部50が設けられている。この収容凹部50は車両後部側から車両前方側へ向かって略水平に形成された座面50Aを備えている。座面50Aは車両後部側を弦とする弓形形状を成しており、座面50Aの車両前方側に位置する円弧部に沿って縦壁50Bが形成されている。この縦壁50Bの車両後方側に位置して収容凹部50内には、例えばナビゲーション情報や車両情報などが表示されるディスプレイ12が配置されており、縦壁50Bには後述するブラケット54が貫通する貫通孔51が形成されている。
【0039】
図1に示されるように、ディスプレイ12の下方には、センターレジスタ22、24が設けられている。このセンターレジスタ22、24の下方には、空調装置26の温度や風量を設定したり、空気が送出されるレジスタの位置を特定したりする操作スイッチ42が設けられた空調操作部43が設けられている。そして、空調操作部43の下方には、車両幅方向の中央部に設けられたセンタークラスタ44にオーディオ装置46が設けられている。なお、空調操作部43の位置にオーディオ装置46が設けられても良い。
【0040】
ここで、図3には、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造の要部となるディスプレイ12や支持部材52等が拡大され車両斜め前方から見た分解斜視図が示されている。図3に示されるように、例えば、ディスプレイ12の裏面の車両幅方向の両端部及び中央部には、支持部材52の一部を構成する第1ブラケットとしてのブラケット54が固定されている。
【0041】
これらのブラケット54はダクト34との干渉を回避するべく、ディスプレイ12の車両幅方向の両端部に固定されたブラケット54A、54Cは、それぞれダクト部38、40の車両幅方向の外側に配置されている。また、ディスプレイ12の車両幅方向の中央部に固定されたブラケット54Bは、ダクト部38とダクト部40の間に生じる隙間に配置されるように設定されている。
【0042】
また、ブラケット54は長板状を成しており、ブラケット54の幅方向の両端部には、車両上方へ向かって折れ曲がるフランジ部55が、ブラケット54の長手方向に沿って設けられている。また、ブラケット54の一端部には、車両上方へ向かって折れ曲げられ、ディスプレイ12の裏面に面接触される、固定部としての合わせ片56が設けられている。なお、フランジ部55は、合わせ片56においては車両前方側へ向かって折り曲げられている。
【0043】
そして、この合わせ片56がディスプレイ12の裏面に面接触された状態で、当該ブラケット54は、図示しないビスや接着などによってディスプレイ12に固定される。ブラケット54の合わせ片56と当該合わせ片56を除くブラケット54の支持片58とは、鈍角を成すように形成されている。
【0044】
また、接合部60としての支持片58の先端部には、ボルト62が挿通可能な孔部64が形成されており、孔部64の上には当該孔部64の軸線に合わせて、当該ボルト62が締結されるナット66が固定されている。
【0045】
一方、インストルメントパネル10の裏側に設けられ車両幅方向に沿って延在されたインパネリインフォース14には、支持部材52の一部を構成する第2ブラケットとしてのブラケット68が各ブラケット54に対応して3本固定されている。
【0046】
つまり、これらのブラケット68もブラケット54同様、ダクト34との干渉を回避するべく、ブラケット54A、54Cと対応するブラケット68A、68Cは、それぞれダクト部38、40の車両幅方向の外側に配置されている。また、ブラケット54Bと対応するブラケット68Bは、ダクト部38とダクト部40の間に生じる隙間に配置されるように設定されている。
【0047】
図4には、図3に示すダクト34を除き、本実施形態の要部のみが拡大された分解斜視図が示されている。図4に示されるように、ブラケット68は長板状を成しており、ブラケット68の幅方向の両端部には、車両下方へ向かって折れ曲がるフランジ部69が、ブラケット68の長手方向に沿って設けられている。また、ブラケット68の一端部には、車両上方へ向かって湾曲し、円筒状を成して形成されたインパネリインフォース14の外周面に面接触される、固定部としての円弧片70が設けられている。なお、フランジ部69は、円弧片70には形成されていない。
【0048】
この円弧片70がインパネリインフォース14の外周面に面接触された状態で、当該ブラケット68は、インパネリインフォース14に溶接固定される。ブラケット68の円弧片70と当該円弧片70を除くブラケット68の支持片72とは、鈍角を成すように形成されている。
【0049】
また、接合部60としての支持片72の先端部には、当該支持片72の幅方向の中央部に、支持片72の長手方向に沿って長孔状としての略U字状の切欠き部74が形成されている。この切欠き部74の幅は、ブラケット54に形成された孔部64の内径と略同じ寸法となるように設定されており、ボルト62が挿通可能とされている。
【0050】
図5(A)は、ボルト62及びナット66によってブラケット54とブラケット68とが締結された状態が示されており、図5(B)は衝撃荷重(矢印F)によりブラケット54とブラケット68との締結状態が解除された状態が示されている。
