説明

インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂血症および高尿酸血症の処置のための、(−)(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェニル)酢酸誘導体の使用

【課題】高尿酸血症を緩和する薬学的組成物および医薬の製造におけるその使用を提供すること。
【解決手段】本発明は例えば、高尿酸血症を処置するための薬学的組成物であり、この組成物は、(−)立体異性体である(−)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)酢酸またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルプロドラッグを含み、該化合物の該(−)立体異性体は、該化合物の(+)立体異性体を実質的に含まない。好ましくは、(−)立体異性体は、前記(+)立体異性体に対して少なくとも80%のエナンチオマー過剰率で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、1999年6月4日に出願された出願番号09/325,997号の一部継続出願であり、出願番号09/325,997号は、本明細書中で、全ての目的のために参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂血症、および高尿酸血症の処置における、(−)(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェニル)酢酸誘導体および組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
真性糖尿病(一般に糖尿病と呼ばれている)は、複数の原因因子から誘導される疾患プロセスに関連し、そして高血糖症と呼ばれる、関連する高レベルの血漿グルコースによって特徴付けられる。例えば、非特許文献1(LeRoith,D.ら(編),DIABETES MELLITUS(Lippincott−Raven Publishers,Philadelphia,PA U.S.A.1996))を参照のこと(全ての参考文献は、本明細書において引用される)。American Diabetes Associationによって、真性糖尿病は、世界中の人口の約6%に罹患していると見積もられている。制御されない高血糖症は、増加した成熟前の死亡率に関連しており、この死亡率の増加は、微小血管疾患および巨大血管疾患(腎症、神経障害、網膜症、高血圧症、脳血管疾患および冠状動脈性心臓病を含む)の増加した危険性に起因する。従って、グルコースホメオスタシスの制御は、糖尿病の処置のための非常に重要なアプローチである。
【0004】
糖尿病には、2種の主な形態が存在する:1型糖尿病(以前は、インスリン依存性糖尿病(IDDM)と呼ばれていた);および2型糖尿病(以前は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)と呼ばれていた)。
【0005】
1型糖尿病は、インスリン(グルコースの利用を制御するホルモン)の完全な欠乏の結果である。このインスリンの欠乏は、通常、膵臓のランゲルハンス島内におけるβ細胞の破壊によって特徴付けられ、このβ細胞の破壊は、完全なインスリンの欠乏を導く。1型糖尿病は、免疫媒介真性糖尿病および特発性真性糖尿病の2種の形態を有する。免疫媒介真性糖尿病は、膵臓のβ細胞の細胞媒介自己免疫破壊から生じ、そして特発性真性糖尿病は、未知の病因を有する疾患の形態を言及する。
【0006】
2型糖尿病は、完全ではなく相対的なインスリンの欠乏に伴うインスリン抵抗性によって特徴付けられる疾患である。2型糖尿病の範囲は、相対的なインスリン欠乏を有する顕著なインスリン抵抗性からいくらかのインスリン抵抗性を有する顕著なインスリン欠乏に及び得る。インスリン抵抗性は、インスリンが、幅広い濃度にわたって生物学的作用を及ぼす能力が低下することである。インスリン抵抗性の個体において、人体は、この欠損を補償するために多量のインスリンを異常に分泌する。インスリンの不適切な量が、インスリン抵抗性を補償するためおよびグルコースを適切に調節するために存在する場合に、グルコース寛容減損の状態が発達する。大多数の個体において、さらにインスリン分泌が低下し、そして血漿グルコースのレベルが上昇し、その結果、糖尿病の臨床状態が生じる。2型糖尿病は、グルコースの調節効果、ならびに主なインスリン感知組織:筋肉、肝臓および脂肪組織における脂質代謝を刺激するインスリンに対する、重大な抵抗性に起因し得る。インスリン応答性に対する抵抗性の結果として、筋肉内でのグルコース摂取、酸化および貯蔵の不適切なインスリン活性、ならびに脂肪性組織内での脂肪分解、および肝臓内でのグルコース産生および分泌の不適切なインスリン応答を生じる。2型糖尿病において、遊離脂肪酸のレベルは、肥満患者およびいくらかの肥満でない患者においてしばしば上昇し、そして脂質の酸化が増加する。
【0007】
アテローム性動脈硬化症の成熟前の発達ならびに心臓血管の疾患および末梢血管の疾患の増加した割合が、糖尿病を患った患者の特徴である。高脂血症は、これらの疾患に対する重要な誘発因子である。高脂血症は、血流中で血清脂質の異常な増加によって一般に特徴付けられる状態であり、そしてアテローム硬化症および心臓疾患を発達させる重大な危険因子である。脂質代謝の障害の総説について、例えば、非特許文献2(Wilson,J.ら(編),Disorders of Lipid Metabolism,23章,Textbook of Endocrinology,第9版,(W.B.Sanders Company,Philadelphia,Pa.U.S.A.1998;この文献および本明細書中で引用される全ての文献は、本明細書中で参考として援用される))を参照のこと。血清リポタンパク質は、循環において脂質のためのキャリアである。これらは、以下の密度に従って分類される:カイロミクロン;超低密度リポタンパク質(VLDL);中間密度リポタンパク質(IDL);低密度リポタンパク質(LDL);および高密度リポタンパク質(HDL)。高脂血症は、通常、第1高脂血症または第2高脂血症として分類される。第1高脂血症は、遺伝的欠陥によって一般に引き起こされるが、第2高脂血症は、他の因子(例えば、種々の疾患状態)、薬物および食事性因子によって一般に引き起こされる。だが、高脂血症は、第1高脂血症および第2高脂血症の原因の両方の組合せから生じ得る。上昇したコレステロールのレベルは、複数の疾患状態に関連しており、これらの状態としては、冠状動脈疾患、狭心症、頚動脈疾患、発作、大脳動脈硬化症、および黄色腫が挙げられる。
【0008】
異脂血症(dyslipidemia)(すなわち、血漿中のリポタンパク質の異常なレベル)が、糖尿病において頻繁に発生し、そして糖尿病被験体の冠状動脈事象および死の頻度の増加の主な原因の1つであることが示されている(例えば、Joslin,E.Ann.Chim.Med.(1927)5:1061−1079を参照のこと)。それ以来、免疫学的研究により、この関連性が確認されており、そして糖尿病でない被験体と比較した場合、糖尿病の被験体において冠状動脈性死が数倍増加することが示されている(例えば、非特許文献3(Garcia,M.J.ら,Diabetes(1974)23:105−11(1974));ならびに非特許文献4(Laakso,M.およびLehto,S.,Diabetes Reviews(1997)5(4):294−315)を参照のこと)。糖尿病の被験体における数種のリポタンパク質の異常性が、記載されている(非特許文献5(Howard B.ら,Artherosclerosis(1978)30:153−162))。
【0009】
1970年代の先行の研究において、2型糖尿病、高脂血症および高尿酸血症を処置するための強力な治療剤として、ラセミ2−アセトアミドエチル(4−クロロフェニル)(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテート(これはまた、「ハロフェネート」として知られている)の有効性が実証されている(例えば、Bolhofer,W.,米国特許第3,517,050号(特許文献1);非特許文献6(Jain,A.ら,N.Eng.J Med.(1975)293:1283−1286);非特許文献7(Kudzma,D.ら,Diabetes(1977)25:291−95);非特許文献8(Kohl,E.ら,Diabetes Care(1984)7:19−24);非特許文献9(McMahon,F.G.ら,Univ.Mich.Med.Center J.(1970)36:247−248);非特許文献10(Simori,C.ら,Lipids(1972)7:96−99);非特許文献11(Morgan,J.P.ら,Clin.Pharmacol.Therap.(1971)12:517−524)および非特許文献12(Aronow,W.S.ら,Clin.Pharmacol Ther(1973)14:358−365)ならびに非特許文献13(Fanelli,G.M.ら,J.Pharm.Experimental Therapeutics(1972)180:377−396)を参照のこと)。これらの先行の研究で、糖尿病において、ラセミハロフェネートとスルホニルウレアと組合せた場合の効果が、観測された。ラセミハロフェネートのみで処理した糖尿病の患者において、グルコースにおける最小の効果が観測された。しかし、顕著な副作用が認められ、この副作用としては、胃および消化性潰瘍からの胃腸管出血が挙げられる(例えば、非特許文献14(Friedberg,S.J.ら,Clin.Res.(1986)第34巻,第2:682A)を参照のこと)。
【0010】
さらに、ワルファリンスルフェートのような薬剤を用いた、ラセミハロフェネート(これはまた、3−(α−アセトニルベンジル)−4−ヒドロキシクマリンまたはCoumadinTM(Dupont Pharmaceuticals,E.I.Dupont de Nemours and Co.,Inc.,Wilmington,DE. U.S.A.)とも呼ばれている)の薬物間の相互作用のいくらかの徴候が存在する(例えば、非特許文献15(Vesell,E.S.およびPassantanti,G.T.,Fed.Proc.(1972) 31(2):538)を参照のこと)。CoumadinTMは、ビタミンK依存凝固因子の合成を阻害することによって作用する抗凝固剤である(これらの因子としては、II因子、VII因子、IX因子およびX因子、ならびに抗凝固性タンパク質CおよびSが挙げられる)。CoumadinTMは、肝臓ミクロソーム酵素(シトクロムP450酵素)によって立体特異的に代謝されると考えられている。シトクロムP450イソ酵素は、2C9,2C19,2C8,2C18,1A2,および3A4を含むCoumadinの代謝に関係している。2C9は、CoumadinTMの抗凝固性活性を含む、数種の薬物のインビボでの薬物代謝を調節する、ヒトの肝臓のP450の主要形態であるようである(非特許文献16(Miners,J.O.ら,Bri.J.Clin.Pharmacol.(1998)45:525−538)を参照のこと)。
【0011】
CoumadinTMの代謝を阻害する薬物は、ビタミンK依存凝固因子におけるさらなる減少をもたらし、この因子により、このような治療を受ける患者(すなわち、下肢、心臓または他の部位における血液の凝固による肺塞栓または大脳塞栓の危険がある患者)において所望されるよりも多くの凝固を防止する。抗凝固剤の用量の単純な減少は、血餅の形成を予防するのに適切な抗凝固剤性を維持することが必要とされるので、しばしば困難である。薬物間の相互作用からの増加した抗凝固性の結果として、軟部組織の損傷、胃腸部位(すなわち、胃潰瘍および十二指腸潰瘍)または他の障害(すなわち、大動脈瘤)からのいくらかの出血の可能性を有する患者に対して重大な危険性が生じる。あまりに多すぎる抗凝固剤に直面した出血は、医療的な緊急事態を構成し、適切な治療で即座に処置しない場合、死に至り得る。
【0012】
シトクロムP450 2C9はまた、数種の他の一般的に使用される薬物の代謝に関連していることが公知であり、この薬物には、ダイランチン、スルホニルウレア(トルブタミド)および数種の非ステロイド性の抗炎症剤(例えば、イブプロフェン)が挙げられる。この酵素の阻害は、上記のCoumadinTMの効果に加えて、他の有害な薬物間相互作用に関する効果を生じる能力を有する(例えば、非特許文献17(Pelkonen,O.ら,Xenobiotica(1998)28:1203−1253);非特許文献18(Linn,J.H.およびLu,A.Y.,Clin.Pharmacokinet.(1998)35(5):361−390)を参照のこと)。
【特許文献1】米国特許第3,517,050号明細書
【非特許文献1】LeRoith,D.ら(編),DIABETES MELLITUS(Lippincott−Raven Publishers,Philadelphia,PA U.S.A.1996)
【非特許文献2】Wilson,J.ら(編),Disorders of Lipid Metabolism,23章,Textbook of Endocrinology,第9版,(W.B.Sanders Company,Philadelphia,Pa.U.S.A.1998
【非特許文献3】Garcia,M.J.ら,Diabetes(1974)23:105−11(1974)
【非特許文献4】Laakso,M.およびLehto,S.,Diabetes Reviews(1997)5(4):294−315
【非特許文献5】Howard B.ら,Artherosclerosis(1978)30:153−162
【非特許文献6】Jain,A.ら,N.Eng.J Med.(1975)293:1283−1286
【非特許文献7】Kudzma,D.ら,Diabetes(1977)25:291−95
【非特許文献8】Kohl,E.ら,Diabetes Care(1984)7:19−24
【非特許文献9】McMahon,F.G.ら,Univ.Mich.Med.Center J.(1970)36:247−248
【非特許文献10】Simori,C.ら,Lipids(1972)7:96−99
【非特許文献11】Morgan,J.P.ら,Clin.Pharmacol.Therap.(1971)12:517−524
【非特許文献12】Aronow,W.S.ら,Clin.Pharmacol Ther(1973)14:358−365
【非特許文献13】Fanelli,G.M.ら,J.Pharm.Experimental Therapeutics(1972)180:377−396
【非特許文献14】Friedberg,S.J.ら,Clin.Res.(1986)第34巻,第2:682A
【非特許文献15】Vesell,E.S.およびPassantanti,G.T.,Fed.Proc.(1972) 31(2):538
【非特許文献16】Miners,J.O.ら,Bri.J.Clin.Pharmacol.(1998)45:525−538
【非特許文献17】Pelkonen,O.ら,Xenobiotica(1998)28:1203−1253
【非特許文献18】Linn,J.H.およびLu,A.Y.,Clin.Pharmacokinet.(1998)35(5):361−390
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の困難性および不足に対する解決策が必要とされ、その解決後、ハロフェナートがインスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂血症、および高尿酸血症の慣用的な処置に有効となる。本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病、高脂血症、高尿酸血症を緩和する組成物および方法を提供することによって、上記およびその他の必要性を満たす一方で、より良好に副作用プロフィールを妨げる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物における2型糖尿病を調節する方法を提供する。この方法は、哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物
【0015】
【化1】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩を投与する工程を包含し、ここで、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そしてXはハロゲンであり;この化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない。
【0016】
いくつかのこのような方法はさらに、式IIの化合物
【0017】
【化2】

を含み、ここで、Rは、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである。
【0018】
いくつかのこのような方法はさらに、式IIIの化合物
【0019】
【化3】

を含む。
【0020】
式IIIの好ましい化合物は、「(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテート」または「(−)ハロフェネート」として公知である。
【0021】
本発明はさらに、哺乳動物におけるインスリン抵抗性を調節するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の式Iの化合物の(−)立体異性体を哺乳動物に投与する工程を包含する。いくつかのこのような方法はさらに、式IIの化合物を含む。いくつかのこのような方法はさらに、式IIIの化合物を含む。
【0022】
本発明はさらに、哺乳動物における高脂血症を緩和する方法を提供する。この方法は、治療有効量の式Iの化合物を哺乳動物に投与する工程を包含する。いくつかのこのような方法はさらに、式IIの化合物を含む。いくつかのこのような方法はさらに、式IIIの化合物を含む。
【0023】
本発明はさらに、哺乳動物における高尿酸血症を調節する方法を提供する。この方法は、治療有効量の式Iの化合物を哺乳動物に投与する工程を包含する。いくつかのこのような方法はさらに、式IIの化合物を含む。いくつかのこのような方法はさらに、式IIIの化合物を含む。
【0024】
本発明はまた、薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式I、式IIまたは式IIIの化合物を含む。
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1) 哺乳動物における2型糖尿病を調節する方法であって、以下:
該哺乳動物に、治療有効量の式Iの化合物
【化4】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩を投与する工程を包含し、ここで、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そしてXはハロゲンであり;該化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない、方法。
(項目2) 前記化合物が、式IIの化合物
【化5】

であり、ここで、
が、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、項目1に記載の方法。
(項目4) 前記化合物が、静脈内注入、経皮送達または経口送達によって投与される、項目1に記載の方法。
(項目5) 投与される量が、1日あたり約100mg〜約3000mgである、項目1に記載の方法。
(項目6) 投与される量が、1日あたり約500mg〜約1500mgである、項目1に記載の方法。
(項目7) 投与される量が、1日あたり1kgあたり約5mg〜約250mgである、項目1に記載の方法。
(項目8) 前記化合物が、薬学的に受容可能なキャリアと一緒に投与される、項目1に記載の方法。
(項目9) 前記化合物が、前記哺乳動物中の血液グルコースレベルを低減することによって高血糖を調節する、項目1に記載の方法。
(項目10) 前記化合物が、前記哺乳動物におけるヘモグロビンA1cを調節する、項目1に記載の方法。
(項目11) 前記化合物が、糖尿病に関連した微小血管および巨大血管の合併症を調節する、項目1に記載の方法。
(項目12) 前記微小血管合併症が、網膜症、ニューロパシーまたは腎症である、項目11に記載の方法。
(項目13) 前記巨大血管合併症が、心血管疾患または末梢血管疾患である、項目11に記載の方法。
(項目14) 前記化合物が、アテローム性動脈硬化症を調節する、項目1に記載の方法。
(項目15) 前記化合物が、哺乳動物における糖尿病の発達を予防する、項目1に記載の方法。
(項目16) 前記化合物が、スルホニル尿素または他のインスリン分泌促進物質、チアゾリジンジオン、フィブレート、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、ビグアニド、胆汁酸結合樹脂、ニコチン酸、α−グルコシダーゼインヒビターおよびインスリンからなる群より選択される化合物と組み合わせて投与される、項目1に記載の方法。
(項目17) 哺乳動物においてインスリン抵抗性を調節するための方法であって、以下の式Iの化合物:
【化6】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩の治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、
Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そして
Xはハロゲンであり;
ここで、該化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない、方法。
(項目18) 前記化合物が、式IIの化合物
【化7】

