説明

インタークーラ冷却用ダクト

【課題】エンジンルームのスペース制約に関わらず、インタークーラ冷却用ダクトを装着した場合においても、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能であるインタークーラ冷却用ダクトを提供することを目的とする。
【解決手段】エンジンフード18に配設され、エンジンルーム14の外部からエンジン直上に配設されたインタークーラ16へ空気を導入するインタークーラ冷却用ダクト10のエンジンルーム14側の壁部22Bを、吸音材で構成する。これにより、エンジンルーム14のスペース制約に関わらず、エンジン騒音を吸収する効果を向上させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタークーラ冷却用ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
インタークーラがエンジンの直上に搭載され、エンジンフードにインタークーラ冷却用ダクトが装着された車両において、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音を抑制する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。また、エンジン騒音を吸収するためのフードサイレンサをエンジンフードに装着することが従来から行われている。
【0003】
ここで、インタークーラ冷却用ダクトとフードサイレンサとを備える車両では、エンジンルームのスペース制約上、インタークーラ冷却用ダクトのエンジンルーム側に、エンジン騒音を吸収するためのフードサイレンサを装着することが難しい場合が有り、このような場合には、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果が低下していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−83185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、エンジンルームのスペース制約に関わらず、インタークーラ冷却用ダクトを装着した場合においても、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能であるインタークーラ冷却用ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のインタークーラ冷却用ダクトは、エンジンフードのエンジン側に配設されて、エンジンルームの外部から前記エンジンルームに配設されたインタークーラへ空気を導入し、少なくとも前記エンジン側の壁部が吸音材で構成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載のインタークーラ冷却用ダクトでは、少なくともエンジン側の壁部が吸音材で構成されており、該壁部によってエンジン騒音が吸収されるようになっている。これによって、インタークーラ冷却用ダクトとエンジンとの間に吸音材を設置するための専用のスペースを設けることなく、エンジン騒音の吸収効果を向上させることが可能となるので、エンジンルームのスペース制約に関わらず、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能となる。
【0007】
請求項2に記載のインタークーラ冷却用ダクトは、請求項1に記載のインタークーラ冷却用ダクトであって、ダクト内を複数の空気流路に仕切る仕切り部材を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のインタークーラ冷却用ダクトでは、ダクト内を複数の空気流路に仕切る仕切り部材によって、吸音材により構成されたダクト下側の壁部の法線に対して所定角度以上傾斜した音波を遮断することで、ダクト下側の壁部を透過してダクト内に進入する音波の波長を低減したい周波数の波長に制御している。
【0009】
これによって、ダクト内に仕切り部材を設けない場合と比較して、車両下側の壁部の法線に対して平行に該壁部を透過してダクト内に進入する音波と、車両下側の壁部の法線に対して傾斜して該壁部を透過してダクト内に進入する音波との波長の差を小さくできる。
【0010】
従って、所望の周波数帯の音波に対する吸音効果を向上させることを目的として、車両下側の壁部と車両上側の壁部との距離を、所望の周波数帯の音波の波長に応じて設定した場合には、ダクト内に仕切り部材を設けない場合と比較して、所望の周波数帯の音波に対する吸音効果を向上できる。
【0011】
請求項3に記載のインタークーラ冷却用ダクトは、エンジンフードのエンジン側に配設されて、エンジンルームの外部から前記エンジンルームに配設されたインタークーラへ空気を導入し、吸音材製の管材で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載のインタークーラ冷却用ダクトは、吸音材製の管材で構成されており、壁部の全域でエンジン騒音を吸収する。これによって、エンジンルームのスペース制約に関わらず、インタークーラ冷却用ダクトを通してエンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果をより一層向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、エンジンルームのスペース制約に関わらず、インタークーラ冷却用ダクトを装着した場合においても、エンジンルーム外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能であるインタークーラ冷却用ダクトを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明のインタークーラ冷却用ダクトの一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
