説明

インターベンション治療システムと共に用いられる進入子

【課題】被検体内の所望の部位に、血管や消化器官等の管状組織を介して安全かつ確実、そして容易にカテーテル等の進入子を誘導する。
【解決手段】傾斜磁場を発生する磁場発生部1を被検体に配置し、これをコントローラ9及びコイルドライバ8を介して電流を供給して駆動する。これにより、被検体に傾斜磁場が印加される。この状態でX線撮影を行い、X線撮影画像を見ながら被検体内に先端部に磁性体の設けられたカテーテルを送入する。傾斜磁場は、磁性体を管状組織の形成方向に沿って牽引する。このため、傾斜磁場を掛ける方向をコントローラ9により操作することで、安全かつ確実、そして容易にカテーテル等の進入子を所望の部位まで誘導することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気により誘導可能な磁気被誘導体が設けられた、例えばカテーテルや薬剤のカプセル等の進入子を、被検体の血管や食道等の管状組織を介して所望の部位まで誘導するインターベンション治療システムに関し、特に前記進入子を傾斜磁場、一様磁場、焦点磁場等の非収束磁場を用いて誘導することで安全性、迅速性及び容易性等の向上を図ったインターベンション治療システムと共に用いられる進入子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の血管内に送入され、例えば閉塞した血管の治療等を行うカテーテルが知られている。このカテーテルは、先端部分が弾性部材で、また、途中部分がある程度の剛性を持つ部材で形成されている。使用に際しては、カテーテルを前記先端部分から血管内に送入すると共に、このカテーテル及び血管を例えばX線透視装置で撮影する。そして、このX線透視画像により、カテーテル及び血管の走行を見ながら、目的とする血管部分にカテーテルを送入誘導し、前記閉塞した血管の治療等を行う。
【0003】
しかし、このような従来のカテーテルは、被検体内に送入されていない前記途中部分を操作することで、被検体内に送入された前記先端部分を遠隔的に操作することとなるため、X線透視画像により被検体内のカテーテルの状態を見ながらの操作とはいえ、言わば手探りでの操作と大して変わらない。このため、先端部分が血管壁に突き当たり血管内でカテーテルが屈曲してしまったり、血管の分岐部分では目的とする血管内に送入できなかったり、細い血管に誘導しようとすると、カテーテルの持つ剛性のために大きな摩擦抵抗を生じて入らなかったり、或いは血管が半円弧状になっている箇所では、力が旨く先端部分に伝わらない問題があった。このような場合に、例えば無理にカテーテルにねじりの力を加えると、先端部分が弾性部材で形成されているため、この先端部分が、ある所定の力までねじりの力を吸収し、この所定の力を超えるねじりの力が加わった時点で、それまで加えられたねじりの力に対応して急激に回転することとなる。このため、先端部分が、操作者が意図しない動きをし、目的以外の血管に該先端部分が送入されてしまったり、血管を傷つけてしまう虞がある。
【0004】
一方、従来、マイクロマシン技術の応用により、先端部分が能動的に屈曲可能となっている能動カテーテルが知られている。この能動カテーテルは、先端部分を操作に応じて屈曲させることができるため、所望の血管内に当該カテーテルを容易に送入可能とすることができる。
【0005】
しかし、現段階の技術において実現可能な能動カテーテルは、その先端部分の直径が数ミリ以上ある。このため、必然的に直径数ミリ以上の太い血管にしか送入することはできない。また、血管の分枝部分において、所望の血管にカテーテルを誘導する技術・ソフトウエアも完成するまでにかなりの開発期間がかかると予想されている。さらに、先端部分が直径数ミリ以下の極微細なものができたとしても、血管が半円弧状になっている箇所では、力が旨く先端部分に伝わらない
ことが予想される。
【0006】
ここで、このような問題を解決するものとして、「医療用カテーテル及びその誘導方法」(例えば、特許文献1参照)、「医療用カテーテルの誘導方法」(例えば、特許文献2参照)がそれぞれ提案されている。これらの各提案は、それぞれ図19に示すように先端部分101に磁性体102が設けられたカテーテル100を被検体103の血管104内に送入し、被検体103外に配置された磁石105により、該磁性体102が設けられた先端部分101を引っ張って誘導することにより、所望の箇所にカテーテル100を誘導するものである。この各提案によれば、先端部分101に直接的に力を伝えることができるため、ある程度所望の方向にカテーテル100を誘導することができる。また、先端部分や途中部分の形成部材に剛性が不要となるため、非常に柔軟な部材を用いてカテーテルを形成することができ、上述の問題点を解決することができる。
【特許文献1】特開平8−89582号公報
【特許文献2】特開平8−89583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特開平8−89582号の特許公開公報に記載されている「医療用カテーテル及びその誘導方法」、及び特開平8−89583号の特許公開公報に記載されている「医療用カテーテルの誘導方法」は、以下の重大な問題点があり、実用化は困難なものと考えられる。
【0008】
すなわち、まず、これら各提案によれば、磁石105の吸引力により先端部分101を引っ張りながらカテーテル100を移動させることとなるため、この先端部分101が磁石105の吸引力により血管104の血管壁に強く押しつけられながら移動することとなり、血管壁を傷つける虞がある。血管壁への不要な摩擦は、出血の他、血管内皮の剥離、血栓の発生、血管攣縮(血管が局所的に異常に収縮する現象)等、重大な合併症の原因となるため、前記各提案は安全性の面で大きな問題がある。
【0009】
なお、血管壁を傷つけないためには、血管壁を傷つけることのない適当な吸引力を前記先端部分101に掛けてカテーテル100の誘導を行えばよいのであるが、吸引力が不足しているとカテーテル100は靜摩擦のために動かない。また、磁石の吸引力は一様ではなく、磁石に近づくにつれて急激に大きくなる。このため、血管壁を傷つけることのない最適な吸引力を前記先端部分101に掛け続けながらカテーテル100の移動を図ることは実際上困難である。
【0010】