であり、ここで:Rが、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、項目17に記載の方法。
(項目19) 前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、項目17に記載の方法。
(項目20) 前記化合物が、静脈内注入、経皮送達または経口送達によって投与される、項目17に記載の方法。
(項目21) 投与される量が、1日あたり約100mg〜約3000mgである、項目17に記載の方法。
(項目22) 投与される量が、1日あたり約500mg〜約1500mgである、項目17に記載の方法。
(項目23) 投与される量が、1日あたり1kgあたり約5mg〜約250mgである、項目17に記載の方法。
(項目24) 前記化合物が、薬学的に受容可能なキャリアと一緒に投与される、項目17に記載の方法。
(項目25) 前記化合物が、哺乳動物におけるインスリン抵抗性の発達を予防する、項目17に記載の方法。
(項目26) 前記化合物が、多嚢胞性卵巣症候群を調節する、項目17に記載の方法。
(項目27) 前記化合物が、グルコース寛容減損を調節する、項目17に記載の方法。
(項目28) 前記化合物が、肥満を調節する、項目17に記載の方法。
(項目29) 前記化合物が、妊娠糖尿病を調節する、項目17に記載の方法。
(項目30) 前記化合物が、症候群Xを調節する、項目17に記載の方法。
(項目31) 前記化合物が、アテローム性動脈硬化症を調節する、項目17に記載の方法。
(項目32) 前記化合物が、スルホニル尿素または他のインスリン分泌促進物質、チアゾリジンジオン、フィブレート、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、ビグアニド、胆汁酸結合樹脂、ニコチン酸、α−グルコシダーゼインヒビターおよびインスリンからなる群より選択される化合物と組み合わせて投与される、項目17に記載の方法。
(項目33) 哺乳動物において高脂血症を緩和する方法であって、以下の式Iの化合物:
【化8】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩の治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで、
Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そして
Xはハロゲンであり;
ここで、該化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない、方法。
(項目34) 前記化合物が、式IIの化合物
【化9】

であり、ここで:Rが、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、項目33に記載の方法。
(項目36) 前記化合物が、静脈内注入、経皮送達または経口送達によって投与される、項目33に記載の方法。
(項目37) 前記化合物が、コレステロールレベル、トリグリセリドレベルまたは両方を低下させる、項目33に記載の方法。
(項目38) 投与される量が、1日あたり約100mg〜約3000mgである、項目33に記載の方法。
(項目39) 投与される量が、1日あたり約500mg〜約1500mgである、項目33に記載の方法。
(項目40) 投与される量が、1日あたり1kgあたり約5mg〜約250mgである、項目33に記載の方法。
(項目41) 前記化合物が、薬学的に受容可能なキャリアと一緒に投与される、項目33に記載の方法。
(項目42) 前記化合物が、スルホニル尿素または他のインスリン分泌促進物質、チアゾリジンジオン、フィブレート、HMG−CoAレダクターゼインヒビター、ビグアニド、胆汁酸結合樹脂、ニコチン酸、α−グルコシダーゼインヒビターおよびインスリンからなる群より選択される化合物と組み合わせて投与される、項目33に記載の方法。
(項目43) 薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物
【化10】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩を含む薬学的組成物であって、
ここで、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そしてXはハロゲンであり;該化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない、薬学的組成物。
(項目44) 前記薬学的組成物が、2型糖尿病を調節する、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目45) 前記薬学的組成物が、インスリン抵抗性を調節する、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目46) 前記薬学的組成物が、高脂血症を調節する、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目47) 治療有効量の式IIの化合物
【化11】

の(−)立体異性体を含み、
ここで、Rが、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目48) 前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目49) 錠剤またはカプセル剤の形態である、項目43に記載の薬学的組成物。
(項目50) 哺乳動物において高尿酸血症を処置する方法であって、治療有効量の式Iの化合物
【化12】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩を該哺乳動物に投与する工程を包含し、
ここで、Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そしてXはハロゲンであり;該化合物は、その(+)立体異性体を実質的に含まない、方法。
(項目51) 前記化合物が、式IIの化合物
【化13】

であり、ここで、
が、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、項目50に記載の方法。
(項目52) 前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、項目50に記載の方法。
(項目53) 前記化合物が、薬学的に受容可能なキャリアと一緒に投与される、項目50に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(定義)
用語「哺乳動物」は、ヒト、家庭用動物(例えば、イヌまたはネコ)、農場動物(ウシ、ウマまたはブタ)、サル、ウサギ、マウスおよび実験動物を包含するがこれらに限定されない。
【0026】
用語「インスリン抵抗性」は一般的に、グルコース代謝の障害として定義され得る。より詳細には、インスリン抵抗性は、インスリンが広範な範囲の濃度にわたってその生物学的作用を発揮する能力が減少して、予想されるよりも低い生物学的効果を生じることとして定義され得る(例えば、Reaven,G.M.,J.Basic & Clin.Phys.& Pharm.(1998)9:387−406およびFlier,J.Ann Rev.Med.(1983)34:145−60を参照のこと)。インスリン抵抗性者は、グルコースを適切に代謝する能力が減少しており、そしてインスリン治療に対して、あったとしても乏しくしか応答しない。インスリン抵抗性の症状発現は、グルコース取り込みの不十分なインスリン活性化、筋肉における酸化および貯蔵、ならびに脂肪組織における脂肪分解の不適切なインスリン抑制、ならびに肝臓におけるグルコースの産生および分泌の不適切なインスリン抑制が挙げられる。インスリン抵抗性は、多嚢胞性卵巣症候群、グルコース寛容減損(IGT)、妊娠糖尿病、高血圧、肥満、アテローム性動脈硬化症および種々の他の障害を引き起こし得るかまたはこれらに寄与し得る。最終的に、インスリン抵抗性個体は、糖尿病状態に到達する点まで進行し得る。インスリン抵抗性と、グルコース不耐症、血漿トリグリセリドにおける増加および高密度リポタンパク質コレステロール濃度における減少、高血圧、高尿酸血症、より小さくより密度の高い低密度リポタンパク質粒子、およびプラスミノゲン(plaminogen)アクチベーターインヒビター−1のより高い循環レベルとの関連は、「症候群X」といわれている(例えば、Reaven,G.M.,Physiol.Rev.(1995)75:473−486を参照のこと)。
【0027】
用語「真性糖尿病」または「糖尿病」は一般的に、身体中の適切な血液糖レベルを維持することに不全を生じる、グルコースの産生および利用における代謝欠損によって特徴付けられる疾患または状態を意味する。これらの欠損の結果は、「高血糖」と呼ばれる、上昇した血液グルコースである。2つの主な形態の糖尿病は、1型糖尿病および2型糖尿病である。上記のように、1型糖尿病は一般的に、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンの絶対的な欠損の結果である。2型糖尿病はしばしば、正常なレベルのインスリン、またはさらには上昇したレベルのインスリンにもかかわらず生じ、そして組織がインスリンに対して適切に応答することができないことから生じ得る。大部分の2型糖尿病患者はインスリン抵抗性であり、そしてインスリン分泌がインスリンに応答することへの末梢組織の抵抗性を代償できないという点でインスリンの相対的な欠損を有する。さらに、多くの2型糖尿病患者は肥満である。グルコースホメオスタシスの他の型の障害としては、正常なグルコースホメオスタシスと糖尿病との間の代謝段階中間型であるグルコース寛容減損、ならびに1型糖尿病の病歴も2型糖尿病の病歴も以前に持っていない女性における、妊娠中のグルコース不耐症である妊娠糖尿病が挙げられる。
【0028】
用語「二次性糖尿病」は、以下を含む、他の確認できる病因から生じる糖尿病である:β細胞機能の遺伝的欠損(例えば、常染色体遺伝を有する早期発症型の2型糖尿病である「MODY」といわれる若年者の成人発症型糖尿病;例えば、Fajans S.ら,Diabet.Med.(1996)(9 補遺6):S90−5およびBell,G.ら,Annu.Rev.Physiol.(1996)58:171−86を参照のこと);インスリン作用における遺伝的欠損;外分泌膵臓の疾患(例えば、ヘモクロマトーシス、膵炎および嚢胞性線維症);過剰のホルモンがインスリン作用を妨害する特定の内分泌疾患(例えば、末端肥大症における成長ホルモンおよびクッシング症候群におけるコルチゾル);インスリン分泌を抑制する特定の薬物(例えば、フェニトイン)またはインスリン作用を阻害する特定の薬物(例えば、エストロゲンおよびグルココルチコイド);ならびに感染(例えば、風疹、コクサッキーおよびCMV)によって引き起こされる糖尿病;ならびに他の遺伝的症候群。
【0029】
2型糖尿病、グルコース寛容減損および妊娠糖尿病についての診断のガイドラインは、American Diabetes Associationによって概説されている(例えば、The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus,Diabetes Care,(1999)第2巻(補遺1):S5−19を参照のこと)。
【0030】
用語「ハロフェニル酸(halofenic acid)」とは、酸の形態の4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸をいう。
【0031】
用語「高インスリン血症」とは、血液中での異常に上昇したインスリンレベルの存在をいう。
【0032】
用語「高尿酸血症」とは、血液中での異常に上昇した尿酸レベルの存在をいう。
【0033】
用語「分泌促進物質(secretagogue)」とは、分泌を刺激する、物質または化合物を意味する。例えば、インスリン分泌促進物質は、インスリンの分泌を刺激する、物質または化合物である。
【0034】
用語「ヘモグロビン」、すなわち「Hb」とは、酸素輸送を大部分担う、赤血球中に存在する呼吸色素をいう。ヘモグロビン分子は、4つのポリペプチドサブユニット(それぞれ、2つのα鎖系および2つのβ鎖系)を含む。各サブユニットは、1つのグロビンタンパク質と、鉄−プロトポルフィリン錯体である1つのヘム分子との会合によって形成される。正常な成体溶血産物中に見出される主なクラスのヘモグロビンは、αβサブユニットを有する、成人型ヘモグロビン(「HbA」といわれる;以下に記載される「HbA」といわれるグリケーションされたヘモグロビンとそれとを区別するためにHbAともいわれる)である。微量成分(例えば、HbA(αδ)もまた、正常な成体溶血産物中に見出され得る。
【0035】
成体型ヘモグロビンHbAのクラスの中には、グリケーションされたヘモグロビン(「HbA」または「グリコシル化ヘモグロビンといわれる」)が存在し、これはさらに、イオン交換樹脂分画を用いて、HbA1a1、HbA1a2、HbA1bおよびHbA1cに細分され得る。これらのサブクラスの全ては、同じ一次構造を有し、この構造は、正常ヘモグロビンHbA中のβサブユニット鎖中のN末端バリンのアミノ基およびグルコース(または,グルコース−6−リン酸またはフルクトース)によるアルジミン(シッフ塩基)の形成、続いてアマドリ転位によるケトアミンの形成によって安定化される。
【0036】
用語「グリコシル化ヘモグロビン」(「HbA1c」、「GHb」,「ヘモグロビングリコシル化」、「糖尿病制御指数」および「グリコヘモグロビン(glycohemoglobin)」ともいわれ;本明細書では以後、「ヘモグロビンA1c」という)とは、血漿グルコースによるヘモグロビンβ鎖の非酵素的グリコシル化の安定な産物をいう。ヘモグロビンA1cは、血液中にグリケーションされたヘモグロビンの主な部分を含む。グリコシル化ヘモグロビンの割合は、血液グルコースレベルに比例する。それゆえ、ヘモグロビンA1cの形成割合は、血漿グルコースレベルが増加するにつれて直接増加する。グリコシル化は赤血球の120日間の寿命の間に一定の割合で生じるので、グリコシル化ヘモグロビンレベルの測定値は、その前の2〜3ヶ月間の間の個体についての平均血液グルコースレベルを反映する。それゆえ、グリコシル化ヘモグロビンHbA1cの量の決定は、炭水化物代謝制御についての良好な指数であり得る。従って、最近2ヶ月間の血液グルコースレベルは、HbA1cの、総ヘモグロビンHbに対する割合に基づいて評価され得る。血液中のヘモグロビンA1cの分析は、血液グルコースレベルの長期の制御を可能にする尺度として用いられる(例えば、Jain,S.ら,Diabetes(1989)38:1539−1543;Peters A.ら,JAMA(1996)276:1246−1252を参照のこと)。
【0037】
糖尿病の用語「症状」としては、本明細書中で用いられる場合、これらの通常の使用法を含めて、多尿、多渇および多食が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、「多尿」とは、所定の期間の間の大容量の尿の排泄を意味する;「多渇症」とは、慢性の、過度の渇きを意味する;そして「多食症」とは、過度の摂食を意味する。糖尿病の他の症状としては、例えば、特定の感染(特に、真菌感染およびブドウ球菌感染)に対する感受性の増加、悪心およびケトアシドーシス(血液中でのケトン体の産生増加)が挙げられる。
【0038】
糖尿病の用語「合併症」としては、微小血管合併症および巨大血管合併症が挙げられるがこれらに限定されない。微小血管合併症は、一般的に、小血管の損傷をもたらす合併症である。これらの合併症としては、例えば、網膜症(眼における血管損傷に起因する視力の欠陥または喪失);ニューロパシー(神経系に対する血管損傷に起因する神経損傷および足の問題);および腎症(腎臓における血管損傷に起因する腎臓疾患)が挙げられる。巨大血管合併症は、一般的に、大血管の損傷から生じる合併症である。これらの合併症としては、例えば、心血管疾患および末梢血管疾患が挙げられる。心血管疾患とは、心臓の血管の疾患をいう。例えば、Kaplan,R.M.ら,「Cardiovascular diseases」、HEALTH AND HUMAN BEHAVIOR,206−242頁(McGraw−Hill,New York 1993)を参照のこと。心血管疾患は一般的に、例えば、高血圧(hypertension)(高血圧(high blood pressure)ともいわれる)、冠状動脈心臓疾患、発作(stroke)およびリウマチ心疾患を含むいくつかの形態のうちの1つである。末梢血管疾患とは、心臓の外側の血管のいずれかの疾患をいう。末梢血管疾患はしばしば、血液を脚および腕の筋肉に運ぶ血管の狭窄化である。
【0039】
用語「アテローム性動脈硬化症」は、関連する医学分野において実施する医師によって認識および理解される、血管の疾患および状態を包含する。アテローム性動脈硬化性心血管疾患、冠状動脈心臓疾患(冠状動脈疾患または虚血性心臓疾患としても公知)、脳血管性疾患および末梢血管疾患は全て、アテローム性動脈硬化症の臨床的症状発現であり、それゆえ、用語「アテローム性動脈硬化症」および「アテローム性動脈硬化疾患」によって包含される。
【0040】
用語「抗高脂血症(antihyperlipidemic)」とは、血液中での過度の脂質濃度の、所望のレベルへの低下をいう。
【0041】
用語「抗尿酸血症(antiuricemic)」とは、血液中の過度の尿酸濃度の、所望のレベルへの低下をいう。
【0042】
用語「高脂血症」とは、血液中で異常に上昇したレベルの脂質の存在をいう。高脂血症は、少なくとも3つの形態で出現し得る:(1)高コレステロール血症、すなわち、上昇したコレステロールレベル;(2)高トリグリセリド血症、すなわち、上昇したトリグリセリドレベル;および(3)複合高脂血症、すなわち、高コレステロール血症と高トリグリセリド血症との組み合わせ。
【0043】
用語「調節する(modulate)」とは、機能または状態の処置、予防、抑制、増強または誘導をいう。例えば、本発明の化合物は、ヒトにおけるコレステロールを低下させ、それによって高脂血症を抑制することによって、高脂血症を調節し得る。
【0044】
用語「処置する」とは、疾患、状態または障害と闘う目的のための、ヒト被験体の管理および医療を意味し、そして症状もしくは合併症の発症を予防するため、症状もしくは合併症を緩和するため、または疾患、上昇もしくは障害を排除するための本発明の化合物の投与を含む。
【0045】
用語「予防する」とは、疾患、状態または障害の症状の発症が生じないようにするヒト被験体の管理および医療を意味する。
【0046】
用語「コレステロール」とは、細胞膜およびミエリン鞘の必須の成分であるステロイドアルコールをいい、そして本明細書中での場合、その通常の使用法を含む。コレステロールはまた、ステロイドホルモンおよび胆汁酸についての前駆体として役立つ。
【0047】
用語「トリグリセリド」(「TG」)は、本明細書中で使用される場合、その通常の使用法を含む。TGは、グリセロール分子へとエステル化された3つの脂肪酸分子からなり、そして筋肉細胞によってエネルギー産生のために用いられるかまたは脂肪組織中に取り込まれそして貯蔵される脂肪酸を貯蔵するために役立つ。
【0048】
コレステロールおよびTGは水不溶性であるので、これらは、血漿中に輸送されるためには、「リポタンパク質」として公知の特別な分子複合体中にパッケージングされなければならない。リポタンパク質は、過剰産生および/または欠損した除去に起因して血漿中に蓄積し得る。大きさ、組成、密度および機能の異なる少なくとも5つの別個のリポタンパク質が存在する。小腸の細胞では、食事性脂質は、「カイロミクロン」と呼ばれる大きなリポタンパク質複合体中にパッケージングされる。カイロミクロンは、高いTG含有量および低いコレステロール含有量を有する。肝臓では、TGおよびコレステロールエステルは、パッケージングされ、そして血漿中に、超低密度リポタンパク質(「VLDL」)と呼ばれるTGリッチなリポタンパク質として放出される。超低密度リポタンパク質の主な機能は、肝臓中で作製されるかまたは脂肪組織によって放出されるTGの内因性輸送である。酵素作用を通して、VLDLは、還元され、そして肝臓によって取り込まれるか、または中間密度リポタンパク質(「IDL」)へと変換されるかのいずれかであり得る。IDLは次いで、肝臓によって取り込まれるか、またはさらに改変されて低密度リポタンパク質(「LDL」)を形成するかのいずれかである。LDLは、肝臓によって取り込まれそして破壊されるか、または肝外組織によって取り込まれるかのいずれかである。高密度リポタンパク質(「HDL」)は、逆コレステロール輸送(reverse cholesterol transport)と呼ばれるプロセスにおいてコレステロールを末梢組織から除去するのに役立つ。
【0049】
用語「異脂肪血症(dyslipidemia)」とは、抑制されたレベルおよび/または上昇したレベルの両方のリポタンパク質を含む、血液血漿中の異常なレベルのリポタンパク質をいう(例えば、上昇したレベルのLDL、VLDLおよび抑制されたレベルのHDL)。
【0050】
例示的な原発性高脂血症としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
(1)脂肪分子を分解する酵素LPリパーゼにおける欠損を引き起こす、稀な遺伝障害の1つである家族性高カイロミクロン血症。LPリパーゼの欠損は、血液中の大量の脂肪またはリポタンパク質の蓄積を引き起こし得る;
(2)原因となる欠損が、LDLレセプターの機能不全をもたらすおよび/またはLDLレセプターの不存在をもたらす、LDLレセプター遺伝子における一連の変異である場合に引き起こされる比較的普通の遺伝障害の1つである、家族性高コレステロール血症。このことは、LDLレセプターによるLDLの効果的でないクリアランスをもたらして、血漿における上昇したLDLおよび総コレステロールレベルをもたらす;
(3)多発性リポタンパク質型高脂血症としても公知の家族性複合高脂血症;患者およびその罹患した一親等が種々の時点で高コレステロールおよび高トリグリセリドを表し得る遺伝性障害。HDLコレステロールのレベルはしばしば、中程度に減少する;
(4)家族性欠損性アポリポタンパク質B−100は、比較的普通の常染色体優性の遺伝異常である。この欠損は、LDL粒子のLDLレセプター親和性の減少を引き起こし得る、アルギニンからグルタミンへの置換を引き起こす単一ヌクレオチド変異によって引き起こされる。結果として、これは、高い血漿LDLおよび総コレステロールレベルを引き起こし得る;
(5)III型高リポタンパク質血症ともいわれる、家族性異βリポタンパク質血症(Dysbetaliproteinemia)は、異常なアポリポタンパク質E機能を伴う、血清TGおよびコレステロールレベルの中程度から重篤な程度までの上昇をもたらす、稀な遺伝性障害である。HDLレベルは通常、正常である;および
(6)家族性高トリグリセリド血症は、血漿VLDLの濃度が上昇した普通の遺伝性障害である。これは、軽度から中程度に上昇したトリグリセリドレベルを引き起こし得(そして通常はコレステロールレベルではそうでなく)、そしてしばしば、低血漿HDLレベルと関連し得る。
【0051】
例示的な続発性高脂血症における危険因子としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(1)疾患危険因子(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能低下(hypothroidism)および特定の型の腎不全の病歴);(2)薬物危険因子(これは、産児制限ピル;ホルモン(例えば、エストロゲンおよびコルチコステロイド);特定の利尿剤;および種々のβブロッカーを包含する);(3)食事性危険因子(これは、総カロリーあたり、40%を超える食事性脂肪摂取;総カロリーあたり、10%を超える飽和脂肪摂取;1日あたり300mgを超えるコレステロール摂取;習慣性および過度のアルコール使用;ならびに肥満を包含する)。
【0052】
用語「肥満の」および「肥満」とは、世界保健機関に従って、男性については27.8kg/mを超える、そして女性については27.3kg/mを超える、ボディマス指数(BMI)をいう(BMIは、体重(kg)/身長(m)に等しい)。肥満は、糖尿病および高脂血症を含む種々の医学的状態に結び付いている。肥満はまた、2型糖尿病の発症の公知の危険因子である(例えば、Barrett−Conner,E.,Epidemol.Rev.(1989)11:172−181;およびKnowlerら,Am.J.Clin.Nutr.(1991)53:1543−1551を参照のこと)。
【0053】
「薬学的に受容可能な塩」とは、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウムおよびプロタミン亜鉛塩を含めて、当該分野で周知の方法によって調製される、製薬産業において通常用いられる、非中毒性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩をいう。この用語はまた、本発明の化合物を適切な有機酸または無機酸と反応させることによって一般的に調製される、非中毒性の酸付加塩を包含する。代表的な塩としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプシレート(napsylate)など。
【0054】
「薬学的に受容可能な酸付加塩」とは、無機酸(例えば、塩酸酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、経皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)を用いて形成された、遊離塩基の生物学的効果および特性を保持し、そして生物学的にも他の点でも望ましくないことがない塩をいう。薬学的に受容可能な酸付加塩のプロドラッグとしての説明については、例えば、Bundgaard,H.編,Design of Prodrugs(Elsevier Science Publishers,Amsterdam 1985)を参照のこと。
【0055】
「薬学的に受容可能なエステル」とは、エステル結合の加水分解の際に、カルボン酸またはアルコールの生物学的効果および特性を保持し、そして生物学的にも他の点でも望ましくないことがないエステルをいう。薬学的に受容可能なエステルのプロドラッグとしての説明については、Bundgaard,H.,前出を参照のこと。これらのエステルは代表的に、対応するカルボン酸およびアルコールから形成される。一般的に、エステル形成は、従来の合成技術を通して達成され得る(例えば、March Advanced Organic Chemistry,第3版,1157頁(John Wiley & Sons,New York 1985)およびその中に引用された参考文献、ならびにMarkら,Encyclopedia of Chemical Technology,(1980)John Wiley & Sons,New Yorkを参照のこと)。エステルのアルコール成分は一般的に、以下を含む:(i)1以上の二重結合を含んでも含まなくてもよく、かつ分枝炭素を含んでも含まなくてもよい、C〜C12脂肪族アルコール;または(ii)C〜C12芳香族アルコールまたは複素環式芳香族性(heteroaromatic)アルコール。本発明はまた、本明細書中に記載された通りのエステルおよび同時に薬学的に受容可能なその酸付加塩の両方である組成物の使用を意図する。
【0056】
「薬学的に受容可能なアミド」とは、アミド結合の加水分解の際に、カルボン酸またはアミンの生物学的効果および特性を保持し、そして生物学的にも他の点でも望ましくないことがないアミドをいう。薬学的に受容可能なアミドのプロドラッグとしての説明については、Bundgaard,H.編,前出を参照のこと。これらのアミドは代表的に、対応するカルボン酸およびアミンから形成される。一般的に、アミド形成は、従来の合成技術を介して達成され得る。例えば、Marchら,Advanced Organic Chemistry,第3版,1152頁(John Wiley & Sons,New York 1985)およびMarkら,Encyclopedia of Chemical Technology(John Wiley & Sons,New York 1980)を参照のこと。本発明はまた、本明細書中に記載された通りのアミドおよび同時に薬学的に受容可能なその酸付加塩の両方である組成物の使用を意図する。
【0057】
(詳細な説明)
((1)概要)
本発明は、以下の一般式:
【0058】
【化14】

