説明

インドール誘導体及びそれを用いた有機薄膜太陽電池

【課題】光や酸素、熱に対して安定であり、有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)で表されるインドール誘導体。


(式中、Arは置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又は置換もしくは無置換のアルキル基であり、R〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、又は置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。R〜Rのうち隣接するものは、互いに結合して環を成してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール誘導体、正孔輸送材料、有機薄膜太陽電池材料及び有機薄膜太陽電池に関する。さらに詳しくは、有機薄膜太陽電池材料として用いることで、特に高効率な光電変換特性が得られるインドール誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池は、光信号を電気信号に変換するフォトダイオードや撮像素子、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池に代表されるように、光入力に対して電気出力を示す装置であり、電気入力に対して光出力を示すエレクトロルミネッセンス(EL)素子とは逆の応答を示す装置である。中でも太陽電池は、化石燃料の枯渇問題や地球温暖化問題を背景に、クリーンエネルギー源として近年大変注目されてきており、研究開発が盛んに行なわれるようになってきた。従来、実用化されてきたのは、単結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi等に代表されるシリコン系太陽電池であるが、高価であることや原料Siの不足問題等が表面化するにつれて、次世代太陽電池への要求が高まりつつある。このような背景の中で、有機太陽電池は、安価で毒性が低く、原材料不足の懸念もないことから、シリコン系太陽電池に次ぐ次世代の太陽電池として大変注目を集めている。
【0003】
有機太陽電池は、基本的には電子を輸送するn層と正孔を輸送するp層からなっており、各層を構成する材料によって大きく2種類に分類される。
n層としてチタニア等の無機半導体表面にルテニウム色素等の増感色素を単分子吸着させ、p層として電解質溶液を用いたものは、色素増感太陽電池(所謂グレッツエルセル)と呼ばれ、変換効率の高さから、1991年以降精力的に研究されてきたが、溶液を用いるため、長時間の使用に際して液漏れする等の欠点を有していた。そこでこのような欠点を克服するため、電解質溶液を固体化して全固体型の色素増感太陽電池を模索する研究も最近なされているが、多孔質チタニアの細孔に有機物をしみ込ませる技術は難易度が高く、再現性よく高変換効率が発現できるセルは完成していないのが現状である。
【0004】
一方、n層、p層ともに有機薄膜からなる有機薄膜太陽電池は、全固体型のため液漏れ等の欠点がなく、作製が容易であり、稀少金属であるルテニウム等を用いないこと等から最近注目を集め、精力的に研究がなされている。
【0005】
有機薄膜太陽電池は、最初メロシアニン色素等を用いた単層膜で研究が進められてきたが、その後、p層/n層の多層膜にすることで変換効率が向上することが見出され、それ以降多層膜が主流になってきている。このとき用いられた材料はp層として銅フタロシアニン(CuPc)、n層としてペリレンイミド類(PTCBI)であった。
その後、p層とn層の間にi層(p材料とn材料の混合層)を挿入して積層を増やすことにより、変換効率が向上することが見出された。しかしこのとき用いられた材料は、依然としてフタロシアニン類とペリレンイミド類であった。
また、p/i/n層を何層も積層するというスタックセル構成によりさらに変換効率が向上することが見出されたが、このときの材料系はフタロシアニン類とC60であった。
【0006】
一方、高分子を用いた有機薄膜太陽電池では、p材料として導電性高分子を用い、n材料としてC60誘導体を用いてそれらを混合し、熱処理することによりミクロ層分離を誘起してヘテロ界面を増やし、変換効率を向上させるという、所謂バルクヘテロ構造の研究が主に行なわれてきた。ここで用いられてきた材料系はおもに、p材料としてP3HTと呼ばれる可溶性ポリチオフェン誘導体、n材料としてPCBMと呼ばれる可溶性C60誘導体であった。
【0007】
このように、有機薄膜太陽電池では、セル構成及びモルフォロジーの最適化により変換効率の向上がもたらされてきたが、そこで用いられる材料系は初期の頃からあまり進展がなく、依然としてフタロシアニン類、ペリレンイミド類、C60類が用いられてきた。従って、それらに代わる新たな材料系の開発が熱望されてきた。特に、実用上のために、それらの材料は高い変換効率を示すとともに、より溶解性が良く、かつ光や酸素、熱に対して安定な材料が望まれている。
【0008】
一般に有機太陽電池の動作過程は、(1)光吸収及び励起子生成、(2)励起子拡散、(3)電荷分離、(4)キャリア移動、(5)起電力発生の素過程からなっている。有機物は概して太陽光スペクトルに合致する吸収特性を示すものが少なく、キャリア移動度も低いものが多いため、高い変換効率は達成できないことが多かった。
有機薄膜太陽電池に使用できる有機化合物について、例えば、特許文献1又は2にはアントラセン骨格を、さらに直線状に縮環させた構造を有する化合物が提案されている。このポリアセン類は、π電子共役系を直線状に拡大して、分子量を抑えながら光の吸収を可視光領域に長波長化するのに有効な構造である。しかしながら、一般にポリアセン類は光や酸素に対して安定性に欠けるため、精製や取り扱いが困難であり、高純度化が困難である。従って、実用的な光電変換素子材料とは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−34764号公報
【特許文献2】特開2007−335760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、光や酸素、熱に対して安定であり、有機薄膜太陽電池に用いたときに高効率の光電変換特性を示す有機化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下のインドール誘導体等が提供される。
1.下記式(1)で表されるインドール誘導体。
【化1】

