説明

インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法

本発明は、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。前記インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法は、(1)0.900g/cm〜0.970g/cmの範囲内の密度および10〜100の範囲内の緩和スペクトル指数(RSI)値を有するポリエチレン組成物を提供する工程、(2)前記ポリエチレン組成物を酸素調整する工程、(3)それによって酸素調整したポリエチレン組成物を形成する工程(ここで、前記酸素調整ポリエチレン組成物のRSI値は、その初期値の10%〜300%増大する)、及び(4)それによって前記ポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「METHOD FOR IMPROVING THE BUBBLE STABILITY OF A POLYETHYLENE COMPOSITION SUITABLE FOR BLOWN FILM EXTRUSION PROCESS」という名称で、2010年1月19日付けで出願された米国仮特許出願第61/296,135号の優先権を主張する非仮出願であり、その教示は、以下に完全に再現されるように、本明細書において参照することにより組み込まれる。
【0002】
本発明は、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ほとんど全てのポリエチレンフィルムは、キャストフィルムまたはインフレーションフィルムとして製造される。それぞれの方法は、それ自体の利点および欠点を有している。前記2つの方法の主な相違は、溶融ポリマーの押出シートを冷却する方法にある。一般に、キャストフィルムは、より良い外観を有し、ゲージ厚は、より容易に調節される。インフレーションフィルムは、縦方向および横方向により均一に延伸され、これによってより大きな剛性を提供する。
【0004】
一般に、インフレーションフィルム法は、サーキュラーダイによるプラスチックの押出し、次いでマンドレルの中心を通して入れられる内部空気の圧力による膨張、冷却、およびバブルの崩壊を含む。操作において、インフレーションフィルムは、ロール上に巻き取ることができるようにバブルを崩壊する一組のピンチロールにガイド装置を通して上方に押出される。次いで、インフレーションフィルムは、ラインにおいて切り裂き、ガセット(gusset)を付け、シールしおよび/または表面処理することができる。
【0005】
バブル安定性は、インフレーションフィルム法の一つの重要な側面である。現在、高分子量高密度ポリエチレン(HMW HDPE)のバブル安定性は、典型的には、商業規模のフィルムラインの使用によって決定される。その他の尺度および技法、例えば、g’/g”比の変化、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法が利用できるが、これらの方法は、ポリマーの長鎖分岐のわずかな変化に対して感度が鈍い。
【0006】
したがって、HMW HDPEのバブル安定性を予測するのに使用でき、その他の公知の方法と比べてより敏感であり、このようなバブル安定性を予測するために全規模商業フィルムラインを使用する必要性を排除し、同時に低減されたコスト維持する流動学的方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態において、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法は、(1)0.900g/cm〜0.970g/cmの範囲内の密度および10〜100の範囲内の緩和スペクトル指数(RSI)を有するポリエチレン組成物を提供する工程、(2)前記ポリエチレン組成物を酸素調整する工程、(3)それによって酸素調整したポリエチレン組成物を形成する工程(ここで、前記酸素調整ポリエチレン組成物のRSI値は、その初期値の10%〜300%増大する)、及び(4)それによって前記ポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する工程とを含む。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、前記酸素調整工程が、ポリエチレン組成物を、例えば溶融状態で、酸素と接触させることを含む以外は、前記の実施形態のいずれかによる、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、前記酸素調整工程が、さらに、押出機でポリエチレン組成物の熱機械処理を含むこと以外は、前記の実施形態のいずれかによる、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、押出機が前記ポリエチレン組成物1kg当たり0.10kWh〜0.50kWhの範囲内の比エネルギー入力を提供すること以外は、前記の実施形態のいずれかによる、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明を例示することを目的として、例示的な形態を図面に示す。しかし、本発明は、示される正確な配置および手段に限定されないことが理解される。
