説明

インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプと反応することができるモノクローナル抗体

インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに結合することができる特性を有する、インフルエンザA型ウイルスに対するモノクローナル抗体を記載している。1つの好ましい態様は、インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに対する中和活性を示す、Fab28として表される抗体である。本発明のモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体、本発明のモノクローナル抗体を含む免疫原性またはワクチン組成物ならびに本発明のモノクローナル抗体の治療、予防および診断適用も記載されている。本発明のモノクローナル抗体は、また、ワクチンとして使用される抗体製剤を試験するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、免疫学の分野に分類される。より具体的には、本発明はインフルエンザA型ウイルスのHA(血球凝集素)抗原に対するモノクローナル抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
毎年のインフルエンザウイルスの流行は、世界中での罹患率および死亡率の重要な原因を示す。アメリカ合衆国において、200,000人を越える人々が、毎年インフルエンザウイルスに関連する症候群のために入院し、約40,000人が大体それに直接関連して死ぬと概算されている(Thompson et al., JAMA, 2003, 289:179-186)。これらの数だけでなく、我々は、また、仕事日数の喪失による不可避の経済的な影響を有する、たいてい長期間にわたって家で滞在する感染した対象の指数関数的に多い数の場合を考慮すべきである。最近の研究では(Molinari et al., Vaccine, 2007, 25: 5086-5096)、流行に直接関連する医療費は毎年104億USドルであり、欠勤による収入の損失のため163億USドルが加えられるべきであると概算された。計算において、他の項目、例えば、感染された対象の死に関連する経済的損失の貨幣も考慮するとき、総額は信じられない額の871億USドルに達する。ヒトに対する新型インフルエンザウイルスの出現によって近い将来、今すぐにも起こり得る非常に恐ろしい大流行と共に、毎年の流行と関連するこれらの経済的なデータは、これらのウイルスの拡大の有効な戦略の探求において、考慮すべき関心事であることを説明する。
【0003】
最近、いくつかの方法において毎年のインフルエンザ流行の直面に対して利用できる唯一の手段は、恐らく次のインフルエンザシーズンの流行に関与するであろうウイルス分離株抗原を含む不活性化された三価ワクチンである。いくつかの指標地理的地域において早期に単離されたものと関連する疫学的データに基づくこの種の予測は、いつも正しいものは判明しない。したがって、毎年、特定のインフルエンザシーズンのために開発された三価ワクチンが実質的には効果的ではないと証明され得ることは、無視できない危険性である。
【0004】
その場合、ならびに新しい大流行の場合、利用できる唯一の予防/治療の助けは、抗ウイルス剤の2つの利用できるクラス:M2タンパク質阻害剤(アマンタジンおよびリマンタジン)およびノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビルおよびザナミビル)に頼ることであろう。しかしながら、この状況においても、非常に早期の感染の段階における抗ウイルスの投与、およびすでに発生しているが、耐性ウイルス分離株の迅速な外観の必要性の両方に関する、一連の問題が予期され得る。
【0005】
別の有効な戦略は、重要なウイルスタンパク質に対する中和抗体製剤に基づくものであり、インフルエンザウイルスの異なる分離株中で共有しているかかるタンパク質の一部を認識することができるものである。
【0006】
抗体の受動投与に基づく手段の可能性をさらに理解するために、簡単にインフルエンザウイルスの主な構造的特徴について述べることが有効である。インフルエンザウイルスはオルトミクソ・ウイルス科に属し、突起としても称される約500のスパイクが存在する感染細胞膜由来のエンベロープの存在により特徴付けられる。このような突起は、2つの重要なウイルス表面タンパク:血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)由来のトリマーおよびテトラマーからなる。内在性膜タンパク質(M2)は、また、エンベロープ表面において見られ、このタンパク質は血球凝集素およびノイラミニダーゼと比較してかなり少ない数で存在し、また、テトラマーで組織化されている。
【0007】
さらに、インフルエンザウイルスは、核内における8つの一本鎖RNAフラグメントを含む分節ゲノムの存在により特徴付けられる。ビリオン(NPおよびM1)内のいくつかのタンパク質の特性に基づいて、3つのインフルエンザウイルス型:A型、B型およびC型を認識することができる。
【0008】
A型およびB型ウイルスは毎年の流行に関与している。代わりに、C型ウイルスは比較的軽度の症候群に関与している。
【0009】
A型ウイルス(大流行に関与し、毎年の流行中でさえ最も重度の症候群を引き起こすことができる唯一のもの)とは、異なるサブタイプも血球凝集素およびノイラミニダーゼの抗原特性に基づいて認識することができる。最近、ヒトに影響を与えたサブタイプは、サブタイプH1N1およびH3N2(現在でもなお広まっており、ワクチン製剤に含まれる)、ならびに、1968年からもはや広まっておらず、1957年のいわゆる“アジア”かぜに関与していたサブタイプH2N2である。他のサブタイプは、ヒトに散発的に影響を与えてきたが(H9N2、H7N7および非常に恐ろしい最近のH5N1サブタイプ)、それらは効果的に広がり、そして広まっているサブタイプに置き換わることに成功していない。
【0010】
表面タンパク質の役割はウイルス複製サイクルに必須である。特に、血球凝集素はウイルスがいくつかの細胞の表面に存在するシアル酸を認識し、細胞に感染することができるタンパク質である。代わりに、ノイラミニダーゼは、ウイルス複製サイクルの最後、すなわち感染細胞からの新しいウイルス粒子の解放中に作用する。その機能は、ビリオンを生産した細胞の表面に存在するシアル酸から新たに形成されたビリオンの血球凝集素の解放を助ける。これらの2つのタンパク質により果たされる重要な役割ならびにウイルス表面におけるそれらの提示は、なぜ、それらが免疫応答の主な標的を示すか、および、なぜ、それらが高頻度で突然変異を起こしやすいかを説明する。実際に、毎年の流行は近年のものと多少異なっているウイルスによって引き起こされ、したがって、それらが刺激した免疫応答から大体は有効に逃れることができる。言い換えれば、血球凝集素(一番目)およびノイラミニダーゼ(二番目)における点突然変異の進行性の蓄積は、以前の流行の過程で生産された防御抗体を、全体的に見ると徐々に有効でないものにさせる。
【0011】
抗インフルエンザ免疫応答における主な保護的役割は、体液成分により果たす。抗体は、主に血球凝集素のシアル酸への結合を妨げ、それにより細胞への感染を防止する、それらの保護的役割を発揮する。このような選択的圧力は血球凝集素における高頻度の突然変異を決定する。1968年から1999年のH3血球凝集素サブタイプにおいて実施された配列試験では、1年ごとに平均約3.5の突然変異で計101のアミノ酸突然変異(全約560のアミノ酸において)が示された。試験期間に起こった60%の突然変異は、翌年も循環ウイルスにおいて保持され、免疫介在性の選択的圧力の持続を示す。これらの突然変異の95%は、HA1血球凝集素サブユニット、すなわちシアル酸への結合に直接関与するものにおいて発見された。このような高い変異性の中で、しかしながら、いくつかの変化していないアミノ酸残基が発見され、それらはタンパク質の機能において必須の役割を示す。これらの血球凝集素部分は、インフルエンザウイルスの異なるサブタイプに対する交差中和応答に関する潜在的標的を示す。しかしながら、このような標的は免疫サイレント領域に潜む事実がウイルスに対して非常に有利な進化段階を確実に示すため、このような領域は多数の患者において有効な抗体応答を誘導することができないことが予測可能である。