次に、これら各提案によれば、磁石105を動かすことによって吸引力の方向を変化させて先端部分101をある程度所望の方向に動かすことはできるのであるが、磁石105の吸引力は前述のように一様ではない。このため、先端部分101の送入方向を細かく操作することはできず、例えばカテーテル100を送入する血管が細く屈曲している場合等には、この屈曲に応じて送入方向を可変することはできない。
【0011】
また、先端部分101の移動速度は、主に磁石105の吸引力と、血管104内におけるカテーテル100の靜摩擦によって決まる。このため、前記先端部分101に磁石105を近づける程、該先端部分101が受ける吸引力は増大しその移動速度は速くなり、そして、一旦動き出した先端部分101は急激に加速して移動するため、先端部分101が、予期しない方向へ突き進み血管を傷付けたり、血管の分枝部分において、目的以外の血管にカテーテル100が送入される不都合を生ずる虞がある。このため、前記各提案は操作性の面でも大きな問題がある。
【0012】
このような理由から、前記各提案は、前述の安全性及び操作性の各面の問題から実用化は困難である。
【0013】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、管状組織を介して所望の部位に、安全かつ確実に、そして容易にカテーテル等の進入子を誘導することができるようなインターベンション治療システムと共に用いられる進入子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0015】
請求項1に記載の発明は、被検体の少なくとも一部が配置される空間内に磁場を発生させ、当該空間内における磁場の強度又は向きの少なくとも一方を制御することで、前記被検体の少なくとも一部内に存在する進入子の位置及び向きの少なくとも一方を制御するインターベンション治療システムと共に用いられる進入子であって、前記進入子の先端領域に設けられ、互いに直交する向きに設定された少なくとも3つの通電手段と、前記少なくとも3つの通電手段の少なくとも一つに電流を供給することで、前記空間内の磁場に起因する力学的作用を前記進入子の先端領域に発生させ、当該先端領域の位置及び向きの少なくとも一方を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする進入子である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、管状組織を介して所望の部位に、安全かつ確実、そして容易にカテーテル等の進入子を誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るインターベンション治療システム、及び当該システムと共に用いられる進入子の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
(第1の実施の形態の構成)
本発明の第1の実施の形態のインターベンション治療システムは、図1に示すように非収束磁場の一つである傾斜磁場や、略々一様な強度を持つ磁場を発生する電磁石である磁場発生部1と、X線管2からX線を曝射することで得られたX線像をイメージ・インテンシ・ファイヤ2で光学像に変換し、この光学像をテレビジョンカメラ4で撮像することにより被検体の透視画像を形成するI・I・−TV系5と、I・I・−TV系5により形成された透視画像を表示する表示部6と、磁場発生部1を駆動するコイルドライバ7と、例えばジョイスティック等の操作部8の操作に応じてコイルドライバ7を介して磁場発生部1を駆動制御すると共に、X線管2の管電圧、管電流、曝射タイミングをはじめ当該システムの全体の動作を制御するコントローラ9とを有している。
【0019】
磁場発生部1は、空間の直交座標系(x−y−z)におけるx方向に向かう磁場であって、主にx方向の位置の違いによって磁場強度が変化するような傾斜磁場を形成する図2(a)に示すような二重サドルコイル1aと、y方向に向かう磁場であって、主にy方向の位置の違いによって磁場強度が変化すような傾斜磁場を形成する同図(b)に示すような二重サドルコイル1bと、z方向に向かう磁場であって、主にz方向の位置の違いによって磁場強度が変化するような傾斜磁場を形成する同図(c)に示すような二重円形コイル1cとを組み合わせることで、同図(d)に示すような円筒形状の磁場発生部1として構成されている。
【0020】
なお、図1に図示した磁場発生部1は、被検体の頭部を覆う大きさのものであるが、これは一例であり、例えば被検体の身体全体を覆う大きさのものとし、或いは被検体の腕、足を覆う大きさのものとする等のように、目的に応じた大きさとすればよい。
【0021】
各コイル1a〜1cは、図2(a)〜(c)に示すようにそれぞれそれ相対向する一対のコイルからなり、前記コイルドライバ7から供給される電流に応じて磁場強度が位置によって変化する磁場である傾斜磁場を発生するようになっている。具体的には、例えばz方向に向かう磁場であって、z方向の位置の違いによって磁場強度(磁力線の密度)が変化するような傾斜磁場を形成する前記図2(c)に示す二重円形コイル1cの場合、図3に示すようにこのコイル1cの中心部近くにおいては、磁場強度はx方向、y方向にはあまり変化せず、z方向には、z座標の値に概ね比例して磁場強度が変化するような傾斜磁場を発生する。
【0022】
各コイル1a〜1cは、該各コイル1a〜1cに流す電流を増減することで、位置による磁場強度の変化率(磁場強度の微分)を任意に可変可能となっている。そして、各コイル1a〜1cに適切な電流を流すことによって、各コイル1a〜1cにより発生された磁場がベクトル的に加算され、任意の方向を向いた傾斜磁場を形成することができ、また、位置による磁場強度の変化率(磁場強度の微分)も任意に設定可能となっている。
【0023】
次に、当該インターベンション治療システムは、このような傾斜磁場により牽引される進入子として、その先端部に図4(a)の断面図に示すような円筒形状の磁性体リング14が設けられたカテーテル16を有している。このカテーテル16は、全体的に柔軟な部材で形成されており、管状組織の太さや形状に応じて変形し、管状組織を傷つけることなくカテーテル16の牽引が可能となっている。
【0024】
なお、カテーテル16の先端部には、前記円筒形状の磁性体リング14を設けることしたが、これは、前記傾斜磁場により誘導可能なものであれば何でも良い。例えば、図4(b)に示すような断面蒲鉾形状の磁性体リング15や、同図(c)に示すような球状に丸めた弾性の磁性体ワイヤ17や、磁性流体を含むバルーン等を設けるようにしてもよい。カテーテル16の先端部に設ける磁性体を、概ね球状としておくと、該磁性体が磁場の偶力を受け難くすることができる。このため、カテーテル16の先端部が、偶力により意図せぬ方向に向いてしまう不都合を防止することができ、先端部を任意の方向に任意の力で牽引でき、しかもカテーテル16の先端部が少し移動しても概ね一定の力を保つ事が可能となる。
