説明

インターフェロン−β−1aのポリマー結合体および使用

【課題】短時間で体内から排出されることのないインターフェロンβを提供すること。
【解決手段】ポリアルキレングリコールを含むポリマーに連結されたインターフェロン−β−1aを含む、インターフェロンβポリペプチド。ここで、このインターフェロン−β−1aおよびポリアルキレングリコール部分は、インターフェロン−β−1aがインターフェロンβの別の治療形態(インターフェロン−β−1b)と比較して、増強された活性を有し、そして非結合体化インターフェロン−β−1aと比較して、活性の減少を示さないように配置されている。本発明の結合体は、治療適用および非治療(例えば、診断)適用において有用に使用される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
特定の疾患の全身処置に関するポリペプチドおよびタンパク質の使用は、今や
、医学現場で十分に受け入れられている。これらの物質が治療において果たす役
割は非常に重要であるので、組換えDNA技術による大量の合成に関して多くの
研究活動が行われている。これらのポリペプチドの多くは、それらの生物学的作
用を誘発する際に非常に強力かつ特異的な内因性分子である。
【0002】
意図された適用に関してこれらのタンパク質性物質の有用性を制限する主要な
因子は、非経口的に与えられた場合、それらが短時間で体内から排出されてしま
うことである。このことは、プロテアーゼによるか、または腎臓における濾過に
よるようなタンパク質排出のための正常な経路を用いるクリアランスによる代謝
の結果として生じ得る。これらの物質の投与の経口経路は、胃におけるタンパク
質分解に加えて、胃が高酸性であることにより、それらが意図された標的組織に
達する前にそれらが破壊されるので、よりいっそう問題である。タンパク質のこ
れらの投与経路と関連した問題は、製薬産業において周知であり、そして種々の
ストラテジーがこの問題を解決するための試みにおいて用いられている。
【0003】
タンパク質安定性を扱う大量の研究が発表されている。ポリマー物質とタンパ
ク質を結合体化する種々の方法が公知であり、これらの方法としては、デキスト
ラン、ポリビニルピロリドン、糖ペプチド、ポリエチレングリコールおよびポリ
アミノ酸の使用が挙げられる。得られた結合体化ポリペプチドは、非経口適用に
関して、それらの生物学的活性および水溶性を維持することが報告されている。
【0004】
これまで多くの臨床研究の焦点であり、そしてその投与および生物同化を改善
する取り組みの焦点であったペプチドファミリーは、インターフェロンである。
インターフェロンは、種々の臨床疾患状態において試験されてきた。そのファミ
リーの1メンバーであるヒトインターフェロンβの使用は、多発性硬化症の処置
において最も確立されている。2つの形態の組換えインターフェロンβが、この
疾患の処置のために欧州および米国で最近認可された。一方の形態は、インター
フェロン−β−1a(商標登録されており、AVONEX(登録商標)として販
売されている、製造Biogen,Inc.,Cambridge,MA)であ
り、そして本明細書中以降、「インターフェロン−β−1a」または「IFN−
ベータ−1a」または「IFN−β−1a」または「インターフェロン−β−1
a」が交換可能に使用される。他方の形態は、インターフェロン−β−1b(商
標登録されており、BETASERON(登録商標)として販売、Berlex
,Richmond,CA)(本明細書中以降「インターフェロン−β−1b」
)である。インターフェロン−β−1aは、天然のヒト遺伝子配列を用いて哺乳
動物細胞中で生成され、そしてグリコシル化されるが、それに対してインターフ
ェロン−β−1bは、アミノ酸17位で遺伝子操作されたシステインからセリン
への置換を含み、そしてグリコシル化されていない、改変ヒト遺伝子配列を用い
て、E.coli細菌において生成される。
【0005】
以前に、本発明者らの数名が、インターフェロン−β−1aおよびインターフ
ェロン−β−1bの相対的インビトロ効力を、機能的アッセイにおいて直接比較
し、そしてインターフェロン−β−1aの比活性が、インターフェロン−β−1
bの比活性の約10倍を超えることを示した(非特許文献1(Runkelら,1998,Ph
arm.Res.15:641−649)。これらの活性差異に関する構造的基
礎を同定するために設計した研究から、本発明者らは、比活性に影響を及ぼした
産物間のわずか1つだけの既知の構造的差異として、グリコシル化を同定した。
糖質の効果は、構造に関してその安定化する役割を介して大きく表れた。糖質の
安定化効果は、熱変性実験およびSEC分析において明らかであった。グリコシ
ル化の欠如はまた、凝集の増加および熱変性に対する感受性の増加と相関した。
PNGase Fを用いたインターフェロン−β−1aからの糖質の酵素的除去
は、グリコシル化産物の大量の沈澱を生じた。
これらの研究は、インターフェロン−β−1aとインターフェロン−β−1b
との間の配列における保存にも拘わらず、それらが、生化学的実体として異なり
、従って、インターフェロン−β−1bについて公知であることの多くが、イン
ターフェロン−β−1aに適合し得ないことを示し、逆もまた然りである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Runkelら,1998,Pharm.Res.15:641−649
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明者らは、非グリコシル化形態と比較してグリコシル化インターフェロン
−βの利点を利用した。特に、本発明者らは、インターフェロン−β−1bと比
較して増加した活性を有するインターフェロン−β−1a組成物を開発し、そし
てこれはまた、一般に、結合体化されていないインターフェロン−β−1a形態
と比較して、事実上の活性喪失がない、PEG化(pegylated)タンパ
ク質の有効な(salutory)特性を有する。従って、産物(ポリマー−イ
ンターフェロン−β−1a結合体)がそれらの生物学的活性の全てまたは大部分
を保持する方法で改変が行われる場合、以下の特性が生じ得る:増加した半減期
および組織分布の改変(例えば、長期間にわたり血管系にとどまる能力)を導く
、変化した薬物動態学および薬力学;溶液における安定性の増加;免疫原性の減
少;タンパク質分解消化からの保護;および活性のその後の消滅。このような処
方は、薬学分野および医学分野における実質的進歩であり、そしてインターフェ
ロンがいくらかの有用性を有する種々の疾患(例えば、多発性硬化症、線維症、
ならびに他の炎症性疾患または自己免疫疾患、癌、肝炎、および他のウイルス性
疾患)の管理に有意に寄与する。特に、血管系に長期間とどまる能力は、インタ
ーフェロン−β−1aを使用して、脈管形成を阻害し、そして潜在的に血液脳関
門を通過させることを可能にする。さらに、ポリマー−インターフェロン−β−
1a結合体を作製することによって得られる熱安定性は、吸入を介するその後の
投与において使用するためにインターフェロン−β−1aを散剤形態に処方する
場合、有利である。
【0008】
本発明者らは、インターフェロン−β−1aの結晶学的構造の知識を用い、そ
してインターフェロン−β−1a−ポリマー結合体を開発した。ここで、このポ
リマーは、結合体が、結合体化していないインターフェロン−β−1aと比較し
て、インターフェロン−β−1aの十分な活性を保持することを可能にするイン
ターフェロン−β−1aの部位に連結されている。
【0009】
本発明の1つの局面は、結合体化インターフェロン−β−1a複合体であり、
ここでこのインターフェロン−β−1aは、ポリアルキレングリコールをその不
可欠部分として組み込む、ポリマーに共有結合されている。
【0010】
1つの特定の局面において、本発明は、ポリアルキレングリコール部分を含む
ポリマーと連結された生理学的に活性なインターフェロン−β−1aを含む、生
理学的に活性なインターフェロン−β−1a組成物に関する。ここで、この組成
物中の生理学的に活性なインターフェロン−β−1aが、インターフェロン−β
−1a単独(すなわち、それらに連結されるポリマーが欠けている、非結合体化
形態)と比較して増強した半減期を有するように、このインターフェロン−β−
1aおよびポリアルキレングリコール部分が配置されている。
【0011】
本発明の別の局面は、ポリマーと連結された生理学的に活性なインターフェロ
ン−β−1aを含む、インターフェロン−β−1a組成物である。ここで、この
インターフェロン−β−1aは、融合タンパク質(好ましくは、免疫グロブリン
融合物)である。このような複合体において、N末端の最も近位(ポリマーとの
結合体化部位)およびC末端(Ig部分との融合部位)は、ポリマー結合体化が
、この融合タンパク質の免疫原性を低減し得ることを示唆する。
【0012】
別の局面において、本発明は、ポリアルキレングリコール部分を含むポリマー
と連結された生理学的に活性なインターフェロン−β−1aを含む、生理学的に
活性なインターフェロン−β−1a組成物に関する。ここで、この組成物中の生
理学的に活性なインターフェロン−β−1aが、インターフェロン−β−1b単
独(すなわち、それらに連結されるポリマーが欠けている、非結合体化形態)と
比較して増強した活性を有するように、このインターフェロン−β−1aおよび
ポリアルキレングリコール部分が配置されている。
【0013】
本発明の別の実施形態は、結合体化したインターフェロン−β−1aタンパク
質である。結合体化したインターフェロン−β−1aタンパク質のインターフェ
ロン−β−1a部分は、非変異形態のインターフェロンβ−1aと比較して、選
択的に増強した抗ウイルス活性および/または抗増殖活性を有するムテインを提
供するように変異されている。
【0014】
本発明は、さらなる局面において、生理学的に適合性のポリエチレングリコー
ル部分に共有結合的に連結された、生理学的に活性なインターフェロン−β−1
aを含む、安定な水溶性の結合体化インターフェロン−β−1a複合体に関する
。このような複合体において、このインターフェロン−β−1aは、不安定な共
有結合により、このインターフェロン−β−1aの遊離アミノ基(amino
acid group)でこの生理学的に適合性のポリエチレングリコール部分
に共有結合的に連結され得、ここでこの不安定な共有結合が、生化学的加水分解
および/またはタンパク質分解によりインビボで切断される。
【0015】
別の局面において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア、および生理学的
に適合性のポリエチレングリコールに連結されたインターフェロン−βを含む、
安定な水溶性のインターフェロン−β−1a複合体を含有する、投薬形態に関す
る。
【0016】
別の局面において、例えば、上記のような共有結合的に連結したインターフェ
ロン−β−1a組成物は、診断適用またはインビトロ適用に関して意図したイン
ターフェロン−β−1aを利用し得る。ここで、このインターフェロン−β−1
aは、例えば、イムノアッセイまたは他の診断適用または非インビボ適用のため
の診断試薬である。このような非治療的適用において、本発明の複合体は、例え
ば、適合性溶媒または他の溶液ベースの処方物に処方されて、分解に対して抵抗
性が増強している安定な組成形態を提供し得る、安定化した組成物として非常に
有用に使用され得る。
【0017】
非毒性ポリマーを用いたインターフェロン−β−1aの改変は、特定の利点を
提供しうる。産物(ポリマー−インターフェロン−β−1a結合体)がそれらの
生物学的活性の全てまたは大部分を保持する方法で改変が行われる場合、以下の
特性が生じ得る:増加した半減期および組織分布の改変(例えば、長期間にわた
り血管系にとどまる能力)を導く、変化した薬物動態学および薬力学;溶液にお
ける安定性の増加;免疫原性の減少;タンパク質分解消化からのこの改変インタ
ーフェロン−β−1aの保護;および活性のその後の消滅;経口使用または吸入
使用のために散剤化したインターフェロン−β−1aのより有効な処方物をもた
らす、熱安定性の増加。
【0018】
上記のように改善した特性を付与したインターフェロン−β−1aは、経口投
与、エアロゾル投与、または非経口投与のいずれかに従う治療として有効であり
得る。他の投与経路(例えば、経鼻および経皮)もまた、改変インターフェロン
−β−1aを用いて可能である。
【0019】
本発明の別の局面は、脈管形成および新生血管形成をを阻害する方法であり、
この方法は、本発明の組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する。血管
系におけるインターフェロンのレベルおよび持続時間の増加の結果として、本発
明のPEG化産物は、脈管形成インヒビターとして特に有効であるはずである。
【0020】
非治療(例えば、診断)適用において、インターフェロンβの診断種および/
または試薬種の結合体化もまた、企図される。得られた結合体化薬剤は、環境的
分解性因子(溶媒媒介性分解プロセス−または溶液媒介性分解プロセスを含む)
に抵抗性である。インターフェロン−β−1aのこのような増強した抵抗性およ
び増加した安定性の結果として、活性成分の安定性は、用いられる特定の最終用
途(end use)におけるインターフェロン−β−1a含有組成物の付随す
る信頼性とともに、有意に増加し得る。
本発明の他の局面、特徴、および改変物は、以下の開示および添付の特許請求
の範囲からより完全に明らかである。
本発明の好ましい実施形態では、例えば以下の組成物などが提供される:
(項目1) 天然に存在しないポリマーに連結されたグリコシル化インタ
ーフェロン−βを含む組成物であって、該ポリマーがポリアルキレングリコール
部分を含む、組成物。
(項目2) 項目1に記載の組成物であって、前記ポリアルキレン部分
が、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基、複数
のヒスチジン残基、ヒドラジン基およびアミノチオール基から選択される基によ
り、インターフェロン−βに連結されている、組成物。
(項目3) 項目1に記載の組成物であって、前記グリコシル化インタ
ーフェロン−βが、インターフェロン−β−1aであり、そして抗ウイルスアッ
セイにおいて測定した場合にインターフェロン−β−1bより活性がある、組成
物。
(項目4) 項目3に記載の組成物であって、前記インターフェロン−
β−1aが、抗ウイルスアッセイにおいて測定した場合に前記ポリマーを欠如す
るインターフェロン−β−1aの0.5〜1倍の効力を保持する、組成物。
(項目5) 前記インターフェロン−βが、インターフェロン−β−1a
融合タンパク質である、項目1に記載の組成物。
(項目6) 前記インターフェロン−β−1a融合タンパク質が免疫グロ
ブリン分子の一部を含む、項目5に記載の組成物。
(項目7) 前記インターフェロンβが、以下の特性のうちの少なくとも
1つを有する、変異体インターフェロンβである、項目1または5に記載の組
成物:(a)該変異体は、野生型インターフェロン−β−1aより高い抗ウイル
ス活性を有し、ここで該抗ウイルス活性が、ウイルス誘導性の細胞溶解により測
定される;(b)該変異体が、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、
抗増殖活性より大きな抗ウイルス活性を有する;(c)該変異体がインターフェ
ロンレセプターに結合するが、野生型インターフェロン−β−1aと比較した場
合、レセプター結合活性と比較して、低下した抗ウイルス活性および低下した抗
増殖活性を有する。
(項目8) ポリアルキレングリコール部分を含むポリマーに連結された
生理学的に活性なインターフェロン−β−1aを含む、生理学的に活性なインタ
ーフェロン−β組成物であって、該生理学的に活性なインターフェロンβ組成物
中の該生理学的に活性なインターフェロン−β−1aが、抗ウイルスアッセイに
よって測定された場合に、生理学的に活性なインターフェロン−β−1bと比較
して増強した活性を有するように、該生理学的に活性なインターフェロン−β−
1aおよび該ポリアルキレングリコール部分が配置されている、組成物。
(項目9) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン−
β−1a上のN末端のある部位で前記ポリマーに連結されている、項目8に記
載の組成物。
(項目10) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1a上のC末端またはその付近のある部位で前記ポリマーに連結されてい
る、項目8に記載の組成物。
(項目11) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1aのグリカン部分を介してある部位で前記ポリマーに連結されている、
項目8に記載の組成物。
(項目12) 前記インターフェロン−β−1aが、インターフェロン−
β−1a融合タンパク質である、項目8に記載の組成物。
(項目13) 前記インターフェロン−β−1a融合タンパク質が、免疫
グロブリン分子の一部を含む、項目12に記載の組成物。
(項目14) 項目8または12に記載の組成物であって、前記インタ
ーフェロン−β−1aは以下の特性のうち少なくとも1つを有する変異体インタ
ーフェロン−β−1aである、組成物:(a)該変異体は、野生型インターフェ
ロン−β−1aより高い抗ウイルス活性を有し、ここで該抗ウイルス活性が、ウ
イルス誘導性の細胞溶解により測定される;(b)該変異体が、野生型インター
フェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性より大きな抗ウイルス活性を有する
;(c)該変異体がインターフェロンレセプターに結合するが、野生型インター
フェロン−β−1aと比較した場合、レセプター結合活性と比較して、低下した
抗ウイルス活性および低下した抗増殖活性を有する。
(項目15) ポリアルキレングリコール部分を含むポリマーにN末端で
連結された生理学的に活性なグリコシル化インターフェロン−βを含む、生理学
的に活性なインターフェロン−β組成物であって、該生理学的に活性なインター
フェロンβ組成物中の該生理学的に活性なインターフェロン−βが、抗ウイルス
アッセイによって測定された場合に、該部分を欠如した生理学的に活性なインタ
ーフェロン−βと比較して、実質的に類似の活性を有するように、該生理学的に
活性なインターフェロン−βおよび該ポリアルキレングリコール部分が配置され
ている、組成物。
(項目16) 前記インターフェロン−βが、該インターフェロン−β上
のN末端のある部位で前記ポリマーに連結されている、項目15に記載の組成
物。
(項目17) 前記インターフェロン−βが、該インターフェロン−β上
のC末端またはその付近のある部位で前記ポリマーに連結されている、項目1
5に記載の組成物。
(項目18) 前記インターフェロン−βが、該インターフェロン−βの
グリカン部分を介してある部位で前記ポリマーに連結されている、項目15に
記載の組成物。
(項目19) 前記インターフェロン−βが、インターフェロン−β融合
タンパク質である、項目15に記載の組成物。
(項目20) 前記インターフェロン−β融合タンパク質が免疫グロブリ
ン分子の一部を含む、項目19に記載の組成物。
(項目21) 項目15または19に記載の組成物であって、前記グリ
コシル化インターフェロン−βが、以下の特性のうち少なくとも1つを有する変
異体インターフェロン−βである、組成物:(a)該変異体は、野生型インター
フェロン−β−1aより高い抗ウイルス活性を有し、ここで該抗ウイルス活性が
、ウイルス誘導性の細胞溶解により測定される;(b)該変異体が、野生型イン
ターフェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性より大きな抗ウイルス活性を有
する;(c)該変異体がインターフェロンレセプターに結合するが、野生型イン
ターフェロン−β−1aと比較した場合、該変異体のレセプター結合活性と比較
して、低下した抗ウイルス活性および低下した抗増殖活性を有する。
(項目22) ポリエチレングリコール部分に連結されたインターフェロ
ン−β−1aを含む、安定な水溶性の結合体化インターフェロン−β−1a複合
体であって、該インターフェロン−β−1aは、不安定な結合により該ポリエチ
レングリコール部分に連結され、該不安定な結合が、生化学的加水分解および/
またはタンパク質分解により切断可能である、複合体。
(項目23) 前記ポリマーが、約5〜約40キロダルトンの分子量を有
する、項目1、15、または22に記載のインターフェロン−β組成物。
(項目24) 項目23に記載のインターフェロン−β組成物を含む、
薬学的組成物。
(項目25) 哺乳動物被験体において、潜在的または発症した、状態ま
たは疾患状態を、有効なインターフェロン−β−1aを用いて処置する方法であ
って、該方法は、ポリエチレングリコール部分に連結されている該インターフェ
ロン−β−1aを含むインターフェロン−β−1a組成物の有効量を該被験体に
投与する工程を包含する、方法。
(項目26) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1a上のN末端のある部位で、前記ポリマーに連結されている、項目2
5に記載の方法。
(項目27) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1a上のC末端またはその付近のある部位で前記ポリマーに連結されてい
る、項目25に記載の方法。
(項目28) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1aのグリカン部分を介してある部位で前記ポリマーに連結されている、
項目25に記載の方法。
(項目29) 前記インターフェロン−β−1aが、インターフェロン−
β−1a融合タンパク質である、項目25に記載の方法。
(項目30) 前記インターフェロン−β−1a融合タンパク質が免疫グ
ロブリン分子の一部を含む、項目29に記載の方法。
(項目31) 項目25または29に記載の方法であって、前記インタ
ーフェロン−β−1aは以下の特性のうち少なくとも1つを有する変異体インタ
ーフェロン−β−1aである、方法:(a)該変異体は、野生型インターフェロ
ン−β−1aより高い抗ウイルス活性を有し、ここで該抗ウイルス活性が、ウイ
ルス誘導性の細胞溶解により測定される;(b)該変異体が、野生型インターフ
ェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性より大きな抗ウイルス活性を有する;
(c)該変異体がインターフェロンレセプターに結合するが、野生型インターフ
ェロン−β−1aと比較した場合、該変異体のレセプター結合活性と比較して、
低下した抗ウイルス活性および低下した抗増殖活性を有する。
(項目32) インビボ系またはインビトロ系でのインターフェロン−β
−1aの活性を長期化する方法であって、該方法は、該インターフェロン−β−
1aを、天然に存在しないポリマー部分に連結して、連結したポリマー−インタ
ーフェロン−β−1a組成物を生成する工程、および該連結したポリマー−イン
ターフェロン−β−1a組成物を該インビボ系または該インビトロ系に導入する
工程を包含する、方法。
(項目33) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1a上のN末端のある部位で、前記ポリマーに連結されている、項目3
2に記載の方法。
(項目34) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1a上のC末端またはその付近のある部位で前記ポリマーに連結されてい
る、項目32に記載の方法。
(項目35) 前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン
−β−1aのグリカン部分を介してある部位で前記ポリマーに連結されている、
項目32に記載の方法。
(項目36) 前記インターフェロン−β−1aが、インターフェロン−
β−1a融合タンパク質である、項目32に記載の方法。
(項目37) 前記インターフェロン−β−1a融合タンパク質が免疫グ
ロブリン分子の一部を含む、項目36に記載の方法。
(項目38) 項目32または36に記載の方法であって、前記インタ
ーフェロン−β−1aは以下の特性のうち少なくとも1つを有する変異体インタ
ーフェロン−β−1aである、方法:(a)該変異体は、野生型インターフェロ
ン−β−1aより高い抗ウイルス活性を有し、ここで該抗ウイルス活性が、ウイ
ルス誘導性の細胞溶解により測定される;(b)該変異体が、野生型インターフ
ェロン−β−1aと比較して、抗増殖活性より大きな抗ウイルス活性を有する;
(c)該変異体がインターフェロンレセプターに結合するが、野生型インターフ
ェロン−β−1aと比較した場合、該変異体のレセプター結合活性と比較して、
低下した抗ウイルス活性および低下した抗増殖活性を有する。
(項目39) 前記ポリマーがポリアルキレングリコールを含む、項目
32に記載の方法。
(項目40) 被験体における脈管形成を阻害する方法であって、該方法
が、項目23に記載の組成物の有効量を被験体に投与する工程を包含する、方
法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1.I型インターフェロンレセプター鎖の細胞外ドメインを含むダイマー融合タンパク質IFAR2/Ig(ヒトIgG1定常ドメインに融合されたIFNAR2外部ドメイン(ectodomain))に対する、アラニン置換インターフェロン−β−1a変異体の結合。IFNAR2レセプター鎖についてのアラニン置換IFN変異体(A1〜E)の結合親和性を、実施例1(部分節D)に記載の通りに決定した。ヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対する、このアッセイにおけるそれらの結合親和性を表す(%w.t.)。%w.t.値を、(野生型his−IFN−βの親和性)/変異体IFN−βの親和性の100倍として算出した。個々の実験(N=3)についての%w.t.(白丸)および実験セットについての平均%w.t.(×)を示す。変異体A2、AB1、AB2およびEは、w.t.his−IFN−βのEC50(*)よりも500倍高い濃度では、IFNAR2/Fcを結合しなかった。
【図2】図2.Daudi Burkittリンパ腫細胞において発現されたI型インターフェロン細胞表面レセプター複合体(「IFNAR1/2複合体」)へのアラニン置換インターフェロン−β−1a変異体の結合。アラニン置換変異体(A1〜E)のレセプター結合特性を、実施例1(部分節D)に記載される、FACSベースの細胞表面レセプター結合アッセイを使用して決定した。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対する、このアッセイにおけるそれらのレセプター結合親和性(%w.t.)を表す。各変異体についての%w.t.を、(野生型his−IFN−βの親和性)/変異体IFN−βの親和性の100倍として算出した。個々の実験についての%w.t.値(白丸)および実験セットについての%w.t.値(×)の平均を示す。
【図3】図3.アラニン置換インターフェロン−β−1a変異体の抗ウイルス活性。アラニン置換変異体(A1〜E)の抗ウイルス活性を、実施例1(部分節E)に記載のEMCウイルスを用いてチャレンジしたヒトA549細胞において決定した。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対する、このアッセイにおけるそれらの活性(%w.t.)を表す。%w.t.を、(野生型his−IFN−βの濃度[50cpe])/変異体IFN−βの濃度[50cpe]の100倍として算出した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験セットについての平均(×)を示す。
【図4】図4.アラニン置換インターフェロン−β−1a変異体の抗増殖活性。アラニン置換変異体(Al〜E)の抗増殖活性を、実施例1(部分節E)に記載のように、Daui Biekittリンパ腫細胞において決定した。このヒストグラムは、野生型his−IFN−βに対する、このアッセイにおけるそれらの活性(%w.t.)を表す。%w.t.を、(w.t.his−INF−βの濃度(50%増殖阻害)/変異体IFN−βの濃度(50%増殖阻害))の100倍として計算した。複数のアッセイについての%w.t.(白丸)および実験セットについての平均(×)を示す。
【図5】図5.アラニン置換インターフェロン−β−1a変異体の相対的抗ウイルスおよび抗増殖活性。抗ウイルスアッセイ(x軸)および抗増殖アッセイ(y軸)におけるアラニン置換変異体(Al〜E)の相対活性を、比較した。図3および4に示した平均パーセント野生型his−IFN−β(%w.t.×)を、この比較のために使用した。両方の活性における協調変化を提示するこれらの変異体は、垂直線におちついた。抗増殖活性における変化に対して不釣合いである抗ウイルス活性における変化を提示するこれらの変異体は、対角線から有意にずれた(DE1、D、C1)。有意性を、使用して平均%w.t.値に固有の標準偏差を考慮して決定した。
【図6】図6.ペプチドマッピングによるPEG化の部位の局在。PEG化および未改変のインターフェロン−β−1aを、ペプチドマッピング分析に供した。サンプルを、エンドプロテイナーゼLys−Cで消化し、そしてC4カラムでの逆相HPLCに供した。このカラムを、0.1%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリルの0〜70%の勾配を用いて展開した。このカラム溶出物を、214nmでモニターした。パネルa、未改変のインターフェロン−1a。パネルb、PEG化インターフェロン−β−1a。矢印は、アミノ酸残基1〜19を含む、インターフェロン−β−1aのN末端エンドプロテイナーゼLysペプチドの溶出位置を印付ける。
【図7】図7.結合体化および非結合体化インターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性。X軸上に示した濃度でのインターフェロン−β−1aまたはPEG化インターフェロン−β−1aの活性を、脳心筋炎ウイルスを用いてチャレンジしたヒト肺癌腫(A549)細胞を使用して抗ウイルスアッセイにおいて評価した。ウイルスとのインキュベーションの2日後に、生存細胞を、MTTで染色し、このプレートを、450nmで読み取り、そして細胞生存度を反映する吸光度をY軸に示す。標準偏差をエラーバーとして示す。50%のウイルス殺傷を提供した(「50%細胞変性効果」)(50%の最大OD450)、インターフェロン−β−1aまたはPEG化インターフェロン−β−1aの濃度は、約11pg/mlであり、そしてPEG化インターフェロン−β−1aについての50%細胞変性効果は、約11pg/mlであった。
【図8】図8.熱変性を使用する結合体の安定化の評価。20mM HEPES pH7.5、20mM NaCl中のPEG化インターフェロン−β−1aおよび未処理インターフェロン−β−1aコントロールを、1℃/分の固定速度で加熱した。変性を、280nmでの吸光度変化をモニターすることによって追跡した。(a)未改変インターフェロン−β−1a(b)PEG化インターフェロン−β−1a。
【図9】図9.インターフェロン−β−1aまたはPEG化インターフェロン−β−1aで処置したマウスの血漿におけるインターフェロン−β−1a抗ウイルス活性の測定。マウスに、50,000ユニットのインターフェロン−β−1aまたは50,000ユニットのPEG化インターフェロン−β−1a(20K PEGを含む)のいずれかをiv注射する。これらのマウスの血液を、X軸上に示される、インターフェロン注射後の様々な時間で眼窩採血を介して得る。各時点で採血した少なくとも3匹のマウスが存在し、そして血漿を調製し、そしてインターフェロン−βの活性が脳心筋炎ウイルスでチャレンジしたヒト肺癌腫(A459)細胞を使用して抗ウイルスアッセイにおいて評価するまで凍結する。生存細胞をMTT溶液で染色し、血漿を450nmで読み取り、細胞生存度およびインターフェロン−β活性を反映する吸光度を決定した。標準曲線を、インターフェロン−β−1aを使用して各プレートについて作製し、そして使用して、各サンプルにおけるインターフェロン−β活性の量を決定した。個々の動物からのデータを示す。
【図10】図10.ヒスチジンタグ化インターフェロン−β遺伝子の全長DNA配列およびそのタンパク質産物。ヒスチジンタグ化IFN−β−1aの全長DNA配列(配列番号1)およびタンパク質配列(配列番号2)を示す。切断したVCAM−1シグナル配列は、ヒスチジンタグ(His6、4〜9位)の上流の3アミノ末端残基(SerGlyGly)を残す。エンテロキナーゼリンカー配列(AspAspAspAspLys)を、スペーサー(10〜12位、SerSerGly)によってヒスチジンタグから分離する。天然のIFN−β−1a配列は、位置(Met18〜Asn183)におよぶ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、用語「共有結合した(された)」とは、特定化
された部分が、互いに直接的に共有結合されるか、または介在する部分(例えば
、架橋、スペーサー、または連結部分)を通じて互いに間接的に共有結合される
されることを意味する。
【0023】
インターフェロン−「インターフェロン」(「IFN」とも称される)は、ウ
イルス、ポリペプチド、マイトジェンなどのような種々のインデューサーへの曝
露に応答して、哺乳動物細胞によって産生される、小さな種特異的一本鎖ポリペ
プチドである。本発明で使用される最も好ましいインターフェロンは、グリコシ
ル化されたヒトインターフェロン−βであり、これは残基80(Asn80)で
グリコシル化され、そして好ましくは、組換えDNA技術を介して誘導される。
この好ましいグリコシル化されたインターフェロン−βは、「インターフェロン
−ベータ−1a」または「INF−ベータ−1a」または「IFN−β−1a」
または「インターフェロンベータ1a」または「インターフェロン−β−1a」