【0051】
図5(A)に示されるように、ブラケット68がインパネリインフォース14に固定され、ブラケット54がディスプレイ12に固定された状態で、ブラケット68の支持片72の上には、ブラケット54の支持片58が重なるようにして配置される。
【0052】
この状態で、切欠き部74の開口部74A側に孔部64(図3参照)が配置されるように設定されており、ボルト62及びナット66によってブラケット54とブラケット68とが締結される。このようにして、支持部材52(ブラケット54及びブラケット68)を介して、ディスプレイ12(図3参照)がインパネリインフォース14に支持されている。
【0053】
(インストルメントパネル構造の作用・効果)
次に、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル構造の作用・効果について説明する。図3に示されるように、本実施形態では、支持部材52を介して、ディスプレイ12がインパネリインフォース14に支持されるようになっている。一般的に、インパネリインフォース14は強度及び剛性の高い部材で形成されている。このため、支持部材52を介して、当該インパネリインフォース14によってディスプレイ12を支持することで、ディスプレイ12が大型化し質量が大きくなったとしても当該ディスプレイ12を十分に支持することができる。
【0054】
ここで、本実施形態では、支持部材52はブラケット54及びブラケット68によって構成されており、ブラケット54側にはボルト62が挿通可能な孔部64が形成されると共に当該ボルト62が螺合されるナット66が固定されている。一方、ブラケット68側には、ボルト62が挿通可能な切欠き部74が形成されている。当該切欠き部74及び孔部64を通じてボルト62がナット66へ螺合され、ボルト62及びナット66によってブラケット54とブラケット68とが締結されている。
【0055】
このように、ボルト62及びナット66による締結力(軸力)によって、切欠き部74の所定の位置(図5(A)に示されるように、切欠き部74の開口部74A側)でブラケット54及びブラケット68がボルト62及びナット66を介して位置決めされた状態で締結される。しかし、当該締結力よりも大きい衝撃荷重(矢印F)が入力されると、図5(B)に示されるように、ボルト62を介してブラケット54が切欠き部74の形状に沿ってインパネリインフォース14側へ移動する。このとき、ボルト62及びナット66と切欠き部74の周縁部との間で摺動抵抗が発生し、これによって、衝撃エネルギーが吸収される。
【0056】
また、車両の衝突時に乗員がディスプレイ12に二次衝突する際、例えば、図2に示されるように、当該ディスプレイ12には車両後方の斜め上方から車両前方の斜め下方へ向かって衝撃荷重(矢印F)が入力される。このため、図5(A)に示されるように、切欠き部74がブラケット68の車両前後方向に沿って形成されるようにしている。
【0057】
これにより、接合部60において、所定値以上の衝撃荷重(矢印F)が入力されると、図5(B)に示されるように、ブラケット54が衝撃荷重(矢印F)が作用する方向に沿ってブラケット68に対してスライドする。このため、車両の衝突時に乗員がディスプレイ12から受ける衝撃をより安定的に緩和することができる。
【0058】
また、接合部60において、ボルト62及びナット66による締結力(軸力)以上の衝撃荷重(矢印F)が入力されると、ブラケット54とブラケット68との締結状態が解除されるようにすることで、ブラケット54がブラケット68に対して移動するときの荷重を容易に設定することができる。
【0059】
さらに、ブラケット54の幅方向の両端部には、車両上方へ向かって折れ曲がるフランジ部55が設けられ、ブラケット68の幅方向の両端部には、車両下方へ向かって折れ曲がるフランジ部69が設けられている。このように、ブラケット54、68にフランジ部55、69が当該ブラケット54、68の長手方向に沿ってそれぞれ設けられている。これにより、ブラケット54、68自体の強度及び剛性を向上させ、衝撃荷重(矢印F)が入力されたとき、ボルト62を切欠き部74に沿って確実に案内させることができる。
【0060】
一方、図5(A)に示されるように、ブラケット68がインパネリインフォース14に固定され、ブラケット54がディスプレイ12に固定された状態で、ブラケット68の支持片72の上には、ブラケット54の支持片58が重なるようにして配置される。車両の衝突時に乗員がディスプレイ12に二次衝突する際、例えば、当該ディスプレイ12には車両後方の斜め上方から車両前方の斜め下方へ向かって衝撃荷重(矢印F)が入力される。このため、ディスプレイ12を介してブラケット54へ入力される衝撃荷重(矢印F)には、車両下方へ向かう分力が作用することとなる。
【0061】