【0012】
実際に、抗インフルエンザ免疫に言及するとき、3つの異なる型の免疫を考慮すべきであることが、上記報告されたデータを踏まえてよく理解することができる:
【0013】
ホモロガス免疫:個々の分離株に関する。この型の免疫は、いつも感染またはワクチン接種後に見られるが、他の分離株に対して非常に限定された保護を提供する。
【0014】
ホモサブタイプ免疫:同じサブタイプに属する分離株に関する。この型の免疫は、しばしば感染またはワクチン接種後に見られるが、血球凝集素および/またはノイラミニダーゼにおける突然変異率が大幅に増加したとき無くなる。
【0015】
ヘテロサブタイプ免疫:異なるサブタイプに属する分離株に関する。この型の免疫は、自然の感染の場合およびワクチン接種の場合の両方において極めてまれである。その存在および刺激がすべてのA型インフルエンザウイルスによる感染に対する抵抗性と同等であるため、戦略的な見地から、それは最も重要な免疫である。
【0016】
数年前まで、ヘテロサブタイプ免疫は、あまり突然変異のないウイルスタンパク質、例えば、核を構成するNPタンパク質に対する細胞免疫成分を有効に刺激することによってのみ達成することができると考えられていた。しかしながら、最近の試験によって、B型リンパ球成分の欠失したマウスと対照的に、CD8リンパ球の欠失したマウスが、なお、ヘテロサブタイプ免疫を示すことができることが示された(Nguyen HH, J Inf. Dis. 2001, 183: 368-376)。その上、最近の試験によって、たとえ、異なるサブタイプ間で保存されているエピトープに対して正確に中和しなくても、抗体の重大な役割を強調する、このデータが確認された(Rangel-Moreno et al. The J of Immunol, 2008, 180: 454-463)。
【発明の概要】
【0017】
本発明の対象物
上記されているデータに基づいて、本発明の1つの対象物は、インフルエンザA型ウイルスの異なるサブタイプに対して反応性であるモノクローナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗体を提供するものである。
【0018】
本発明の他の対象物は、インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに関して中和活性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗体を提供するものである。
【0019】
このような抗体は、患者へ投与するとき、危険性を防止する有効な手段である。さらに、抗体が確実に良好な耐容性を示すため、ヒト患者に対するモノクローナルヒトまたはヒト化抗体の使用はさらなる利点を与える。
【0020】
第2に、このウイルスに対するヒト抗体応答の成分を構成することにより、上記特性を有するモノクローナル抗体は、最近使用されているワクチンにより誘導されるものと比較して、非常にさらに有効な、保護的なかつ広範囲の免疫を誘導することができる革新的なワクチンの設計のための重要な因子を示す。
【0021】
しかしながら、このような特性を有するモノクローナル抗体の達成は、今までのところ非常に困難であることが証明されている。
【0022】
2007年11月22日に発行された国際特許出願WO2007/134327は、ELISAアッセイにおいて、インフルエンザA型ウイルスの種々の分離株由来のHA抗原であるサブタイプH5に結合することができるFabフラグメントを記載している。しかしながら、本特許出願はインフルエンザA型ウイルスの異なるサブタイプに属する分離株を認識することができる抗体を実施可能にする記載を提供しておらず、実施可能にする方法において、異なるサブタイプに属するインフルエンザA型ウイルスに対して実際の中和能を有する抗体の獲得について記載していない。
【0023】
したがって、インフルエンザA型ウイルスの異なるサブタイプを認識および中和する能力を有するモノクローナル抗体が長期間にわたって探し求められていた事実にもかかわらず、このような要求に対しては今までのところ失敗つづきであった。
【0024】
本発明の記載
驚くべきことに、本発明者は上記の望ましい特徴を有するモノクローナル抗体の提供に成功した。
【0025】
したがって、本発明の第1の対象物は、インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに結合することができることにより特徴付けられる、インフルエンザA型ウイルスの血球凝集素抗原に対するモノクローナル抗体である。
【0026】
本発明の第2の対象物は、インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに関して中和活性を有することにより特徴付けられる、インフルエンザA型ウイルスに対するモノクローナル抗体である。好ましくは、このような中和モノクローナル抗体は抗原としてインフルエンザA型ウイルスの血球凝集素(HA)を認識する。
【0027】
本発明のモノクローナル抗体は好ましくはヒトまたはヒト化抗体である。
【0028】
本発明のヒトモノクローナル抗体の獲得およびそれらの結合特性は、以下の実験の部において詳細に記載されている。
【0029】
ヒト化抗体の製造は、例えば、Baca et al, 1997 J. Biol. Chem 272:10678-84またはCarter et al, 1992, Proc.Natl. Acad. Sci 89:4285に記載されている任意のそれ自体既知の方法論により実施される。かかる参照文献は、単に説明のために提供され、限定されない。実際に、ヒト化抗体の製造のための他の方法論がこれまでに知られており、本発明において使用することができる。
【0030】
インビトロでインフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに結合する能力を有するFabフラグメントの形態におけるモノクローナル抗体を生産することができる6つのクローン(INF4、INF16、INF28、INF39、INF43およびINF47として表される)の獲得は、具体的に下記の実験の部に記載されている。
【0031】
インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに関して中和活性を示すことを発明者は実験的に証明したため、クローンINF28(Fab28として表される)により生産されるモノクローナル抗体が本発明の1つの好ましい態様を示す。簡潔のために、このような免疫学的特性は、ときどき“ヘテロサブタイプの交差中和活性”として以下で称される。
【0032】
Fab28抗体は、配列番号:1のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび配列番号:2のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインにより特徴付けられる。重鎖可変ドメインをコードする核酸配列は配列番号:3であり、そして軽鎖可変ドメインをコードする核酸配列は配列番号:4である。
【0033】
特に、実験の部はFabフラグメントとしての本発明のモノクローナル抗体の製造を記載している。しかしながら、他の抗体型ならびにそれらの製造および使用も、本発明の範囲の一部であると意図される。非限定的な例は、全免疫グロブリンまたは他の種類の抗体フラグメント、例えば、F(ab’)フラグメントまたはFabよりも小さい抗体フラグメント、または本発明のFabに関して実験的に証明された特性と同じ免疫学的特性を有するペプチドである。