と呼ばれ、これらは全て、交換可能に使用される。用語「INF−ベータ−1a
」はまた、その変異体もまた、残基80(Asn80)でグリコシル化される場
合、このような変異体を包含することを意味する(例えば、実施例1)。タンパ
ク質(インターフェロンを含む)を産生するための組換えDNA方法は、公知で
ある。例えば、米国特許第4,399,216号、同第5,149,636号、
同第5,179,017号(Axelら)および同第4,470,461号(K
aufman)を参照のこと。
【0024】
本発明の方法において使用され得る好ましいインターフェロン−β−1aポリ
ヌクレオチドは、様々な脊椎動物(好ましくは、哺乳動物)の野生型インターフ
ェロンβ遺伝子配列に由来し、そして以下の米国特許において記載されるような
、当業者に周知の方法を使用して得られる:米国特許第5,641,656(1
997年6月24日発行:DNA encoding avian type
I interferon proprotein and mature a
vian type I interferon)、米国特許第5,605,6
88号(1997年2月25日:recombinant dog and h
orse type I interferons);米国特許第5,231,
176号(1993年7月27日、DNA molecule encodin
g a human leukocyte interferon);米国特許
第5,071,761号(1991年12月10日、DNA sequence
coding for sub−sequences of human l
ymphoblastoid interferons LyIFN−alph
a−2 and LyIFN−alpha−3);米国特許第4,970,16
1号(1990年11月13日、DNA sequence coding f
or human interferon−gamma);米国特許第4,73
8,931号(1988年4月19日、DNA containing a h
uman interferon beta gene);米国特許第4,69
5,543号(1987年9月22日、human alpha−interf
eron Gx−1 gene)および米国特許第4,456,748号(19
84年6月26日、DNA encoding sub−sequences
of different, naturally, occurring l
eukocyte interferons)。
【0025】
インターフェロン−β−1aの変異体は、本発明に従って使用され得る。変異
体は、当業者に公知の、特異的変異誘発の従来の方法を使用して発生される。さ
らに、本発明は、機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリペプチドをコ
ードする機能的に等価なインターフェロン−β−1aポリヌクレオチドを提供す
る。
【0026】
インターフェロン−β−1aをコードする第1のポリヌクレオチドは、それが
、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合、インターフェロン−β−1aをコ
ードする第2のポリヌクレオチドと比較して、「機能的に等価」である:
(a)「機能的等価物」が、標準的なハイブリダイゼーション条件下で第2の
ポリヌクレオチドにハイブリダイズし、そして/または第1のポリヌクレオチド
配列へと縮重される、第1のポリヌクレオチドである。より好ましくは、それは
、インターフェロン−β−1aの活性を有する変異体インターフェロンをコード
する;
(b)「機能的等価物」が、第2のポリヌクレオチドによってコードされるア
ミノ酸配列についての発現をコードする第1のポリヌクレオチドである。
【0027】
要約すると、用語「インターフェロン」は、上記に列挙された薬剤ならびにそ
れらの機能的等価物を含むが、これらに限定されない。それゆえ、本明細書中で
使用される場合、用語「機能的等価物」とは、そのインターフェロンが機能的等
価物とみなされるようび、哺乳動物レシピエントに対する同じかもしくは改良さ
れた有益な効果を有するインターフェロン−β−1aタンパク質、またはそのイ
ンターフェロン−β−1aタンパク質をコードするポリヌクレオチドをいう。当
業者に明らかなように、機能的に等価なタンパク質は、組換え技術によって、例
えば、「機能的に等価なDNA」を発現することによって、産生され得る。従っ
て、本発明は、天然に存在するDNAによってコードされるインターフェロン−
β−1aタンパク質、ならびに天然に存在するDNAによってコードされるのと
同じタンパク質をコードする天然には存在しないDNAによってコードされるイ
ンターフェロン−β−1aを包含する。配列をコードするヌクレオチドの縮重に
起因して、他のポリヌクレオチドは、インターフェロン−β−1aをコードする
ために使用され得る。これらは、配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なる
コドンの置換によって変更され、従ってサイレント変化が産生される、上記の配
列の全てまたは部分を含む。このような変更された配列は、これらの配列の等価
物とみなす。例えば、Phe(F)は、2つのコドン(TTCまたはTTT)に
よってコードされ、Tyr(Y)は、TACまたはTATによってコードされ、
そしてHis(H)は、CACまたはCATによってコードされる。反対に、T
rp(W)は、単一のコドンTGGによってコードされる。従って、特定のイン
ターフェロンをコードする所定のDNA配列について、それをコードする多くの
DNA縮重配列が存在することが理解される。これらの縮重DNA配列は、本発
明の範囲内であると考えられる。
【0028】
「融合」とは、それらの個々のペプチド骨格を介する、それらのタンパク質を
コードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通じての、2つ以上のタンパク
質またはそのフラグメントの共線状連結(co−lnnear linkage
)をいう。タンパク質またはそのフラグメントが異なる供給源に由来することが
好ましい。従って、好ましい融合タンパク質は、インターフェロンではない第2
の部分に共有結合されたインターフェロン−β−1aのタンパク質またはフラグ
メントを含む。詳細には、「インターフェロン−β−1a/Ig融合」は、免疫
グロブリン鎖のN末端に連結された本発明のインターフェロン−β−1a分子ま
たはそのフラグメントを含むタンパク質であり、ここで免疫グロブリンのN末端
の部分は、インターフェロン−β−1aと置換される。
【0029】
「組換え」とは、本明細書中で使用される場合、タンパク質が、組換え哺乳動
物発現系から誘導されることを意味する。ほとんどの細菌培養(例えば、E.c
oli)において発現されるタンパク質は、グリカンを含まないので、これらの
発現系は好ましくない。酵母において発現されるタンパク質は、哺乳動物細胞に
よって発現されるものとは異なるオリゴサッカリド構造を有し得る。
【0030】
「生物学的に活性」とは、インターフェロン−β 1aの特徴として本明細書
を通じて使用される場合、特定の分子が、実施例1(以下を参照こと)に示され
る型のインビトロ抗ウイルスアッセイにおいて測定されるような抗ウイルス活性
を可能にするに十分な、本明細書中に開示される本発明の形態とのアミノ酸配列
相同性を共有することを意味する。
【0031】
「治療用組成物」とは、本明細書中で使用される場合、本発明のタンパク質お
よび他の生理学的に適合可能な成分を含む、として規定される。治療用組成物は
、賦形剤(例えば、水、ミネラル、およびタンパク質のようなキャリア)を含み
得る。
【0032】
本発明の薬剤の「有効量」とは、処置される特定の状態に対して結果を産生す
るか、またはそれに対する影響を発揮する量である。
【0033】
「アミノ酸」−ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のモノマー単位。
天然に存在するペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に見出される20のア
ミノ酸が存在し、それらの全ては、L型異性体である。この用語はまた、これら
のアミノ酸のアナログならびにこれらのタンパク質アミノ酸のD型異性体および
そのアナログを含む。
【0034】
「誘導体化」アミノ酸は、天然または非天然アミノ酸であり、ここでは、通常
存在する側鎖または末端基が、化学反応によって改変される。このような改変と
しては、例えば、以下が挙げられる:γ−カルボキシル化、β−カルボキシル化
、硫酸化、スルホン化、リン酸化、アミド化、エステル化、N−アセチル化、カ
ルボベンジル化(carbobenzylation)、トシル化、および当該
分野で公知の他の改変。「誘導体化ポリペプチド」は、1つ以上の誘導体化アミ
ノ酸を含むポリペプチドである。
【0035】
「タンパク質」−本質的に20のアミノ酸のいずれかからなる任意のポリマー
。「ポリペプチド」は、しばしば、比較的大きいポリペプチドに関して使用され
るが、「ペプチド」は、しばしば小ポリペプチドに関して使用され、当該分野に
おけるこれらの用語の使用頻度は重複し、そして変動する。用語「タンパク質」
とは、本明細書中で使用される場合、他に注記されなければ、ペプチド、タンパ
ク質およびポリペプチドをいう。
【0036】
「変異体」−生物の遺伝物質における任意の変化、特に、野生型ポリヌクレオ
チド配列における任意の変化(すなわち、欠失、置換、付加または改変)または
野生型タンパク質における任意の変化。用語「ムテイン」は、「変異体」と交換
可能に使用される。
【0037】
「野生型」−通常にはインビボで存在するような、天然に存在する、それぞれ
、タンパク質のエキソンのポリヌクレオチド配列もしくはその部分、またはタン
パク質配列もしくはその部分。
【0038】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」−ハイブリダイゼーションおよび洗
浄に関して、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩お
よび温度条件。従って、本明細書中で使用される場合、用語「標準的なハイブリ
ダイゼーション条件」は、操作の規定であり、そしてハイブリダイゼーション条
件の一定範囲を包含する。より高いストリンジェンシーは、例えば、プラークス
クリーン緩衝液(0.2% ポリビニルピロリドン、0.2% Ficoll
400;0.2%ウシ血清アルブミン、50mM Tris−HCl(pH7.
5);1M NaCl;0.1% リン酸ナトリウム;1% SDS);10%
硫酸デキストラン、および100μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNA
を用いた65℃で12〜20時間のハイブリダイゼーション工程、ならびに75
mM NaCl/7.5mM クエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1%
SDSを用いた65℃での洗浄工程を含み得る。より低いストリンジェンシー条
件は、例えば、プラークスクリーン緩衝液、10% 硫酸デキストランおよび1
10μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAを用いた55℃で12〜20時
間のハイブリダイゼーション工程、ならびに300mM NaCl/30mM
クエン酸ナトリウム(2×SSC)/1% SDSを用いた55℃での洗浄工程
を含み得る。Current Protocols in Molecular
Biology,John Wiley&Sons,Inc.New Yor
k,第6.3.1〜6.3.6節(1989)もまた参照のこと。
【0039】
「発現制御配列」−遺伝子に作動可能に連結された場合にそれらの遺伝子の発
現を制御および調節するポリヌクレオチド配列。
【0040】
「作動可能に連結される(た)」−ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA)
は、発現制御配列に作動可能に連結され、その発現制御配列がポリヌクレオチド
配列の転写および翻訳を制御および調節する。用語「作動可能に連結される(た
)」は、発現されるポリヌクレオチド配列の前に適切な開始シグナル(例えば、
ATG)を有し、発現制御配列の制御下でのこのポリヌクレオチド配列の発現、
およびこのポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの生
成を可能にするように正しいオープンリーディングフレームを維持することを含
む。
【0041】
「発現ベクター」−発現ベクターが宿主細胞に導入される場合に、少なくとも
1つの遺伝子の発現を可能にする(他の一般的例の中でも)ポリヌクレオチド(
例えば、DNAプラスミドまたはファージ)。このベクターは、細胞中で複製さ
れてもよいし、複製されなくてもよい。
【0042】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペ
プチドをコードする核酸(すなわち、ポリヌクレオチド配列)に適用される場合
には、RNAまたはDNAポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの一部、
cDNAまたは合成ポリヌクレオチドを意味する。これらは、その起源または操
作により:(i)天然で結合している全てのポリヌクレオチドと結合していない
(例えば、発現ベクターとして宿主細胞に存在するポリヌクレオチドまたはその
一部);または(ii)天然に連結している以外の、核酸または他の化学的部分
に連結している;または(iii)天然に存在しない。「単離される(た)」に
よって、(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりインビトロで増
幅される;(ii)化学合成される;(iii)クローニングにより組換え生成
される;または(iv)切断およびゲル分離により精製される、ポリヌクレオチ
ド配列がさらに意味される。
【0043】
従って、「実質的に純粋な核酸」は、核酸が由来している生物の天然に存在す
るゲノムにおいて通常は連続しているコード配列の一方または両方とはすぐに連
続していない核酸である。実質的に純粋なDNAはまた、さらなる配列をコード
するハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0044】
「単離される(た)」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)−ポリペ
プチドに対して適用される場合には、ポリペプチドまたはその一部を意味し、こ
れらは、その起源または操作により:(i)発現ベクターの一部の発現産物とし
て宿主細胞に存在する;または(ii)天然に連結している以外の、タンパク質
または他の化学的部分と連結している;または(iii)天然に存在しない。「
単離される(た)」によって、(i)化学合成される;または(ii)宿主細胞
において発現され、そして関連するタンパク質から精製される、タンパク質およ
び核酸がさらに意味される。この用語は、一般には、天然で共に存在する他のタ
ンパク質から分離しているポリペプチドを意味する。好ましくは、このポリペプ
チドはまた、精製するために使用される抗体またはゲルマトリクス(ポリアクリ
ルアミド)のような物質から分離される。
【0045】
「異種プロモーター」−本明細書中で使用される場合は、遺伝子または精製さ
れた核酸と天然には結合しないプロモーターである。
【0046】
「相同(な)」−本明細書中で使用される場合は、用語「同一」と類似であり
、そして2つのポリペプチド分子間または2つの核酸間の配列類似性をいう。2
つの比較される配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニッ
トにより占有される場合(例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデ
ニンにより占有されるか、または2つのポリペプチドの各々における位置がリジ
ンにより占有される場合)、それぞれの分子は、その位置で相同である。2つの
配列間の相同性パーセントは、2つの配列により共有される適合位置または相同
な位置の数を比較された位置の数で割って100をかけた関数である。例えば、
2つの配列間で10個の位置のうち6個が適合または相同である場合、2つの配
列は60%相同である。例を挙げると、DNA配列CTGACTおよびCAGG
TTは、50%の相同性を共有する(計6個の位置のうち3個が適合している)
。一般に、2つの配列が整列されて、最大の相同性が与えられた場合、比較が行
われる。このような整列は、例えば、Needlmanら、J.Mol.Bio
l.48:443−453(1970)の方法を用いて提供され得、Align
プログラム(DNAstar,Inc.)のようなコンピュータープログラムに
より簡便に実行され得る。相同な配列は、同一または類似のアミノ酸残基を共有
し、ここで、類似の残基は、整列された参照配列における対応するアミノ酸残基
の保存的置換または「許容された点変異」である。これに関して、参照配列にお
ける残基の「保存的置換」は、共有結合または水素結合を形成する能力などを含
む、対応する参照残基に物理的または機能的に類似する(例えば、類似のサイズ
、形状、電荷、化学的特性を有する)それらの置換である。特に好ましい保存的
置換は、Dayhoffら、5:Atlas of Protein Sequ
ence and Structure,5:補遺3,第22章:354−35
2,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washingt
on,D.C.(1978)における「受容される点変異」について規定される
基準を満たすものである。
【0047】
用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」はまた、本明細書
中で交換可能に使用される。
【0048】
用語「脈管形成」および「新生血管形成」は、それらの最も広い意味において
、新たな血管の増加を意味する。特に、「脈管形成」はまた、腫瘍部位での新た
な血管の増加をいう。
【0049】
「IFNAR2」、「IFNAR1」、「IFNAR1/2」とは、細胞表面
1型インターフェロンレセプターを含むことが公知のタンパク質をいう。IFN
AR2鎖の細胞外部分(外部ドメイン)は、単独で、インターフェロンαまたは
インターフェロンβを結合し得る。
【0050】
本発明の実施は、他に示されない限り、当業者の範囲内の、細胞生物学、細胞
培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の
従来の技術を使用する。このような技術は、文献に記載される。例えば、Mol
ecular Cloning:A Laboratory Manual,第
2版(Sambrook,FritschおよびManiatis編)Cold
Spring Harbor Laboratory Press,1989
;DNA Cloning,第I巻および第II巻(D.N.Glover編)
1985;Oligonucleotide Synthesis(M.J.G
ait編)1984;米国特許第4,683,195号(Mullisら);N
ucleic Acid Hybridization(B.D.Hamesお
よびS.J.Higgins編)1984;Transption and T
raslation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編)1
984;Culture of Animal Cells(R.I.Fres
hney編)Alan R.Liss,Inc.,1987+Immobili
zed Cells and Enzymes,IRL Press,1986
;A Practical Guide to Molecular Clon
ing(B.Perbal)1984;Methods in Enzymol
ogy、第154巻および第155巻(Wuら編)Academic Pres
s New York;Gene Transfer Vectors for
Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Ca
los編)1987、Cold Spring Harbor Laborat
ory;Immunochemical Methods in Cell a
nd Molecular Biology(MayerおよびWalker編
)、Academic Press London,1987;Handboo
k of Experiment Immunology、第I〜IV巻(D.
M.WeirおよびBlacjwell編)1986;Manipulatin
g the Mouse Embryo、Cold Spring Harbo
r Laboratory Press、1986。
【0051】
(インターフェロン−β)
インターフェロン−β−1aは、疾患状態、生理学的状態、症状または病因因
子の処置、寛解または減弱、あるいはこれらの評価または診断のための薬剤とし
て有用である。この用語はまた、それ自体が、融合タンパク質(例えば、免疫グ
ロブリン−インターフェロン−β−1a融合タンパク質(同時係属出願番号60
/104,572および同60/120,161に記載されるような))の部分
である、インターフェロン−β−1aをいう。融合タンパク質の調製は、一般的
に、当業者の周知である。
【0052】
本発明者らは、インターフェロン−β−1aの機能を破壊しないポリマー結合
のための固有の部位を見出した。さらに、本発明者らはまた、ポリマー結合のた
めの部位を独立して調べるための部位特異的変異誘発法を使用した(実施例1を
参照のこと)。手短に言えば、本発明者らは、活性およびレセプター結合に必要
とされる残基のマッピングを目指して、ヒトインターフェロン−β−1aの変異
分析を行った。インターフェロン−β−1aの3D結晶構造の入手可能性(上記
および実施例1を参照のこと)は、本発明者らが、アラニン(または、セリン)
置換のための、インターフェロンβレセプター相互作用に利用可能な、溶媒に露
出される残基を同定し、そして分子内結合に関与するアミノ酸を保持することを
可能にする。インターフェロン−β−1aのヘリックス(A、B、C、D、E)
およびループ(AB1、AB2、AB3、CD1、CD2、DE1、DE2)の
各々が、異なる領域に沿って2〜8残基間で置換される、15のアラニンスキャ
ニング変異のパネルを設計した。実施例1を参照のこと。
【0053】
哺乳動物細胞で発現された変異体(図10およびcDNAおよび推定アミノ酸
配列について、それぞれ配列番号(SEQ ID NO:)1および配列番号2
)のアフィニティー精製のために、アミノ末端ヒスチジンタグ(「his」タグ
)を含んだ。これらの変異体の機能的コンセンサスを、抗ウイルスアッセイおよ
び抗増殖アッセイにおいて評価する。非放射活性結合アッセイを開発し、これら
の変異体をインターフェロンβ表面細胞レセプター(IFNAR1/2細胞表面
レセプター)へのそれらの結合について分析した。さらに、IFNAR2−エク
トドメイン/Ig融合タンパク質を使用してインターフェロンを結合する、EL
ISAベースのアッセイを使用して、インターフェロン−β−1aとIFNAR
2との間の表面の相互作用をマッピングした(実施例1を参照のこと)。これら
の変異分析は、N末端およびC末端が、レセプター結合または生物学的機能に重
要でないインターフェロンβ分子の部分に位置することを実証した。
【0054】
これらの変異体は、本発明のインターフェロン−β−1a部分のさらなる改変
体であり、これは、野生型のインターフェロン−β−1aに見出されない新規な
特性を示すので、特に有用であり得る(実施例1を参照のこと)。本発明者らは
、標的化された変異誘発によって引き起こされる3つの型の効果を同定した。こ
れらの効果は、特定の状況下でのインターフェロン薬物開発に有利であり得る。
これらの3つの型の効果は、以下のとおりである:(a)his−野生型インタ
ーフェロン−β−1aの抗ウイルス活性より高い抗ウイルス活性を有する変異体
(例えば、変異体C1);(b)his−野生型インターフェロン−β−1aと
比較して、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖性アッセイの両方において活性を提
示するが、その抗増殖活性は、抗ウイルス活性に対して不釣合に低い、変異体(
例えば、変異体C1、DおよびDE1);および(c)his−野生型インター
フェロン−β−1aと比較して、レセプター結合に対して不釣合に低い、抗ウイ
ルス活性および抗増殖性活性を示す、機能的アンタゴニスト(例えば、A1、B
2、CD2およびDE1)。
【0055】
(ポリマー部分)
本発明の広い範囲内において、単一のポリマー分子が、インターフェロン−β
−1aとの結合体化に使用され得るが、1より多いポリマー分子も同様に結合さ
れ得ることもまた意図される。本発明の結合体化インターフェロン−β−1a組
成物は、インビボおよび非インビボ適用の両方において、有用性を見出し得る。
さらに、この結合体化ポリマーは、目的用途適用に適切な、任意の他の基、部分
、または他の結合体化される種を利用し得る。例として、ポリマーに、そのポリ
マー対してUV分解耐性、または抗酸化、あるいは他の特性または特徴を付与す
る、機能性部分を共有結合させることが、いくつかの適用において有用であり得
る。さらなる例として、ポリマーを官能基化して、そのポリマーを反応性または
架橋可能な性質にするか、結合体化物質全体の種々の特性または特徴を増強する
ことが、いくつかの適用において有利であり得る。従って、ポリマーは、その意
図される目的のための結合体化インターフェロン−β−1a組成物の効力を妨げ
ない、任意の官能基、反復基、連結または他の構成構造を含み得る。本発明の他
の目的および利点は、以下の開示および添付の特許請求の範囲からより完全に明
らかである。
【0056】
これらの所望の特徴を達成するために有用に使用され得る例示的ポリマーは、
例示的反応スキームにおいて、本明細書中以下に記載される。共有結合されたペ
プチドの適用において、このポリマーは官能化され得、次いで、このペプチドの
遊離アミノ酸に結合され、不安定な結合を形成する。
【0057】
インターフェロン−β−1aは、最も好ましくは、ポリマー上の末端反応基を
介して、結合体化されるが、結合体化はまた、非末端反応基からの分枝され得る
。この反応基を有するポリマーは、本明細書中「活性化ポリマー」として命名さ
れる。この反応基は、タンパク質上の遊離アミノ基または他の反応基と選択的に
反応する。この活性化ポリマーは、結合が、インターフェロン−β−1aの任意
の利用可能なアミノ基(例えば、リジンのαアミノ基またはεアミノ基)で生じ
得るように、反応される。インターフェロン−β−1aの遊離のカルボキシル基
、適切に活性化されたカルボニル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、酸化され
た糖鎖部分およびメルカプト基(これらが、利用可能である場合)もまた、結合
部位として使用され得る。
【0058】
ポリマーは、インターフェロン−β−1a分子上の任意の位置で結合され得る
が、ポリマー結合の最も好ましい部位は、インターフェロン−β−1aのN末端
である。第2の部位は、C末端またはC末端近辺であり、かつ糖部分を介する。
従って、本発明は、その最も好ましい実施形態として、以下を意図する:(i)
インターフェロン−β−1aのN末端結合型ポリマー結合体;(ii)インター
フェロン−β−1aのC末端結合型ポリマー結合体;(iii)ポリマー結合体
の糖結合型結合体;ならびに(iv)インターフェロン−β−1a融合タンパク
質のN末端結合型ポリマー結合体、C末端結合型ポリマー結合体および糖結合型
ポリマー結合体。
【0059】
タンパク質濃度に依存して、一般にタンパク質1モルあたり約1.0〜約10
モルの活性化ポリマーが、使用される。最終量は、その産物の非特異的改変を最
小化しながら、この反応の程度を最大化することと、同時に、可能な場合にその
タンパク質の半減期を同時に至適化しながら、至適活性を維持する化学を規定す
ることとの間の平衡である。好ましくは、このタンパク質の生物学的活性の少な
くとも約50%が維持され、最も好ましくは、100%が維持される。
【0060】
この反応は、この反応基がN末端のαアミノ基上にある場合、生物学的に活性
な物質を不活性ポリマーと反応させる(好ましくは、約pH5〜7で)ために使
用される、任意の適切な方法によって生じ得る。一般的に、このプロセスは、活
性化ポリマー(これは、少なくとも1つの末端ヒドロキシル基を有し得る)を調
製する工程、およびその後、タンパク質をこの活性化ポリマーと反応させて、処
方に適切な可溶性タンパク質を生成する工程を包含する。上記の改変反応は、1
以上の工程を含み得る、いくつかの方法によって行われ得る。
【0061】
上記のように、本発明の最も好ましい実施形態は、インターフェロン−β−1
aのN末端を、ポリマーへの結合として利用する。適切な方法は、N末端改変型
インターフェロン−β−1aを選択的に得るために利用可能である。1つの方法
は、還元的アルキル化方法によって例示され、これは、インターフェロン−β−
1aに対する誘導体化に利用可能な、異なる型の一級アミノ基の差示的な反応性
(リジン上のεアミノ基 対 N末端メチオニン上のアミノ基)を利用する。適
切な選択条件下で、インターフェロン−β−1aのそのN末端でのカルボニル基
含有ポリマーでの実質的に選択的な誘導体化が、達成され得る。この反応は、イ
ンターフェロン−β−1aのリジン残基のεアミノ基とN末端残基のαアミノ基
との間のpKaの差異の利用を可能にさせるpHで行われる。この型の化学は、
当業者に周知である。
【0062】
本発明者らは、この選択性が、PEG−アルデヒドポリマーを、シアノ水素化
ホウ素ナトリウムの存在下でインターフェロン−β−1aと反応させる条件下で
、低pH(一般的に、5〜6)で反応を行うことによって維持される反応スキー
ムを利用した。この結果は、PEG−インターフェロン−β−1aの精製ならび
にSDS−PAGE、MALDI質量分析法およびペプチド配列決定/マッピン
グでの分析後に、そのN末端が、PEG部分によって特異的に標的化されるイン
ターフェロン−β−1aを生じた。
【0063】
インターフェロン−β−1aの結晶構造は、そのN末端およびC末端が、互い
に近接に位置するような状態である(Karpusasら、1997、Proc
.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818を参照のこと)
。従って、インターフェロン−β−1aのC末端の改変もまた、活性に対する最
小の効果を有するはずである。ポリアルキレングリコールポリマー(例えば、P
EG)をC末端に標的化するための単純な化学ストラテジーは存在しないが、そ
のポリマー部分を標的化するために使用され得る部位を遺伝子操作することは容
易である。例えば、C末端またはC末端近辺にある部位でのCysの組み込みは
、マレイミド、ビニルスルホンまたはハロアセテートで活性化した、ポリアルキ
レングリコール(例えば、PEG)を使用する、特異的改変を可能にする。これ
らの誘導体は、これらの試薬のCysに対する高度な選択性に起因して、この操
作されたシステインの改変に特異的に使用され得る。他のストラテジー(例えば
、標的化され得るヒスチジンタグの組み込み(Fancyら(1996)Che
m.& Biol.3:551)またはさらなるグリコシル化部位の組み込み)
は、インターフェロン−β−1aのC末端を改変するための他の代替法を提示す
る。
【0064】
インターフェロン−β−1a上のグリカンもまた、活性を変化させることなく
、さらなる改変を可能にする位置に存在する。化学的改変のための部位として糖
を標的化するための方法もまた周知であり、従って、ポリアルキレングリコール
ポリマーは、酸化によって活性化されたインターフェロン−β−1a上の糖に、
直接的かつ特異的に付加され得るようである。例えば、アルデヒドおよびケトン
との縮合による比較的安定なヒドラゾン結合を形成する、ポリエチレングリコー
ル−ヒドラジヒドラジドが生成され得る。この特性は、酸化オリゴサッカリド結
合を介するタンパク質の改変に使用されている。Andresz,H.ら(19
78)、Makromol.Chem.179:301を参照のこと。特に、P
EG−カルボキシメチルヒドラジドの亜硝酸塩での処理は、アミノ基に対して反
応性の求電子活性基である、PEG−カルボキシメチルアジドを生成する。この
反応は、ポリアルキレングリコール改変型タンパク質を調製するために同様に使
用され得る。米国特許第4,101,380号および同第4,179,337号
を参照のこと。
【0065】
本発明者らは、チオールリンカー媒介化学が、タンパク質の架橋をさらに容易
にし得ることを、以前に発見した。特に、本発明者らは、過ヨウ素酸ナトリウム
での炭水化物部分上の反応性アルデヒドの生成、このアルデヒドを介するシスタ
ミン結合体の形成およびこのシスタミン上のチオール基を介する架橋の誘導のよ
うな手段を使用して、LFA−3およびCD4のホモタイプマルチマーを生成し
た。Pepinsky,B.ら(1991)J.Biol.Chem.,266
:18244−18249およびChen,L.L.ら(1991)J.Bio
l.Chem.,266:18237−18243を参照のこと。従って、本発
明者らは、この型の化学がまた、リンカーが糖に組み込まれ、そしてポリアルキ
レングリコールポリマーがそのリンカーに結合される、ポリアルキレングリコー
ルポリマーでの改変に適切であると考えた。アミノチオールまたはヒドラジンを
含有リンカーは、単一のポリマー基の付加を可能にする一方で、複数のポリマー
が付加されるように、そして/またはインターフェロン−β−1aに対するその
ポリマーの空間的配向を変化させるように、このリンカー構造が、改変され得る

