説明

インターホン装置

【課題】 呼出先の数の変更に対して柔軟に対応でき、更に柔軟に対応できる構成であっても比較的低コストで提供できるインターホン装置を提供する。
【解決手段】 インターホン子機3を、マイク13/スピーカ12を備えた通話子機1と、子機ディスプレイ21上に複数の呼出ボタンを設けた呼出子機2とに分離して形成し、通話子機1、呼出子機2、インターホン親機4をHUB5を介して通信線によりそれぞれ接続してIPプロトコルにより相互間で通信を実施し、インターホン親機4は呼出子機2から出力された呼出信号を基に通話子機1との間で通話路を形成するための通話操作部44を有する。通話子機1は訪問者の接近を検知する人感センサ14を有し、検知動作してから所定時間が経過しても呼出子機2から呼出信号の送信がなかったら、通話子機1のスピーカ12から呼出操作を促すための音声ガイダンスを報音する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、訪問者が居住者等を呼び出して通話するインターホン装置に関し、特に呼出先が複数設定されており、何れかを選択して呼び出しするインターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の呼出先を備えて訪問者が何れかを選択して呼び出しできる従来のインターホン装置として、非特許文献1に示すようなインターホン装置がある。これは、インターホン子機に呼出先の異なる複数の呼出ボタンが設けられ、訪問者は訪問先に関連付けられた呼出ボタンを押下することで選択したインターホン親機に呼び出しが掛かり、通話を行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】アイホン株式会社発行 「2010−2012総合カタログ」p.476−477
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献1のインターホン装置は、1台のインターホン子機で複数の呼出先を選択して呼び出しできるため、複数の会社が入居しているようなテナントビルや、部署別に呼び出しできるオフィスビルに好ましい構成となっていた。
しかしながら、呼出先の選択数に柔軟性がなく、レイアウト変更によって新たな呼出先が発生した場合にはインターホン装置全体を変更して対応するしか方法がなく、コスト高なものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、呼出先の数の変更に対して柔軟に対応でき、更に柔軟に対応できる構成であっても比較的低コストで提供できるインターホン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、複数の呼出先から訪問先を選択して呼び出すための操作部、及び通話のためのマイク/スピーカを備えたインターホン子機と、呼び出しに応答するためのマイク/スピーカを備えた複数のインターホン親機とを有し、IPプロトコル等の汎用データプロトコルにより相互に通信を実施するインターホン装置であって、インターホン子機は、操作部をタッチパネルで構成した呼出子機と、マイク/スピーカを備えた通話子機とに分離して形成されると共に、呼出子機、通話子機、インターホン親機がHUBを介して通信線によりそれぞれ接続されて相互間で通信を実施し、インターホン親機は、操作部の操作を受けて呼出子機から出力された呼出信号を基に通話子機と通話路を形成するための通話操作部を有することを特徴とする。
この構成によれば、呼出先を選択するための呼出子機と、通話するための通話子機とを別体としたことにより、呼出先の名称やインターホン親機の数等が変更された場合に、インターホン子機の変更は呼出子機のみで済み、通話子機を変更する必要がなく比較的低コストで実施できる。そして、インターホン親機の数の変更に対してはタッチパネルのボタン表示等を変更すること対応でき、インターホン装置の設置環境の変化に柔軟に対応できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、人感センサが検知動作してから所定時間が経過しても呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、通話子機のスピーカから呼出操作を促すための音声ガイダンスを報音させる音声ガイダンス制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、訪問者が呼出子機の操作方法に戸惑っているような場合は、音声案内が行われる。