【0025】
また、図4(c)に示したように磁性体として弾性の磁性体ワイヤ17を設けた場合、不要になればカテーテル16の中に磁性体ワイヤ17を引き込むことによって、カテーテル16から磁性体を取り除くことができる。従って、カテーテル16の送入後において、MRI装置で撮影を行う場合等に利用することができる。
【0026】
また、図4(d)に示すようにカテーテル16の先端部の周囲にコイル18を巻き付け、このコイル18に電線19を介して電流を流すことで電磁石としたり、或いは同図(e)に示すようにカテーテル16の先端部の周囲にそれぞれ直交する3つのコイル20a〜20cを巻き付け、この各コイル20a〜20cに電流を流すことで電磁石とし、これを磁気被誘導体としてもよい。
【0027】
この磁性体ワイヤ17や各コイル18、20a〜20cは、前記傾斜磁場により誘導可能なものであるため、後に説明するように前記傾斜磁場によるカテーテル16の牽引を可能とすることができる。
【0028】
(第1の実施の形態の動作)
次にこのような構成を有する当該第1の実施の形態のインターベンション治療システムの動作説明をする。
【0029】
まず、このインターベンション治療システムを用いて治療を行う場合、図1に示すように円筒形状を有する磁場発生部1の空隙部1a内に、例えば図4(b)に示したカテーテル16の送入された被検体を入れると共に、この状態でX線を曝射して表示部6に透視画像を表示する。これにより、表示部6には、被検体の透視画像と共に、被検体内に送入されたカテーテル16の現在位置が表示されることとなる。
【0030】
次に、医師は表示部6に表示された透視画像を見ながら、ジョイスティック等の操作部8を操作して、血管の走行方向に合わせた方向の、適切な強度の傾斜磁場を発生するように操作部8を操作する。これにより、コントローラ9の制御によりコイルドライバ7を介して磁場発生部1に電流が供給され、該磁場発生部1内の被検体に対して、血管の走行方向に合わせた方向の、適切な強度の傾斜磁場が印加されることとなる。
【0031】
そして、この傾斜磁場により、カテーテル16の先端部に設けられた磁性体リング15が牽引され、これに連れて血管の走行方向に合わせた方向に、カテーテル16が誘導される。医師は、このように誘導されるカテーテル16の動きを表示部6に表示された透視画像を見ながら確認し、所望の方向にカテーテル16を誘導するように操作部8を操作して、磁場発生部1の各コイル1a〜1cに適宣電流を供給することで、カテーテル16を所望の血管に誘導する。
【0032】
ここで、例えば図5(a)に示すように非常に長いソレノイド電磁石25の内腔等の一様な磁場強度を持つ磁場に、同図(b)の断面図に示すように磁性体26を入れた場合、この磁性体26の重心は磁場からは全く力を受けないため、磁性体26は重力によって落下するにすぎない。なお、磁性体26が細長ければ、磁性体26の重心は全く力を受けないが、図5(b)に示すように磁性体26の長手方向を、磁力線の方向に対して平行とする偶力が磁性体26に掛かる(磁性体26の代わりに小さい磁石を入れた場合には、重心はやはり全く力を受けないが、形状によらずこの磁石に偶力がかかる。)。また、例えば図6に示すように普通の永久磁石27の周囲等の、位置によって磁場強度が変化するような磁場においては、磁性体28の重心には磁場強度が増加する方向へ牽引力が掛かる。また、磁性体28が細長ければ、磁性体28の長手方向を、磁力線の方向に対して平行とする偶力が磁性体28に掛かる(磁性体28の代わりに小さい磁石を用いると、形状によらずこの磁石に偶力もかかる。)。
【0033】
このように、磁石が磁性体(や他の磁石)を引き寄せるのは、磁場が存在するからというだけではなく、磁場の強度が位置によって異なるからである。すなわち、位置による磁場の強度の変化の率(磁場強度の空間微分)が牽引力の強さを決定する。普通の永久磁石27の周囲では、位置による磁場強度の変化率(磁場強度の空間微分)は磁石27に近づくにつれて急激に大きくなる。このため、磁性体28が磁石27に近づくと、磁性体28が受ける力は急激に大きくなり、磁性体28を所望の方向に誘導することは困難なものとなる。
【0034】
しかし、当該実施の形態のインターベンション治療システムに設けられている磁場発生部1により発生される傾斜磁場の磁場強度は、位置座標に対して概ね比例するようになっている。このため、位置による磁場強度の変化率(磁場強度の空間微分)は概ね一定であり、磁性体リング15の位置に拘わらず、該磁性体リング15が受ける力は概ね一定となり、磁場発生部1の各コイル1a〜1cに流す電流を増減することによって、磁性体リング15の位置による磁場強度の変化率を任意に変える事ができ、力の強さを任意に設定することができる。また、各コイル1a〜1cに供給する電流の向きを逆にすることによって、磁性体リング15に掛かる力の向きを反転することもできる。さらに、各コイル1a〜1cに供給する電流を加減することによって、任意の方向を向いた傾斜磁場を形成することができる。
【0035】
従って、磁性体リング15に対して任意の方向に任意の強さの力をかけ、磁性体リング15が移動しても該磁性体リング15に掛かる力の大きさと向きが概ね変化しないようにすることができる。このため、カテーテル16の先端の向きについては強制力(偶力)を及ぼすことなく、カテーテル16の先端を任意の方向に任意の力で牽引し、しかもカテーテル16の先端が移動しても概ね一定の力を保つ事ができる。そして、このようなカテーテル16の誘導制御は、磁場発生部1の各コイル1a〜1cを機械的に動かすことなく、該各コイル1a〜1cに供給する電流量を調整するだけで行うことができる。
【0036】
また、血管走行に沿った方向に力を掛けることができ、従来のように磁性体と磁石により血管を挟むかたちでカテーテルを移動させることがないため、血管壁を傷つけることなくカテーテル16を誘導することができる。また、カテーテル16の先端部が移動しても磁性体リング15に掛かる力は概ね一定であるため、カテーテル16の先端部が予期せぬ大きな力を受けて暴走する虞がなく、安全性の高いインターベンション治療システムを提供することができる。