【0066】
本発明の実施において、C1〜C4のアルキルポリアルキレングリコールのポ
リアルキレングリコール残基(好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)
)またはこのようなグリコールのポリ(オキソ)アルキレングリコール残基は、
目的のポリマー系に有利に組み込まれる。従って、タンパク質が結合されるポリ
マーは、全ての場合において、このポリマーが室温の水中で可溶性であるという
条件でポリエチレングリコール(PEG)のホモポリマーであり得るか、または
ポリオキシエチル化ポリオールである。このようなポリマーの非限定的な例とし
ては、ポリアルキレンオキシドホモポリマー(例えば、PEGまたはポリプロピ
レングリコール)、ポリオキシエチレン化グリコール、それらのそれらのコポリ
マーおよびそれらのブロックコポリマー(このブロックコポリマーの水溶性が維
持される場合)が挙げられる。ポリオキシエチル化ポリオールの例としては、例
えば、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポ
リオキシエチル化グリセロールなどが挙げられる。ポリオキシエチル化グリセロ
ールのグリセロール骨格は、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリ
ドの、例えば、動物およびヒトにおいて天然に存在する同じ骨格である。従って
、この分枝化は、体内において外来因子として必ずしもみなされない。
【0067】
ポリアルキレンオキシドの代替物として、デキストラン、ポリビニルピロリド
ン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、炭水化物ベースのポリマーな
どが使用され得る。当業者は、前述のリストが、単なる例示であり、そして本明
細書中に記載される性質を有する全てのポリマー材料が意図されることを認識す
る。
【0068】
ポリマーは、任意の特定の分子量を有する必要はないが、分子量は、約300
〜100,000、より好ましくは、10,000〜40,000であることが
好ましい。特に、20,000以上のサイズが、腎臓における濾過に起因するタ
ンパク質の損失の防止において最適である。
【0069】
ポリアルキレングリコール誘導体化は、以下のポリアルキレングリコール誘導
体の特性に関連するような、本発明の実施におけるポリマー−インターフェロン
−β−1a結合体の処方物において多くの有利な特性を有する:水溶性の改善(
それと同時に抗原性または免疫原性応答を全く誘発しない);高度な生体適合性
;ポリアルキレングリコール誘導体のインビボ生分解性の非存在;および生存生
物による排出の容易性。
【0070】
さらに、本発明の別の局面において、ポリマー成分に共有結合されたインター
フェロン−β−1aが利用され得、ここで、この結合体の性質として、切断可能
な共有化学結合が挙げられる。これは、ポリマーがインターフェロン−β−1a
から切断され得る時間経過を考慮した制御を可能にする。インターフェロン−β
−1a薬物とポリマーとの間のこの共有結合は、化学反応または酵素反応によっ
て切断され得る。ポリマー−インターフェロン−β−1a産物は、受容可能な量
の活性を保持する。同時に、ポリエチレングリコール部分が、この結合体化ポリ
マー中に存在し、このポリマー−インターフェロン−β−1a結合体に、高い水
溶性および長期の血液循環能力を与える。これらの改善された特徴の結果として
、本発明は、インビボ適用における、活性なポリマー−インターフェロン−β−
1a種および加水分解切断後の、バイオアベイラビリティのインターフェロン−
β−1a自体の非経口送達、鼻内送達および経口送達、の両方を意図する。
【0071】
本明細書中に記載される反応スキームは、例えば、非経口および経口投与のた
めの可溶性、安定性および細胞膜親和性を達成するためにインターフェロン−β
−1aの改変において使用され得る反応および構造に関して、例示目的のみに提
供され、限定されないことが理解されるべきである。最も好ましいN末端結合体
化産物を得るための、ポリマーのインターフェロン−β−1aとの反応は、広範
な種の反応スキームを使用して容易に行われる。インターフェロン−β−1a結
合体の活性および安定性は、異なる分子サイズのポリマーを使用することによっ
て、いくつかの方法において変更され得る。この結合体の可溶性は、ポリマー組
成物に組み込まれるポリエチレングリコールフラグメントの割合およびサイズを
変化させることによって、変更され得る。
【0072】
(有用性)
本発明の治療適用のために価値のあるポリアルキレングリコール誘導ポリマー
の固有の特性は、その一般的な生体適合性である。ポリマーは、種々の水溶性特
性を有し、そして毒性ではない。これらは、非免疫原性および非抗原性であると
考えられ、そして本明細書中に記載の条件下で結合体化される場合に、インター
フェロン−β−1a部分の生物学的活性を干渉しない。これらは、血中での長期
の循環を有し、そして生存生物から容易に排出される。
【0073】
本発明の産物は、治療的インターフェロン−β−1aの半減期を維持する際に
有用であることが見出され、そして例えば、治療投与のために、水または受容可
能な液体媒体中に溶解させることによって調製され得る。投与は、非経口経路、
エアロゾル経路、または経口経路のいずれかによる。微細なコロイド懸濁液が、
デポー効果を生じるように非経口投与または経口経路によるために調製され得る
が、エアロゾル処方物は、本質的に液体または乾燥粉末であり得る。乾燥の、凍
結乾燥状態または液体処方物において、本発明のインターフェロン−β−1a−
ポリマー結合体は、良好な貯蔵安定性を有する。結合体化インターフェロン−β
−1aの熱安定性(実施例3)は、脱水工程を有する粉末処方プロセスにおいて
有利である。例えば、PCT/US/95/06008(「Methods a
nd Compositions for Dry Powder of In
terferons」)を参照のこと。
【0074】
本発明の治療ポリマー結合体は、インターフェロン−β−1a構成成分が有効
である、任意の状況または疾患状態の予防または処置のために利用され得る。さ
らに、本発明のポリマーベースの結合体は、生物系または生物学的検体における
における構成、状況または疾患状態の診断において、ならびに非病理学系におけ
る診断目的において、利用され得る。
【0075】
治療的用法において、本発明は、このような状況または疾患状態を有するかま
たは潜在的に感受性であり、このような処置が必要な動物被験体を処置する方法
を意図し、この方法は、この状況または疾患状態に治療効果的である本発明のポ
リマー結合体の有効量を、このような動物に投与する工程を包含する。本発明の
ポリマー結合体によって処置されるべき被験体としては、哺乳動物被験体、そし
て最も好ましくはヒト被験体が挙げられる。闘うべき特定の状況または疾患状態
に依存して、動物被験体は、任意の適切な治療効果的かつ安全な投与量で、本発
明のポリマー結合体を投与され得る。この用量は、当業者の能力の範囲内で、か
つ過度の実験なく、容易に決定され得る。I型インターフェロンの種の関門のた
めに、適切な種由来のインターフェロンを用いて、本明細書中に記載のようなイ
ンターフェロン−ポリマー結合体を生成することが必要であり得る。
【0076】
インターフェロン−β−1aの抗細胞増殖性活性は周知である。特に、本明細
書中に記載の特定のインターフェロン−β−1aポリマー結合体は、腫瘍および
癌(例えば、骨原性肉腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、乳癌、黒色腫および
鼻咽頭癌)、ならびに自己免疫状態(例えば、線維症、狼瘡および多発性硬化症
)の処置に有用である。これらの結合体化タンパク質(特に、本明細書中に記載
の特定のインターフェロン−β−1aムテイン結合体)によって示される抗ウイ
ルス活性は、ウイルス疾患(例えば、ECM感染、インフルエンザ、および他の
気道感染、狂犬病、および肝炎)の処置に有用であり得る。本明細書中に記載さ
れる結合体化タンパク質によって示されるインターフェロン−β−1aの免疫調
節活性は、自己免疫疾患および炎症性疾患(例えば、線維症、多発性硬化症)の
処置に有用であり得ることもまた予期される。インターフェロンが、新しい血管
の形成を阻害する(すなわち、脈管形成および新生血管形成を阻害する)能力は
、本発明の結合体を、脈管形成疾患(例えば、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、
黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシ
スおよびOsler−Webber症候群)を処置するために使用可能にする。
【0077】
さらに、インターフェロンの抗内皮活性は、かなりの間、知られており、イン
ターフェロン作用の1つの潜在的機構は、腫瘍細胞によって生成された脈管形成
因子の産生または効力を阻害することによって、内皮細胞活性を干渉することで
あり得る。いくつかの血管腫瘍(例えば、血管腫)は、インターフェロンでの処
置に特に感受性である。インターフェロン−αでの処置は、この疾患についての
唯一の実証された処置である。本発明のインターフェロン−β−1a結合体での
処置は、薬物動態および薬力学の点で実質的な薬学的利点を提供することが予期
される。なぜなら、この結合体は、非結合体化インターフェロンより長時間、血
管系中に維持され、従って、抗脈管形成剤としての使用のために、より効率的か
つ効果的な治療をもたらすと予期されるからである。実施例8を参照のこと。
【0078】
本発明のポリマー−インターフェロン−β−1a結合体は、それ自体で投与さ
れ得、そして薬学的に受容可能なエステル、塩およびその他の生理学的に機能的
な誘導体の形態で投与され得る。このような薬学的および医薬処方物において、
インターフェロン−β−1aは好ましくは、1以上の薬学的に受容可能なキャリ
ア、および必要に応じて、任意の他の治療成分と共に使用される。キャリアは、
この処方物の他の成分と適合性であり、そしてそのレシピエントに過度に有害で
ないという意味において薬学的に受容可能でなければならない。インターフェロ
ン−β−1aは、上記のような所望の薬理学的効果を達成するのに有効な量、お
よび所望の日用量を達成するのに適切な量で提供される。
【0079】
処方物としては、非経口投与および非経口でない(non−parenter
al)投与に適切な処方物が挙げられ、そして特定の投与様式としては、経口、
直腸、口腔(buccal)、局所的、鼻、眼、皮下、筋内、静脈内、経皮、髄
腔内、関節内、動脈内、クモ膜下、気管支、リンパ、膣、および子宮内への投与
が挙げられる。経口投与、鼻投与および非経口投与に適切な処方物が、好ましい