を有する好ましい(−)(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェニル)酢酸誘導体の使用に関する。
【0059】
式Iにおいて、Rは、以下を含むがこれらに限定されない官能基である:ヒドロキシ、低級アルコキシ(例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシのようなフェニル−低級アルコキシ);ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシおよびその非毒性の薬理学的に受容可能な酸付加塩(例えば、ジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ塩酸塩、ジエチルアミノエトキシクエン酸塩、ジエチルアミノプロポキシ);低級アルカンアミド低級アルコキシ(例えば、ホルムアミドエトキシ、アセトアミドエトキシまたはアセトアミドプロポキシ);ベンズアミド−低級アルコキシ(例えば、ベンズアミドエトキシまたはベンズアミドプロポキシ);ウレイド−低級アルコキシ(例えば、ウレイドエトキシまたは1−メチル−2−ウレイドエトキシ);N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ(すなわち、RNH−CONH−C2n−O−、ここで、Rは低級アルキルを表し、そしてnは1〜約5の値を有する整数である)(例えば、N’−エチル−ウレイドエトキシまたはN’−エチル−ウレイドプロポキシ);カルバモイル−低級アルコキシ(例えば、カルバモイルメトキシまたはカルバモイルエトキシ);ハロフェノキシ置換低級アルコキシ(例えば、2−(4クロロフェノキシ)エトキシまたは2−(4−クロロフェノキシ)−2−メチルプロポキシ);カルバモイル置換フェノキシ(例えば、2−カルバモイルフェノキシ);カルボキシ−低級アルキルアミノおよびその非毒性の薬理学的に受容可能なアミン付加塩(例えば、カルボキシメチルアミノ−シクロヘキシルアミン塩またはカルボキシエチルアミン);N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノおよびその非毒性の薬理学的に受容可能な酸溶液塩(例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアミノ塩酸塩、N,N−ジエチルアミノエチルアミノ、N,N−ジエチルアミノエチルアミノクエン酸塩、またはN,N−ジメチルアミノプロピルアミノクエン酸塩);ハロ置換低級アルキルアミノ(例えば、2−クロロエチルアミノまたは4−クロロブチルアミノ);ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ(例えば、2−ヒドロキシエチルアミノ、または3−ヒドロキシプロピルアミノ);低級アルカノイルオキシ置換低級アルキルアミノ(例えば、アセトキシエチルアミノまたはアセトキシプロピルアミノ);ウレイド;低級アルコキシカルボニルアミノ(例えば、メトキシカルボニルアミノ(すなわち、−NHCOOCH)、またはエトキシカルボニルアミノ(すなわち、CHCOOC)。好ましい実施形態において、Rは、それが加水分解可能な部分(例えば、エステルまたはアミド)であるように選択され、そしてエステルまたはアミド結合の加水分解の際に、この化合物は、プロドラッグとして生物学的に活性である(例えば、薬学的に受容可能なエステルまたはアミド)。式IにおけるXは、ハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨード)である。
【0060】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の一般式:
【0061】
【化15】

を有する(−)(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェノキシ)酢酸誘導体の使用に関する。
【0062】
式IIにおいて、Rは、以下を含むがこれらに限定されない官能基である:水素、フェニル−低級アルキル(例えば、ベンジル);低級アルカンアミド−低級アルキル(例えば、アセトアミドエチル);またはベンズアミド−低級アルキル(例えば、ベンズアミドエチル)。式IIにおいて、Xはハロゲン(例えば、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨード)である。
【0063】
好ましい実施形態において、本発明は、以下の式:
【0064】
【化16】