【0034】
一本鎖抗体は、Ladner et al.による米国特許4,946,778(出典明示により本明細書に包含される)に記載されている方法にしたがって構築することができる。一本鎖抗体は、柔軟なリンカーにより結合された軽鎖および重鎖可変領域を含む。1つの単離されたVHドメインのみを含むため、単一ドメイン抗体として表される抗体フラグメントは一本鎖抗体よりさらに小さい。少なくとも部分的に全抗体と同じ結合能を有する単一ドメイン抗体を得るための技術は、先行技術に記載されている。Ward, et al., in “Binding Activities of a Repertoire of Single Immunoglobulin Variable Domains Secreted from Escheria coli,” Nature 341:644-646は、単離された形態における標的エピトープに結合するために十分な親和性を有する抗体の重鎖の可変領域(VH単一ドメイン抗体)を得るためのスクリーニング方法を記載している。
【0035】
以下の記載において、“抗体”なる用語は、上記全ての態様において、全免疫グロブリン、Fabフラグメントまたは他の抗体フラグメント型、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体などを示すように使用される。
【0036】
本発明のモノクローナル抗体は、生産され、遊離形態または担体結合形態において使用され得る。担体は、抗体と結合し、そして、それを免疫原性にさせるか、またはその免疫原性を増強することができる、あらゆる分子または化学的もしくは生物学的存在である。担体の非限定的な例は、タンパク質、例えば、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、エデスチン、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アルブミン(HSA)のようなアルブミン、赤血球、例えば、ヒツジ赤血球(SRBC)、破傷風アナトキシン、コレラアナトキシン、ポリアミノ酸、例えば、ポリ(D−リシン:D−グルタミン酸)などである。抗体の担体への結合を容易にするために、抗体のC−末端またはN−末端を、例えば、さらなるアミノ酸残基、例えば、ジスルフィド架橋を形成することができる1つ以上のシステイン残基の挿入により修飾してもよい。
【0037】
以下の実験の部において詳細に示されているそれらの特性のため、本発明のモノクローナル抗体(とりわけ抗体Fab28)は、特にインフルエンザA型ウイルス感染の広範囲の予防または治療処置のための医薬の適用における、特に医薬の製造における使用に適当である。
【0038】
したがって、インフルエンザA型ウイルス感染によって引き起こされる病状、例えば、インフルエンザ症候群の予防または治療処置のための医薬の製造のための本発明のモノクローナル抗体、好ましくは抗体Fab28の使用は、本発明の範囲内である。
【0039】
このような文脈においても、“Fab28抗体”なる用語は、Fabフラグメントのみでなく、抗体を製造することができる他のすべての形態、例えば、全免疫グロブリン、他の種類の抗体フラグメント、一本鎖抗体なども含む。
【0040】
実験の部において詳細に記載されているとおり、モノクローナル抗体は、交差反応性のモノクローナル抗体を生産することができるEBV−形質転換されたリンパ球から出発する分子生物学技術により得られ、したがって、後述のとおりの2つの参照分離株(これらは、インフルエンザA型ウイルスの異なるサブタイプ:H1N1、株A/PR/8/34およびH3N2、株A/PC/1/73に属する)に感染されたMDCK細胞溶解物を認識することができる。患者の末梢血から形質転換されたB細胞系を生産するために使用される特定の手段は、実験の部において記載されている。
【0041】
加えて、本発明のFab28抗体の重鎖および軽鎖可変部分をコードする遺伝子をクローニングするために使用される手段は、実験の部において記載されているもの、ならびにそれらを一本鎖ペプチドおよびFabフラグメントとして両方を組換え的に生産する手段である。
【0042】
インフルエンザA型ウイルスの異なるサブタイプに感染された細胞溶解物と反応する本発明のモノクローナル抗体の能力は、ELISAおよび免疫蛍光法により証明された。加えて、インビトロでの抗体の生物学的活性を証明するために、中和アッセイを実施した。このアッセイにおいて、Fab28抗体は、上記の参照A型ウイルス分離株に対するヘテロサブタイプの交差中和活性を示した。
【0043】
得られたデータは、本発明の抗体、とりわけ抗体Fab28が、インフルエンザA型ウイルスに対する受動免疫を投与された対象に与えるのに非常に有効であり、そして、したがって、それらはインフルエンザA型ウイルス感染またはインフルエンザA型ウイルス感染によって直接的もしくは間接的に引き起こされる病状の広範囲の予防または治療処置に特に有用であることを示す。このような病状の1つの例はインフルエンザ症候群である。
【0044】
加えて、Fab28が結合する血球凝集素の立体構造的エピトープの同定は、実験の部において記載されている。このような立体構造的エピトープは、血球凝集素のHA1領域およびHA2領域間に位置し、HA2領域におけるW357およびT358残基ならびにHA1領域におけるN336、I337およびP338残基を含む。残基の番号付けは、データベースBLASTにおけるH1N1/A/PR/8/34分離株由来の血球凝集素配列(配列番号:5)に基づく。
【0045】
したがって、本発明のさらなる対象物は、活性成分として有効量の本発明のモノクローナル抗体ならびに薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物である。有効量は、組成物が投与された対象において、例えば、インフルエンザA型ウイルスを中和するか、またはウイルス複製を妨げるような有利な効果を誘導することができる量である。
【0046】
このような文脈において、“対象”なる用語は組成物が投与され得るヒトを含むあらゆる動物宿主を示す。
【0047】
本発明の医薬組成物に関する有用な薬学的に許容される担体または希釈剤の非限定的な例は、安定剤、例えば、SPGA、炭水化物(例えば、ソルビトール、マンニトール、デンプン、スクロース、グルコース、デキストラン)、タンパク質、例えば、アルブミンまたはカゼイン、タンパク質含有薬剤、例えば、ウシ血清またはスキムミルクおよびバッファー(例えば、リン酸バッファー)を含む。
【0048】
本発明のモノクローナル抗体は、また、あらかじめ患者から得られた生物学的サンプル(例えば、血清、血漿、血液サンプルまたは他の何らかの適当な生物学的物質)において、同一または同様の中和特性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体を検出するためのインビトロ方法における診断試薬として有利に使用することができる。
【0049】
“同一または同様の中和特性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体”は、インフルエンザA型ウイルスに対するヘテロサブタイプの交差中和活性を示す抗体である。インフルエンザA型ウイルスに以前に暴露した結果として、または、治療もしくは予防または研究目的のために患者があらかじめ本発明のモノクローナル抗体を投与されているため、これらの抗体は患者由来の生物学的サンプルにおいて見いだされ得る。
【0050】
患者の生物学的サンプルにおいて、ヘテロサブタイプの交差中和活性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体の存在を検出するためのアッセイ方法であって、該生物学的サンプルと特定のアッセイ試薬として本発明のモノクローナル抗体を接触させることを含む方法は、したがって、本発明の範囲に包含される。