そのため、訪問先の呼び出しに役立つ。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の構成において、タッチパネルは画像を表示可能なディスプレイ上に設けられ、通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、人感センサが検知動作してから所定時間が経過しても呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、呼出子機に滞留信号を送信する滞留通知制御部を有し、呼出子機は滞留信号を受けてディスプレイの表示を点滅等変化させる表示制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、訪問者が呼出子機の操作がわからない場合でも、呼出子機のディスプレイの表示が点滅等するため、呼出操作が促され呼び出しを行うことができる。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の構成において、インターホン親機は、応答する人物を撮像するための親機カメラと、親機カメラの撮像映像を呼出子機に送信する映像制御部とを有し、呼出子機の表示制御部は、ディスプレイに親機カメラの撮像映像を表示することを特徴とする。
この構成によれば、呼出先のインターホン親機から応答する人物の映像がインターホン子機に表示されるため、訪問者は通話し易いし安心できる。また、操作部を利用して映像を表示するので、別途表示手段を設ける必要がない。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の構成において、インターホン親機は、訪問者に対して呼出状況を通知するための文字情報から成るガイダンス画像を記憶する画像記憶部と、呼出信号を受けて呼出子機にガイダンス画像を送信するガイダンス制御部とを有し、呼出子機の表示制御部は、受信したガイダンス画像をディスプレイに表示することを特徴とする。
この構成によれば、呼出操作後にガイダンス画像が呼出子機に表示されるので、訪問者は呼出状況を画像で認識でき、呼出状況を把握でき安心できる。また、操作部を利用して映像を表示するので、別途表示手段を設ける必要がない。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の構成において、通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、人感センサが感知動作してから一定時間が経過しても呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、予め指定したインターホン親機へ呼出信号を送信する自動呼出制御部とを有することを特徴とする。
この構成によれば、故障等で呼出子機が動作しない場合でも、特定のインターホン親機が呼出動作する。よって、呼出信号が出力されないことで訪問者が居住者不在と判断してしまうことがない。
【0012】
請求項7の発明は、複数の呼出先から訪問先を選択して呼び出すための操作部、及び通話のためのマイク/スピーカを備えたインターホン子機と、呼び出しに応答するためのマイク/スピーカを備えた複数のインターホン親機とを有し、IPプロトコル等の汎用データプロトコルにより相互に通信を実施するインターホン装置であって、インターホン子機は、操作部を備えた呼出子機とマイク/スピーカを備えた通話子機とに分離して形成されると共に、通話子機と複数のインターホン親機とはHUBを介した通信線により接続される一方、呼出子機が訪問者が携行する携帯型呼出子機であって、HUBに携帯型呼出子機と無線LAN通信を実施する無線通信部を備えて通話子機及びインターホン親機の双方と通信を実施でき、インターホン親機は、操作部の操作により呼出子機から出力される呼出信号を基に通話子機と通話路を形成するための通話操作部を有することを特徴とする。
この構成によれば、呼出先を選択するための呼出子機と、通話するための通話子機とを別体としたことにより、呼出先の名称やインターホン親機の数等が変更された場合に、インターホン子機の変更は呼出子機のみで済み、通話子機を変更する必要がない。よって、装置の変更を比較的低コストで実施できる。