を有する化合物の使用に関する。
【0065】
式IIIの化合物を、「(−)2−アセトアミドエチル 4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテート」という(また、「(−)ハロフェネート(halofenate)」ともいう)。
【0066】
シトクロムP450酵素の阻害によって媒介される薬物代謝における変化は、患者における有意に有害な効果を誘発する非常に高い可能性を有する。このような効果は、ラセミ体ハロフェネートを用いて処置した患者において以前に記載された。本研究において、ラセミ体ハロフェニル酸(halofenic acid)は、シトクロムP450 2C9(特定の薬物の代謝における有意な役割を果たすことが公知の酵素)を阻害することが見出された。これは、この薬剤の、抗凝固剤、抗炎症剤、およびこの酵素によって代謝される他の薬剤との相互作用を伴う有意な問題を導き得る。しかし、非常に驚くべきことに、ハロフェニル酸のエナンチオマーの間に、シトクロムP450 2C9を阻害できないことについての実質的な差異が観察され、(−)エナンチオマーは約20分の1の活性であり、一方、(+)エナンチオマーは非常に強力であった(実施例7を参照のこと)。従って、式I、式II、または式IIIの化合物の(−)エナンチオマーの使用は、この酵素の阻害、およびラセミ体ハロフェネートを用いて以前に観察された薬物代謝における有害な効果を回避する。
【0067】
本発明は、哺乳動物におけるインスリン抵抗性を調節する方法を含み、この方法は、以下を包含する:式Iの一般構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩の治療有効量を、哺乳動物に投与する工程。現在好ましい実施形態において、この化合物は式IIの一般構造を有する。さらに好ましい実施形態において、この化合物は式IIIの構造を有する。非常に驚くべきことに、この方法は、ある量の式I、式II、または式IIIの化合物の(−)立体異性体(これは、シトクロムP450 2C9の阻害に関連する有害な効果を引き起こすのに不充分である)を提供することによって、ハロフェネートのラセミ混合物の投与に関連する有害な効果を回避する。
【0068】
本発明はまた、哺乳動物における2型糖尿病を調節する方法を含み、この方法は以下を包含する:式Iの一般構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩の治療有効量を、哺乳動物に投与する工程。現在好ましい実施形態において、この化合物は式IIの一般構造を有する。さらに好ましい実施形態において、この化合物は式IIIの構造を有する。非常に驚くべきことに、この方法は、ある量の式I、式II、または式IIIの化合物の(−)立体異性体(これは、シトクロムP450 2C9の阻害に関連する有害な効果を引き起こすのに不充分である)を提供することによって、ハロフェネートのラセミ混合物の投与に関連する有害な効果を回避する。
【0069】
本発明はさらに、哺乳動物における高脂血症を調節する方法を含み、この方法は、以下を包含する:式Iの一般構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩の治療有効量を、哺乳動物に投与する工程。現在好ましい実施形態において、この化合物は式IIの一般構造を有する。さらに好ましい実施形態において、この化合物は式IIIの構造を有する。非常に驚くべきことに、この方法は、ある量の式I、式II、または式IIIの化合物の(−)立体異性体(これは、シトクロムP450 2C9の阻害に関連する有害な効果を引き起こすのに不充分である)を提供することによって、ハロフェネートのラセミ混合物の投与に関連する有害な効果を回避する。
【0070】
ハロフェネートのラセミ混合物(すなわち、2つのエナンチオマーの1:1のラセミ体混合物)は、抗高脂血症活性を有し、そしてこの疾患を処置するために通常使用される特定の他の薬物をと組合わされる場合に、糖尿病に関連する高血圧の治療を提供する。しかし、このラセミ混合物は、効力の可能性を提供するが、有害な効果を引き起こす。用語「有害な効果」は、吐き気、胃腸潰瘍、および胃腸の出血を含むがこれらに限定されない。ラセミ体ハロフェネートを用いて報告された他の副作用は、薬物間相互作用を伴う潜在的な問題を含み、特にCoumadinTMを用いる抗凝固の制御の問題を含む。実質的に純粋な本発明の化合物の利用は、効力のより明白な用量に関連した定義、減少した有害な効果、および従って、改良された治療指数を生じる。そういうものとして、ラセミ体ハロフェネートの代わりに、ハロフェネートの(−)エナンチオマーを投与することがより望ましく、そして有利であることが現在では発見されている。
【0071】
本発明はさらに、哺乳動物における尿酸過剰血症を調節する方法を含み、この方法は、以下を包含する:式Iの一般構造を有する化合物またはその薬学的に受容可能な塩の治療有効量を、哺乳動物に投与する工程。現在好ましい実施形態において、この化合物は式IIの一般構造を有する。さらに好ましい実施形態において、この化合物は式IIIの構造を有する。非常に驚くべきことに、この方法は、ある量の式I、式II、または式IIIの化合物の(−)立体異性体(これは、シトクロムP450 2C9の阻害に関連する有害な効果を引き起こすのに不充分である)を提供することによって、ハロフェネートのラセミ混合物の投与に関連する有害な効果を回避する。
【0072】
((2)式I、式II、および式IIIの(−)エナンチオマー)
多くの有機化合物が、光学的に活性な形態(すなわち、これらは平面偏光の平面を回転させる能力を有する)で存在する。光学活性な化合物の記載において、接頭語RおよびSは、この分子のキラル中心の周りの絶対配置を示すために使用される。接頭語「d」および「l」、または(+)および(−)は、この化合物による平面偏光の回転の符号を示すために使用され、(−)またはlは、この化合物が「左旋性」であることを意味し、そして(+)またはdは、この化合物が「右旋性」であることを意味する。絶対立体化学についての命名法とエナンチオマーの回転についての命名法との間に相関関係はない。所定の化学構造について、これらの化合物(「立体異性体」といわれる)は、これらが互いの鏡像であることを除いて、同一である。特定の立体異性体はまた、「エナンチオマー」といわれ、そしてこのような異性体の混合物は、しばしば「エナンチオマーの」または「ラセミ体の」混合物といわれる。例えば、Streitwiesser,A.&Heathcock,C.H.、INTRODUCTION TO ORGANIC CHEMISTRY,第2版,第7章(MacMillan Publishing Co.,U.S.A.1981)を参照のこと。
【0073】
ハロフェネート(3−トリハロメチルフェノキシ)(4−ハロフェニル)酢酸誘導体のラセミ混合物の化学合成は、米国特許第3,517,050号に記載の方法によって行われ得、この教示は本明細書中に参考として援用される。本発明の化合物の合成は、前出の実施例においてさらに記載される。個々のエナンチオマーは、当業者に公知であり、そして当業者に使用される従来の手段を用いて、エナンチオマーのラセミ混合物の分割によって得られ得る。例えば、Jaques,J.ら、ENANTIOMERS,RACEMATES,AND RESOLUTIONS,John Wiley and Sons,New York(1981)を参照のこと。当業者に公知の他の標準的な分割の方法(単純結晶化およびクロマトグラフィー分割が挙げられるが、これらに限定されない)もまた、使用され得る(例えば、STEREOCHEMISTRY OF CARBON COMPOUNDS(1962)E.L.Eliel,McGraw Hill;Lochmuller,J.Chromatography(1975)113,283−302を参照のこと)。さらに、本発明の化合物(すなわち、光学的に純粋な異性体)は、酵素的生体触媒分割によって、ラセミ混合物から調製され得る。酵素的生体触媒分割は、以前に記載されてきた(例えば、米国特許第5,057,427号および同第5,077,217号を参照のこと。この開示は、本明細書中で参考として援用される)。エナンチオマーを入手する他の方法としては、立体特異的合成が挙げられる(例えば、Li,A.J.ら、Pharm.Sci.(1997)86:1073−1077を参照のこと)。
【0074】
本明細書中で使用される場合、用語「その(+)立体異性体を実質的に含まない」は、この組成物が、(+)異性体と比較して、ハロフェネートの(−)異性体を実質的に高い割合で含むことを意味する。好ましい実施形態において、本明細書中で使用される場合、用語「その(+)立体異性体を実質的に含まない」は、この組成物が、少なくとも90重量%の(−)異性体および10重量%以下の(+)異性体を含むことを意味する。より好ましい実施形態において、本明細書中で使用される場合、用語「その(+)立体異性体を実質的に含まない」は、少なくとも99重量%の(−)異性体および1重量%以下の(+)異性体を含む組成物を意味する。最も好ましい実施形態において、用語「実質的にその(+)立体異性体を含まない」は、99重量%より多くの(−)異性体を含む組成物を意味する。これらの割合は、組成物中のハロフェネートの総量に基づく。用語「実質的に光学的に純粋なハロフェネートの(l)異性体」、「実質的に光学的に純粋な(l)ハロフェネート」、「光学的に純粋なハロフェネートの(l)異性体」および「光学的に純粋な(l)ハロフェネート」は全て、(−)異性体をいい、そして上記の量で含まれる。さらに、用語「実質的に光学的に純粋なハロフェネートの(d)異性体」、「実質的に光学的に純粋な(d)ハロフェネート」、「光学的に純粋なハロフェネートの(d)異性体」および「光学的に純粋な(d)ハロフェネート」は全て、(+)異性体をいい、そして上記の量で含まれる。
【0075】
用語「エナンチオマー過剰」または「ee」は、用語「光学的に純粋な」に関連し、この両方は、同じ現象の基準である。eeの値は0〜100であり、0がラセミ体でありそして100が純粋な単一のエナンチオマーである。光学的に98%純粋といわれる化合物は、96%eeと記載され得る。
【0076】
((3)さらなる活性薬剤を用いる組み合わせ治療)
組成物は、以下に詳述されるのと同様の様式で処方または投与され得る。「処方物」は、種々の賦形剤および重要な成分の混合物を含む薬学的調製物を定義し、比較的安定な、所望かつ有用な形態の化合物または薬物を提供する。本発明について、「処方物」は、用語「組成物」の意味に含まれる。本発明の化合物は、単独で、または所望の標的の治療に依存する1以上のさらなる活性薬剤と組合せて使用され得る(例えば、Turner,N.ら、Prog.Drug Res.(1998)51:33−94;Haffner,S.Diabetes Care(1998)21:160−178;およびDeFronzo,R.ら、(編),Diabetes Reviews(1997)Vol.5 No.4を参照のこと)。経口薬剤を用いる組合わせ治療の利点についての多くの研究が成されている(例えば、Mahler,R.、J.Clin.Endocrinol.Metab.(1999)84:1165−71;United Kingdom Prospective Diabetes Study Group:UKPDS28,Diabetes Care(1998)21:87−92;Bardin,C.W.,(編)、CURRENT THERAPY IN ENDOCRINOLOGY AND METABOLISM,第6版(Mosby−Year Book,Inc.,St.Louis,Mo.1997);Chiasson,J.ら、Ann.Intern.Med.(1994)121:928−935;Coniff,R.ら、Clin.Ther.(1997)19:16−26;Coniff,R.ら、Am.J.Med.(1995)98:443−451;およびIwamoto,Y.ら、Diabet.Med.(1996)13 365−370;Kwiterovich,P.Am.J.Cardiol(1998)82(12A):3U−17Uを参照のこと)。これらの研究は、糖尿病および高脂血症の調節が、治療レジメンへの第2の薬剤の追加によってさらに改善され得ることを示す。組合わせ治療は、式I(または式IIあるいは式III)の一般構造を有する化合物、および1以上のさらなる活性薬剤を含む単一の薬学投薬組成物の投与、ならびに式I(または式IIあるいは式III)の化合物およびそれ自身の別々の薬学的投薬組成物における各活性成分の投与を含む。例えば、式Iの化合物およびHMG−CoAレダクターゼインヒビターは、錠剤またはカプセル剤のような単一の経口投薬組成物、または別々の経口投薬処方物において投与され得る各薬剤と一緒に、ヒト被験体に投与され得る。別々の投薬処方物が使用される場合、式Iの化合物および1以上のさらなる活性薬剤は、本質的に同じ時に(すなわち、同時に)、または別々のずらした時(すなわち、経時的に)投与され得る。組合わせ治療は、これらの全てのレジメンを含むことが理解される。
【0077】
組み合わせ治療の例は、アテローム性動脈硬化症を調節(症状または関連する合併症の発症を防止)し、ここで、式Iの化合物は、以下の活性薬剤の1つ以上と組合わせて投与される:抗高脂血症剤;血漿HDL惹起剤;コレステロール生合成インヒビター(例えば、ヒドロキシメチルグルタリル(HMG)CoAレダクターゼインヒビター(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン(fluvastatin)およびアトルバスタチン(atorvastatin)のようなスタチンともまたいわれる)、HMG−CoAシンターゼインヒビター、スクアレンエポキシダーゼインヒビター、またはスクアレンシンセターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターともまたいわれる))のような抗コレステロール血症剤;メリナミドのようなアシル−補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)インヒビター;プロブコール;ニコチン酸およびその塩ならびにニコチンアミド;β−シトステロールのようなコレステロール吸収インヒビター;コレスチラミン、コレスチポールまたは架橋デキストランのジアルキルアミノアルキル誘導体のような胆汁酸金属イオン封鎖剤アニオン交換樹脂;LDL(低密度リポタンパク質)レセプターインデューサー;クロフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、およびゲムフィブリゾール(gemfibrizol)のようなフィブラート;ビタミンB6(ピリドキシンとしてもまた公知)およびその薬学的に受容可能な塩(例えば、HCl塩);ビタミンB12(シアノコバラミンとしてもまた公知);ビタミンB3(ニコチン酸およびニコチンアミド、前出、としてもまた公知);ビタミンCおよびビタミンEのような抗酸化ビタミンならびにβ−カロテン;β−ブロッカー;アンジオテンシンIIアンタゴニスト;アンジオテンシン変換酵素インヒビター;ならびにフィブリノーゲンレセプターアンタゴニスト(すなわち、糖タンパク質IIb/IIIaフィブリノーゲンレセプターアンタゴニスト)のような血小板凝集インヒビターならびにアスピリン。上記のように、式Iの化合物は、1以上のさらなる活性薬剤と組合わせて(例えば、式Iの化合物およびHMG−CoAレダクターゼインヒビター(例えば、ロバスタチン、シンバスタチンおよびプラバスタチン)ならびにアスピリンの組合わせ、または式Iの化合物およびHMG−CoAレダクターゼインヒビターならびにβ−ブロッカーの組合わせで)投与され得る。
【0078】
組合わせ治療の別の例は、肥満または肥満関連障害の処置において見られ得、ここで、式Iの化合物は、例えば、フェニルプロパノールアミン、フェンテルミン、ジエチルプロピオン、マチンドール;フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フェンチラミン(phentiramine)、βアドレノセプターアゴニスト剤;シブトラミン(sibutramine)、胃腸のリパーゼインヒビター(例えば、オルリスタット(orlistat))、ならびにレプチンと組合わせて効率的に使用され得る。他の薬剤が、肥満または肥満関連障害の処置において使用され、ここで、式Iの化合物は、例えば、ニューロペプチドY、エンテロスタチン(enterostatin)、コレシトキニン(cholecytokinin)、ボンベシン、アミリン、ヒスタミンH3レセプター、ドパミンD2レセプター、メラノサイト刺激ホルモン、コルチコトロピン関連因子、ガラニンおよびγアミノ酪酸(GABA)と組合わせて効率的に使用され得る。
【0079】
組合わせ治療のさらに別の例は、糖尿病の調節(または、糖尿病およびその関する症状、合併症、および障害の処置)において見られ得、ここで、式Iの化合物は、例えば、スルホニル尿素(例えば、クロルプロパミド、トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、グリブリド、グリクラジド、グリナーゼ、グリメピリド(glimepiride)、およびグリピジド)、ビグアニド(例えば、メトホルミン)、チアゾリジンジオン(例えば、シグリタゾン(ciglitazone)、ピオグリタゾン(pioglitazone)、トログリタゾン(troglitazone)、およびロシグリタゾン(rosiglitazone));デヒドロエピアンドロステロン(DHEA、またはその結合スルフェートエステル、DHEA−SOともまたいわれる);抗グルココルチコイド;TNFαインヒビター;α−グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボース、ミグリトール(miglitol)およびボグリボース(voglibose))、プラムリンチド(pramlintide)(ヒトホルモンアミリンの合成アナログ)、他のインスリン分泌促進物質(例えば、レパグリニド(repaglinide)、グリキドン(gliquidone)、およびナテグリニド(nateglinide))、インスリン、ならびにアテローム性動脈硬化症の処置について上記で議論した活性薬剤と組合わせて効果的に使用され得る。
【0080】
組合わせ治療のさらなる例は、高脂血症の調節(高脂血症およびその関連する合併症の処置)において見られ得、ここで、式Iの化合物は、例えば、スタチン(例えば、フルバスタチン(fluvastatin)、ロバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチン)、例えば、コレスチポールまたはコレスチラミン)、ニコチン酸、プロブコール、βカロテン、ビタミンEまたはビタミンCと組合わせて効率的に使用され得る。
【0081】
本発明に従って、式I(または式IIあるいは式III)の化合物の治療有効量は、糖尿病の処置、高脂血症の処置、肥満の処置、トリグリセリドレベルの低下、コレステロールレベルの低下、高密度リポタンパク質の血漿レベルの惹起、およびアテローム性動脈硬化症の発達の危険性を処置、予防または減少するために有用な薬学的組成物の調製のために使用され得る。
【0082】
さらに、式I(または式IIあるいは式III)の治療有効量、および以下からなるから選択される1以上の活性薬剤の治療有効量は、上記の処置のために有用な薬学的組成物の調製のために一緒に使用され得る:抗高脂血症剤;血漿HDL惹起剤;コレステロール生合成インヒビター(例えば、(HMG)CoAレダクターゼインヒビター、HMG−CoAシンターゼインヒビター、スクアレンエポキシダーゼインヒビター、またはスクアレンシンセターゼインヒビター(スクアレンシンターゼインヒビターともまたいわれる))のような抗コレステロール血症剤;アシル−補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼインヒビター;プロブコール;ニコチン酸およびその塩;ニコチンアミド;コレステロール吸収インヒビター;胆汁酸金属イオン封鎖剤アニオン交換樹脂;低密度リポタンパク質レセプターインデューサー;クロフィブラート、フェノフィブラート、およびゲムフィブリロジル;ビタミンB6およびその薬学的に受容可能な塩;ビタミンB12;抗酸化ビタミン;β−ブロッカー;アンジオテンシンIIアンタゴニスト;アンジオテンシン変換酵素インヒビター;血小板凝集インヒビター;フィブリノーゲンレセプターアンタゴニスト;アスピリン;フェンチラミン(phentiramine)、βアドレノセプターアゴニスト;スルホニル尿素、ビグアニド、α−グルコシダーゼインヒビター、他の他のインスリン分泌促進物質、ならびにインスリン。
【0083】
((4)薬学的処方物および投与方法)
本発明の方法において、式I、式II、および式IIIの化合物は、哺乳動物(例えば、ヒト患者または被験体)に、単独、薬学的に受容可能な塩もしくはその加水分解可能な前駆体の形態、またはこの化合物が治療的有効量で適切なキャリアもしくは賦形剤(単数または複数)と混合される薬学的組成物の形態で、送達または投与され得る。「治療的有効用量」、「治療的有効量」、または交換可能に、「薬理学的に受容可能な用量」または「薬理学的に受容可能な量」とは、所望の結果(例えば、2型糖尿病の症状または合併症の軽減)を達成するために、充分な量の、本発明の化合物、あるいは例えば、本発明の化合物(実質的にその(+)立体異性体を含まない)と薬学的に受容可能なキャリアとの組み合わせが存在することを意味する。
【0084】
本発明の方法において使用される、式I、式II、および式IIIの化合物は、治療的投与のための種々の処方物中に組込まれ得る。より詳細には、式I(または式IIまたは式III)の化合物は、適切な、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤との組み合わせにより薬学的組成物中に処方され得、そして固体、半固体、液体または気体の形態の調製物(例えば、錠剤、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、糖衣丸、ゲル、スラリー、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入剤およびエーロゾル)中に処方され得る。このように、化合物の投与は、種々の方法で達成され得、これらの方法としては、経口投与、口内投与、直腸投与、非経口投与、腹腔内投与、皮内投与、経皮投与、気管内投与が挙げられる。さらに、化合物は、蓄積処方または徐放性処方物で、全身様式よりも局所様式で投与され得る。さらに,化合物はリポソームで投与され得る。
【0085】
さらに、式I、式IIまたは式IIIの化合物は、一般的な賦形剤、希釈剤またはキャリアと共に処方され得、そして錠剤に圧縮され得るか、または都合のよい経口投与のためのエリキシルもしくは溶液として処方され得るか、または筋内経路もしくは静脈内経路により投与され得る。これらの化合物は、経皮的に投与され得、そして徐放性投薬形態などとして処方され得る。
【0086】
式I、式II、または式IIIの化合物は、単独で投与され得るか、互いに組み合わせて投与され得るか、または他の公知の化合物(上記で議論される)と組み合わせて使用され得る。薬学的投薬形態において、これらの化合物は、その薬学的に受容可能な塩の形態で投与され得る。これらの形態は、加水分解可能な部分を含み得る。これらの化合物はまた、単独でか、または他の薬学的に活性な化合物と共に適切に、ならびに他の薬学的に活性な化合物と組合せて使用され得る。
【0087】
本発明における使用に適切な処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company(1985)Philadelphia,Pa.,第17版)(これは、本明細書中に参考として援用される)に見出される。さらに、ドラッグデリバリーの方法の簡単な概論については、Langer,Science(1990)249:1527−1533(これは、本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。本明細書中に記載される薬学的組成物は、当業者に公知の様式、すなわち、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣丸作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入(entrapping)または凍結乾燥のプロセスにより、製造され得る。以下の方法および賦形剤は、単なる例示であり、かつ決して限定ではない。
【0088】
注射については、これらの化合物は、これらの化合物を水性溶媒または非水性溶媒(例えば、植物油もしくは他の同様の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステルまたはプロピレングリコール)中に;そして所望されるならば従来の添加物(例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤および保存料)と共に、溶解、懸濁または乳化させることにより、調製物中に処方され得る。好ましくは、本発明の化合物は、水溶液中、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス液、リンガー液)、または生理食塩水緩衝液中に処方され得る。経粘膜(transmucosal)投与については、透過されるバリアに適切な浸透剤が、処方物中に使用される。このような浸透剤は、当該分野で一般に公知である。
【0089】
経口投与については、式I、式II、または式IIIの化合物は、当該分野で周知の薬学的に受容可能なキャリアと組合せることにより、容易に処方され得る。このようなキャリアは、処置される患者による経口摂取のための、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル、エマルジョン、親油性懸濁液および親水性懸濁液、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして化合物が処方されることを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、適切な補助剤(auxiliary)を添加した後、化合物を固体賦形剤と混合し、必要に応じて得られた混合物をすりつぶし、そして顆粒の混合物を加工して、所望される場合、錠剤または糖衣丸のコアを得ることにより得られ得る。適切な賦形剤は、詳細には、糖(ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む)のようなフィラー;セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン(PVP))である。所望される場合、崩壊剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムのようなその塩)が、添加され得る。
【0090】
糖衣丸コアは、適切なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮糖溶液が使用され得、この溶液は、必要に応じてアラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カルボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。染料または色素は、同定のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、錠剤または糖衣コーティングに添加され得る。
【0091】
経口的に使用され得る薬学的調製物としては、ゼラチンから作製された押し込みばめカプセル、ならびにゼラチンから作製された軟らかい、密封されたカプセルおよびグリセロールまたはソルビトールのような柔軟剤が挙げられる。押し込みばめカプセルは、ラクトースのようなフィラー、デンプンのような結合剤、および/または滑石もしくはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、そして必要に応じて安定剤との混合物中の活性成分を含み得る。柔らかいカプセルにおいて、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコール)中に溶解され得るか、または懸濁され得る。さらに、安定剤が添加され得る。経口投与のための全ての処方物は、このような投与に適切な用量であるべきである。
【0092】
口内投与については、組成物は、従来の様式で処方される錠剤または糖衣丸の形態をとり得る。
【0093】
吸入による投与については、本発明に従う使用のための化合物は、適切な噴霧体(例えば、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくは他の適切な気体)とを使用して、加圧パックもしくは噴霧器からのエーロゾルスプレーとして現れる(presentation)の形態で都合よく送達されるか、または噴霧体を含まない乾燥粉末吸入器から送達される。加圧エーロゾルの場合、用量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することにより決定され得る。吸入器または注入器で使用するための、例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基剤の粉末混合物を含んで処方され得る。
【0094】
化合物は、注射(例えば、ボーラス注射または連続注射)による非経口投与のために処方され得る。注射のための処方物は、添加される保存薬を含む単位用量形態(例えば、アンプルまたは複数回用量コンテナ)で与えられる。組成物は、油性ビヒクルまたは水性ビヒクル中で懸濁液、溶液またはエマルジョンのような形態をとり得、そして懸濁剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤(formulator agent)を含み得る。
【0095】
非経口投与のための薬学的処方物は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステルまたはリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増加する物質(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストラン)を含み得る。必要に応じて、この懸濁液はまた、適切な安定剤または化合物の溶解度を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤を含み得る。あるいは、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、滅菌無発熱因子水)と共に使用前に構成するための粉末形態であり得る。
【0096】
化合物はまた、例えば、ココアバター、カーボワックス、ポリエチレングリコールまたは他のグリセリド(これら全ては、体温で溶融するが、室温で固化する)のような従来の坐剤基剤を含む、坐剤または貯留浣腸のような直腸組成物で処方され得る。
【0097】
以前に記載される処方物に加えて、化合物はまた、蓄積調製物として処方され得る。このような長期作用処方物は、移植(例えば、皮下または筋内)により投与され得るか、または筋内注射により投与され得る。従って、例えば、化合物は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、受容可能な油中のエマルジョン)もしくはイオン交換樹脂と共に処方され得るか、または緩やかに溶解する誘導体(例えば、緩やかに溶解する塩)として処方され得る。
【0098】
あるいは、疎水性薬学的化合物のための他の送達系が使用され得る。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたはキャリアの周知の例である。現在好ましい実施形態において、長期循環(すなわち、ステルス)リポソームが使用され得る。このようなリポソームは、Woodleら,米国特許第5,013,556号(その教示は、本明細書に参考として援用される)に一般的に記載される。本発明の化合物はまた、制御された放出手段および/または米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;および同第4,008,719号(これらの開示は、本明細書に参考として援用される)に記載されるような送達デバイスにより投与され得る。
【0099】
ジメチルスルホキシド(DMSO)のような特定の有機溶媒はまた、通常高い毒性という代償を払うが、使用され得る。さらに、化合物は、徐放系(例えば、治療的薬剤を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を使用して送達され得る。種々の型の徐放性材料が確立され、そして当業者に周知である。徐放性カプセルは、その化学的性質に依存して、数時間から100日間にわたるまでの間に化合物を放出する。
【0100】
薬学的組成物はまた、適切な固相またはゲル相キャリアまたは賦形剤を含み得る。このようなキャリアまたは賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールのようなポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
本発明における使用に適切な薬学的組成物は、活性成分が治療的有効量で含まれる組成物を含む。当然、投与される組成物の量は、処置される被験体、被験体の体重、苦痛の重篤度、投与の様式および処方する医師の判断に依存する。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮して、当業者の能力の範囲内である。
【0102】
本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療的有効用量は、細胞培養アッセイまたは動物モデルから最初に推定され得る。
【0103】
さらに、本明細書中に記載される化合物の毒性および治療的効力は、細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順により、例えば、LD50(集団の50%が死亡する用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することにより決定され得る。毒性と治療的効果との間の用量比は、治療的指標であり、そしてLD50とED50との間の比として表され得る。高治療指標を示す化合物が好ましい。これらの細胞培養物アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用について毒性でない用量範囲を処方する際に使用され得る。このような化合物の用量は、好ましくは毒性をほとんどまたは全く有さないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、使用される投薬形態および利用される投与の経路に依存してこの範囲内で変化し得る。正確な処方、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師により選択され得る(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」第1章を参照のこと)。
【0104】
キャリア材料と組合せられて単一用量形態を生成し得る活性化合物の量は、処置される疾患、哺乳動物種、および投与の特定の様式に依存して変化する。しかし、一般的指針として、本発明の化合物のための適切な単位用量は、例えば、好ましくは100mg〜約3000mgの活性化合物を含み得る。好ましい単位用量は、500mg〜約1500mgの間である、より好ましい単位用量は、500〜約1000mgの間である。このような単位用量は、一日あたり1回より多い回数(例えば、一日に2回、3回、4回、5回または6回)で投与され得るが、好ましくは、70kgの成人について合計の一日の用量が、投与あたり被験体の体重1kgについて0.1〜約250mgの範囲になるように、一日に付き1回または2回投与され得る。好ましい用量は、投与あたり被験体の体重1kgにつき5〜約250mgであり、このような治療は、数週間または数か月およびいくつかの場合では長年にわたり得る。しかし、任意の特定の患者についての特定の用量レベルは、当該領域における当業者に十分理解されるように、利用される特定の化合物の活性;処置される個体の年齢、体重、全体的な健康、性別および食事;投与の時間および経路;排出速度;以前に投与された他の薬物;ならびに治療を受ける特定の疾患の重篤度を含む種々の要因に依存する。
【0105】
代表的な用量は、一日に1回もしくは一日に複数回摂取される1つの10〜約1500mgの錠剤、または一日に1回摂取され、そして比例して高い含量の活性成分を含む1つの時間−放出性カプセルまたは錠剤であり得る。時間−放出効果は、異なるpH値で溶解するカプセル材料、浸透圧によりゆっくりと放出されるカプセル、または制御放出の任意の他の公知の手段により、得られ得る。
【0106】
当業者に明らかないくつかの場合には、これらの範囲外の用量を使用することが必要となり得る。さらに、臨床医または処置する医師は、個々の患者の応答に関連して、いつどのように治療を中断、調節、または終結するかを理解する。
【0107】
((5)保護基)
式IおよびIIの一般構造を有する特定の化合物は、所望の構造へのその首尾良い合成を可能にするために保護基の使用を必要とし得る。保護基は、Greene,T.W.ら,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,Inc.,1991を参照して選択され得る。ブロッキング基は、容易に除去される。すなわち、ブロッキング基は、所望される場合、分子の残りの部分の切断または他の崩壊を引き起こさない手順により除去され得る。このような手順としては、化学的加水分解および酵素的加水分解、穏かな条件下での化学的還元剤または酸化剤での処理、フッ化物イオンでの処理、遷移金属触媒および求核剤での処理、ならびに触媒水素化が挙げられる。
【0108】
適切なヒドロキシル保護基の例は:トリメチルシリル、トリエチルシリル、o−ニトロベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、t−ブチルジフェニルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ベンジルオキシカルボニル、t−ブチルオキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル、およびアリルオキシカルボニルである。適切なカルボキシル保護基の例は、ベンズヒドリル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、2−ナフチルメチル、アリル、2−クロロアリル、ベンジル、2,2,2−トリクロロエチル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフェニルシリル、2−(トリメチルシリル)エチル、フェナシル、p−メトキシベンジル、アセトニル、p−メトキシフェニル、4−ピリジルメチルおよびt−ブチルである。
【0109】
((6)プロセス)
本発明の化合物を作製するプロセスは、概してスキーム1および2に示される(そして実施例においてさらに記載される)。
【0110】
スキーム1:
【0111】
【化17】