【0051】
アッセイは定性または定量アッセイであり得る。ヘテロサブタイプの交差中和活性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体の検出または定量は、例えば、競合ELISAアッセイにより実施され得る。したがって、特定の試薬として本発明のモノクローナル抗体を含む診断キットであって、患者由来の生物学的サンプルにおいて、インフルエンザA型ウイルスに対するヘテロサブタイプの交差中和活性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体を検出または定量するために特に設計されたキットも、本発明の範囲内である。
【0052】
同様に、本発明のモノクローナル抗体(とりわけ抗体Fab28)は、このような組成物が投与された対象において、本発明のモノクローナル抗体と同一または同様の中和特性、すなわちインフルエンザA型ウイルスに対するヘテロサブタイプの交差中和活性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体を誘導することができるエピトープを、あらかじめ製造された免疫原性またはワクチン組成物において、検出または定量するためのアッセイ方法における特定の試薬として使用することができる。
【0053】
本発明のモノクローナル抗体による認識が、免疫原性製剤および/またはワクチンにおいて、有利なエピトープ、例えば、インフルエンザA型ウイルスに対するヘテロサブタイプ免疫を誘発することができるエピトープを認識することができる抗体クローンの生産を刺激することができる1つ以上のエピトープの存在を示すことができるため、このような方法は、ワクチンまたは免疫原性製剤として使用されるすべての製剤の評価のために有用であると予測される。
【0054】
最後に、本発明のモノクローナル抗体は、それ自体既知の方法にしたがって、抗イディオタイプ抗体の製造のために使用され得る。抗イディオタイプ抗体は、それらを製造するために使用される広範囲の中和抗体のイディオタイプに特異的に指向する抗体であり、それ自体はそれらが認識する重要なエピトープを模倣することができる。
【0055】
したがって、本発明のモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体も本発明の範囲に包含される。
【0056】
以下の実験の部は、単なる説明のためであって限定ではなく、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。特許請求の範囲は記載の不可欠な部分である。
【実施例】
【0057】
実験の部
1.患者の選択
試験において登録した患者は、交差反応性抗インフルエンザ抗体、すなわち異なるサブタイプに属するインフルエンザウイルス分離株を認識し、潜在的に中和することができる抗体のクローニングの機会を増やすように選択された。特に、数人の個体は、(ときどき、職業上の理由で、医師、小児科医、幼稚園および学校で働く人として)インフルエンザウイルスに連続的に暴露されているにもかかわらず、疾患に罹患しないと述べられている。これらの珍しい個体は、未知の理由による有効なヘテロサブタイプ免疫の発達によって、インフルエンザウイルス感染を引き起こしにくいと考えた。この理由のため、これらの人々がヒトモノクローナル抗体の生産のためのもっとも良い候補者であると考えた。特に、以下の試験対象患者基準に従った:
−25から55歳;
−臨床的インフルエンザ症候群に対して試験の前10年間陰性である最近の病理学的病歴;
−試験の前5年間に、毎年の流行に関与しているウイルス分離株、サブタイプH1N1およびH3N2に対して1:1000より大きい抗体価;
−試験の前5年間に、毎年の流行に関与しているウイルス分離株、サブタイプH1N1およびH3N2に対して高い中和価(IC50>=1:400);
−2つの参照サブタイプA型ウイルス分離株(A/PR/8/34サブタイプH1N1;A/PC/1/73サブタイプH3N2)に対して検出できる中和価(IC50>=1:20);
−これまでに抗インフルエンザワクチン接種なし;
−抗インフルエンザワクチン接種を受けるコンプライアンス。
ワクチン接種時およびワクチン接種約3週間後に、約20mlの血液をそれぞれの患者からヘパリン化試験チューブで抜き取った。
【0058】
2.参照ウイルス分離株の培養
10%の不活性化のウシ胎児血清(FBS)(56℃で30分処理)(EuroClone)、50μg/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(GIBCO)および2mMのL−グルタミン(EuroClone)を補った改変イーグル培地(MEM)(GIBCO)中で培養させたMDCK(Madin−Darbyイヌ腎臓)細胞(ATCC(登録商標)番号CCL−34TM)を細胞系として使用した。細胞を37℃で5%CO雰囲気下でインキュベートし、1:3の比率で1週間に2回通過させた。本特許出願に記載されている実験のために、以下のインフルエンザウイルス分離株を使用した:H1N1、株A/PR/8/34(ATCC(登録商標)番号VR−1469TM);H3N2、株A/PC/1/73(ATCC(登録商標)番号VR−810)および株B/Lee/40(ATCC(登録商標)番号VR−101)。ウイルスを培養させるための培養培地として、1μg/mlの無血清トリプシン(SIGMA)を補ったMEMを使用した。ウイルス貯蔵物を細胞外ウイルスとして培養上清から得た。手短に言えば、細胞を感染後、細胞変性効果の出現をモニタリングするために単層を毎日観察した。通常、感染から4日後、上清を回収し、10分間1000RCF(相対遠心力)で遠心し、細胞残屑を除去し、0.22μmフィルター(MILLIPORE)で濾過した。次に上清をアリコートし、無細胞ウイルスとして−80℃で保存した。
【0059】
3.末梢血Bリンパ球由来の抗インフルエンザウイルスモノクローナル抗体の選択
患者由来のモノクローナル抗体の生産を、Cole et al, 1984 Cancer Research 22:2750-2753により以前に述べられている、Bリンパ球のエプスタイン・バーウイルス(EBV)での感染による形質転換方法を使用することにより実施した。得られた異なるクローン由来の上清をELISAにより抗体の存在に関して評価した。次に、ELISAにおいて2つの参照分離株、サブタイプH1N1およびH3N2に感染した細胞溶解物に対して反応することができる、上清におけるIgG抗体を生産することができるクローンを、後の特徴付けのために選択した。特に、MDCK細胞を感染の高い多重度で前記分離株に感染させた。感染約48時間後、細胞をフラスコから分離し、PBSで2回洗浄した。次に細胞ペレットを300μlの溶菌溶液(100mMのNaCl、100mMのTris pH8および0.5%のTriton−X)に懸濁し、20分間氷上で保存した。細胞残屑を5分間10000gで遠心し、上清を−20℃でタンパク質抽出物として保存した。対照抗原の製造物として、非感染細胞を同じ方法で処理した。上清タンパク質濃度をBCATMのタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用してデュプリケートで決定した。簡潔には、サンプルタンパク質の量を、ウシ血清アルブミン(BSA)の一連の既知の濃度希釈物により得られた標準曲線を参照することにより決定した。すべてのサンプルの吸光度を分光光度計で540nmの波長で測定した。次にそうして得られた溶解物を使用して(ウェルあたり300ng)、ELISAプレート(COSTAR)を被覆し、4℃で一晩インキュベートした。次の日、プレートを蒸留水で洗浄し、PBS/1%BSA(Sigma)で45分37℃でブロックした。次に、それぞれのクローン由来の40μlの上清をそれぞれのウェルに加え、これを1時間37℃でインキュベートした。PBS/0.5%のTween−20(Sigma)で5回洗浄後(WASHER ETI−SYSTEM、DiaSorin)、40μlのペルオキシダーゼ結合抗ヒトFc(PBS/1%BSA中で1:4000、Sigma)をそれぞれのウェルに加え、プレートを1時間37℃でインキュベートした。PBS/0.5%Tween−20で5回以上洗浄後、40μlのペルオキシダーゼ基質であるTMB(Pierce)をそれぞれのウェルに加えた。約15分後、酵素活性を40μlのHSOを加えることによりブロックし、シグナルを分光光度計で450nmで測定した。すなわちサブタイプH1N1に属する株に感染した細胞溶解物およびサブタイプH3N2に属する株に感染した細胞溶解物の両方を認識することができる、交差反応性抗体を生産することができる6つの推定のクローン(それぞれcINF4、cINF16、cINF28、cINF39、cINF43およびcINF47として表される)の上清に対して、特に注目した。
