説明

インターネット・通信網連携アプリケーション提供システムおよびインターネット・通信網連携方法

【課題】通信網と連携するインターネット・通信網連携アプリケーションの起動遅延時間を減少させることができる。
【解決手段】クライアント20は、連携RIA12を実行するウェブブラウザ21を備える。ウェブブラウザ21は、クライアント20を、SIPコンポーネントB31が動作しているか否かを判定する手段と、SIPコンポーネントB31が動作していない場合にSIPコンポーネントA13を連携アプリケーション配信ウェブサーバ10からダウンロードする手段と、ダウンロードしたSIPコンポーネントA13をウェブブラウザ21に実行させる手段と、実行されたSIPコンポーネントA13を介してSIPネットワーク50と通信を行う手段と、して機能させるための連携RIA12をダウンロードする。アプリケーションランタイム(RIA)23は、ウェブブラウザ21がダウンロードした連携RIA12を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザがウェブブラウザによってアプリケーションを実行するインターネットアプリケーションシステムに係り、特に、インターネットとSIP(Session
Initiation Protocol)ネットワーク等の通信網との連携を可能とするインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムおよびインターネット・通信網連携方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的な普及およびブロードバンド化により、インターネット上の様々なサービスをウェブブラウザによって利用することが一般的になっている。ユーザは、ウェブブラウザを用いてインターネットのウェブサーバ上にあるHTML(Hyper
Text Markup Language)によって記述されたウェブページにアクセスし、インターネットサービスを利用する。近年は、JavaScript(登録商標)などウェブブラウザ上のスクリプトエンジンで実行されるスクリプト言語や、プラグインによってFlash(登録商標)、Java(登録商標)などの実行環境により、単なるHTML以上の機能を備えたリッチインターネットアプリケーションも広く利用されている。
【0003】
一方、2008年3月に商用サービスが開始された次世代の通信網であるNGN(Next Generation Network)は、インターネットにはない帯域保証型などの特徴を生かしたサービスを提供することが可能であり、インターネットと連携することにより、それぞれの特徴を生かした連携サービスが提供可能であると期待されている。NGNの通信機能を利用するためには、次世代ネットワークの主要プロトコルであるSIPによるシグナリングを行う必要がある。
【0004】
そのようなSIPネットワークとインターネットの連携サービスを提供するリッチインターネットアプリケーション(以下、連携RIAという)を、SIPに関する専門知識を持たない既存のインターネット系開発者でも容易に可能とするための技術が提案されている(例えば、非特許文献1および非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】西村豪生、大西浩行、「Web−SIP連携リッチインターネットアプリケーションの実現方式に関する一考察」、信学総大、B−19−17、松山、2009年5月
【非特許文献2】西村豪生、大西浩行、飯尾政美、「Web−SIP連携リッチインターネットアプリケーションにおけるSIP通信機能部の実装と評価」、信学ソ大、B−19−6、新潟、2009年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1および非特許文献2には、連携RIAだけでなく、SIPコンポーネントもリッチインターネットアプリケーションとして実行時に端末に動的に配備する手法の実現方式として2つの方法が記載されている。1つは、SIPコンポーネントを連携RIAが埋め込まれたHTMLに埋め込む方式である。もう1つは、SIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式である。
【0007】
SIPコンポーネントを連携RIAが埋め込まれたHTMLに埋め込む方式では、毎回SIPコンポーネントを起動するため中程度の起動遅延が生じる。一方、SIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式では初回実行時はブラウザ外のアプリケーションであるSIPコンポーネントを起動するため大きな起動遅延が生じるが、二回目以降の起動時は既に実行中のSIPコンポーネントを再利用するため、小起動遅延での実行が可能である。そのため、動的にSIPコンポーネントを端末に配備する方式を用いてリアルタイムサービスを提供する場合、二回目以降の実行時の遅延時間が小さいSIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式が最適である。
【0008】