スキーム2:
【0112】
【化18】

スキーム1に従って、置換フェニルアセトニトリルが、置換フェニル酢酸に変換される。置換フェニル酢酸は、活性化酸誘導体(例えば、酸塩化物)に変換され、次いでα−炭素においてハロゲン化され、そしてアルコールでエステル化される。ハロゲン化エステルは、置換フェノール(例えば、3−トリフルオロメチルフェノール)で処理されて、アリールエーテルを与え、これが加水分解されてカルボン酸誘導体を形成する。この酸誘導体は、活性化酸誘導体に変換されて、続いて求核剤(例えば、N−アセチルエタノールアミン)で処理されて所望の生成物を与える。
【0113】
スキーム2に従って、置換フェニル酢酸は、活性化酸誘導体(例えば、酸塩化部物)に変換され、次いでα−炭素においてハロゲン化される。分子の活性化酸部分は、求核剤(例えば、N−アセチルエタノールアミン)と反応して保護された酸を与える。ハロゲン化され、保護された酸は、置換フェノール(例えば、3−トリフルオロメチルフェノール)で処理されて所望の生成物を与える。
【0114】
本発明の化合物の立体異性体は、可能な場合はそのプロセスにおいて、その単一のエナンチオマー形態の反応物または試薬または触媒を使用することにより調製され得るか、あるいは、上記および実施例において議論される従来の方法により立体異性体の混合物を分割することにより調製され得る。いくつかの好ましい方法としては、微生物分割、キラルな酸またはキラルな塩基で形成されるジアステレオマーの塩の分割、およびキラルな支持体を使用するクロマトグラフィーが挙げられる。
【0115】
((7)キット)
さらに、本発明は、経口用量または注射用量のいずれかで、単位用量の式I、式IIまたは式IIIの化合物を含むキットを提供する。この単位用量を含む容器に加えて、2型糖尿病に関連する症状および合併症を軽減する際、ならびに高脂血症および尿酸過剰血症を軽減する際の、薬物の使用および付随する効果を記載する情報パッケージ挿入物がある。好ましい化合物および単位用量は、本明細書中上記に記載される化合物および単位用量である。
【実施例】
【0116】
(実施例)
本発明の式I、式II、または式IIIの化合物は、前出のスキーム1に記載されるプロセスを用いて以下の実施例から容易に調製され得る。
【0117】
(実施例1)
この実施例は、メチルブロモ−(4−クロロフェニル)アセテートの調製に関する。
【0118】
【化19】

スキーム1に列挙される出発化合物、すなわち、4−クロロフェニル酢酸は、いくつかの市販の供給元(例えば、AldrichおよびFluka)から容易に入手可能である。
【0119】
マグネチックスターラー、ポット型温度コントロール、および添加ロートを備えた5−LのMorton反応装置を、気体洗浄装置を通して通風し、そしてこの反応装置にp−クロロフェニル酢酸(720gm、4.2mol)およびSOCl(390ml、630gm、5.3mol)を装填する。反応を撹拌し、加熱し、そして55℃±5℃に1時間維持した。次いで、ブロミン(220ml、670gm、5.3mol)を20分かけて添加し、そして55℃±5℃にて16時間撹拌した。温度を、80℃まで7時間かけて上昇させ、次いで、氷水浴中で9℃まで冷却した。次いで、メタノール(2.0L、1.6kg、49.4mol)を、注意深く添加した。溶媒を除去して1.28kg秤量の2つの液体を得た。これらを0.84Lの水および2.1Lのエーテルの混合物中に溶解しそして分離させた。有機相を0.78Lの25%(w:w)NaCl水溶液で1回洗浄し0.13kgのMgSOで乾燥した。これをWhatman#1濾紙を通して濾過し、そして溶媒を除去して0.985kgのオレンジ色の液体を得た。プロトンNMRは、これが80%の生成物でありかつ19%の非臭素化エステルであることを示した。HPLCは、82%の生成物および18%の非臭素化エステルを示した。HPLCをZorbax SB−C8カラム(250×4.6mmおよび5μ粒子サイズを有する)上で30℃にて実行した。移動相は、60:40(v:v)のアセトニトリル:0.1% HPOで1.5ml/分であった。検出を210nmで行った。1μlの注入したサンプルを、10mg/mlの濃度にてアセトニトリル中に溶解した。生成物は、5.0分の保持時間を有し、そして非臭素化エステルの保持時間は、3.8分であった。この粗生成物を、減圧蒸留により精製し、84%の収率で96%の純度の生成物を得た。生成物のプロトンNMR(CDCl、300MHz)は、以下のシフトを示した:3.79(s,3H)ppm、5.32(s,1H)ppmおよび7.20−7.55(m,4H)ppm。
【0120】
(実施例2)
この実施例は、メチル 4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートの調製に関する。
【0121】
【化20】

この工程は、カリウムt−ブトキシドを、ナトリウムメトキシドの代わりに使用して対応するメチルエステルの生成を妨げた点を除いて米国特許第3,517,050号と同一の工程と同様であった。オーバーヘッドスターラー、ポット型温度検出器および添加漏斗を備えた5−Lの反応装置に、窒素雰囲気下で、メチルブロモ−(4−クロロフェニル)−アセテート(830g、3.0mol)およびTHF(600ml)を装填した。反応装置を氷水浴中で14℃±3℃まで冷却し、次いで、1.0Mのカリウムt−ブトキシドのTHF溶液(3.1L、3.1mol)中のトリフルオロメチル−m−クレゾール(530g、3.3mol)の同様に冷却した溶液を添加した。反応は、発熱して進行し、代表的温度上昇は、25℃を超え、そして添加を制御して15℃±2℃の温度を維持し、そして周囲温度で2時間撹拌した。HPLCを、Zorbax SB−C8カラム(250×4.6mmおよび5μ粒子サイズを有する)上で30℃にて実行した。移動相は、60:40(v:v)のアセトニトリル:0.1% HPOで1.5ml/分であった。検出を210nmで行った。1μlの注入したサンプルを、アセトニトリル中に10mg/mlの濃度で溶解した。生成物は、9.6分の保持時間を有し、出発エステルは、5.0分で溶出し、フェノールは、3.0分で溶出し、そして非臭素化エステルは、3.8分で溶出した。溶媒をロータリーエバポレーターを用いて除去して黄色のスラッシュを得、これを4.0Lの水および12.0Lのエーテルの混合物中に溶解した。この混合物を分離し、そして有機相を、1.6Lの5%(w:w)NaOH水溶液続いて1.6Lの水そして最終的に1.6Lの25%(w:w)NaCl水溶液で1回洗浄した。有機相を0.32kgのMgSOで乾燥し、そしてWhatman #1濾紙を通して濾過した。溶媒を除去して1.0kgの湿ったオフホワイトの結晶を得た。これを1.0Lのメチルシクロヘキサン中に75℃にて溶解し次いで20℃まで冷却することによってロータリーエバポレーター上で再結晶した。結晶をWhatman #1濾紙を通して濾過し、そして冷(15℃)メチルシクロヘキサンの0.25Lづつで3回洗浄した。湿った生成物(0.97kg)を一晩乾燥し、0.81kgの98%純度の純粋な生成物を得た。これは、79%の収率に対応する。生成物のプロトンNMR(CDCl、300MHz)は、以下のシフトを示す:3.75(s,3H)、5.63(s,1H)および7.05−7.55(m,8H)。
【0122】
(実施例3)
この実施例は、4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸の調製に関する。
【0123】
【化21】

マグネチックスターラー、ポット型温度コントロール、還流コンデンサを備えた12−LのMorton反応装置に、メチル 4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテート(810gm、2.3mol)および無水エタノール(5.8L)を装填し、そして57℃まで撹拌しながら加熱して固体を溶解させた。0.98Lの水中のKOH(520gm、9.3mol)の溶液を添加した。この溶液を30分還流し、そして溶媒をロータリーエバポレーターにより除去し、2つのほとんど無色の液体の混合物(2.03kg)を得た。これらを水(16L)中に溶解し、そして16gmの中性Noritで処理し、次いでWhatman#1濾紙上で維持された滴虫土のパッドを通して濾過した。濾液のpHを、3M HClの2.75L(8.25mol)の総量を添加することによって最初の範囲の13から1〜2の範囲まで低下させた。酸の最初の2.30Lの添加の後、非常に粘着性の固体が形成し、そしてエーテル(7L)をこの時点で添加した。2層を分離し、そして有機層をMgSO(230g)で乾燥し、そしてWhatman#1濾紙を通して濾過した。次いで、この溶媒を除去して0.85kgの水−白色のシロップを得た。次いで、この物質を、メチルシクロヘキサン(800ml)を添加しかつ18℃まで低回転で冷却することによってロータリーエバポレーター上で再結晶した。次いで、温度を5℃まで下げ、結晶を濾過し、そして冷(0℃)メチルシクロへキサンの0.10Lずつで5回洗浄して0.59kgの湿った結晶を得た。湿った結晶を乾燥して。プロトンNMRにおいてp−クロロフェニル酢酸が検出可能でない、0.48kg(62%収率)の生成物を得た。生成物のプロトンNMR(CDCl、300MHz)は、以下のシフトを示す:5.65(s,1H)、7.02−7.58(m,8H)および10.6(s,1H)。
【0124】
(実施例4)
この実施例は、4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)酢酸の分割されたエナンチオマーの調製に関する。
【0125】
【化22】

オーバーヘッドスターラを備えた12−Lのオープントップ型Morton反応装置に、4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチル−フェノキシ)−酢酸(350gm、1.06mol)およびイソプロパノール(4.0L)を装填し、そして65℃±3℃まで加熱した。イソプロパノール(2.0L)中の(−)シンコニジン(300gm、1.02mol)のスラリーを添加し、すべての固体をリンスして反応装置に添加し、0.8Lのイソプロパノールを添加した。温度は、65℃から56℃まで低下し、そして透明な有機溶液が、最終的に形成され、そしてこの混合物を55℃±5℃にて2時間維持した。微細な結晶をWhatman #1濾紙を通じた濾過によって収集し、0.7Lの温かい(55℃)イソプロパノールで1回洗浄した。結晶を12.6−Lの減圧オーブン中で5LPMの窒素流の下で周囲温度にて16時間乾燥した。乾燥固体は、0.37kgの重量であり、そして80%のエナンチオマー過剰率(ee)の(+)エナンチオマーを有した。エナンチオマー過剰率を250×4.6mmのR,R−WhelkO−1カラムを用いるHPLCによって周囲温度にて決定した。注入したサンプルは、エタノール中の2mg/mlのサンプルの20μlの溶液であった。このカラムを95:5:0.4のヘキサン:イソプロパノール:酢酸で1ml/分の流れで溶出した。検出を210nmで行った。(+)エナンチオマーは、7〜8分で溶出し、そして(−)エナンチオマーは、11〜13分で溶出した。母液体は第2のクロップを生じ、これをほとんどすぐに濾過し、洗浄し、そして乾燥して0.06kgの塩(90%eeの(−)エナンチオマーを有する)を得た。同様に、それぞれ0.03kg、0.03kgおよび0.7kgの重量の第3、第4および第5のクロップを得た;(−)エナンチオマー過剰率は、それぞれ88%、89%および92%であった。
【0126】
粗(+)塩(320g)を、エタノール(5.9L)およびメタノール(1.2L)の混合物から再結晶した。この混合物を、オーバーヘッド撹拌をしながら加熱して溶解し、周囲温度にて16時間冷却し、濾過し、そして5:1(v:v)のエタノール:メタノールの0.20Lで2回洗浄した。この結晶を乾燥して0.24kgの(+)エナンチオマー(97%のeeを有する)を得た。これは、この異性体の80%の回収率に対応する。分割した塩を、オーバーヘッド撹拌をしながらエーテル(6.5L)および水(4.0L)の混合物中に懸濁した。pHを、水(2.5L)中の濃HSO(0.13L)の溶液を用いてpH指標ストリップ法によって測定されるように、0〜1まで低下した。この相を分離して、そして有機相を6.5Lの水一部ずつを用いて2回洗浄した。エーテル(1.9L)を添加し、そして有機層を6.5Lの水でもう1回洗浄した。最終の分離の後、0.1Lの25%(w:w)のNaCl水溶液を添加して任意の軽微なエマルジョンを一掃した。生成物を0.19kgのMgSOで乾燥し、濾過し、そして溶媒を除去して0.13kgの水−白色シロップを得、これを冷却により凝固させた。これは、生成物の97%の回収に対応し、95%eeの(+)エナンチオマーを有した。[α]+5.814°(c=0.069(メチルアルコール中)。
【0127】
合わせた粗(−)塩(200g)を、イソプロパノール(3.1L)から再結晶した。この混合物を加熱してほとんどすべての固体を溶解し、そして高速濾過して不溶な固体を除去した。次いで、この混合物を周囲温度にて16時間撹拌しながら冷却し、濾過し、洗浄し、そして乾燥して0.16kgの(−)エナンチオマー(97%のeeを有する)を得た。これは、この異性体の49%の回収率に対応する。この酸の(−)エナンチオマーを、(+)酸についての上記と同様な様式で単離した。分割した塩を、エーテルおよび水中に懸濁し、pHを濃HSOで低下させ、そして生成物を有機相中で抽出した。
【0128】
(実施例5)
(A.(−)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセチルクロリドの調製)
【0129】
【化23】