(式中、ArはC〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基であり、
〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
〜Rのうち隣接するものは、互いに結合して環を成してもよい。)
2.前記Arが、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基である1に記載のインドール誘導体。
3.前記Arが、下記式(2)で表わされる基である1に記載のインドール誘導体。
【化2】

(式中、ArはC〜C40のアリール基であり、R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基である。)
4.前記Arが、下記式(3)で表わされる基である1に記載のインドール誘導体。
【化3】

(式中、R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基である。)
5.上記1〜4のいずれかに記載のインドール誘導体を含有する正孔輸送材料。
6.上記1〜4のいずれかに記載のインドール誘導体を含有する有機薄膜太陽電池用材料。
7.上記5に記載の正孔輸送材料又は6に記載の有機薄膜太陽電池用材料からなるp層を有する有機薄膜太陽電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光等に対して安定であり、有機薄膜太陽電池として用いたときに高効率の光電変換特性を示す新規な有機化合物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインドール誘導体(以下、本発明の化合物ということがある。)は下記式(1)で表わされる構造を有する。
【化4】

【0014】
式(1)の化合物は、ポリアセン類に比べπ電子共役系を一部非直線状に拡大しているため、化合物の安定性を確保することができる。従って、光等に対して安定であり、有機薄膜太陽電池等の製造環境に対応できる。
また、ヘテロ原子を導入することにより、正孔輸送性が向上し、高い変換効率を得ることができる。
【0015】
式(1)において、ArはC〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基である。
尚、Cx〜Cyは、Arの基本骨格の炭素数がx〜yであることを意味する。後述するR〜Rについても同様である。
〜C40の置換もしくは無置換のアリール基としては、フェニル、2−トリル、4−トリル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ターフェニリル、3,5−ジフェニルフェニル、3,4−ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリル、2−アントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニル等が挙げられる。
尚、置換基を有するアリール基は、上記の例示に限定されず、例えば、後述するR〜Rと同様な基を置換基として有するアリール基でもよい。
【0016】
〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、テトラゾール、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール等が好ましい。尚、含窒素アゾール系へテロ環の場合、結合位置は、炭素だけでなく窒素で結合してもよい。
置換基を有するヘテロアリール基は、上記の例示に限定されず、例えば、後述するR〜Rと同様な基を置換基として有するヘテロアリール基でもよい。
【0017】
〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。具体例としては、1−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、3,7−ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ノルボルニル等が挙げられる。これらのうち、1−ブチル、ヘキシルが好ましい。
【0018】
本発明において、Arは、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基であることが好ましく、特に、Arが、下記式(2)で表わされる基であることが好ましい。
【化5】

