説明

インターフェース回路

【課題】本発明は、回転検出器から得られた回転信号を用いて1次側信号の信号レベルを調整することにより、2次側の各回転信号の信号レベルを調整して信号の精度向上を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明によるインターフェース回路は、回転検出器(101)から得られる回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))を用いて、回転検出器(101)の励磁信号である1次側信号(F(t))の信号レベルを調整することにより、前記回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))の信号レベルを調整する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターフェース回路に関し、特に、回転検出器から得られた回転信号を用いて1次側信号の信号レベルを調整することにより、2次側の各回転信号の信号レベルを調整して信号の精度向上を図ることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
従来、回転検出器及び回転信号処理器には、信号レベルに影響する電気特性があり、かつ、物づくりにおいてこの電気特性はバラツキが発生するのが常である。
例えば、前述の特性を向上させるために、提案されたものとして特許文献1の構成を挙げることができる。
【0003】
すなわち、図4はレゾルバ/デジタル変換回路のブロック構成図である。このレゾルバ/デジタル変換回路は、演算手段であるCPU105を用いてレゾルバの変圧比を求め、励磁回路のゲインをソフトウェアによって自動補正する。
【0004】
図4において、1相励磁2相出力のレゾルバ101に、励磁回路106より、一定周波数、一定振幅の励磁信号Asinωtを入力すると、レゾルバ101から出力信号として、Ks・As・sinθ・sinωtとKs・As・cosθ・sinωtが得られる。
【0005】
この2つの出力信号は、AD変換器102と復調器103およびデジタルフィルタ104を介して得られた2つのデータであるKs・As・sinθとKs・As・cosθがCPU105に入力される。
【0006】
CPU105では、入力された2つのKs・As・sinθ、Ks・As・cosθデータを、それぞれ二乗して加算することで、Ks^2・As^2(sin^2θ+cos^2θ)を求め、その平方根を求めることで、Ks・Asを算出し、さらにAD変換器108より取り込んだ搬送波振幅Asで除することで変圧比Ksを得る。
【0007】
次に、CPU105は、上述の変圧比Ksを不揮発性メモリ107にあらかじめ設定された基準変圧比Koで除することで変圧比の比率γoを求める。さらに、CPU105は、AD変換器108より取り込んだ搬送波振幅Asを変圧比の比率γoにて除することで自動補正した搬送波振幅Acを励磁回路106に出力する。これによりレゾルバ出力を一定に保つことができる。
【0008】
図5は、本発明におけるレゾルバ処理の全体フローを示したものであり、ステップ1にてレゾルバ出力信号sin、cos、搬送波refデータをCPU105に取り込み、ステップ2にてリファレンス振幅補正演算を行い、ステップ3にてフェールセーフ処理を行う。最後のステップ4にてモータ回転角度θを演算する。以下、フローチャートを用いて説明する。
【0009】
図6は、上述した図5のリファレンス振幅補正演算(ステップ2)におけるフローの詳細を示したもので、6つのステップで構成、それぞれ順に10ステップ〜11ステップとする。
【0010】
まず、CPU105は、レゾルバ出力信号Ks・As・sinθ、Ks・As・cosθ、搬送波信号As・sinωtデータを取り込む(ステップ10)。
【0011】
次に、取り込んだレゾルバ出力信号データよりKs^2・As^2・(sin^2θ+cos^2θ)を演算する(ステップ11)。
【0012】
続いて、Ks^2・As^2の平方根演算を行い、Ks・Asを求める(ステップ12)。ステップ12で求めたKs・Asを、先に取り込んだAs・sinωtのピーク検出を行うことでAsを算出し、そのAsで除することでKsを求める(ステップ13)。
【0013】
このKsを不揮発性メモリ107に記憶させてある基準変圧比Koにて除することで変圧比の比率γoを求める(ステップ14)。最後に、搬送波振幅Asを変圧比の比率γoで除することで自動補正された搬送波振幅Acを得る(ステップ15)。この自動補正した搬送波振幅Acを励磁回路106に出力することで、変圧比の異なるレゾルバが接続されても、常にレゾルバ出力を一定にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−25068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来のレゾルバ/デジタル変換方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、従来方法においては、CPU回路を用いて多くの変換回路等を制御しているため、CPU回路への負担が重くなるものと考えられる。
【0016】
