説明

インターロイキン−1コンジュゲート及びその使用

本発明は、分子生物学、ウイルス学、免疫学及び医学の分野に関する。本発明は、規則的に反復した抗原アレイを含む組成物であって、この抗原がIL-1タンパク質、IL-1変異タンパク質又はIL-1断片である、組成物を提供する。より具体的には、本発明は、ウイルス様分子と、これに結合した少なくとも1のIL-1タンパク質、IL-1変異タンパク質又は少なくとも1のIL-1断片を含有してなる組成物を提供する。また、本発明はこの組成物の産生方法を提供する。本発明の組成物は、炎症性疾患、及び慢性自己免疫性疾患、遺伝性疾患、及び循環器系疾患の治療のためのワクチンの産生に有用である。本発明の組成物によって免疫応答、特に抗体応答が効率よく誘導される。さらに、本発明の組成物は、本明細書中に示す自己特異的免疫応答を効率よく誘導するために特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、医学野、公衆衛生、免疫学、分子生物学及びウイルス学の分におけるものである。本発明は、ウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子と少なくとも一の抗原を含有してなる組成物であって、該抗原がVLP又はウイルス粒子に共有結合したインターロイキン-1(IL-1)タンパク質、IL-1断片ないしはペプチド又はIL-1変異タンパク質である、組成物を提供する。また、本発明は組成物を産生するための方法を提供する。本発明の組成物は、関節リウマチ、骨関節炎などを含む様々なヒトの疾患の治療のためのワクチンの産生に有用である。本発明の組成物によって有効な免疫応答、特に抗体応答が誘導される。
【0002】
(関連技術)
IL-1は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞及びT細胞を含む様々な種類の細胞によって産生される強力な炎症誘発性サイトカインである(Dinarello C.A., 1991. Blood 77(8): 1627-1652)。限定した配列の同一性しか有しないが、IL-1レセプタータイプI(IL-1RI)への結合により類似の生物学的な活性を及ぼす2種の分子、IL-1α及びIL-1βからなる(Dinarello C.A.等, 1997, Cytokine & Growth Factor Rev. 8: 253)。また、両IL-1分子は細胞内シグナル伝達ドメインを欠く第二IL-1レセプター(IL-1RII)にも結合し、デコイレセプターとして調節的な役割を果たすと考えられる(Dinarello C.A.等, 1997, Cytokine & Growth Factor Rev. 8: 253)。さらに、IL-1ファミリーの第三のメンバーであるIL-1レセプターアンタゴニスト(IL-1ra)は、アゴニスト活性を全く及ぼすことなく両レセプターに結合する。IL-1RII及びIL-1RI及びIL-1RIIのシェド(shed)型とIL-1raは、IL-1α及びIL-1βのを中和し、炎症応答を厳密に調節する。
IL-1媒介性炎症応答の調節不全は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、腎症、骨粗鬆症などを含む多くのヒトの疾患において観察される。これらの疾患それぞれにおいて、IL-1の過剰産生及び/又はIL-1raの過少産生は疾患の発症の素因となる(Arend W.P., 2002, Cytokine & Growth Factor Reviews 13:323-340)。IL-1raの組み換えバージョン(アナキンラ、Kineret(登録商標))は、炎症の低減及びいくつかの炎症性疾患の組織損傷の予防に効果的であるが、高い全身濃度と薬剤の短い半減期が必要であるため高用量(〜100mg)の頻回(毎日)投与を要する。この結果、費用が高く、患者のコンプライアンスの問題が生じうる(Kineret(登録商標)処方情報、Amgen; Granowitz E.V.等 1992, Cytokine 4:353)。さらに、大多数の患者はKineret(登録商標)に対する抗体を産生し、薬剤の生物学的活性を中和しうる(Fleischmann R.M.,等, 2003, Arthritis Rheum 46:2287)。
【0003】
ゆえに、新規の治療技術は、患者の免疫系によるIL-1-中和抗体の産生を誘導する活性な免疫方策に注目したものである。Svenson及び共同研究者等(2000, J. Immunol. Methods 236:1-8)は、ツベルクリン(PPD)の精製したタンパク質誘導体に化学的に架橋させた組み換えIL-1αによりマウスを免疫化し、IL-1αの生物学的活性を中和した抗体の誘導を観察した。この方策は、外来性の抗原への自己抗原の物理的な結合により、自己応答性B細胞へT細胞ヘルプが運搬されることによるものである。
米国特許第6093405号は、化学的又は物理的に不活性化されたサイトカイン自体を含有する免疫原性組成物による免疫化によって循環サイトカインのレベルを減少する方法を開示する。この方法では、天然のサイトカインが物理的又は化学的な処置によって免疫原性になるのに対して、本発明は、VLPの表面上に高度に反復した様式で天然のサイトカインを提示することによって天然のサイトカインを免疫原性にするための方法を開示する。さらに、国際公開第2003/084979号は、サイトカインの過剰産生に関係する疾患の治療のための5−40のアミノ酸長のサイトカイン由来ペプチドを含有する免疫原性化合物の使用を記述する。
【0004】
(発明の概要)
驚くべきことに近年、発明者等は、少なくとも1のIL-1分子を含有する本発明の組成物及びワクチンのそれぞれがIL-1に対する免疫応答、これによる特に抗体応答を誘導するだけでなく、さらにインビボでのIL-1の炎症誘発性の活性を中和することができることを明らかにした。さらに驚くべきことに、発明者等は、本発明に従ってVLPに共有結合させたIL-1分子が、関節リウマチのマウスモデルの関節炎の臨床徴候及び炎症から防御しうることを明らかにした。さらに、発明者等は、本発明の組成物が、ヒトの関節リウマチの治療が承認されている組み換えIL-1レセプターアンタゴニストであるKineret(登録商標)より良好に関節炎症状の発達からマウスを防御したことを明らかにした(実施例7)。さらに驚くべきことに、発明者等は、本発明の組成物を遺伝的に罹患しやすいマウスに注射した場合に、アテローム硬化性症状の発達を阻害することが可能であり(実施例4)、ゆえにアテローム性動脈硬化の有効な治療であることを明らかにした。さらに、発明者等は、IL-1αがアテローム性動脈硬化の発症に関与することを示した。
【0005】
したがって、第一の態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原とを含んでなり、このとき、該少なくとも1の抗原が好ましくはIL-1タンパク質、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド及びIL-1変異タンパク質からなる群から選択されるIL-1分子であり、(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位を介して結合して好ましくは規則正しく反復した抗原アレイを形成する、組成物を提供する。本発明の好適な実施態様では、本発明の使用に好適なウイルス様粒子は、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの組み換えタンパク質、好ましくは組み換えコートタンパク質、その変異タンパク質ないしはその断片を含んでなる。好適な実施態様では、本発明の組成物は、好ましくはIL-1の生物学的活性を含む少なくとも1のIL-1成熟断片を含んでなる。ゆえに、本発明は、ウイルス様粒子に非常に反復した様式の自己抗原を提示させて自己応答性B細胞を刺激するために使用する。
【0006】
他の態様では、本発明はワクチン組成物を提供する。
さらに、本発明は、ヒト又は動物、好ましくは哺乳類へワクチン組成物を投与する方法を提供する。本発明のワクチン組成物は、典型的及び好ましくは少なくとも1のアジュバントの非存在下で、強力な免疫応答、特に抗体応答を誘導することができる。ゆえに、ある好適な実施態様では、ワクチンはアジュバントを欠いている。アジュバントの使用を避けると、望ましくない炎症性T細胞応答が生じる可能性が減少しうる。
ある好適な実施態様では、VLPはRNAバクテリオファージのVLPである。 更なる好適な実施態様では、前記RNAバクテリオファージは、Qβ、fr、GA及びAP205からなる群から選択されるRNAバクテリオファージである。更なる好適な実施態様では、組成物及びワクチン組成物のそれぞれに含まれるRNAバクテリオファージの前記VLPは宿主内で組み換えて産生され、RNAバクテリオファージのVLPは宿主のRNA、好ましくは宿主の核酸を本質的に欠いている。望ましくないT細胞応答並びに熱などの他の望ましくない副作用を避けるために、宿主のRNAの量を減らす、好ましくは取り除くことは有用である。
【0007】
一態様では、本発明は、IL-1タンパク質が症状を媒介している又は症状に関与している(a) 血管系疾患;(b) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患;(c) 慢性自己免疫性炎症性疾患;(d) 骨及び軟骨変性疾患;(e) アレルギー性疾患;及び、(f) 神経学的疾患;からなる群から選択される疾患の治療方法であって、動物、好ましくはヒトに本発明の組成物又は本発明のワクチン組成物のそれぞれを投与することを含んでなる方法を提供する。IL-1タンパク質が症状を媒介している又は症状に関与している疾患は、例えば、アテローム性動脈硬化、家族性地中海熱、関節リウマチ、骨関節炎及びアレルギーである。
更なる態様では、本発明は、本発明の組成物と受容可能な製薬的担体とを含有してなる製薬的組成物を提供する。
また更なる態様では、本発明は、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを供給すること、(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原を供給すること、このとき該抗原がIL-1分子、IL-1タンパク質、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質であること、そして、(c) 組成物を生産するために該VLPと該少なくとも1の抗原を結合させること、このとき該少なくとも1の抗原と該VLPが該少なくとも1の第一付着部位と該少なくとも1の第二付着部位を介して結合するものであること、を含んでなる本発明の組成物の産生方法を提供する。
【0008】
(発明の詳細な説明)
特に定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されているのと、同じ意味を有する。
アジュバント:本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせると、より亢進した免疫応答を供給しうる、宿主内の貯蔵所となる物質ないしは免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。様々なアジュバントが用いられうる。例として、完全及び不完全なフロイントアジュバント、アルミニウム水酸化物及び修飾ムラミルジペプチドなどがある。更なるアジュバントは、ミネラルゲル、例えば酸化アルミニウム三水和物、界面活性物質、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール及び潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばBCG (ウシ型弱毒結核菌ワクチン)及びコリネバクテリウムパルバムである。このようなアジュバントも当分野で公知である。本発明の組成物とともに投与されうる更なるアジュバントには、モノホスホリル脂質免疫修飾物質、AdjuVax 100a、QS-21、QS-18、CRL1005、アルミニウム塩類(ミョウバン)、MF-59、OM-174、OM-197、OM-294及びVirosomalアジュバント技術が含まれるが、これらに限定するものではない。また、アジュバントは、これらの物質の混合物を含んでもよい。VLPは一般的にアジュバントとして記載されている。しかしながら、本明細書中の文脈で用いる「アジュバント」なる用語は、本発明の組成物に用いたVLPでないアジュバントであり、むしろ更なる遠位の成分に関する。
【0009】
抗原:本明細書で使用するように、「抗原」という用語は、MHC分子によって提示される場合、抗体又はT細胞レセプター(TCR)に結合されうる分子を指す。「抗原」という用語は、本明細書で使用するように、T細胞エピトープも含む。さらに抗原は、免疫系に認識されることができ、及び/又は、B及び/又はTリンパ球の活性化がもたらされる体液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を誘導することができる。しかしながら、このことは、少なくともいくつかの場合において、抗原がTh細胞エピトープを含むかあるいはこれと連結し、アジュバント中に存在することが必要でありうる。抗原は、1つ又は複数のエピトープ(B及びTエピトープ)を有しうる。上記の特異的な反応とは、抗原が、好ましくは典型的には非常に選択的な方式で、その対応する抗体又はTCRと反応し、他の抗原によって誘発される可能性がある多数の他の抗体又はTCRとは反応しないことを示すことを意図する。また、ここで用いた抗原はいくつかの別々の抗原の混合でもよい。
エピトープ:エピトープなる用語は、MHC分子の環境におけるT細胞レセプター又は抗体によって特異的に結合される抗原、好ましくはポリペプチドの連続的な又は非連続的な部位を意味する。抗体に関して、特異的な結合は、非特異的な結合が除外されるが必ずしも交差反応が除外されない。典型的に、エピトープは、抗原性部位に特有の空間的な立体構造内に5−10アミノ酸を含有する。
【0010】
特異的な結合(抗体/抗原):本出願において、抗体は、10−1以上、好ましくは10−1以上、より好ましくは10−1以上及び最も好ましくは10−1以上の結合親和性(Ka)で抗原に結合する場合、特異的に結合していると定義される。抗体の親和性は当業者によって容易に測定されうる(例えばスキャッチャード分析、ELISAまたはBiacore分析によって)。
特異的な結合(IL-1/IL-1レセプター):レセプターとレセプターリガンドとの相互作用は、一般に当分野で公知の生物物理学的な方法、例えばELISA又はBiacore分析によって特徴付けされうる。IL-1レセプターへのIL-1の結合親和性(Ka)が少なくとも10−1、好ましくは少なくとも10−1、より好ましくは少なくとも10−1、さらにより好ましくは少なくとも10−1、及び最も好ましくは少なくとも10−1であり、好ましくは該IL-1レセプターがマウス又はヒト、最も好ましくはヒトのIL-1レセプターである場合に、IL-1分子はIL-1レセプターを特異的に結合することができるとみなす。さらに好ましくは、前記IL-1レセプターは、配列番号:166から配列番号:169のいずれか一の配列を含むか、より好ましくはこれからなり、最も好ましくは前記IL-1レセプターは配列番号:166及び配列番号:167のいずれかの配列を含むか、好ましくはこれからなる。
【0011】
付随(結合)(associated):本明細書中で用いられる「付随された(associated)」又は「付随(association)」なる用語は、2つの分子がともに結合するすべての可能な方法、好ましくは化学的な相互作用を指す。化学的な相互作用には共有的相互作用及び非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用、又は水素結合であり、一方、共有的相互作用は、例として共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素−リン結合、炭素−イオウ結合、例えばチオエーテル、又はイミド結合ベースである。
【0012】
第一付着部位:ここで用いる「第一付着部位」なる用語は、VLPに天然に生じる又はVLPに人工的に付加される成分であり、第二付着部位が結合する部位を指す。第一付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、ペプチド、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであるのが好ましい。第一付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、アミノ酸、好ましくはリジンのアミノ基である。第一付着部位は、典型的にはVLPの表面上、好ましくはVLPの外表面上に位置する。多数の第一付着部位が、典型的には反復形状で、ウイルス様粒子の表面上、好ましくは外表面上に存在する。好適な実施態様では、第一付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介してVLPと付随(結合)する。更なる好適な実施態様では、第一付着部位はVLPに天然に生じる。あるいは、好適な実施態様では、第一付着部位はVLPに人工的に付加される。
【0013】
第二付着部位:ここで用いる「第二付着部位」なる用語は、IL-1分子に天然に生じる又はIL-1分子に人工的に付加される成分であり、第一付着部位が結合する部位を指す。IL-1分子の第二付着部位は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、アミノ酸、糖、ポリヌクレオチド、天然又は合成ポリマー、二次的代謝産物又は化合物(ビオチン、フルオレセイン、レチノール、ジゴキシゲニン、金属イオン、フェニルメチルスルホニルフルオリド)、又は化学反応基、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、グアニジル基、ヒスチジル基、又はこれらの組合せであるのが好ましい。第二付着部位である化学反応基の好適な実施態様は、好ましくはシステインなどのアミノ酸のスルフヒドリル基である。したがって、「少なくとも一の第二付着部位を有するIL-1分子」なる用語は、IL-1分子と少なくとも一の第二付着部位を含むコンストラクトを指す。しかしながら、特に、IL-1分子内に天然に生じない第二付着部位の場合、典型的かつ好ましくは、そのようなコンストラクトはさらに「リンカー」を含む。他の好適な実施態様では、第二付着部位は、少なくとも一の共有結合を介して、好ましくは少なくとも一のペプチド結合を介してIL-1分子と付随(結合)する。更なる実施態様では、第二付着部位はIL-1分子に天然に生じる。さらに他の好適な実施態様では、第二付着部位はリンカーを介してIL-1分子に人工的に付加され、このリンカーはシステインを含むか、あるいはシステインからなるものである。好ましくは、リンカーはペプチド結合によりIL-1分子に融合される。
【0014】
コートタンパク質:本出願において、「コートタンパク質」なる用語と交換可能に用いられる「キャプシドタンパク質」なる用語は、ウイルスキャプシド又はVLP内に内包されうるウイルスタンパク質、好ましくはウイルス、好ましくはRNAファージの天然のキャプシドのサブユニットを指す。
【0015】
IL-1分子:本明細書中で用いる「IL-1分子」又は単に「IL-1」なる用語は、配列番号:36から配列番号:116、配列番号:130から配列番号:140及び配列番号:163から配列番号:165からなる群から選択されるいずれか一の配列に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する任意のポリペプチドを指す。本明細書中で用いる「IL-1-分子」は好ましくは、配列番号:36から配列番号:116、配列番号:130から配列番号:140及び配列番号:163から配列番号:165からなる群から選択されるいずれか一の配列に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなる任意のIL-1タンパク質、IL-1断片、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質を指す。また典型的及び好ましくは、本明細書中で用いるIL-1分子なる用語は、任意の動物種のIL-1タンパク質のオルソログを指す。必須ではないが好ましくは、IL-1分子はIL-1レセプターに結合可能であり、さらに好ましくは生物学的な活性を含む。
【0016】
IL-1α分子:本明細書中で用いる「IL-1α分子」又は単に「IL-1α」なる用語は、配列番号:36から48、配列番号:63、配列番号:65、配列番号:67から配列番号:88及び配列番号:163からなる群から選択されるいずれか一の配列に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなるIL-1αタンパク質、IL-1α断片、IL-1α成熟断片、IL-1αペプチド又はIL-1α変異タンパク質を指す。IL-1αの特に好適な実施態様は、ヒトIL-1α119−271(配列番号:63)である。
IL-1β分子:本明細書中で用いる「IL-1β分子」又は単に「IL-1β」なる用語は、配列番号:49から62、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:89から配列番号:116、配列番号:130から配列番号:140、配列番号:164及び配列番号:165からなる群から選択されるいずれか一の配列に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなるIL-1βタンパク質、IL-1β断片、IL-1β成熟断片、IL-1βペプチド又はIL-1β変異タンパク質を指す。IL-1βの特に好適な実施態様は、ヒトIL-1β117−269(配列番号:64)である。
【0017】
IL-1タンパク質:本明細書中で用いる「IL-1タンパク質」なる用語は天然に生じるタンパク質を指し、該天然に生じるタンパク質は配列番号:36から配列番号:62のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有すか、又は該天然に生じるタンパク質がIL-1レセプターを結合することができ、好ましくは生物学的な活性を含むものである。本明細書中で用いる「IL-1タンパク質」なる用語は天然に生じるタンパク質を指し、該天然に生じるタンパク質は配列番号:36から配列番号:62のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ該天然に生じるタンパク質がIL-1レセプターを結合することができ、好ましくは生物学的な活性を含むものである。典型的及び好ましくは、本明細書中で用いる「IL-1タンパク質」なる用語は少なくとも1の天然に生じるタンパク質を指し、該タンパク質はIL-1レセプターを結合することができ、生物学的な活性を含むものであり、さらに該タンパク質は配列番号:36から配列番号:62のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなる。したがって、「IL-1αタンパク質」は、配列番号:36から配列番号:48のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなるIL-1タンパク質を指し、一方、「IL-1βタンパク質」は、配列番号:49から配列番号:62のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%及び最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、あるいはこれからなるIL-1タンパク質を指す。
【0018】
IL-1断片:本明細書中で用いる「IL-1断片」なる用語は、IL-1タンパク質の連続的な範囲を含むポリペプチドを指し、該ポリペプチドは少なくとも50、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは少なくとも150のアミノ酸の長さである。典型的及び好ましくは、前記IL-1断片は、多くても300、より好ましくは多くても250、最も好ましくは多くても200のアミノ酸の長さである。典型的及び好ましくは、IL-1断片は、IL-1レセプターを結合することが可能で、さらに好ましくは生物学的な活性を含む。したがって、「IL-1α断片」及び「IL-1β断片」なる用語は、定義されるIL-1断片を指し、該IL-1タンパク質はそれぞれIL-1αタンパク質又はIL-1βタンパク質である。
【0019】