しかしながら、SIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式では、初回実行時には、SIPネットワークと連携するリッチインターネットアプリケーションの起動遅延時間が増加するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、通信網と連携するリッチインターネットアプリケーションの起動遅延時間をより減少させることができるインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムおよびインターネット・通信網連携方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インターネットおよび通信網に接続されたクライアント装置と、前記インターネットに接続され、前記クライアント装置のウェブブラウザにおいて実行されるインターネットアプリケーションと第1の通信アプリケーションとを記憶する連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置と、前記クライアント装置のアプリケーションランタイムにおいて実行される第2の通信アプリケーションを記憶する通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置とを具備するインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、前記クライアント装置は、当該クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作しているか否かを判定する手段と、前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第1の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第1の通信アプリケーションを前記ウェブブラウザに実行させる手段と、前記実行された第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段と、して機能させるための前記インターネットアプリケーションを前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置からダウンロードするダウンロード部と、前記ダウンロード部がダウンロードした前記インターネットアプリケーションを実行する実行部と、を備えることを特徴とするインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムである。
【0011】
この構成によれば、第2の通信アプリケーションがアプリケーションランタイムで動作していない場合、第1の通信アプリケーションを起動させて第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行うため、通信網と連携するインターネット・通信網連携アプリケーションの起動遅延時間をより減少させることができる。
【0012】
また、本発明のインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第2の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第2の通信アプリケーションを前記アプリケーションランタイムに実行させる手段と、して機能させることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う前に、予め、第2の通信アプリケーションをダウンロードし、ダウンロードした第2の通信アプリケーションをアプリケーションランタイムに実行させることができる。
【0014】
また、本発明のインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作している場合に、当該第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段として機能させることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、予めアプリケーションランタイムで動作している第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行うことができるため、通信網と連携するインターネット・通信網連携アプリケーションの起動遅延時間をより減少させることができる。
【0016】
また、本発明は、インターネットおよび通信網に接続されたクライアント装置と、前記インターネットに接続され、前記クライアント装置のウェブブラウザにおいて実行されるインターネットアプリケーションと第1の通信アプリケーションとを記憶する連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置と、前記クライアント装置のアプリケーションランタイムにおいて実行される第2の通信アプリケーションを記憶する通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置とを具備するインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、前記クライアント装置のダウンロード部が、当該クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作しているか否かを判定する手段と、前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第1の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第1の通信アプリケーションを前記ウェブブラウザに実行させる手段と、前記実行された第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段と、して機能させるための前記インターネットアプリケーションをダウンロードするステップと、前記クライアント装置の実行部が、前記ダウンロードしたインターネットアプリケーションを実行するステップと、を含むことを特徴とするインターネット・通信網連携方法である。
【0017】