マグネチックスターラー、クライセンアダプター、ポット型温度計および還流コンデンサを備えた、気体スクラバーに経路を決められた2−Lのエバポレーションフラスコに、(−)4−クロロフェニルー(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸(143g、0.42mol(97%純度に基づく))およびCHCl(170ml)を装填し、そして溶解するために沸騰するまで加熱した。SOCl(38ml、62.1gm、0.52mol)を添加した。混合物を4.5時間加熱還流し(68℃最終)、次いで、揮発物を除去して151gの黄色の濁った液体(103%の見かけ上の収率)を得た。この物質をさらなる精製なしで次の工程で使用した。
【0130】
(B.(+)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセチルクロリドの調製)
【0131】
【化24】

マグネチックスターラー、クライセンアダプター、ポット型温度計および還流コンデンサを備えた、気体スクラバーに経路を決められた3−Lのエバポレーションフラスコに、(+)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−酢酸(131g、0.37mol)およびCHCl(152ml)を装填し、溶解するために沸騰するまで加熱した。SOCl(35ml、56.5g、0.48mol)を添加した。混合物を4時間加熱還流し(70℃最終)、次いで、揮発物を除去して139gの液体を得た。この物質をさらなる精製なしで次の工程で使用した。
【0132】
(実施例6)
(A.(−)2−アセトアミドエチル 4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテートの調製)
【0133】
【化25】

マグネチックスターラー、ポット型温度計を備えた3−Lの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でかつ氷水中で、DMF(420ml)、ピリジン(37ml、36g、0.46mol)およびN−アセトエタノールアミン(39ml、43g、0.42mol)を装填した。この混合物を0℃〜5℃まで冷却し、そして粗(−)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセチルクロリド(151gm、0.42mol(以前の工程の100%収率に基づく))のエーテル(170ml)溶液を、40分にわたって添加して、ポット型温度計を13℃より下に保った。混合物を周囲温度にて16時間撹拌し、そして水(960ml)続いて酢酸エチル(630ml)を添加することによって溶解させた。水の添加は発熱的に進行させて、温度を24℃〜34℃に上昇させた。酢酸エチルの添加により、30℃まで温度が低下した。層を分離し、そして水相を酢酸エチル(125ml)で1回抽出した。合わせた有機層を7%(w:w)NaHCO水溶液(125ml)で1回抽出し、そして水60mlずつで5回洗浄し、次いで、25%(w:w)のNaCl水溶液の60mlずつで2回洗浄した。生成物をMgSO(42g)で乾燥し、そしてWhatman #1濾紙を通して濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターを用いて除去し、160gの黄色のシロップを得た。これは、プロトンNMRに基づいて80%収率に対応し、87%の生成物、8%のEtOAc、4%の非臭素化アミド、および1%のDMFを示す。このシロップを周囲温度にてMTBE(225ml)中に溶解し、そして凍結した(−15℃)85%のヘキサン(400ml)を撹拌しながら添加した。2つの液体が形成し、次いで結晶化し、次いで、この混合物は、固体を形成した。固体の塊を、Whatman #1を実装したBuchner漏斗上でスクラップし、収集し、そして1:1(v:v)のMTBE:ヘキサンの100mlずつで3回洗浄し、312gの湿った生成物を得た。これを127gmまで乾燥すると、73%の収率に対応した。
【0134】
(B.(+)2−アセトアミドエチル 4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテートの調製)
【0135】
【化26】

マグネチックスターラー、ポット型温度計を備えた3−Lの丸底フラスコに、窒素雰囲気下でかつ氷水中で、DMF(365ml)、ピリジン(33ml、32.3g、0.41mol)およびN−アセトエタノールアミン(34ml、38.1g、0.37mol)を装填した。この混合物を0℃〜5℃まで冷却し、粗(+)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセチルクロリド(139gm、0.37mol(以前の工程の100%収率に基づく))のエーテル(155ml)溶液を、ポット型温度計を13℃以下に維持するために25分の期間にわたって添加した。この混合物を周囲温度にて40時間撹拌し、そして水(850ml)続いて酢酸エチル(550ml)を添加することによって溶解した。水の添加は発熱的に進行させて、温度を24℃〜34℃に上昇させた。酢酸エチルの添加により、30℃まで温度が低下した。層を分離し、そして水相を酢酸エチル(110ml)で1回抽出した。合わせた有機層を水55mlずつで5回洗浄し、次いで、25%(w:w)のNaCl水溶液の55mlずつで5回洗浄し、MgSO(30g)で乾燥し、そしてWhatman #1濾紙を通して濾過した。溶媒をロータリーエバポレーターを用いて除去し、168gの黄色液体を得た。これは、プロトンNMRに基づいて86%収率に対応し、79%の生成物、9%のEtOAc、8%の非臭素化アミド、および4%のDMFを示す。この生成物を周囲温度にてMTBE(225ml)中に溶解し、−15°にて1.4時間冷却し、200mlの85%のヘキサンを添加し、次いで1時間冷蔵することによって800mlのビーカー中で結晶化させた。固体の塊を、Whatman #1を実装したBuchner漏斗上でスクラップし、収集し、そして1:1(v:v)のMTBE:ヘキサン(100ml)で1回洗浄し、201gの湿った生成物を得た。この生成物を窒素流の下で乾燥し、そしてオーバーヘッドスターラーを用いて85%のヘキサン(700ml)を用いて粉砕した。この物質を濾過し、そして乾燥して87gmの生成物を得た。[α]+2.769°(c.=0.048(メチルアルコール中))。[α]−2.716°(c.=0.049(メチルアルコール中))。(+)および(−)エナンチオマーをまた、250×4.6mm、R,R−WhelkO−1カラムを用いるHPLCによって周囲温度にて分析した。注入したサンプルは、エタノール中の2mg/mlの溶液の20μlであった。カラムを60:40のイソプロパノール:ヘキサンを用いて1ml/分の流れにて溶出した。検出を220nmで行った。(+)エナンチオマーは、5.0〜5.2分で溶出し、そして(−)エナンチオマーは、5.7〜5.9分で溶出した。
【0136】
(実施例7)
この実施例は、本発明の化合物によるシトクロムP450 2C9(CYP2C9)の阻害に関する。
【0137】
トルブタミドヒドロキシル化活性(100μM 14C−トルブタミド;1mM NADPH)を、試験化合物の使用および使用なしの両方で37℃にてプールしたヒト肝臓ミクロソーム(0.6mgタンパク質/ml)中で60分にわたってアッセイした。ラセミハロフェニル酸(halofenic acid)、(−)ハロフェニル酸および(+)ハロフェニル酸を試験した(0.25μM〜40μM)。図1中に示されるように、ラセミハロフェニル酸は、ヒト肝臓ミクロソームにおけるCYP2C9媒介トルブタミドヒドロキシル化活性を0.45μMの見かけのIC50により阻害した。実質的な差異を、ハロフェニル酸のエナンチオマーのCYP2C9を阻害する能力において留意した。(+)ハロフェニル酸は、0.22μMの見かけのIC50を有した。一方で、(−)ハロフェニル酸は、3.6μMの見かけのIC50を有し、ほとんど20分の1の低い能力であった。
【0138】
(実施例8)
この実施例は、本発明の化合物についてのグルコース低下の時間経過に関する。
【0139】
(A.物質および方法)
雄の9〜10週齢のC57BL/6J ob/obマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA)から購入した。動物を22℃および50%の相対湿度にて標準実験室条件下で飼育し(4〜5マウス/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌および水の食物を自由に与えて維持した。処理の前に、血液を各動物の尾静脈から収集した。300と500mg/dlとの間の非絶食血漿グルコースを有したマウスを使用した。平均グルコースレベルが研究の開始において各群において等価であるように分配した各処理群は、10匹のマウスからなった。マウスをビヒクル、ラセミハロフェネート(250mg/kg)、(−)ハロフェネート(250mg/kg)または(+)ハロフェネート(250mg/kg)のいずれかを用いて胃管栄養法により1回経口的に投薬した。すべての化合物を、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween80および2.7%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は、10ml/kgであった。血液サンプルを、投薬の1.5、3、4.5、6、7.5、9および24時間後に採取し、そして血漿グルコースについて分析した。血漿グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法(Sigma Chemcal Co,St.Louis,MO,USA)を用いて比色分析的に決定した。群の間の有意差(ビヒクル処理群に対する薬物処理群の比較または薬物処理群の間の比較における)を、Studentの独立t検定を用いて評価した。
【0140】
(B.結果)
図2中に図示されるように、ラセミハロフェネートは、ほとんどの時点において血漿グルコース濃度を有意に減少させ、9時間にてピーク活性を有した。(−)ハロフェネートは、1.5時間という早い時間にて血漿グルコース減少を示し、そして3時間においてそのピーク活性に到達した。血漿グルコース濃度は、24時間まで低いままであった。(+)ハロフェネートは、4.5時間まで有意な活性を示さず、そしてピーク活性は、7.5時間であった。血漿グルコースは、その後、回復し始めた。3時間の時点および24時間の時点においてハロフェネートの(−)エナンチオマーと(+)エナンチオマーとの間に有意差があった。(−)ハロフェネートの活性は、より迅速に開始し、そしてより長く持続した。
【0141】
(実施例9)
この実施例は、本発明の化合物のグルコース低下活性に関する。
【0142】
(A.物質および方法)
雄の8〜9週齢のC57BL/6J ob/obマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA)から購入した。動物を22℃および50%の相対湿度にて標準実験室条件下で飼育し(4〜5マウス/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌および水の食物を自由に与えて維持した。処理の前に、血液を各動物の尾静脈から収集した。300と520mg/dlとの間の非絶食血漿グルコースを有したマウスを使用した。平均グルコースレベルが研究の開始において各群において等価であるように分配した各処理群は、10匹のマウスからなった。マウスをビヒクル、ラセミハロフェネート(250mg/kg)、(−)ハロフェネート(125および250mg/kg)または(+)ハロフェネート(125および250mg/kg)のいずれかを用いて胃管栄養法により1日1回5日間経口的に投薬した。ラセミハロフェネートを2.7%(w/v)メチルセルロース中に送達し、そして(−)エナンチオマーおよび(+)エナンチオマーを、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween80および2.7%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は、10ml/kgであった。血液サンプルを、最初の投薬の3、6、27、30および120時間後に摂取し、そして血漿グルコースおよびインスリンについて分析した。動物を120時間のサンプリングの前に、一晩(14時間)絶食させた。血漿グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO,USA)を用いて比色分析的に決定した。血漿インスリン濃度を、Linco Research Inc.(St.Charles,MO,USA)からのラットインスリンRIAキットを用ることにより決定した。群間の有意差(ビヒクル処理に対する薬物処理の比較における)を、Studentの独立t検定を用いて評価した。
【0143】
(B.結果)
図3に図示されるように、(−)ハロフェネートは、6、27および30時間にて血漿グルコース濃度を有意に減少させた。(−)ハロフェネートは、両方の投薬レベルにおいて、6、27および30時間における血漿グルコース濃度は有意に低下した。高用量(250mg/kg)はまた、3時間において活性であった。(+)ハロフェネートは、125mg/kgにて、6および27時間において血漿グルコース減少を示し、ここで、250mg/kgにおいて、低下した血漿グルコース濃度が、3、6、27および30時間において観察された。血漿インスリンレベルを図4中に示す。ラセミハロフェネートは、6および27時間においてインスリンを有意に減少させた。血漿インスリンは、両方の用量において27時間にて(−)ハロフェネート群で有意に減少され、そして250mg/kg/日で処理した動物において30時間で有意に減少された。(+)ハロフェネートは、両方の用量において27および30時間にてインスリンを有意に減少した。125mg/kg/日において、有意な減少がまた、6時間後にも観察された。一晩絶食させた後(120時間後)、すべての処理は、血漿グルコース濃度を有意に減少させた(図5)。血漿インスリンは、125mg/kg/日において、(+)ハロフェネートを除くすべてのハロフェネート処理群において有意に減少された(図6)。
【0144】
(実施例10)
本実施例は、本発明の化合物についての、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損における改善に関する。
【0145】
(A.材料および方法)
雄性の、8〜9週齢のZucker fa/faラット(Charles River)を、標準的な実験条件下で、22℃でそして50%の相対湿度で飼育し(2〜3ラット/ケージ)、そしてPurinaげっ歯類餌の食餌および水を自由に摂らせて維持した。処置の前に、ラットを、体重に基づいて6つの群に割り当てた。各処置群は、8匹のラットからなっていた。ラットに、ビヒクル、ラセミ体ハロフェネート(100mg/kg)、(−)ハロフェネート(50mg/kgもしくは100mg/kg)または(+)ハロフェネート(50mg/kgもしくは100mg/kg)のいずれかを胃管栄養法によって1回経口投与した。全ての化合物を、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween 80および2.7%(w/v)メチルセルロースを含んだ液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は10ml/kgであった。全てのラットに、処置の5.5時間後および絶食から4時間後に経口グルコース負荷(1.9g/kg)を与えた。血液サンプルを、血漿グルコース測定のためにグルコース負荷の0、15、30、60、90、120および180分間後に採取した。ビヒクル群、(−)ハロフェネート(50mg/kg)群および(+)ハロフェネート(50mg/kg)群を、5日間のそれぞれの処置の毎日の胃管栄養法の後にインスリン負荷に供した。5日目に、ラットに、静脈内インスリン(0.75U/kg)を最後の用量の5.5時間後および絶食から4時間後に与えた。血液サンプルを、血漿グルコース測定のために、インスリン注射の3、6、9、12、15および18分後に採取した。血漿グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法(Sigma Chemical Co,St.Louis,Mo.,U.S.A.)を用いて比色法によって決定した。群の間の有意差(薬物処置をビヒクル処置に対して比較するかまたは薬物処置間で比較する)を、Student独立t検定を用いて評価した。
【0146】
(B.結果)
図7Aに図示するように、グルコース寛容減損を有するZucker脂肪ラットは、ハロフェネートでの処置後に、グルコース負荷後に、より低い血漿グルコースレベルを有した。(−)ハロフェネートは、グルコースを低下させる際に最も有効であり、そしてラセミ化合物または(+)エナンチオマーよりも長く持続する効果を有した。図7Bは、全ての処置群について増分曲線下面積(AUC)を示す。(−)ハロフェネートで処置した動物は、ビヒクル処置コントロールと比較して、グルコース面積において有意な減少を示した。AUCはラセミ化合物または(+)ハロフェネートで処置した群において減少したが、その効果は、(−)ハロフェネート処置ラットにおけるほど大きくなく、そして差は統計学的に有意でなかった。
【0147】
インスリン感受性における変化を、インスリンの静脈内注射後にグルコースにおける低下をモニタリングすることによって評価した。この直線の傾きは、試験動物のインスリン感受性の直接的な指標である。図8に示すように、インスリン感受性は、(−)ハロフェネートでの5日間の処置後に、ビヒクル処置コントロール(p<0.01)および(+)ハロフェネートで処置した動物(p<0.05)と比較して有意に改善された。(+)ハロフェネートでの処置は、ビヒクル処置コントロール(p=0.083)とは有意には異ならない、インスリン感受性に対して小さな効果を有した。(−)ハロフェネートでの処置は、グルコース寛容減損およびインスリン抵抗性の充分に樹立されたモデルであるZucker脂肪ラットにおいてインスリン抵抗性を実質的に減少させた。
【0148】
(実施例11)
本実施例は、本発明の化合物の脂質低下活性に関する。
【0149】
(A.材料および方法)
雄性Zucker糖尿病脂肪(ZDF)ラットを、9週齢でGMI Laboratories(Indianapolis,IN)から入手した。ビヒクルまたはハロフェネートのエナンチオマーを、74日齢で開始して毎日のベースで経口胃管栄養法によって投与した。最初の血液サンプルを、分析のために処置の1日前および処置プロトコルにおける示した時点で入手した。血液を、標準的な技術によって血漿トリグリセリドおよびコレステロールについて分析した。
【0150】
(B.結果)
実験Iでは、動物に、25mg/kg/日の用量を与えた。図9Aおよび図9Bに示すように、血漿コレステロールにおける有意な減少は、(−)ハロフェネートで処置した動物においてのみ、7日間の処置後および13日間の処置後に示された。実験IIでは、107日齢の動物に、ハロフェネートの(−)および(+)のエナンチオマーの12.5mg/kg/日または37.5mg/kg/日のいずれかの日用量を与えた。図10Aおよび図10Bに示すように、血漿コレステロールは、高用量の(+)ハロフェネートでの7日間の処置後に有意に低かったが14日間の処置後には低くなかった。対照的に、低用量での(−)ハロフェネートについては、コレステロールにおける有意な減少が7日後に観察された。高用量では、血漿コレステロールにおけるずっと大きな低下が示され、この低下は、7日間の処置後および14日間の処置後の両方で明らかであった。図11Aおよび図11Bに示すように、血漿トリグリセリドにおける有意な減少もまた、高用量で、処置の7日後に示され、この減少は、ハロフェネートの(−)エナンチオマーで処置された動物において規模がより大きかった。
【0151】
(実施例12)
本実施例は、(±)ハロフェネートアナログおよび(−)ハロフェネートアナログのグルコース低下活性に関する。
【0152】
(A.材料および方法)
雄性の8〜9週齢のC57BL/6J ob/obマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA)から購入した。動物を、標準的な実験条件下で22±3℃の温度でそして50±20%相対湿度で飼育し(4〜5マウス/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌の食餌および水を自由に摂らせて維持した。処置の前に、各動物の尾静脈から血液を採取した。250mg/dlと500mg/dlとの間の非絶食血漿グルコースレベルを有するマウスを用いた。各処置群は、平均グルコースレベルが研究開始時に各群において等しいように分布させた8〜10匹のマウスからなっていた。マウスに、ビヒクル、(−)ハロフェニル酸、(±)アナログ14、29、33、34、35、36、37もしくは38を125mg/kgで、または(−)アナログ29、36、37もしくは38を150mg/kgでのいずれかで1日1回1〜3日間にわたって胃管栄養法によって経口投与した。化合物を、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween 80および0.9%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は10ml/kgであった。血液サンプルを各用量の6時間後に採取し、そして血漿グルコースについて分析した。食物摂取および体重を毎日測定した。血漿グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO,USA)を用いて比色法によって決定した。群の間の有意差(薬物処置をビヒクル処置に対して比較する)を、Student独立t検定を用いて評価した。
【0153】
(B.結果)
表2に例示するように、化合物を、5つの異なる実験において評価した。単回用量の(−)ハロフェニル酸は、6時間で血漿グルコース濃度を有意に減少させた。アナログ14は、6時間、30時間および54時間で血漿グルコース濃度を有意に低下させた。アナログ33は、6時間および54時間で血漿グルコース濃度を有意に低下させた。アナログ29および38は、6時間、30時間および54時間で血漿グルコース濃度を有意に低下させた。アナログ35および36は、30時間および54時間で血漿グルコース濃度を有意に低下させた。アナログ37は、54時間で血漿グルコース濃度を有意に低下させた。単回用量の(−)アナログ29、36、37および38は、6時間で血漿グルコース濃度を有意に減少させた。化合物処置は、動物の食物摂取および体重には影響を与えなかった。
【0154】
【化27】