IL-1成熟断片:本明細書中で用いる「IL-1成熟断片」なる用語はIL-1断片を指し、該IL-1断片はIL-1タンパク質の天然に生じる成熟生成物である。したがって、本明細書中で用いる「IL-1α成熟断片」及び「IL-1β成熟断片」なる用語は定義されるIL-1成熟断片を指し、該IL-1タンパク質はそれぞれIL-1αタンパク質又はIL-1βタンパク質である。IL-1α成熟断片の好適な実施態様は、配列番号:63、配列番号:65及び配列番号:163である。IL-1β成熟断片の好適な実施態様は、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:130、配列番号:164及び配列番号:165である。
好適なIL-1α成熟断片は、(a) ヒトIL-1α119−271(配列番号:63);(b) マウスIL-1α117−270(配列番号:65);(c) マウスIL−1α117-270s(配列番号:163);及び、(e) 配列番号:63、配列番号:65及び配列番号:163のいずれか一に、少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはこれからなる。
好適なIL-1β成熟断片は、(a) ヒトIL-1β117−269(配列番号:64);(b) ヒトIL-1β116−269(配列番号:165);(c) マウスIL-1β119−269(配列番号:66);(d) マウスIL-1β119−269s(配列番号:164);及び、(e) 配列番号:64、配列番号:66、配列番号:164及び配列番号:165のいずれか一に、少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはこれからなる。
【0020】
IL-1ペプチド:本明細書中で用いる「IL-1ペプチド」なる用語は、天然に生じるタンパク質の連続的な範囲を含むポリペプチドを指し、該タンパク質はIL-1レセプターを結合することができ、好ましくは生物学的な活性を含み、該ポリペプチドは4〜49、好ましくは6〜35、最も好ましくは10〜25のアミノ酸の長さである。IL-1ペプチドはIL-1レセプターを結合するかもしれないが典型的にはすることができず、典型的には生物学的な活性を持たない。したがって、本明細書中で用いる「IL-1αペプチド」及び「IL-1βペプチド」なる用語は、定義されるIL-1ペプチドを指し、該天然に生じるタンパク質はそれぞれIL-1αタンパク質又はIL-1βタンパク質である。好適なIL-1ペプチドは、配列番号:82から配列番号:116である。
【0021】
IL-1変異タンパク質:本明細書中で用いる「IL-1変異タンパク質」なる用語は、IL-1分子、好ましくはIL-1αないしはIL-1βタンパク質、IL-1αないしはIL-1β断片、IL-1αないしはIL-1β成熟断片、又はIL-1αないしはIL-1βペプチド由来の任意のポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、好ましくは該ポリペプチドは由来するIL-1分子と比較して、生物学的な活性が低減している。したがって、IL-1α変異タンパク質及びIL-1β変異タンパク質は定義されるIL-1変異タンパク質であり、該ポリペプチドはそれぞれIL-1α分子又はIL-1β分子由来のものである。
好適なIL-1変異タンパク質では、前記生物学的な活性は、由来するIL-1分子の生物学的な活性の80%未満、より好ましくは60%未満、さらにより好ましくは40%未満、さらにより好ましくは20%未満である。さらに好適なIL-1変異タンパク質はIL-1成熟断片に由来し、該IL-1変異タンパク質の生物学的な活性は、該IL-1変異タンパク質が由来するIL-1成熟断片の生物学的な活性の80%未満、より好ましくは60%未満、さらにより好ましくは40%未満、さらにより好ましくは20%未満である。非常に好適なIL-1変異タンパク質は生物学的な活性を示さない。さらに好ましくは必須ではないが、IL-1変異タンパク質はIL-1レセプターを特異的に結合することができる。(i) IL-1タンパク質、好ましくは配列番号:36から配列番号:62;又は、(ii) より好ましくはIL-1成熟断片、好ましくは配列番号:63から配列番号:66、配列番号:130、及び配列番号:163から配列番号:165のいずれかに由来するIL-1変異タンパク質が非常に好ましい。
【0022】
本明細書中で有用なIL-1変異タンパク質は、Kamogashira等 (1988) J. Biochem. 104:837-840;Gehrke等 (1990) The Journal of Biological Chemistry 265(11): 5922-5925;Conca等 (1991) The Journal of Biological Chemistry 266(25): 16265-16268;Ju等 (1991) PNAS 88:2658-2662;Auron等 (1992) Biochemistry 31:6632-6638;Guinet等 (1993) Eur. J. Biochem 211:583-590;Camacho (1993) Biochemistry 32:8749-8757;Baumann (1993) Journal of Recepror Research 13(1-4): 245-262;Simon (1993) The Journal of Biological Chemistry 268(13): 9771-9779;及び、Simoncsits (1994) Cytokine 6(2): 206-214に記載されており、これらの開示内容は出典明記によって本明細書中に援用される。
【0023】
好適なIL-1変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)がIL-1タンパク質、IL-1断片、IL-1成熟断片又はIL-1ペプチドのアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。好適な実施態様では、前記アミノ酸残基は1つの連続的な範囲にあるものである。さらに好適なIL-1変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)がIL-1タンパク質、IL-1断片、又はIL-1成熟断片、好ましくはIL-1成熟断片のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。
【0024】
さらに好適なIL-1変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が配列番号:36から配列番号:48及び配列番号:49から配列番号:62のいずれか一のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、より好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。さらに好適なIL-1変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が、(i) 配列番号:63、配列番号:65及び配列番号:163のいずれか一、最も好ましくは配列番号:63;又は(ii) 配列番号:64、配列番号:66、配列番号:130、配列番号:164、及び配列番号:165からなる群から選択されるいずれか一、最も好ましくは配列番号:64からなる群から選択されるアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、より好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。
【0025】
さらに好適なIL-1変異タンパク質はIL-1α変異タンパク質であり、該IL-1α変異タンパク質は、1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が配列番号:36から配列番号:48のいずれか一のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、より好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。さらに好適なIL-1α変異タンパク質は、1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が、(i) 配列番号:63、配列番号:65及び配列番号:163のいずれか一、最も好ましくは配列番号:63からなる群から選択されるアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。非常に好適なIL-1α変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が、配列番号:63のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。
【0026】
さらに好適なIL-1変異タンパク質はIL-1β変異タンパク質であり、該IL-1β変異タンパク質は、1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が配列番号:49から配列番号:62のいずれか一のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、より好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。さらに好適なIL-1β変異タンパク質は、1〜6、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:130、配列番号:164及び配列番号:165からなる群から選択されるアミノ酸配列、最も好ましくは配列番号:64のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。非常に好適なIL-1β変異タンパク質は、1〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜5、さらにより好ましくは1〜4、さらにより好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、及び最も好ましくはちょうど1つのアミノ酸残基(一又は複数)が、配列番号:64のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、このとき好ましくは該アミノ酸残基(一又は複数)は、(i) 該ポリペプチドから欠失している、(ii) 該ポリペプチドに挿入されている、(iii) 他のアミノ酸残基と置き換わっている、又は(iv) (i)から(iii)のいずれかの組み合わせである。さらにより好適なIL-1β変異タンパク質は、配列番号:131から配列番号:140からなる群のいずれか一から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなる。
【0027】
IL-1のアゴニスト効果/生物学的な活性:IL-1に関して本明細書中で用いる「生物学的な活性」又は「生物学的に活性な」なる用語は、好ましくは実施例2E及び実施例3Eに概説するように、動物に全身投与された後にIL-6の産生を誘導するIL-1分子の能力を指す。また、IL-1分子の生物学的な活性は、胸腺細胞の増殖誘導能(Epps等, Cytokine 9(3): 149-156 (1997)、D10.G4.1 Tヘルパー細胞の増殖誘導能(Orencole and Dinarello, Cytokine 1(1): 14-22 (1989)、又はMG64細胞又はHaCaT細胞(Boraschi等, J. Immunol. 155:4719-4725 (1995)又は線維芽細胞(Dinarello等, Current Protocols in Immunology 6.2.1-6-2-7 (2000))からのIL-6産生誘導能、EL-4胸腺腫細胞からのIL-2産生誘導能(Simon等, J. Immunol. Methods 84(1-2): 85-94 (1985))、又はヒトのメラノーマ細胞株A375の増殖抑制能(Nakai等, Biochem. Biophys. Res. Commun. 154:1189-1196 (1988))を指す。
【0028】
結合(linked):ここで用いられる場合、「結合した(連結)」又は「結合」なる用語は、可能であれば、好ましくは少なくとも第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位がともに連結する化学的な相互作用を意味する。化学的な相互作用には共有的相互作用や非共有的相互作用が含まれる。非共有的相互作用の典型的な例は、イオン性相互作用、疎水性相互作用又は水素結合であるのに対して、共有的相互作用は、共有結合、例えばエステル、エーテル、リン酸エステル、アミド、ペプチド、炭素-リン結合、炭素-イオウ結合、例えばチオエーテル又はイミド結合ベースのものである。ある好適な実施態様では、第一付着部位と第二付着部位は、少なくとも一の共有結合、好ましくは少なくとも一の非ペプチド結合、よりさらに好ましくは、非ペプチド結合のみを介して結合される。しかしながら、ここで用いられる「結合」なる用語は、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位の直接結合を指すだけでなく、選択的に好ましくは、中間分子、及びこれによって典型的かつ好ましくは、少なくとも一の、好ましくは一のヘテロ二官能性架橋剤を介して、少なくとも一の第一付着部位と少なくとも一の第二付着部位との間接的な結合も指す。他の好適な実施態様では、第一付着部位及び第二付着部位は、少なくとも1の共有結合により、好ましくは少なくとも1のペプチド結合により、さらにより好ましくはペプチド結合(一又は複数)のみにより結合する。非常に好適な実施態様では、第一付着部位及び第二付着部位は、ペプチド結合のみによって、好ましくは遺伝子融合によって、直接あるいは好ましくはペプチドリンカーによって結合する。更なる好適な実施態様では、第二付着部位は、ペプチド結合によってのみ、好ましくは遺伝的融合によって前記第一付着部位のC末端に結合する。
【0029】
リンカー:本明細書で使用する「リンカー」は、第二付着部位とIL-1分子を付随(結合)させるか、第二付着部位を既に含むか、基本的に第二付着部位からなるか第二付着部位からなる。好ましくは、本明細書中で用いる「リンカー」は第二付着部位を、典型的かつ好ましくは、限定するものではないが、一アミノ酸残基として、好ましくはシステイン残基として既に含む。また、本明細書中で用いる「リンカー」は、特に本発明のリンカーが少なくとも一のアミノ酸残基を含有する場合、「アミノ酸リンカー」と称する。したがって、「リンカー」と「アミノ酸リンカー」なる用語は、本明細書中において相互に交換可能に用いられる。しかしながら、この用語は、アミノ酸残基からなるアミノ酸リンカーが本発明の好ましい実施態様である場合でも、このようなアミノ酸リンカーがアミノ酸残基のみからなることを示すことを意味するものではない。リンカーのアミノ酸残基は、当分野で知られている天然に存在するアミノ酸又は非天然アミノ酸、すべてのL型又はすべてのD型、あるいはこれらの混合物から構成されることが好ましい。したがって、スルフヒドリル基又はシステイン残基を含有する分子は本発明のリンカーの好適な実施態様であり、このような分子も本発明内に含まれる。さらに、本発明に有用なリンカーは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、シクロアルケニル、アリール又はヘテロアリール分子を含有する分子である。さらに好ましくは、C1〜C6アルキル−、シクロアルキル(C5、C6)、アリール、又はヘテロアリール部分と付加的なアミノ酸を含んでなるリンカーも本発明のためのリンカーとして使用可能であり、本発明の範囲内である。IL-1分子とリンカーの間の付随(結合)は、少なくとも1つの共有結合によるものであることが好ましく、少なくとも1つのペプチド結合によるものであることがより好ましい。遺伝的融合による結合において、リンカーは無くてもよいか又は、好ましくはアミノ酸リンカー、より好ましくはアミノ酸残基のみからなるアミノ酸リンカーである。遺伝子融合のために非常に好適なリンカーは、順応性があるアミノ酸リンカーである。遺伝子融合による結合において、好適なリンカーは、1〜20、より好ましくは2〜15、さらにより好ましくは2〜10、さらにより好ましくは2〜5、最も好ましくは3のアミノ酸からなる。遺伝子融合に非常に好適なリンカーはGSG(配列番号:189)を含むか、好ましくはこれからなる。
【0030】
規則的で反復性の抗原アレイ:本明細書で用いる「規則的で反復性の抗原アレイ」なる用語は、一般的に、それぞれウイルス様粒子との関係で抗原中に、典型的に好ましくは非常に規則的に均一に空間的に配置していることに特徴がある、抗原の反復パターンを指す。本発明の一実施態様では、反復パターンは幾何学的パターンである。RNAバクテリオファージのVLPにカップリングした抗原などの本発明の特定の実施態様では、好ましくは1から30ナノメーターの間隔、好ましくは2から15ナノメーターの間隔、より好ましくは2から10ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは2から8ナノメーターの間隔、さらにより好ましくは1.6から7ナノメーターの間隔を有する、抗原の準結晶性の、厳密に反復的な順序配列を持つ、好適に規則的で反復性の抗原の典型的かつ好ましい例である。
【0031】
パッケージ化(packaged):本明細書で使用するように、「パッケージ化」という用語は、VLPとの関係でのポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質の状態を指す。本明細書中で用いる「パッケージ化」という用語は、共有、たとえば化学的カップリング、又は非共有、たとえばイオン性相互作用、疎水性相互作用、水素結合などでありうる結合を含む。また、この用語にはポリ陰イオン性高分子の封入ないしは部分的な封入が含まれる。したがって、ポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質を、実際に結合、特に共有結合しなくても、VLPによって封入することができる。好適な実施態様では、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子又は免疫賦活性物質はVLP内に、最も好ましくは非共有的様式にてパッケージ化される。前記免疫賦活性物質が核酸、好ましくはDNAである場合、パッケージ化なる用語は、前記核酸がヌクレアーゼ加水分解に接触することができない、好ましくはDNアーゼ加水分解(例えばDNアーゼI又はベンゾナーゼ(Benzonase))に接触することができないことを意味し、好ましくはこの接触可能性は国際公報第2003/024481A2号の実施例11〜17に記載されるようにアッセイされる。
【0032】
ポリペプチド:本願明細書中で用いられる「ポリペプチド」なる用語は、アミド結合(ペプチド結合ともいう)によって、線形に連結される単量体(アミノ酸)から成る分子を指す。これはアミノ酸の分子鎖を示し、特定の長さの産物を指すわけではない。ゆえに、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドの定義の中に含まれる。たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、ポリペプチドの翻訳後修飾も包含する。
組み換えVLP:本明細書中で用いる「組み換えVLP」なる用語は、少なくとも1工程の組み換えDNA技術を含む方法によって得られるVLPを指す。本明細書中で用いる「組み換えて産生されたVLP」なる用語は、少なくとも1工程の組み換えDNA技術を含む方法によって得られるVLPを指す。ゆえに、「組み換えVLP」及び「組み換えて産生されたVLP」なる用語は本明細書中で交換可能に用い、同一の意味を有しなければならない。
【0033】
ウイルス粒子:本明細書中で用いられる「ウイルス粒子」なる用語は、ウイルスの形態学的形状を意味する。いくつかのウイルス型には、タンパク質キャプシドに囲まれるゲノムを含む;他のものは付加的な構造(例えばエンベロープ、テイルなど)を有する。
ここで用いられるウイルス様粒子(VLP)は、非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性のウイルス粒子を指し、又はウイルス粒子、好ましくはウイルスのキャプシドに類似する非複製性又は非感染性、好ましくは非複製性かつ非感染性の構造を指す。本明細書中で用いる「非複製性」なる用語は、VLPに含まれるゲノムを複製することができないことを意味する。本明細書中で用いる「非感染性」なる用語は、宿主細胞に侵入できないことを意味する。好ましくは、本発明のウイルス様粒子は、ウイルスゲノムないしはウイルスゲノム機能の全て又は一部を欠いているため、非複製性及び/又は非感染性である。一実施態様では、ウイルス様粒子はウイルス粒子であり、このウイルスゲノムは物理的又は科学的に不活性化されている。典型的かつより好ましくは、ウイルス様粒子はウイルスゲノムの複製性及び感染性の相等物のすべて又は一部を欠いている。本発明のウイルス様粒子は、それらのゲノムと異なる核酸を含みうる。本発明のウイルス様粒子の典型的かつ好ましい実施態様では、対応するウイルス、バクテリオファージ、好ましくはRNAバクテリオファージのウイルスキャプシド等の、ウイルスキャプシドである。「ウイルスキャプシド」又は「キャプシド」なる用語は、ウイルスタンパク質のサブユニットから構成される巨大分子の集合体を指す。典型的には、60、120、180、240、300、360及び360以上のウイルスタンパク質サブユニットである。典型的かつ好ましくは、これらのサブユニットの相互作用により、固有の反復して組織化される、ウイルスキャプシド又はウイルスキャプシド様構造が形成される。前記構造は典型的には球状又は管状である。例えば、RNAバクテリオファージのキャプシド又はHBcAgは、正二十面体の対称の球状形である。本明細書中で用いる「キャプシド様構造」なる用語は、上記に定義された文脈においてキャプシドの形態に似ているが典型的な対称の集合体(アセンブリ)から逸脱しており、なおかつ十分な程度の規則性及び反復性を維持しているウイルスタンパク質サブユニットからなる高分子集合体を意味する。ウイルス粒子とウイルス様粒子のある共通の特徴は、そのサブユニットの非常に規則的な反復した配位である。
【0034】
RNAバクテリオファージのウイルス様粒子:本明細書中で用いる「RNAバクテリオファージのウイルス様粒子」なる用語は、RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしは断片を含んでなる、好ましくは基本的にこれからなる、あるいはこれからなるウイルス様粒子を指す。さらに、RNAバクテリオファージの構造に類似するRNAバクテリオファージのウイルス様粒子は非複製性及び/又は非感染性であり、RNAバクテリオファージの複製機構をコードする少なくとも一の遺伝子、好ましくは複数の遺伝子を欠損しており、及び典型的には、宿主にウイルスが接着するか侵入するためのタンパク質又はそれに関与するタンパク質をコードする一又は複数の遺伝子を欠損する。しかしながらまた、この定義には、前述の遺伝子又は遺伝子群が存在するが不活性であるため、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子が非複製性及び/又は非感染性となる、RNAバクテリオファージのウイルス様粒子が包含される。RNAバクテリオファージ由来の好適なVLPは、正二十面体の対称性を表し、180のサブユニット(単量体)からなる。RNAバクテリオファージのウイルス様粒子を非複製及び/又は非感染性にするための好適な方法は、UV照射、ホルムアルデヒド処理などの物理的、化学的な不活性化による、典型的及び好ましくは遺伝子操作によるものである。
【0035】
One、a、又はan:用語「one」、「a」、又は「an」を本開示中で使用するとき、それらは、特に示さない限りは、「少なくとも一」、又は「一又は複数」を意味する。
ポリペプチドのアミノ酸相同性は、ベストフィット(Bestfit)などの公知のコンピュータプログラムを用いて慣習的に測定することができる。ベストフィットないしは任意の他の配列アラインメントプログラムを用いて、好ましくはベストフィットを用いて、特定の配列が例えば参照するアミノ酸配列に対して95%の相同性があるかどうかを決定するために、参照アミノ酸配列の完全長に対する相同性の割合が算出され、参照配列中のアミノ酸残基の合計数の5%以下の相同性にギャップが挿入されるようにパラメータを設定する。ポリペプチド間の相同性の割合を測定する前述の方法は、本発明に開示するすべてのタンパク質、ポリペプチドないしはその断片に適するものである。
【0036】