また、本発明のインターネット・通信網連携方法において、前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記第2の通信アプリケーションを前記通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置からダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第2の通信アプリケーションを前記アプリケーションランタイムに実行させる手段と、して機能させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のインターネット・通信網連携方法において、前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作している場合に、当該第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第2の通信アプリケーションがアプリケーションランタイムで動作していない場合、第1の通信アプリケーションを起動させて第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行うため、通信網と連携するインターネット・通信網連携アプリケーションの起動遅延時間をより減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの初回実行時の手順を示したシーケンス図である。
【図3】本実施形態におけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの二回目以降の実行時の手順を示したシーケンス図である。
【図4】本実施形態におけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの実行手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に、実施形態の概要を述べる。本実施形態によるインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいては、SIP通信アプリケーションと、ブラウザ上でユーザインタフェースを提供するリッチインターネットアプリケーションとを分離する。ウェブ系開発者は、リッチインターネットアプリケーション部のみを従来から持つウェブ系の開発知識のみを用いて実装する。SIP通信アプリケーションはSIPの専門知識を持った開発者によって実装される。リッチインターネットアプリケーション内でSIPネットワークとの連携を行いたい場合には、SIP通信アプリケーションが提供するインタフェース(API:Application Program Interface)経由でシグナリングをSIP通信アプリケーションに依頼する。また、リッチインターネットアプリケーションとSIP通信アプリケーションを一つのHTMLに埋め込むことで、HTMLに記述されたスクリプト言語を両者の通信インタフェースとして用いる。
【0022】
以下、図面を参照し、さらに詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるインターネット・通信網連携アプリケーション提供システム(以下、連携アプリケーション提供システムという)の全体の構成図である。連携アプリケーション提供システム00は、SIPネットワーク50とインターネット40とに接続されたクライアント20と、インターネット40上に存在する連携アプリケーション配信サーバ10と、インターネット40上に存在するSIPコンポーネント配信ウェブサーバ30から構成される。
【0023】
連携アプリケーション配信ウェブサーバ10は、SIPネットワーク50とインターネット40双方と連携するサービスを提供するウェブサイトである。連携アプリケーション配信ウェブサーバ10には、ウェブサイトの内容が記述されたHTML11と、連携サービスを提供するリッチインターネットアプリケーションである連携RIA12と、SIP通信機能を持ったリッチインターネットアプリケーションであるSIPコンポーネントA13とが記憶されている。
【0024】
SIPコンポーネントA13は、SIP通信機能を共通コンポーネントとして分離したものである。連携RIA12が、SIPコンポーネントA13が提供するAPI経由でSIPネットワーク50との連携を依頼すると、SIPコンポーネントA13はSIPネットワーク50上の対向SIP端末51とSIPメッセージを交換することによって、連携RIA12が必要なSIP通信を代行する。
【0025】
SIPコンポーネント配信ウェブサーバ30は、共通コンポーネントであるSIP通信機能をもったリッチインターネットアプリケーションであるSIPコンポーネントであるSIPコンポーネントB31を提供するウェブサーバである。SIPコンポーネントB31は、SIPコンポーネントA13が提供するAPIと論理的に同等のAPIを提供しており、連携RIA12が必要なSIP通信を代行する。連携RIA12はSIPコンポーネントA13またはSIPコンポーネントB31のどちらのAPIを使っても必要なSIP通信を行うことが出来る。
【0026】
クライアント20は、ウェブブラウザ21とアプリケーションランタイム(SIP−B)25とを具備した端末である。ウェブブラウザ21はウェブサイトへのアクセス機能を有し、URLを入力することで特定のウェブサイトへアクセスし、そのウェブサイトのコンテンツをダウンロードして端末に表示する。ウェブブラウザ21は、HTML11に記述されたスクリプトを実行するスクリプト実行エンジン22と、リッチインターネットアプリケーションを実行するアプリケーションランタイムを具備する。アプリケーションランタイムは、連携RIA12を実行するためのランタイムエンジンであるアプリケーションランタイム(RIA)23と、SIPコンポーネントA13を実行するためのアプリケーションランタイム(SIP−A)24とから構成される。アプリケーションランタイム(SIP−B)25はブラウザ外で実行されるリッチインターネットアプリケーションのランタイムエンジンであり、SIPコンポーネントB31を実行するために用いられる。
【0027】