【0019】
式中、ArはC〜C40のアリール基であり、具体例は上述したArと同様である。R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基であり、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、1−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル等が挙げられる。
【0020】
下記式(2)で表わされる基のなかでも、下記式(3)で表わされる基であることが好ましい。
【化6】

式中、R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基である。Arが式(3)の基である場合に、特に高い変換効率を得ることができる。
【0021】
式(1)において、R〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。尚、R〜Rのうち隣接するものは、互いに結合して環を成してもよい。
【0022】
式(1)のR〜Rについて、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。具体例としては、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、2−エチルヘキシル、3,7−ジメチルオクチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ノルボルニル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ベンジル、α,α−ジメチルベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル等が好ましい。
【0023】
〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、オレイル、エイコサペンタエニル、ドコサヘキサエニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル、1,2,2−トリフェニルビニル、2−フェニル−2−プロペニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ビニル、スチリル、2,2−ジフェニルビニル等が好ましい。
【0024】
〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、エテニル、プロピニル、2−フェニルエテニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、エテニル、2−フェニルエテニル等が好ましい。
【0025】
〜C40の置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては、フェニル、2−トリル、4−トリル、4−トリフルオロメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ターフェニリル、3,5−ジフェニルフェニル、3,4−ジフェニルフェニル、ペンタフェニルフェニル、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル、フルオレニル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントリル、2−アントリル、9−フェナントリル、1−ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、コロニル等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェニル、4−ビフェニリル、1−ナフチル、2−ナフチル、9−フェナントリル等が好ましい。
【0026】
〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基について、含窒素アゾール系へテロ環の場合の結合位置は、炭素だけでなく窒素で結合することができる。それらの具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、ベンズピラゾール、トリアゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、トリアジン、キノリン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フラン、チオフェン、ピリジン、カルバゾール等が好ましい。
【0027】
〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ(アルコキシ)基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、メトキシ、エトキシ、1−プロピルオキシ、2−プロピルオキシ、1−ブチルオキシ、2−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、3,7−ジメチルオクチルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、1−アダマンチルオキシ、2−アダマンチルオキシ、ノルボルニルオキシ、トリフルオロメトキシ、ベンジロキシ、α,α−ジメチルベンジロキシ、2−フェニルエトキシ、1−フェニルエトキシ等が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、メトキシ、エトキシ、tert−ブチルオキシ等が好ましい。
【0028】
〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよく、それらの具体例としては、前記アリール基が酸素を介して結合した置換基が挙げられる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、フェノキシ、ナフトキシ、フェナントリルオキシ等が好ましい。
【0029】
〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基は、アミノ基に結合する置換基のうち少なくともひとつがアリール基であればよく、具体的には、フェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジp−トリルアミノ、ジm−トリルアミノ、フェニルm−トリルアミノ、フェニル−1−ナフチルアミノ、フェニル−2−ナフチルアミノ、フェニル(sec−ブチルフェニル)アミノ、フェニルt−ブチルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ、フェニル−4−カルバゾリルフェニルアミノ等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ等が好ましい。
【0030】
〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基は、アミノ基に結合するアルキル基は同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。具体的には、メチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジエチルアミノ、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ、ビス(2−メトキシエチル)アミノ、ピペリジノ、モルホリノ等を挙げることができる。これらのうち、原料の入手しやすさ等の観点から、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピペリジノ等が好ましい。
本発明のインドール誘導体の具体例を以下に示す。
【0031】
【化7】