この発明は、動物又はヒトにおいてIL-1に対する免疫応答を亢進するための組成物及び方法を提供する。本発明の組成物は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するコア粒子(このときのコア粒子はウイルス様粒子(VLP)又はウイルス粒子である);と(b) 少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原を含んでなり、該少なくとも一の抗原が、好ましくはIL-1タンパク質、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド及びIL-1変異タンパク質から選択されるIL-1分子であり、(a)と(b)が該少なくとも一の第一付着部位と該少なくとも一の第二付着部位を介して共有結合しているものである。好ましくは、前記IL-1分子はコア粒子に結合しており、規則的で反復性の抗原-VLPアレイを形成する。本発明の好適な実施態様では、本発明の少なくとも20、好ましくは少なくとも30、より好ましくは少なくとも60、さらにより好ましくは少なくとも120及びさらにより好ましくは少なくとも180のIL-1分子がコア粒子に結合する。
規則的で反復性の構造を有する当分野で公知の任意のウイルスは、本発明のVLP又はウイルス粒子として選択してもよい。VLPの調整のために使用されうる具体的なDNAないしRNAウイルスのコート又はキャプシドタンパク質は、国際公開第2004/009124号の25頁の10−21行目、26頁の11−28行目及び28頁の4行目から31頁の4行目に開示されている。これらの開示内容は出典明記により本明細書中に援用される。
【0037】
ウイルス又はウイルス様粒子は、ウイルス感染した細胞培養物から産生され精製されうる。ワクチンの目的のために結果として生じたウイルス又はウイルス様粒子は、好ましくは非複製性又は非感染性、より好ましくは非複製性かつ非感染性であるべきである。UV照射、ホルムアルデヒドやクロロホルムなどによる化学的処理は、当業者に公知の、ウイルスを不活性化させるための一般的な方法である。
好適な実施態様では、コア粒子はウイルス粒子であり、好ましくは該ウイルス粒子はバクテリオファージであり、さらに好ましくは該バクテリオファージはRNAバクテリオファージであり、よりさらに好ましくは該RNAバクテリオファージは、Qβ、fr、GA又はAP205から選択されるRNAバクテリオファージである。
【0038】
好適な実施態様では、コア粒子はVLPである。更なる好適な一実施態様では、VLPは組み換えVLPである。ほとんどすべての一般的に公知のウイルスは配列決定されており、容易に入手可能である。コートタンパク質をコードする遺伝子は当業者に容易に同定されうる。宿主内でコートタンパク質を組み換え発現させることによるVLPの調整は、当業者の共通の知識内である。
好適な一実施態様では、ウイルス様粒子は、a) RNAバクテリオファージ;b) バクテリオファージ;c) B型肝炎ウイルス、好ましくはそのキャプシドタンパク質(Ulrich, 等, Virus Res. 50: 141-182 (1998))又はその表面タンパク質(国際公開公報92/11291);d) はしかウイルス(Warnes, 等, Gene 160:173-178 (1995));e) シンドビスウイルス;f) ロタウイルス(米国特許第5,071,651号及び米国特許第5,374,426号);g) 口蹄疫ウイルス(Twomey, 等, Vaccine 13:1603 1610, (1995));h) ノーウォークウイルス(Jiang, X., 等, Science 250:1580 1583 (1990);Matsui, S.M., 等, J. Clin. Invest. 87:1456 1461 (1991));i) アルファウイルス属;j) レトロウイルス、好ましくはそのGAGタンパク質(国際公開公報96/30523);k) レトロトランスポゾンTy、好ましくはタンパク質p1;l) ヒトパピローマウイルス(国際公開公報98/15631);m) ポリオーマウイルス;n) タバコモザイク病ウイルス;及びo) Flockハウスウイルスからなる群から選択されるウイルスの組み換えタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、あるいはこれからなる。
【0039】
1より多くの異なる組み換えタンパク質を含むVLPを本出願では概してモザイクVLPとする。一実施態様では、VLPはモザイクVLPであり、該モザイクVLPは、1より多くの組み換えタンパク質、好ましくは2の組み換えタンパク質、最も好ましくは2の組み換えキャプシドタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はこれからなる。
【0040】
ここで使用される「組み換えタンパク質の断片」なる用語又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれの長さの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%であり、好ましくはVLPを形成する能力を保持するポリペプチドとして定義される。好ましくは、該断片は、少なくとも一の内部欠失、少なくとも一の切断、又はそれらの少なくとも一の組合せから得られる。さらに好ましくは、最大5、4、3又は2の内部欠失、最大2の切断又はそれらのただ1つの組合せにより得られる。
さらに、「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」なる用語は、上で定義した「組み換えタンパク質の断片」又は「コートタンパク質の断片」のそれぞれと、少なくとも80%、好ましくは90%、さらにより好ましくは95%のアミノ酸配列同一性を有し、好ましくはウイルス様粒子内に集合化することができるポリペプチドを指す。
【0041】
「変異体コートタンパク質」なる用語は、野生型組み換えタンパク質又はコートタンパク質それぞれに由来するアミノ酸配列を有するポリペプチドを指し、該アミノ酸配列は野生型配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であり、好ましくは集合してVLPを形成する能力を保持している。
好適な一実施態様では、本発明のウイルス様粒子はB型肝炎ウイルスである。B型肝炎ウイルス様粒子の調整は、特に国際公開第00/32227号、同第01/85208号及び同第01/056905号に開示されている。これら3つすべての文書は出典明記によって本明細書中に特別に組み込まれる。本発明の実施における使用に好適なHBcAgの他の変異体は国際公開公報01/056905の34−39頁に開示されている。
【0042】
本発明の更なる好適な一実施態様では、リジン残基はHBcAgポリペプチドに導入され、IL-1分子のHBcAgのVLPへの結合を媒介する。好適な実施態様では、本発明の組成物及びVLPは、配列番号1のアミノ酸1−144又は1−149、1−185を含むか、あるいはこれからなるHBcAgを用いて調整される。このアミノ酸は修飾されており、79番目と80番目のアミノ酸がGly-Gly-Lys-Gly-Gly(配列番号:170)のアミノ酸配列を有するペプチドに置き換わっている。この修飾により配列番号1から配列番号2に変化する。更なる好適な実施態様では、配列番号2の48番目と110番目のシステイン残基、又はその対応する断片、好ましくは1−144又は1−149がセリンに変異される。さらに、本発明は、上記の対応するアミノ酸変異を有するB型肝炎コアタンパク質変異を含有する組成物を包含する。さらに、本発明は、配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%又は99%の同一性であるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなるHBcAgポリペプチドを含有する組成物及びワクチンのそれぞれを包含する。
【0043】
本発明のある実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNAバクテリオファージの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。好ましくは、RNAバクテリオファージは、a)バクテリオファージQβ;b)バクテリオファージR17;c)バクテリオファージfr;d)バクテリオファージGA;e)バクテリオファージSP;f)バクテリオファージMS2;g)バクテリオファージM11;h)バクテリオファージMX1;i)バクテリオファージNL95;k)バクテリオファージf2;l)バクテリオファージPP7、及びm)バクテリオファージAP205からなる群から選択される。
本発明のある好適な実施態様では、組成物はRNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含み、該コートタンパク質は(a) Qβ CPと称する配列番号:3;(b) 配列番号:3及び配列番号:4(Qβ A1タンパク質)の混合物;(c) 配列番号:5(R17キャプシドタンパク質);(d) 配列番号:6(frキャプシドタンパク質);(e) 配列番号:7(GAキャプシドタンパク質);(f) 配列番号:8(SPキャプシドタンパク質);(g) 配列番号:8及び配列番号:9の混合物;(h) 配列番号:10(MS2キャプシドタンパク質);(i) 配列番号:11(M11キャプシドタンパク質);(j) 配列番号:12(MX1キャプシドタンパク質);(k) 配列番号:13(NL95キャプシドタンパク質);(l) 配列番号:14(f2キャプシドタンパク質);(m) 配列番号:15(PP7キャプシドタンパク質);及び(n) 配列番号:21(AP205キャプシドタンパク質)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0044】
本発明の好適な一実施態様では、VLPは、RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の一以上のアミノ酸配列、好ましくは2つのアミノ酸配列を含むか、あるいはそれらからなるモザイクVLPである。
非常に好適な一実施態様では、VLPはRNAファージの2つの異なるコートタンパク質を含むか、あるいはそれらからなるものであり、該2つのコートタンパク質はCP Qβ(配列番号:3)とCP Qβ A1(配列番号:4)、又はCP SP(配列番号:8)とCP SP A1(配列番号:9)のアミノ酸配列を有する。
本発明の好適な実施態様では、本発明のウイルス様粒子は、RNA-バクテリオファージQβ、fr、AP205又はGAの組み換えコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0045】
好適な一実施態様では、本発明のVLPはRNAバクテリオファージQβである。Qβのキャプシド又はウイルス様粒子は、直径25nmで、T=3の疑似対称体の、正二十面体ファージ様キャプシド構造を示す。キャプシドは、ジスルフィド架橋により共有結合性の五量体及び六量体で結合して(Golmohammadi, R等, Structure 4:543-5554(1996))、際だって安定したQβキャプシドとなる、コートタンパク質の180のコピーを含む。しかしながら、組換えQβコートタンパク質から作製されるキャプシド又はVLPは、キャプシド内の他のサブユニットへ、ジスルフィド結合を介して結合していないか、又は不完全に結合するサブユニットを含んでいてもよい。Qβのキャプシド又はVLPは、有機溶媒及び変性剤に対し、普通ではない耐性を示す。驚くべきことに、我々は、1Mの高さの濃度のグアニジウム、30%の高さの濃度のアセトニトリル及びDMSOがキャプシドの安定性に影響しないことを発見した。Qβのキャプシド又はVLPの高い安定性は、本発明の哺乳動物及びヒトの免疫化及びワクチン接種における使用に特に有用な性質である。
【0046】
さらに好適な本発明のRNAバクテリオファージ、特にQβ及びfrのウイルス様粒子は国際公開第02/056905号に開示されており、この開示内容は出典明記により本明細書中に組み込まれる。特に、国際公開第02/056905号の実施例18にQβのVLP粒子の調整について詳しく記載されている。
他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、RNAバクテリオファージAP205のVLPである。また、アミノ酸5のプロリンがスレオニンに置換しているAP205コートタンパク質を含む、AP205 VLPの集合体コンピテント変異体型を本発明の実施に使用してもよく、本発明の他の好適な実施態様となる。国際公開第2004/007538号の特に実施例1及び実施例2には、AP205コートタンパク質を含有するVLPの入手方法、とりわけその発現と精製について記載されている。国際公開第2004/007538号は出典明記によって本明細書中に組み込まれる。AP205 VLPは高い免疫原性があり、IL-1分子と結合して、典型的かつ好ましくは、反復様式で配位するIL-1分子をディスプレイするワクチンコンストラクトを生成することができる。
【0047】
好適な一実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は欠失によって少なくとも一のリジン残基が除去されて修飾されている。他の好適な実施態様では、本発明のVLPは、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージの変異体コートタンパク質を含むかあるいはこれからなるものであり、該変異体コートタンパク質は置換及び/又は挿入によって少なくとも一のリジン残基が付加されて修飾されている。特にワクチンの必要性に合わせて調整するために、少なくとも一のリジン残基の欠失、置換又は付加によって、カップリングの程度、すなわち、ウイルス、好ましくはRNAバクテリオファージのVLPのサブユニット当たりのIL-1分子の量を変えることができる。
好適な一実施態様では、本発明の組成物及びワクチンは、0.5〜4.0の抗原密度を有する。ここで使用される「抗原密度」なる用語は、サブユニット当たり、好ましくはVLPのコートタンパク質当たり、好ましくはRNAバクテリオファージのVLPのコートタンパク質当たりに結合するIL-1分子の平均数を意味するものである。よって、この値は、本発明の組成物又はワクチン中での、VLP、好ましくはRNAバクテリオファージのVLPのサブユニット全体の平均として算出される。
【0048】
Qβコートタンパク質のVLP又はキャプシドは、キャプシドの内部に向かって位置しRNAと相互作用する3つのリジン残基と、キャプシドの外部に露出したさらに4つのリジン残基を有する一定のトポロジーで、その表面上に一定の数のリジン残基を提示する。好ましくは、少なくとも1の第一付着部位は、VLPの外部上に位置する又は外部にあるリジン残基である。
露出したリジン残基がアルギニンに置換されているQβ変異体を本発明のために用いることができる。ゆえに、本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、変異体Qβコートタンパク質を含むか、本質的にこれからなるか、あるいはこれからなる。好ましくは、これらの変異体コートタンパク質は、a) Qβ-240(配列番号:16、配列番号:3のLys13-Arg)、b) Qβ-243(配列番号:17、配列番号:3のAsn10-Lys);c) Qβ-250(配列番号:18、配列番号:3のLys2-Arg)、d) Qβ-251(配列番号:19、配列番号:3のLys16-Arg);及び、e) Qβ-259(配列番号:20、配列番号:3のLys2-Arg、Lys16-Arg)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、あるいはこれからなる。上記のQβ変異体コートタンパク質、変異体Qβコートタンパク質VLP及びキャプシドの構築、発現及び精製はそれぞれ、国際公報第02/056905号に記述される。したがって、特に上記出願の実施例18を参照のこと。
【0049】
本発明の他の好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、Qβの変異体コートタンパク質、又はその変異体ないしはその断片、及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。更なる好適な実施態様では、ウイルス様粒子は、アミノ酸配列 配列番号:16、17、18、19又は20を有する変異体コートタンパク質及び対応するA1タンパク質を含むか、又はそれらから本質的になるか、又はそれらからなる。
さらにまた、RNAバクテリオファージコートタンパク質は、細菌宿主内で発現すると自己集合体化することが示されている(Kastelein, RA. 等, Gene 23:245-254 (1983)、Kozlovskaya, TM. 等, Dokl. Akad. Nauk SSSR 287:452-455 (1986)、Adhin, MR. 等, Virology 170:238-242 (1989)、Priano, C. 等, J. Mol. Biol. 249:283-297 (1995))。特に、GA (Ni, CZ., 等, Protein Sci. 5: 2485-2493 (1996)、Tars, K 等, J. Mol.Biol. 271:759-773(1997))及び、fr (Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993)、Liljas, L 等 J Mol. Biol. 244:279-290, (1994))の生物学的及び生化学的性質は開示されている。いくつかのRNAバクテリオファージの結晶構造が決定されている(Golmohammadi, R. 等, Structure 4:543-554 (1996))。そのような情報を用いて、表面に曝された残基を同定して、RNAバクテリオファージコートタンパク質を修飾して、一又は複数の反応性のアミノ酸残基を挿入又は置換によって挿入することができる。RNAバクテリオファージ由来のVLPの他の利点は、安価で大量の物質を産生することが可能となる細菌での発現回収率が高いことである。
【0050】
ある好適な実施態様では、本発明の組成物は、少なくとも1の抗原、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、さらにより好ましくは1〜2、最も好ましくはちょうど1の抗原を含み、該抗原はIL-1分子、好ましくはIL-1タンパク質、IL-1断片、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質であり、該IL-1分子は配列番号:36から配列番号:116、配列番号:130から配列番号:140及び配列番号:163から配列番号:165のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0051】
更なる好適な実施態様では、前記抗原は、(a) ヒト;(b) 霊長類;(c) 齧歯動物;(d) ウマ;(e) ヒツジ;(f) ネコ;(g) ウシ;(h) ブタ;(i) ウサギ;(j) イヌ;(k) マウス;及び、(l) ラットからなる群から選択される生物由来のIL-1分子である。最も好ましくは、前記IL-1分子はヒト由来であり、配列番号:36、配列番号:49、配列番号:63、配列番号:64、配列番号:67から110のいずれか一、及び配列番号:130から140のいずれか一及び配列番号:165からなる群から選択される配列のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子はラット又はマウス、好ましくはマウス由来であり、該IL-1分子は、配列番号:45、配列番号:46、配列番号:53、配列番号:54、配列番号:65、配列番号:66、配列番号:111から116のいずれか一、配列番号:163、及び配列番号:164のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0052】
更なる好適な実施態様では、IL-1分子は、IL-1α分子、好ましくはIL-1αタンパク質、IL-1α断片、IL-1α成熟断片、IL-1αペプチド又はIL-1α変異タンパク質であり、該IL-1α分子は、配列番号:36から48、配列番号:63、配列番号:65、配列番号:67から88、及び配列番号:165からなる群から選択される配列のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。IL-1α分子の具体的に好適な実施態様は、ヒトIL-1α分子、好ましくはヒトIL-1αタンパク質、ヒトIL-1α断片又はヒトIL-1α成熟断片であり、該IL-1α分子は、配列番号:36、配列番号:63、及び配列番号:163のいずれか一、最も好ましくは配列番号:63に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0053】
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子は、IL-1β分子、好ましくはIL-1βタンパク質、IL-1β断片、IL-1β成熟断片、IL-1βペプチド又はIL-1β変異タンパク質であり、該IL-1β分子は、配列番号:49から62、配列番号:64、配列番号:66、配列番号:89から116、配列番号:130から配列番号:140、配列番号:164、及び配列番号:165からなる群から選択される配列のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。IL-1β分子の具体的に好適な実施態様は、ヒトIL-1β分子、好ましくはヒトIL-1βタンパク質、ヒトIL-1β断片又はヒトIL-1β成熟断片であり、該IL-1β分子は、配列番号:49、配列番号:64、配列番号:130から配列番号:140及び配列番号:165のいずれか一、最も好ましくは配列番号:64に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0054】
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子は、IL-1タンパク質、IL-1断片又は、好ましくはIL-1成熟断片であり、該IL-1タンパク質、IL-1断片又はIL-1成熟断片は好ましくはIL-1レセプターに結合可能であり、またさらにより好ましくは、加えて生物学的な活性を含む。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子はIL-1タンパク質であり、該IL-1タンパク質は、配列番号:36から62のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1タンパク質はIL-1αタンパク質であり、該IL-1αタンパク質は、配列番号:36から48からなる群から選択される配列のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。最も好ましくは、前記IL-1αタンパク質はヒトIL-1αタンパク質であり、該ヒトIL-1αタンパク質は、配列番号:36に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0055】
更なる好適な実施態様では、前記IL-1タンパク質はIL-1βタンパク質であり、該IL-1βタンパク質は、配列番号:49から62からなる群から選択される配列のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。最も好ましくは、前記IL-1βタンパク質はヒトIL-1βタンパク質であり、該ヒトIL-1βタンパク質は、配列番号:49に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子はIL-1断片、好ましくはIL-1成熟断片であり、該IL-1断片又は該IL-1成熟断片は好ましくはマウス又はヒト、最も好ましくはヒト由来である。好ましくは前記IL-1断片又は前記IL-1成熟断片は、配列番号:63から配列番号:66、配列番号:130、及び配列番号:163から配列番号:165のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0056】
更なる好適な実施態様では、前記IL-1成熟断片はIL-1α成熟断片であり、該IL-1α成熟断片は好ましくは生物学的な活性を含み、さらに該IL-1α成熟断片は、配列番号:63又は配列番号:65、最も好ましくは配列番号:63に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1成熟断片はIL-1β成熟断片であり、該IL-1β成熟断片は好ましくは生物学的な活性を含み、さらに該IL-1β成熟断片は、配列番号:64、配列番号:66及び配列番号:130のいずれか一、最も好ましくは配列番号:64に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
【0057】