また、呼出子機として訪問者が携行している携帯電話やタブレット端末を使用することが可能であり、この場合は玄関に設置するのは通話子機のみで済み、住戸側に設置する機器を安価に構成できる。
【0013】
請求項8の発明は、請求項7に記載の構成において、携帯型呼出子機の操作部は、画像を表示可能なディスプレイ上に設けたタッチパネルで構成され、ディスプレイに呼出先一覧を表示する表示制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、インターホン親機の数の変更に対してはタッチパネルのボタン表示等を変更することで対応でき、インターホン装置の設置環境の変化に柔軟に対応できる。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の構成において、操作部の操作により呼出子機から出力される呼出信号は、通話子機を経由してインターホン親機に送信される一方、通話子機は携帯型呼出子機のIPアドレスを登録したアドレス記憶部を有し、登録された携帯型呼出子機の呼出信号のみ受け付ける呼出監視部を有することを特徴とする。
この構成によれば、登録されていない携帯型呼出子機からの呼出信号は受け付けないため、携帯型呼出子機が汎用の携帯型端末であっても、悪意を持った訪問者からの通話路の確立要求を拒否できる。
【0015】
請求項10の発明は、請求項9に記載の構成において、通話子機は、携帯型呼出子機から出力される無線LAN信号の強度を検知する携帯機器検知部を有し、呼出監視部は、携帯機器検知部が所定のレベル以上の無線LAN信号を検知したら、登録された携帯型呼出子機の呼出信号を受け付けることを特徴とする。
この構成によれば、無線LAN信号の強度が所定のレベル以下であれば、即ち携帯型呼出子機が通話子機の近くに無ければ、登録された機器から呼出信号が送信されても受け付けないので、近隣の住戸で登録された携帯型呼出子機が操作されても、自身が呼び出されていると認識することがなく、誤動作を防止できる。
【0016】
請求項11の発明は、請求項10に記載の構成において、通話子機は、携帯機器検知部が携帯型呼出子機の存在を認識してから一定時間が経過しても携帯型呼出子機から呼出信号がなかったら、予め指定されたインターホン親機を呼び出す自動呼出制御部を有することを特徴とする。
この構成によれば、故障等で携帯型呼出子機の呼び出し機能が動作しない場合でも、特定のインターホン親機が呼出動作する。よって、呼出信号が出力されないことで訪問者が居住者不在と判断してしまうことがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、呼出先を選択するための呼出子機と、通話するための通話子機とを別体としたことにより、呼出先の名称やインターホン親機の数等が変更された場合に、インターホン子機の変更は呼出子機のみで済み、通話子機を変更する必要がない。そして、インターホン親機の数の変更に対してはタッチパネルのボタン表示等を変更することで対応でき、インターホン装置の設置環境の変化に柔軟に対応できる。
更に、呼出子機を訪問者が携行する携帯型呼出子機とすれば、玄関に設置するのは通話子機のみで済み、住戸側に設置する機器を安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るインターホン装置の第1の形態を示す構成図である。
【図2】図1の各機器をブロック図で示した図である。
【図3】図1のインターホン装置の呼出時の動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】インターホン装置の第2の形態を示す構成図である。
【図5】図4の各機器を示すブロック図である。
【図6】図4のインターホン装置の呼出時の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るインターホン装置の第1の形態を示す構成図であり、1は玄関等の訪問者が来訪する場所に設置されて訪問先と通話するための通話子機、2は通話子機1の近傍に設置されて訪問先を呼び出すための呼出子機、4は室内に設置されて呼出に応答するためのインターホン親機(以下、単に「親機」と称する)であり、それぞれはHUB5を介して通信線で接続されている。通話子機1、呼出子機2、親機4はそれぞれ固有のIPアドレスを有し、IPプロトコルによるデータ信号、デジタル音声信号、デジタル映像信号の送受を実施する。