【図1】RSIとバブル安定性順位付けとの関係およびg’/g”とバブル安定性順位付けとの関係を説明するグラフである。
【図2】増加率とバブル安定性順位付けとの関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法を提供する。前記のインフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法は、(1)0.900g/cm〜0.970g/cmの範囲内の密度および10〜100の範囲内の緩和スペクトル指数(RSI)値を有するポリエチレン組成物を提供する工程、(2)前記ポリエチレン組成物を酸素調整する工程、(3)それによって酸素調整したポリエチレン組成物を形成する工程(ここで、前記酸素調整ポリエチレン組成物のRSI値は、酸素調整前のその初期値の10%〜300%増大する)、及び(4)それによって前記ポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する工程を含む。
【0014】
本明細書で使用する酸素調整(oxygen tailoring)という用語は、ポリエチレン組成物を、例えば溶融状態で、酸素と接触させる方法を指す。酸素は、混合物の一部であってもよく、またはそれ自体であってもよい。ポリエチレン組成物を酸素と接触させるのは、押出機でのポリエチレン組成物の熱機械処理と同時に行ってもよい。あるいは、ポリエチレン組成物を、例えば溶融状態で、酸素と接触させるのは、押出機でのポリエチレン組成物の熱機械処理を用いて行ってもよい。押出機は、任意の押出機であってもよい。例えば、押出機は、一軸スクリュー押出機または多軸スクリュー押出機、例えば二軸スクリュー押出機または連続ミキサーであってもよい。このような押出機は、一般に当業者には公知である。押出機は、前記ポリエチレン組成物1kg当たり0.10kWh〜0.50kWhの範囲内の比機械的エネルギーを提供し得る。1kg当たり0.10kWh〜0.50kWhの全ての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、比エネルギー入力は、0.10kWh/kg、0.12kWh/kg、0.14kWh/kg、または0.16kWh/kgの下限から、0.24kWh/kg、0.30kWh/kg、0.40kWh/kg、または0.50kWh/kgの上限までであることができる。例えば、押出機は、ポリエチレン組成物1kg当たり0.10kWh〜0.24kWh、あるいは、ポリエチレンkg当たり0.12kWh〜0.30kWh、あるいはポリエチレンkg当たり0.14kWh〜0.40kWh、あるいはポリエチレンkg当たり0.16kWh〜0.50kWhの範囲内の比機械的エネルギーを提供し得る。
【0015】
ポリエチレン組成物は、少なくとも1つのエチレンポリマーを含有する。エチレンポリマー(これは、エチレンホモポリマーであってもよいしまたはエチレンのインターポリマーであってもよい)は、様々な有用なフィルム、例えば汎用フィルム、透明フィルム、または収縮フィルムに容易に製造し得る。例えば、エチレンポリマーとしては、エチレンホモポリマー、およびエチレンと、3個〜約20個の炭素原子を含有する線状または分岐高級α−オレフィンとのインターポリマーが挙げられる。適当な高級α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンおよび3,5,5−トリメチル−1−ヘキセンが挙げられる。また、ジエン、特に非共役ジエンを、エチレンと重合させてもよい。適当な非共役ジエンは、約5個〜約20個の炭素原子を有する線状、分岐または環状の炭化水素ジエンである。特に好ましいジエンとしては、1,5−ヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、1,7−オクタジエンなどが挙げられる。また、エチレンポリマーとしては、例えばエチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)などが挙げられる。また、ビニル不飽和を有する芳香族化合物、例えばスチレンおよび置換スチレンも、コモノマーとして挙げることができる。