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子はIL-1ペプチドであり、該IL-1ペプチドはマウス、ラット又はヒト、最も好ましくはヒト由来である。好ましくは前記IL-1ペプチドは、配列番号:67から配列番号:116のいずれか一に少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを好ましくは含むか、さらにより好ましくはこれからなる。
更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子はIL-1変異タンパク質であり、好ましくは該IL-1変異タンパク質は生物学的な活性を低減しているか、より好ましくは生物学的な活性を持たず、さらに該IL-1変異タンパク質はIL-1レセプターを結合することができる。更なる好適な実施態様では、前記IL-1変異タンパク質は、1〜3、より好ましくは1〜2、最も好ましくはちょうど1のアミノ酸残基がIL-1成熟断片のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなる。更なる好適な実施態様では、前記IL-1変異タンパク質はIL-1β変異タンパク質、好ましくはヒトIL-1β変異タンパク質、最も好ましくは配列番号:131から配列番号:140から選択されるヒトIL-1β変異タンパク質である。
【0058】
本発明は、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給する、(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するIL-1分子、IL-1タンパク質、IL-1断片、好ましくはIL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質である、少なくとも一の抗原を供給する、そして(c) 該VLPと該少なくとも一の抗原を組み合わせて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して少なくとも一の抗原と該VLPが結合している、組成物を産生する、ことを含む本発明の組成物の産生方法を提供する。好適な実施態様では、少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原、すなわちIL-1分子、IL-1タンパク質、IL-1断片、好ましくはIL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質の供給は、発現による、好ましくは細菌系、好ましくは大腸菌内での発現によるものである。通常、Hisタグ、Mycタグ、Fcタグ又はHAタグなどの精製タグは精製工程を容易にするために加えられる。他の方法では、特に50以下のアミノ酸を有するIL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質は化学的に合成できる。
【0059】
本発明の好適な一実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPは、少なくとも一のペプチド結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有するIL-1分子に結合する。IL-1分子、好ましくはIL-1成熟断片をコードする遺伝子が、VLPのコートタンパク質をコードする遺伝子の内部に又は好ましくはNないしC末端の何れかにインフレームに結合する。また、融合は、一部が欠損しているコートタンパク質の変異体内へIL-1の配列を挿入することに影響を受けうる、これはさらに切断変異体と称される。切断変異体は、コートタンパク質の配列のN末端ないしC末端、又はその一部の内部が欠損していてもよい。例えば特定のVLP HBcAgについて、アミノ酸79−80外来のエピトープに置換される。好ましくは、融合タンパク質は発現の際にVLP内に集合体化する能力を保持しており、その集合体化は電子顕微鏡で調べることができる。
隣接するアミノ酸残基を付加して、コートタンパク質と外来性のエピトープの間の間隙を増やしてもよい。隣接配列に用いるためにはグリシン残基及びセリン残基が特に好ましい。このような隣接配列によってフレキシビリティが付加される。このフレキシビリティの付加により、VLPサブユニットの配列内へ外来性の配列を融合する際に生じうる不安定性作用が軽減され、外来性のエピトープの存在による集合体化の阻害が軽減される。
【0060】
他の実施態様では、少なくとも一のIL-1分子、好ましくはIL-1成熟断片は、多くの他のウイルスコートタンパク質、例えばQβのA1タンパク質の切断型のC末端に融合するか (Kozlovska, T. M., 等, Intervirology 39:9-15 (1996))又は、CP伸展の位置72と73の間に挿入されてもよい。その他の例として、IL-1がfr CPのアミノ酸2と3の間に挿入され、IL-1-fr CP融合タンパク質となってもよい(Pushko P. 等, Prot. Eng. 6: 883-891 (1993))。さらに、IL-1は、RNAバクテリオファージMS-2のコートタンパク質のN末端突出β-ヘアピンに融合してもよい(国際公開第92/13081号)。あるいは、IL-1は、パピローマウイルスのキャプシドタンパク質、好ましくはウシパピローマウイルス1型(BPV-1)の主要キャプシドタンパク質L1に融合しうる (Chackerian, B. 等, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 96:2373-2378 (1999)、国際公開第00/23955号)。また、IL-1へのBPV-1 L1のアミノ酸130−136の置換も、本発明の実施態様である。さらに、ウイルスのコートタンパク質へのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片にIL-1分子を融合させる実施態様は、国際公開第2004/009124号の62頁の第20行目から68頁の第17行目に開示されており、出典明記によって、本明細書中に援用される。
【0061】
米国特許第5698424号には、キャプシドを形成可能なバクテリオファージMS-2の修飾コートタンパク質が記載されており、ここでコートタンパク質はN-末端ヘアピン領域にシステイン残基を挿入し、非システインアミノ酸残基により、N-末端ヘアピン領域の外側に位置する各システイン残基を置換することにより修飾される。ついで、挿入されたシステイン残基は、所望される分子種に直接結合し、エピトープ又は抗原性タンパク質等として提示される。
【0062】
しかしながら、キャプシドに露出した遊離のシステイン残基が存在すると、ジスルフィド架橋の形成により、キャプシドのオリゴマー化に至りうることを我々は記す。さらに、ジスルフィド結合によるキャプシドと抗原性タンパク質との結合は、特にスルフヒドリル-部分含有分子に対して不安定であり、さらに、チオエーテル付着よりも血清中で安定性が低下する(Martin FJ. 及び Papahadjopoulos D.(1982) Irreversible Coupling of Immunoglobulin Fragments to Preformed Vesicles. J. Biol. Chem. 257:286-288)。
よって、さらに非常に好適な実施態様では、VLPと少なくとも一の抗原、すなわちIL-1分子との付随又は結合は、ジスルフィド結合を含まない。さらに好ましくは、少なくとも一の第二の付着は、スルフヒドリル基を含むか、又は該基である。さらにまた本発明の非常に好ましい実施態様では、VLPと少なくとも一のIL-1分子との付随又は結合は、硫黄-硫黄結合を含まない。さらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第二付着部位は、スルフヒドリル基を含むか、好ましくは該基である。さらに非常に好適な実施態様では、前記少なくとも一の第一付着部位はスルフヒドリル基でないか、又は該基を含まない。またさらに非常に好ましい実施態様では、前記少なくとも一の第一の付着部位は、システインのスルフヒドリル基ではないか、又は該基を含まない。
【0063】
更なる好適な実施態様では、前記少なくとも1の第一付着部位はアミノ基を含み、前記第二付着部位はスルフヒドリル基を含む。
更なる好適な実施態様では、前記第二付着部位のただ1つは、前記IL-1分子の前記コア粒子への単一及び均一な種類の結合を生じさせる少なくとも1の非ペプチド共有結合を介して、前記第一付着部位に付随し、このとき該第一付着部位に付随する該ただ1つの第二付着部位がスルフヒドリル基であり、該IL-1分子と該コア粒子が該付随を介して相互作用して、規則正しく反復した抗原アレイを形成する。
【0064】
他の好適な実施態様では、IL-1分子、好ましくはIL-1タンパク質、より好ましくはIL-1成熟断片、さらにより好ましくは配列番号:63から配列番号:66、最も好ましくは配列番号:63又は配列番号:64のアミノ酸配列を含むかこれからなるIL-1成熟断片は、RNAバクテリオファージAP205のコートタンパク質、その変異体又はその断片のN-末端又はC-末端のいずれか、好ましくはC-末端に融合する。抗原とのバクテリオファージAP205のコートタンパク質の融合タンパク質を含むVLPは、通常、出典明記によって本明細書に援用される国際公報第2006/032674A1号に開示される。ある更なる好適な実施態様では、融合タンパク質はさらにリンカーを含み、該リンカーはAP205及びIL-1分子のコートタンパク質、その断片ないしはその変異体に融合する。更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子は、前記リンカーを介してAP205の前記コートタンパク質、その断片ないしはその変異体のC末端に融合する。
IL-1分子、特に少なくとも100から300までのアミノ酸、典型的及び好ましくはおよそ140〜160のアミノ酸、最も好ましくはおよそ155のアミノ酸を含むIL-1タンパク質及びIL-1断片は、バクテリオファージのコートタンパク質、好ましくはAP205のコートタンパク質に融合しながら、コートタンパク質のVLPへの自己集合体化(self assemble)能を維持することができる。
【0065】
IL-1タンパク質、IL-1断片及びIL-1成熟断片の大きさが大きく、また立体的な理由から、IL-1分子に融合したAP205コートタンパク質並びにwtコートタンパク質サブユニットを含むモザイクVLPを産生する発現システムを構築した。このシステムにおいて、停止コドンを抑制するとAP205-IL-1コートタンパク質融合が生じる一方で、適切な終止によりwt AP205コートタンパク質が生じる。両タンパク質は細胞内で同時に生産されて、モザイクVLP内に集合化する。このようなシステムの利点は、巨大タンパク質がVLPの集合体化を干渉することなくディスプレイされるということである。モザイクVLPへのAP205-IL-1融合タンパク質の取込みのレベルは抑制のレベルに依存するので、AP205-IL-1は、サプレッサーtRNAを過剰発現するプラスミドを既に含有している大腸菌細胞において発現される。オパール抑制に関して、オパール停止コドンを認識してTrpを導入するサプレッサーtRNAをコードするプラスミドpISM3001(Smiley, B.K., Minion, F.C. (1993) Enhanced readthrough of opal (UGA) stop codons and production of Mycoplasma pneumoniae P1 epitopes in Escherichia coli. Gene 134, 33-40)が用いられる。アンバー終結の抑制はプラスミドpISM579を用いて増加してもよく、アンバー停止コドンを認識して、同様にTrpを導入するサプレッサーtRNAを過剰発現させる。プラスミドpISM579は、制限エンドヌクレアーゼEcoRIによりtrpT176遺伝子をpISM3001から切り出し、アンバーtRNAサプレッサー遺伝子を含むプラスミドpMY579(Michael Yarusから贈与)のEcoRI断片によって置換することによって生成された。このtRNAサプレッサー遺伝子は、trpT175の変異体であり(Raftery LA. Et al. (1984) J. Bacteriol. 158:849-859)、G33、A24及びT35の3つの位置がtrpTと異なる。大腸菌JM109などのアンバー抑制(supE又はglnV)による大腸菌株におけるAP205-インターロイキン-1α融合タンパク質の発現は、アンバー停止コドンに導入されたTrpによるAP205-IL-1融合タンパク質に加えて、アンバー停止コドンに導入されたTrpでなくGlnによるAP205-IL-1融合タンパク質を一部生成しうる。したがって、停止コドンで翻訳されるアミノ酸の同定は、過剰発現するサプレッサーtRNAと株の表現型の組合せに依存しうる。Miller JH等 ((1983) J. Mol. Biol. 164: 59-71)によって記載され、当分野で周知であるように、抑制の効率は状況に依存する。特に、停止コドンのコドン3'と停止コドンから初めの塩基3'が特に重要である。例えば、停止コドンの後のプリン塩基は、通常は十分に抑制される。
【0066】
ゆえに、好適な実施態様では、前記VLPはモザイクVLPであり、該モザイクVLPは少なくとも1、好ましくは1の第一ポリペプチドと、少なくとも1、好ましくは1の第二ポリペプチドを含むか、好ましくはこれからなり、該第一ポリペプチドは組み換えキャプシドタンパク質、その変異体ないしはその断片であり、該第二ポリペプチドは、好ましくは該第一ポリペプチドの組み換えキャプシドタンパク質、その変異体ないしはその断片とIL-1分子の遺伝的融合生成物である。更なる好適な実施態様では、前記第一ポリペプチドは、バクテリオファージAP205の組み換えキャプシドタンパク質又はその変異体ないしはその断片である。更なる好適な実施態様では、前記第一ポリペプチドは、配列番号:21、配列番号:22、配列番号:23から選択される。非常に好適な実施態様では、前記第一ポリペプチドは配列番号:21である。抗原を含むバクテリオファージAP205のモザイクVLPは、通常、国際公報第2006/032674A1号の、特に107段落に開示される。更なる好適な実施態様では、前記第二ポリペプチドは、好ましくは前記第一ポリペプチドの組み換えキャプシドタンパク質、その変異体ないしはその断片とIL-1分子の遺伝的融合生成物であり、前記IL-1分子は好ましくはアミノ酸リンカーにより該組み換えキャプシドタンパク質、その変異体ないしはその断片のC末端に融合する。更なる好適な実施態様では、前記IL-1分子は、100から300のアミノ酸、典型的及び好ましくはおよそ140〜160のアミノ酸、最も好ましくはおよそ155のアミノ酸を含むか、好ましくはこれからなる。非常に好適な実施態様では、前記モザイクVLP中の前記第一ポリペプチドと前記第二ポリペプチドのモル比は、10:1から5:1、好ましくは8:1から6:1、最も好ましくはおよそ7:1である。
【0067】
本発明の好適な一実施態様では、組成物は、少なくとも一の共有結合を介して少なくとも一の第二付着部位を有する少なくとも一の抗原、すなわちIL-1分子に結合した少なくとも一の第一付着部位を有するウイルス様粒子を含有するか、あるいは本質的にこれらからなるものであり、好ましくは該共有結合は非ペプチド結合である。本発明の好適な実施態様では、第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むか、好ましくはそのものである。本発明の他の好適な実施態様では、第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである。
本発明の非常に好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位は、アミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基であり、少なくとも一の第二付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基である。
【0068】
本発明のある好適な実施態様では、IL-1分子は、典型的にかつ好ましくはヘテロ二官能性架橋剤を使用して、化学的架橋によりVLPに結合している。好ましい実施態様では、ヘテロ二官能性架橋剤は、好ましくはアミノ基、より好ましくはVLPのリジン残基(一又は複数)のアミノ基を有する好ましい第一付着部位と反応可能な官能基と、好ましい第二付着部位、すなわちIL-1分子に元もとある、ないしは人工的に付加され、場合によっては還元による反応に利用される、好ましくはシステイン(一又は複数)残基のスルフヒドリル基と反応可能なさらなる官能基を含む。いくつかのヘテロ二官能性架橋剤が当該分野で知られている。これらには、好ましい架橋剤であるSMPH(Pierce)、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIA、及び例えばPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋剤が含まれ、アミノ基に対して反応可能な一官能基とスルフヒドリル基に対して反応可能な一官能基を有する。上述した全ての架橋剤により、アミノ基との反応後にアミド結合が、またスルフヒドリル基とチオエーテル結合が形成される。本発明の実施に適した他のクラスの架橋剤は、カップリング時にIL-1分子とVLPとの間にジスルフィド結合を導入することにより特徴付けられる。このクラスに属する好ましい架橋剤には、例えばSPDP及びスルホ-LC-SPDP(Pierce)が含まれる。
【0069】
好ましい実施態様では、本発明の組成物はリンカーをさらに含有している。IL-1分子における第二の付着部位の操作は、この発明の開示に従い、好ましくは第二の付着部位として適切な少なくとも一のアミノ酸を含むリンカーとの結合により達成される。よって、本発明の好ましい実施態様では、リンカーは少なくとも一の共有結合、好ましくは少なくとも一のペプチド結合により、IL-1分子に付随している。好ましくは、リンカーは、第二の付着部位を含む又はそれからなる。さらに好ましい実施態様では、リンカーは好ましくはシステイン残基のスルフヒドリル基を含む。他の好ましい実施態様では、リンカーはシステイン残基である。
リンカーの選択は、IL-1分子の性質、その生化学的特性、例えばpI、電荷分布、及びグリコシル化に依存するであろう。一般的に、フレキシブルなアミノ酸リンカーが好まれる。本発明のさらに好ましい実施態様では、リンカーはアミノ酸からなり、さらに好ましくは、リンカーは最大で25、好ましくは最大で20、より好ましくは最大で15のアミノ酸からなる。本発明のさらに好適な実施態様では、アミノ酸リンカーは1〜10のアミノ酸を含有する。リンカーの好適な実施態様は、(a) CGG(配列番号:171);(b) N末端γ1-リンカー、好ましくはCGDKTHTSPP(配列番号:172);(c) N末端γ3-リンカー、好ましくはCGGPKPSTPPGSSGGAP(配列番号:173);(d) Igヒンジ領域;(e) N末端グリシンリンカー、好ましくはGCGGGG(配列番号:174);(f) n=0〜12及びk=0〜5の(G)kC(G)n(配列番号:175);(g) 1つの更なるシステインを有するN末端グリシン-セリンリンカー、好ましくは(GGGGS)n、n=1〜3(配列番号:176);(h) n=0〜3、k=0〜5、m=0〜10、l=0〜2の(G)kC(G)m(S)l(GGGGS)n(配列番号:177);(i) GGC(配列番号:178);(k) GGC-NH2(配列番号:179);(l) C末端γ1-リンカー、好ましくはDKTHTSPPCG(配列番号:180);(m) C末端γ3-リンカー、好ましくはPKPSTPPGSSGGAPGGCG(配列番号:181);(n) C末端グリシンリンカー、好ましくはGGGGCG(配列番号:182);(o) n=0〜12及びk=0〜5の(G)nC(G)k(配列番号:183);(p) 1つの更なるシステインを有するC末端グリシン-セリンリンカー、好ましくは(SGGGG)n、n=1〜3(配列番号:184);(q) n=0〜3、k=0〜5、m=0〜10、l=0〜2及びo=0〜8の(G)m(S)l(GGGGS)n(G)oC(G)k(配列番号:185)からなる群から選択される。さらに好適な実施態様では、リンカーはIL-1分子のN-末端に融合している。本発明の他の好適な実施態様では、リンカーはIL-1分子のC-末端に融合している。
【0070】
本発明に係る好ましいリンカーは、第二付着部位としてシステイン残基をさらに含むグリシンリンカー(G)n、例えばN-末端グリシンリンカー(GCGGGG、配列番号:174)及びC-末端グリシンリンカー(GGGGCG、配列番号:182)である。さらに好ましい実施態様は、C-末端グリシン-リジンリンカー(GGKKGC、配列番号:186)及びN-末端グリシン-リジンリンカー(CGKKGG、配列番号:187)、ペプチドのC-末端のGGCG(配列番号:188)、GGC(配列番号:178)又はGGC-NH2(配列番号:179、「NH2」はアミド化を表す)リンカー、又はそのN-末端のCGG(配列番号:171)のリンカーである。一般的に、グリシン残基は、第二付着部位として使用されるシステインと大きなアミノ酸との間に挿入されて、カップリング反応中での、より大きなアミノ酸の潜在的な立体障害が回避される。
【0071】
上記の好適な方法によるヘテロ二官能性架橋剤を用いることによるVLPへのIL-1分子の結合により、正方向の様式でVLPにIL-1分子をカップリングさせることができる。VLPにIL-1分子を連結させるための他の方法には、カルボジイミドEDC、及びNHSを使用し、IL-1分子をVLPに架橋させる方法が含まれる。IL-1分子は、例えばSATA、SATP又はイミノチオランを用いた反応を介して、まずチオラート化されてもよい。次いで、必要であれば脱保護化した後にIL-1分子を以下のようにVLPにカップリングしてもよい。過剰なチオラート化剤を分離した後、IL-1分子を、システイン反応基を含有し、システイン残基に対して反応可能な少なくとも一又はいくつかの官能基を表出するヘテロ二官能性架橋剤にて予め活性化させた、VLPと反応させる。このときチオラート化IL-1分子は上記に記載のように反応することができる。場合によっては、少量の還元剤が反応混合物中に含まれる。さらなる方法では、ホモ二官能性架橋剤、例えばグルタルアルデヒド、DSG、BM[PEO]4、BS3、(Pierce)、又はVLPのアミノ基又はカルボキシル基に対して反応する官能基を有する他の既知のホモ二官能性架橋剤を使用して、IL-1分子をVLPに結合させる。
本発明の他の実施態様では、組成物は、化学的な相互作用を介してIL-1分子に結合したウイルス様粒子を含むか、ないしは本質的にそれからなるものであり、この相互作用の少なくとも一は共有結合ではない。
【0072】
IL-1分子へのVLPの結合は、VLPをビオチン化して、ストレプトアビジン-融合タンパク質としてIL-1分子を発現させることによって達成することができる。
一又はいくつかの抗原分子、すなわちIL-1分子は、立体的に可能であれば、好ましくはRNAバクテリオファージVLPのコートタンパク質の露出したリジン残基を介して、VLP、好ましくはRNAバクテリオファージコートタンパク質のサブユニットに付着しうる。したがって、RNAバクテリオファージのVLP、特にQβコートタンパク質VLPの特定の特徴は、サブユニットにつきいくつかの抗原をカップリングさせることができることである。これにより密度の高い抗原アレイが生成される。
本発明の非常に好適な実施態様では、IL-1分子は、IL-1分子のN-末端ないしはC-末端のいずれかに負荷されているシステイン残基、又はIL-1分子内の天然のシステイン残基により、RNAバクテリオファージのVLPのコートタンパク質のリジン残基に、特にQβのコートタンパク質に結合する。
【0073】
上述の通り、4つのリジン残基はQβコートタンパク質のVLPの表面に露出する。典型的及び好ましくは、これらの残基は架橋剤(クロスリンカー)分子との反応の際に誘導体化される。露出したリジン残基のすべてが抗原にカップリングしていない場合、架橋剤と反応したリジン残基は、誘導体化工程の後にもε-アミノ基に付着した架橋剤分子を有したままとなる。これによって1又はいくつかの正電荷が消失し、VLPの溶解性及び安定性に有害となりうる。本発明者等は、アルギニン残基は好適な架橋剤と反応しないので、開示したQβコートタンパク質変異体にあるように、いくつかのリジン残基をアルギニンに置換することによって、正電荷の過剰な消失を防ぐ。さらに、リジン残基のアルギニン残基への置換により、抗原への反応に有用な部位が少なくなればなるほど、より多くの定義した抗原アレイが生じうる。