図1に示す例では、アプリケーションランタイム(RIA)23とアプリケーションランタイム(SIP−A)24とは別のランタイムエンジンとして記述されているが、これが同一であってもかまわない。その場合は、同一のアプリケーションランタイム上で連携RIA12とSIPコンポーネントA13とは実行されるが、両者はそれぞれ独立した異なるインスタンスとして実行されるため、リッチインターネットアプリケーションのふるまいは二つのアプリケーションランタイムがある場合と論理的に同一である。
【0028】
次に、本実施形態における連携アプリケーションのダウンロード、実行手順について図を参照して説明する。図2は、本実施形態において、連携アプリケーション提供システムにおけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの初回実行時の手順を示したシーケンス図である。
【0029】
クライアント20はウェブブラウザ21を用いてURLを入力し、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10にアクセスする(ステップS01)。すると、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10は、HTML11をウェブブラウザ21に送信する。これにより、ウェブブラウザ21はHTML11を取得する(ステップS02)。HTML11には画面の描画情報に加えて、このサイトにはリッチインターネットアプリケーションである連携RIA12(インターネットアプリケーション)が埋め込まれているという情報が含まれている。
【0030】
ウェブブラウザ21はHTML11a(以下、クライアント20にダウンロードされたHTMLおよびアプリケーションにはサフィックスaを付ける)を解釈し、HTML11内に記述されたスクリプトをスクリプト実行エンジン22(ダウンロード部)によって実行(ステップS03)することで、そこに埋め込まれた連携RIA12をインターネット経由でダウンロードし、ブラウザ21上のアプリケーションランタイム(RIA)23(実行部)によって連携RIA12aを実行する(ステップS04〜ステップS06)
【0031】
アプリケーションランタイム(RIA)23によって実行された連携RIA12aは、SIPネットワーク50と連携するために、SIPコンポーネントのAPI呼び出しを試みる。まず、連携RIA12aは、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31a(第2の通信アプリケーション)が実行されているか否かを判定する(ステップS07)。この判定は、連携RIA12aが、アプリケーションランタイム(SIP−B)25に問い合わせ、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上で実行しているリッチインターネットアプリケーションの状態を取得することで行うことが出来る。なお、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行されているか否かの判定による遅延時間を最小化することが重要であるため、本来SIPコンポーネントB31aが使用するべきポート番号が占有されている場合は、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行されていると判定するなど、簡便な方法で行っても良い。
【0032】
SIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの初回実行時には、SIPコンポーネントB31aはアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で実行されていない。そのため、連携RIA12aは、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行されていないと判定する(ステップS08)。その後、連携RIA12aは、スクリプト実行エンジン22上で実行されているHTMLのインタフェース経由で、スクリプト実行エンジン22にSIPコンポーネントの起動を要求する(ステップS09)
【0033】
スクリプト実行エンジン22は、SIPコンポーネントの起動が要求されると、まず連携アプリケーション配信ウェブサーバ10からSIPコンポーネントA13(第1の通信アプリケーション)をインターネット40経由でダウンロードし、ブラウザ21上のアプリケーションランタイム(SIP−A)24によってSIPコンポーネントA13aを実行する(ステップS10〜ステップS12)。これは、SIPコンポーネントA13aの起動時間がSIPコンポーネントB31aの起動時間よりも短いため、SIPコンポーネントA13aを用いた方が遅延時間を最小化することができるからである。
【0034】
SIPコンポーネントA13aが起動されたことをスクリプト実行エンジン22から連携RIA12aに通知されると、連携RIA12aは、SIPコンポーネントA13aに、SIPコンポーネントA13aのAPI経由でSIP通信を依頼する(ステップS13、ステップS214)。SIPコンポーネントA13aは、適切なSIP通信の交換を行い、SIPネットワーク50上の対向SIP端末51との連携を行う(ステップS15)。
【0035】
なお、スクリプト実行エンジン22は、SIPコンポーネントの起動要求を受け付けると、SIPコンポーネントA13aだけではなく、SIPコンポーネントB31aをSIPコンポーネント配信ウェブサーバ30からインターネット40経由でダウンロードし、アプリケーションランタイム(SIP−B)25によってSIPコンポーネントB31aを実行する(ステップS16〜ステップS18)。この処理は、SIPコンポーネントA13aの起動処理(ステップS10〜ステップS12)と並行して行うことも可能である。ただし、非特許文献2によると、SIPコンポーネントB31aの起動時間はSIPコンポーネントA13aの起動時間よりも長い。そのため、SIPコンポーネントA13aの起動を優先するために、SIPコンポーネントA13aの起動処理と並行して行うのではなくSIPコンポーネントA13aの起動が完了した後に、SIPコンポーネントB31aの起動を実行する方が望ましい。