特に好ましいエチレンポリマーは、エチレンと、0.1重量%〜約40重量%の、前記コモノマーから誘導される1つまたはそれ以上の単位を含む。ポリエチレン組成物は、0.900g/cm〜0.970g/cmの範囲内の密度を有し得る。0.900g/cm〜0.970g/cmの全ての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、密度は、0.900g/cm、または0.910g/cmの下限から、0.960g/cm、または0.970g/cmの上限までであることができる。例えば、密度は、0.910g/cm〜0.970g/cmの範囲内にあり得、あるいは、密度は、0.920g/cm〜0.960g/cmの範囲内にあり得る。ポリエチレン組成物は、2g/10分から20g/10分までの範囲内の高荷重メルトインデックス(I21)を有し得る。2g/10分から20g/10分までの全ての個々の値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、高荷重メルトインデックス(I21)は、2g/10分、4g/10分、5g/10分、または6g/10分の下限から12g/10分、13g/10分、14g/10分、または20g/10分までであることができる。例えば、高荷重メルトインデックス(I21)は、4g/10分から12g/10分までの範囲内にあり得る。あるいは、高荷重メルトインデックス(I21)は、5g/10分から13g/10分までの範囲内にあり得る。ポリエチレン組成物は、0.2〜10の範囲内のg’/g”。例えば、0.3〜1の範囲内のg’/g”を有し得る。ポリエチレン組成物は、2〜100の範囲内、例えば、8〜40の範囲内の分子量分布(M/M)を有し得る。ポリエチレン組成物は、10〜100の範囲内の初期緩和スペクトル指数(RSI)値を有し得る。RSI値は、無次元である。初期RSI値とは、酸素調整する前の本発明のポリエチレン組成物のRSI値を指す。前記酸素調整ポリエチレン組成物の酸素調整RSI値は、いずれかで酸素調整する前のその初期値の10%〜300%、好ましくは15%〜250%増大する。酸素調整RSI値とは、本発明の酸素調整ポリエチレン組成物のRSI値を指す。
【0016】
ポリエチレン組成物のRSIは、最初に前記ポリマーを剪断変形に供し、レオメーターを使用してその変形に対する応答を測定することによって決定される。当分野で公知であるように、ポリマーの応答ならびに使用するレオメーターの構造および形状に基づいて、緩和弾性率G(t)または動的弾性率G’(ω)およびG”(ω)は、時間tまたは周波数ωの関数としてそれぞれ決定し得る(J.M. Dealy and K.F. Wissbrun, Melt Rheology and Its Role in Plastics Processing, Van Nostrand Reinhold, 1990, pp.269-297参照)。動的弾性率と貯蔵弾性率の数学的関係は、フーリエ変換積分関係であるが、一組のデータを、他方から周知の緩和スペクトルを使用して算出することも可能である。S.H. Wasserman, J. Rheology, Vol.39, 601-625(1995) および米国特許第5,798,427号明細書(これは、参照することにより本明細書に完全に組み込まれる)参照。古典的な力学モデルを使用すると、それぞれ特徴的な強度または「重み」および緩和時間を用いて一連の緩和または「モード」を含む離散緩和スペクトルを定義し得る。このようなスペクトルを使用すると、弾性率は、
【数1】

(式中、Nは、モードの数であり、gおよびλは、モードのそれぞれの重みおよび時間である)として再表現される(J.D. Ferry, Viscoelastic Properties of Polymers, John Wiley & Sons, 1980, pp.224-263参照)。緩和スペクトルは、ポリマーについてソフトウェア、例えばIRIS(登録商標)流動学的ソフトウェア(これは、IRIS Developmentから市販されている)を使用して定義し得る。緩和スペクトルにおけるモードの分布が算出されると、分布の一次モーメントおよび二次モーメント(これらは、分子量分布の一次モーメントおよび二次モーメントであるMおよびMに類似している)は、次の通りに算出される:
【数2】

RSIは、
【数3】

として定義される。
【0017】
RSIは、ポリマーの分子量分布、分子量、および長鎖分岐のようなパラメーターに敏感であるので、RSIは、ポリマー加工性の信頼性のある指標である。RSIの値が高ければ高いほど、ポリマーの加工性がよくなる。
【0018】