【0060】
4.交差反応性クローン由来のFabフラグメントの製造
インフルエンザウイルスと反応することができる一価Fab鎖をコードする遺伝子を原核生物の発現ベクターにクローニングした。これは、抗体生産細胞クローンの不安定、分子的観点からコードする遺伝子をさらに特徴付けること、確実に自由に使えるモノクローナルである分子を有すること、ならびにそれぞれ個々の抗体の量の増加による問題を避けることができる。
【0061】
メッセンジャーRNA(mRNA)を培養したクローンから抽出し、それ自体既知の方法にしたがって、オリゴ−dTを使用して逆転写した。次に軽鎖およびFdフラグメント(すなわちFabフラグメント内に存在する重鎖部分)をコードするcDNAを記載されている方法(CSH press, Phage display manual, ed. D.R.Burton, p. A1.6)により増幅した。次にそうして得られたcDNAを、pCb3/CAF(Burioni et al, J. Imm. Meth, 1988)として表される、それ自体既知の発現ベクターにクローニングした。手短に言えば、それぞれのFabの重鎖Fd部分をコードする遺伝子(増幅されたDNA)を制限酵素XhoIおよびSpeI(Roche)で1.5時間37℃で消化し、次に同様に同じ酵素で消化された重鎖のためのベクターのクローニング部位に挿入した。代わりに、軽鎖(増幅されたDNA)を酵素SacIおよびXbaI(Roche)で消化し、同様に消化されたベクターにクローニングした。
【0062】
そうして得られたそれぞれのクローンに対する組換え構築物を使用して、0.2cmキュベットの使用に関する標準プロトコールにしたがって、大腸菌株XL1Blue(グリセロールで冷洗浄することによりコンピテントにされている)を電気形質転換した(ボルト数:2500V;容量:25μF;抵抗:200Ω)。同時に、選択されたクローンの軽鎖可変部および重鎖可変部のDNA配列を分析した。配列は配列表において提供されているものである。突然変異パターンの分子分析は、それぞれのクローンに関して抗原誘導の体細胞突然変異プロセスに起因する概念を示した。
【0063】
5.PCb3/CAFへのクローニングにより得られたモノクローナルFabのELISA評価
クローニング完了後、それぞれのモノクローナル抗体に対する40の組換え細菌クローンを、熱ショックにより得られた細菌培養物由来の粗溶解物を使用するELISAにより分析した。特に、構築物PCb3/CAFで形質転換された細菌のクローンを、50μg/mlおよび10μg/mlでそれぞれアンピシリンおよびテトラサイクリンを含む10mlのSB培地に植菌し、O.D.600=1に達するまで37℃で撹拌下で培養した。次に、特定の誘導剤(IPTG−イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)を最終濃度1mMで加え、培養物を30℃で一晩撹拌しながら放置した。細胞を熱ショック(−80℃および37℃でそれぞれ冷凍/解凍を3回)により溶解し、次に遠心し、Fab含有上清由来の細胞残屑を分離した。得られた可溶性FabをELISAによりアッセイした。96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc)を、上記参照ウイルス分離株に感染した細胞由来の溶解物で被覆した。感染していない細胞から得られた溶解物を陰性対照として使用した。次に300ngの記載されているとおりに得られた溶解物で被覆されたELISAプレートを4℃で一晩放置した。次の日、非結合抗原の除去後、プレートをPBSで5回洗浄し、非特異的結合部位をPBS中3%のアルブミンで1時間37℃でブロックした。ブロッキング溶液の除去後、可溶性Fabを含む、上記のとおり処理された細胞培養物の上清をそこに加え、次に37℃で2時間インキュベーションした。PBS/0.05%Tween 20で10回洗浄サイクル後、40μlのPBS/1%BSA中のラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ヒトFab免疫グロブリン(Sigma)のポリクローナル製剤の1:700希釈物をそれに加えた。37℃で1時間インキュベーションおよびさらなる一連の10回の洗浄後、基質(OPD−o−フェニレンジアミン)をウェルに加えた。次にプレートを30分室温で暗下でインキュベートした。反応を1Nの硫酸でクエンチし、450nmで分光光度を読むことにより光学濃度を評価した。アッセイされたすべてのクローンが、感染された細胞から得られた溶解物に対して反応性を示した。ヒト抗体の軽鎖および重鎖Fdフラグメントをコードする遺伝子対を含む発現ベクターで形質転換された1つの細菌クローンを、それぞれの交差反応性モノクローナルに対して選択した。このような細菌クローンは、分離株A/PR/8/34(H1N1)および分離株A/PC/1/73(H3N2)の両方に結合することができるヒトFabを生産することができる。これらのクローン(相対遺伝子対を有する)をINF4、INF16、INF28、INF39、INF43およびINF47と名付けた。
【0064】
6.Fabの精製
上記交差反応性クローンから生産されるFab(“クローン”または“Fab”としても簡単に表される)は記載されている発現ベクターで形質転換された細菌を介して生産され、次に免疫親和性を、ヒトFab(PIERCE、Illinois)に結合することができるヤギ抗体のポリクローナル製剤が共有結合する、プロテインG(〜2mg/ml)を含むセファロース樹脂で構成されるカラムで精製した。手短に言えば、それぞれのクローンの単一のコロニーを、50μg/mlおよび10μg/mlでそれぞれアンピシリンおよびテトラサイクリンを含む10mlのSB培地に植菌した。一晩37℃で培養された培養物を、前と同じ濃度の抗生物質を加えた500mlのSBを有するフラスコに再び植菌した。次に1mMのIPTGにより誘導された細胞を、一晩30℃で撹拌しながら放置した。培養物を5000rpmで25分遠心し、PBSに再懸濁されたペレットを超音波処理した。25分間18,000rpmでさらなる遠心分離を行うことが、細胞残屑を除去するために必要であった。上清を濾過し、次に上記セファロースカラムをゆっくり通過させた。その後、樹脂を10倍容量のPBSで洗浄し、最後に結合したFabを酸性溶液(溶出バッファー−HO/HCl pH2,2)で溶離した。回収した種々の画分を適当な溶液(1MのTris pH9)で中和し、限外濾過(Centricon、Millipore)により濃縮した。12%のポリアクリルアミド/ドデシル硫酸ナトリウムゲル(SDS−PAGE)にある一定量を泳動することにより、精製されたFabの純度を評価した。最後に、精製されたFabの連続希釈物を記載されているとおりのELISAによりアッセイした。それぞれのプレートの中に、HCV E2糖タンパク質に対する精製モノクローナルFabの製造物を陰性対照として含ませた。この実験の結果は細菌溶解物で以前に得られた結果で確認した。
【0065】
7.PCb3/CAFへのクローニングにより得られたモノクローナルFabの免疫蛍光評価