本発明は、従来装置のCPU回路は用いないで、予め目標値となる信号レベル設定値である基準値に追従し続けるフィードバック制御を採用して、各回転信号のレベルを自動調整するようにしたインターフェース回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によるインターフェース回路は、回転検出器の1次側へ1次側信号を入力することにより、前記回転検出器の2次側から回転角度に応じた複数の回転信号を出力し、前記回転検出器と前記各回転信号を処理する回転信号処理器とのインターフェースを行うインターフェース回路において、前記回転信号を用いて前記1次側信号の信号レベルを調整することにより、前記各回転信号の信号レベルを調整する構成であり、また、前記各回転信号より得た演算信号を予め設定された基準値と比較して得た差分を前記回転検出器の1次側にフィードバックする構成であり、また、前記演算信号は、前記回転信号の二乗和で得る構成であり、また、前記二乗和演算から前記1次側信号のレベル設定まではデジタル回路で構成したものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるインターフェース回路は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、回転検出器の1次側へ1次側信号を入力することにより、前記回転検出器の2次側から回転角度に応じた複数の回転信号を出力し、前記回転検出器と前記各回転信号を処理する回転信号処理器とのインターフェースを行うインターフェース回路において、前記回転信号を用いて前記1次側信号の信号レベルを調整することにより、前記各回転信号の信号レベルを調整することにより、従来のようなCPU回路を用いることなく、フィードバック制御によって、2次側の信号レベルを制御することができ、電気特性の変化を考慮することがなくなり、回転信号の信頼性を大幅に向上できる。
また、前記各回転信号より得た演算信号を予め設定された基準値と比較して得た差分を前記回転検出器の1次側にフィードバックすることにより、簡単なフィードバック制御で高い信頼性を得ることができる。
また、前記演算信号は、前記回転信号の二乗和で得ることにより、デジタル回路によって簡単に構成できる。
また、前記二乗和演算から前記1次側信号のレベル設定まではデジタル回路で構成したことにより、回転信号処理器の全ての構成をデジタル化でき、回路形成が大幅に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による回路信号のインターフェース回路を示すブロック図である。
【図2】図1の他の形態のインターフェース回路を示すブロック図である。
【図3】図2の形態の回転信号を示す波形図である。
【図4】従来のレゾルバ/デジタル変換方法及び回路を示すブロック図である。
【図5】図4の動作を示すフロー図である。
【図6】図5のステップ2の詳細動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、回転検出器から得られた回転信号を用いて1次側信号の信号レベルを調整することにより、2次側の各回転信号の信号レベルを調整して信号の精度向上を図るようにしたインターフェース回路を提供することを目的とする。
【実施例】
【0021】
以下、図面と共に本発明によるインターフェース回路の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号101で示されるものは、レゾルバからなり1次側信号F(t)が1次側101Aに入力される回転検出器であり、この回転検出器101の2次側101Bからは、回転信号K・sinθ・F(t)及び回転信号K・cosθ・F(t)が出力され、回転信号処理器50の第1回転信号入力回路110及び第2回転信号入力回路111に各々入力されている。
【0022】
前記第1、第2回転信号入力回路110,111は、所定のゲインGを有し、各回転信号入力回路110,111からの第1、第2回転信号K・G・sinθ・F(t),K・G・cosθ・F(t)は、図示しない回転信号処理112へ送られると共に、第1、第2二乗回路113,114へ供給される。
【0023】
前記第1、第2二乗回路113,114からの第1、第2二乗信号115、116は、加算器117で加算されて絶対値二乗和118となり、この絶対値二乗和118はピーク検出回路119(使用しない場合もある)でピークが検出され、演算信号である二乗和信号120として減算器121に入力されている。
【0024】
前記減算器121には、前記各回転信号K・sinθ・F(t)、K・cosθ・F(t)の目標値に相当すると共に予め設定された基準値107が入力され、この減算器121にて前記二乗和信号120が前記基準値107と比較されてその差分122が周知の補償器123に入力される。
【0025】
前記補償器123からの出力信号124と1次側出力レベル初期値125とは、加算器126で加算され、加算出力127として、励磁回路106を構成する信号発生器128及びアンプ129を経て励磁信号である1次側信号F(t)として前記回転検出器101の1次側101Aに供給されている。
【0026】
前述の構成において、前記回転検出器101は1次側101Aに1次側信号F(t)を入力すると、2次側101Bより回転角度に応じてK・F(t)sinθ、K・F(t)cosθで表わされる振幅変調信号が得られる回転検出器101である。
前記回転信号処理器50においては第1、第2回転信号入力回路110,111においてG倍された第1、第2回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)が、回転信号処理112に用いられる構成となっている。
ここでG倍された各回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)の二乗和を取ると次のとおり回転検出器101の回転に依存しない信号を得ることができる。
【0027】
【数1】

【0028】
尚、ここで二乗和の代わりに絶対値二乗和を取ってもやはり回転検出器101の回転に依存しない信号を得ることができる。
【0029】
【数2】

【0030】
この二乗和信号(絶対値二乗和)120は、各回転信号K・sinθ・F(t)、K・cosθ・F(t)の目標値に相当する基準値107と比較され、その差分122がフィードバックループの安定化および、特性改善のための補償器123を介して1次側信号F(t)を発生させるための信号発生器128に導入される。
尚、二乗和信号120にはキャリア成分である1次側信号F(t)が含まれるため、必要に応じてピーク検出回路119を介してから基準値107と比較しても良いが、フィードバックループの帯域幅が1次側信号F(t)の周波数よりも十分低ければ無くても良い。