任意の従来のエチレン重合法を、インフレーションフィルム法に適したポリエチレン組成物を製造するのに用いてもよい。このような従来のエチレン重合法としては、以下に限定されないが、従来の反応器、例えば気相反応器、ループ反応器、攪拌槽型反応器、および回分反応器を直列でまたは直列および並列で使用する気相重合、スラリー相重合、溶液相重合、およびこれらの組み合わせが挙げられる。重合系は、単一重合系、二重連続重合系、または多段連続重合系であってもよい。二重連続重合系の例としては、以下に限定されないが、気相重合/気相重合;気相重合/溶液相重合;溶液相重合/気相重合;溶液相重合/溶液相重合;スラリー相重合/スラリー相重合;溶液相重合/スラリー相重合;スラリー相重合/溶液相重合;スラリー相重合/気相重合;および気相重合/スラリー相重合が挙げられる。多段連続重合系としては、少なくとも2つまたはそれ以上の重合系を挙げ得る。予備重合もまた、反応系に用いてもよく、例えば、予備重合反応器は、前記の組み合わせのいずれかに先行する。
【0019】
触媒系もまた、従来の触媒系であってもよい。同様に、本発明のエチレンポリマーを調製するのに使用し得る触媒組成物は、エチレンの重合について公知の触媒組成物、例えば1つまたはそれ以上の従来のチーグラー・ナッタ触媒、クロムまたは修飾クロム触媒(アルミニウム、リンなど)、ニッケル系触媒、および任意のメタロセンまたはシングルサイト触媒を含有する触媒組成物(これらは全て、文献で十分に証明されている)のいずれかである。触媒ファミリー内または触媒ファミリー中の混合触媒系の使用も、本発明のエチレンポリマーを調製するのに使用し得る。
【0020】
一つの製造実施形態において、重合は、攪拌反応器または流動層反応器で、当分野で周知の装置および手順を使用して気相中で実施し得る。好ましくは、1psig(6.9kPag)〜1000psig(6.9MPag)、好ましくは50psig(345kPag)〜400psig(2.76MPag)、最も好ましくは100psig(690kPag)〜300psig(2.07MPag)の範囲内の圧力、および30℃〜130℃、好ましくは 65℃〜120℃の範囲内の温度が、使用される。エチレンと、その他のコモノマー(使用する場合)は、重合を開始させるのに十分な温度および圧力で、有効量の触媒組成物と接触させる。
【0021】
適当な気相重合反応系は、モノマー(1つまたは複数)および触媒組成物を加えてることができ、形成ポリエチレン粒子の層を収容する反応器を含む。本発明は、特定の型の気相反応系に限定されない。例として、従来の流動層法が、1つまたはそれ以上のモノマーを含有するガス流を、流動層反応器に、反応条件下でおよび触媒組成物の存在下で、固体粒子の層を懸濁状態で保つのに十分な速度で連続的に通すことによって実施される。未反応ガス状モノマーを含有するガス流は、反応器から連続的に取り出され、圧縮され、冷却され、反応器に再循環される。生成物は、反応器から取り出され、構成モノマーが再循環流に添加される。
【0022】
従来の添加剤を、これらが本明細書に記載の重合法およびそれを用いて調製されるポリエチレン組成物の諸特性を妨害しないことを条件として、前記プロセスに含有させてもよい。
【0023】
水素を気相重合法で連鎖移動剤として使用する場合には、水素は、全モノマー供給材料のモル当たり水素約0.001モル〜約10モルの間の変動量で使用される。また、系の温度調節に望まれるように、触媒組成物および反応剤に不活性な任意のガスをガス流に存在させることもできる。
【0024】
別の製造実施形態において、直列に連結された二重連続重合系を使用してもよい。
【0025】
さらに別の製造実施形態において、助触媒を含む触媒系、エチレン、1つまたはそれ以上のα−オレフィンコモノマー、水素、および場合により不活性ガスおよび/または液体、例えば窒素、イソペンタン、およびヘキサンが、第一の成分を形成するために第一の反応器に連続的に供給される。第一の反応器は、第二の反応器に直列に連結されていてもよい。次いで、第一の成分/活性触媒混合物が、例えば第一の反応器から第二の反応器に何回かに分けて連続的に移される。エチレン、水素、助触媒、および場合により不活性ガスおよび/または液体、例えば窒素、イソペンタン、ヘキサンが、第二の反応器に連続的に供給され、生成物、すなわちポリエチレン組成物が、第二の反応器から例えば何回かに分けて連続的に取り出される。好ましいモードは、第一の反応器からバッチ量の第一成分を取り、これらを第二の反応器に再循環ガス圧縮装置によって発生させた差圧を使用して移すことにある。次いで、ポリエチレン組成物が、不活性雰囲気条件下でパージビンに移される。その後に、残留炭化水素が除去され、ポリエチレン組成物を酸素に暴露する前に残留アルキルアルミニウムおよび残留触媒を還元するために水分が導入される。
【0026】