【0037】
また、従来、カテーテルが剛性を必要とするのは、手元の操作に応じた力を先端部に伝えるためなのであるが、当該インターベンション治療システムによれば、カテーテル16の先端部に直接に力を掛けるようにしているため、カテーテル16全体を剛性の無い柔軟な部材で形成することができる。従って、この柔軟な部材で形成されていることから、血管壁に不要な摩擦を加えることがなく、出血の他、血管内皮の剥離、血栓の発生、血管攣縮(血管が局所的に異常に収縮する現象)等の重大な合併症の発生を防止することができる。従って、当該インターベンション治療システムにおいては、カテーテル16の先端部を安全、迅速かつ確実に目的の血管分枝内へ誘導することができる。
【0038】
以上の説明から明らかなように、当該第1の実施の形態のインターベンション治療システムは、先端部に磁気誘導可能な物体が設けられたカテーテル16を被検体の管状組織に送入し、ここに磁場発生部1から発生される傾斜磁場或いは一様磁場を印加することにより、簡単、迅速かつ安全にカテーテル16を被検体の所望の管状組織に誘導することができる。
【0039】
なお、上述の第1の実施の形態の説明では、当該インターベンション治療システムは、血管に送入カテーテル16を誘導するものであることとしたが、当該インターベンション治療システムは、例えば消化管、気管支、耳鼻科領域等の腔状器官への器具の送入、筋肉や肝・脳などの実質臓器内への器具の誘導にも適用可能である。
【0040】
また、透視画像を得る手段としてX線透視装置を用いることとしたが、これは内部の画像さえ得られれば、例えば超音波断層装置、X線CT等の他の撮像機器を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、磁場発生部1は、各コイル1a〜1cを組み合わせることで全体が円筒形状であることとしたが、これは、球状、直方体状等の様々な形態をとり得る。また、必ずしも3対のコイル1a〜1cから構成する必要はなく、より多数のコイルを組み合わせても良いし、逆に、牽引すべき方向が限られているような応用においては1対或いは2対のコイルを用いることもできる。この場合、磁場発生部1の構成を簡略化することができる。
【0042】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。上述の第1の実施の形態のインターベンション治療システムは、傾斜磁場によりカテーテル16を被検体の所望の管状組織に誘導するものであったが、この第2の実施の形態のインターベンション治療システムは、被検体内に挿入したカテーテル16の向きを一様磁場により所望の向きに変向可能としたしたものである。なお、この第2の実施の形態は、この点のみが上述の第1の実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0043】
すなわち、この第2の実施の形態のインターベンション治療システムは、進入子として例えば図4(a)に示す円筒形状の磁性体リング14が先端部に設けられたカテーテルを用いるようになっており、医師は、上述の傾斜磁場を用いたカテーテル16の誘導の途中で、例えば血管が著しく屈曲している部位や、複雑に分岐している部位に差し掛かった場合、操作部8を操作して一様磁場の発生を指定する。
【0044】
コントローラ9は、この指定がなされると、図7に示すように磁場発生部1の各コイル1a〜1bのそれぞれ対となるコイルに同じ方向で同じ大きさの電流を流すようにコイルドライバ7を制御する。なお、図7は、各コイル1a〜1bのうち、二重サドルコイル1aにこのような電流が供給された状態を示している。このように各コイル1a〜1bに同じ向き、同じ大きさの電流が供給されると、これらのコイル1a〜1bには傾斜磁場ではなく、略々一様な強度を持つ磁場(一様磁場)を発生する。医師は、各コイル1a〜1bの対のそれぞれに流す電流量を調整することによって、任意の方向、任意の強度を持つ一様磁場を発生させることができる。
【0045】
上述のように、磁性体リング14は円筒形状を有しているため、細長い磁性体と略々同じである。このため、一様磁場が印加されると、カテーテル16の先端部は、磁場の偶力に応じた方向に沿ってその向きを変えるのであるが、どの方向にも牽引されることはない。このため、医師は、一様磁場の強度を調整することで、充分な時間を掛けてカテーテル16の先端部を所望の方向に向けることができる。従って、血管が著しく屈曲している部位であっても、この屈曲している方向にカテーテル16の先端部を向けることができ、また、血管が複雑に分岐している部位であっても、所望の血管の方向にカテーテル16の先端部を向けることができる。従って、例えば脳手術において、図8に示すように機能的に重要な領域(迂回すべき領域)を傷つけることなく、これを迂回して、患部(ターゲット)にカテーテル16を到達させることができる。そして、カテーテル16を介して患部に薬剤を注入したり、柔軟な凝固装置を送入して人工的凝固巣を作る手術等のこれまで困難であった手術を可能とすることができる。
【0046】
さらに、血管の走行方向に沿って略々一様な磁場を掛けることによって、カテーテル16が常時進行方向を向いている様にすることができ、血管内で予期しない屈曲を起こす不都合を防止することができる。
【0047】
従来のカテーテルでは、特にひねりの力を先端に随意に伝えることが難しい。少しひねっても先端部は回らず、ひねりすぎると急激に回転して、なかなか思った向きにはならない。しかし、当該インターベンション治療システムによれば、カテーテル16の先端部の向きを、前記一様磁場により制御することができるため、カテーテル16の先端部を回転させるために手元でカテーテルをひねる操作を不要とすることができ、カテーテル16の剛性を小さくてすることができる。
【0048】
なお、カテーテル16の先端部に前記磁性体リング14を設ける代わりに小さな永久磁石を設けるようにしても良い。
【0049】
また、図4(d)、(e)に示したような小さなコイル18、20a〜20cを設け、これにカテーテル内腔やカテーテル壁に埋め込んだ電線19等を介して小さい電流を流すことによって、このコイル18、20a〜20cを電磁石にしてもよい。磁場発生部1に流す傾斜磁場コイルを形成するための電流を急に遮断しても発生した傾斜磁場は直ちには消滅しないのであるが、カテーテル16の先端部にコイル18、20a〜20cを設けた場合、このコイル18、20a〜20cに電流を流すことで形成される磁場は瞬時に変えることができるため、カテーテル16の先端部に掛かる力を瞬時に変えたり、ゼロにすることが可能となる。このため、当該インターベンション治療システムの操作性及び安全性の向上を図ることができる。また、磁場発生部1に供給する電流を急激に変化させる必要がないため、コイルドライバ7として時間応答性の悪い、安価で小型のものを設けた場合でも十分対応可能とすることができる。