したがって、以下のQβコートタンパク質変異体:Qβ-240(Lys13-Arg;配列番号:16)、Qβ-250(Lys2-Arg、Lys13-Arg;配列番号:18)、Qβ-259(Lys2-Arg、Lys16-Arg;配列番号:20)、及びQβ-251;(Lys16-Arg、配列番号:19)において露出したリジン残基はアルギニンに置換した。さらに好適な実施態様では、本発明者等は、さらに高い密度の抗原アレイを得るために好適な、1つの更なるリジン残基を有するQβ変異体コートタンパク質であるQβ-243(Asn10-Lys;配列番号:17)を開示する。
【0074】
本発明の好適な一実施態様では、RNAバクテリオファージのVLPは宿主内で組み換えて産生されるものであり、該VLPは宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に含まない。好適な一実施態様では、さらに組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも一のポリ陰イオン性高分子を含有する。更なる好適な実施態様では、ポリ陰イオン性高分子はポリグルタミン酸及び/又はポリアスパラギン酸である。
好適な一実施態様では、さらに組成物は、VLPに結合した、好ましくはVLP内にパッケージ化ないしは封入された少なくとも一の免疫賦活性物質を含有する。よりさらに好適な実施態様では、免疫賦活性物質は核酸、好ましくはDNA、最も好ましくは非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドである。
【0075】
本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く:本明細書中で用いられる「本質的に宿主RNA、好ましくは宿主の核酸を欠く」なる用語は、VLPに含有される宿主RNA、好ましくは宿主の核酸の量を意味し、その量は典型的に好ましくは、VLPmg当たり30μgより少ない、好ましくは20μgより少ない、より好ましくは10μgより少ない、さらにより好ましくは8μgより少ない、さらにより好ましくは6μgより少ない、さらにより好ましくは4μgより少ない、最も好ましくは2μgより少ない。上記の範囲内で用いられる宿主は、VLPが組み換えて産生される宿主を意味する。RNA、好ましくは核酸の量を測定する従来の方法は当業者に周知である。本発明によって、RNA、好ましくは核酸の量を測定する典型的で好適な方法は、国際公報第2006/037787号A2の実施例17に記載される。典型的に好ましくは、Qβ以外のVLPを含んでなる本発明の組成物についてRNA、好ましくは核酸の量を測定するためには、同一、同種又は類似の条件を用いる。最終的に必要とされる条件の変更は当業者の知識の範囲内である。測定された量の数値は、典型的及び好ましくは、示す数値の±10%の偏差、好ましくは±5%の偏差を有する比較値として理解すべきである。
【0076】
ポリ陰イオン性高分子:本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、陰性電荷の反復性基を含んでなる相対的に高い質量の分子を指すものであり、その構造は、実際のところ又は概念的には、相対的に低い質量の分子から得られるユニットの複数の繰り返しを基本的に含んでなる。ポリ陰イオン性高分子は、少なくとも2000ダルトン、好ましくは少なくとも3000ダルトン、そしてさらにより好ましくは少なくとも5000ダルトンの分子量を有するものである。本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくは、toll様レセプターを活性化することができない分子を指す。ゆえに、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、典型的かつ好ましくはToll様レセプターリガンドを除く、さらにより好ましくはさらに、免疫賦活性物質、例えばToll様レセプターリガンド、免疫賦活性核酸およびリポポリサッカリド(LPS)を除くものである。より好ましくは、本明細書中で用いる「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は、サイトカイン産生を誘導することができない分子を指す。さらにより好ましくは、「ポリ陰イオン性高分子」なる用語は免疫賦活性物質を除くものである。本明細書中で用いる「免疫賦活性物質」なる用語は、本発明中に含有される抗原に対して特異的な免疫応答を誘導及び/又は亢進することができる分子を指す。
【0077】
宿主RNA、好ましくは宿主の核酸:本明細書中で用いる「宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語、又は「二次構造を有する宿主RNA、好ましくは宿主の核酸」なる用語は、宿主が本来合成するRNA又は好ましくは核酸を指す。しかしながら、RNA、好ましくは核酸は、典型的かつ好ましくは、本発明の方法による、RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去する工程の間に、化学的及び/又は物理的な変化が起こりうる。例えばRNA、好ましくは核酸の大きさが短くなったり、その二次構造が変化しうる。しかしながら、この結果として生じるRNA又は核酸でも、宿主RNA又は宿主核酸とみなす。
RNAの量を決定するための方法及びVLPによって包含されるRNAの量を減少する方法は、同出願人により2005年10月5日に出願した米国仮出願に開示されており、その出願全体は出典明記によって本明細書中に援用される。RNA、好ましくは核酸の量を少なくするかないしは除去することにより、IL-1に特異的な抗体応答が強いままで、炎症性T細胞応答及び障害性T細胞応答などの望ましくないT細胞応答や、発熱などの他の望ましくない副作用を最小限にするか、又は低減する。
【0078】
ある好適な実施態様では、本発明は、本発明の組成物と本発明のRNAバクテリオファージのVLPの調製方法であって、該VLPが宿主によって組み換えて産生され、該VLPが本質的に宿主のRNA、好ましくは宿主の核酸を欠いているものであり、(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP)を宿主によって組み換えて産生させる工程、このときの該VLPはRNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片を含むものである;(b) 該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片へのウイルス様粒子を分解させる工程;(c) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製する工程;(d) 精製した該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片をウイルス様粒子に再構築させる工程、このときの該ウイルス様粒子は宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである;そして(e) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の本発明の抗原を工程(d)より得た該VLPに結合させる工程、を含む方法を提供する。更なる好適な実施態様では、前記精製されたコートタンパク質、その変異体ないしはその断片の再構築は、少なくとも1のポリ陰イオン性高分子の存在下において生じる。
【0079】
一態様では、本発明は、本発明の組成物を含有するワクチンを提供する。好適な一実施態様では、ワクチン組成物内のVLPに結合したIL-1分子は、動物、好ましくは哺乳動物ないしはヒト起源のものでよい。好適な実施態様では、IL-1はヒト、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ又はウマ起源である。
好適な一実施態様では、ワクチン組成物はさらに少なくとも一のアジュバントを含有する。少なくとも一のアジュバントの投与は、本発明の組成物の投与の前、あるいはそれと同時、あるいはその後であってもよい。本明細書中で用いられる「アジュバント」なる用語は、本発明のワクチン及び薬剤組成物のそれぞれと組み合わせると、より亢進した免疫応答を供給しうる、宿主内の貯蔵所となる物質ないしは免疫応答の非特異的刺激因子を意味する。
【0080】
他の好ましい実施態様では、本発明のワクチン組成物はアジュバントを欠く。
本発明の有利な特性は、アジュバントを含まない場合でさえ、組成物の免疫原性が高いことである。さらにアジュバントを含んでいないので、自己抗原に対するワクチン接種上の安全上の問題を呈する所望されない炎症性T細胞反応の発生が最小となる。よって、本発明のワクチンの患者への投与は、好ましくはワクチンの投与前、投与と同時、又は投与後に同じ患者に少なくとも一のアジュバントを投与することなく、なされるであろう。
さらに、本発明は、本発明のワクチンが動物又はヒトに投与されることを含む免疫化方法を開示する。動物は、好ましくはネコ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ラット、マウスなどの哺乳動物、特にヒトである。ワクチンは、当分野で公知の様々な方法によって動物又はヒトに投与されてもよいが、通常、注射、注入、吸入、経口投与又は他の適切な理学的方法によって投与されうる。コンジュゲートは、選択的に、筋肉内、静脈内、粘膜経由、経皮、鼻腔内、腹膜内又は皮下投与されてもよい。投与のためのコンジュゲート成分は、滅菌水(例えば、生理食塩液)又は非水溶液及び懸濁液などである。非水溶性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどがある。担体又は密封包帯を、皮膚透過性を増やして、抗原吸収を上げるために用いてもよい。
【0081】
投与される個体に投与が合っていれば、本発明のワクチンは「製薬的に受容可能」であるといえる。さらに、本発明のワクチンは、「治療的に有効な量」(すなわち、所望の生理学的効果を示す量)で投与されうる。免疫応答の性質又は種類は本発明で開示される因子に限定するものではない。以下のメカニズムの説明によって本発明が限定されるものではなく、本発明のワクチンは、IL-1に結合する抗体であり、その濃度を抑え、及び/又は生理学的又は病理学的な働きを阻害する抗体を誘導しうる。
他の態様では、本発明は、本発明で述べられる組成物と受容可能な製薬的担体を含有する薬剤組成物を提供する。本発明のワクチンが個体に投与される場合、コンジュゲートの有効性を改善するために望ましい他の物質、アジュバント、バッファー又は塩類を含有する形態でありうる。薬剤組成物の調整における使用に好適な材料の例は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Osol, A, ed., Mack Publishing Co., (1990))を含む多くの情報源に示される。
【0082】
本発明は、本発明の組成物の産生方法であって、(a) 少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを供給し;(b) 少なくとも一の第二付着部位を有するIL-1分子を供給し;そして(c) 該VLPと該IL-1分子を組み合わせて、該第一付着部位と該第二付着部位を介して該IL-1分子と該VLPが結合している、組成物を産生する工程を含む産生方法を教示する。
更なる好適な実施態様では、少なくとも一の第一付着部位を有するVLPを提供する工程は、(a) 該ウイルス様粒子を該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片に分解して;(b) 該コートタンパク質、その変異体ないしはその断片を精製して;(c) 該精製された該RNAバクテリオファージのコートタンパク質、その変異体ないしはその断片をウイルス様粒子に再集合体化させる工程をさらに含むものであり、このときの該ウイルス様粒子は宿主RNA、好ましくは宿主核酸を本質的に欠いているものである。より更なる好適な実施態様では、前記の精製したコートタンパク質の再集合体化は、少なくとも一のポリ陰イオン性高分子の存在下にてなされる。
【0083】
本発明は、IL-1が動物又はヒトの重要な病理学的機能を及ぼす疾患又は症状を治療及び/又は軽減するための本発明の組成物の使用を提供する。
さらに、本発明は、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が好ましくは、(a) 血管系疾患、好ましくは冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化及び血管炎、最も好ましくはアテローム性動脈硬化;(b) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)及びマックル・ウェルズ症候群、最も好ましくは家族性地中海熱(FMF);(c) 慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチ、全身発症性若年性特発性関節炎、成人発症性スティル病、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎、最も好ましくは関節リウマチ;(d) 骨及び軟骨変性疾患、好ましくは痛風、骨粗鬆症及び骨関節炎、最も好ましくは骨関節炎;(e) アレルギー性疾患、好ましくは接触過敏症、1型過敏症及びアレルギー、最も好ましくはアレルギー;及び、(f) 神経学的疾患、好ましくはアルツハイマー病、癲癇、パーキンソン病及び多発性硬化症、最も好ましくは多発性硬化症からなる群から選択される、使用を提供する。
【0084】
さらに、本発明は、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が血管系疾患、好ましくは冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化及び血管炎、最も好ましくはアテローム性動脈硬化であり、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、本発明のIL-1α分子、好ましくはIL-1α成熟断片、最も好ましくは配列番号:63又はこれらの変異タンパク質である、使用を提供する。
【0085】
さらに、本発明は、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が、(a) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)及びマックル・ウェルズ症候群、最も好ましくは家族性地中海熱(FMF);(b) 慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチ、全身発症性若年性特発性関節炎、成人発症性スティル病、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎、最も好ましくは関節リウマチ;(c) 骨及び軟骨変性疾患、好ましくは痛風、骨粗鬆症及び骨関節炎、最も好ましくは骨関節炎;(d) アレルギー性疾患、好ましくは接触過敏症、1型過敏症及びアレルギー、最も好ましくはアレルギー;及び、(e) 神経学的疾患、好ましくはアルツハイマー病、癲癇、パーキンソン病及び多発性硬化症、最も好ましくは多発性硬化症からなる群から選択され、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、IL-1β分子、好ましくはIL-1β成熟断片、最も好ましくは配列番号:64又はこれらの変異タンパク質である、使用を提供する。
【0086】
さらに、本発明は、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)であって、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、IL-1β分子、好ましくはIL-1β成熟断片、最も好ましくは配列番号:64又はこれらの変異タンパク質である、使用を提供する。
【0087】
さらに、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が血管系疾患、好ましくはアテローム性動脈硬化である使用を提供する。
さらに、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)である使用を提供する。
さらに、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチである使用を提供する。
さらに、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が骨及び軟骨変性疾患、好ましくは骨関節炎である使用を提供する。
さらに、本発明は、動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物の使用であって、該疾患が神経学的疾患、好ましくは多発性硬化症である使用を提供する。
【0088】
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトに本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が好ましくは、(a) 血管系疾患、好ましくは冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化及び血管炎、最も好ましくはアテローム性動脈硬化;(b) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)及びマックル・ウェルズ症候群、最も好ましくは家族性地中海熱(FMF);(c) 慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチ、全身発症性若年性特発性関節炎、成人発症性スティル病、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎、最も好ましくは関節リウマチ(d) 骨及び軟骨変性疾患、好ましくは痛風、骨粗鬆症及び骨関節炎、最も好ましくは骨関節炎;(e) アレルギー性疾患、好ましくは接触過敏症、1型過敏症及びアレルギー、最も好ましくはアレルギー;及び、(f) 神経学的疾患、好ましくはアルツハイマー病、癲癇、パーキンソン病及び多発性硬化症、最も好ましくは多発性硬化症からなる群から選択される、方法を提供する。
【0089】
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトに本発明の組成物又は本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が血管系疾患、好ましくは冠状動脈疾患、アテローム性動脈硬化及び血管炎、最も好ましくはアテローム性動脈硬化であり、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、本発明のIL-1α分子、好ましくはIL-1α成熟断片、最も好ましくは配列番号:63又はこれらの変異タンパク質である、方法を提供する。
【0090】
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が好ましくは、(a) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)、家族性感冒自己炎症性症候群(FCAS)、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID)及びマックル・ウェルズ症候群、最も好ましくは家族性地中海熱(FMF);(b) 慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチ、全身発症性若年性特発性関節炎、成人発症性スティル病、乾癬、クローン病及び潰瘍性大腸炎、最も好ましくは関節リウマチ;(c) 骨及び軟骨変性疾患、好ましくは痛風、骨粗鬆症及び骨関節炎、最も好ましくは骨関節炎;(d) アレルギー性疾患、好ましくは接触過敏症、1型過敏症及びアレルギー、最も好ましくはアレルギー;及び、(e) 神経学的疾患、好ましくはアルツハイマー病、癲癇、パーキンソン病及び多発性硬化症、最も好ましくは多発性硬化症からなる群から選択され、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、IL-1β分子、好ましくはIL-1β成熟断片、最も好ましくは配列番号:64又はこれらの変異タンパク質である、方法を提供する。
【0091】
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはイヌ、ネコ、ウマ又はヒト、最も好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)であって、該組成物、該ワクチン又は該製薬的組成物に含まれる前記少なくとも1の抗原は、IL-1β分子、好ましくはIL-1β成熟断片、最も好ましくは配列番号:64又はこれらの変異タンパク質である、方法を提供する。
【0092】
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が血管系疾患、好ましくはアテローム性動脈硬化である方法を提供する。
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が遺伝性IL-1依存性炎症性疾患、好ましくは家族性地中海熱(FMF)である方法を提供する。
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が慢性自己免疫性炎症性疾患、好ましくは関節リウマチである方法を提供する。
さらに、本発明は、疾患の治療方法であって、動物、好ましくはヒトに本発明の組成物、本発明のワクチン又は本発明の製薬的組成物を投与することを含み、該疾患が骨及び軟骨変性疾患、好ましくは骨関節炎である方法を提供する。
【0093】
本明細書において引用される文献は出典明記によって全体が援用される。
【実施例】
【0094】
実施例1
マウスIL1α117−270及びIL-1β119−269のクローニング、発現及び精製
オリゴヌクレオチドIL1α1(5'-ATATATGCTAGCCCCTTACACCTACCAGAGTGATTTG-3';配列番号:24)及びIL1α2(5'-ATATATCTCGAGTGATATCTGGAAGTCTGTCATA GAG-3';配列番号:25)を用いて、TNFα活性化マウスのマクロファージのcDNAライブラリーから、PCRによってマウスIL-1αのアミノ酸117−270をコードするヌクレオチド配列を増幅した。同じcDNAライブラリーを用いて、オリゴヌクレオチドIL-1β1(5'-ATATATGCTAGCCCCCATTAGACAGCTGCACTACAGG-3';配列番号:26)及びIL-1β2(5'-ATATATCTCGAGGGAAGACACAGATTCCATGGTGAAG-3';配列番号:27)によりマウスIL-1β前駆体のアミノ酸119−269をコードするヌクレオチド配列を増幅した。両DNA断片を、NheI及びXhoIにて消化し、発現ベクターpModEC1(配列番号:29)にクローニングした。
ベクターpModEC1(配列番号:29)は、pET22b(+) (Novagen Inc.)の誘導体であって、2つの工程で構築した。第一の工程では、NheIとXhoI部位の間の元の配列をアニールしたオリゴプライマーMCS-1F(5'-TATGGATCCGGCTAGCGCTCGAGGGTTTA AACGGCGGCCGCAT-3';配列番号:30)及びプライマーMCS-1R(5'-TCGAATGCGGCCG CCGTTTAAACCCTCGAGCGCTAGCCGGATCCA-3';配列番号:31)(15mM トリスHCl pH8バッファ中でアニール)に置き換えることによって、pET22b(+)のマルチプルクローニングサイトを変えた。結果として生じるプラスミドをpMod00と称し、そのマルチクローニングサイトにNdeI、BamHI、NheI、XhoI、PmeI及びNotI制限部位を有した。オリゴBamhis6-EK-Nhe-F(5'-GATCCACACCACCACCACCACCACGG TTCTGGTGACGACGATGACAAAGCGCTAGCCC-3';配列番号:32)とBamhis6-EKNhe-R(5'-TCGAGGGCTAGCGCTTTGTCATCGTCGTCACCAGAACCGTGGT GGTGGTGGTGGTGTG-3';配列番号:33)とのアニールした対と、オリゴ1F-C-グリシン-リンカー(5'-TCGAGGGTGGTGGTGGTGGTTGCGGTTAATAAGTTTAAACGC-3';配列番号:34)とオリゴ1R-C-グリシン-リンカー(5'-GGCCGCGTTTAAACTTATTA ACCGCAACCACCACCACCACCC-3';配列番号:35)とのアニールした対を、BamHI-NotI消化のpMod00プラスミドに共にライゲーションして、pModEC1を得た。このpModEC1はN末端ヘキサヒスチジンタグ、エンテロキナーゼ切断部位及び1つのシステイン残基を含有するC末端グリシンリンカーをコードしている。
【0095】