【0080】
インターフェロン−β−1aは、液体溶液を含む処方物において利用される場
合、この処方物は、経口または非経口的に、有利に投与され得る。インターフェ
ロン−β−1aが、液体懸濁液処方物中で、または生体適合性キャリア処方物中
の粉末として使用される場合、この処方物は、経口、直腸または気管支に、有利
に投与され得る。
【0081】
インターフェロン−β−1aが散剤化固体の形態で直接使用される場合、イン
ターフェロン−β−1aは、有利に経口的に投与され得る。あるいは、インター
フェロン−β−1aは、キャリアガス中の散剤の噴霧を介して、経鼻的または経
気管支的に投与されて、散剤のガス状の分散を形成し、これは、適切な噴霧デバ
イスを備える呼吸経路から患者によって吸入される。
【0082】
本発明のポリマー結合体を含む処方物は、単位用量形態で簡便に提供され得、
そして薬学の技術分野において周知である方法のいずれかによって調製され得る
。このような方法は、一般的に、活性成分に、1つ以上の補助成分を構成するキ
ャリアを付随させる工程を包含する。代表的には、活性成分に、均一にかつ密接
に、液体キャリア、微細に分裂させた固体キャリア、またはその両方を付随させ
ること、次いで、必要な場合、生成物を所望の処方物の用量形態に形成すること
によって処方物を調製する。
【0083】
経口投与に適切な本発明の処方物は、カプセル剤、カシェ剤、錠剤、またはロ
ゼンジのような個別の単位として提供され得、各々は、散剤もしくは顆粒;また
は水性溶液もしくは非水性溶液中の懸濁物(例えば、シロップ剤、エリキシル剤
、懸濁液、または一回分(draught))として活性成分の所定の量を含む