また、補償器123出力である出力信号124に1次側出力レベル初期値が加算されているが、これはフィードバックループをすばやく整定させるために、ある程度目標値に近い状態から本回路を起動するため用いるものである。
以上のような構成をとることによりフィードバックループは、制御偏差である二乗和信号120と基準値107の差を零にしようと常に動作するため、結果として回転信号K・sinθ・F(t)、K・cosθ・F(t)は設定した基準値107に相当するレベルに自動的に調整される。
【0031】
図2は、本発明の他の形態である。
デジタル回路主体で構成しており、回転信号の二乗和演算、すなわち、図2の形態においては、各二乗回路113,114から1次側信号F(t)のレベル設定までをデジタル回路で行うことを特徴としている。
従って、各回転信号入力回路110,111においてG倍された回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)は各A/D変換器200,201を介してA/D変換され、2の補数コードとなり、デジタル的に各二乗回路113,114により絶対値二乗和演算され、各回転信号の目標値に相当するデジタル基準値107とデジタル減算器121にて比較される。デジタル減算により得られた制御偏差である差分122は補償器123である積分器を介して信号発生器128に導入される。尚、この実施形態では補償器123によりフィードバックループ帯域幅をF(t)の周波数よりも十分低く設定できるため、図1に記載しているピーク検出回路は省略している。
【0032】
前記第1二乗回路113及び第2二乗回路114は、各A/D変換回路200,201からのデジタル出力200a,201aが、乗算器200b,201b及びMSBマスク処理200c,201cを経て加算器117で加算されて、二乗和信号120として前記減算器121に供給されている。尚、図1と同一部分には同一符号を付している。
【0033】
図3は図2の実施形態における第1、第2回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)レベルの変化をシミュレーションした結果である。前記第1、第2回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)の初期値を図2の1次側出力レベル初期値(デジタル)にて1Vp−pに設定し、目標値をデジタル基準値にて2Vp−pに設定している。最終的に第1、第2回転信号K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t)は目標信号レベルに安定している。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によるインターフェース回路は、回転検出器から得られた回転信号を用いて1次側信号の信号レベルを調整することにより、2次側の各回転信号の信号レベルを調整して信号の精度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0035】
50 回転信号処理器
101 回転検出器(レゾルバ)
101A 1次側
101B 2次側
106 励磁回路
107 基準値
110 第1回転信号入力回路
111 第2回転信号入力回路
K・sinθ・F(t)、K・cosθ・F(t) 回転信号
K・G・sinθ・F(t)、K・G・cosθ・F(t) 第1、第2回転信号
112 回転信号処理
113 第1二乗回路
114 第2二乗回路
115 第1二乗信号
116 第2二乗信号
117 加算器
118 絶対値二乗和
119 ピーク検出回路
120 二乗和信号
121 減算器
122 差分
123 補償器
124 出力信号
125 1次側出力レベル初期値
126 加算器
127 加算出力
128 信号発生器
129 アンプ
F(t) 1次側信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転検出器(101)の1次側(101A)へ1次側信号(F(t))を入力することにより、前記回転検出器(101)の2次側(101B)から回転角度に応じた複数の回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))を出力し、前記回転検出器(101)と前記各回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))を処理する回転信号処理器(50)とのインターフェースを行うインターフェース回路において、
前記回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))を用いて前記1次側信号(F(t))の信号レベルを調整することにより、前記各回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))の信号レベルを調整することを特徴とするインターフェース回路。
【請求項2】
前記各回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))より得た演算信号(120)を予め設定された基準値(107)と比較して得た差分(122)を前記回転検出器(101)の1次側(101A)にフィードバックすることを特徴とする請求項1記載のインターフェース回路。
【請求項3】
前記演算信号(120)は、前記回転信号(K・sinθ・F(t),K・cosθ・F(t))の二乗和で得ることを特徴とする請求項1又は2記載のインターフェース回路。
【請求項4】
前記二乗和演算から前記1次側信号(F(t))のレベル設定までをデジタル回路で構成したことを特徴とする請求項3記載のインターフェース回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44553(P2013−44553A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180518(P2011−180518)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】