【0050】
また、カテーテル16の磁性体として、図4(e)に示すそれぞれ互いに直交する3つのコイル20a〜20cを設けた場合、各コイル20a〜20cに適切な電流を流せば、この電流の調節だけによってカテーテル16の先端部に掛かる偶力の向きを自在に変えることができる。従って、磁場発生部1に供給する電流を急激に変化させることなく、索引力の大きさと偶力の向きを自在に変化させることを可能とすることができる。
【0051】
また、カテーテル16の先端部に、磁性流体を入れた柔軟な袋を設けるようにしてもよい。これを用いると、該先端部を特定の方向を向かせるように磁場を掛けたときに、袋はその方向に沿って伸長し細くなるため、細い血管へのカテーテル16の誘導を容易化することができる。また、血管の走行方向と磁場の方向が多少違っていても袋が変形するため、血管壁に強い力を加えてしまう虞が少ない。また、袋自体を血管等の塞栓治療に用いることもできる。この袋自体を塞栓治療に用いる場合には、万一に備えて袋に回収用の糸を設け、或いはカテーテル自体を袋の近くで切り離せる構成とすることが好ましいであろう。
【0052】
この袋は、いわゆるバルーンであってもよい。すなわち、袋はカテーテル16の先端に繁がっており、カテーテル16を通して袋の中に磁性流体を注入したり、抜き取る構成としてもよい。この場合、血管の太さに応じて袋に注入する磁性流体量を変えることにより、カテーテル16の誘導を容易とすることができ、また、血管等の塞栓に際してバルーンの大きさを変えることができる。
【0053】
なお、カテーテル16を索引する向きを変えるために各コイル1a〜1cに流す電流を変化させることとしたが、これは、磁場発生部1を被検体の周りで機械的に回転させて傾斜磁場の向きを変えて索引するカテーテル16の向きを変えるようにしてもよい。
【0054】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。上述の第1、第2の実施の形態のインターベンション治療システムは、進入子となるカテーテル16の先端部に磁気誘導体を設け、このカテーテル16を、傾斜磁場或いは一様磁場により所望の方向に誘導するものであったが、この第3の実施の形態のインターベンション治療システムは、薬剤を徐々に放出する徐放性カプセルの中に磁性体を入れ、この徐放性カプセルを傾斜磁場或いは一様磁場により所望の部位に誘導するようにしたものである。なお、この第3の実施の形態は、この点のみが上述の各実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0055】
すなわち、この第3の実施の形態のインターベンション治療システムは、進入子として図9に示すような徐放性カプセル30を用いるようになっている。図9は、この徐放性カプセル30の断面図なのであるが、この図9において、徐放性カプセル30は、その内部に薬剤30と共に磁性体32が設けられている。
【0056】
この第2の実施の形態のインターベンション治療システムにおいては、この徐放性カプセル30を被検体内に送入し、上述の傾斜磁場及び一様磁場を用いて所望の部位に誘導する。
【0057】
これにより、例えば徐放性カプセル30の薬剤31を被覆しているカプセル33が、体温により徐々に融解する物質であれば、該カプセル33が体温で徐々に融解することで内部の薬剤31が徐々に患部に浸透して作用することとなる。このため、徐放性カプセル30を留置した部位の周囲にのみ、局所的に薬剤を拡散することができる。特に、腫瘍の治療において、腫瘍部にこのような徐放性カプセルを誘導し抗癌剤を放出させることで、該腫瘍を有効に治療することができる。
【0058】
また、前記薬剤31として、水分を吸収して急激に膨張するゲルを用いると、腫瘍や動静脈奇形等の治療において、人為的に血管を塞栓することができる(人工塞栓術)。
【0059】
前記徐放性カプセル30に対して、図10に示すように超音波治療装置35からの超音波を照射して発熱させ薬剤31を除放するようにしてもよい。この場合、超音波による熱によりカプセル33を破裂させ、薬剤31を一気に放出させることができる。
【0060】
また、前記薬剤31及び磁性体32の代わりに、カプセル33内に磁性粉入りの塞栓剤や、例えば磁性体粉を油脂に懸濁して形成した磁性流体を入れたものを用い、例えば動脈瘤やAVM、腫瘍栄養血管を塞栓治療するようにしてもよい。この場合、塞栓剤自体に磁性粉が混入されているため、上述の傾斜磁場の牽引力を用いることで、塞栓剤が固化するまで流失させることなくその場に滞留させておくことができる。或いは、カプセル33の代わりに磁性粉入りのバルーンと塞栓剤を使用しても同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、体内に誘導された磁性体32は、手術の際に摘出すればよい。或いは、図9に示すように磁性体32に細い線34(糸等)を付けて誘導し、不要となった際にこの糸を引っ張って摘出するようにしてもよい。
【0062】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。上述の第3の実施の形態のインターベンション治療システムは、磁性体が送入された徐放性カプセルを所望の部位に誘導するようにしたものであるが、この第3の実施の形態のインターベンション治療システムは、磁性体そのものを所望の部位に誘導し、これを治療に利用するようにしたものである。なお、この第4の実施の形態は、この点のみが上述の各実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0063】
すなわち、この第4の実施の形態のインターベンション治療システムは、進入子として図11に示すような導電性の磁性体38を用いるようになっており、この磁性体38を被検体内に送入し、上述の傾斜磁場及び一様磁場を用いて腫瘍等の内部や近傍に誘導する。そして、超音波治療装置35からの超音波を照射する。磁性体38は、例えばニクロム合金等の導電部材と、磁性部材とで形成されており、外部からマイクロ波を照射すると発熱する。この発熱温度を43℃程度の温度に保つと、正常細胞は耐えられるのであるが癌細胞は死滅する(ハイパーサーミア効果)。これにより、正常な細胞に悪影響を与えることなく、癌等の腫瘍のみを治療することができる。