【0084】
錠剤は、必要に応じて、1つ以上の補助成分を用いて、圧縮または成形によっ
て作製され得る。圧縮された錠剤は、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、不活性希釈剤、
界面活性剤、または抜染剤とともに必要に応じて混合される散剤または顆粒のよ
うな自由に流動する形態にある活性化合物とともに、適切な機械中で圧縮される
ことによって調製され得る。適切なキャリアとの粉末ポリマー結合体の混合物か
らなる成形される錠剤は、適切な機械中で成形することによって作製され得る。
【0085】
シロップ剤は、濃縮された糖(例えば、ショ糖)の水溶液に活性化合物を添加
することによって作製され得、これにまた任意の補助成分を添加し得る。このよ
うな補助成分には、人工香味料、適切な保存料、糖の結晶を保持するための薬剤
、および任意の他の成分の可溶性を増大させる薬剤(例えば、ポリヒドロキシア
ルコール(例えば、グリセロールまたはソルビトール))が含まれ得る。
【0086】
非経口投与のために適切な処方物は、簡便に、活性結合体の滅菌水性調製物を
含み、これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張性である(例えば、生理
食塩水溶液)。このような処方物には、血液成分または1つ以上の器官に化合物
を標的化するために設計される、懸濁剤および濃厚剤または他の微粒子系が含ま
れ得る。その処方剤は、単位用量形態または複数用量形態で提供され得る。
【0087】
鼻用スプレー処方物は、保存剤および等張剤を有する活性結合体の精製された
水溶液を含む。このような処方物は、好ましくは、鼻の粘膜と適合可能なpHお
よび等張状態に調整される。
【0088】
直腸投与のための処方物は、適切なキャリア(例えば、ココアバター、水素化
脂肪、または水素化脂肪カルボン酸)を有する坐剤として提供され得る。
【0089】
眼の処方物(例えば、点眼剤)は、pHおよび等張性の因子が眼のpHおよび
等張性に好ましく適合する以外は、鼻用スプレーと同様の方法によって調製され
る。
【0090】
局所的処方物は、1つ以上の媒体(例えば、鉱油、石油、ポリヒドロキシアル
コール、または局所的薬学的処方のために使用される他の基剤)中に可溶化され
るかまたは懸濁される本発明の結合体を含む。
【0091】
上述の成分に加えて、本発明の処方物はさらに、希釈剤、緩衝剤、香味剤、崩
壊剤、界面活性剤、濃厚剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化剤を含む)などから選択さ
れる1つ以上の補助成分を含み得る。
【0092】
従って、本発明は、非治療的適用の好ましい例証的な適用として、溶液中での
インターフェロン−β−1aのインビトロ安定化のための適切なポリマーの提供
を意図する。そのポリマーは、例えば、インターフェロン−β−1aの温度安定
性および酵素分解耐性を増大するために利用され得る。本発明の様式における結
合を介するインターフェロン−β−1aに特徴的な温度安定性の増強は、保存期
間の改善、室温安定性、ならびに研究用試薬およびキットの強固さの手段を提供
する。
【0093】
以下の実施例は、本発明を例証するために提供され、そしてその限定としては
解釈されるべきではない。特に、インビボで、本明細書中に記載された動物実験
が変更され得、その結果、基本的な方法論の他の改変およびバリエーションが可
能であることが理解される。例えば、実施例5において、当業者は、他のネオプ
テリンアッセイを使用し得るか、または使用される霊長類の数および種類を変更
し得る。実施例に対するこれらの変更およびバリエーションは、本発明の意図お
よび範囲にあると見なされる。
【実施例】
【0094】
(実施例1:アラニン/セリン置換変異を使用するヒトインターフェロン−β
−1aの構造/活性研究:レセプター結合部位および機能的ドメインの分析)
(A.概観)
ヒトインターフェロン−β−1a(INF−β−1a)の広範な変異分析を、
活性およびレセプター結合に必要である残基のマッピングの目的で行った。ヒト
INF−βの3−D結晶構造(Karpusas,M.ら、1997,Proc
.Natl.Acad.Sci.94:11813−11818)の利用可能性
は、本発明者らに、レセプター相互作用のために利用可能な、溶媒にさらされて
いる残基である、アラニン(またはセリン)置換を同定することおよび分子内結
合に関与するアミノ酸を保持することを可能にした。各ヘリックス(A、B、C
、D、E)およびループ(AB、CD、DE)の別個の領域に沿って2残基と8
残基との間を置換する、15アラニン置換変異のパネルを設計した。アフィニテ
ィー精製のための6ヒスチジン残基を含むアミノ末端ヒスチジンタグ、ならびに
アミノ末端伸長の除去のためのエンテロキナーゼ切断部位を含めた。得られるイ
ンターフェロンは、「hisタグ化インターフェロン(IFN)−β」または「
His−インターフェロン−β」または「His6−インターフェロン−β」な
どといわれる。
【0095】
種々の変異体hisタグ化IFN−β発現プラスミドを、野生型IFN−β遺
伝子構築物を変異誘発のための鋳型として使用して構築した。変異誘発ストラテ
ジーは、野生型hisタグ化IFNβ遺伝子を通して独特な制限酵素切断部位を
最初に導入する工程を包含し、次いでアラニン(またはセリン)置換変異をコー
ドする合成オリゴヌクレオチド二重鎖を用いて選択された制限酵素間で別個のD
NA配列を置き換える工程を包含した。最後に、変異体IFN遺伝子を、ヒト2
93腎臓細胞株中での哺乳動物細胞発現を指向するプラスミドにサブクローニン
グした。
【0096】
これらの変異の機能的な配列を、抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイに
おいて評価した。非放射活性IFN結合アッセイを開発して、ヒトDaudiバ
ーキットリンパ腫細胞の表面レセプター(「IFNAR1/2複合体」)への結
合においてこれらの変異体を分析した。さらに、his−IFN−β変異体とI
FNAR2との間の相互作用表面をマッピングするためのアッセイを開発した。
これは、IFNAR2/Ig融合タンパク質を利用し、ヒトIgG1のヒンジド
メイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインに融合したIFNレセプタータ
ンパク質IFNAR2細胞外ドメインからなった。
【0097】
(1.変異誘発の鋳型としてのインターフェロンβ遺伝子の作製)
IFN−βのアラニン(またはセリン)置換変異体を生成するための本発明者
らのストラテジーは、最初に、改変IFN−β遺伝子を作製することであった。
この遺伝子は、野生型タンパク質をコードするが、遺伝子を横切って散在する独
特な制限酵素切断部位を有した。その独特な部位は、変異コドンをコードする合
成オリゴヌクレオチド二重鎖についての野生型配列を交換するために使用された
。変異遺伝子の作製のために適切なヒトIFN−β−1a発現カセットを得るた
めに、IFN−β cDNA(GenBank登録番号#E00029)を、P
CRによって増幅した。IFN−β遺伝子のプラスミドpJB107(pACY
C184の誘導体、Roseら、1988、Nucleic Acids Re
s.16(1)355を参照のこと)への最初のクローニングは、変異誘発を通
して生成される特定の制限部位を欠くプラスミド中での遺伝子の部位特異的変異
誘発を実行するために必要であった。
【0098】
ヒトIFN−β遺伝子のコード配列をサブクローニングするために使用される
PCRプライマーはまた、本発明者らに、そのIFN−β遺伝子の上流かつその
遺伝子とインフレームでエンテロキナーゼ切断部位を導入することを可能にした
。5’PCRプライマー 5’TTCTCCGGAGACGATGATGACA
AGATGAGCTACAATTTGCTTGGATTCCTACAAAGAA
GC−3’(配列番号3:「BET−021」)および3’プライマー 5’−
GCCGCTCGAGTTATCAGTTTCGGAGGTAACCTGTAA
GTC−3’(配列番号4:「BET−022」)ならびにプラスミドpMJB
107部位へのクローニングのために有用な隣接する制限酵素部位(BspEI
およびXhoI)。得られるDNAは、PCRフラグメントAといわれる。
【0099】
ヒト血管細胞接着分子−1(VCAM−1)シグナル配列由来の効率的なシグ
ナル配列および6ヒスチジンタグを、pDSW247から生成された第2のDN
Aフラグメント(フラグメントB)からの最終構築物に導入した。プラスミドp
DSW247は、pCEP4(Invitrogen,Carlsbad,CA
)の誘導体であり、ここからEBNA−1遺伝子が欠失され、そしてこの誘導体
は、6ヒスチジンタグの上流にかつこれとインフレームに融合されたVCAM−
1シグナル配列(VCAMss)を有する。VCAMss−1/ヒスチジンタグ
カセット部分を生成するために使用されたPCRプライマーは、フラグメントB
DNAの切除を可能にする、隣接する制限酵素切断部位(NotIおよびBs
pEI)を組み込んでいるKID369(5’PCRプライマー 5’−AGC
TTCCGGGGGCCATCATCATCATCATCATAGCT−3’:
配列番号5)およびKID−421(3’プライマー CCGGAGCTATG
ATGATGATGATGATGGCCCCCGGA−3’:配列番号6)であ
った。
【0100】
VCAM−1シグナル配列、hisタグおよびインターフェロン−β遺伝子を
有するプラスミドベクターを作製するために、本発明者らは、プラスミドベクタ
ーpMJB107(NotIおよびXhoI切断された)、PCRフラグメント
A(BspEIおよびXhoI切断された)、およびフラグメントB(NotI
およびBspEI切断された)からゲル生成されたDNAフラグメントを使用し
て、3工程連結(three−way ligation)を行った。連結され
たプラスミドを使用して、JA221またはXL1−BlueのE.coli細
胞のいずれかを形質転換し、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げ、そし
て制限地図分析によってインサートについて試験した。ミニプレップDNAを作
製し、そしてインサートの配列を、DNA配列決定によって確認した。得られた
構築物を、pCMG260と名付けた。
【0101】
(2.pCMG260におけるヒトインターフェロン−βのアラニン置換変異
体の作製)
プラスミドpCMG260を、多数回の変異誘発のための鋳型として使用した
(U.S.E.部位特異的変異誘発キット(Boehringer−Mannh
eim))。これは、独特な制限切断部位を、IFN−βタンパク質コード配列
に沿った位置に導入するが、タンパク質の得られる配列を変化させない。変異誘
発されたプラスミドを使用して、E.coliのJA221またはXL1−Bl
ue株のいずれかを形質転換し、そして組換えコロニーをクロラムフェニコール
耐性について選択した。クロラムフェニコール耐性コロニーを、さらに、DNA
制限マッピング分析によって、所望の独特な制限酵素部位の存在について試験し
た。得られるIFN−βプラスミドである、pCMG275.8は、独特な制限
酵素切断部位の全セットを含み、そしてその遺伝子のDNA配列を確認した。改
変された、hisタグ化インターフェロン−β遺伝子の全DNA配列(配列番号
1)は、タンパク質コード配列(配列番号2)とともに、図10に示される。
【0102】
アラニン置換変異のフルセットを、表1に示す(以下)。変異の名前は、変異
が導入された構造的領域(ヘリックスおよびループ)を特定する。アラニン(セ
リン)置換の全体のパネルは、ヒトIFN−βの165アミノ酸のうちの65の
変異を生じる。
【0103】
変異体のパネルを、pCMG275.8から、独特な制限部位間のDNAのセ
グメントを表2(以下を参照のこと)に示される遺伝子コード情報を有する合成
オリゴヌクレオチド二重鎖と置換することによって作製した。種々のアラニン置
換変異体プラスミドを作製するために、ゲル精製したpCMG275.8ベクタ
ー(各々のIFN−β構造領域について以下のリストに示されるように、適切な
制限酵素を用いて切断した)およびオリゴヌクレオチド二重鎖(表2において示
されるコード鎖配列)を一緒に連結した。連結混合物を使用して、E.coli
のJA221株を形質転換し、そして組換えコロニーを、アンピシリン耐性につ
いて選択した。アンピシリン耐性コロニーを、適切な制限酵素部位についてスク
リーニングすることによって変異の挿入の存在について試験した。2つの変異体
(A2およびCD2)について、クローニングストラテジーは、合成ヌクレオチ
ドの2つの二重鎖(表2に示す)を使用することを伴った。この二重鎖は相補的
な突出末端を有し、互いにおよびベクターIFN−β骨格を3工程連結で連結す
ることを可能にする。以下のリストは、表2からの変異したオリゴヌクレオチド
をクローニングするために使用された部位を例証する。このクローニングスキー
ム(サブセクションB)は、インターフェロン−β遺伝子上のこれらの独特な部
位の位置を示す。
【0104】
(表1.HUIFN−βのアラニン置換変異の位置)
【0105】
【表1】

【0106】
IFN−βと示された線は、野生型ヒトIFN−β配列を示す。IFN−β残基
のアラニン置換またはセリン置換を各々の変異体について示し、そして関連する
領域の下のダッシュは、野生型配列を示す。ヘリックス構造およびループ構造を
、変異体の下に実線として示す。DEループは、DヘリックスとEヘリックスと
の間にわたる。2つのさらなるアラニン置換変異体(H93A、H97A、およ
びH121A)を生成し、そして抗ウイルス活性において分析して、結晶構造二
量体において亜鉛をキレートするこれらのヒスチジンを変異させる効果を評価し
た。これらの変異体の両方は、抗ウイルス活性において完全な野生型活性を保持
しており、このことは、亜鉛媒介二量体形成が、IFN−β活性に重要ではない
ことを示唆する。
【0107】
【表2】

【0108】

【0109】
(B.EBNA293発現プラスミドの構築)
VCAM−1シグナル配列、hisタグ、ならびにエンテロキナーゼ切断部位
に融合された野生型遺伝子および変異体IFN−β遺伝子を、761塩基対No
tIおよびBamHI制限フラグメントとしてゲル精製した。精製した遺伝子を
、図式に示すように、NotIおよびBamHI切断したプラスミドベクターp
DSW247にサブクローニングした。プラスミドpDSW247は、ヒトEB
NA293腎臓細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)におけ
るタンパク質の一過性発現のための発現ベクターである。このベクターは、クロ
ーニングストラテジーについての図式(以下)に見られるように、サイトメガロ
ウイルス初期遺伝子プロモーターおよびこの系における高いレベルの遺伝子発現
のために必要とされるEBV調節エレメント、ならびにE.coli(アンピシ
リン耐性)およびEBNA293細胞(ハイグロマイシン耐性)についての選択
マーカーを含む。連結したプラスミドを使用して、JA221 E.coli細
胞またはXL1−Blue E.coli細胞のいずれかを使用して形質転換し
、そしてアンピシリン耐性コロニーを拾い上げて、制限地図分析によってインサ
ートについて試験した。マルチプレップDNAを作製し、そしてインサートの配
列をDNA配列決定によって確認した。所望の変異した配列を示すポジティブク
ローンを使用して、以下に記載するように、ヒトEBNA293腎臓細胞をトラ
ンスフェクトするために使用した。
【0110】
全体のクローニングストラテジーを以下に示す:
(クローニングストラテジーおよびIFN−β発現プラスミドの図的表現)
【0111】
【化1】