【0155】
【表1】

【0156】
【表2】

(実施例13)
本実施例は、(−)ハロフェネートの活性と(+)ハロフェネートの活性との間の比較に関する。
【0157】
(A.材料および方法)
雄性の8〜9週齢のZDFラットを、Genetic Models,Inc.(Indianapolis,IN)から購入した。動物を、標準的な実験条件下で、22±3℃の温度でおよび50±20%相対湿度で飼育し(3ラット/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌の食餌および水を自由に摂らせて維持した。処置の前に、各動物の尾静脈から血液を採取した。200mg/dLと500mg/dLとの間の4時間絶食血漿グルコースレベルを有するラットを用いた。各処置群は、平均グルコースレベルが研究開始時に各群において等しいように分布させた8〜10匹のラットからなっていた。ラットに、ビヒクル、(−)ハロフェネートまたは(+)ハロフェネートのいずれかで50mg/kgで、1日1回、3日間にわたって胃管栄養法によって経口投与した。化合物を、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween 80および0.9%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は5ml/kgであった。血液サンプルを、2日目および3日目に投与の5時間後に採取した。血漿グルコース濃度を、グルコースオキシダーゼ法(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO,USA)を用いて比色法によって決定した。群の間の有意差(薬物処置をビヒクル処置に対して比較する)を、Student独立t検定を用いて評価した。
【0158】
(B.結果)
50mg/kgでの(−)ハロフェネートの経口投与は血漿グルコース濃度を有意に減少させ、一方、(+)ハロフェネートは同じ投薬レベルで、ビヒクル処置動物と比較して血漿グルコース濃度を減少させることができなかった(図12)。
【0159】
(実施例14)
本実施例は、(±)ハロフェネートおよび(−)ハロフェネートの薬物動態学的研究に関する。
【0160】
(A.材料および方法)
雄性の225〜250gのSDラットを、Charles Riverから購入した。動物を、標準的な実験条件下で22±3℃の温度でそして50±20%相対湿度で飼育し(3ラット/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌の食餌および水を自由に摂らせて維持した。カテーテルを、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg i.p.)下で左頸動脈に配置し、そして動物を処置の前に2日間回復させた。50mg/kgでの単回用量の(±)ハロフェネートまたは(−)ハロフェネートを、経口胃管栄養法によって投与した。化合物を、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO),1%(v/v)tween 80および0.9%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法容量は5ml/kgであった。血液サンプルを、投与後1、2、4、6、8、12、24、48、72、96および120時間に収集した。血漿サンプルを、キラル特異的HPLCアッセイによって各エナンチオマーの酸((−)ハロフェニル酸および(+)ハロフェニル酸)について分析した。このエステルは、それらのそれぞれのエナンチオマーの酸へとインビボで変換されるように設計されたプロドラッグである。
【0161】
(B.結果)
(±)ハロフェネートの経口投与後、(−)ハロフェニル酸および(+)ハロフェニル酸の両方は血漿サンプル中で検出された。表3に示すように、2つのエナンチオマー酸は異なる配置プロフィールを有するようである。(−)ハロフェニル酸の除去は、(+)ハロフェニル酸よりもずっとゆっくりであった。結果として、(−)ハロフェニル酸のAUCは、(+)ハロフェニル酸についてのAUCよりも有意に高く(4708.0対758.0μg・h/mL)、そして末期の(terminal)半減期は46.8時間対14.3時間であった。
【0162】
(−)ハロフェネートの経口投与後、(−)ハロフェニル酸の配置プロフィールは、末期の半減期が同じであるので、(±)ハロフェネートの投与と基本的に同一であった(表2)。(−)ハロフェニル酸のCmaxおよびAUCは、投与した(−)ハロフェネートの量がより高いことに単に起因して、比例して高かった(表3)。(+)ハロフェニル酸もまた血漿において検出されたが、その濃度は(−)ハロフェニル酸よりもずっと低かった。両方の酸の末期の半減期(T1/2)が同様であったので、(+)ハロフェニル酸がインビボで形成されることが推測される。
【0163】
これらの結果は、(−)ハロフェニル酸のAUCが(+)ハロフェニル酸についてのAUCよりも有意に大きかったので、(−)ハロフェネートの使用がより望ましいことを示唆する。
【0164】
【表3】

【0165】
【表4】

(実施例15)
本実施例は、(−)ハロフェネートによる、糖尿病の発症の予防および高トリグリセリド血症の緩和に関する。
【0166】
(A.材料および方法)
雄性の4週齢のC57BL/6J db/dbマウスを、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA)から購入した。動物を、標準的な実験条件下で22±3℃の温度でそして50±20%相対湿度で飼育し(5マウス/ケージ)し、そしてPurinaげっ歯動物餌(#8640)の粉末食餌および水を自由に摂らせて維持した。処置の前に、血漿グルコース、インスリンおよびトリグリセリドの濃度に関して、各動物の尾静脈から血液を採取した。マウスを、平均グルコースレベルおよび体重が研究開始時に各群において等しいように分布させた。コントロール群(20匹のマウス)に5%スクロースと混合した粉末餌を与え、そして処置群(20匹のマウス)に、5%スクロースおよび(−)ハロフェネートと混合した粉末餌を与えた。餌における(−)ハロフェネートの量を動物の体重および食物摂取に従って連続的に調節して、150mg/kg/日の標的投薬量にあわせた。血液サンプルを、非絶食条件下で、8〜10AMで1回、週に1回で9週間にわたって採取した。食物摂取および体重を、1〜3日毎に測定した。血漿グルコースおよびトリグリセリドの濃度を、Sigma Chemical Coからのキット(No.315およびNo.339,St.Louis,MO,USA)を用いて比色法によって決定した。血漿インスリンレベルを、Linco Research(St.Charles,MO)から購入したRIAアッセイキットを用いて測定した。群の間の有意差(薬物処置をビヒクル処置に対して比較する)を、Student独立t検定を用いて評価した。
【0167】
(B.結果)
4週齢のC57BL/6J db/dbマウスは、前糖尿病状態にある。これらの血漿グルコース濃度は正常であるが、血漿インスリン濃度は有意に上昇している。図13に例示されるように、両方の群における血漿グルコース濃度は、実験開始時に正常であった。糖尿病発症の自然の経過の後で、コントロール群における血漿グルコースレベルは、動物の加齢に伴って徐々に上昇し、一方、(−)ハロフェネート処置群における血漿グルコースレベルの上昇は、予防されたかまたは有意に遅延した。図15に示すように、約30%のマウスは、糖尿病を、250mg/dlより高い血漿グルコースレベルと定義した場合、(−)ハロフェネート処置群において糖尿病を発症しなかった。一方、コントロール群におけるマウスはいずれも、10週齢になるまで糖尿病を有さなかった。血漿グルコースでの知見と一致して、コントロール群における血漿インスリンは、徐々に減少した。このことは、膵臓のインスリン分泌能の悪化を示す。(−)ハロフェネート処置は、血漿インスリン濃度を維持した。このことは、膵臓機能の悪化の予防を示す(図14)。
【0168】
図16は、C57BL/6J db/dbマウスにおける血漿トリグリセリド濃度の進行を年齢に対して示す。(−)ハロフェネート投与は、実験の過程にわたって血漿トリグリセリド濃度の上昇を緩和した。
【0169】
(実施例16)
本実施例は、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテート((−)ハロフェネート)の調製を記載する。
【0170】
【化28】

4−クロロフェニル酢酸を1,2−ジクロロエタンと合わせ、そして得られる溶液を45℃に加熱した。塩化チオニルをこの反応混合物に添加し、これを60℃で18時間加熱した。反応物を室温に冷まし、次いでジクロロメタン中のN−アセチルエタノールアミンの溶液にゆっくりと添加した。30分間の攪拌後、反応を水性炭酸カリウムおよびチオ硫酸ナトリウムでクエンチした。有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして濾過した。ロータリーエバポレーションによる溶媒の除去によって、N−アセチルアミノエチル2−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)アセテートがオイルとして得られた。
【0171】
【化29】

3−ヒドロキシベンゾトリフルオリドをイソプロパノール中の水酸化カリウムの溶液に添加した。イソプロパノール中のN−アセチルアミノエチル2−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)アセテートをイソプロパノール/フェノキシド溶液に添加し、そして室温で4時間攪拌した。イソプロパノールを減圧蒸留によって除去し、そして得られたスラッシュを酢酸エチルに溶解し、そして水で2回およびブラインで1回洗浄した。硫酸マグネシウムでの乾燥および濾過後、溶媒を除去して粗生成物をオイルとして得た。粗生成物を熱トルエン/ヘキサン(1:1v/v)に溶解し、そして0℃と10℃との間へ冷却して生成物を結晶化させた。濾過ケークをヘキサン/トルエン(1:1 v/v)で洗浄し、次いで減圧下で50℃にて乾燥させた。単離された固体を6:1(v/v)のヘキサン中の熱イソプロパノール中に溶解した。冷却後、純粋なラセミ2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテートが結晶固体として形成された。この固体を濾過によって収集し、濾過ケークを6:1(v/v)のヘキサン中のイソプロパノールで洗浄し、そして減圧下で50℃にて乾燥させた。 このラセミ化合物を、20%イソプロパノール(IPA)および80%ヘキサンの溶液中に2.5%(wt/wt)で溶解させた。得られた溶液を、98% eeを超える抽出物が取り出され得るまで、Whelk−O R,R Chiral Stationary Phase(CSP)に連続様式で通過させた。溶媒を減圧下で抽出物からエバポレートして、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)−アセテートを得た。(The Simulated Moving Bed分割を、70 Flagship Drive,North Andover,MA 01845のUniversal Pharm Technologies LLCによって行った)。
【0172】
(実施例17)
本実施例は、(−)ハロフェネートの投与を通しての血漿尿酸レベルの低下に関する。
【0173】
(A.材料および方法)
雄性のSDラット(275〜300g)を、Charles Riverから購入した。動物を、標準的な実験条件下で22±3℃の温度でそして50±20%相対湿度で飼育し(3ラット/ケージ)、そしてPurinaげっ歯動物餌(#8640)の粉末食餌および水を自由に摂らせて維持した。高尿酸血症状態を確立するために、動物に、2.5%(w/w)のオキソン酸(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO,USA)を含む食餌を実験の間中与えた。オキソン酸は、ウリカーゼを阻害することによって血漿尿酸を上昇させる。ラットを、この食餌を与えてから3日後に血漿尿酸レベルについてスクリーニングし、そして過剰の血漿尿酸レベルを有するラットを排除した。ラットを3つの群のうちの1つに割り当て、そして平均尿酸レベルは各群において等しかった。ラットに、ビヒクル、(−)ハロフェネートまたは(+)ハロフェネートのいずれかを50mg/kgで1日1回、3日間にわたって胃管栄養法によって経口投与した。4日目に、それぞれのラットに、100mg/kgで(−)ハロフェネートまたは(+)ハロフェネートを与え、そして全てのラットに、経口胃管栄養法の4時間後にオキソン酸(250mg/kg)のi.p.注射を与えた。(−)ハロフェネートおよび(+)ハロフェネートを、5%(v/v)ジメチルスルホキシド(DMSO)、1%(v/v)tween 80および0.9%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。オキソン酸を、0.9%(w/v)メチルセルロースを含む液体処方物中で送達した。胃管栄養法および注射容量は、5ml/kgであった。血液サンプルを、4日目に経口胃管栄養法の6時間後に採取した。血漿尿酸レベルを、Infinity Uric Acid Reagent(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO,USA)を用いて比色法によって決定した。群の間の有意差(薬物処置をビヒクル処置に対して比較する)を、Student独立t検定を用いて評価した。
【0174】
(B.結果)
図17に示すように、(−)ハロフェネートの経口投与は血漿尿酸レベルを有意に減少させた。(+)ハロフェネートはまた、血漿尿酸レベルを低下させたが、これは統計学的には有意でなかった。
【0175】
(実施例18)
本実施例は、本発明の化合物によるシトクロムP450アイソフォームの阻害に関する。
【0176】
(A.材料および方法)
以下のプローブ基質を用いて、シトクロムP450アイソフォーム1A2、2A6、2C9、2C19、2D6、2E1および3A4に対する試験品の阻害能力を調査した:100μMフェナセチン(CYPIA2)、1μMクマリン(CY)2A6)、150μMトルブタミド(CYP2C9)、50μM S−メフェニトイン(CYP2C19)、16μMデキストロメトルファン(CYP2D6)、50μMクロルゾキサゾン(CYP2E1)および80μMテストステロン(CYP3A4)。各アイソフォームの活性を、ヒト肝臓ミクロソームにおいて、試験品の存在下および非存在下で決定した。
【0177】
他に示さない限り、全てのインキュベーションを37℃にて行った。サンプルの大きさは、全ての試験条件およびポジティブコントロール条件についてN=3であり、そして全てのビヒクルコントロール条件についてN=6であった。(−)ハロフェニル酸(MW=330)を、室温で、1000×ストックとしてメタノール中で調製し、次いでTris緩衝液で希釈して、各々0.1%のメタノールを含む、0.33、1.0、3.3、10および33.3μMという最終濃度を達成した。試験品を含まず、0.1%メタノールを含むTris緩衝液中のミクロソームおよび基質からなるビヒクルコントロール(VC)を、全ての実験群に含めた。ポジティブコントロール(PC)混合物を、以下の公知のCYP450インヒビターを用いて調製した:5μMフラフィリン(CYP1A2)、250μMトラニルシプロミン(CYP2A6)、50μMスルファフェナゾール(CYP2C9)、10μMオメプラゾール(CYP2C19)、1μMキニジン(CYP2D6)、100μM 4−メチルピラゾール(CYP2E1)および5μMケトコナゾール(CYP3A4)。クロマトグラフィー干渉コントロール(CIC)を、試験品およびその代謝産物によるクロマトグラフィーの干渉の可能性を調査するために含めた。試験品(33.3μg/mL)を、1×ミクロソームタンパク質、1×NRSおよび10μLの適切な有機物質(organic)と共に適切な時間にわたって以下の通りにインキュベートした。
【0178】
肝臓ホモジネートの分画遠心分離によって調製した、安定な、凍結したロットの、プールした成体雄性肝臓ミクロソームおよび成体雌性肝臓ミクロソームを本研究において用いた(例えば、Guengerich,F.P.(1989).Analysis and characterization of enzymes,Principles and Methods of Toxicology(A.W.Hayes編)777−813.Raven Press,New Yorkを参照のこと)。インキュベーション混合物を、ミクロソームタンパク質(1mg/mL)、各濃度のプローブ基質(100×ストックとして)、そして試験品(各濃度で)またはPCを各アイソフォームについて適切に含むようにTris緩衝液中で調製した。37℃での5分間のプレインキュベーション後、NADPH再生系(NRS)を添加して反応を開始し、そしてサンプルを37℃にて、以下の時間にわたってインキュベートした:フェナセチン(CYP1A6)について30分間、クマリン(CYP2A6)について20分間、トルブタミド(CYP2C9)について40分間、S−メフェニトイン(CYP2C19)について30分間、デキストロメトルファン(CYP2D6)について15分間、クロロゾキサゾン(chlorozoxazone)(CYP2E1)について20分間、そしてテストステロン(CYP3A4)について10分間。S−メフェニトインと共にインキュベートした場合を除いて、インキュベーション反応を、等しい容量のメタノールを添加して適切な時間に終了させた。S−メフェニトインと共にインキュベートした場合は、インキュベーション反応を、100μLの過塩素酸を添加して終結させた。全ての基質は、以前に示された通りのそれらのそれぞれのK濃度の付近に評価された。
【0179】
各インキュベーション後、P450アイソフォームの活性を、それぞれのプローブ基質について代謝の速度を測定することによって決定した。各プローブ基質についてモニタリングした代謝産物は以下の通りであった:CYP1A2についてアセトアミノフェン;CYP2A6について7−ヒドロキシクマリン;CYP2C9について4−ヒドロキシトルブタミド(4−hydroxytolbutramide);CYP2C19について4−ヒドロキシメフェニトイン;CYP2D6についてデキストロファン(dextrorphan);CYP2E1について6−ヒドロキシクロルゾキサゾン;およびCYP3A4について6β−ヒドロキシテストステロン。活性を、HPLC(In Vitro Technologies,Inc.,Baltimore.MD)を用いて分析した。
【0180】
阻害を、以下の方程式を用いて算出した:
阻害パーセント=[(ビヒクルコントロール−処置)/ビヒクルコントロール]×100。
【0181】
試験品についての阻害パーセントのデータを、表の形式で表した。各試験品濃度の記述統計学(平均および標準偏差)を算出し、次いで、阻害効力を示すために提示した。IC50値もまた、Softmax 2.6.1において4パラメーターの曲線のあてはめの方程式を用いて試験品について算出された。
【0182】
本実施例における時間、温度および濃度の尺度は、およそである。
【0183】
(B.結果)
代謝活性および阻害百分率として表される7つのアイソフォームのシトクロムP450のそれぞれについての結果を、表5〜8に示す。(−)ハロフェニル酸は、10μMおよび33μMの用量レベルで、4−ヒドロキシトルブタミド産生を阻害し(CYP2C9,IC50=11μM)、そしてまた4−ヒドロキシメフェニトイン産生を阻害した(CYP2C19)。他のCYP450アイソフォームの阻害は観察されなかった。本実験におけるCYP2C9についてのIC50が、実施例7において報告されたIC50の約3倍であった(3.6μMと比較して11μM)ことに留意すべきである。この結果は、少なくとも部分的には、実施例7においてより低い純度の(−)ハロフェニル酸(より低いee)を使用したことに起因する可能性が最も高い。
【0184】
【表5】