ELISAにより得られたデータを確認するために、交差反応性抗インフルエンザFabも免疫蛍光アッセイにより分析した。簡潔には、感染培養物由来の細胞をトリプシン処理し、PBSで2回洗浄後、顕微鏡下で血球計数器でカウントした。次に細胞懸濁液を細胞遠心機(Cytospin4、Shandon Southern Products)中で90gで3分の遠心分離によってスライドの製造のために使用した。そうして製造されたスライドは、それぞれ計2×10細胞を含んだ。対照スライドを同様に非感染細胞で製造した。次に細胞を固定し、10分間室温でメタノール−アセトン溶液(−20℃の温度で使用される)にて透過可能にさせた。PBSで3回洗浄後、細胞を30分37℃で湿チャンバー中で異なるクローン(100μg/ml)とインキュベートし、次にPBSで3回洗浄した。次に細胞を、エバンスブルーで1:200希釈されたフルオレセインイソチオシアネート結合ヤギFab(Sigma)と、30分37℃で湿チャンバー中で暗下で、インキュベートした。スライドを蛍光顕微鏡(Olympus)下で検査した。M1インフルエンザウイルスタンパク質に特異的な市販のマウスモノクローナル(Argene)を陽性対照として使用した。C型肝炎ウイルスのE2糖タンパク質に対する抗体(e509; Burioni et al, Hepatology, 1998)を陰性対照として使用した。すべての組換えFabが、株A/PR/8/34(H1N1)に感染した細胞および株A/PC/1/73(H3N2)に感染した細胞の両方に対して特異的である反応性を、免疫蛍光により示した。代わりに、蛍光は非感染細胞、B型株−感染細胞または陰性対照抗体に感染した細胞において見られなかった。
【0066】
8.中和アッセイ
選択されたクローンのインビトロ生物学的活性を特徴付けるため、試験において使用される3つの参照ウイルス分離株に対して中和アッセイを設計した。手短に言えば、MDCK細胞を96ウェルプレート中のMEM−10%FBSに播種した(2×10細胞/ウェル)。上記のとおりに得られたウイルス貯蔵物の連続希釈物(10−1から10−8)を、維持培地(2%のFBSを有するMEM)中で製造した。それぞれの希釈を6回繰り返した。培養細胞がコンフルエントしたとき、培養培地を除去し、100μlのそれぞれのウイルス希釈物をそれぞれのウェルに加えた。37℃で1時間後、播種物を除去し、1μg/mlのトリプシンを有する200μlのMEM培地をそれぞれのウェルに入れた。TCID50(細胞培養物の50%を感染する量)として表されるウイルス価をReed−Muenchの式:
【数1】

を使用することにより計算した。
【0067】
得られたデータを踏まえて、ウイルス貯蔵物を、中和実験において約0.01(100細胞あたり1ウイルス粒子)の感染の多重度(M.O.I.)を使用するために希釈した。実際の中和アッセイにおいて、MDCK細胞をそれぞれ滅菌スライドを含むウェルを有する24ウェルプレートに播種した。中和実験を80%−90%のコンフルエント細胞、すなわち播種から約48時間後に行った。次にそれぞれの抗体に対して2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/mlおよび20μg/mlの最終濃度を達成するように、精製されたFabフラグメントの希釈物を製造した。e509抗HCV抗体の対応する希釈物を陰性対照として製造した。次に種々のFab濃縮物を、同量の希釈されたウイルス貯蔵物(M.O.I.:0.01)と1時間37℃でインキュベートした。次に250μlのウイルス−Fab混合物を、細胞を含むウェルに加えた。感染の陽性対照は、培養培地のみをウイルス貯蔵物に加えることにより成し遂げた。中和されていないウイルスが吸着するように、プレートを1時間37℃でインキュベートした。次に播種物を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した。1μg/mlのトリプシンを有する1.5mlの無血清培地をそれぞれのウェルに加えた。37℃で6時間インキュベーション後、細胞単層をPBSで洗浄し、冷メタノール−アセトン溶液(1:2比、−20℃で保存された)で10分室温で固定した。固定された細胞を洗浄し、250μlの市販のモノクローナル抗M1抗体(Argene)と30分37℃で湿チャンバー中でインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、最後にフルオレセイン結合ヤギ抗マウス抗体とインキュベートし、30分37℃で湿チャンバー中で暗下でエバンスブルーで希釈した。PBSで3回洗浄後、最後にスライドを蛍光顕微鏡下で検査した。個々の陽性細胞を数え、ウイルスのみに感染した陽性対照と比較して、感染細胞の数の減少パーセントを計算することにより、Fabの中和活性を決定した。中和アッセイは、それぞれのFabに対して3つの別々の時間で実施した。特に、それぞれのクローンを上記の2つの異なる参照A型インフルエンザ株および参照B型株に対してアッセイした。それぞれの実験において、異なるFab希釈物を、トリプリケートにおいて、感染の陰性(Fab e509 抗E2/HCV)および陽性(ウイルスおよびFabなしの培地)対照に行ったことを同様に繰り返した。
【0068】
6つのアッセイされた交差反応性Fab中、クローンINF28により生産されるFabは、A型ウイルス分離株に対するヘテロタイプ交差中和活性を示した。代わりに、試験において使用されたB型ウイルスの感染能力に関して減少は検出されず、観察された中和活性の特異性が確認された。特に、クローンINF28により生産されるFab(Fab28と呼ぶ)は、サブタイプH1N1の場合において5μg/ml以下およびサブタイプH3N2の場合において約10μg/mlのIC50(アッセイされるウイルス分離株により感染を50%阻害するFab濃度)、すなわち問題の分子のインビボ投与により容易に得ることができる濃度を示し、Fabが全免疫グロブリン形態に変換されたとき、通常観察される生物学的中和活性の相当な増加が考慮できなくとも、可能な医薬製剤は本発明の範囲内である。
【0069】
図1から3は、異なる中和時間において、試験において使用される種々のインフルエンザウイルス分離株で実施された、クローンINF28により生産されるFab28で得られた結果を要約する。特に、図1は異なるFab28濃度によるウイルスA/PR/8/34(H1N1)の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。図2は異なるFab28濃度によるウイルスA/PC/1/73(H3N2)の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。図3は異なるFab28濃度によるウイルスB/Lee/40の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。
【0070】
9.Fab28により認識される抗原の特徴付け:感染細胞由来の溶解物のウエスタンブロット