【0112】
(C.IFN−β−1aアラニン置換変異体の発現および定量)
ヒトEBNA293細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA,
Chittenden,T.(1989)J.Virol.63:3016−3
025)を、10%胎仔ウシ血清、2mM グルタミン、および250μg/m
l Geneticin(Life Technologies,Gaithe
rsburg,MD)を補充したダルベッコ改変イーグル培地中のサブコンフル
エント培養物として維持した。pDSW247発現プラスミドを、リポフェクタ
ミンプロトコル(Gibco/BRL,Life Technologies)
を使用してEBNA 293細胞中に一過性にトランスフェクトした。馴化培地
を、トランスフェクションの3〜4日後に収集し、細胞細片を遠心分離によって
取り除き、そしてhis−IFN−β濃度をELISAによって定量した。
【0113】
ELISAアッセイを、ポリクローナルウサギ抗体(プロテインA精製したI
gG、抗体は精製したヒトIFN−β−1aに対して惹起された)を用いて96
ウェルELISAプレートをコートして行い、そして同じポリクローナルウサギ
IgGのビオチン化型を、ストレプトアビジン結合西洋ワサビペルオキシダーゼ
(HRP:Jackson ImmunoResearch,W.Grove,
PA)を用いるインターフェロン検出を可能にする二次試薬として使用した。イ
ンターフェロン−β−1aの一連の希釈を使用して、標準濃度曲線を生成した。
EBNAトランスフェクト体からのhis−IFN−β含有馴化培地を、希釈し
て、ELISAアッセイにおける10ng/mlと0.3ng/mlとの間の範
囲の濃度を有するサンプルを得た。ELISAによって決定された培地中のIF
N−βの濃度を確認するために、ウェスタンブロット分析を実行した。還元した
培養上清およびIFN−β−1a標準を、10〜20%勾配ゲル(Novex,
San Diego,CA)上のSDS−PAGEに供し、そしてPDVF膜上
にブロットした。免疫反応性バンドを、ウサギポリクローナル抗IFN−β−1
a抗血清(#447,Biogen,Inc.、二次抗血清はIFN−β−1a
に対して惹起された)、続いてHRR結合ロバ抗ウサギIgG(Jackson
ImmunoResearch)を用いる処理を用いて検出した。
【0114】
(D.レセプター結合についてのインターフェロン−β変異体の評価)
Cにおいて記載されたインターフェロン−β変異体のレセプター結合特性を、
2つの異なる結合アッセイを使用して評価した。1つのアッセイは、融合タンパ
ク質IFNAR2/Igに対するインターフェロン−β変異体の結合を測定した
。この融合タンパク質は、ヒトIgGの定常領域の部分に融合したヒトIFNA
R2レセプター鎖の細胞外ドメインを含む。IFNAR2−Fcを、チャイニー
ズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞中で発現し、そして製造業者の指示書(P
ierce Chem.Co.,Rockford,IL,カタログ番号#20
334)に従ってプロテインAセファロースアフィニティークロマトグラフィー
によって精製した。インターフェロン−β変異体のIFNAR2−Fcへの結合
を、ELISA形式アッセイにおいて測定した。ELISAプレートを、コーテ
ィング緩衝液(50mM NaHCO3、0.2mM MgCl2、0.2mM
CaCl2、pH 9.6)中10μg/mlのマウス抗ヒトIgGモノクロー
ナル抗体(CDG5−AA9、Biogen,Inc.)を50μl/ウェルで
、4℃で一晩、平底96ウェルプレートをコートすることによって調製した。プ
レートを、0.05% Tween−20を含むPBSで2回洗浄し、そしてP
BS中0.5%脱脂粉乳で、室温で1時間ブロックした。2回以上の洗浄後、0
.05% Tween−20を含むPBS中の0.5%ミルク中の1μg/ml
IFNAR2−Fcの50μlを各ウェルに添加し、そして室温で1時間イン
キュベートし、次いでプレートを2回以上洗浄した。インターフェロン−β変異
体のIFNAR2−Fcへの結合を、50μl/ウェルの変異体インターフェロ
ン−β馴化培地(10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地(
DMEM)で連続的に希釈した)中に添加すること、および4℃で2時間インキ
ュベートすることによって測定した。インターフェロン−β変異体の希釈は、代
表的には、およそ1μMから下方に10pMまでの範囲であった。洗浄後、プレ
ートに結合したインターフェロン−βを、ウサギポリクローナル抗インターフェ
ロン抗体(#447)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識化ロバ
抗ウサギIgG(Jackson ImmunoResearch)の1:10
00希釈からなるカクテルの50μl/ウェルを添加すること、および4℃で1
5分間インキュベートすることによって検出した。2回の洗浄の後、HRP基質
を添加し、そしてプレートを4℃でインキュベートし、その後ELISAプレー
トリーダー上で450nmの吸光度を読みとった。データを、吸光度対変異体イ
ンターフェロン−βの濃度をプロットし、そして変異体インターフェロン−βの
IFNAR2−Fcへの結合についての親和性を単純な双曲線式に一致させるこ
とによって決定した。これらの分析からの結果を図1に示し、ここでは、少なく
とも3つの独立した実験から決定された各変異体についての結合親和性が、Hi
s6−野生型インターフェロン−β−1aについて測定された親和性の割合とし
て表現される。
【0115】
第2のレセプター結合アッセイを使用して、インターフェロン−β変異体が両
方のレセプター鎖(IFNAR1およびIFNAR2、これらは、ともにインタ
ーフェロン−βについてのレセプターを含む)を発現するDaudi細胞に結合
する親和性を測定する。このFACSに基づくアッセイは、インターフェロン−
βが結合したレセプターから、占有されていない(遊離の)レセプターを区別す
るために、IFNAR1、EA12(Biogen,Inc.)の細胞外ドメイ
ンに対するモノクローナル抗体をブロックすることに使用した。Dauri細胞
(2.5×107細胞/mlで20μl)を、96ウェルV底ELISAプレー
トに配置し、そして種々の濃度のインターフェロン−β変異体(20μlのFA
CS緩衝液中;5% FBS、PBS中の0.1% NaN3)とともに4℃で
1時間インキュベートした。インターフェロン−β変異体の所望の連続希釈は、
0.5μMから下方に0.5pMまでの範囲であった。各ウェルに100ngの
ビオチン化マウス抗IFNAR1モノクローナル抗体EA12(10μl)を添
加し、そしてプレートを室温で2分間インキュベートし、その後FACS緩衝液
で2回洗浄した(4℃)。次いで、細胞を、R−フィコエリトリン結合体化スト
レプトアビジン(Jackson ImmunoResearch)の1:20
0希釈の50μl/ウェルとともに4℃で30分間インキュベートし、FACS
緩衝液で2回洗浄し、0.5%パラホルムアルデヒドを含む300μlのFAC
S緩衝液に再懸濁し、そして12×75mmポリスチレンチューブ(Falco
n 2052)に移した。次いで、サンプルをFACScan(Becton
Dickinson)上のフローサイトメトリーによって分析した。データを、
平均チャネル蛍光強度(MFCI)対インターフェロン−β変異体の濃度として
プロットし;結合親和性を、抗体染色の50%阻害を与えるインターフェロン−
βの濃度として規定した。各変異体を、複数回試験した。図2は、本発明の方法
によって決定され、各実験においてHis6−野生型インターフェロン−β−1
aについて測定された親和性の割合として表現された、各インターフェロン−β
についてのレセプター結合親和性を示す。
【0116】
(E.機能についてのインターフェロン−β変異体の評価)
インターフェロン−β変異体をまた、抗ウイルス活性に関するインビトロアッ
セイを用いて機能的な活性について、そして細胞増殖を阻害するインターフェロ
ン−βの能力について試験した。各々三つ組のデータ点を伴った、最低三回の抗
ウイルスアッセイを、各々の変異体において実施した。His6−野生型インタ
ーフェロン−β−1aを、すべての実験において基準として含めた。この抗ウイ
ルスアッセイは、変異インターフェロン−βの2倍階段希釈を用いて、ウイルス
による細胞死滅からの完全な抗ウイルス防御と無防御との間の範囲にわたる濃度
で、A549ヒト肺癌細胞(ATCC CCL 185)を一晩処理することに
よって実施した。次の日、この細胞を、脳心筋炎ウイルス(ECMV)を用いて
、インターフェロンの存在なしに完全な細胞の死滅を生じる希釈度で、2日間チ
ャレンジした。次いで、プレートを、代謝性色素であるMTT(2,3−ビス[
2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホ−フェニル]−2H−テトラゾリウム−
5−カルボキシアニリド)(M−5655、Sigma、St.Louis、M
O)を用いて発色させた。MTTのストック溶液を、PBS中に5mg/mlで
調製し濾過滅菌し、そしてこの溶液50μlを、細胞培養液中に希釈した(10
0μl/ウェル)。室温で30〜60分間のインキュベーションに続いて、MT
T/培地溶液を捨て、細胞を、100μlのPBSを用いて洗浄し、そして最後
に代謝された色素を、90%イソプロパノール中の1.2Nの塩酸100μl中
に可溶化した。生存細胞(色素の存在によって証明されるように)を、450n
mの吸光度によって定量した。データを、インターフェロン−β変異体の濃度に
対する吸光度をプロットすることによって解析し、各々の変異体の活性を、50
%の細胞が死滅する濃度として規定した。図3は、各々の実験におけるヒスタグ
化野生型インターフェロン−β−1aについて、測定された活性の百分率として
表された各々の変異体の活性を示す。
【0117】
インターフェロン−β変異体をまた、抗増殖アッセイにおいて機能に関して評
価した。ヒトDaudi Burkitt’sリンパ腫細胞(ATCC#CCL
213)を、10%の限定された胎仔ウシ血清(Hyclone、Logan
Utah)および2mMのL−グルタミンを添加したRPMI1620中に、
2×105細胞/mlで播種した。各々のウェルはまた、100μl/ウェルの
最終総容量の培地中に、インターフェロン−β変異体の所定の濃度を含む;用い
られたインターフェロン−β濃度を、Daudi細胞の増殖の最大阻害から無阻
害(すなわち、完全な増殖)までの間の範囲にわたって選んだ。二つ組の実験点
を、試験されたインターフェロン−β変異体の各々の濃度について用い、そして
二つ組のセットの未処理細胞を、すべての実験に含めた。細胞を、37℃で2日
間、5%のCO2インキュベーター内でインキュベートし、50μl培地中に1
μCi/ウェルのトリチウム化チミジン((メチル−3H)チミジン、Amer
sham TRK758)を、各々のウェルに添加した後、さらに4時間インキ
ュベートした。細胞を、LKBプレートハーベスタ−を用いて回収した。そして
、トリチウム化チミジンの取りこみをLKBβプレートリーダーを用いて測定し
た。二つ組の実験の値を平均化し、そして標準偏差を決定した。データを、平均
数/分 対 インターフェロン−β変異体の濃度としてプロットし、各々の変異
体の活性を、観察される増殖阻害の最大値の50%を示すのに必要な濃度として
定義した。各々の変異体についての複数のアッセイを、実施した。図4は、各々
の実験におけるヒスタグ化野生型インターフェロン−β−1aについて見出され
た活性の百分率として表された結果を示す。
【0118】
(F.インターフェロン−β変異体の特性)
ヒスチジンタグ化野生型インターフェロン−β−1aは、抗ウイルスアッセイ
および抗増殖アッセイにおいて、タグのない野生型インターフェロン−β−1a
について見出される対応する活性の各々約1/3の活性を有することが見出され
た。インターフェロン−β変異体A1−Eのすべてが同一のヒスタグ配列をその
N末端に含むので、この分子の特性における変異体の効果は、抗ウイルスアッセ
イ、抗増殖アッセイおよび結合アッセイに対するこれらの変異体の活性を、ヒス
タグ化野生型インターフェロン−β−1aについて観察される活性と比較するこ
とによって決定した。そうすることにおいて、本発明者らは、ヒスタグ化野生型
インターフェロン−β−1aと比較した変異体A1−Eの活性における変動が、
これら同一の変異体がN末端のヒスタグの非存在下で有する効果と、定性的にお
よび定量的にほぼ同一であることを仮定する。他の可溶性サイトカインのタグ化
または融合構築物についての等価な仮定は、特に、タグ化または融合構築物のイ
ンビトロでの機能的な活性が、本明細書中の場合のように野生型サイトカインの
活性と近接する場合、アラニンスキャンニング変異誘発の技術の熟練者は一般に
正しいと考える。例えば、Pearce K.H.Jrら、J.Biol.Ch
em.272:20595−20602(1997)およびJones J.T
.ら、J.Biol.Chem.273:11667−11674(1998)
を参照のこと。
【0119】
図1〜4に示したデータは、標的化された変異誘発によって生じた効果の3つ
の型を示す。これらの効果は、特定の環境下でのインターフェロン薬物の開発に
ついて有利であり得る。この効果の3つの型は、以下である:(a)野生型イン
ターフェロン−β−1aの活性よりも高い抗ウイルス活性を伴う変異体(例えば
、C1変異体);(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイの両方におい
て活性を示すが、野生型インターフェロン−β−1aと比較して、抗ウイルス活
性の割には抗増殖活性が不釣合いに低い変異体(例えば、C1、DおよびDE1
変異体);および(c)野生型インターフェロン−β−1aと比較して、レセプ
ター結合び対して不釣合いに低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示す、機能
的なアンタゴニスト(例えば、A1、B2、CD2およびDE1)。いくつかの
変異体が、一つを超えるクラスに分類されることが理解され得る。これらのクラ
スを、以下に総説する。リストされたこれらの例に関して、これらのクラスの変
異体を特徴付ける一方、これらの領域の他の変異体が活性に対して類似の、また
はさらに増強された効果を生じ得ることが評価されるべきである:
a)変異体C1は、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aの有する活
性に比べて約6倍を超える抗ウイルス活性を有する。この変異体およびこの型の
他の変異体は、抗ウイルス効果の所定のレベルを達成するために投与されなけれ
ばならないインターフェロン−βの量を減少するのに有用であることが予想され
る。投与されたタンパク質の量の低下は、このタンパク質の免疫原性を減少する
ことを予想させ、そして機序に基づかない毒性からの副作用をまた減少し得る。
このクラスの変異は、インターフェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス
効果から生じ、そして抗増殖効果が毒性または所望されない副作用に寄与すると
いった状況において有利であると予想される。
【0120】
(b)抗ウイルスアッセイおよび抗増殖アッセイにおけるアラニン置換変異体
の相対的な活性(%野生型)を、図5において比較する。座標的に変化した活性
(すなわち、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aの活性とは、同一因
子によって異なる抗ウイルス活性および抗増殖活性)は、ほとんどの変異体にお
いて見られる(対角線にある)。しかし、いくつかの変異体は、対角線からのず
れによって証明されるように、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aに
比較して、その他と相対的な一つのアッセイにおける活性により大きな変更を示
す。3つのこのような変異体を、以下の表3に示す。変異体C1は、野生型ヒス
タグ化インターフェロン−β−1aの活性よりも約6倍高い抗ウイルス活性を示
すが、抗増殖アッセイにおける活性は、野生型のそれと類似する。従って、変異
体C1は、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aに対して、その抗増殖
活性を5.2倍だけ増強された抗ウイルス活性を有する。同様に、変異体Dは、
抗ウイルスアッセイにおいて野生型の活性の65%を示すが、抗増殖アッセイに
おいては野生型の活性のたった20%を示し、従って、野生型に比べてその抗増
殖活性の3.4倍増強された抗ウイルス活性を有する。変異体DE1は、抗ウイ
ルスアッセイにおいて野生型の活性の26%を示すが、抗増殖アッセイにおいて
はたった8.5%を示し、従って、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1
aに比べてその抗増殖活性の3.0倍増強された抗ウイルス活性を有する。所望
の抗ウイルス活性のレベルに達するのに十分な濃度において投与される場合、こ
れらの変異体タンパク質は、野生型タンパク質より実質的に低いレベルの抗増殖
活性を示す。クラス(a)中のもののようなこのクラスの変異体は、インターフ
ェロン−β投与の治療的利点がその抗ウイルス効果から生じ、そして抗増殖効果
が毒性または所望されない副作用に寄与するといった状況において有利であると
予想される。
【0121】
【表3】

【0122】
(c)野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aに比べてレセプター結合
が低い抗ウイルス活性および抗増殖活性を伴う変異体(下の表4を参照のこと)
。変異体A1は、野生型ヒスタグ化インターフェロン−β−1aに関して観察さ
れる活性より2.0倍および1.8倍高い抗ウイルス活性および抗増殖活性を示
すが、Daudi細胞上の同族のレセプターに野生型より29倍高い親和性を伴
って結合する。従って、この変異体のIFN−βレセプターへの結合は、このタ
ンパク質の抗ウイルス活性および抗増殖活性に比べて約15倍増強される。同様
に、変異体B2、CD2およびDE1は、それぞれ、4.6倍、4.6倍および
18倍の抗ウイルス活性を越える、そして3.5倍、15倍および54倍の抗増
殖活性を越える結合の増強性を示す。これらのタンパク質は、内在性IFN−β
、およびおそらく他の内在性タイプIインターフェロンの活性の機能的なアンタ
ゴニストとして有用であることが予想される。なぜなら、これらが、レセプター
に結合する能力およびレセプターを占有する能力を有し、そしてなお野生型IF
N−βと共にみられる標的細胞における機能的な応答のごく小さな割合を生じる
からである。
【0123】
【表4】