次いで、ポリエチレン組成物は、押出機に移され、そこで例えば溶融状態で酸素に暴露される。このような酸素調整法は、当分野で周知である。酸素は、21%(重量/重量)未満の量で存在させてもよい。例えば、酸素は、0.5%(重量/重量)〜21%(重量/重量)の範囲内で存在させる。あるいは0.5%(重量/重量)〜10%(重量/重量)の範囲内で存在させる。押出機は、0.10kWh/kg〜0.50kWh/kg、例えば0.13kWh/kg〜0.27kWh/kgの範囲内の比エネルギー入力を提供し得る。改善されたバブル安定性を有する酸素調整ポリエチレン組成物は、さらに、1つまたはそれ以上のアクティブスクリーン(2つ以上が直列に配置されている)(それぞれのアクティブスクリーンは、約2μm〜約400μm、好ましくは約2μm〜約300μm、最も好ましくは約2μm〜約70μmのミクロン保持サイズを有する)に約5ポンド/時/インチ〜約100ポンド/時/インチ(1.0kg/s/m〜約20kg/s/m)の質量流速で通して処理することによって溶融選別し得る。このようなようさらなる溶融選別は、米国特許第6,485,662号明細書(これは、溶融選別を開示する程度まで参照することによって本明細書に組み込まれる)に開示されている。次いで、改善されたバブル安定性を有する酸素調整ポリエチレン組成物は、ペレット化される。このようなペレット化法は、一般に公知である。
【0027】
酸素調整ポリエチレン組成物は、さらに、過酸化物添加、照射(irradiation)、アジドカップリング、およびこれらの任意の組み合わせによって改質させてもよい。このようなさらなる改質は、当分野で周知である。
【0028】
酸素調整ポリエチレン組成物は、当分野で公知の技法を使用して必要に応じてその他のポリマーおよび樹脂とブレンドし得る。さらに、種々の添加剤および薬剤、例えば熱酸化および光酸化安定剤、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤およびアリールホスファイトまたはホスホナイト、架橋剤、例えばジクミルペルオキシド、着色剤、例えばカーボンブラックおよび二酸化チタン、潤滑剤、例えば金属ステアレート、加工助剤、例えばフッ素エラストマー、スリップ剤、例えばオレアミドまたはエルカミド、フィルム粘着または剥離剤、例えば調節された粒度のタルクまたはシリカ、発泡剤、難燃剤、成核剤、およびその他の従来の物質を、必要に応じて本発明の酸素調整ポリエチレン組成物と混合し得る。改善されたバブル安定性を有する酸素調整ポリエチレン組成物は、種々様々な完成品、例えばフィルム、例えば透明フィルムおよび収縮フィルムに製造するのに有用である。種々の方法を、このようなフィルムを形成するのに用いてもよい。例えば、フィルムは、インフレーションフィルム押出法によって形成してもよい。
【0029】
インフレーションフィルム押出法において、改善されたバブル安定性を有する酸素調整ポリエチレン組成物が提供される。改善されたバブル安定性を有する酸素調整ポリエチレン組成物は、環状サーキュラーダイを通して溶融押出しされ、それによってチューブを形成する。このチューブは、空気によって、例えばその直径の2倍または3倍に膨張され、同時に冷却空気がウエブを固体状態に冷却する。吹き込み成形(blowing)または延伸の程度が、引張り特性と耐衝撃性のバランスおよびレベルを決定する。内部空冷環も、押出量および光学品質を増大させる目的で使用し得る。急速冷却は、透明な光沢フィルムを得るのに必要な結晶質構造を達成するのに不可欠である。次いで、フィルムチューブは、ローラーのV字型フレーム内で押しつぶされ、バブル内の空気を捕捉するためにフレームの末端で挟まれる。ニップロールもダイからフィルムを引き出す。延伸速度が、物理的性質を、ブロー延伸比によって達成される横方向特性とバランスをとるために調整される。チューブは、そのまま巻き取ってもよく、または細長く切って1つまたはそれ以上のロール上に単一フィルム層として巻き取ってもよい。チューブは、直接袋に加工してもよい。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0031】
実施例1は、酸素調整された高密度ポリエチレン組成物である。実施例1の加工条件およびバブル安定性特性を、表Iおよび表IIに報告する。
【0032】
[比較例A]
比較例Aは、酸素調整されていない高密度ポリエチレン組成物である。比較例Aの加工条件およびバブル安定性特性を、表Iおよび表IIに報告する。
【0033】
[比較例B]
比較例Bは、酸素調整された高密度ポリエチレン組成物である。比較例Bの加工条件およびバブル安定性特性を、表Iおよび表IIに報告する。
【0034】
実施例1ならびに比較例AおよびBのRSI関係およびg’/g”関係を、図1よび2にグラフとして示す。図1および2は、RSIインデックスが、低いレベルの長鎖分岐(これは、バブル安定性に影響を及ぼし得る)に対してg’/g”の変化よりもよりいっそう敏感であることを明確に示している。