【0185】
【表6】

【0186】
【表7】

【0187】
【表8】

理解を明快にすることを目的として上記の発明を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲内で特定の改変が実施され得ることは明らかである。本明細書中に引用される全ての刊行物および特許文献は、各々があたかもそのように個々に表示されたのと同じ程度に全ての目的でその全体が本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、ラセミ体ハロフェニル酸(halofenic acid)、(−)ハロフェニル酸および(+)ハロフェニル酸によるシトクロムP450 2C9(CYP2C9)活性の阻害を示す。トルブタミドの水酸化を、漸増濃度のこれらの化合物の存在下で測定した。ラセミ体ハロフェニル酸は、CYP 2C9活性を0.45μMのIC50で阻害し、そして(+)ハロフェニル酸は、CYP 2C9を0.22μMのIC50で阻害した。対照的に、(−)ハロフェニル酸は、見かけのIC50が3.5μMであって、20分の1の低い効力であった。
【図2】図2は、糖尿病ob/obマウスにおける、ラセミ体ハロフェネート、ハロフェネートの(−)エナンチオマーまたはハロフェネートの(+)エナンチオマーの250mg/kgでの単回経口用量後のグルコース低下の時間経過を示す。(−)エナンチオマーは、最も迅速な作用開始を示し、そして作用の持続時間が最も長かった。グルコースにおける減少は、3時間〜24時間の全ての点についてコントロールと比較して、(−)エナンチオマーについて有意であった(p<0.05)。ラセミ体ハロフェネートおよび(+)エナンチオマーもまた、4.5〜24時間の全ての点について有意であった(p<0.05)。24時間での血漿グルコースは、(+)エナンチオマーおよびラセミ化合物のそれぞれで処置した動物についての306±28.5mg/dlおよび259.3±20.8mg/dlと比較して、(−)エナンチオマーで処置した動物において217±16.4mg/dlであった。ビヒクル処置コントロールにおける血漿グルコースは、24時間で408±16.2mg/dlであった。(−)エナンチオマーは、3時間および24時間の両方の時点で(+)エナンチオマーよりも有効であり、そして(+)エナンチオマーとは有意に異なっていた(p<0.05)。
【図3】図3は、ラセミ体ハロフェネートならびにハロフェネートの(−)および(+)の両方のエナンチオマーの、毎日の経口投与後に糖尿病ob/obマウスにおいて血漿グルコースを低下させる能力を示す。このラセミ化合物を250mg/kg/日の用量で与え、そしてこれらのエナンチオマーを125mg/kg/日および250mg/kg/日の用量で与えた。コントロール動物と比較したときのグルコースレベルの有意な低下が、ラセミ体ハロフェネートおよび(−)および(+)の両方のエナンチオマーで処置した動物において観察された。(−)および(+)のエナンチオマーを用いた低い用量(125mg/kg)の処置では、(−)エナンチオマーは6時間、27時間および30時間で有意であったが、一方、(+)エナンチオマーは6時間および27時間でしか有意でなかった。
【図4】図4は、毎日の経口投与の後の糖尿病ob/obマウスにおける、ラセミ体ハロフェネートならびにハロフェネートの(−)および(+)の両方のエナンチオマーで処置したob/obマウスにおける血漿インスリンレベルを示す。ラセミ化合物を250mg/kg/日の用量で与え、そしてエナンチオマーを125mg/kg/日および250mg/kg/日の用量で与えた。ビヒクルコントロールと比較して、インスリンは、ハロフェネートのラセミ化合物またはいずれかのエナンチオマーのいずれかで処置した動物において低かった。高用量では、最大の程度の減少した血漿インスリンは、2日間の処置後にハロフェネートの(−)および(+)の両方のエナンチオマーで処置した動物において27時間および30時間で示された。
【図5】図5は、ビヒクル、250mg/kg/日のラセミ体ハロフェネート、125mg/kg/日および250mg/kg/日のハロフェネートの(−)エナンチオマー、または125mg/kg/日または250mg/kg/日のハロフェネートの(+)エナンチオマーでの5日間の処置後のob/obマウスにおける一晩絶食後の血漿グルコースレベルを示す。コントロール動物は、血漿グルコースレベルが185.4±12.3mg/dlと、高血糖であった。ハロフェネートで処置した動物は全て、グルコースにおける有意な(p<0.01)低下を示した。高用量の両方のエナンチオマーは、(−)エナンチオマー処置動物および(+)エナンチオマー処置動物のそれぞれについて127.3±8.0mg/dlおよび127.2±9.7mg/dlと、グルコースをほぼ正常レベルまで低下させた。
【図6】図6は、ビヒクル、250mg/kg/日のラセミ体ハロフェネート、125mg/kg/日および250mg/kg/日の(−)エナンチオマー、または125mg/kg/日もしくは250mg/kg/日のハロフェネートの(+)エナンチオマーで5日間にわたって処置したob/obマウスにおける一晩の絶食の血漿インスリンレベルを示す。有意に低い血漿インスリンが、両方の用量の(−)エナンチオマーを受けた動物において観察された。低用量のハロフェネートの(+)エナンチオマーは、血漿インスリンを低下させなかったが、高用量の(+)エナンチオマーは、血漿インスリンにおける低下をもたらした。
【図7A】図7Aは、インスリン抵抗性およびグルコース寛容減損の1モデルであるZucker脂肪ラットにおける、経口グルコース負荷後の血漿グルコースレベルを示す。これらの動物を、ビヒクルコントロール、ラセミ体ハロフェネート、(−)ハロフェネートまたは(+)ハロフェネートのいずれかで、グルコース負荷の5.5時間前に処置した。ラセミ化合物を100mg/kgで与え、そして両方のエナンチオマーを50mg/kgおよび100mg/kgで与えた。コントロール動物では、負荷の30分後にグルコースが>250mg/dlに上昇した。このことは、グルコース寛容減損を明らかに示す。血漿グルコースは、ラセミ体ハロフェネートを与えたラットにおいて負荷後、特に30分間〜60分間の間で低下した。100mg/kgで(−)ハロフェネートを与えた動物は、全ての処置動物のうちで最大の程度のグルコース低下を有した。(−)ハロフェネートで処置した動物は、ラセミ化合物または(+)ハロフェネートで処置したラットと比較してより低いグルコースレベルを有し、これは90分間〜120分間持続した。
【図7B】図7Bは、各群の動物について増分曲線下面積(AUC)を比較する。有意な変化(p<0.05)は、両方の用量の(−)ハロフェネートで処置した群において示された。AUCはコントロールと比較して他の群においてより低かったが、その変化は有意ではなかった。
【図8】図8は、ビヒクルコントロール、(−)ハロフェネート(50mg/kg/日)または(+)ハロフェネート(50mg/kg/日)のいずれかで5日間にわたって処置したZucker脂肪ラットにおける短いインスリン寛容試験の結果を示す。この試験は、試験動物のインスリン感受性の尺度であり、グルコースにおける減少の傾きは、インスリン応答性の直接的な尺度を表す。(−)ハロフェネート処置動物は、ビヒクル処置動物(p<0.01)または(+)ハロフェネート処置動物(p<0.05)よりも有意にインスリン感受性が高かった。
【図9A】図9Aは、それぞれ、50mg/kg/日、25mg/kg/日または25mg/kg/日でのラセミ体ハロフェネート、(−)エナンチオマーまたは(+)エナンチオマーで13日間にわたって処置したZucker糖尿病脂肪ラットにおける血漿コレステロールレベルを、ビヒクル処置コントロール群と比較して示す。(−)エナンチオマー処置動物およびラセミ化合物処置動物の両方において、血漿コレステロールは処置によって減少した。(+)エナンチオマー処置動物におけるコレステロールは比較的一定なままであり、一方、コレステロールはコントロール動物において上昇した。
【図9B】図9Bは、コントロール群と処置群との間の血漿コレステロールの差を比較する。(−)エナンチオマーは、試験した種のうちで最も活性であった。
【図10A】図10Aは、ハロフェネートの(−)エナンチオマーまたは(+)エナンチオマーのいずれかで12.5mg/kg/日(低用量)または37.5mg/kg/日(高用量)のいずれかで14日間にわたって処置したZucker糖尿病脂肪ラットにおける血漿コレステロールレベルを、ビヒクル処置コントロール群と比較して示す。高用量で処置した動物では、(−)エナンチオマーは、最大程度のコレステロール低下をもたらした。
【図10B】図10Bは、コントロール群と処置群との間の血漿コレステロールにおける差を比較する。低用量にて7日後に(−)エナンチオマーで処置した動物と、高用量にて7日後および14日後の両方で処置した動物との間には有意差が存在した。(+)エナンチオマーは、有意差を高用量での7日間の処置後にのみ示した。
【図11A】図11Aは、(−)エナンチオマーまたは(+)エナンチオマーのいずれかで12.5mg/kg/日(低用量)または37.5mg/kg/日(高用量)のいずれかで処置したZucker糖尿病脂肪ラットにおける血漿トリグリセリドレベルを、ビヒクル処置コントロール群と比較して示す。高用量の(−)エナンチオマーで処置した動物は、全ての処置群のうちの最低のトリグリセリドレベルを有した。
【図11B】図11Bは、コントロール群と処置群との間での血漿トリグリセリドにおける差を比較する。7日目に、高用量の(+)および(−)の両方のエナンチオマーは、血漿トリグリセリドの有意な低下を示した。
【図12】図12は、ビヒクル、(−)ハロフェネートまたは(+)ハロフェネートで0日目、2日目および3日目に処置したZucker糖尿病脂肪ラットにおける血漿グルコースレベルを示す。(−)ハロフェネートでの処置は、血漿グルコース濃度を、ビヒクル処置動物と比較して有意に低下させた。
【図13】図13は、コントロール群のC57BL/6J db/dbマウスにおける血漿グルコース濃度を、(−)ハロフェネートで処置した群における血漿グルコース濃度に対して示す。コントロール群における血漿グルコースレベルは、動物の加齢に伴って徐々に増加し、一方、(−)ハロフェネート処置群における血漿グルコースレベルの増加は予防されたかまたは有意に遅延した。
【図14】図14は、コントロール群のC57BL/6J db/dbマウスにおける血漿インスリンレベルを、(−)ハロフェネートで処置した群における血漿インスリンレベルに対して示す。(−)ハロフェネートでの処置は、血漿インスリン濃度を維持し、一方、コントロール群における血漿インスリンは徐々に減少した。
【図15】図15は、コントロール群のC57BL/6J db/dbマウスにおける非糖尿病マウスの百分率を、(−)ハロフェネートで処置した群における百分率に対して示す。(−)ハロフェネート処置群における約30%のマウスは糖尿病を発症せず(血漿グルコースレベル<250mg/dl)、一方、コントロール群の全ては10週齢までに糖尿病を発症した。
【図16】図16は、コントロール群のC57BL/6J db/dbマウスにおける血漿トリグリセリドレベルを、(−)ハロフェネートで処置した群における血漿トリグリセリドレベルに対して示す。(−)ハロフェネートでの処置は高脂血症を緩和し、一方、コントロール群においては緩和は存在しなかった。
【図17】図17は、オキソン酸誘発性高尿酸血症ラットにおける血漿尿酸レベルに対する、(−)ハロフェネートおよび(+)ハロフェネートの効果を示す。(−)ハロフェネートの経口投与は、血漿尿酸レベルを有意に減少させた。(+)ハロフェネートはまた、血漿尿酸レベルを低下させたが、これは統計的に有意ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において高尿酸血症を処置するための医薬の調製における、式Iの化合物
【化1−1】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩の使用であって、ここで、
Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そして
各Xは、独立してハロゲンであり;
該(−)立体異性体は、該化合物の(+)立体異性体を実質的に含まない、使用。
【請求項2】
前記化合物が、式IIの化合物
【化1−2】

であり、ここで、
が、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記化合物が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬が、静脈内注入、経皮送達または経口送達のために処方される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
投与される量が、1日あたり約100mg〜約3000mgである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
投与される量が、1日あたり約500mg〜約1500mgである、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
投与される量が、1日あたり1kgあたり約0.1mg〜約250mgである、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記(−)立体異性体が、(−)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)酢酸またはその薬学的に受容可能な塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも80%のエナンチオマー過剰率で使用される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも98%のエナンチオマー過剰率で使用される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
高尿酸血症を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、薬学的に受容可能なキャリアおよび治療有効量の式Iの化合物
【化1−3】

の(−)立体異性体または薬学的に受容可能なその塩を含み、ここで、
Rは、ヒドロキシ、低級アラルコキシ、ジ−低級アルキルアミノ−低級アルコキシ、低級アルカンアミド低級アルコキシ、ベンズアミド−低級アルコキシ、ウレイド−低級アルコキシ、N’−低級アルキル−ウレイド−低級アルコキシ、カルバモイル−低級アルコキシ、ハロフェノキシ置換低級アルコキシ、カルバモイル置換フェノキシ、カルボニル−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ−低級アルキルアミノ、ハロ置換低級アルキルアミノ、ヒドロキシ置換低級アルキルアミノ、低級アルカノールイルオキシ置換低級アルキルアミノ、ウレイドおよび低級アルコキシカルボニルアミノからなる群より選択されるメンバーであり;そして
各Xは独立してハロゲンであり;
該化合物の該(−)立体異性体は、該化合物の(+)立体異性体を実質的に含まない、薬学的組成物。
【請求項12】
治療有効量の式IIの化合物
【化1−4】

の(−)立体異性体を含み、ここで、
が、フェニル−低級アルキル、低級アルカンアミド−低級アルキルおよびベンズアミド−低級アルキルからなる群より選択されるメンバーである、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記(−)立体異性体が、(−)2−アセトアミドエチル4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)アセテートである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
錠剤またはカプセル剤の形態である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
が、(CHNHAc、(CHCH、(CHN(CH、(CHNHCOPh、CHCONHおよびCHCON(CHからなる群より選択されるメンバーである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
がHである、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも80%のエナンチオマー過剰率で存在する、請求項11〜16のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも98%のエナンチオマー過剰率で存在する、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
高尿酸血症を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、(−)立体異性体である(−)4−クロロフェニル−(3−トリフルオロメチルフェノキシ)酢酸またはその薬学的に受容可能な塩もしくはエステルプロドラッグを含み、該化合物の該(−)立体異性体は、該化合物の(+)立体異性体を実質的に含まない、薬学的組成物。
【請求項20】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも80%のエナンチオマー過剰率で存在する、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記(−)立体異性体が、前記(+)立体異性体に対して少なくとも98%のエナンチオマー過剰率で存在する、請求項20に記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−99784(P2007−99784A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13175(P2007−13175)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【分割の表示】特願2001−501203(P2001−501203)の分割
【原出願日】平成12年6月2日(2000.6.2)
【出願人】(501467038)メタボレックス, インコーポレイテッド (8)
【出願人】(501467326)ダイアテックス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】