pModEC1への上述の断片のクローニングによりそれぞれ、プラスミドpModEC1-His-EK-mIL1α117−270及びpModEC1-His-EK-mIL1β119−269が生じた。これらのプラスミドは、N末端His-タグ、エンテロキナーゼ切断部位、成熟したマウスのIL-1α又はIL-1βのそれぞれ、及びC末端システイン含有リンカー(GGGGGCG、配列番号:28)からなる融合タンパク質をコードする。発現のために、いずれかのプラスミドを有する大腸菌(Escherichia coli)BL21を37℃で1.0の600nmODまで生育し、次いで、1mMの濃度のイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドを加えて誘導した。細菌を37℃でさらに4時間生育させ、遠心によって回収し、80mlの溶解バッファ(10mM NaHPO、30mM NaCl、pH7.0)に再懸濁した。次いで、細胞を超音波処理し、64μlの2M MgCl及び10μlのBenzonaseと共に室温で30分間インキュベートして細胞のDNA及びRNAを消化した。細胞のデブリを遠心によって除去し(SS34ローター、20000rpm、4℃、60分)、クリアになった可溶化液をNi2+-NTAアガロースカラム(Qiagen, Hilden, Germany)にアプライした。洗浄バッファ(50mM NaHPO、300mM NaCl、20mM イミダゾール、pH8.0)にてカラムを十分に洗浄した後、タンパク質を、溶出バッファ(50mM NaHPO、300mM NaCl、200mM イミダゾール、pH8.0)にて溶出した。精製したタンパク質をPBS pH7.2にて透析し、液体窒素中で瞬時に凍結し、後の使用まで−80℃で保存した。
【0096】
実施例2
A.Qβウイルス様粒子へのマウスIL-1β119−269のカップリング
実施例1の精製されたマウスIL-1β119−269タンパク質(配列番号:66)を1.3mg/ml含むPBS pH7.2の溶液を、等モル量のTCEPとともに室温で60分間インキュベートして、C末端システイン残基の還元を行った。
次いで、PBS pH7.2に2mg/mlのQβキャプシドタンパク質を含む6mlの溶液を、131μlのSMPH溶液(DMSOに65mM)と室温で60分間反応させた。反応溶液を、24時間にわたって3lの20mM HEPES、150mM NaClpH7.2にて3回交換して、4℃で透析した。誘導体化して透析した75μlのQβ溶液を、117μlのHOと308μlの精製して予め還元したマウスIL-1β119−269タンパク質と混合し、15℃で終夜インキュベートして化学的な架橋を行った。300000Daの分子量カットオフを有するセルロースエステル膜を用いて、PBSに対するタンジェンシャルフロー濾過によって非カップリングタンパク質を除去した。
カップリングした生成物を、還元条件下の12%SDS-ポリアクリルアミドゲルにて分析した。クーマシー染色したゲルを図1に示す。Qβキャプシド単量体に関していくつかのバンドの増加した分子量が観察され、これによって、マウスIL-1β119−269タンパク質のQβキャプシドへの架橋結合の成功が明らかに示された。
【0097】
B.QβキャプシドにカップリングされたマウスIL-1β119−269タンパク質(Qβ-mIL-1β119−269)によるマウスの免疫化
5匹の雌balb/cマウスを、Qβ-mIL-1β119−269(配列番号:66)にて免疫化した。50μgの総タンパク質をPBSにて200μlに希釈し、第0及び第21日目に皮下に接種した(100μlを2か所の腹部に)。第0、第21及び第35日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、血清をマウスIL-1β119−269特異的ELISAを用いて解析した。
【0098】
C.ELISA
ELISAプレートを1μg/ml濃度のマウスIL-1β119−269タンパク質にてコートした。プレートの反応を止めて、第0、第21及び第35日目のマウス血清の段階希釈液とともにインキュベートした。結合した抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG抗体にて検出した。マウス血清の抗体力価を、450nmで最大半量の吸光度が得られる希釈液の平均として算出した。平均的な抗マウスIL-1β119−269力価は、第21日目に1:22262、第35日目に1:309276であった。これにより、マウスIL-1β119−269タンパク質にカップリングしたQβによる免疫化により免疫寛容が克服され、IL-1β119−269を特異的に認識する高力価の抗体が産生されうることが示唆される。
【0099】
D.IL-1βのインビトロ中和
Qβ-mIL-1β119−269(配列番号:66)にて免疫化したマウスの血清を、それぞれのレセプターへのマウスIL-1βタンパク質の結合を阻害する能力について試験した。したがって、ELISAプレートを1μg/ml濃度の組み換えmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質にてコートし、QβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1β119−269又はQβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1α117−270のいずれかにて免疫化したマウス血清の段階希釈と100ng/mlのマウスIL-1β119−269とともにインキュベートした。固定したmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質に対するIL-1β119−269の結合をビオチン化抗マウスIL-1β抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンにて検出した。マウスIL-1β119−269に対して免疫化したマウスのすべての血清が0.4%以上の濃度でマウスIL-1β119−269のそのレセプターに対する結合を完全に阻害したのに対して、マウスIL-1α117−270に対して免疫化したマウスの血清は高濃度に用いても阻害効果を示さなかった(3.3%)。これらのデータから、QβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1β119−269による免疫化によりマウスIL-1β119−269とそのレセプターとの相互作用を中和することができる抗体を得ることができることが示唆される。
【0100】
E.IL-1βのインビボ中和
次に、Qβ-mIL-1β119−269による免疫化により生じた抗体のインビボ中和能を調べた。したがって、4匹の雌balb/cマウスを、Qβ-mIL-1β119−269にて第0日目及び第14日目に2度免疫化し、4匹のマウスをQβキャプシド単独で同時に免疫化した。第21日目に、すべてのマウスの静脈内に1μgのフリーIL-1β119−269を注射した。注射したIL-1β119−269の炎症性活性の読み取り値として、血清試料を注射の3時間後に分析して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加として求めた。Qβ-免疫化マウスは1.01±0.61ng/mlの血清IL-6濃度において平均増加を示したのに対して、Qβ-mIL-1β119−269にて免疫化したマウスはたった0.11±0.30ng/mlの平均増加を示した。第28日目のコントロールとして、すべてのマウスに1μgのmIL-1αを注射した。注射の3時間後、Qβキャリア単独にて免疫化したマウスは40.24±8.06ng/mlの血清IL-6濃度において平均増加を示したのに対して、Qβ-mIL-1β119−269にて免疫化したマウスは57.98±29.92ng/mlの増加を示した(p=0.30)。これらのデータから、Qβ-mIL-1β119−269による免疫化によって生産される抗体がIL-1βの炎症誘発性活性を特異的かつ効果的に中和することが可能であったことが示された。
【0101】
F.関節リウマチのマウスモデルにおけるQβ-mIL-1β119−269の有効性
Qβ-m IL-1β119−269免疫化の有効性を、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデル(CIA)において試験した。このモデルは、ヒト関節リウマチの免疫学的及び組織学的態様の多くを反映しているので、通常抗炎症剤の有効性のアッセイに用いられる。雄DBA/1マウスに、50μgのQβ-mIL-1β119−269(n=8)又はQβ単独(n=8)のいずれかを3回(第0、14及び28日目)、皮下に免疫化し、次いで、完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを第42日目に皮内に接種した。第63日目に不完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを追加投与した後、マウスの関節炎症状の発症について毎日試験した。
赤くなる程度及び観察される腫脹に基づいて、各々の肢に0から3までの範囲の臨床スコアを付け、すべての後肢の厚さを測定した。以下の定義:0 正常、1 指/肢の軽度の紅斑及び/又は腫脹、2 指/肢の全体にわたる紅斑及び腫脹、3 強度の腫脹、指/肢の変形、硬直に従って、連続する3週間にわたって各肢に臨床スコアを付けた。各マウスの累積的な臨床スコアを四肢すべての臨床スコアの合計として算出したところ、12匹のマウスにつき、可能な限り最大の累積スコアとなった。
2回目のコラーゲン注射の2週間後、Qβ免疫化マウスは4.44の平均累積臨床スコアを示したのに対して、Qβ-mIL-1β119−269免疫化マウスはたった1.06の平均スコアを示した。さらに、後ろ肢厚の平均増加は、Qβ免疫化マウスでは18%であり、Qβ-mIL-1β119−269にて免疫化したマウスでは1%であった。炎症反応の更なる読み取り値として、IL-6の血清レベルを2回目のコラーゲン注射の1週間後に決定した。Qβ免疫化マウスは1.92±0.36の平均IL-6血清濃度であったのに対して、Qβ-mIL-1β119−269免疫化マウスはたった0.79±0.16の平均IL-6濃度であった(p=0.01)。総して、これらのデータは、Qβ-mIL-1β119−269による免疫化が、CIAモデルマウスの炎症と関節炎の臨床徴候を防ぐことを示す。
【0102】
実施例3
A.Qβウイルス様粒子へのマウスIL-1α117−270のカップリング
実施例1の精製されたマウスIL-1α117−270タンパク質(配列番号:65)を1.8mg/ml含むPBS pH7.2の溶液を、等モル量のTCEPとともに室温で60分間インキュベートして、C末端システイン残基の還元を行った。
次いで、PBS pH7.2に2mg/mlのQβキャプシドタンパク質を含む6mlの溶液を、131μlのSMPH溶液(DMSOに65mM)と室温で60分間反応させた。反応溶液を、24時間にわたって3lの20mM HEPES、150mM NaClpH7.2にて3回交換して、4℃で透析した。誘導体化して透析した75μlのQβ溶液を、192μlのHOと233μlの精製して予め還元したマウスIL-1α117−270タンパク質と混合し、15℃で終夜インキュベートして化学的な架橋を行った。300000Daの分子量カットオフを有するセルロースエステル膜を用いて、PBSに対するタンジェンシャルフロー濾過によって非カップリングタンパク質を除去した。
カップリングした生成物を、還元条件下の12%SDS-ポリアクリルアミドゲルにて分析した。クーマシー染色したゲルを図2に示す。Qβキャプシド単量体に関していくつかのバンドの増加した分子量が観察され、これによって、マウスIL-1α117−270タンパク質のQβキャプシドへの架橋結合の成功が明らかに示された。
【0103】
B.QβキャプシドにカップリングされたマウスIL-1β119−269タンパク質(Qβ-mIL-1β119−269)によるマウスの免疫化
5匹の雌balb/cマウスを、Qβ-mIL-1α117−270にて免疫化した。50μgの総タンパク質をPBSにて200μlに希釈し、第0及び第21日目に皮下に接種した(100μlを2か所の腹部に)。第0、第21及び第35日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、血清をマウスIL-1α117−270特異的ELISAを用いて解析した。
【0104】
C.ELISA
ELISAプレートを1μg/ml濃度のマウスIL-1α117−270タンパク質にてコートした。プレートの反応を止めて、第0、第21及び第35日目のマウス血清の段階希釈液とともにインキュベートした。結合した抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG抗体にて検出した。マウス血清の抗体力価を、450nmで最大半量の吸光度が得られる希釈液の平均として算出した。平均的な抗マウスIL-1α117−270力価は、第21日目に1:9252、第35日目に1:736912であった。これにより、マウスIL-1α117−270タンパク質にカップリングしたQβによる免疫化により免疫寛容が克服され、IL-1α117−270を特異的に認識する高力価の抗体が産生されうる。
【0105】
D.IL-1αのインビトロ中和
Qβ-mIL-1α117−270にて免疫化したマウスの血清を、マウスIL-1αタンパク質のそれぞれのレセプターへの結合を阻害する能力について試験した。したがって、ELISAプレートを1μg/ml濃度の組み換えmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質にてコートし、QβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1α117−270又はQβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1β119−269のいずれかにて免疫化したマウス血清の段階希釈と5ng/mlのマウスIL-1α117−270とともにインキュベートした。固定したmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質に対するIL-1α117−270の結合をビオチン化抗マウスIL-1α抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンにて検出した。マウスIL-1α117−270に対して免疫化したマウスのすべての血清が0.4%以上の濃度でマウスIL-1α117−270のそのレセプターに対する結合を完全に阻害したのに対して、マウスIL-1β119−269に対して免疫化したマウスの血清は高濃度に用いても阻害効果を示さなかった(3.3%)。これらのデータから、QβキャプシドにカップリングしたマウスIL-1α117−270による免疫化によりマウスIL-1α117−270とそのレセプターとの相互作用を中和することができる抗体を得ることができることが示唆される。
【0106】
E.IL-1αのインビボ中和
次に、Qβ-mIL-1α117−270による免疫化により生じた抗体のインビボ中和能を調べた。したがって、4匹の雌balb/cマウスを、Qβ-mIL-1α117−270にて第0日目及び第14日目に2回免疫化し、4匹のマウスをQβキャプシド単独で同時に免疫化した。第21日目に、すべてのマウスの静脈内に1μgのフリーIL-1α117−270を注射した。注射したIL-1α117−270の炎症性活性の読み取り値として、血清試料を注射の3時間後に分析して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加として求めた。Qβ-免疫化マウスは8.16±2.33ng/mlの血清IL-6濃度において平均増加を示したのに対して、Qβ-mIL-1α117−270にて免疫化したマウスはたった0.15±0.27ng/mlの平均増加を示した(p=0.0005)。第28日目のコントロールとして、すべてのマウスに1μgのmIL-1βを注射した。注射の3時間後、Qβキャリア単独にて免疫化したマウスは9.52±7.33ng/mlの血清IL-6濃度の平均増加を示したのに対して、Qβ-mIL-1α117−270にて免疫化したマウスは21.46±27.36ng/mlの増加を示した(p=0.43)。これらのデータから、Qβ-mIL-1α117−270による免疫化によって生産される抗体がIL-1αの炎症誘発性活性を特異的かつ効果的に中和することが可能であったことが示された。
【0107】
F.関節リウマチのマウスモデルにおけるQβ-mIL-1α117−270の有効性
Qβ-mIL-1α117−270免疫化の有効性を、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデル(CIA)において試験した。このモデルは、ヒト関節リウマチの免疫学的及び組織学的態様の多くを反映しているので、通常抗炎症剤の有効性のアッセイに用いられる。雄DBA/1マウスに、50μgのQβ-mIL-1α117−270(n=8)又はQβ単独(n=8)のいずれかを3回(第0、14及び28日目)、皮下に免疫化し、次いで、完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを第42日目に皮内に接種した。第63日目に不完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを追加投与した後、マウスの関節炎症状の発症について毎日試験した。赤くなる程度及び観察される腫脹に基づいて、各々の肢に実施例2Fに定義したように臨床スコアを付け、すべての後肢の厚さを測定した。2回目のコラーゲン注射の2週間後、Qβ免疫化マウスは4.44の平均累積臨床スコアを示したのに対して、Qβ-mIL-1α117−270免疫化マウスはたった2.31の平均スコアを示した。さらに、後ろ肢厚の平均増加は、Qβ免疫化マウスでは18%であり、Qβ-mIL-1α117−270にて免疫化したマウスではたった7%であった。炎症反応の更なる読み取り値として、IL-6の血清レベルを2回目のコラーゲン注射の1週間後に決定した。Qβ免疫化マウスは1.92±0.36の平均IL-6血清濃度であったのに対して、Qβ-mIL-1α117−270免疫化マウスはたった0.94±0.48の平均IL-6濃度であった。総して、これらのデータは、Qβ-mIL-1α117−270による免疫化が、CIAモデルマウスの炎症と関節炎の臨床徴候を防ぐことを示す。
【0108】
実施例4
アテローム性動脈硬化のマウスモデルにおけるQβ-mIL-1α117−270の有効性
第0、14、28、56、105及び133日目に、7〜8週齢の雄Apoe−/−マウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor ME)の皮下に50μgのQβ-mIL-1α117−270ワクチン(n=13)又は50μgのQβ(n=12)のいずれかを注射した(5匹のうちQβ-mIL-1α117−270群の3匹に、Qβ群の2匹に、第33日目に2回目の追加免疫を与えた)。始めに通常の固形食餌をマウスに与え、第21日目に西洋型食餌(20%脂質、0.15%コレステロール、Provimi Kliba AG, Switzerland)に換えた。実験を通じて一定の間隔でマウスから採血し、血清中のIL-1αに対する抗体応答を測定した。第159日目に屠殺し、基本的には既に記載のあるように(Tangirala R.K.等 (1995) J. Lipid. Res. 36: 2320-2328)、大動脈を単離して、調製した。さらに、心臓を取り出し、基本的にはPaigen B.等 (Atherosclerosis 1987;68:231-240)及びZhou X.等 (Arterioscler Thromb Vasc Biol 2001;21:108-114)に記載のあるように、後の組織学的な調製のために液体窒素にて急激に凍結した。動物から心臓穿刺にて採血し、氷温PBSを注いだ。次いで、大動脈を曝し、できるだけインサイツに外膜を取り出し、最後に心臓から2mmの大動脈を切り出した。心臓を中央で切開し、上部をプラスチックチューブのハンク平衡塩類溶液中で液体窒素にてすぐに凍結した。連続切片(7μm厚)を、大動脈の元からクリオスタットにて切断し、少なくとも2つの弁尖端の出現から最後の弁尖端の消失まで収集した。切片をホルマリンで固定し、オイルレッドOにて染色し、量的画像分析によって1マウスにつき4〜7切片(Qβ群の1匹では3切片)にてプラーク負荷を評価した。平均的プラーク領域は、評価に用いた各切片のプラーク領域から、各々の動物について計算した。平均的群プラーク領域は、Qβ-mIL-1α117−270群及びQβ群のそれぞれについて計算した。スチューデントt検定にて統計学的な分析を行った。P<0.05は、統計学的に有意であるとする。
【0109】
大動脈全体のアテローム性動脈硬化の評価のために、氷温PBSで満たしたガラスシャーレに残留する外膜から取り除き、左の鎖骨下動脈から5mm下方のアーチを切り出した。大動脈を縦に切開し、黒色のワックス表面上に外に向けてピンで留め、4%ホルマリンに終夜をかけて固定した。次いで、オイルレッドOにて終夜をかけて染色した。画像ソフトウェア(Motic Image Plus 2.0)にてプラークをデジタル写真上で定量化した。プラーク負荷は、腸骨の分岐点に至る大動脈のすべてのプラークの表面の合計を、腸骨の分岐点に至る測定した大動脈の総表面で除してパーセンテージで表す。Qβ-mIL-1α117−270群とQβ群とのプラーク負荷の平均又は中央値の違いを分析した。
ELISAプレート上にコートした組み換えIL-1αを用いた典型的なELISAにて抗体応答を測定した。ヤギ抗マウスHRPコンジュゲートを用いて特異的抗体の結合を検出した。IL-1αに対する力価は、アッセイの最大半量の結合を示す血清希釈物の逆数として算出した。応答の特異性は免疫前血清を測定することによって評価した。免疫前力価は、アッセイに用いた最も低い血清希釈物より低く、この最も低い血清希釈値を割り当てた。Qβ-mIL-1α117−270免疫化動物における抗体応答の測定の結果を表1に示す。これは、免疫前(0日目)血清ではほとんど力価が検出されなかったので、QβにカップリングさせたマウスIL-1αに対する免疫化により、IL-1αに対して強力で持続性の特異的な抗体応答が生じたことを示す。さらに、IL-1αに特異的な抗体応答の誘導により、Qβ群と比較して、Qβ-mIL-1α117−270群では大動脈元でのプラーク領域が37%減少した(464694±36545μmに対して292803±21272μm、p=0.0005)。加えて、「エヌフェイス」に調製した大動脈全体では中央プラーク負荷の31%の減少(8.3に対して5.7、p=0.06)が観察された。
【0110】
これらのデータから、Qβ-mIL-1α117−270ワクチンによる抗IL1α抗体の誘導によりアテローム性動脈硬化の発達が阻害されたので、Qβ-mIL-1α117−270ワクチンはアテローム性動脈硬化の有効な治療であることが示された。さらに、これらのデータは、IL-1αがアテローム性動脈硬化の病因に関与することを示す。
表1:Qβ-IL1αにより免疫化したApoe−/−マウスにおける相乗平均抗IL1α抗体力価(相乗平均力価±平均値の標準誤差)

* 5匹の動物について、33日目の値。
【0111】
実施例5
Qβ-mIL-1α117−270及び/又はQβ-mIL-1β119−269による免疫化によるTNBS-誘発性炎症性腸疾患の防止
50μgのQβ-mIL-1α117−270又は50μgのQβ-mIL-1β119−269、又はそれぞれ50μgのQβ-mIL-1α117−270とQβ-mIL-1β119−269の混合物を8週齢の雄SJLマウス(1群当たり5匹)の皮下に2週間の間隔で3回投与する。コントロールとして、5匹のマウスにQβ VLP単独を同じ投薬計画で投与する。最後の免疫化の2週後に、すべてのマウスをイソフルランにて僅かに麻酔をかけ、1mgのトリニトロベンゼンスルホン酸塩(TNBS)を含む100μlの50%エタノールを肛門から4cm離れた直腸にポリエチレンカテーテルにより投与する。疾患進行の読み取り値として体重を毎日記録し、TNBS投与の7日後にすべてのマウスを屠殺する。各マウスの大腸を摘出し、肛門に対して2cmの近位に位置する大腸の試料をPBS緩衝ホルマリンにて固定し、炎症の程度をNeurath M.F.等 (JEM (1995), 182:1281-1290)に従ってヘマトキシリン-及びエオシン-染色結腸横断切片上で半定量的に等級分けする。
Qβ-mIL-1α117−270単独又はQβ-mIL-1β119−269単独のいずれか、又はQβ-mIL-1α117−270及びQβ-mIL-1β119−269の組合せのいずれかによる免疫化により、Qβ-免疫化マウスと比較すると、TNBS誘発性の体重損失が減少する。さらに、結腸横断切片の組織学的試験から、Qβ-mIL-1α117−270及び/又はQβ-mIL-1β119−269-免疫化マウスは、Qβ-免疫化マウスと比較して結腸組織への炎症細胞の浸潤が顕著に減少していたことが明らかとなった。