【0015】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態であるインタークーラ冷却用ダクト10を備える車両の前部には、インタークーラ付きターボチャージャーを搭載するエンジン(図示省略)を収容するエンジンルーム14が配設されている。
【0017】
エンジンルーム14内では、インタークーラ16が、エンジンの直上に配設されており、インタークーラ冷却用ダクト10が、エンジンルーム14を開閉するエンジンフード18のエンジン側の壁面に配設されている。
【0018】
インタークーラ冷却用ダクト10は、エンジンフード18のエンジン側の壁面の車幅方向中央部に配設され、インタークーラ冷却用ダクト10の車幅方向両側には、フードサイレンサ20が配設されている。このフードサイレンサ20は、厚さ数十mm程度の矩形板状の吸音材であり、エンジンフード18に係止や接着等により取付けられている。なお、フードサイレンサ20の材料としては、グラスウール、フェルト、PET繊維等の繊維質や、メラミン、ウレタン等の発泡材等の吸音性能を有する従来公知の種々の材料を適用可能である。
【0019】
また、図2に示すように、インタークーラ冷却用ダクト10は、エンジンフード18の車両前側端部からインタークーラ16の車両上方(直上)まで延在しており、車両前側端部に車両前側向きに開口した空気入口10Aを形成され、インタークーラ16の直上に位置する車両後側端部に車両下向きに開口した空気出口10Bを形成されている。また、エンジンフード18の車両前側端部には、空気入口10Aに面して開口(図示省略)が形成されている。このため、車両12の走行中には、インタークーラ冷却用ダクト10によって、図中矢印Aで示すように、エンジンルーム14の外部からインタークーラ16へ空気が導入される。
【0020】
ここで、インタークーラ冷却用ダクト10は、空気入口10Aからインタークーラ16の直上へ空気を導く空気導入部22と、空気導入部22によりインタークーラ16の直上へ導かれた空気を空気出口10Bからインタークーラ16へ吹き出す空気吹出し部24とで構成されている。
【0021】
ここで、空気導入部22の構造について説明する。
【0022】
図3、図4に示すように、空気導入部22の外壁部は、車両前後方向から見た断面が車幅方向を長手方向とする矩形状となっており、空気導入部22の内部には、複数の仕切り部材としての仕切り板26が車幅方向に沿って所定間隔で配列されている。各仕切り板26は、空気導入部22の車両前側端部から車両後側端部まで延びており、空気導入部22の内部空間を、車幅方向に並んだ複数の空気流路23に仕切っている。
【0023】
ここで、空気導入部22の外壁部は、車両上側の壁部22Aを構成する基板28と、車両下側の壁部22B及び車幅両側の壁部22Cを構成する吸音性壁部30とで構成されている。基板28は、エンジンフード18の骨格部分に固定される、車両前後方向を長手方向とする矩形状の樹脂製の板材である。また、吸音性壁部30は、グラスウール、フェルト、PET繊維等の繊維質やウレタン、メラミン等の発泡材等の吸音材で形成され、車両前後方向から見て断面ハット状に構成されており、車両上下方向両端部に形成されたフランジ部30Aを基板28に固定されている。なお、吸音性壁部30を形成する吸音材は、空気を透過しない程度の密度に圧縮されている。
【0024】
また、空気導入部22の断面内には、PPT(ポリプロピレンテレフタレート)等の樹脂で成形された形状保持部材32が配設されている。この形状保持部材32は、車幅方向に所定間隔で形成された複数の仕切り板26と、複数の仕切り板26の車幅方向両側に形成され空気導入部22の車幅方向両側の内壁を構成する壁部34と、基板28に固定されて空気導入部22の車両上側の内壁を構成する壁部36とが一体で形成された構成となっている。この形状保持部材32は、複数の仕切り板26と壁部34とを、空気導入部22の車両下側の壁部22Bに当接させて、壁部22Bの形状を保持している。
【0025】
また、図5に示すように、仕切り板26の壁部36(もしくは基板28)からの高さ、即ち吸音材により構成される壁部22Bの壁部36からの高さLは、エンジン騒音の周波数帯の音波の波長の1/4に設定されている。また、仕切り板26の間隔は、各空気流路23内での空気抵抗が十分に小さくなるように設定されている。
【0026】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0027】
図1乃至図3に示すように、本実施形態では、インタークーラ冷却用ダクト10のエンジン側(車両下側)の壁部22Bが吸音材で構成されており、吸音材で構成された壁部22Bにエンジン騒音が吸収されるようになっている。
【0028】
これによって、インタークーラ冷却用ダクト10とエンジンとの間に吸音材を設置するための専用のスペースを設けることなく、エンジン騒音の吸収効果を向上させることが可能となるので、エンジンルーム14のスペース制約に関わらず、インタークーラ冷却用ダクト10を装着した場合においても、エンジンルーム14外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能となる。
【0029】
また、インタークーラ冷却用ダクト10のエンジンフード18からの高さを下げることなく、インタークーラ冷却用ダクト10の車両上下方向の投影領域に吸音材を配置することが可能となっている。従って、インタークーラ冷却用ダクト10によるインタークーラ16への空気の導入量を低下させることなく、インタークーラ冷却用ダクト10を通してエンジンルーム14外に放射されるエンジン騒音の抑制効果を向上させることが可能である。
【0030】