【0124】
(G.インターフェロンの3次元構造に対するムテイン関連性)
マウスインターフェロン−βの非グリコシル化型(T.Senda、S.Sa
itohおよびY.Mitsui.Rifined Crystal Stru
cture of Recombinant Murine Interfer
on−β at 2.15 Å Resolution.J.Mol.Biol
.253:187〜207(1995))およびヒトインターフェロンα−2b
(R.Radhakrishnan,L.J.Walter,A.Hruza,
P.Reichert,P.P Trotta,T.L.Nagabhusha
nおよびM.R.Walter.Zinc Mediated Dimer o
f Human Interferon−α2b Revealed by X
−ray Crystallography.Structure.4:145
3−1463(1996))に関する発表された結晶構造が、ヒトインターフェ
ロン−βのペプチド骨格のモデルを提供した一方、本発明者らは、インターフェ
ロン−βのグリコシル化状態に関する構造を最近解析した(M.Karpusa
s,M.Nolte,C.B.Benton,W.Meier,W.N.Lip
scomb,およびS.E Goelz.The Crystal Struc
ture of Human Interferon−β at 2.2 Å
resolution.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94
:11813〜11818(1997))。
【0125】
本発明者らの変異の解析の結果は、インターフェロン−β−1aの3D構造に
関して要約され得る(本明細書中には示さず)。特定の変異体は、活性において
(2〜5倍以上に減少した)減少を生じた。この変異された領域は、表1および
2に与えられた置換に一致した。抗ウイルス活性および抗増殖活性に重要な残基
は、インターフェロン−β−1a分子の下半分に位置する(パネルaおよびb)
。アミノ末端およびカルボキシ末端が位置されるこの分子の上半分における変異
は、生物学的な活性およびレセプター結合に対する効果を有さない。
【0126】
A2へリックス、AB、AB2ループおよびEへリックスの変異は、機能上の
これらの効果において最も重要であり、両活性および細胞表面レセプター結合の
劇的な減少を生じる。本発明者らのアッセイにおいてこれらの変異体のいずれも
IFNAR/Fcに結合しなかったので、この領域(A2へリックス、ABおよ
びAB2ループならびにEへリックス)は、IFNAR2結合部位に一致する。
【0127】
IFNAR2結合に重要なこれらの変異もまた細胞の結合に影響を及ぼす一方
、細胞表面結合特性もまた、この分子の他の領域(B1へリックス、C2へリッ
クス)の残基によって影響される。これは、インターフェロン−β−1a分子の
N末端、C末端およびグリコシル化Cへリックス領域がレセプター結合部位の中
にないアラニン置換変異体の効果を示す3Dモデル(本明細書中には示さず)に
見られ得る。これらの領域における変異は、生物学的活性を減少せず、細胞表面
レセプター結合も減少しない。
【0128】
(実施例2:結合体化インターフェロン−β−1aの調製および特徴付け)
(A.PEG化(PEGylated)インターフェロンの調製)
250μg/mlの濃度の非処方インターフェロン−β−1a(AVONEX
(登録商標)として販売)バルク中間体(100mMのリン酸ナトリウム pH
7.2、200mMのNaCl中)を、等量の100mM MES pH5.0
に希釈し、pHを、HClを用いて5.0に調整した。このサンプルを、6mg
インターフェロン−β−1a/ml樹脂でSP−Sepharose(登録商標
)FF column(Pharmacia、Piscataway、NJ)上
にロードした。このカラムを、5mMのリン酸ナトリウム pH5.5、75m
MのNaClを用いて洗浄し、産物を、30mMのリン酸ナトリウム pH6.
0、600mMのNaClを用いて溶出した。溶出画分を、280nmでその吸
光度を分析し、そしてサンプル中のインターフェロンの濃度を、1mg/ml溶
液に関して1.51の吸光係数を用いて吸光度より推定した。
【0129】
SP溶出液からのインターフェロン−β−1aの1mg/ml溶液に、0.5
Mリン酸ナトリウム pH6.0を、50mMになるように加え、シアノ水素化
ホウ素ナトリウム(Aldrich、MilWaukee、WI)を、5mMに
なるように加え、そして20K PEGアルデヒド(Shearwater P
olymers、Huntsville、AL)を、5mg/mlになるように
加えた。このサンプルを、室温で20時間インキュベートした。PEG化インタ
ーフェロンを、移動相として5mMのリン酸ナトリウム pH5.5、150m
MのNaClを用いてSuperose(登録商標)6 FPLCサイズ分離カ
ラム(sizing column)(Pharmacia)およびSP−Se
pharose(登録商標)FFに始まる一連のクロマトグラフィー工程により
反応産物より精製した。サイズ分離カラムの結果、改変型および非改変型のイン
ターフェロン−βのベースライン分離を生じた(本明細書中にはクロマトグラフ
は示さず)。ゲル濾過からのPEG−インターフェロン−β含有溶出プールを、
水を用いて1:1に希釈し、そして、SP−Sepharose(登録商標)カ
ラム上に2mgインターフェロン−β/ml樹脂でロードした。このカラムを、
5mMのリン酸ナトリウム pH5.5、75mMのNaClを用いて洗浄し、
次いでPEG化インターフェロン−βを、5mMのリン酸ナトリウム pH5.
5、800mMのNaClを用いてカラムから溶出した。溶出画分を、280n
mでの吸光度によってタンパク質含量を分析した。PEG部分が280nmでの
吸光度に寄与しない場合、このPEG化インターフェロン−β濃度を、インター
フェロン当量において報告する。
(B.PEG化インターフェロンの生化学的な特徴付け)
サンプルを、SDS−PAGEによって改変の程度を分析した(本明細書中に
はゲルは示さず)。1つのPEGの付加によって、分析において容易に明らかな
20kDaから55kDaへインターフェロンの見かけの分子量におけるずれが
生じた。PEG化サンプルにおいて、非改変型インターフェロン−βの証拠もさ
らなるPEG基の存在により生じる高分子量型の証拠も、いずれも存在しない。
1つのPEGの存在を、MALDI質量分析法によって確認した。PEG化反応
の特異性を、ペプチドマッピングによって評価した。240μlの200mM
Tris HCl pH9.0、1mM EDTA中のPEG化インターフェロ
ン−β−1aの20μgアリコート、およびコントロールとしての非改変型イン
ターフェロン−β−1aを、Achromobacter由来のリシルエンドプ
ロテアーゼ(Wako Bioproducts、Richmond、VA)1
.5μgを用いて27℃で3〜4時間消化した。200mgのグアニジンHCl
を、各々のサンプルに加え、そして切断産物を、Vydac C4カラム(0.
46×25cm)上で0.1% TFA中に0〜70%のアセトニトリルの30
分間の勾配を用いて、1.4ml/分の流速で分画した。このカラム溶出物を、
214nmの吸光度についてモニターした。
【0130】
この解析の結果を、図6に示す。インターフェロン−β−1aのエンドプロテ
アーゼLys−C切断からの予想されたペプチド全てを、N末端配列決定法およ
び質量分析法によって同定し、これらのペプチドのうちインターフェロンのN末
端(AP8)を含むペプチドのみが、マップからのその消滅によって明らかなよ
うに、改変によって変化した。従って、このマッピングデータは、PEG部分が
このペプチドに特異的に付着することを示す。このデータは、N末端改変のみが
このペプチドの特異的な消失を生じたので、PEG改変がタンパク質のN末端に
標的化されるということをさらに示す。
【0131】
この結論についての更なる証拠は、エンドプロテアーゼLys−C切断からP
EG化N末端ペプチドを単離し、切断されたペプチドをさらに、臭化シアン(C
NBr)を用いて切断し、そしてこのサンプルを、ソース崩壊後マトリックス補
助レーザー脱離イオン化(matrix assisted laser de
sorption ionization post source deca
y)(MALDI PSD)配列決定解析に供することによって得た。N末端ペ
プチドのCNBr切断はさらに、このペプチドをPEG部分を含む末端メチオニ
ン(M1)およびSYNLLGFLQR(この成熟インターフェロン−β配列の
残基2〜11)の二つのペプチドに切断し得る。配列決定分析は、この処理の予
想された結果である非改変型ペプチドSYNLLGFLQRを同定した。
【0132】
インターフェロン−β−1aサンプルの抗ウイルス活性を、上で概述したMT
T染色を含む手順を用いて脳心筋炎(EMC)ウイルスに曝露されたヒト肺癌細
胞(A549細胞)に対して試験した。簡単には、A549細胞を、ウイルスの
チャレンジ前に、インターフェロン−β−1aまたはペグ改変インターフェロン
−β−1a(4000、2000、1000、500、250、125、75、
62.5、31.25、50、33.3、22.2、14.8、9.9、6.6
、4.39pg/ml)を用いて24時間前処理した。このアッセイを、各々の
インターフェロン−β−1a濃度に対する二つ組のデータ点を用いて実施した。
標準偏差を、図7中にエラーバーとして示す。50%ウイルス死滅度(「50%
の細胞変性効果」)(50%の最大値OD450)を提供するインターフェロン−
β−1a(処方されたか、またはバルク)の濃度は、約11pg/mlであり、
そしてPEG改変インターフェロン−β−1aに関する50%細胞変性効果は、
約11pg/mlである。従って、PEG結合は、インターフェロン−β−1a
の抗ウイルス活性を変化させない。このアッセイにおいて、本発明者らは、イン
ターフェロン−β−1aの比活性が、インターフェロン−β−1bの比活性より
約10倍大きいことを日常的に見出し、従って、PEG化インターフェロン−β
−1aは、任意のインターフェロン−β−b産物よりも有意により活性である。
【0133】
インターフェロン−β−1aをまた、Fluka、Inc(Cat.No.7
5936、Ronkonkoma、NY)から購入した5K PEGアルデヒド
部分を用いて、2mg/mlの5K PEGを含む反応を除いて20K PEG
アルデヒドを用いた改変のために記載された同一の手順に従って、PEG化した
。5K PEGを用いた改変もまた、N末端に対して非常に特異的であり、イン
ターフェロン−β−1aの抗ウイルス活性を変化させない。20K添加物に類似
して、5K PEG インターフェロン−β−1aは、抗ウイルスアッセイにお
いて非改変インターフェロン−β−1aと区別できなかった。
【0134】
(実施例3.PEG化は、インターフェロン−β−1aをストレス誘導型凝集
から保護する)
インターフェロン−βの凝集は、活性に有害な効果を有する。以前に、本発明
者らは、インターフェロン−βの非グリコシル化型と対比して、グリコシル化が
インターフェロン−β−1aの安定性に劇的な効果を有することを示し、グリコ
シル化がインターフェロン−β−1aのより高い比活性に寄与することを推測し
た(Runkel L.ら、Pharm.Res.15:641〜649)。ポ
リアルキレングリコールポリマーとの結合体化がさらにインターフェロン−βを
安定化し得るか否かを研究するために、本発明者らは、PEG化インターフェロ
ン−β−1aを以下の手順を用いた熱ストレスに供した:
熱変性を、コンピューター制御の電熱性(thermolectricall
y heated)キュベットホルダーを取り付けたCARY 3 UV可視化
分光光度計を用いて実施した。20mM HEPES pH7.5、20mM
NaCl中のインターフェロン−β−1aの溶液を、1mlキュベットの中で2
5℃で平衡にした。次いでキュベットホルダーの温度は、2℃/分の割合で25
℃〜80℃へ勾配をなし、そしてタンパク質の変性を280nmでの吸光度の連
続的なモニタリングにより追跡した。この協同的な進展の事象の中間点であるT
mは、計測された吸光度が、協同的な進展の遷移のいずれかの側の直線的な領域
から外挿された直線によって規定された値の間の中途である温度の決定による融
解曲線から得られた。
【0135】
この分析からの結果を、図8に示す。非PEG化インターフェロン−β−1a
が60℃での50%の遷移点を伴って変性されかつ凝集されたのに対して、80
℃でさえPEG化インターフェロン−βの凝集の証拠は存在しなかった。独立し
た解析において、本発明者らは、熱ストレスの処理を95℃に拡大し、そしてこ
のより高い温度でさえ、本発明者らは、凝集の証拠を見ていない。従って、この
ポリアルキレングリコールポリマーとの結合体は、このタンパク質の安定性に対
して顕著かつ有益な効果を有する。類似の安定性は、20K PEGおよび5K
PEGを含む改変インターフェロン−β−1aを用いて見られる。
【0136】
(実施例4.インターフェロン−β−1aおよびPEG化インターフェロン−
β−1aを処置をしたマウス血漿中のインターフェロン−β−1a抗ウイルス活
性の測定)
マウス(C57B1/6)に、50,000単位のインターフェロン−β−1
aまたは20K PEGを含む50,000単位のPEG化インターフェロン−
β−1aまたはコントロールとして与える等量のリン酸緩衝液のいずれかを、尾
静脈を通じて静脈注入した。これらのマウスからの血液は、注入後異なる時間点
において眼窩採血を介して得られた(直後、0.25、1、4、24および48
時間)。各々の時間点において少なくとも3匹のマウスを採血する。全血を抗凝
血薬を含むチューブに回収する一方、細胞を、除去し、そして生じる血清を、ア
ッセイの時まで凍結した。次いでこれらの血漿サンプルを、抗ウイルスアッセイ
において試験した。
【0137】
この血漿サンプルを、無血清培地中に1:10に希釈し、0.2μmのシリン
ジフィルターに通した。希釈したサンプルを、抗ウイルスアッセイに試験する。
サンプルを、A549細胞を含む96ウェル組織培養プレートの指定されたウェ
ル中に滴定する。標準インターフェロン−β−1aの希釈(10、6.7、4.
4、2.9、1.3、0.9および0.6U/ml)および4つの血漿サンプル
の希釈を、全てのプレートでアッセイした。A549細胞を、EMCウイルスの
チャレンジの前に、希釈された血漿サンプルを用いて24時間前処理した。ウイ
ルスを用いた2日間のインキュベーションに続いて、生存細胞を、MTT(リン
酸緩衝液中に5mg/ml)の溶液で1時間染色し、リン酸緩衝液で洗浄し、そ
してイソプロパノール中の1.2NのHClで可溶化する。ウェルを、450n
mで読み取った。標準曲線を、各々のプレートに生成し、そして各々の試験サン
プル中のインターフェロン−β−1aの量を決定するのに用いた。異なるマウス
からのサンプル中の活性を、図9において時間点に対してグラフ化した。
【0138】
時間の関数として、PEG化インターフェロン−β−1aの循環からのより緩
やかな消失は、PEG化サンプルの半減期が未処理インターフェロン−β−1a
コントロールの半減期よりも長いということを示す。コントロールが4時間後に
ほとんど消失したのに対して、PEG化産物の有意な割合は、48時間後に検出
された。血清中の最初の活性のレベルおよび48時間後に残るレベルに基づいて
、本発明者らは、PEG化インターフェロンの半減期が、非改変インターフェロ
ン−β−1aの半減期に比べて延長したことを推測する。本研究からの第二の非
常に重要な発見は、0時および60分後の類似する高いレベルの活性によって証
明されるように、PEG化形態が分布相の間にほとんど失われないことである。
このデータは、PEG化産物の分布がコントロールインターフェロン−β−1a
とは異なり、血管系に非常に限定されることを示す。
【0139】
(実施例5:霊長類における比較の薬物動態および薬力学)
(一般的プロトコール)
比較研究をポリマー−インターフェロンβ 1a結合体およびネイティブなイ
ンターフェロン−β 1a(非処方化バルク中間体インターフェロン−β−1a
(リン酸ナトリウムおよびNaCl、pH7.2中)の場合)で実行し、霊長類
におけるそれらの相対的安定性および活性を決定する。これらの研究において、
霊長類におけるポリマー−インターフェロン−β 1a結合体の薬物動態および
薬力学は、ネイティブなインターフェロン−β 1aの薬物動態および薬力学を
比較し、そして合理的な推論をヒトにおいて予期し得る。
【0140】
(動物および方法)
(研究デザイン)
これは、結合体化されたインターフェロン−β−1aおよび結合体化されてい
ないインターフェロン−β−1aの比較の薬物動態および薬力学を評価するため
の、並行する群の反復用量研究である。
【0141】
健常な霊長類(好ましくはアカゲザル)を、本研究のために用いる。投与の前
に、全ての動物を、試験物投与の前14日内に、2回の機会で、Lab Ani
mal Veterinaryにより疾病、健康の徴候について評価する:1回
の評価は最初の試験物投与の前24時間内でなければならない。健常動物のみに
試験物を投与する。評価には、一般的な身体的検査、およびベースラインの臨床
病理のための投与前の血液採取、およびインターフェロン−β−1aに対するベ
ースラインの抗体レベルを含む。全ての動物を秤量し、そして体温を試験物投与
の前24時間内に記録した。
【0142】
12例の被験体を登録し、PEG−インターフェロン−β−1a結合体または
非結合体のいずれか(さもなければインターフェロン−β−1aそのもの)とし
て、インターフェロン−β−1aの1MU/kgを投与するグループに割当てる
。投与は、皮下(SC)経路または静脈内(IV)経路のいずれかである。全て
の動物は、インターフェロン−β処置に未経験でなければならない。それぞれの
動物は、2回の機会で投与される;用量は、4週間まで間隔をあけられる。この
用量の容積は1.0mL/kgである。
【0143】
各注射後、種々の時間間隔で、薬物動態学的試験のために血液を採取する。イ
ンターフェロンが誘導した、生物学的応答マーカーである血清ネオプテリンの測
定のための血液サンプルをまた、研究薬物の投与後、採取する。
【0144】
研究期間の評価としては、毒性の兆候について、投与後30分および1時間で
行った臨床観察を含む。毎日、ケージのそばで観察を行い、そして全身的外観、
毒性の徴候、不快感および挙動における変化を記録する。体重および体温を、投
与後21日間を通じて一定間隔で記録する。
【0145】
(アッセイ方法)
血清中のインターフェロンβのレベルを、細胞変性効果(CPE)バイオアッ
セイを用いて定量する。CPEアッセイは、インターフェロン媒介性抗ウイルス
活性のレベルを測定する。サンプル中の抗ウイルス活性のレベルは、血液が吸引
された時点でそのサンプル中に含まれている活性なインターフェロンの分子数を
反映する。このアプローチは、インターフェロンβの薬物動態を評価する標準的
な方法であった。この研究で用いられるCPEアッセイは、インターフェロンβ
が、ヒト肺癌腫細胞(A549、#CCL−185、ATCC、Rockvil
le、MD)を、脳心筋炎(EMC)ウイルスに起因する細胞傷害性から防御す
る能力を検出する。この細胞を、インターフェロン誘導性タンパク質(これは次
いで、抗ウイルス反応を上昇する)の誘導および合成を可能にするため血清サン
プルとともに15〜20時間プレインキュベートする。後に、EMCウイルスを
添加し、そしてさらに30時間インキュベートし、その後、細胞傷害性の評価を
クリスタルバイオレット染色を用いて行う。インターフェロンβの内部標準およ
びPEG結合体の内部標準をそれぞれのアッセイプレートにおいてサンプルと同
時に試験する。この標準を、天然のヒト線維芽細胞インターフェロン参照標準(
WHO Second International Standard fo
r Interferon,Human Fibroblast,Gb−23−
902−53)に対して較正する。それぞれのアッセイプレートはまた、いかな
る種類のインターフェロンβもEMCも含まない細胞増殖コントロールウェルを
含み、そしてウイルスコントロールウェルは、細胞およびEMCを含むがインタ
ーフェロンβを含まない。標準およびサンプルを含有するコントロールプレート
をまた、細胞増殖へのサンプルの効果(もし存在するならば)を決定するために
準備する。これらのプレートをウイルスの添加なしに染色する。
【0146】
サンプルおよび標準を、それぞれの2つの複製アッセイプレート上で二連で試
験し、1サンプルあたり4つのデータポイントを得る。4つの複製の幾何平均濃
度を報告する。このアッセイにおける検出限界は10ユニット(U)/mlであ
る。
【0147】
ネオプテリンの血清濃度を市販のアッセイを用いて、臨床薬理学的単位で決定
する。
【0148】
(薬物動態学的方法および統計学的方法)
Rstrip TMソフトウェア(MicroMath、Inc.,Salt
Lake CIty、UT)を用いて、薬物動態モデルにデータを適合させる
。幾何平均濃度を各群について時間でプロットする。アッセイ結果は希釈度で表
現されるので、幾何平均は、算術平均よりも適切であると考えられる。血清イン
ターフェロンレベルをベースライン値について調節し、そして検出不能な血清濃
度は5U/mlに設定する。これは、検出下限の1/2を示す。
【0149】
IV注入データについては、2コンパートメントのIV注入モデルが、各被験
体についての検出可能な血清濃度に適合する、そしてSCデータは、2コンパー
トメント注射モデルに適合する。
【0150】
以下の薬物動態学的パラメーターを算出する:
(i)観察されたピーク濃度、Cmax(U/ml);
(ii)台形公式を用いる、0〜48時間の曲線下面積、AUC;
(iii)排泄半減期;
および、IV注入データ(IVが用いられる場合)から、以下を算出する:
(iv)分布半減期(h);
(v)クリアランス(ml/h)
(vi)見かけの分布容積、Vd(L)。
【0151】
WinNonlin(Scientific Consulting Inc
.,Apex,NC)ソフトウェアを用いて、SC注射およびIM注射後、排泄
半減期を算出する。
【0152】
ネオプテリンについては、各群について、時間による算術平均を示す。ベース
ラインからの最大変化Emaxを算出する。Cmax、AUCおよびEmaxを一元分散
分析に供し、投薬群を比較する。CmaxおよびAUCを、分析の前に対数変換し
;幾何平均を報告する。
【0153】
(実施例6:アカゲザルにおけるPEG化されたインターフェロンβ−laお
よびインターフェロン−β−laの薬物動態の比較評価)
(材料および方法)
インターフェロンβ−1aまたはPEG化IFN β−1aを実施例5の一般
的プロトコールに記載のように、静脈内(IV)または皮下(SC)経路により
、1日目、および29日目に再度アカゲザルに投与した。1日目、6匹のサルに
、IFNβ−1a(1経路あたり3匹)を与え、そして別の6匹のサルにPEG
化IFNβla(1経路あたり3匹)を与えた。29日目に、この用量を繰り返
した。このIV用量を、橈側皮静脈または伏在静脈に緩徐なボーラス注射で投与
した。
【0154】
このSC用量を注射部位を剃毛した後、背中の皮膚の下に投与した。特定の時
点で、大腿静脈を介して血液を収集し、血清を得るために凝血させた。血清を、
確証(バリデート)された抗ウイルスCPE方法を用いて機能的薬物のレベルに
ついて、そして血清ネオプテリンおよびβ2マイクログロブリンレベルについて
(活性の薬力学測定値として)分析した。Win Nolin バージョン2.
0ソフトウェア(Scientific Consulting Inc.,A
pex、NC)を用いて薬物動態パラメーターを算出した。
【0155】
標準的なモデル−独立方法(非コンパートメント分析)により濃度データを分
析して、薬物動態学的パラメーターを得た。台形公式を用いて、曲線下面積(A
UC)を算出した。Microsoft Excelバージョン5.0のソフト
ウェア(Microsoft Corp.,Redmond WA)を使用して
、算術平均および標準偏差をむ、統計解析を実行した。定量の下限(BLQ)と
報告された濃度値は、薬力学的分析において用いなかった。異なるコンピュータ
およびコンピュータプログラムが、異なって数を切り捨てる(round of
f)かまたは切り捨てる(truncate)という事実に起因して、いくつか
の表における値(例えば、平均、標準偏差または個々の値)は、他の表における
値から、個々に算出したデータから、または統計学的分析データからわずかに異
なり得る。データの統合性も解釈も、これらの相違による影響を受けなかった。
【0156】
(結果および考察)
投与の各々の経路の内で、PEG化されたIFNβ−laは、より高い生体有
用性(血清中濃度−時間曲線の下の面積によって測定される場合)を呈した。加
えて、SC経路によって投与される場合、PEG化されたIFNβ−laは、I
FNβ−laと比べて、より高い絶対的な生体有用性を有した。本発明者らは、
表5に薬物動態学的パラメーターを要約する。IV経路およびSC経路の両方に
よるPEG化されたIFNβ−laの投与は、半減期の延長およびIFNβ−l
aのAUCの増大を生じる。
【0157】
【表5】