【表1】

【表2】

【0035】
試験方法
試験方法として、以下が挙げられる:
重量平均分子量(M)および数平均分子量(M)は、以下に本明細書に記載のように、3重検出器GPCを使用して当分野で公知の方法に従って決定した。
【0036】
エチレンポリマーの分子量分布は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で決定した。このクロマトグラフ装置は、Precision Detectors(マサチューセッツ州アマースト所在)製の2角度レーザー光散乱検出器モデル2040を備えたWaters(マサチューセッツ州ミルフォード所在)製の150℃高温ゲル透過クロマトグラフから構成されていた。前記の光散乱検出器の15°の角度を、計算のために使用した。データ収集は、ViscotekのTriSECソフトウエア・バージョン3と、4チャンネルViscotek Data Manager DM400を使用して行った。この装置は、Polymer Laboratories製のオンライン溶媒脱ガス装置を備えていた。カルーセルコンパートメントを140℃で操作し、カラムコンパートメントを150℃で操作した。使用したカラムは、4本のShodex HT 806M 300mm、13μmカラムと、1本のShodex HT803M 150mm、12μmカラムであった。使用した溶媒は、1,2,4−トリクロロベンゼンであった。試料は、50mlの溶媒中にポリマー0.1gの濃度で調製した。クロマトグラフ溶媒および試料調製溶媒は、200μg/gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。両方の溶媒源は、窒素スパージした。ポリエチレン試料は、160℃で4時間穏やかに攪拌した。使用した注入量は、200μlであり、流量は0.67ml/分であった。GPCカラムセットの較正は、580g/gモルから8,400,000g/gモルまでの範囲の分子量を有し、それぞれの分子量の間に少なくとも10の隔たりで6個の「カクテル」混合物で配置された21個の狭い分子量分布のポリスチレン標準物質を用いて行った。前記標準物質は、Polymer Laboratories(英国シュロップシャー州所在)から購入した。ポリスチレン標準物質は、1,000,000g/gモル以上の分子量については、50mlの溶媒中に0.025gで調製し、および1,000,000g/gモル未満の分子量については50mlの溶媒中に0.05gで調製した。ポリスチレン標準物質は、80℃で30分間穏やかに攪拌しながら溶解させた。狭い標準物質の混合物を、最初に流し、最も高い分子量の成分から分子量を低下させる順序で流して、分解を最小限にした。ポリスチレン標準ピーク分子量は、次式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym., Let., 6, 621 (1968) に記載されている):
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン
(式中、Mは分子量であり、Aは0.41の値を有し、およびBは1.0に相当する)
を使用してポリエチレン分子量に変換した。多重検出器オフセット(offset)を決定するための系統的アプローチは、Balke、Moureyらによって公表された方法(Mourey and Balke, Chromatography Polym. Chpt 12,(1992) およびBalke, Thitiratsakul, Lew, Cheung, Mourey, Chromatography Polym. Chpt 13,(1992))と同じ方法で行い、Dowブロードポリスチレン1683からの二重検出器log結果を、自社製ソフトウェアを使用して狭い標準物質較正曲線から狭い標準物質カラム較正結果に最適化した。オフセット決定のための分子量データは、Zimm(Zimm, B.H., J. Chem. Phys., 16, 1099(1948))およびKratochvil(Kratochvil, P., Classical Scattering from Polymer Solutions, Elsevier, Oxford, NY(1987))によって公表された方法と同じ方法で得た。分子量の決定のために使用した全注入濃度は、試料の屈折率面積と、NISTポリエチレンホモポリマー標準物質1475を参照して測定し115,000g/gモルの分子量の線状ポリエチレンホモポリマーからの屈折率検出器較正とから得た。クロマトグラフ濃度は、第二ビリアル係数の影響(分子量に対する濃度の影響)を処理することを省くのに十分に低いと推定された。分子量の算出は、自社製ソフトウェアを使用して行った。数平均分子量(M)、および重量平均分子量(M)の算出は、屈折計の信号が重量分率に正比例すると仮定して、以下の式にしたがって行った。ベースラインを差し引いた屈折計の信号は、以下の式の重量分率に直接置き換えることができる。分子量は、従来の較正曲線、または光散乱と屈折計の比からの絶対分子量から得ることができることに留意されたい。