また、図5に示すように、吸音材により構成される壁部22Bの壁部36からの高さLを、エンジン騒音の周波数帯の音波の波長の1/4に設定したことによって、壁部22Bを透過して空気導入部22の内部空間に進入するエンジン騒音の振れ幅が最大となる位置に、壁部22を配置できるので、壁部22によるエンジン騒音の抑制効果を向上できる。
【0031】
ここで、図6に示すように、空気導入部22の内部空間に仕切り板26を設けない場合には、壁部22Bの法線に対して所定角度以上車幅方向に傾斜した音波(実線矢印で図示)が壁部22を透過して空気導入部22の内部空間に進入する。このような音波の波長L1と、壁部22Bの法線に対して平行に壁部22Bを透過して空気導入部22の内部空間に進入する音波(点線矢印で図示)との波長Lの差が大きくなる。従って、壁部22を透過して空気導入部22の内部空間に進入したエンジン騒音の中に、振れ幅が最大となる位置と壁部22Bとの位置ずれが大きくなるものが存在してしまうので、エンジン騒音の抑制効果が低下する。
【0032】
これに対して、本実施形態では、図7に示すように、空気導入部22の内部空間を車幅方向に並んだ複数の空気流路23に仕切る仕切り板26によって、壁部22Bの法線に対して所定角度以上車幅方向に傾斜した音波を遮断することができる。これによって、壁部22Bの法線に対して車幅方向に傾斜して壁部22Bを透過して空気導入部22の内部空間に進入する音波(実線矢印で図示)の波長L2と、壁部22Bの法線に対して平行に壁部22Bを透過して空気導入部22の内部空間に進入する音波(点線矢印で図示)の波長Lとの差を、仕切り板26を設けない場合と比較して小さくできる。即ち、壁部22Bを透過してダクト内に進入する音波の波長を、低減したい周波数の波長に制御することが可能である。従って、壁部22を透過して空気導入部22の内部空間に進入したエンジン騒音の中で、振れ幅が最大となる位置と壁部22Bとの位置ずれが最も大きくなるものでも、仕切り板26を設けない場合と比較すると格段に小さくなるので、エンジン騒音の抑制効果を向上できる。
【0033】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0034】
例えば、本実施形態では、インタークーラ冷却用ダクト10の内部空間を仕切り板26により複数の空気流路23に仕切ったが、本発明の実施形態としては、図8に示すように、内部空間を仕切る仕切り板が設けられていない構成等も挙げられる。この構成の場合、ダクト内の空気抵抗を低減できるという効果を有する。
【0035】
また、本実施形態では、インタークーラ冷却用ダクト10の空気導入部22のエンジン側の壁部と車幅方向両側の壁部とを吸音材により構成したが、少なくともエンジン側の壁部が吸音材により構成されていれば良く、逆に、インタークーラ冷却用ダクト10の空気導入部22の全体が吸音材により構成されていても良い。例えば、後者の場合は、図9に示すように、吸音材製の円筒形状のチューブ50を車幅方向に複数配列してブラケット52により基板28に固定した構成等が挙げられる。この構成の場合、空気導入部22の壁部の全域でエンジン騒音を吸収することができるので、エンジン騒音を吸収する効果をより一層向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの車幅方向から見た断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの車両前後方向から見た断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの車両前後方向から見た分解断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの車両下側の壁部22Bの壁部36からの高さとエンジン騒音の波長との関係を説明するための概略図である。
【図6】インタークーラ冷却用ダクトの空気導入部の内部空間に仕切り板を設けない場合に、空気導入部の車両下側の壁部を透過して内部空間に進入する音波を説明するための概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトにおいて、空気導入部の車両下側の壁部を透過して内部空間に進入する音波を説明するための概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るインタークーラ冷却用ダクトの変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 インタークーラ冷却用ダクト
14 エンジンルーム
18 エンジンフード
22A 壁部(エンジンルーム側の壁部)
26 仕切り板(仕切り部材)
50 チューブ(管材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンフードのエンジン側に配設されて、エンジンルームの外部から前記エンジンルームに配設されたインタークーラへ空気を導入し、少なくとも前記エンジン側の壁部が吸音材で構成されていることを特徴とするインタークーラ冷却用ダクト。
【請求項2】
ダクト内を複数の空気流路に仕切る仕切り部材を有することを特徴とする請求項1に記載のインタークーラ冷却用ダクト。
【請求項3】
エンジンフードのエンジン側に配設されて、エンジンルームの外部から前記エンジンルームに配設されたインタークーラへ空気を導入し、吸音材製の管材で構成されていることを特徴とするインタークーラ冷却用ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−126729(P2008−126729A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311230(P2006−311230)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】