【化8】

【0032】
本発明のインドール誘導体は、例えば以下の合成経路で合成することができる。
【化9】

【0033】
工程1では、有機金属触媒を用いて中間体Aを合成する工程であり、その際に用いる反応としては鈴木−宮浦カップリング、Stilleカップリング、Ullmannカップリング、根岸カップリング、檜山カップリング等が挙げられる。このうち、良好な収率を与えることから、鈴木−宮浦カップリング反応が好ましい。
工程2では、還元剤を用いてインドール骨格を構築し中間体Bを合成する工程であり、その際に用いる反応としてはCadogan反応等が挙げられる。
工程3では、インドール骨格上の窒素原子にアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を連結し、最終体Cを合成する工程であり、上記のカップリング反応を用いることができる。このうち、良好な収率を与えることからUllmannカップリング反応が好ましい。
【0034】
本発明のインドール誘導体は、エレクトロニクス分野で使用する正孔輸送材料に用いることができる。例えば、有機薄膜太陽電池の構成材料、有機エレクトロルミネセンス素子、有機トランジスタ(OFET)の材料等として利用できる。特に、有機薄膜太陽電池材料として好適である。
本発明の化合物を、正孔輸送材料や有機薄膜太陽電池材料として使用する場合、本発明の化合物単独で使用してもよいし、本発明の化合物に他の成分、例えば、後述する有機化合物層で使用する材料を混合して使用してもよい。
以下、本発明のインドール誘導体の使用例として、有機薄膜太陽電池について説明する。
【0035】
本発明の有機薄膜太陽電池のセル構造は、一対の電極の間に上記化合物を含有する構造であれば特に限定されるものでない。具体的には、安定な絶縁性基板上に下記の構成を有する構造が挙げられる。
(1)下部電極/有機化合物層/上部電極
(2)下部電極/p層/n層/上部電極
(3)下部電極/p層/i層(又はp材料とn材料の混合層)/n層/上部電極
(4)下部電極/p材料とn材料の混合層/上部電極
及び上記(2)、(3)の構成のp層とn層を置換した構造が挙げられる。
また、必要に応じて、電極と有機層の間にバッファー層を設けてもよい。例えば具体例として、上記構成(1)にバッファー層を設けた場合、下記構成を有する構造が挙げられる。
(5)下部電極/バッファー層/p層/n層/上部電極
(6)下部電極/p層/n層/バッファー層/上部電極
(7)下部電極/バッファー層/p層/n層/バッファー層/上部電極
【0036】
本発明の有機薄膜太陽電池用材料は、例えば、有機化合物層、p層、n層、i層、p材料とn材料の混合層、バッファー層に使用できる。特に、p層に使用することが好ましい。
【0037】
以下、各構成部材について簡単に説明する。
【0038】
1.下部電極、上部電極
下部電極、上部電極の材料は特に制限はなく、公知の導電性材料を使用できる。例えば、p層と接続する電極としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)や金(Au)、オスミウム(Os),パラジウム(Pd)等の金属が使用でき、n層と接続する電極としては、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、インジウム(In),カルシウム(Ca),白金(Pt)リチウム(Li)等の金属やMg:Ag、Mg:InやAl:Li等の二成分金属系,さらには上記P層と接続する電極例示材料が使用できる。
【0039】
尚、高効率の光電変換特性を得るためには、例えば有機薄膜太陽電池が太陽電池の場合、太陽電池の少なくとも一方の面は太陽光スペクトルにおいて充分透明にすることが望ましい。透明電極は、公知の導電性材料を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で所定の透光性が確保するように形成する。受光面の電極の光透過率は10%以上とすることが望ましい。一対の電極構成の好ましい構成では、電極部の一方が仕事関数の大きな金属を含み、他方は仕事関数の小さな金属を含む。
【0040】
2.有機化合物層