【0036】
SIPコンポーネントA13aは、ユーザが連携アプリケーション配信ウェブサーバ10によって提供されるサービスの利用を終了して、ウェブブラウザ21が別のサイトに接続する際(別サイトに遷移する際)に終了する(破棄される)。ただし、SIPコンポーネントB31aはウェブブラウザ21とは独立したアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で実行されているため、そのまま実行状態を維持する。これにより、ウェブブラウザ21が二回目以降に連携アプリケーション配信ウェブサーバにアクセスした場合には、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上で実行中のSIPコンポーネントB31aを利用することによって、SIPコンポーネントを利用するまでの遅延時間を減少させることができる。
【0037】
図3は、本実施形態において、インターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの二回目以降の実行時の手順を示したシーケンス図である。
【0038】
クライアント20はウェブブラウザ21を用いてURLを入力し、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10にアクセスする(ステップT01)。すると、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10は、HTML11をウェブブラウザ21に送信する。これにより、ウェブブラウザ21はHTML11を取得する(ステップT02)。ウェブブラウザ21はHTML11aを解釈し、HTML11内に記述されたスクリプトをスクリプト実行エンジン22によって実行(ステップT03)することで、そこに埋め込まれた連携RIA12をインターネット経由でダウンロードし、ブラウザ21上のアプリケーションランタイム(RIA)23によって連携RIA12aを実行する(ステップT04〜ステップT06)
【0039】
アプリケーションランタイム(RIA)23によって実行された連携RIA12aは、SIPネットワーク50と連携するために、SIPコンポーネントのAPI呼び出しを試みる。まず、連携RIA12aは、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行されているか否かを判定する(ステップT07)
【0040】
SIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの二回目以降の実行時には、初回実行時に起動したSIPコンポーネントB31aがアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で実行されている。そのため、連携RIA12は、アプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行されていると判定する(ステップT08)。その場合、連携RIA12はSIPコンポーネントB31aのAPI経由で、SIPコンポーネントB31aにSIP通信を依頼する。SIPコンポーネントB31aは、SIP通信を代行して対向SIP端末51との連携を行う(ステップT09、ステップT10)。
【0041】
これは、SIPコンポーネントA13aを起動し、SIPコンポーネントA13aにSIP通信を代行してもらうよりも、既に起動しているSIPコンポーネントB31aにSIP通信を代行してもらう方がSIPコンポーネントを利用するまでの遅延時間を減少させることができるからである。そのため、SIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの二回目以降の実行時には、連携RIA12aは、SIPコンポーネントA13aのダウンロードと、アプリケーションランタイム(RIA)上でのSIPコンポーネントA13aの実行は行わない。
【0042】
次に、フローチャートを参照して、連携アプリケーション提供システムにおける、SIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの実行手順について説明する。図4は、本実施形態において、連携アプリケーション提供システムにおけるSIPネットワークとインターネットが連携したアプリケーションの実行手順を示したフローチャートである。
【0043】
クライアント20はウェブブラウザ21に連携アプリケーション配信ウェブサーバ10のURLを入力することにより、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10に記憶されているHTML11を取得する。ウェブブラウザ21はHTML11aを解釈し、HTML11内に記述されたスクリプトをスクリプト実行エンジン22によって実行(ステップF1)することで、そこに埋め込まれた連携RIA12をインターネット経由でダウンロードし、ブラウザ21上のアプリケーションランタイム(RIA)23によって連携RIA12aを実行する(ステップF2)
【0044】
アプリケーションランタイム(RIA)23によって実行された連携RIA12aがSIPネットワーク50との通信を行う場合、連携RIA12aはアプリケーションランタイム(SIP−B)25上でSIPコンポーネントB31aが実行中であるか否かを判定する(ステップF3,F4)。
【0045】