そして、通話子機1と呼出子機2とで訪問者が訪問先を呼び出して通話するインターホン子機(以下、単に「子機」と称する)3を構成している。
【0020】
図2は図1に示す機器を回路ブロック図で示している。この図2に示すように、通話子機1は、訪問者を撮像するための子機カメラ11、呼出先と通話するためのマイク13及びスピーカ12、訪問者の接近を感知する人感センサ14、接続機器のIPアドレス等を記憶する記憶部15、通話子機1の各部を制御する通話子機CPU16等を備えている。尚、通話子機1には呼出ボタンが無く、居住者を呼び出すための機能を備えていない。
【0021】
呼出子機2は、呼出先の一覧が複数の呼出ボタン(図示せず)により表示される子機ディスプレイ21、表示された呼出ボタンを操作するために子機ディスプレイ21上に設けた操作部としてのタッチパネル22、接続機器のIPアドレス等を記憶する記憶部23、呼出子機2の各部を制御する呼出子機CPU24等を備えている。
【0022】
親機4は、呼び出しに応答するためのマイク41及びスピーカ42、子機カメラ11の撮像映像を表示する親機ディスプレイ43、呼出信号を受けて通話子機1と通話路を形成する通話操作部44と、訪問者に対して呼出状況を説明するための文字情報から成るガイダンス画像を記憶する画像記憶部45、応答者を撮像するための親機カメラ46、親機4の各部を制御する親機CPU47等を備えている。
【0023】
このように構成されたインターホン装置の動作、特に呼出動作を次に説明する。図3は訪問者が接近し、呼出操作を受けたインターホン装置の動作の流れを示すフローチャートであり、機器別に動作を分けて示している。このフローに基づいて以下説明する。
玄関に訪問者が来ると、通話子機1の人感センサ14が訪問者を感知する(S1)。この感知を受けて、通話子機CPU16は記憶部15に記憶されている呼出子機2のIPアドレスを参照して、呼出子機2に対して起動信号を送信する(S2)。
【0024】
HUB5を介して起動信号を受信した呼出子機2は、呼出子機CPU24の制御により、例えば会社のインターホン装置である場合は、「受付」「総務部」等の複数の呼出先(呼出ボタン)が子機ディスプレイ21に表示される(S3)。
【0025】
子機ディスプレイ21の表示内容を確認した訪問者により、訪問先がタッチパネル22で選択される(S4でYES)と、呼出子機CPU24は選択された訪問先の親機4にIDを附加した呼出信号を生成し、通話子機1に送信する(S5)。通話子機1への送信は、通話子機1のIPアドレスを送信先に設定することで実施される。IPアドレスは記憶部23に予め登録されている。
尚、各種信号の送信は、同様にIPアドレスを送信先に設定して行われるため、以下この記載を省略する。
【0026】
呼出子機2から呼出信号を受信(S6)した通話子機1は、通話子機CPU16が呼出子機2から送信された信号であるとIPアドレス情報から確認(S8)すると、附加されている親機ID情報から親機4のIPアドレス情報を記憶部15から読み取り、このIPアドレスを送信先に設定して呼出信号を送信する。こうして呼出信号は呼出先の親機4へ送信される。また、呼出子機2からの信号であることを認識した通話子機CPU16は、スピーカ12から呼出確認音を鳴動させ、マイク13及び子機カメラ11を能動とし(S9)、集音した訪問者の音声及び子機カメラ11の映像信号を呼出先の親機4へ送信する(S10)。
【0027】
尚、親機4への呼出信号の送信は、呼出子機2から直接送信しても良い。この場合、通話子機1への送信の場合と同様に、親機4のIPアドレスを送信先に設定することで容易に実施できる。
【0028】
呼出信号を受信した親機4は、親機CPU47の制御によりスピーカ42から呼出音が鳴動するともに、通話子機1から送信された子機カメラ11の映像信号が親機ディスプレイ43に表示される。また、訪問者の音声が送信された場合はスピーカ42から報音される(S11)。