p層、p材料とn材料の混合層又はn層のいずれかである。本発明の材料を有機化合物層に使用するとき、具体的には、下部電極/本発明の材料の単独層/上部電極や、下部電極/本発明の材料と、後述するn層材料又はp層材料の混合層/上部電極等の構成が挙げられる。
【0041】
3.n層、p層、i層
n層は特に限定されないが、電子受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、C60等のフラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、ペリレン誘導体、多環キノン、キナクリドン等、高分子系ではCN−ポリ(フェニレン−ビニレン)、MEH−CN−PPV、−CN基又はCF基含有ポリマー、それらの−CF置換ポリマー、ポリ(フルオレン)誘導体等を挙げることができる。電子の移動度が高い材料が好ましい。さらに、好ましくは、電子親和力が小さい材料が好ましい。このように電子親和力の小さい材料をn層として組み合わせることで充分な開放端電圧を実現することができる。
【0042】
また、無機化合物であれば、n型特性の無機半導体化合物を挙げることができる。具体的には、n−Si、GaAs、CdS、PbS、CdSe、InP、Nb,WO,Fe等のドーピング半導体及び化合物半導体、また、二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)等の酸化チタン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等の導電性酸化物が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、酸化チタン、特に好ましくは、二酸化チタンを用いる。
【0043】
本発明の有機薄膜太陽電池では、p層として上述した本発明の有機薄膜太陽電池用材料からなる層を使用する。本発明のインドール誘導体と混合等して使用する材料としては、正孔受容体としての機能を有する化合物が好ましい。例えば有機化合物であれば、N,N’−ビス(3−トリル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(mTPD)、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’−トリス(フェニル−3−トリルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)等に代表されるアミン化合物、フタロシアニン(Pc)、銅フタロシアニン(CuPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、チタニルフタロシアニン(TiOPc)等のフタロシアニン類、オクタエチルポルフィリン(OEP)、白金オクタエチルポルフィリン(PtOEP)、亜鉛テトラフェニルポルフィリン(ZnTPP)等に代表されるポルフィリン類、高分子化合物であれば、ポリヘキシルチオフェン(P3HT)、メトキシエチルヘキシロキシフェニレンビニレン(MEHPPV)等の主鎖型共役高分子類、ポリビニルカルバゾール等に代表される側鎖型高分子類等が挙げられる。
【0044】
i層は、上記p層化合物もしくはn層化合物と混合して形成してもよい。本発明の材料を単独でi層として用いることもできる。その場合のp層もしくはn層は、上記例示化合物のいずれも用いることができる。
【0045】
4.バッファー層
一般に、有機薄膜太陽電池は総膜厚が薄いことが多く、そのため上部電極と下部電極が短絡し、セル作製の歩留まりが低下することが多い。このような場合には、バッファー層を積層することによってこれを防止することが好ましい。
バッファー層に好ましい化合物としては、膜厚を厚くしても短絡電流が低下しないようにキャリア移動度が充分に高い化合物が好ましい。例えば、低分子化合物であれば下記に示すNTCDAに代表される芳香族環状酸無水物等が挙げられ、高分子化合物であればポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、ポリアニリン:カンファースルホン酸(PANI:CSA)等に代表される公知の導電性高分子等が挙げられる。
【化10】