もし、SIPコンポーネントB31aが実行中ではない場合、連携RIA12aは、スクリプト実行エンジン22上で実行されているHTMLのインタフェース経由で、スクリプト実行エンジン22にSIPコンポーネントの起動を要求する。スクリプト実行エンジン22は、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10からSIPコンポーネントA13をインターネット40経由でダウンロードし、ブラウザ21上のアプリケーションランタイム(SIP−A)24によってSIPコンポーネントA13aを実行する(ステップF5)。
【0046】
SIPコンポーネントA13aが起動されたことをスクリプト実行エンジン22から連携RIA12aに通知されると、連携RIA12aは、SIPコンポーネントA13aに、SIPコンポーネントA13aのAPI経由でSIP通信を依頼する(ステップF6)。SIPコンポーネントA13aは、適切なSIP通信の交換を行い、SIPネットワーク50上の対向SIP端末51との連携を行う(ステップS7)。また、スクリプト実行エンジン22は、SIPコンポーネントB31aをSIPコンポーネント配信ウェブサーバ30からインターネット40経由でダウンロードし、アプリケーションランタイム(SIP−B)25によってSIPコンポーネントB31aを実行する(F8)。
【0047】
SIPコンポーネントB31aが既にアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で動作していた場合は、連携アプリケーション配信ウェブサーバ10からのSIPコンポーネントA13のダウンロードは行われず、連携RIA12aは、ただちにSIPコンポーネントB31aに、SIPコンポーネントB31aのAPI経由でSIP通信を依頼する(ステップF9)。SIPコンポーネントB31aは、適切なSIP通信の交換を行い、SIPネットワーク50上の対向SIP端末51との連携を行う(ステップS10)。
【0048】
上述したとおり、本実施形態における連携アプリケーション提供システムは、ウェブブラウザ21のアプリケーションランタイム(SIP−A)24上で動作するSIPコンポーネントA13と、ウェブブラウザ21とは別のアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で動作するSIPコンポーネントB31とを備える。すなわち、SIPコンポーネントをリッチインターネットアプリケーションとして実行時に端末に動的に配備する手法として、SIPコンポーネントを連携RIAが埋め込まれたHTMLに埋め込む方式(SIPコンポーネントA13)と、SIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式(SIPコンポーネントB31)とを備える。
【0049】
SIPコンポーネントを連携RIAが埋め込まれたHTMLに埋め込む方式では、通常のサイト読み込みに加え、SIPコンポーネントであるリッチインターネットアプリケーションを起動するため、その分サイト表示遅延が増加する傾向にある。一方、SIPコンポーネントをブラウザ外のアプリケーションとして起動する方式では、起動時にはブラウザ外のアプリケーションであるSIPコンポーネントを起動するため大きな起動遅延が生じる。しかしながら、二回目以降の起動時は既に実行中のSIPコンポーネントを再利用するため、小起動遅延での実行が可能である。
【0050】
そのため、連携リッチインターネットアプリケーションの初回起動時には、起動が速いSIPコンポーネントA13aを起動して、SIPコンポーネントA13aのAPIを経由して対向SIP端末51との連携を行うとともに、SIPコンポーネントB31aを起動する。これにより、ウェブブラウザ21とは別のアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で動作するSIPコンポーネントB31のAPIを経由して対向SIP端末51との連携を行うよりも、SIPネットワークと連携するリッチインターネットアプリケーションの起動遅延時間を減少させることができる。
【0051】
また、リッチインターネットアプリケーションの初回実行が終了した場合、ウェブブラウザ21のアプリケーションランタイム(SIP−A)24上で動作しているSIPコンポーネントA13aは停止されるが、ウェブブラウザ21とは別のアプリケーションランタイム(SIP−B)25上で動作するSIPコンポーネントB31は動作し続ける。そのため、2回目以降の起動時には、既に起動されているSIPコンポーネントB31aのAPIを経由して対向SIP端末51との連携を行うことで、SIPコンポーネントA13aの起動を待つ必要がなくなるため、SIPネットワークと連携するリッチインターネットアプリケーションの起動遅延時間を減少させることができる。
【0052】
なお、上述した本実施形態における連携アプリケーション配信ウェブサーバ10が備える各部の機能全体あるいはその一部と、クライアント20が備える各部の機能全体あるいはその一部と、SIPコンポーネント配信ウェブサーバ30が備える各部の機能全体あるいはその一部とは、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0053】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