【数4】

【0037】
樹脂密度は、イソプロパノール中で、アルキメデス置換法、ASTM D 792−03、Method Bで測定した。試験片(直径約45mmおよび厚み約2mm)は、測定の前に熱平衡に達するように、イソプロパノール浴中で、23℃で8分間状態調節した後に、成形の1時間以内に測定した。試験片を、ASTM D−4703−00、Annex Aに従って、Procedure Cによって約190℃および100psig(690kPag)での5分間の初期加熱時間、1500psig(10.3MPag)、約190℃での3分の加熱時間で圧縮成形し、次いで1500psig(10.3MPag)で、15℃/分の冷却速度で45℃に冷却し、「手触りが冷たくなる」まで冷却を続けた。
【0038】
メルトフローレートの測定は、ASTM D−1238−04、21.6kg重量で190℃の条件(これは、高荷重メルトインデックス(I21)として公知である)に従って行った。メルトフローレートは、ポリマーの分子量に反比例する。従って、分子量が高ければ高いほど、メルトフローレートが低いが、その関係は直線的ではない。
【0039】
バブル安定性の不良は、バブルを制御できないことおよび優れたゲージ(厚み)均一性を有するフィルムを形成できないこととして定義される。バブル安定性は、Hosokawa Alpine Corporationから市販されているの以下のインフレーションフィルムラインで、以下の条件下で測定される:
押出機およびフィルムラインの操作パラメーター
バレル帯域1 390°F(199℃)
バレル帯域2 400°F(204℃)
アダプター底部 400°F(204℃)
アダプター鉛直部 410°F(210℃)
下部ダイ 410°F(210℃)
中間部ダイ 410°F(210℃)
上部ダイ 410°F(210℃)
押出量 100ポンド/時(45.4kg/時)
ブローアップ比(BUR)4:1
ネック高さ 32インチ(0.81m)
フロストラインの高さ 42インチ(1.07m)
溶融温度 410°F(210℃)
折り径 25.25インチ(0.64m)
フィルム厚 0.001インチ(1.0ミル)(25μm)
0.0005インチ(0.5ミル)(13μm)
【0040】
インフレーションフィルム装置の説明
Alpine HS50S据付型押出装置
−50mm 21:1 L/D溝付き供給押出機
−60hp(44.8kW)DC駆動
−押出機は、円筒状スクリーン交換機を有する
−9個のRKC温度調節器を有する標準制御パネル
Alpine Die BF10−25
−12スパイラルデザイン
−100mmダイ直径を構成するためにインサートを完備する
Alpine Air Ring HK300
−シングルリップデザイン
−100mmダイ直径用のエアリップ
−変速AC駆動を有する7.5hp(5.6kW)ブロワー
バブルキャリブレーションIris Model KI 10−65
−折り径(LFW)範囲7〜39インチ(0.178〜0.991m)
Alpine引取装置Model A8
−硬質木材羽板を有するサイドガイド付案内板
−最大LFW:31インチ(0.787m)
−ローラー表面幅:35インチ(0.889m)
−最大引取速度:500フィート/分(2.54m/s)
−4アイドラーローラー
Alpine表面巻取機Model WS8
−最大LFW:31インチ(0.787m)
−ローラー表面幅:35インチ(0.889m)
−最大ライン速度:500フィート/分(2.54m/s)
−自動カットオーバ
【0041】
特に明記しない限りは、重力供給(gravimetric feed)を用いた。吹き込み成形および巻き取りを、押出速度100ポンド/時(45.4kg/時)および巻取機速度82.5フィート/分(0.42m/秒)で、ネック高さ32インチ(0.81m)を用い、折り畳み幅24.5インチ(0.622m)を用い、約0.001インチ(1.0ミル;25μm)の厚みのフィルムを生成する対称バブルを用いて開始し、確立した。これらの条件を、少なくとも20分間維持し、前記プロセスに吹き込まれたバブルを、ヘリカル不安定性またはバブル直径の変動について目視観察した。ヘリカル不安定性は、バブルの周囲のヘリカルパターンの直径の減少を伴う。バブル直径の変動は、大きな直径および小さい直径が交互に生じることを伴う。バブルは、これらの条件(ヘリカル不安定性およびバブル直径の変動)のいずれも約10分間の操作中に観察されない限りは、数個のバブルチャッター(bubble chatter)が観察される可能性がある場合であっても安定であるとみなされる、すなわち合格とみなされる。100ポンド/時(45.4kg/時)の一定の押出機押出量を維持しながら、巻取機速度を、増大させてバブルが不安定になるまでフィルムの厚みを減少させた。エアリングブロワー設定を調整してネック高を維持しながら、巻取機速度を約10フィート/分(0.05m/秒)の増分で増加させた。それぞれの増分で、前記プロセスに吹き込まれたバブルを、ヘリカル不安定性またはバブル直径の変動について目視観察した。バブルが不安定になった巻取機速度を、最大巻取機速度として記録した。