【0046】
また、バッファー層には、励起子が電極まで拡散して失活してしまうのを防止する役割を持たせることも可能である。このように励起子阻止層としてバッファー層を挿入することは、高効率化のために有効である。励起子阻止層は陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。この場合、励起子阻止層として好ましい材料としては、例えば有機EL用途で公知な正孔障壁層用材料又は電子障壁層用材料等が挙げられる。正孔障壁層として好ましい材料は、イオン化ポテンシャルが充分に大きい化合物であり、電子障壁層として好ましい材料は、電子親和力が充分に小さい化合物である。具体的には有機EL用途で公知な材料であるバソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)等が陰極側の正孔障壁層材料として挙げられる。
【化11】

【0047】
さらに、バッファー層には、上記n層材料として例示した無機半導体化合物を用いてもよい。また、p型無機半導体化合物としてはCdTe、p−Si、SiC、GaAs、WO等を用いることができる。
【0048】
5.基板
基板は、機械的、熱的強度を有し、透明性を有するものが好ましい。例えば、ガラス基板及び透明性樹脂フィルムがある。透明性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0049】
本発明の有機薄膜太陽電池の各層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やスピンコーティング、ディップコート、キャスティング、ロールコート、フローコーティング、インクジェット等の湿式成膜法を適用することができる。
【0050】
各層の膜厚は特に限定されないが、適切な膜厚に設定する。一般に有機薄膜の励起子拡散長は短いことが知られているため、膜厚が厚すぎると励起子がヘテロ界面に到達する前に失活してしまうため光電変換効率が低くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生してしまうため、充分なダイオード特性が得られないため、変換効率が低下する。通常の膜厚は1nmから10μmの範囲が適しているが、5nmから0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0051】
乾式成膜法の場合、公知の抵抗加熱法が好ましく、混合層の形成には、例えば、複数の蒸発源からの同時蒸着による成膜方法が好ましい。さらに好ましくは、成膜時に基板温度を制御する。
【0052】
湿式成膜法の場合、各層を形成する材料を、適切な溶媒に溶解又は分散させて発光性有機溶液を調製し、薄膜を形成するが、任意の溶媒を使用できる。例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン系炭化水素系溶媒や、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、メタノールやエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘキサン、オクタン、デカン、テトラリン等の炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶媒等が挙げられる。なかでも、炭化水素系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましい。また、これらの溶媒は単独で使用しても複数混合して用いてもよい。尚、使用可能な溶媒は、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明においては、有機薄膜太陽電池のいずれの有機薄膜層においても、成膜性向上、膜のピンホール防止等のため適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。使用の可能な樹脂としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、セルロース等の絶縁性樹脂及びそれらの共重合体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等の光導電性樹脂、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂を挙げられる。
また、添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
[インドール誘導体の合成]
下記の反応経路により、本発明のインドール誘導体である化合物A(実施例1)及び化合物B(実施例2)を合成した。
【化12】