【0064】
なお、マイクロ波の代わりに高周波磁場を印加することでも同様の効果を得ることができる。この場合、磁場発生部1の所定のコイルに高周波交流電流を流すことで高周波磁場を発生させることができる。従って、高周波磁場発生用の装置を新たに設ける必要がなく、当該インターベンション治療システムのみでこのような治療を可能とすることができる。
【0065】
また、磁性体38に超音波或いは高周波磁場を照射することなく、血管等の管状組織を介して、或いは脳や肝臓等の実質臓器内に誘導し、そのまま留置してもよい。これにより、血管の塞栓治療や手術用マーカとすることができる。
【0066】
そして、被検体内に留置された磁性体38は、上述のように手術の際に摘出し、或いは磁性体38に細い線(糸等)を付けて所望の部位まで誘導し、不要となった際にこの糸を引っ張って摘出すればよい。
【0067】
次に、図12に示すように磁性体38にヒューズ40を介して被覆した電線41を取付け、この状態で被検体内の所望の部位に誘導し、電源装置42からの電流を供給してヒューズ40を溶解させ、磁性体38と電線41とを切り離すようにしてもよい。これにより、所望の部位に磁性体38を留置して前記血管の塞栓治療等を行うことができる。
【0068】
また、電線41は、磁性体38と切り離した後に引っ張れば摘出することができるのであるが、この被検体内に送入された電線41は、以下のように積極的に利用することができる。
【0069】
すなわち、磁性体38及び上述の傾斜磁場等により電線41を所望の部位まで誘導し、この電線41を送入ガイドとしてカテーテルを送入する。言い換えれば、図13に示すように被検体内に送入された電線41を、カテーテル16の芯として該カテーテル16を送入する。電線41は、カテーテル16よりも細いため、カテーテル16を所望の部位まで誘導するよりも、電線41を所望の部位まで誘導する方が遥かに容易である。このため、最初に電線41を所望の部位まで送入し、この電線41に沿ってカテーテル16を被検体内に送入することで、細い血管等であっても容易に所望の部位までカテーテル16を送入することができる。
【0070】
また、神経性の疼痛や末期癌の痛みのコントロールを目的として、このような電気刺激電極の埋込手術がしばしば行われている。また、神経の故障によって機能しなくなった随意筋を人工的に刺激して収縮させる、いわゆる人工神経として電気刺激電極の埋込を行う研究も進んでいる。このため、磁性体38及び上述の傾斜磁場等により電線41を所望の部位まで誘導し、この電線41に電流が流すことで、該電線41を、局所的電気刺激の電極として利用することができる。
【0071】
また、この電線41を電気抵抗の高い物質で形成、電流を流すようにしてもよい。これにより、電線41が発熱し、周囲の組織を加温して前述のハイパーサーミア効果を得ることができる。
【0072】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。この第5の実施の形態のインターベンション治療システムは、被検体内にマイクロマシンを送入して誘導可能としたものである。なお、この第5の実施の形態は、この点のみが上述の各実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0073】
すなわち、この第5の実施の形態のインターベンション治療システムは、進入子として図14に示すような超小型テレビジョンカメラ装置を用いるようになっている。この超小型テレビジョンカメラ装置は、ケーブル51の先端に超小型のテレビジョンカメラ52及び磁性体リング53を設けて構成されている。現在の技術では、例えばCCDイメージセンサを用いて直径数ミリのテレビジョンカメラを形成することが可能となっている。
【0074】
当該インターベンション治療システムは、前記超小型テレビジョンカメラ装置を例えば被検体の消化管や気管支、或いは腹腔等の管状組織に送入した後、上述の傾斜磁場或いは一様磁場と磁性体リング53とにより、該超小型テレビジョンカメラ装置を所望の部位まで誘導する。これにより、テレビジョンカメラ52により管状組織内を撮像することができる。テレビジョンカメラ52からの撮像信号は、ケーブル51を介してモニタ装置等に供給される。医師等は、モニタ装置に表示される管状組織内の映像を見ながら診断治療を行うこととなる。これにより、当該インターベンション治療システムを内視鏡として用いることができる。
【0075】
従来の内視鏡では、先端の光学系或いはカメラ装置を任意の向きに向ける為には、ワイヤー等を使って内視鏡先端を屈曲させる必要がある。しかし、この方式では、内視鏡の根元側の部分が臓器内腔に嵌入して固定されていることが必要である。もし内視鏡が臓器内腔に比べて非常に細いと、先端を屈曲させても意図した方向を向けることができない。このため、従来の内視鏡はある程度の太さを必要としていた。例えば、上消化器管用内視鏡においては、その太さのために飲み込むのが困難であり、従って咽頭に麻酔を施す必要がある。上消化器管用内視鏡に於ける医療事故のほとんどはこの麻酔による事故である。
【0076】
これに対して、当該実施の形態では、細い線状のケーブル51に懸垂された超小型のテレビジョンカメラ52を例えば胃に入れたのち、上述の一様磁場によって該テレビジョンカメラ52の向きを任意の方向に向けることができる。従って、線を非常に細くすることができ、麻酔無しでも飲み込むことが可能となる。従って、侵襲性が少なく安全性が高い、体内のモニタリングシステムを提供可能とすることができる。
【0077】
次に、このような超小型テレビジョンカメラ装置と共に鉗子を送入することで、腫瘍の生検等の簡単な手術が可能となる。
【0078】
この場合、上述の超小型テレビジョンカメラ装置の先端部に、前記テレビジョンカメラ52と共に鉗子55を設ける。この鉗子55には、反開成側に形状記憶合金56が設けられている。この形状記憶合金56は、所定温度では鉗子55を閉じ、所定温度よりも高い温度で鉗子55を開くようになっている。また、この形状記憶合金56には、図16(a)、(b)に示すようにケーブル51を介して電源58及び該電源58からの電力を形状記憶合金56に供給するスイッチ57とが接続されている。
【0079】