ブラケット54とブラケット68とを接合する接合部60において、図示はしないが、ブラケット54がブラケット68の下に配置された場合、当該衝撃荷重(矢印F)によってブラケット54はブラケット68から離間する方向へ変形する可能性がある。しかし、本実施形態では、接合部60において、ブラケット54はブラケット68の上に配置されているため、ブラケット54へ伝達された衝撃荷重(矢印F)を、当該ブラケット54の下に配置されたブラケット68へ確実に伝達することができる。このため、ブラケット54はブラケット68に対して効果的に移動することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ブラケット54の一端部には、車両上方へ向かって合わせ片56が折れ曲げられており、ディスプレイ12の裏面に面接触された状態で、ブラケット54はディスプレイ12に固定されるようにしている。これにより、合わせ片56を介してブラケット54で受けた衝撃荷重を、当該ブラケット54の下に配置されたブラケット68へ効果的に伝達することができる。つまり、当該合わせ片56が車両下方へ向かって折り曲げられた場合と比較して、効率良く荷重伝達がなされる。
【0063】
一方、ブラケット68の一端部には、車両上方へ向かって湾曲し、円筒状を成して形成されたインパネリインフォース14の外周面に面接触される円弧片70が設けられている。これにより、ブラケット54からブラケット68へ伝達された衝撃荷重(矢印F)によって作用する車両下方へ向かう分力により、ブラケット68の固定部(円弧片70)がインパネリインフォース14の外周面から剥がれないようにすることができる。なお、図示はしないが、円弧片70の車両下部側においてインパネリインフォース14の外周面に面接触される円孔片を設けても良いのは勿論のことである。
【0064】
ところで、本実施形態では、ブラケット54にナット66を固定し、当該ナット66に螺合させるボルト62を車両下方側からアクセス可能としている。図2に示されるように、インストルメントパネル10には、センターレジスタ22、24及び空調操作部43が取り付けられているが、これらを取り付けるための開口76、開口78が形成されている。このため、支持部材52の配置角度によって、開口76又は開口78を通じて専用の工具(図示省略)によってボルト62を取り付けることができる。したがって、組付作業性が良い。
【0065】
このように、本実施形態では、インストルメントパネル10における車両後部に設けられた開口76、78を通じてボルト62による締結を行うため、ブラケット54には予めナット66が固定され、ブラケット68側からボルト62を螺合させる構成としている。しかし、図示はしないが、インストルメントパネル10の上面に開口部を設け、当該開口部を通じてボルト62による締結を行っても良く、この場合、ブラケット54側からボルト62を螺合させる構成となる。
【0066】
(実施形態の補足)
本実施形態では、図3に示されるように、ブラケット54側にはボルト62が挿通可能な孔部64が形成され、ブラケット68側にはボルト62が挿通可能な切欠き部74が形成されている。しかし、ブラケット54がブラケット68に対して移動可能であれば良いため、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、ブラケット54側に切欠き部が形成され、ブラケット68側に孔部が形成されても良い。
【0067】
また、本実施形態では、ボルト62及びナット66による締結力によってブラケット54がブラケット68に対して移動するときの荷重を設定したが、所定の衝撃荷重が入力されるとブラケット54を移動させることができれば良いため、これに限るものではない。例えば、ブラケット54とブラケット68を溶接や接着などによって接合しても良い。
【0068】
この場合、接合部分が剥がれ、ブラケット54とブラケット68との接合状態が解除されるため、必ずしもブラケット54がブラケット68に沿って移動するというものではない。つまり、ブラケット54が脱落するという場合もあるが、ここではブラケット54とブラケット68とを接合する接合部60による接合状態が解除される過程で、衝撃エネルギーが吸収されることとなる。
【0069】
さらに、本実施形態では、切欠き部74を形成したが、ブラケット54を車両前方側へ移動させることができれば良いため、これに限るものではない。例えば、図示はしないが、ブラケット54の支持片58に当該支持片58の長手方向に沿って長孔部を形成しても良い。
【0070】
また、ブラケット54、68の幅方向に設けられたフランジ部55、69について、互いに対向するように配置しても良い。これにより、ブラケット54がブラケット68に沿って移動する際、フランジ部55とフランジ部69との摺動抵抗によっても衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0071】
また、本実施形態では、図5(A)に示されるように、ブラケット54の支持片58の下にブラケット68の支持片72が重なるようにして配置されているが、ブラケット54とブラケット68の配置方法はこれに限るものではない。例えば、図6に示されるように、ブラケット54の支持片58の車両幅方向の内側面にブラケット68の支持片72が重なるようにして配置されても良い。但し、この場合、合わせ片56は車両幅方向外側へ向かって折り曲げられる。