00・・・連携アプリケーション提供システム、10・・・連携アプリケーション配信ウェブサーバ、11・・・HTML、12・・・連携RIA、13・・・SIPコンポーネントA、20・・・クライアント、21・・・ウェブブラウザ、22・・・スクリプト実行エンジン、23・・・アプリケーションランタイム(RIA)、24・・・アプリケーションランタイム(SIP−A)、25・・・アプリケーションランタイム(SIP−B)、30・・・SIPコンポーネント配信ウェブサーバ、31・・・SIPコンポーネントB、40・・・インターネット、50・・・SIPネットワーク、51・・・対向SIP端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットおよび通信網に接続されたクライアント装置と、前記インターネットに接続され、前記クライアント装置のウェブブラウザにおいて実行されるインターネットアプリケーションと第1の通信アプリケーションとを記憶する連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置と、前記クライアント装置のアプリケーションランタイムにおいて実行される第2の通信アプリケーションを記憶する通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置とを具備するインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、
前記クライアント装置は、
当該クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作しているか否かを判定する手段と、前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第1の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第1の通信アプリケーションを前記ウェブブラウザに実行させる手段と、前記実行された第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段と、して機能させるための前記インターネットアプリケーションを前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置からダウンロードするダウンロード部と、
前記ダウンロード部がダウンロードした前記インターネットアプリケーションを実行する実行部と、
を備える
ことを特徴とするインターネット・通信網連携アプリケーション提供システム。
【請求項2】
前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第2の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第2の通信アプリケーションを前記アプリケーションランタイムに実行させる手段と、して機能させる
ことを特徴とする請求項1に記載のインターネット・通信網連携アプリケーション提供システム。
【請求項3】
前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作している場合に、当該第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段として機能させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のインターネット・通信網連携アプリケーション提供システム。
【請求項4】
インターネットおよび通信網に接続されたクライアント装置と、前記インターネットに接続され、前記クライアント装置のウェブブラウザにおいて実行されるインターネットアプリケーションと第1の通信アプリケーションとを記憶する連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置と、前記クライアント装置のアプリケーションランタイムにおいて実行される第2の通信アプリケーションを記憶する通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置とを具備するインターネット・通信網連携アプリケーション提供システムにおいて、
前記クライアント装置のダウンロード部が、当該クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作しているか否かを判定する手段と、前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記連携アプリケーション配信ウェブサーバ装置から前記第1の通信アプリケーションをダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第1の通信アプリケーションを前記ウェブブラウザに実行させる手段と、前記実行された第1の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段と、して機能させるための前記インターネットアプリケーションをダウンロードするステップと、
前記クライアント装置の実行部が、前記ダウンロードしたインターネットアプリケーションを実行するステップと、
を含むことを特徴とするインターネット・通信網連携方法。
【請求項5】
前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作していない場合に、前記第2の通信アプリケーションを前記通信アプリケーション配信ウェブサーバ装置からダウンロードする手段と、当該ダウンロードした第2の通信アプリケーションを前記アプリケーションランタイムに実行させる手段と、して機能させる
ことを特徴とする請求項4に記載のインターネット・通信網連携方法。
【請求項6】
前記インターネットアプリケーションは、前記クライアント装置を、前記アプリケーションランタイムにおいて前記第2の通信アプリケーションが動作している場合に、当該第2の通信アプリケーションを介して通信網と通信を行う手段として機能させる
ことを特徴とする請求項4または請求項5のいずれか1項に記載のインターネット・通信網連携方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−123662(P2011−123662A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280598(P2009−280598)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】