【0158】
初回用量のIV投与後、IFN β−1aおよびPEG化IFNβ−1aの平
均(±標準偏差)ピーク血清濃度(Cmax)は、それぞれ、6400(±0)
および10800(±3.5)U/mLであった。平均(±標準偏差)AUC値
は、それぞれ、4453(±799)および34373(±3601)U*hr
/mLであった。最初のSC投与後、IFN β−1aおよびPEG化IFNβ
−1aの平均(±標準偏差)Cmaxは、それぞれ、277(±75)および1
080(±381)U/mLであった。平均(±標準偏差)AUC値は、それぞ
れ、4753(±3170)および44952(±1443)U*hr/mLで
あった。
【0159】
血清ネオプテリンおよび血清β2ミクログロブリンの両方のレベルは、IFN
−βおよびPEG化されたIFN−βでの処置後、上昇し、これは産物の薬理学
的活性を示した。使用する高用量の試験化合物で、投与のいずれの経路によって
も、IFNβ−laおよびPEG化されたIFNβ−laの薬理学的活性の相違
は存在しなかった(データ示さず)。
【0160】
(実施例7:種々の様式の投与後のラットにおけるPEG化インターフェロン
β−laおよびインターフェロン−β−laの薬物動態学の比較評価)
この研究の目的は、いくつかの投与経路による、インターフェロンβ−lおよ
びPEG化されたインターフェロンβ−laのバイオアベイラビリティー比較を
決定することであった。
【0161】
(材料および方法:)
本発明者らは、1つの経路/処方物につき2匹のラットを用いる薬物動態学的
解析のため、雌性Lewisラット(それぞれ190グラムで)を使用した。ラ
ットに、頸静脈カニューレを挿入し、そしてヒトインターフェロンβ−laまた
は5KのPEG化されたヒトインターフェロンβ−laまたは20Kのヒトイン
ターフェロンβla(50mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl、p
H 7.2中の、14mg/mlのHSAからなるビヒクル中)を、静脈内に腹
膜内に、経口的に、皮下的に、または気管内に投与した。72時間の期間を通じ
て、0.5分、15分、30分、75分、3時間、24h、48時間および72
時間に血液を数回処理した。このプロトコルを表6に示す。血清中にインターフ
ェロンβを検出するため血清サンプル上で細胞変性効果(CPE)バイオアッセ
イを、実行した。改変されていないインターフェロンβ−laおよび20KのP
EGを用いてPEG化されるインターフェロンβ−laによって生じる結果を、
表7に示す。全ての場合において、PEG化は、tl/2およびAUCの有意な増
加を生じた。
【0162】
【表6】

【0163】
【表7】

【0164】
(実施例 8:ポリマー−結合体化インターフェロンβ−laの抗脈管形成効
果:インビトロにおける内皮細胞増殖を阻害するPEG化されたインターフェロ
ンβ−laの能力の評価)
ヒト血管内皮細胞(Cell Systems、カタログ番号2VO−P75
)およびヒト皮膚微小血管内皮細胞(Cell Systems、カタログ番号
2M1−C25)を、CS−C Medium Kit(Cell Syste
ms、カタログ番号4Z0−500)を用いて培養中で維持する。実験の24時
間前に、細胞をトリプシン処理して、アッセイ培地(90%のM199および1
0%のウシ胎仔血清(FBS))において再懸濁して、所望の細胞密度に調節す
る。次いで、細胞を、ゼラチン被覆した24または96ウェルプレートに、それ
ぞれ12,500細胞/ウェルまたは2,000細胞/ウェルのいずれかでプレ
ートする。
【0165】
一晩のインキュベーションの後、アッセイ培地を、20ng/mlのヒト組換
え塩基性線維芽細胞増殖因子(Becton Dickinson,カタログ番
号40060)および種々の濃度の結合体化インターフェロン−β−1aタンパ
ク質および非結合体化インターフェロン−β−1aタンパク質、または陽性コン
トロール(エンドスタチンは、bFGFに対する抗体であり得るので、陽性コン
トロールとして用いられ得る)を含有する新鮮培地と交換する。最終容積は、2
4ウェルプレートで0.5ml、または96ウェルプレート中で0.2mlに調
節する。
【0166】
72時間以後、細胞を、Coulter計数のためにトリプシン処理し、Cy
Quant蛍光読取りのために凍結させるか、または[3H]チミジンによって
標識する。結合体化されたインターフェロン−β1aおよび非結合体化インター
フェロン−βlaによるインビトロでの内皮細胞増殖の阻害は匹敵するものであ
った。これは、この設定においてインターフェロンが機能する能力を、PEG化
が妨げなかったことを示した。
【0167】
このインビトロアッセイは、インビボで抗血管形成性の効果を表し得る血管内
皮細胞増殖に対する効果について、本発明のヒトインターフェロンβ分子を試験
する。O’Reilly、M.S.、T.Boehm、Y. Shing、N.
Fukal、G. Vasios、W.Lane、E.Flynn、J.Bi
rkhead、B.OlsenおよびJ.Folkman(1997).End
ostatin:An Endogenous Inhibitor of A
ngiogenesis and Tumor Growth.Cell 88
、277〜285を参照のこと。
【0168】
(実施例9:結合体化インターフェロン−β−laの抗脈管形成効果および血
管新生効果を試験するためのインビボモデル
本願明細書において記載されている分子の抗脈管形成効果および抗新生血管効
果について試験するために種々のモデルが開発された。これらのモデルのいくつ
かは、米国特許5,733,876号(1998年3月31日:「Method
of Inhibiting angiogenesis」および同第5,1
35,919号(1992年8月4日:「Method and a phar
maceutical composition for the inhib
ition of angiogenesis」)において記載されている。他
のアッセイとしては、S.TaylorおよびJ.Folkmanの殻なし(s
hell−less)漿尿膜(CAM)アッセイ;Nature、297,30
7(1982)およびR.Crum.S.SzaboおよびJ.Folkman
;Science.230.1375(1985);Folkman、J.らの
マウス背部気嚢法(mouse dorsal air sac method
)脈管形成モデル;J.exp.Med.,133,275(1971)、なら
びにGimbrone,M.A.Jr.ら、J.Natl.Cancer In
st。52,413(1974)のラット角膜マイクロポケットアッセイ(ここ
では、各角膜に、EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー)ペレットに植えつけ
られた、500ngの塩基性FGF(ウシ、R&D Systems,Inc.
)を移植することにより、Sprague−Dawley系統(Charles
River,Japan)の成体雄性ラットにおいて、角膜血管新生が誘導さ
れる)が挙げられる。
【0169】
動物モデルにおける抗脈管形成効果について、PEG化されたマウスのインタ
ーフェロンβを試験するための他の方法は、もともとCancer Chemo
therapy Reports、第3部、第3巻、2号(1972年9月)お
よび補遺のIn Vivo Cancer Models、1976−1982
(1984年2月、NIH公開番号84−2635)に記載のように、新規な潜
在的な抗癌剤をスクリーニングするためのプロトコールを含む(がこれに限定さ
れない)。
【0170】
I型インターフェロンの種間障壁のため、げっ歯類モデルにおけるポリマー結
合体化インターフェロンβの抗脈管形成活性を評価するために、ポリマー結合体
化げっ歯類インターフェロンβ調製物を生成する。このようなスクリーニング方
法は、皮下に移植されたLewis Lung Carcinoma上のPEG
化されたマウスインターフェロンβの抗脈管形成効果について試験するためのプ
ロトコールによって例証される。
【0171】
(腫瘍系統の起源:)
C57BL/6マウスの肺の癌腫として、1951年に自然に発症した。
【0172】
(試験手順の概要:)腫瘍フラグメントを、B6D2F1マウスの腋窩部に皮
下移植する。試験剤(すなわち、本発明のPEG化インターフェロン)を、腫瘍
の移植後、種々の日数にて、種々の用量で、皮下(SC)、または腹腔内(IP
)投与する。測定されるパラメーターは、メジアン生残時間である。結果を、コ
ントロール生残時間のパーセンテージとして表す。
【0173】
(動物:)
生殖:C57BL/6マウス
試験:B6D2F1マウス
重量:マウスは、雄性については18gm、そして雌性については17gmの
最小重量であり、3gmの重量範囲内でなければならない
性別:1つの実験の全ての検査およびコントロール動物については1つの性別
を用いる
供与源:当然ながら、実現可能ならば、1つの実験において全ての動物につい
て1つの供給源
(実験のサイズ:)
1試験群あたり10動物
(腫瘍移植:)
(生殖:)
フラグメント:s.c.ドナー腫瘍の2〜4mmのフラグメントを調製する
時間:13日〜15日
部位:鼠径部の穿刺で腋窩部にフラグメントをs.c.移植する。
【0174】
(試験:)
フラグメント:s.c.ドナー腫瘍の2〜4mmフラグメントを調製する
時間:13日〜15日。
【0175】
部位:鼠径部の穿刺で腋窩部にフラグメントをs.c.移植する。
【0176】
(試験スケジュール:)
0日目:腫瘍を移植する。細菌培養を行う。あらゆる奇数実験において陽性コン
トロール化合物を試験する。材料を調製する。毎日、死亡を記録する。
1日目:培養を点検する。汚染される場合、実験を廃棄する。動物を無作為化す
る。指示される(1日目およびその後の日)ように、処理する。
2日目:培養を再点検する。汚染される場合、実験を廃棄する。
5日目:2日目、および初回の試験剤の毒性評価の日、秤量する。
14日目:早期死亡日をコントロールする。
48日目:とらない日をコントロールする。
60日目:実験をおわり、評価する。肺にひどい腫瘍がないか調べる。
【0177】
(品質管理(Quality Control):)
あらゆる奇数実験において、陽性コントロール化合物(NSC26271(1
00mg/kg/注射の用量のCytoxan))を予定する。このためのレジ
メンは、1日目のみの腹腔内である。陽性コントロールについての試験/コント
ロールの下限は140%である。許容可能な未処理コントロールのメジアン生残
時間は19〜35.6日である。
【0178】
(評価:)
測定されるパラメーターは、1日目および5日目についての、メジアン生残時
間、Compute平均動物体重であり、全ての試験群について試験/コントロ
ール比を計算する。実施(staging)日および最終評価日の平均の動物体
重を計算する。試験/コントロール比を、5日目に65%をこえる生存動物を有
する全ての試験群について計算する。86%より小さい試験/コントロール比の
値は、毒性を示す。過剰の体重変化の相違(試験からコントロールを減算)が、
また、毒性を評価する際に用いられ得る。
【0179】
(活性のための基準:)
140%以上の初期の試験/コントロール比が、中程度の活性を示すのに必要
であると考えられる。150%以上の再現可能な試験/コントロール比の値は、
有意な活性と考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列:
【数1】


を含むグリコシル化インターフェロン−β−1a(IFN−β−1a)を含む薬学的組成物であって、該グリコシル化インターフェロン−β−1aは、該グリコシル化インターフェロン−β−1aのN末端においてポリエチレングリコールポリマーに連結されている、薬学的組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールポリマーが、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ハロアセテート基、複数のヒスチジン残基、ヒドラジン基およびアミノチオール基から選択される基により、前記インターフェロン−βに連結されている、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記インターフェロン−β−1a(IFN−β−1a)がインターフェロン−β−1a融合タンパク質である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記インターフェロン−β−1a融合タンパク質が免疫グロブリン分子の一部を含む、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記インターフェロン−β−1aが、該インターフェロン−β−1aのグリカン部分によってある部位において前記ポリマーに連結されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記ポリマーが、5〜40キロダルトンの分子量を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
腫瘍および癌、自己免疫状態、ウイルス疾患または脈管形成疾患を処置するための薬学的組成物の調製のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項8】
前記腫瘍および癌が、骨原性肉腫、リンパ腫、急性リンパ球性白血病、乳癌、黒色腫および鼻咽頭癌からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記自己免疫状態が、線維症、狼瘡および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記ウイルス疾患が、ECM感染、インフルエンザ、ウイルス性気道感染、狂犬病および肝炎からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
前記脈管形成疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシスおよびOsler−Webber症候群からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項12】
以下のアミノ酸配列:
【数3】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数4】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数5】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数6】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数7】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数8】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数10】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数11】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数13】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数14】


を含むIFN−β、
以下のアミノ酸配列:
【数15】


を含むIFN−β、および
以下のアミノ酸配列:
【数16】


を含むIFN−β
からなる群より選択されるグリコシル化インターフェロン−β(IFN−β)変異体を含む薬学的組成物であって、該グリコシル化インターフェロン−β変異体は、該グリコシル化インターフェロン−β変異体のN末端においてポリエチレングリコールポリマーに連結されている、薬学的組成物。
【請求項13】
前記グリコシル化インターフェロン−β変異体がインターフェロン−β融合タンパク質である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記インターフェロン−β融合タンパク質が免疫グロブリン分子の一部を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
インビボ系またはインビトロ系でのインターフェロン−β−1aの活性を長期化する方法であって、該方法は、該インターフェロン−β−1aを、N末端においてポリエチレングリコールポリマーに連結して、請求項1に記載の連結されたポリマー−インターフェロン−β−1a組成物または請求項12に記載の連結されたポリマー−インターフェロン−β変異体組成物を生成する工程を包含する、方法。
【請求項16】
被験体における脈管形成を阻害するための薬学的組成物の調製のための請求項6に記載の組成物の使用。
【請求項17】
腫瘍および癌、自己免疫状態、ウイルス疾患または脈管形成疾患を処置するための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記腫瘍および癌が、骨原性肉腫、リンパ腫、急性リンパ球性白血病、乳癌、黒色腫および鼻咽頭癌からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記自己免疫状態が、線維症、狼瘡および多発性硬化症からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
前記ウイルス疾患が、ECM感染、インフルエンザ、ウイルス性気道感染、狂犬病および肝炎からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
前記脈管形成疾患が、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障、水晶体後線維増殖症、ルベオーシスおよびOsler−Webber症候群からなる群より選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
被験体における脈管形成を阻害するための、請求項6に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−26329(P2011−26329A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206172(P2010−206172)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【分割の表示】特願2000−576887(P2000−576887)の分割
【原出願日】平成11年10月15日(1999.10.15)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】