【0072】
さらに、本実施形態では、ブラケット54及びブラケット68は3本ずつ設けられているが、ディスプレイ12を支持することができれば良いため、必ずしも3本である必要はない。例えば、図7に示されるように、1本のブラケット80及びブラケット82でディスプレイ12を支持するようにしても良い。
【0073】
この場合、複数本のブラケットで支持する場合と比較して、当該ブラケット80、82の強度及び剛性を高くする必要がある。また、ディスプレイ12に入力された衝撃荷重をブラケット80へ効果的に伝達させるため、合わせ片84の面積を合わせ片56(図3参照)よりも大きくした方が良い。また、合わせ片の下部及び車両幅方向の両端部にフランジ部84Aを設けることで、合わせ片84自体の強度及び構成を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態では、支持部材52がブラケット54及びブラケット68によって構成されているが、1つの支持部材(図示省略)によってディスプレイ12を支持するようにしても良い。この場合、当該支持部材が変形(弾性変形や塑性変形)することによって、衝撃エネルギーが吸収されることとなる。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10 インストルメントパネル
12 ディスプレイ
14 インパネリインフォース(インストルメントパネルリインフォースメント)
52 支持部材
54 ブラケット(第1ブラケット、支持部材)
55 フランジ部
56 合わせ片
58 支持片
60 接合部(支持部材)
62 ボルト(締結具)
64 孔部(接合部)
66 ナット(締結具)
68 ブラケット(第2ブラケット、支持部材)
70 円弧片
74 切欠き部(スライド部、接合部)
80 ブラケット(第1ブラケット、支持部材)
82 ブラケット(第2ブラケット、支持部材)
84 合わせ片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に設けられたインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネル上面に配設されたディスプレイと、
前記インストルメントパネルの裏側に設けられ、車両幅方向に沿って延在されたインストルメントパネルリインフォースメントと、
前記ディスプレイが前記インストルメントパネルリインフォースメントによって支持されるように当該ディスプレイとインストルメントパネルリインフォースメントとを連結すると共に、衝撃荷重による衝撃エネルギーを吸収する支持部材と、
を有するインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記ディスプレイに固定される第1ブラケットと、
前記インストルメントパネルリインフォースメントに固定される第2ブラケットと、
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとを接合し、衝撃荷重が入力されると接合状態が解除される接合部と、
を含んで構成されている請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記接合部は、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの何れか一方に設けられ、車両前後方向に沿って形成された長孔状のスライド部と、
前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットの何れか他方に設けられ、前記スライド部と共に締結具が挿入される孔部と、
を含んで構成されている請求項2に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項4】
前記接合部において当該第1ブラケットは前記第2ブラケットの上に配置されている請求項3に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項5】
前記インストルメントパネルリインフォースメントが円筒状を成し、
前記第2ブラケットにおける前記インストルメントパネルリインフォースメントとの固定部は、当該インストルメントパネルリインフォースメントの外周面の上部側に面接触する円弧片である請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項6】
前記第1ブラケットにおける前記ディスプレイとの固定部は、車両上方へ向かって折り曲げられ当該ディスプレイの裏面に面接触される合わせ片である請求項2〜5の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82362(P2013−82362A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224320(P2011−224320)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】