【0112】
実施例6
MEFV遺伝子の切断型を有するマウスにおける、Qβ-mIL-1β119−269による免疫化によるエンドトキシン-過敏症の改善
家族性地中海熱は、回帰熱並びに腹膜炎、漿膜炎、関節炎、及び皮膚発疹に特徴を示す劣性遺伝性炎症性疾患である。罹患個体はMEFV遺伝子のミスセンス突然変異を有し、切断型のpyrinタンパク質を発現する。MEFV遺伝子に同種の突然変異を有するマウスはカスパーゼ-1活性の増加を示し、成熟したIL-1βの過剰発現及び低体温の増大及びLPS投与の後に致死となる。8週齢のホモ接合体pyrin切断マウス(1群当たり5匹)を、50μgのQβ-mIL-1β119−269単独又は50μgのQβ VLP単独にて2週間の間隔で3回免疫化する。最後の免疫化の2週後に、すべてのマウスの腹膜内に20mgのD-ガラクトサミンと0.01μg/gのLPSの混合を投与する。Qβ-mIL-1β119−269-免疫化マウスは、Qβ-免疫化コントロールと比較して、低体温の減少とLPS投与に対する致死率の減少を顕著に示す。
【0113】
実施例7
関節リウマチのマウスモデルにおけるKineret(登録商標)処置に対するQβ-mIL-1α117−270とQβ-mIL-1β119−269の免疫化の比較
Kineret(登録商標)(Anakinra, Amgen)は、ヒトの関節リウマチの治療の承認を得ているヒトIL-1レセプターアンタゴニストの組み換え型である。臨床的な有用性を満たすために、比較的高い用量(100mg)を皮下投与により毎日投与する。コラーゲン誘発性関節炎モデルを用いて、Qβ-mIL-1α117−270及びQβ-mIL-1β119−269の免疫化の有効性を異なる用量のKineret(登録商標)の毎日適用と比較した。雄のDBA/1マウスに、50μgのQβ-mIL-1α117−270(n=8)、Qβ-mIL-1β119−269(n=8)又はQβ単独(n=32)のいずれかを3回(第0、14及び28日目)皮下投与して免疫化し、次いで第42日目に完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを皮内に注射した。第42日目から、Qβ-mIL-1α117−270及びQβ-mIL-1β119−269にて免疫化したマウス、及び1群のQβ-免疫化マウス(n=8)に200μlのPBSを毎日腹腔内投与したのに対して、更なる3つのQβ-免疫化群に37.5μg(n=8)、375μg(n=8)又は3.75mg(n=8)のいずれかのKineret(登録商標)を毎日腹腔内投与した。1マウスにつき37.5μgのKineret(登録商標)の連日投与はおよそ1.5mg/kgの用量に相当し、これはヒトに推奨される効果的な量の範囲内である(100mg)。すべてのマウスに、不完全フロイントアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを63日目に皮内投与して追加免役し、関節炎症状の発達について毎日調べた。
2回目のコラーゲン投与の4週間後、Qβ-免疫化コントロールマウスは3.75の平均的累積臨床スコア(実施例2Fに定義する)を示したのに対して、Qβ-mIL-1α117−270及びQβ-mIL-1β119−269-免疫化マウスはそれぞれたった0.81及び1.44の平均スコアを示した(表2を参照)。37.5μg又は375μgのKineret(登録商標)にて処置したマウスはそれぞれ2.44及び2.63の平均スコアに達したのに対して、3.75mgのKineret(登録商標)にて処置したマウスは大部分が無症候性のままであり、たった0.19の最大スコアに達した。
【0114】
更なる炎症反応の読み取り値として、すべての動物の後肢厚を定期的に測定した。2回目のコラーゲン投与の4週間後、Qβ-免疫化コントロールマウスは16%の後肢厚の平均増加を示したのに対して、Qβ-mIL-1α117−270-免疫化マウスは2%の増加、Qβ-mIL-1β119−269-免疫化マウスは6%の増加を示した。37.5μg又は375μgのいずれかのKineret(登録商標)にて処置したマウスはそれぞれ13%及び10%の平均増加を示したのに対して、3.75mgのKineret(登録商標)にて処置したマウスは後肢厚の増加を全く示さなかった。
結論として、発明者等は、驚くべきことに、Qβ-mIL-1α117−270又はQβ-mIL-1β119−269の3つの投与は、ヒトの用量又はヒトの用量の10倍に相当する量のKineret(登録商標)の連日投与よりもマウスの関節炎症状の発達を防いだことを明らかとした。ヒト用量の100倍のKineret(登録商標)量の投与のみ、Qβ-mIL-1α117−270又はQβ-mIL-1β119−269のワクチンに関して有益性が増加した。
表2:コラーゲン誘発性関節炎モデルにおける臨床疾患症状

【0115】
実施例8
A.マウスIL-1α117−270に遺伝的に融合したAP205コートタンパク質(AP205_mIL-1α117−270)からなるウイルス様粒子のクローニング、発現及び精製
インターロイキン-1αのサイズが大きく、立体の問題から、インターロイキン-1αに融合したAP205コートタンパク質並びにwtコートタンパク質サブユニットを含む、いわゆるモザイク粒子を産生する発現系を構築した。このシステムでは、停止コドンの抑制によりAP205-インターロイキン-1αコートタンパク質融合体が生じるのに対して、適当な終止によりwt AP205コートタンパク質が生じる。両タンパク質は細胞内で同時に生産され、モザイクウイルス様粒子内に集合する。サプレッサーコドンTAG(アンバー、pAP590)又はTGA(オパール、pAP592)により終止するAP205コートタンパク質遺伝子をコードする2つの中間プラスミドpAP590及びpAP592を作製した。トリペプチドGly-Ser-Gly(配列番号:189)をコードするリンカー配列をコートタンパク質遺伝子の下流とインフレームに付加した。Kpn2I及びHindIII部位を、AP205コートタンパク質のC末端であるGly-Ser-Glyアミノ酸リンカーのC末端に外来性のアミノ酸配列をコードする配列をクローニングするために付加した。結果として生じるコンストラクトは以下の通りであった。AP590(配列番号:117):AP205コートタンパク質遺伝子−アンバーコドン−GSG(Kpn2I − HindIII);及び、AP592(配列番号:118):AP205コートタンパク質遺伝子−オパールコドン−GSG(Kpn2I−HindIII)プラスミドpAP590の構築のために、オリゴヌクレオチドp1.44(5'-NNCCATGGCAAATAAGCCAATGCAACCG-3';配列番号:119)及びpINC-36(5'-GTAAGCTTAGATGCATTATCCGGA TCCCTAAGCAGTAGTATCAGACGATACG-3';配列番号:120)にて得たPCR断片をNcoIとHindIIIにて消化して、同じ制限酵素にて消化したベクターpQb185にクローニングした。pQb185はpGEMベクター由来のベクターである。このベクター内でのクローニングした遺伝子の発現は、trpプロモーターにて制御する(Kozlovska, T. M.等, Gene 137:133-37 (1993))。同様に、プラスミドpAP592は、オリゴヌクレオチドp1.44及びpINC-40(5'-GTAAGCTTAGATGCATTATCCGGATCCTCAAGCAGTAGTA TCAGACGATACG-3';配列番号:121)にて得たNcoI/HindIII消化PCR断片をクローニングすることによって構築した。
【0116】
マウスIL-1αのアミノ酸117−270をコードする配列は、5'及び3'末端のそれぞれにKpn2I及びHindIII制限酵素部位を付加した、プライマーpINC-34(5'-GGTCCGGAGCGCTAGCCCCTTACAC-3';配列番号:122)及びpINC-35(5'-GTAAGCTTATGCATTATGATATCTGGAAGTCTGTCATAGA-3';配列番号:123)を用いて、プラスミドpModEC1-His-EK-mIL1α117−270(実施例1を参照)からPCRによって増加した。得たDNA断片をKpn2I及びHindIIIにて消化し、プラスミドpAP594(アンバー終止)を作製するベクターpAP590と、プラスミドpAP596(オパール終止)を作製するベクターpAP592のそれぞれにクローニングした。
表面上にマウスIL-1αをディスプレイするモザイクAP205 VLPを発現させるために、プラスミドpISM579又はpISM3001を含む大腸菌JM109細胞をそれぞれプラスミドpAP594又はpAP596にて形質転換させた。制限エンドヌクレアーゼEcoRIにてpISM3001からtrpT176遺伝子を切り出し、アンバーtRNAサプレッサー遺伝子を含むプラスミドpMY579(Michael Yarusから贈与)のEcoRI断片に置換することによってプラスミドpISM579を生成した。このtRNAサプレッサー遺伝子はtrpT175の変異体であり(Raftery LA.等 (1984) J. Bacteriol. 158:849-859)、3つの位置:G33、A24及びT35がtrpTと異なる。20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含む5mlのLB液体培地に、単一のコロニーを播いて、振盪せずに37℃で16〜24時間インキュベートした。調製された種菌は、20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含むM9培地にて50倍に希釈し、振とう器上で37℃で終夜インキュベートした。細胞を遠心して回収した。
【0117】
細胞(1g、プラスミドpAP594にて形質転換、pISM579を含有)を、溶解バッファ(20mM トリス-HCl、5mM EDTA、150mM NaCl、pH7.8、0.1%トゥイーン20)にて超音波処理して溶解した。溶解物は遠心によってクリアにし、細胞片を溶解バッファにて洗浄した。プールした上清を、TENバッファ(20mM トリス-HCl、5mM EDTA、150mM NaCl、pH7.8)にて溶出したセファロースCL-4Bカラムに流した。洗浄した溶解物及び洗浄上清中のキャプシドの有無は、アガロースゲル電気泳動(1%TAE、エチジウムブロマイド染色ゲル及びUV検出)によって確認した。SDS-PAGE又は310nmの光散乱のUV分光測定分析にて測定すると、カラムから2つのピークが溶出された。キャプシドを含む2つ目のピークの分画をプールし、セファロースCL-6Bカラムに流した。CL-6Bカラムのピーク分画をプールし、遠心濾過ユニット(Amiconウルトラ15 MWCO30000、Millipore)を用いて濃縮した。タンパク質は更なる1つによってさらに精製された。そして、上としての単位はCL-4Bカラム及び生じているピークの分画上のゲル濾過の中でプールされて、遠心濾過機に濃縮された。バッファを10mM Hepes、pH7.5に交換し、グリセロールを50%の終濃度まで加えた。
プラスミドpAP596からのAP205_mIL-1α117−270の精製は基本的に上記のpAP594についての記載のように行ない、最後のCL-4Bカラムの後に更なるショ糖勾配精製工程を行った。タンパク質は以下のショ糖液によって調製した勾配の上に重ねた。9ml 36%、3ml 30%、6ml 25%、8ml 20%、6ml 15%、6ml 10%及び3ml 5%のショ糖。UV分光法によって分画を同定し、キャプシドを含むプールした分画を上記のように遠心濾過ユニットにて濃縮し、バッファを10mM Hepes、pH7.5に交換した。最後にグリセロールを50%の終濃度まで加えた。
【0118】
B. AP205_mIL-1α117−270によるマウスの免疫化
4匹の雌balb/cマウスをAP205_mIL-1α117−270にて免疫化した。25μgの総タンパク質をPBSにて200μlに希釈し、第0、第14及び第28日目に皮下に接種した(100μlを2か所の腹部に)。第0、第14、第28及び第35日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、血清をマウスIL-1α117−270特異的ELISAを用いて解析した。
【0119】
C.ELISA
ELISAプレートを1μg/ml濃度のマウスIL-1α117−270タンパク質にてコートした。プレートの反応を止めて、第14、第28及び第35日目のマウス血清の段階希釈液とともにインキュベートした。結合した抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG抗体にて検出した。マウス血清の抗体力価を、450nmで最大半量の吸光度が得られる希釈液の平均として算出した。平均的な抗マウスIL-1α117−270力価は、第14日目に1:4412、第28日目に1:27955、第35日目に1:34824であった。これにより、AP205_mIL-1α117−270による免疫化により免疫寛容が克服され、IL-1α117−270を特異的に認識する高力価の抗体が産生されうることが示唆される。
【0120】
D.IL-1αのインビトロ中和
AP205_mIL-1α117−270にて免疫化したマウスの血清を、マウスIL-1αタンパク質のそれぞれのレセプターへの結合を阻害する能力について試験した。したがって、ELISAプレートを1μg/ml濃度の組み換えmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質にてコートし、AP205_mIL-1α117−270又はAP205単独のいずれかにて免疫化したマウス血清の段階希釈と100ng/mlのマウスIL-1α117−270とともにインキュベートした。固定したmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質に対するIL-1α117−270の結合をビオチン化抗マウスIL-1α抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンにて検出した。AP205_mIL-1α117−270免疫化マウスのすべての血清が3.3%以上の濃度でマウスIL-1α117−270のそのレセプターへの結合を完全に阻害したのに対して、AP205にて免疫化したマウスの血清は用いたいずれの濃度においても有意な阻害効果を示さなかった。これらのデータから、AP205_mIL-1α117−270による免疫化によりマウスIL-1α117−270とそのレセプターとの相互作用を特異的に中和することができる抗体を得ることができることが示唆される。
【0121】
E.IL-1αのインビボ中和
次に、AP205_mIL-1α117−270による免疫化により生じた抗体のインビボ中和能を調べた。したがって、4匹の雌balb/cマウスを、AP205_mIL-1α117−270にて第0、14及び28日目に3度免疫化し、4匹のマウスをAP205単独で同時に免疫化した。第42日目に、すべてのマウスの静脈内に1μgのフリーIL-1α117−270を注射した。注射したIL-1α117−270の炎症性活性の読み取り値として、血清試料を注射の前と3時間後に回収して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加について分析した。AP205-免疫化マウスは12.92±3.95ng/mlの血清IL-6濃度の平均増加を示したのに対して、AP205_mIL-1α117−270にて免疫化したマウスはたった0.06±0.05ng/mlの平均増加を示した(p<0.01)。これらのデータから、AP205_mIL-1α117−270による免疫化によって生産される抗体がIL-1αの炎症誘発性活性を特異的かつ効果的に中和することが可能であったことが示される。
【0122】
F.関節リウマチのマウスモデルにおけるAP205_mIL-1α117−270の有効性
AP205_mIL-1α117−270免疫化の有効性を、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデル(CIA)において試験した。雄DBA/1マウスに、50μgのAP205_mIL-1α117−270(n=8)又はAP205単独(n=8)のいずれかを3回(第0、14及び28日目)、皮下に免疫化し、次いで、完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを第42日目に皮内に接種した。第63日目に不完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを追加投与した後、マウスの関節炎症状の発症について毎日試験した。赤くなる程度及び観察される腫脹に基づいて、各々の肢に0から3までの範囲の臨床スコアを付け、すべての後肢の厚さを測定した。2回目のコラーゲン注射の4週間後、Qβ免疫化マウスは5.81の平均累積臨床スコアを示したのに対して、AP205_mIL-1α117−270免疫化マウスはたった2.06の平均スコアを示した。さらに、後肢厚の平均増加は、AP205免疫化マウスでは19%であり、AP205_mIL-1α117−270にて免疫化したマウスではたった9%であった。総して、これらのデータは、AP205_mIL-1α117−270による免疫化が、CIAモデルマウスの炎症と関節炎の臨床徴候を強く防ぐことを示す。
【0123】
実施例9
A.マウスIL-1β119−269に遺伝的に融合させたAP205コートタンパク質(AP205_mIL-1β119−269)からなるウイルス様粒子のクローニング及び発現
基本的には実施例8のAP205_mIL-1α117−270について記載したように、マウスIL-1β119−269に遺伝的に融合させたAP205コートタンパク質からなるウイルス様粒子のクローニング、発現及び精製を行った。プライマーpINC-75(5'-GATCCGGAGGTGGTGTCCCCATTAGACAGCT-3'、配列番号:192)及びpINC-77(5'-GTAAGCTTAGGAAGACACAGATTCCAT-3'、配列番号:193)を用いて、マウスインターロイキン1βをコードするプラスミドpModEC1-His-EK-mIL1(119−269からマウスインターロイキン1βの配列を増幅した。これらのプライマーは、5'のKpn2Iと3'のHind IIIの部位を有し、マウスインターロイキン1βのN末端にアミノ酸配列Gly-Glyをさらにコードするマウスインターロイキン-1β遺伝子を増幅する。得られたmur-IL-1β断片をKpn2I及びHindIIIにて消化し、プラスミドpAP630を作製するベクターpAP590(アンバー終止)内の同じ制限酵素部位にクローニングした。アンバー終止を示すプラスミドpISM579を含む大腸菌JM109を、プラスミドpAP630にて形質転換した。20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含む5mlのLB液体培地に、単一のコロニーを播いて、振盪せずに37℃で16〜24時間インキュベートした。調製された種菌は、20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含むM9培地にて50倍に希釈し、振とう器上で37℃で終夜インキュベートした。細胞を遠心して回収した。
【0124】
B.ヒトIL-1β116−269に遺伝的に融合させたAP205コートタンパク質(AP205_hIL-1β116−269)からなるウイルス様粒子のクローニング及び発現
それぞれ5'にKpn2I部位と3'にMph1103I部位を導入するプライマーpINC-74(5'- GA TCC GGA GGT GGT GCC CCT GTA CGA TCA CTG AAC TG -3'、配列番号:194)及びpINC-76(5'-GTATGCATTAGGAAGACACAAATTGCATGGTGAAGTC-3、配列番号:195)を用いて、ヒトインターロイキン1βをコードするプラスミドpET42T-hIL-1β116−269からヒトインターロイキン1βの配列を増幅した。得られたヒト-IL-1β断片をKpn2I及びMph1103Iにて消化し、プラスミドpAP649を作製するベクターpAP590(アンバー終止)内の同じ制限酵素部位にクローニングした。プラスミドpISM579(アンバー終止を示す)を含む大腸菌JM109を、プラスミドpAP649にて形質転換した。20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含む5mlのLB液体培地に、単一のコロニーを播いて、振盪せずに37℃で16〜24時間インキュベートした。調製された種菌は、20μg/mlアンピシリン及び10μg/mlカナマイシンを含むM9培地にて50倍に希釈し、振とう器上で37℃で終夜インキュベートした。細胞を遠心して回収した。
【0125】
C.AP205_mIL-1β119−269によるマウスの免疫化
4匹の雌balb/cマウスをAP205_mIL-1β119−269にて免疫化する。25μgの総タンパク質をPBSにて200μlに希釈し、第0、第14及び第28日目に皮下に接種する(100μlを2か所の腹部に)。第0、第14、第28及び第35日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、血清をマウスIL-1β119−269特異的ELISAを用いて分析する。
【0126】
D.ELISA
ELISAプレートを1μg/ml濃度のマウスIL-1β119−269タンパク質にてコートする。プレートの反応を止めて、第0、14、28及び35日目のマウス血清の段階希釈液とともにインキュベートする。結合した抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG抗体にて検出する。マウス血清の抗体力価を、450nmで最大半量の吸光度が得られる希釈液の平均として算出する。AP205_mIL-1β119−269による免疫化により高度に特異的な抗マウスIL-1β119−269力価が生じる。これにより、AP205_mIL-1β119−269による免疫化により免疫寛容が克服され、IL-1β119−269を特異的に認識する高力価の抗体が産生されうることが示唆される。
【0127】
E.IL-1βのインビトロ中和
次いで、AP205_mIL-1β119−269にて免疫化したマウスの血清を、マウスIL-1βタンパク質のレセプターへの結合を阻害する能力について試験する。したがって、ELISAプレートを1μg/ml濃度の組み換えmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質にてコートし、AP205_mIL-1β119−269又はAP205単独のいずれかにて免疫化したマウス血清の段階希釈と100ng/mlのマウスIL-1β119−269とともにインキュベートする。固定したmIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質に対するIL-1β119−269の結合をビオチン化抗マウスIL-1β抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンにて検出する。AP205_mIL-1β119−269免疫化マウスのすべての血清がマウスIL-1β119−269のレセプターへの結合を強く阻害するのに対して、AP205単独にて免疫化したマウスの血清は全く阻害効果を示さない。これらのデータから、AP205_mIL-1β119−269による免疫化によりマウスIL-1β119−269とそのレセプターとの相互作用を中和することができる抗体を生じさせることができることが示唆される。
【0128】
F.IL-1βのインビボ中和
次に、AP205_mIL-1β119−269による免疫化により生じた抗体のインビボ中和能を調べる。したがって、4匹の雌balb/cマウスを、AP205_mIL-1β119−269にて第0、14及び28日目に3度免疫化し、4匹のマウスをAP205単独で同時に免疫化する。第35日目に、すべてのマウスの静脈内に1μgのフリーIL-1β119−269を注射する。注射したIL-1β119−269の炎症性活性の読み取り値として、血清試料を注射の前と3時間後に回収して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加について分析する。AP205-免疫化マウスは血清IL-6濃度の強い増加を示すのに対して、AP205_mIL-1β119−269にて免疫化したマウスは非常にわずかな増加のみを示す。これらのデータから、AP205_mIL-1β119−269による免疫化によって生産される抗体がIL-1βの炎症誘発性活性を特異的かつ効果的に中和することが可能であることが示される。
【0129】
G.関節リウマチのマウスモデルにおけるAP205_mIL-1β119−269の有効性