このような鉗子55が設けられた超小型テレビジョンカメラ装置を用いる場合、この鉗子55及び超小型テレビジョンカメラ装置を被検体の消化器管等に送入し、テレビジョンカメラ52で撮像された映像を見ながら腫瘍等を探す。そして、腫瘍を発見した場合に、図16(b)に示すようにスイッチ57をオンオフ操作する。スイッチ57がオン操作されると、電源58からの電力がケーブル51を介して形状記憶合金56に供され、形状記憶合金56は発熱し、図16(b)に示すように鉗子55を開く。また、スイッチ57がオフ操作されると、形状記憶合金56への電力の供給が停止して形状記憶合金56が冷め、図16(a)に示すように鉗子55を閉じる。
【0080】
医師等は、スイッチ57をオンオフ操作することで鉗子55を開閉制御し、腫瘍の切除や組織標本の採取等を行う。これにより、腫瘍の生検等の簡単な手術を可能とすることができる。
【0081】
なお、鉗子55は形状記憶合金56で開閉制御することとしたが、これは、超小型のモータ等の他の手段を使って開閉制御するようにしてもよい。
【0082】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。この第6の実施の形態のインターベンション治療システムは、上述の各実施の形態で用いた磁場発生部1に対してX線を遮ることなく透過させるための窓を設けるようにしたものである。なお、この第6の実施の形態は、この点のみが上述の各実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0083】
傾斜磁場等の磁場を形成する磁場発生部1は、図1に示したように被検体に近接して設けられ、X線管2からのX線は、該磁場発生部1よりも離れた位置から被検体に曝射される。このため、磁場発生部1の各コイル1a〜1cの各巻線がX線視野に入ると、その陰影がX線画像上に現れ、血管、カテーテル、磁性体等の目的物の識別が困難となる。
【0084】
このようなことから、当該実施の形態のインターベンション治療システムでは、図17に斜線で示すように磁場発生部1にコイルの巻線がない箇所(窓60)を設けている。この窓60は、空隙部となっており、巻線でX線を遮ることなくそのまま被検体にX線を曝射するようになっている。これにより、磁場発生部1の各コイル1a〜1cの各巻線の陰影がX線画像上に現れる不都合を防止することができ、明確なX線画像を提供可能とすることができる。
【0085】
なお、窓60は、空隙部であることとしたが、これは、例えば合成樹脂フイルム等のX線をあまり吸収しない部材で塞ぐようにしてもよい。この場合、合成樹脂フイルム等により前記空隙部が塞がれることとなるため、患者が誤って空隙部内に指や手等を入れてしまう不都合を防止することができる。
【0086】
また、窓60として、相対向し互いに直交する方向の2つの窓を設けるようにしてもよい。これにより、バイブレーンX線透視装置によるX線撮影に対応可能とすることができる。
【0087】
また、このように窓60の設けられた磁場発生部1を、X線透視装置の回転角度に対応させて回転させるようにしてもよい。これは、X線透視装置の回転角度を検出し、この検出角度に応じて前記空隙部等を介してX線が曝射されるように磁場発生部1を回転駆動する回転駆動系を設けることで簡単に実現することができる。
【0088】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態のインターベンション治療システムの説明をする。上述の各実施の形態の説明では、磁場発生部1は傾斜磁場及び一様磁場を発生し、これにより磁性体等を誘導するものであったが、この第7の実施の形態のインターベンション治療システムは、磁場発生部1が、前記各コイル1a〜1cと共に焦点磁場を発生するコイルを有し、焦点磁場により磁性体等を誘導するようにしたものである。なお、この第7の実施の形態は、この点のみが上述の各実施の形態と異なるため、以下、この差異の説明のみ行い重複説明を省略することとする。
【0089】
すなわち、このインターベンション治療システムに設けられている磁場発生部1は、前記図1(a)〜(c)に示した各コイル1a〜1cと共に、図18に示すような、言わば野球のボールの縫い目状のコイル1dを有している。このコイル1dに電流を流すと、図18中斜線で示す中心点(焦点)で磁場強度が最大になるような傾斜磁場である、焦点磁場を形成する。
【0090】
この焦点磁場により磁性体等の誘導を行う場合、被検体の体内に焦点が位置するように磁場発生部1を配置し、先端部に磁性体の設けられた前記カテーテル16を被検体に送入する。この状態で、前記焦点を磁性体に近づけると、該磁性体は焦点に向かって索引される。このため、医師は、磁場発生部1を機械的に移動させ、或いは各コイル1a〜1cにより発生される傾斜磁場或いは一様磁場を併用して焦点の位置を移動し、前記カテーテル16を被検体内の目的の部位まで移動する。
【0091】
なお、この焦点磁場は、磁性体が焦点に近づくと該磁性体を焦点に索引するのであるが、焦点と磁性体とがごく近い位置にある場合は、該磁性体にはほとんど索引力が働かない。これは焦点のごく近傍では磁場強度は最大値に近く、磁場強度の空間微分(位置による変化)は小さい(焦点の位置ではゼロになる)からである。
【0092】
このため、このような焦点磁場を用いて磁性体の誘導を行うと、該磁性体が焦点のごく近傍に移動した時点で索引力が低下するため、予想以上に磁性体が移動し過ぎる危険を防止することができる。従って、焦点磁場の焦点を目的部位に位置するように磁場発生部1を配置することで、目的部位の位置である焦点の部分で磁性体の誘導が停止されるため、磁性体を最大どれだけ動かしたいか、その行程を自明に制御することができる。例えば、ある方向へ1cmだけ磁性体を移動させたいのであれば、焦点を現在の磁性体の位置よりも目的の方向へ1cmだけ移動させればよい。焦点磁場を用いることで、このような磁性体の細かな移動制御を行うことができるため、当該インターベンション治療システムの操作性の更なる向上を図ることができる。
【0093】
[終文]