【0042】
樹脂のレオロジーを、ARES I(Advanced Rheometric Expansion System)レオメーターで測定した。ARESは、歪み制御レオメーターである。回転アクチュエータ(サーボモータ)は、試料に剪断変形を歪みの形で加える。試料組成物を、レオロジー測定のためにディスクに圧縮成形する。このディスクは、試料を0.071インチ(1.8mm)厚のプラックにプレスすることによって調製し、その後に「直径1インチ(25.4mm)」のディスクに切断した。圧縮成形手順は、以下の通りであった:100psig(689kPag)で5分間365°F(185℃);1500psig(10.3MPag)で3分間365°F(185℃);27°F(15℃)/分で周囲温度(約23℃)まで冷却する。
【0043】
それに応じて、試料は、トルクを生じ、それをトランデューサーで測定する。歪みおよびトルクを使用して、動的機械的特性、例えば弾性率および粘度を算出する。試料の粘弾性特性を、溶融物中で、一定の歪み(10%)および温度(190℃)で、設定した平行板を使用して、変動周波数(0.01s−1〜100s−1)の関数として測定した。樹脂の貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、tanδ、および複素粘度(eta)を、Rheometrics Orchestratorソフトウェア(v.6.5.8)を使用して決定した。RSI値は、IRIS Developmentから市販されているIRIS(登録商標)流動学的ソフトウェアを使用して決定した。
【0044】
本発明は、その精神および必須の属性から逸脱することなく別の形で具体化してもよく、従って、発明の範囲を示すものとして、前記明細書よりもむしろ、添付の特許請求の範囲を参照すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法であって、
0.900g/cm〜0.970g/cmの範囲内の密度および10〜100の範囲内の緩和スペクトル指数(RSI)値を有するポリエチレン組成物を提供する工程、
前記ポリエチレン組成物を酸素調整する工程、
それによって酸素調整したポリエチレン組成物を形成する工程(ここで、前記酸素調整ポリエチレン組成物のRSI値は、その初期値の10%〜300%増大する)、及び
それによって前記ポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する工程
を含む、インフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法。
【請求項2】
前記酸素調整工程が、前記ポリエチレン組成物を溶融状態で酸素と接触させることを含む、請求項1に記載のインフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法。
【請求項3】
前記酸素調整工程が、押出機での前記ポリエチレン組成物の熱機械的処理をさらに含む、請求項2に記載のインフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法。
【請求項4】
前記押出機が、前記ポリエチレン組成物1kg当たり0.10kWh〜0.50kWhの範囲内の比エネルギー入力を提供する、請求項3に記載のインフレーションフィルム押出法に適したポリエチレン組成物のバブル安定性を改善する方法。
【請求項5】
前記ポリエチレン組成物を請求項1に記載の方法にしたがって製造する、改善されたバブル安定性を有するポリエチレン組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−517371(P2013−517371A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550057(P2012−550057)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/021461
【国際公開番号】WO2011/090914
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】