前記のとおりに製造された株A/PR/8/34(H1N1)に感染した10μgの細胞溶解物を、10%のポリアクリルアミドゲル上を非変性条件下で泳動した。この目的のために、サンプルを適当な冷蔵タンク(BIORAD)中で1時間100Vで泳動した。その後、ゲルを電気泳動装置から取り出し、すべてのデタージェントの残りを除去するためにTransfer Buffer(トリス塩基 3g;グリシン 14.41g、dHO 800ml、メタノール 200ml)中で10分インキュベートした。次にニトロセルロース膜(Hybond-ECL; Amersham Biosciences)への移動を30Vおよび90mAで一晩行った。次に膜を1×PBS中に溶解した5%の粉ミルクで1時間ブロックし、その後1×PBS−0.1%Tween中で3回洗浄した。それぞれの洗浄中、膜を揺れているプラットホーム上で10分振とうし続けた。この後、5%の粉ミルクを有するPBSで希釈した異なるFabを、5μg/mlの濃度で加えた。Fab28のほかに、以下の対照を加えた:陰性対照としてe509;市販のマウス抗HA全IgG1(COVANCE);市販のマウス抗M1全IgG1(ARGENE);マウス抗M2全IgG1(ABCAM);1:200に希釈されたヒト血清。それぞれの抗体を室温で1時間撹拌し続けた。その後、膜を前記のとおりにPBSで再び洗浄した。次に、検出される抗体の源に依存して、ELISAアッセイに対して記載されているものと同じマウス(1:1000)またはヒト(1:2000)二次抗体を加えた。シグナルの検出のために、光源に暴露しないように特に注意深く、1:1比で2つの基質(SuperSignal(登録商標) West Pico Chemiluminescent Substrate Pierce)を混合することにより、希釈標準溶液を製造した。ニトロセルロース膜を希釈標準溶液と5分インキュベートし、次に取り出し、HyperCassette(AMERSHAM)にのせた。必要な暴露時間後に、これをKodak X線フィルムに暗室下で現像した。記載されているアッセイを2つの異なる時間に行い、それぞれにおいてFab28とインキュベートした膜部分は、ウイルス血球凝集素(HA0)の未熟型の重量と一致する80KDaより少し小さい重量のバンドの存在を示した。これは抗血球凝集素対照抗体とインキュベートした細長い一片で表されている同じバンドによっても確認された。他のものよりも非常に強度の類似のバンドも、ヒト血清とインキュベートした膜部分において検出された。この実験の結果は、血球凝集素が免疫中和抗体応答の標的であることが知られているため、中和データと完全に一致して、抗体がインフルエンザウイルス血球凝集素に対することを示した。
【0071】
10.プラーク減少アッセイによる中和アッセイ
Fab28の中和活性をより正確に評価するために、中和アッセイをプラークアッセイ技術を使用することにより実施した。最初に、ウイルス分離株、サブタイプH1N1およびH3N2の製造は、以下のプロトコールにてプラークアッセイにより定量した。MDCK細胞を、6ウェルプレート(Costar)にてペニシリンおよびストレプトマイシン(pen/strep)を補い、10%のウシ胎児血清(FBS)を含むMEM培地中で培養した。細胞単層が100%のコンフルエントに達した後、ウェルをPBSで洗浄し、同じ抗生物質(pen/strep)およびトリプシン(1μg/ml)を補った新鮮なMEM培養培地をそれに加えた。ウイルス貯蔵物の連続希釈物を同じウェル中で作り、ウイルスを34℃で5%CO雰囲気下で1時間吸着させるために放置した。次に培地を吸引し、PBSで2回洗浄した。さらに、抗生物質、トリプシン(1μg/ml)および0.8%アガロースを補ったMEMを、42℃を越えない温度で穏やかに加えた。感染後、細胞単層の健康状態を位相差光学顕微鏡下でチュックし、プレートを34℃で5%CO雰囲気下でインキュベートした。感染48時間後、細胞単層に損傷を与えないように非常に注意深く、アガロース層を取り出す。その後、クリスタル・バイオレット(1%w/v)を加えられた70%のメタノール水溶液を、ウェルに加えた。プレートを透過性物質/色素と室温で5分インキュベートした。インキュベーション後、プレートを室温にて蒸留水で洗浄し、層流下で5分乾燥させるために放置した。最後に、PFU(プラーク形成単位)数を位相差顕微鏡下で4×大きさで評価した。ウイルス力価をPFUとして計算し、対応するTCID50を計算し、同じ力価を終点限界希釈技術により類似のウイルス貯蔵物の力価と比較した。
【0072】
上記滴定はFab28の活性の正確な評価のためのウイルスの定量を可能にした。いくつかのプレートを、プラークアッセイによる滴定のために上記手段に準じて設定した。したがって、ウイルス(100 TCID50/ウェル)および異なる濃度の使用されるFab(Fab28および対照Fab)を含む、中和混合物を製造した。特に、該アッセイは、100 TCID50の種々のインフルエンザウイルス株に対して異なる濃度のFab(20、10、5および2.5μg/ml)で試験することにより実施した。次にウイルス/Fab混合物を1時間34℃で5%CO雰囲気下でインキュベートした。MDCK細胞をPBSで洗浄後、プレインキュベートした製造物を100%コンフルエント細胞単層を有するウェルに移し、次に1時間34℃で5%CO雰囲気下でインキュベートした。アッセイを実施し、Fab28の存在で得られるプラークの数と同じ濃度の対照Fabの存在で得られるものを比較することにより、前記のとおりに解釈した。
【0073】
アッセイはサブタイプH1N1およびH3N2に属する以下のインフルエンザ分離株を使用して実施した:
H1N1:
A/Malaya/302/54
A/PR/8/34
H3N2:
A/Aichi/68
A/Victoria/3/75
A/Port Chalmers/1/73
【0074】
この結果によって、インフルエンザウイルス H1N1 A/Malaya/302/54およびA/PR/8/34に対するFab28の中和活性が確認され、2.5μg/ml以下の良いIC50値を確認した。ヘテロサブタイプ中和活性を、また、インフルエンザウイルス H3N2 A/Aichi/68、A/Victoria/3/75およびA/Port Chalmers/1/73に対して確認した(IC50 約20μg/ml)。
【0075】
11.Fab28により認識されるエピトープの同定
いくつかの手段を実施し、立体構造的エピトープであるが、エピトープを認識する能力が以前の実験によりすでに示されている、Fab28により認識される血球凝集素領域を同定した。確かに、Fab28は、準自然条件下(0.1%のSDS)で実施したウエスタンブロットアッセイにおいて、該タンパク質のみを認識することができた。同じ実験も、個々のサブユニット(HA1およびHA2)ではなくタンパク質(HA0)の未熟型のみを認識するFabの能力を示した。血球凝集阻害アッセイ(HAI)を、ニワトリ赤血球およびヒト赤血球の両方で同時に実施した。顕著な中和活性にもかかわらず、Fab28はHAI活性が無いことを証明し、血球凝集素およびシアル酸間の結合に関与する残基に結合しないことを示唆した。
【0076】
エピトープのさらなる特徴付けのために、2つの相補的戦略を行った:Fab28モノクローナルに結合することができる、ファージディスプレイライブラリーに含まれるランダムペプチド配列の選択;および、抗体の中和活性を逃れることができるウイルス変種(エスケープ変異株)のFab28を介する選択的圧力によるインビトロ誘導。
【0077】
パンニング技術によるペプチドライブラリーからの選択は、Fab28イディオタイプに特異的に結合することができる多くのペプチドの同定を可能にさせた。すべての同定されたペプチドを、コンセンサス配列を生産するために分析した。次にこのようなコンセンサス配列を、サブタイプH1N1に属する血球凝集素結晶のコンピューター解析のために使用した。この分析により、Fab28により潜在的に認識される領域を明らかにすることが可能であった。早期に見つけられた結果およびエスケープ変異株による方法で同時に得られた結果との適合性を考慮して、1つのエピトープを特にさらなる分析に付した。エピトープは、血球凝集素のステム領域、すなわち領域HA1およびHA2間の部分に位置する(データは、ウエスタンブロットおよびHAIアッセイにおいて達成された結果と完全に一致する)。同定された結合に重要な残基は以下のものである:W357およびT358(領域HA2上);N336;I337;P338(領域HA1上)(残基の番号は、BLASTデータベースに存在する分離株H1N1/A/PR/8/34由来の血球凝集素配列を表す)(配列番号:5)。
【0078】