【0055】
実施例1
(1)中間体A1の合成
300mL四つ口ナス型フラスコにo−ニトロブロモベンゼン(3.7g,18mmol,)、ベンゾ[b]チオフェン−2−イルボロン酸(5.2g,29mmol,1.6eq)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(0.6g,0.52mmol,3mol%)を秤り取り、系内をアルゴン置換した後、ジメチルエーテル(DME、200mL)に溶解させた。2M炭酸ナトリウム水溶液(45mL,90mmol,3.0eq)を加え、反応溶液を6時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を濾過し、有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、中間体A1(6.9g,92%)を得た。
【0056】
得られた中間体A1の薄層クロマトグラフィー(TLC)におけるRf(rate of flow)値は、0.40(ヘキサン:CHCl=1:1)であった。
【0057】
得られた化合物の核磁気共鳴測定(H−NMR)の結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl
δ:8.01−7.77(m,3H),7.74−7.69(m,2H),7.56−7.51(m,2H),7.41(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),7.35(dd,J=7.6,1.6Hz,1H)
【0058】
(2)中間体A2の合成
300mL四つ口ナス型フラスコに中間体A1(6.9g,27mmol)を秤り取り、系内をアルゴン置換した。亜燐酸トリエチル(140mL)を加え、22時間加熱還流した。反応終了後、減圧蒸留により亜燐酸トリエチルを留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル150g,ヘキサン:CHCl=9:1]により精製し、中間体A2(3.3g,55%)を得た。
・Rf=0.20(ヘキサン:CHCl=1:1)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ:8.57(br s,1H),8.16(s,1H),7.90(d,J=8.0Hz,1H),7.86(d,J=8.0Hz,1H),7.78(d,J=7.6Hz,1H),7.53(d,J=8.0Hz,2H),7.44(t,J=8.0Hz,1H),7.37−7.28(m,2H)
【0059】
(3)化合物Aの合成
300mL四つ口ナス型フラスコに中間体A2(1.0g,4.6mmol,)、ヨウ化銅(I)(0.26g,1.4mmol,0.3eq)、リン酸三カリウム(3.0g,14mmol,3.1eq)を秤り取り、系内をアルゴン置換した。1,4−ジオキサン(50mL)を加えた後、ヨードベンゼン(0.90mL,8.1mL,1.8eq)、(±)−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(0.55mL,4.6mmol,1.0eq)を加え、反応溶液を10時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液を濾過し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル100g,ヘキサン:CHCl=9:1]により精製し、化合物A(1.0g,72%)を白色粉末として得た。
・Rf=0.60(ヘキサン:CHCl=1:1)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ:7.89(d,J=9.2Hz,1H),7.82(d,J=6.8Hz,1H),7.84−7.75(m,1H),7.64−7.56(m,6H),7.38−7.34(m,1H),7.32−7.24(m,2H),7.25(d,J=0.8Hz,1H)
【0060】
この粉末の電解離脱質量分析(FDMS)、及び液体クロマトグラフィ(HPLC)による純度の測定結果を以下に示す。
・FDMS:計算値C2215N=299,実測値m/z=299(M,100)
・HPLC:99.9%(UV254,面積%)
【0061】
得られた粉末(1.0g)を160℃、1.1×10−4Paで昇華精製することにより白色アモルファス固体(0.7g)を得た。
・HPLC:99.9%(UV254,面積%)
尚、化合物Aのテトラヒドロフラン溶液を光照射下40分間放置して再測定した。その結果、HPLC純度に変化は見られなかった。
【0062】
実施例2
(1)化合物Bの合成
300mL四つ口ナス型フラスコに、実施例1(2)で合成した中間体A2(0.99g,4.4mmol,)、ヨウ化銅(I)(0.26g,1.4mmol,0.3eq)、リン酸三カリウム(2.8g,13mmol,3.0eq)を秤り取り、系内をアルゴン置換した。1,4−ジオキサン(50mL)を加えた後、2−ブロモアントラセン(1.1g,4.4mmol,1.0eq)、(±)−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(0.55mL,4.6mmol,1.0eq)を加え、反応溶液を一晩加熱還流した。
ヨウ化銅(I)(0.26g,1.4mmol,0.3eq)、リン酸三カリウム(2.8g,13mmol,3.0eq)、(±)−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(0.55mL,4.6mmol,1.0eq)をさらに加え、3日間加熱還流した。
反応終了後、反応溶液を濾過し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー[シリカゲル100g,ヘキサン:CHCl=9:1]により精製し、化合物B(0.9g,51%)を黄色粉末として得た。
・Rf=0.70(ヘキサン:CHCl=1:1)
H−NMR(400MHz,CDCl
δ:8.61(s,1H),8.53(s,1H),8.26(d,J=8.8Hz,1H),8.25(s,1H),8.12−8.09(m,1H),8.07−8.05(m,1H),7.92(d,J=8.0Hz,1H),7.88−7.86(m,1H),7.66(d,J=11.2Hz,1H),7.56−7.54(m,2H),7.53−7.50(m,1H),7.37(d,J=8.0Hz,1H),7.32−7.29(m,2H),7.27−7.24(m,1H),7.15(t,J=6.8Hz,1H)
・FDMS:計算値C3019N=401,実測値m/z=401(M,100)
・HPLC:99.4%(UV254,面積%)
【0063】
上で得られた粉末(0.9g)を250℃、1.5×10−3Paで昇華精製することにより白色アモルファス固体(0.5g)を得た。
・HPLC:99.6%(UV254,面積%)
尚、化合物Bのテトラヒドロフラン溶液を光照射下40分間放置して再測定した。その結果、HPLC純度に変化は見られなかった。
【0064】
[有機薄膜太陽電池の作製]
実施例3
25mm×75mm×0.7mm厚のITO透明電極付きガラス基板をイソプロピルアルコール中で超音波洗浄を5分間行なった後、UVオゾン洗浄を30分間実施した。洗浄後の透明電極ライン付きガラス基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに装着し、まず下部電極である透明電極ラインが形成されている側の面上に、透明電極を覆うようにして膜厚30nmの化合物Aを抵抗加熱蒸着により、1Å/sで成膜した。続けて、この化合物A膜上に膜厚60nmのC60を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜し、その上に10nmのバソクプロイン(BCP)を抵抗加熱蒸着により1Å/sで成膜した。最後に、連続して対向電極として金属Alを膜厚80nm蒸着させ、有機薄膜太陽電池を作製した。面積は0.5cmであった。
【0065】
作製した有機薄膜太陽電池をAM1.5条件下(光強度100mW/cm)でI−V特性を測定した。その結果、開放端電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、曲線因子(FF)、変換効率(η)を表1に示す。
【0066】
【化13】