AP205_mIL-1β119−269免疫化の有効性を、マウスコラーゲン誘発性関節炎モデル(CIA)において試験した。雄DBA/1マウスに、50μgのAP205_mIL-1β119−269(n=8)又はAP205単独(n=8)のいずれかを3回(第0、14及び28日目)、皮下に免疫化し、次いで、完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを第42日目に皮内に接種した。第63日目に不完全フロインドアジュバントと混合した200μgのウシタイプIIコラーゲンを追加投与した後、マウスの関節炎症状の発症について毎日試験した。赤くなる程度及び観察される腫脹に基づいて、各々の肢に0から3までの範囲の臨床スコアを付け、すべての後肢の厚さを測定した。2回目のコラーゲン注射の4週間後、AP205_mIL-1β119−269免疫化マウスはAP205免疫化マウスと比較して非常に減少した平均臨床スコアを示す。さらに、AP205_mIL-1β119−269免疫化マウスは後肢厚のわずかな増加を示すのに対して、AP205免疫化マウスは後肢厚の強い増加を示す。総して、これらのデータは、AP205_mIL-1β119−269による免疫化が、CIAモデルマウスの炎症と関節炎の臨床徴候を強く防ぐことを示す。
【0130】
実施例10
ヒトIL-1β116−269のクローニング、発現及び精製
オリゴヌクレオチドHIL-1(5'- ATATATGATATCCCTGTACGATCACTGAACTGCACG-3'、配列番号:124)及びHIL-2(5'-ATATATCTCGAGGGAAGACA CAAATTGCATGGTGAAG-3'、配列番号:125)を用いて、ヒト肝臓組織のcDNAライブラリからPCRにてヒトIL-1βのアミノ酸116−269(hIL-1β116−269)をコードするヌクレオチド配列を増幅し、XhoI及びEcoRVにて消化し、発現ベクターpET42T(+)にクローニングした。
pET-42a(+) (Novagen)のT7プロモーターとT7ターミネーターの間の全領域を新たなリンカー配列に2工程で置き換えて、プラスミドpET-42T(+)を構築し、His-タグ及びシステイン含有リンカーを含むC末端タグ(配列番号:190)を有する融合体として対象のタンパク質の発現を促した。第一工程では、プラスミドpET-42a(+)を制限酵素NdeI及びAvrIIにて消化し、GST-タグ、S-タグの2つのHis-タグとマルチクローニングサイトからなるT7プロモーターとT7ターミネーターとの間の958bpの断片を遊離させた。pET-42a(+)のベクターバックボーンを含む残りの4972bpの断片を単離し、アニールさせた相補的なオリゴヌクレオチド42-1(5´-TATGGATATCGAATTCAAGCTTCTGCAGCTGCTCGAGTAA TTGATTAC-3´;配列番号:126)及び42-2(5´-CTAGGTAATC AATTACTCGA GCAGCTGCAGAAGCTTGAATTCGATATCCA-3´;配列番号:127)にライゲーションしプラスミドpET-42S(+)を生じさせた。第二の工程では、プラスミドpET-42S(+)を制限酵素XhoI及びAvrIIにて消化して線状化し、相補的なアニールさせたオリゴヌクレオチド42T-1(5´-TCGAGCACCACCACCACCACCACGGTGGTT GCTAATAATAATTGATTAATAC-3´;配列番号:128)及び42T-2(5´-CTAGGTATTAATCAATTATTATTAGCAACCACCGTGGTGGTGGTGGTGGTGC-3´;配列番号:129)にライゲーションし、プラスミドpET-42T(+)を生じさせた。
上記の断片hIL-1β116−269をpET-42T(+)にクローニングしてプラスミドpET42T-hIL-1β116−269を生じさせた。このプラスミドは、成熟ヒトIL-1β及びHis-タグ及びC末端システイン含有リンカー(GGC、配列番号:178)に相当する融合タンパク質をコードする。ゆえに、融合タンパク質は、配列番号:165にC末端で融合させた配列番号:190からなる。ヒトIL-1βの位置117の元のアラニン残基をこの融合タンパク質ではイソロイシンに変更した。基本的には実施例1のマウスmIL1β119−269タンパク質についての記載のように、ヒトIL-1β116−269タンパク質の発現及び精製を行った。
【0131】
B.IL-1β116−269変異タンパク質のクローニング、発現及び精製
プラスミドpET42T-hIL-1β116−269の部位特異的突然変異誘発によって、10の異なる変異体ヒトIL-1β116−269融合タンパク質のための発現ベクターを構築した。この目的のために、Quik-Change(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を製造者の指示に従って用いた。変異体IL-1β119−269タンパク質の発現ベクターをその構築に用いたオリゴヌクレオチド対とともに表3に挙げる。実施例1に記載のように異なるヒトIL-1β116−269変異タンパク質の発現及び精製を行った。
【0132】
表3:IL-1変異タンパク質、発現ベクター及びこれらの構築に用いたオリゴヌクレオチドについての概説


【0133】
実施例11
ヒトIL-1β116−269とヒトIL-1β116−269変異タンパク質の生物学的な活性
1群につき3匹の雌C3H/HeJマウスに10μgの野生型ヒトIL-1β119−269タンパク質又は実施例10のヒトIL-1β119−269タンパク質変異体の1つのいずれかを静脈内投与する。血清試料を注射の前と3時間後に回収して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加について分析した。野生型ヒトIL-1β119−269タンパク質を投与したマウスは血清IL-6濃度の強い増加を示すのに対して、ヒトIL-1β119−269変異タンパク質のいずれかを投与したマウスはごくわずかな増加を示すか、全く増加を示さない。
【0134】
実施例12
A.Qβウイルス様粒子へのヒトIL-1β116−269及びヒトIL-1β116−269変異タンパク質のカップリング
Qβウイルス様粒子への野生型ヒトIL-1β119−269タンパク質及び実施例10のヒトIL-1β119−269変異タンパク質の化学的な架橋は基本的に実施例2Aに記載のように行った。
【0135】
B.QβキャプシドにカップリングさせたヒトIL-1β116−269及びヒトIL-1β116−269変異タンパク質によるマウスの免疫化
1群につき4匹の雌balb/cマウスを野生型hIL-1β116−269タンパク質又はhIL-1β116−269変異タンパク質のうちの1つのいずれかにカップリングさせたQβにて免疫化した。50μgの総タンパク質をPBSにて200μlに希釈し、第0、14及び28日目に皮下に接種した(100μlを2か所の腹部に)。第35日目にマウスの後眼窩から血液を採取し、抗原として用いたそれぞれのヒトIL-1β116−269変異タンパク質又は野生型ヒトIL-1β116−269タンパク質のいずれかに特異的なELISAを用いて血清を分析した。
【0136】
C.ELISA
ELISAプレートを1μg/ml濃度の野生型hIL-1β116−269タンパク質又はそれぞれのhIL-1β116−269変異タンパク質のいずれかにてコートした。プレートの反応を止めて、第35日目のマウス血清の段階希釈液とともにインキュベートした。結合した抗体を酵素的に標識した抗マウスIgG抗体にて検出した。マウス血清の抗体力価を、450nmで最大半量の吸光度が得られる希釈液の平均として算出し、表4に示す。
【0137】
表4:Qβ-hIL-1β116−269又はQβ-hIL-1β116−269変異タンパク質ワクチンによる免疫化によって生じる抗-hIL-1β116−269(野生型及び変異タンパク質)-特異的IgG力価

Qβ-hIL-1β116−269-免疫化によりhIL-1β116−269に対して高力価のIgG抗体が誘導された。さらに、いずれかのQβ-hIL-1β116−269変異タンパク質ワクチンによるワクチン接種により、抗原として用いたそれぞれのhIL-1β116−269変異タンパク質及び野生型hIL-1β116−269タンパク質の両方に対して高いIgG力価が誘導された。
【0138】
D.ヒトIL-1βのインビトロ中和
野生型hIL-1β116−269タンパク質又はhIL-1β116−269変異タンパク質のうちの1つのいずれかにカップリングさせたQβにて免疫化したマウスの血清を、マウスIL-1βタンパク質のレセプターへの結合を阻害する能力について試験した。したがって、ELISAプレートを1μg/ml濃度の組み換えヒトIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質にてコートし、上記の血清の段階希釈と100ng/mlのhIL-1β116−269タンパク質とともにインキュベートした。固定したヒトIL-1レセプターI-hFc融合タンパク質に対するhIL-1β116−269の結合をビオチン化抗ヒトIL-1β抗体と西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートストレプトアビジンにて検出した。Qβ-hIL-1β116−269変異タンパク質ワクチンに対して生じたすべての血清が、3.3%以上の血清濃度で100ng/mlの野生型hIL-1β116−269のhIL-1RIへの結合を完全に阻害した。
【0139】
E.IL-1βのインビボ中和
野生型hIL-1β116−269タンパク質又はhIL-1β116−269変異タンパク質のうちの1つのいずれかにカップリングさせたQβによる免疫化により生じた抗体のインビボ中和能を調べる。したがって、1群につき3匹の雌C3H/HeJマウスを、50μgのいずれかのワクチンにて第0、14及び28日目に3度免疫化する。第35日目に、すべての免疫化したマウスの静脈内に1μgのフリー野生型hIL-1β116−269を注射する。コントロールとして3匹のナイーブマウスに同量の野生型hIL-1β116−269を同時に投与する。注射したhIL-1β116−269の炎症性活性の読み取り値として、血清試料を注射の直前と3時間後に回収して、炎症誘発性サイトカインIL-6の濃度における相対的な増加について分析した。ナイーブマウスはhIL-1β116−269の投与の3時間後に血清IL-6濃度の強い増加を示すのに対して、野生型hIL-1β116−269タンパク質又はhIL-1β116−269変異タンパク質のうちの1つにカップリングさせたQβにて免疫化したすべてのマウスは血清IL-6の増加を全く示さない。このことから、投与したhIL-1β116−269はワクチンに誘導される抗体によって効果的に中和されることが示唆される。
【0140】
実施例13
Qβ-mIL-1β119−269による免疫化によるMSU-誘発性炎症の寛解
痛風は関節及び関節周囲組織での一ナトリウム尿酸塩(MSU)結晶の沈殿によって生じる痛みを伴う炎症性疾患である。MSU結晶はいわゆるNALP3インフラマソーム(inflammasome)を活性化してその結果、活性なIL-1βを産生することが示されており、このIL-1βが疾患に特徴的な炎症性応答を開始し、促す役割を主に担う。C57BL/6マウス(1群につき5匹)を、50μgのQβ-mIL-1β119−269又は50μgのQβ VLP単独を2週間の間隔で3回皮下投与して免疫化する。最後の免疫化の1週間後、1.5mgのMSU結晶にてすべてのマウスを腹腔内投与により抗原刺激する。抗原刺激の6時間後にマウスを屠殺し、腹膜浸出液中の好中球数並びに好中球化学誘引物質であるKC及びMIP-2の濃度を測定する。Qβ-mIL-1β119−269免疫化マウスは、Qβ免疫化コントロールと比較して、好中球及びMIP-2及びKC濃度の顕著な現象を示す。
【0141】
実施例14
Qβ-mIL-1β119−269による免疫化による実験的自己免疫性脳炎の寛解
多発性硬化症のマウスモデルにおいて、C57BL/6マウス(1群につき8匹)を、50μgのQβ-mIL-1β119−269又は50μgのQβ VLP単独を2週間の間隔で3回皮下投与して免疫化する。最後の免疫化の1週間後に、完全フロイトアジュバントと混合した100μgのMOGペプチド(MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK、配列番号:191)をすべてのマウスの皮下に投与する。同日及び2日後に、400ngの百日咳毒素をすべてのマウスの腹腔内に投与する。以下のスキーム:0、臨床的に疾患なし;0.5、尾部端の跛行;1、尾部の完全な跛行;1.5、尾部跛行及び後肢虚弱(後肢の不安定な歩調及び弱い握力);2、片側の部分的な後肢麻痺;2.5、左右相称の部分的な後肢麻痺;3、完全な左右相称の後肢麻痺;3.5、完全な左右相称の後肢麻痺及び片側前肢の麻痺;4、前後の四肢の総麻痺に従って、マウスの神経学的な症状の発達を毎日スコア付けする。Qβ-mIL-1β119−269免疫化マウスは、Qβ免疫化マウスと比較して明らかな臨床症状の減少を示す。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】Qβキャプシドタンパク質へのmIL-1β119−269タンパク質のカップリング。還元条件下で12%SDS-ポリアクリルアミドゲルにてタンパク質を分析した。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色した。マーカータンパク質の分子量は左端にkDaで示し、タンパク質バンドの同定を右端に示す。レーン1:予め染色したタンパク質マーカー(New England Biolabs)。レーン2:誘導体化されたQβキャプシドタンパク質。レーン3:フリーの還元mIL-1β119−269タンパク質。レーン4:Qβ-mIL-1β119−269カップリング反応。
【図2】Qβキャプシドタンパク質へのmIL-1α117−270タンパク質のカップリング。還元条件下で12%SDS-ポリアクリルアミドゲルにてタンパク質を分析した。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色した。マーカータンパク質の分子量は左端にkDaで示し、タンパク質バンドの同定を右端に示す。レーン1:予め染色したタンパク質マーカー(New England Biolabs)。レーン2:誘導体化されたQβキャプシドタンパク質。レーン3:フリーの還元mIL-1α117−270タンパク質。レーン4:Qβ-mIL-1α117−270カップリング反応。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するウイルス様粒子(VLP);と、
(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原
とを含んでなる組成物であり、このとき、該少なくとも1の抗原がIL-1分子であり、(a)と(b)が該少なくとも1の第一付着部位と少なくとも1の第二付着部位を介して結合するものである、組成物。
【請求項2】
前記IL-1分子が、
(a) IL-1タンパク質;
(b) IL-1成熟断片;
(c) IL-1断片
(d) IL-1ペプチド;及び、
(e) IL-1変異タンパク質
からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記IL-1分子がヒト由来のものである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記IL-1分子がIL-1β分子である、請求項1から3のいずれか一に記載の組成物。
【請求項5】
前記IL-1分子がIL-1α分子である、請求項1から3のいずれか一に記載の組成物。
【請求項6】
前記IL-1β分子が、
(a) IL-1βタンパク質;
(b) IL-1β成熟断片;
(c) IL-1β断片
(d) IL-1βペプチド;及び、
(e) IL-1β変異タンパク質
からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記IL-1α分子が、
(a) IL-1αタンパク質;
(b) IL-1α成熟断片;
(c) IL-1α断片
(d) IL-1αペプチド;及び、
(e) IL-1α変異タンパク質
からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記IL-1分子が、
(a) ヒトIL-1β(配列番号:49);
(b) 配列番号:50から配列番号:62のいずれか一;及び、
(c) 配列番号:49から配列番号:62のいずれか一に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1βタンパク質である、請求項1から4のいずれか一に記載の組成物。
【請求項9】
前記IL-1分子が、
(a) ヒトIL-1β117−269(配列番号:64);
(b) ヒトIL-1β116−269(配列番号:165);
(c) マウスIL-1β119−269s(配列番号:164);及び、
(d) 配列番号:64、配列番号:165及び配列番号:164のいずれか一に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1β成熟断片である、請求項1から4のいずれか一に記載の組成物。
【請求項10】
前記IL-1分子が、
(a) 配列番号:89から配列番号:116のいずれか一;及び、
(b) 配列番号:89から配列番号:116のいずれか一に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1βペプチドである、請求項1から4のいずれか一に記載の組成物。
【請求項11】
前記IL-1分子が、
(a) ヒトIL-1α(配列番号:36);
(b) 配列番号:37から配列番号:48のいずれか一;及び、
(c) 配列番号:36から配列番号:48のいずれか一に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1αタンパク質である、請求項1から3及び5のいずれか一に記載の組成物。
【請求項12】
前記IL-1分子が、
(a) ヒトIL-1α119−271(配列番号:63);
(b) マウスIL-1α117−270s(配列番号:163);及び、
(c) 配列番号:63又は配列番号:163に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1α成熟断片である、請求項1から3及び5のいずれか一に記載の組成物。
【請求項13】
前記IL-1分子が、
(a) 配列番号:67から配列番号:88のいずれか一;及び、
(b) 配列番号:67から配列番号:88のいずれか一に少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、又は最も好ましくは少なくとも99%の同一性があるアミノ酸配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、好ましくはそれからなるIL-1αペプチドである、請求項1から3及び5のいずれか一に記載の組成物。
【請求項14】
前記VLPが、RNAバクテリオファージの組み換えコートタンパク質、その変異タンパク質ないしは断片を含むか、あるいはそれからなる、請求項1から13のいずれか一に記載の組成物。
【請求項15】
前記VLPがRNAバクテリオファージのVLPである、請求項1から14のいずれか一に記載の組成物。
【請求項16】
前記RNAバクテリオファージがQβ及びAP205から選択されるRNAバクテリオファージである、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
前記第一付着部位が少なくとも1の共有結合により前記第二付着部位に結合し、このとき好ましくは該共有結合が非ペプチド結合である、請求項1から16のいずれか一に記載の組成物
【請求項18】
前記第一付着部位が、アミノ基、好ましくはリジンのアミノ基を含むか、好ましくはそのものである、請求項1から17のいずれか一に記載の組成物。
【請求項19】
前記第二付着部位がスルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むか、好ましくはそのものである、請求項1から18のいずれか一に記載の組成物。
【請求項20】
前記第一付着部位がスルフヒドリル基でない、請求項1から17のいずれか一に記載の組成物。
【請求項21】
前記VLPと前記少なくとも一の抗原の結合がジスルフィド結合を含まない、請求項1から17及び20のいずれか一に記載の組成物。
【請求項22】
前記第二付着部位のただ1つが、前記IL-1分子の前記コア粒子への単一及び均一なタイプの結合を生じさせる少なくとも1の非ペプチド共有結合を介して、前記第一付着部位に付随し、このとき該第一付着部位に付随する該ただ1つの第二付着部位がスルフヒドリル基であり、該IL-1分子と該コア粒子が該付随を介して相互作用して、規則正しく反復した抗原アレイを形成する、請求項1から19のいずれか一に記載の組成物。
【請求項23】
前記抗原がAP205のコートタンパク質、その変異タンパク質又はその断片のN-末端又はC-末端に融合する、請求項1から16のいずれか一に記載の組成物。
【請求項24】
さらにリンカーを含む、請求項1から22のいずれか一に記載の組成物。
【請求項25】
前記IL-1分子が配列番号:64又はこれに由来する変異タンパク質である、請求項1から24のいずれか一に記載の組成物。
【請求項26】
前記IL-1分子が配列番号:63又はこれに由来する変異タンパク質である、請求項1から24のいずれか一に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一に記載の組成物を含むか、あるいはこれからなるワクチン。
【請求項28】
前記ワクチンはアジュバントを欠いている、請求項27に記載のワクチン。
【請求項29】
請求項27又は28に記載のワクチンを動物又はヒトに投与することを含んでなる免疫化方法。
【請求項30】
(a) 請求項1から23のいずれか一に記載の組成物又は請求項27又は28に記載のワクチン;と、
(b) 受容可能な製薬的担体
とを含有してなる製薬的組成物。
【請求項31】
請求項1から26のいずれか一に記載の組成物又は請求項27又は28に記載のワクチンの産生方法であって、
(a) 少なくとも1の第一付着部位を有するVLPを供給すること;
(b) 少なくとも1の第二付着部位を有する少なくとも1の抗原を供給すること、このとき該抗原がIL-1分子、IL-1タンパク質、IL-1成熟断片、IL-1ペプチド又はIL-1変異タンパク質であること;そして、
(c) 該組成物又は該ワクチンを生産するために該VLPと該少なくとも1の抗原を結合させること、このとき該少なくとも1の抗原と該VLPが該少なくとも1の第一付着部位と該少なくとも1の第二付着部位を介して結合するものであること、
を含んでなる方法。
【請求項32】
動物、好ましくはヒトの疾患の治療のための医薬の製造における、請求項1から26のいずれか一に記載の組成物、請求項27又は28に記載のワクチン又は請求項30に記載の製薬的組成物の使用であって、該疾患が好ましくは
(a) 血管系疾患;
(b) 遺伝性IL-1依存性炎症性疾患;
(c) 慢性自己免疫性炎症性疾患;
(d) 骨及び軟骨変性疾患;
(e) アレルギー性疾患;及び、
(f) 神経学的疾患;
からなる群から選択されるものである、使用。
【請求項33】
前記疾患が血管系疾患であり、該血管系疾患がアテローム性動脈硬化である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記疾患が遺伝性IL-1依存性炎症性疾患であり、該遺伝性IL-1依存性炎症性疾患が家族性地中海熱(FMF)である、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記疾患が慢性自己免疫性炎症性疾患であり、該慢性自己免疫性炎症性疾患が全身性若年性特発性関節炎又は関節リウマチである、請求項32に記載の使用。
【請求項36】
前記疾患が骨及び軟骨変性疾患であり、該骨及び軟骨変性疾患が痛風又は骨関節炎である、請求項32に記載の使用。
【請求項37】
前記疾患が神経学的疾患であり、該神経学的疾患が多発性硬化症である、請求項32に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−510025(P2009−510025A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532788(P2008−532788)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066866
【国際公開番号】WO2007/039552
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(304042375)サイトス バイオテクノロジー アーゲー (26)
【Fターム(参考)】