最後に、このような傾斜磁場コイルの技術は、MRI装置において既に使われている技術に類似している。すなわち、MRI装置は、強い一様な磁場を発生する靜磁場磁石(永久磁石、常伝導電磁石、超伝導電磁石を使った物がある)の他に、傾斜磁場コイルを有し、これらによって任意の方向・磁場強度の変化率(磁場強度の微分)を持つ傾斜磁場を発生する。傾斜磁場コイルはMRI装置の撮像原理上本質的に必要なものであり、傾斜磁場コイルに流す電流を制御する電源装置と共に、既に長年にわたって改良が重ねられ、非常に線形性の良い(磁場強度の変化率が位置によらず高い精度で一定であること。)傾斜磁場コイルと、傾斜磁場の方向・強度を1/1000秒以下の短時間で正確に切り替える電源装置が実用化されている。そして、MRI装置においては、傾斜磁場コイルの作る磁場ベクトルのうち、静磁場ベクトルと平行な成分だけが利用されている。またMRI装置においては、傾斜磁場による牽引力はむしろ弊害とみなされる。これは、人体内に予期しない磁性体(例えば針等)が入っていた場合、この磁性体が人体内を移動することによって予期せぬ事故が発生する虞があるからである。
【0094】
しかし、当該インターベンション治療システムは、MRI装置において弊害とみなされている傾斜磁場による牽引力を積極に利用するものであり、この点において、当該インターベンション治療システムは、MRI装置の技術から容易に推考されるものではないことを付け加えておく。
【0095】
また、上述の各実施の形態は、本発明のほんの一例である。このため、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施の形態のインターベンション治療システムの全体的な構成を示す図である。
【図2】前記第1の実施の形態のインターベンション治療システムの磁場発生部の構成を説明するための図である。
【図3】前記磁場発生部により発生される傾斜磁場の一例を示す図である。
【図4】前記第1の実施の形態のインターベンション治療システムに用いられる磁性体の設けられたカテーテルの一例を示す図である。
【図5】細長い磁性体に係る偶力を説明するための図である。
【図6】細長い磁性体に係る偶力及び牽引力を説明するための図である。
【図7】前記磁場発生部により発生される一様磁場を説明するための図である。
【図8】脳内のターゲットまで、迂回領域を迂回してカテーテルが誘導される様子を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態のインターベンション治療システムで用いられる磁性体の設けられた徐放性カプセルの断面図である。
【図10】前記徐放性カプセルに被検体外から超音波を照射している様子を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態のインターベンション治療システムで用いられる磁性体を被検体内に誘導した状態で、該磁性体に超音波を照射することでハイパーサーミアによる治療を行っている様子を示す図である。
【図12】被検体内に誘導する電線が設けられた磁性体を示す図である。
【図13】被検体内に誘導された磁性体に設けられた電線に沿ってカテーテルが送入される様子を示す図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態のインターベンション治療システムにおいて、被検体内に送入される超小型のカメラ装置を示す図である。
【図15】前記超小型のカメラ装置と共に鉗子が設けられたマイクロマシンを示す図である。
【図16】前記鉗子の開閉制御回路を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態のインターベンション治療システムに用いられる、X線照射用の窓が設けられた磁場発生部の外観を示す斜視図である。
【図18】本発明の第7の実施の形態のインターベンション治療システムの磁場発生部に設けられている焦点磁場発生用のコイルの形状を示す図である。
【図19】磁石によりカテーテルに設けられた磁性体を誘導する従来の医療用カテーテルの誘導方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
1…磁場発生部、2…X線管、3…イメージ・インテンシ・ファイヤ(I・I・)、4…テレビジョンカメラ、5…I・I・−TV系、6…表示部、7…コイルドライバ、8…ジョイスティック、9…コントローラ、14、15…磁性体リング、16…カテーテル、17…磁場体ワイヤ、18、20a〜20c…コイル、30…徐放性カプセル、31…薬剤、32、38…磁性体、33…カプセル、34…糸、35…超音波治療装置、40…ヒューズ、41…電線、42…電源装置、51…ケーブル、52…超小型のテレビジョンカメラ、53…磁性体リング、55…鉗子、56…形状記憶合金、57…スイッチ、58…電源、60…X線曝射用の窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の少なくとも一部が配置される空間内に磁場を発生させ、当該空間内における磁場の強度又は向きの少なくとも一方を制御することで、前記被検体の少なくとも一部内に存在する進入子の位置及び向きの少なくとも一方を制御するインターベンション治療システムと共に用いられる進入子であって、
前記進入子の先端領域に設けられ、互いに直交する向きに設定された少なくとも3つの通電手段と、
前記少なくとも3つの通電手段の少なくとも一つに電流を供給することで、前記空間内の磁場に起因する力学的作用を前記進入子の先端領域に発生させ、当該先端領域の位置及び向きの少なくとも一方を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする進入子。
【請求項2】
前記進入子は、磁気により誘導可能な磁気被誘導体の設けられたカテーテルであることを特徴とする請求項1記載の進入子。
【請求項3】
前記進入子は、磁気により誘導可能な磁気被誘導体と共に、所定の薬剤が被覆されたカプセルであることを特徴とする請求項1又は2記載の進入子。
【請求項4】
前記進入子は、磁気により誘導可能な磁気被誘導体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載の進入子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−178751(P2008−178751A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113018(P2008−113018)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【分割の表示】特願平10−167471の分割
【原出願日】平成10年6月15日(1998.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】