エスケープ変異株によるアッセイを、10μg/mlのFab28、すなわち問題の分離株に対してIC90と同等であるFab濃度の存在下で、MDCK細胞の100 TCID50のH1N1/A/PR/8/34ウイルスでの連続感染により実施した。かなりの数の継代後にのみ、ウイルスゲノムにおいて起こった突然変異を示す、Fabの存在下で細胞の感染を検出することができた。実際には、コンピューターによる方法により同定された領域に隣接している、領域HA2の2つの残基のI361およびD362において突然変異したエスケープ変異株が選択され、これがFab28により認識される領域であるという仮説を裏付けた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は異なるFab28濃度によるウイルスA/PR/8/34(H1N1)の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。
【図2】図2は異なるFab28濃度によるウイルスA/PC/1/73(H3N2)の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。
【図3】図3は異なるFab28濃度によるウイルスB/Lee/40の中和パーセントを説明するグラフである。ヒトe509抗HCVFabで得られた結果は陰性対照として報告する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに結合することができることを特徴とする、インフルエンザA型ウイルスの血球凝集素抗原に対するモノクローナル抗体。
【請求項2】
インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに対する中和活性を有することを特徴とする、インフルエンザA型ウイルスに対するモノクローナル抗体。
【請求項3】
インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプ由来の血球凝集素を抗原として認識することができる、請求項2に記載のモノクローナル抗体。
【請求項4】
該インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプが、少なくとも、血球凝集素H1を含む1つのインフルエンザA型ウイルスのサブタイプおよび血球凝集素H3を含む1つのインフルエンザA型ウイルスのサブタイプを含む、請求項1から3のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項5】
少なくとも1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインを含む請求項2から4のいずれかに記載のモノクローナル抗体であって、重鎖可変ドメインは配列番号:1のアミノ酸配列を有し、そして軽鎖可変ドメインは配列番号:2のアミノ酸配列を有する抗体。
【請求項6】
少なくとも1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインを含む請求項5に記載のモノクローナル抗体であって、重鎖可変ドメインは配列番号:3の核酸配列によってコードされており、そして軽鎖可変ドメインは配列番号:4の核酸配列によってコードされている抗体。
【請求項7】
請求項5に記載のモノクローナル抗体により特異的に認識される血球凝集素の立体構造的エピトープに結合することができる、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
【請求項8】
少なくとも1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインを含む全免疫グロブリンおよび免疫グロブリンフラグメントからなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項9】
該免疫グロブリンフラグメントがFabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖抗体(scFv)の群から選択される、請求項8に記載のモノクローナル抗体。
【請求項10】
ヒトまたはヒト化抗体である、請求項1から9のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
【請求項11】
インビトロにおいて少なくとも8アミノ酸長でインフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに結合することができる、配列番号:1および配列番号:2から選択される単離されたポリペプチドまたはそれらのフラグメント。
【請求項12】
インフルエンザA型ウイルスの複数のサブタイプに対する中和活性を有する、請求項11に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のモノクローナル抗体のイディオタイプに対して特異的である抗イディオタイプ抗体。
【請求項14】
配列番号:3および配列番号:4から選択される単離された核酸配列。
【請求項15】
配列番号:3の核酸配列または配列番号:4の核酸配列または配列番号:3および配列番号:4の両方の核酸配列を含む発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項17】
請求項11から13のいずれかに記載の有効量の少なくとも1つの抗体または1つのポリペプチドおよび薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項18】
インフルエンザA型ウイルス感染またはインフルエンザA型ウイルス感染によって直接的もしくは間接的に引き起こされる病状の予防用または治療用医薬としての請求項1から13のいずれかに記載の抗体またはポリペプチド。
【請求項19】
インフルエンザA型ウイルス感染またはインフルエンザA型ウイルス感染によって直接的もしくは間接的に引き起こされる病状の予防用または治療用医薬の製造のための、請求項1から13のいずれかに記載の抗体またはポリペプチドの使用。
【請求項20】
インフルエンザA型ウイルス感染によって引き起こされる病状がインフルエンザ症候群である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
患者由来の生物学的サンプルにおいて、ヘテロサブタイプの交差中和特性を有する抗インフルエンザウイルス抗体の存在を検出するためのアッセイ方法であって、該生物学的サンプルと特定のアッセイ試薬として請求項1から10のいずれかに記載のモノクローナル抗体を接触させることを含む方法。
【請求項22】
特定の試薬として請求項1から10のいずれかに記載のモノクローナル抗体を含む診断キットであって、患者から得られた生物学的サンプルにおいて、ヘテロサブタイプの交差中和特性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体を検出または定量するための方法において使用するために特に設計されたキット。
【請求項23】
免疫原性またはワクチン組成物において、投与される対象において、インフルエンザA型ウイルスに対するヘテロサブタイプの交差中和特性を有する抗インフルエンザA型ウイルス抗体を誘発することができるインフルエンザA型ウイルスのエピトープの存在を検出するためのアッセイ方法であって、該組成物と特定のアッセイ試薬として請求項1から10のいずれかに記載のモノクローナル抗体を接触させることを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−517403(P2011−517403A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500336(P2011−500336)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051068
【国際公開番号】WO2009/115972
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(510250607)ポモナ・リチェルカ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (3)
【氏名又は名称原語表記】POMONA RICERCA S.r.l.
【Fターム(参考)】