さらに親機CPU47は、画像記憶部45からガイダンス画像を読み出して呼出子機2に送信する(S12)。画像信号を受信した呼出子機CPU24は、子機ディスプレイ21に受信したガイダンス画像を表示する(S13)。こうして、子機ディスプレイ12には、例えばオフィスビルの子機3である場合は「ただいま、総務部を呼び出しています」の文字情報から成るガイダンス画像が表示される。また、例えば呼出先の親機4から他の親機4に転送される場合は、「しばらくお待ちください」等のガイダンス画像が表示される。この表示により、応答待ちの訪問者に対して呼出状況を通知することができる。
このように、呼出操作後にガイダンス画像が子機3に表示されるので、訪問者は呼出状況を認識でき、安心できる。
【0029】
その後、呼出音と来訪者映像により来訪者を確認した親機4近くの人物が、親機4の通話操作部44を応答操作すると、親機CPU47が能動状態にあるスピーカ42に加えてマイク41を能動とし、通話路形成信号を通話子機1に送信する。更に親機カメラ46を起動し、その撮像映像を呼出子機2に送信する。
通話路形成信号を受信した通話子機CPU16は、スピーカ12を能動として親機4との通話路を形成し、通話を可能とする。また、映像信号を受信した呼出子機CPU24は子機ディスプレイ21に親機カメラ46の撮像映像を表示させる。
このように、呼出先の親機4から応答する人物の映像が呼出子機2に表示されるため、訪問者は通話し易いし安心できる。また、タッチパネル22を利用して映像を表示するので、別途表示手段を設ける必要がない。
【0030】
一方、通話子機CPU16は人感センサ14が訪問者を感知した時点で図示しないタイマを起動し、例えば10秒等の所定時間のカウントをスタートする。そして、呼出子機2が操作されずにこの所定時間が経過したら(S7でYES)、スピーカ12から呼出操作を促すアナウンス、例えば「呼出先をタッチしてください」等の音声を報音させる(S14)。このアナウンス音声は記憶部15に予め記憶されている。更に、通話子機CPU16は呼出子機2に滞留信号を送信する(S15)。滞留信号を受信した呼出子機CPU24は、画面を点滅させるガイダンス動作を行ない呼出操作を促す(S16)。更にその後も、呼出信号の送信が無く所定時間が経過したならば、通話子機CPU16は予め指定した親機4へ呼出信号を自動送信する。こうして、親機4から応答があれば通話が可能となる。
【0031】
尚、滞留信号に基づいて所定のガイダンス画像を表示させても良く、呼出子機2の記憶部23に記憶させることで、滞留信号を受けて呼出子機CPU24が読み出して子機ディスプレイ21に表示させることができる。
【0032】
このように、通話するための通話子機1と呼出先を選択するための呼出子機2とを別体としたことにより、呼出先の名称や親機4の数等が変更された場合に、子機3の変更は呼出子機2のみで済み、通話子機1を変更する必要がなく比較的低コストで実施できる。そして、親機4の数の変更に対しては子機ディスプレイ21の呼出ボタン表示等を変更することで対応でき、インターホン装置の設置環境の変化に柔軟に対応できる。
また、訪問者が呼出子機2の操作方法に戸惑っているような場合は、音声案内やガイダンス動作が行われるため、訪問先の呼び出しに役立つし、故障等で呼出子機2から呼出信号が出力されない場合は、特定のインターホン親機4が呼出動作するため、呼出信号が出力されないことで訪問者が居住者不在と判断してしまうようなことがない。
【0033】
図4は本発明に係るインターホン装置の第2の形態を示す構成図であり、以下第2の形態を図4を参照して説明する。ここでは呼出子機2が訪問者が携行する携帯型呼出子機6となっている点が上記形態とは大きく異なっている。
この携帯型呼出子機6としては、IPアドレス、MACアドレス、或いは携帯電話番号等の識別用IDを有している携帯電話やタブレット端末等が使用できる。また、HUB5は無線LAN通信を実施する通信アンテナ5aを有し、携帯電話網やインターネット等の外部ネットワークNに接続さている。そのため、携帯型呼出子機6が携帯電話である場合は、外部ネットワークNを介して本インターホン装置と通信が可能であるし、無線LANを使用して通信することも可能となっている。
【0034】
図5は図4の各機器を回路ブロックで示している。以下、この図5に基づいて相違点を中心に説明する。通話子機1は、子機カメラ11、マイク13、スピーカ12、記憶部15に加えて、携帯型呼出子機6から出力される無線LAN信号の強度を検知する携帯機器検知部17を備え、携帯型呼出子機6が通話子機1の近くにあることを検知する機能を備えている。また、記憶部15は携帯型呼出子機6のIPアドレスあるいはMACアドレス等の識別用IDを記憶している。