【0067】
尚、光電変換効率(η)は下記式によって導出した。
【数1】

ここで、Vocは開放端電圧、Jscは短絡電流密度、FFは曲線因子、Pinは入射光エネルギーである。同じPinに対して、Voc、Jsc及びFFがいずれも大きな化合物ほど優れた変換効率を示す。
【0068】
実施例4
実施例3の化合物Aを化合物Bへ変更した以外は実施例1と同様に有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0069】
比較例1
実施例3の化合物Aを下記に示すmTPDへ変更した以外は実施例1と同様に有機薄膜太陽電池を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【化14】

【表1】

【0070】
表1からわかるように、本発明化合物は比較例化合物に比べ変換効率が向上しており、優れた太陽電池特性を示すことが明らかになった。
【0071】
比較例2
特許文献1(特開2007−335760号公報)に開示された下記化合物(TES−ADT)を、非特許文献(Organic Letters,6巻,3325頁(2004))に記載の方法により合成した。
【化15】

【0072】
合成直後のHPLC純度は98.0%(UV254,面積%)であったが、そのテトラヒドロフラン溶液を光照射下40分間放置して再測定したところ、HPLC純度は58.0%(UV254,面積%)と著しく低下していた。
この結果から、(TES−ADT)は、安定性が低く、実用に耐えうる有機薄膜太陽電池用材料とはなりえないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のインドール誘導体は、エレクトロニクス分野で使用する正孔輸送材料、例えば、有機薄膜太陽電池の構成材料、有機エレクトロルミネセンス素子、有機トランジスタ(OFET)の材料等として利用できる。特に、有機薄膜太陽電池材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるインドール誘導体。
【化16】

(式中、ArはC〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基であり、
〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルケニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキニル基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基、C〜C40の置換もしくは無置換のアルキルオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、C〜C40の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、又はC〜C40の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基である。
〜Rのうち隣接するものは、互いに結合して環を成してもよい。)
【請求項2】
前記Arが、C〜C40の置換もしくは無置換のアリール基である請求項1に記載のインドール誘導体。
【請求項3】
前記Arが、下記式(2)で表わされる基である請求項1に記載のインドール誘導体。
【化17】

(式中、ArはC〜C40のアリール基であり、R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基である。)
【請求項4】
前記Arが、下記式(3)で表わされる基である請求項1に記載のインドール誘導体。
【化18】

(式中、R11は水素原子又はC〜C40の直鎖状アルキル基である。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のインドール誘導体を含有する正孔輸送材料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のインドール誘導体を含有する有機薄膜太陽電池用材料。
【請求項7】
請求項5に記載の正孔輸送材料又は請求項6に記載の有機薄膜太陽電池用材料からなるp層を有する有機薄膜太陽電池。

【公開番号】特開2010−270084(P2010−270084A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125215(P2009−125215)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】