尚、携帯型呼出子機6の存在は、無線信号ではなく通話子機1のマイク13が集音可能な超音波信号やDTMF信号を携帯型呼出子機6に出力させ、それを通話子機1に検知させることで認識させても良い。
【0035】
携帯型呼出子機6は、複数の呼出ボタンにより呼出先の一覧を表示する子機ディスプレイ61、呼出ボタンを操作するために子機ディスプレイ61上に設けた操作部としてのタッチパネル62、インターホン子機として使用する際に通信する機器のIPアドレス等を記憶する記憶部63、携帯型呼出子機6全体を制御する携帯型子機CPU64、無線LAN通信を実施したり外部ネットワークNに無線接続するための無線通信部65等を備えている。尚、子機ディスプレイ61に表示される呼出ボタンの画像データは、接続機器のIPアドレス等の登録の際に合わせてインストールされる。
【0036】
このように構成されたインターホン装置の動作、特に呼出動作を次に説明する。図6は携帯型呼出子機6を携行する訪問者が呼出操作を行った際のインターホン装置の動作の流れを示すフローチャートであり、機器別に動作を分けて示している。このフローに基づいて以下説明する。
通話子機1が備えられた玄関において、携帯型呼出子機6が起動(S101)され、引き続き所定の表示操作を受けたら呼出先(呼出ボタン)が表示(S102)される。この表示により、携帯型子機CPU64が、無線LANにより予め登録されている訪問先の通話子機1のIPアドレスに対して携帯型呼出子機6のID情報を含む起動信号を送信する。
【0037】
この起動信号をHUB5を介して受信(S105)した通話子機1は、通話子機CPU16が携帯機器検知部17を能動として呼出信号の受信を待つ。
起動した携帯型呼出子機6は、所定の操作で複数の呼出ボタンから成る呼出先一覧が表示され、いずれかが押下されて呼出操作される(S103でYES)と、呼出先親機4のID情報を含む呼出信号がHUB5を介して通話子機1に送信される(S104)。呼出信号は、無線LAN通信で実施され、通話子機1のIPアドレスに対して送信される。
【0038】
この呼出信号を受信(S106でYES)した通話子機CPU16は、記憶部15に呼出信号の発信元である携帯型呼出子機6のIPアドレスあるいはMACアドレス等の識別用IDが起動信号発信元のIDと一致(S107でYES)していれば、携帯型呼出子機6が通話子機1の近傍にあるか判断する(S108)。携帯機器検知部17が呼出信号等の無線LAN信号を受信し、その強度が所定のレベル以上であると判断したら、呼出操作した携帯型呼出子機6が近傍にあると判断し(S108でYES)、上記第1の形態と同様に、附加されている親機ID情報から親機4のIPアドレス情報を記憶部15から読み取り、このIPアドレスを送信先に設定して呼出信号を送信する。こうして呼出信号は呼出先の親機4へ送信される。
【0039】
尚、携帯機器検知部17により携帯型呼出子機6の位置判定は、無線LAN信号の強度に代えて携帯型呼出子機6にDTMFや周波数が15〜20KHzの超音波信号等、有線信号以外の信号を出力させて、その受信強度により判定させても良い。
【0040】
また、呼出子機2からの信号であることを認識した通話子機CPU16は、スピーカ12から呼出確認音を鳴動させ、マイク13及び子機カメラ11を能動とし(S109)、集音した訪問者の音声及び子機カメラ11の映像信号を呼出先の親機4へ送信する(S110)。
【0041】
呼出信号を受信した親機4は、親機CPU47がスピーカ42から呼出音を鳴動させるともに、通話子機1から送信された子機カメラ11の映像信号を親機ディスプレイ43に表示させる。また、訪問者の音声が送信された場合はスピーカ42から報音させる(S111)。更に親機CPU47は、画像記憶部45からガイダンス画像を読み出して携帯型呼出子機6に送信する(S112)。画像信号を受信した携帯型子機CPU64は、子機ディスプレイ61に受信したガイダンス画像を表示する(S113)。
【0042】
こうして、子機ディスプレイ61には、例えばオフィスビルの子機3である場合は「ただいま、総務部を呼び出しています」の文字情報から成るガイダンス画像が表示される。また、例えば呼出先の親機4から他の親機4に転送される場合は、「しばらくお待ちください」等のガイダンス画像が表示される。この表示により、応答待ちの訪問者に対して呼出状況を通知することができる。
【0043】
その後、呼出音と表示されている来訪者映像により来訪者を確認した親機4近くの人物が、親機4の通話操作部44を応答操作すると、能動状態にあるスピーカ42に加えてマイク41が能動となり、親機CPU47が通話路形成信号を通話子機1に送信する。同時に親機カメラ46が撮像を開始し、その撮像映像が呼出子機2に送信される。
通話路形成信号を受信した通話子機CPU16は、スピーカ12を能動として親機4との通話路を形成し、通話を可能とする。また、映像信号を受信した携帯型呼出子機CPU64は、子機ディスプレイ61に親機カメラ46の撮像映像を表示する。
【0044】
尚、図4の実施形態では、無線信号を受信することで携帯型呼出子機6の存在を検知しているが、上記図1の形態と同様に人感センサ14を設けて訪問者の接近を感知しても良い。
【0045】
このように、呼出子機2を携帯型呼出子機6とするため、訪問者が携行している携帯電話やタブレット端末を呼出子機2として使用することが可能であり、この場合は玄関に設置するのは通話子機のみで済み、住戸側に設置する機器を安価に構成できる。また、親機4の数の変更に対してはタッチパネル62のボタン表示等を変更することで対応でき、インターホン装置の設置環境の変化に柔軟に対応できる。
また、登録されていない携帯型呼出子機6からの呼出信号は受け付けないため、携帯型呼出子機6が汎用の携帯型端末であっても、悪意を持った訪問者からの通話路の確立要求を拒否できる。
更に、無線LAN信号の強度が所定のレベル以下であれば、即ち携帯型呼出子機6が通話子機1の近くに無ければ、登録された機器から呼出信号が送信されても受け付けないので、近隣の住戸で登録された携帯型呼出子機6が操作されても、自身が呼び出されていると認識することがなく、誤動作を防止できる。
また、故障等で携帯型呼出子機6の呼び出し機能が動作しない場合は、特定の親機4が呼び出される。よって、呼出信号が出力されないことで訪問者が居住者不在と判断してしまうことがない。
【0046】
尚、上記実施形態は何れも映像の伝送を双方向で実施しているが、回線容量に余裕がない場合には音声通信のみを双方向とし、映像信号については通話子機1から親機4への片方向としても良い。
【符号の説明】
【0047】
1・・通話子機、2・・呼出子機、3・・インターホン子機、4・・インターホン親機、5・・HUB、6・・携帯型呼出子機、11・・子機カメラ、14・・人感センサ、15・・記憶部(アドレス記憶部)、16・・通話子機CPU(音声ガイダンス制御部、画像ガイダンス制御部、滞留通知制御部、自動呼出制御部、呼出監視部)、17・・携帯端末検知部、21・・子機ディスプレイ(ディスプレイ)、22・・タッチパネル(操作部)、23・・記憶部、24・・呼出子機CPU(表示制御部)、43・・親機ディスプレイ、44・・通話操作部、45・・画像記憶部、46・・親機カメラ、47・・親機CPU(映像制御部、ガイダンス制御部)、61・・子機ディスプレイ、62・・タッチパネル(操作部)、63 ・・記憶部、64・・携帯型子機CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の呼出先から訪問先を選択して呼び出すための操作部、及び通話のためのマイク/スピーカを備えたインターホン子機と、呼び出しに応答するためのマイク/スピーカを備えた複数のインターホン親機とを有し、IPプロトコル等の汎用データプロトコルにより相互に通信を実施するインターホン装置であって、
前記インターホン子機は、前記操作部をタッチパネルで構成した呼出子機と、マイク/スピーカを備えた通話子機とに分離して形成されると共に、前記呼出子機、前記通話子機、前記インターホン親機がHUBを介して通信線によりそれぞれ接続されて相互間で通信を実施し、
前記インターホン親機は、前記操作部の操作を受けて前記呼出子機から出力された呼出信号を基に前記通話子機と通話路を形成するための通話操作部を有することを特徴とするインターホン装置。
【請求項2】
前記通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、前記人感センサが検知動作してから所定時間が経過しても前記呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、前記通話子機のスピーカから呼出操作を促すための音声ガイダンスを報音させる音声ガイダンス制御部とを有することを特徴とする請求項1記載のインターホン装置。
【請求項3】
前記タッチパネルは画像を表示可能なディスプレイ上に設けられ、
前記通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、前記人感センサが検知動作してから所定時間が経過しても前記呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、前記呼出子機に滞留信号を送信する滞留通知制御部を有し、
前記呼出子機は前記滞留信号を受けて前記ディスプレイの表示を点滅等変化させる表示制御部を有することを特徴とする請求項1記載のインターホン装置。
【請求項4】
前記インターホン親機は、応答する人物を撮像するための親機カメラと、前記親機カメラの撮像映像を前記呼出子機に送信する映像制御部とを有し、
前記呼出子機の前記表示制御部は、前記ディスプレイに前記親機カメラの撮像映像を表示することを特徴とする請求項3記載のインターホン装置。
【請求項5】
前記インターホン親機は、訪問者に対して呼出状況を通知するための文字情報から成るガイダンス画像を記憶する画像記憶部と、前記呼出信号を受けて前記呼出子機にガイダンス画像を送信するガイダンス制御部とを有し、
前記呼出子機の前記表示制御部は、受信した前記ガイダンス画像を前記ディスプレイに表示することを特徴とする請求項3又は4記載のインターホン装置。
【請求項6】
前記通話子機は、訪問者の接近を検知する人感センサと、前記人感センサが感知動作してから一定時間が経過しても前記呼出子機から呼出信号の送信がなかったら、予め指定したインターホン親機へ呼出信号を送信する自動呼出制御部とを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインターホン装置。
【請求項7】
複数の呼出先から訪問先を選択して呼び出すための操作部、及び通話のためのマイク/スピーカを備えたインターホン子機と、呼び出しに応答するためのマイク/スピーカを備えた複数のインターホン親機とを有し、IPプロトコル等の汎用データプロトコルにより相互に通信を実施するインターホン装置であって、
前記インターホン子機は、前記操作部を備えた呼出子機とマイク/スピーカを備えた通話子機とに分離して形成されると共に、
前記通話子機と前記複数のインターホン親機とはHUBを介した通信線により接続される一方、前記呼出子機が訪問者が携行する携帯型呼出子機であって、前記HUBに前記携帯型呼出子機と無線LAN通信を実施する無線通信部を備えて前記通話子機及びインターホン親機の双方と通信を実施でき、
前記インターホン親機は、前記操作部の操作により前記呼出子機から出力される呼出信号を基に前記通話子機と通話路を形成するための通話操作部を有することを特徴とするインターホン装置。
【請求項8】
前記携帯型呼出子機の前記操作部は、画像を表示可能なディスプレイ上に設けたタッチパネルで構成され、前記ディスプレイに呼出先一覧を表示する表示制御部を有することを特徴とする請求項7記載のインターホン装置。
【請求項9】
前記操作部の操作により前記呼出子機から出力される呼出信号は、前記通話子機を経由して前記インターホン親機に送信される一方、前記通話子機は前記携帯型呼出子機のIPアドレスを登録したアドレス記憶部を有し、
登録された携帯型呼出子機の呼出信号のみ受け付ける呼出監視部を有することを特徴とする請求項8記載のインターホン装置。
【請求項10】
前記通話子機は、前記携帯型呼出子機から出力される無線LAN信号の強度を検知する携帯機器検知部を有し、
前記呼出監視部は、前記携帯機器検知部が所定のレベル以上の前記無線LAN信号を検知したら、前記登録された携帯型呼出子機の呼出信号を受け付けることを特徴とする請求項9記載のインターホン装置。
【請求項11】
前記通話子機は、前記携帯機器検知部が前記携帯型呼出子機の存在を認識してから一定時間が経過しても前記携帯型呼出子機から呼出信号がなかったら、予め指定されたインターホン親機を呼び出す自動呼出制御部を有することを特徴とする請求項10記載のインターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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