説明

インフレーター及びインフレーターの製造方法

【課題】簡素な構成として、製造工数及びコストを低減させることが可能なインフレーターを提供すること。
【解決手段】アウタケース4とインナケース17とを備える構成のインフレーター1。インナケース17が、略円筒状の外側筒部18と、外側筒部18と同心的に配置される略円筒状の内側筒部19と、外側筒部18と内側筒部19の一端側を相互に連結する連結壁部21と、を、備える。内側筒部19が、燃焼室29と点火室26とを区画して、内径寸法を、点火室26内に配置されるイニシエータ13を嵌合可能な寸法に、設定される。フィルタ24が、インナケース17における連結壁部21と対向する側の開口20に挿入させることにより、インナケース17に保持される。インナケース17とフィルタ24とにより囲まれる領域が、ガス発生剤30を充填させた燃焼室29を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内部に充填させたガス発生剤を燃焼させて、膨張用ガスを発生させるパイロタイプのインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パイロタイプのインフレーターとしては、外形形状を略円柱状としたハウジングにおいて、ハウジングの軸方向に沿って分割された2つの部材を固着させて構成されるアウタケースの内周側に、点火室に配置されるイニシエータ側を開口させた略円筒状のインナケースを配置させ、中央に配置される点火室とインナケースとの間を燃焼室として、ガス発生剤を充填させて構成されるものがあった。また、このインフレーターでは、インナケースの内部であって、開口と対向する壁部側に、ガス発生剤を燃焼させて発生した膨張用ガスを濾過して冷却する略ドーナツ板状のフィルタを配置させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−297418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のインフレーターでは、インナケースは、燃焼室を構成するものではなく、アウタケースとの間に隙間を設けるために、配設されるものであって、イニシエータ側の開口にかけて、拡開されるように形成されていることから、インフレーターに、インナケースとは別に、燃焼室を構成し、ガス発生剤の外周側を覆うとともにガス発生剤とフィルタとを保持する保持部材と、ガス発生剤のイニシエータ側を覆うようなクッション材と、が、配設されている。また、従来のインフレーターは、インナケースと別体として、燃焼室と点火室を区画する略円筒状の区画壁部も、備えている。また、従来のインフレーターでは、インナケースとアウタケースにおけるフィルタ側の天井側部材、区画壁部とアウタケースにおけるイニシエータ側の底側部材、そして、天井側部材と底側部材、を、それぞれ、溶接を用いて相互に固着させている構成である。そのため、従来のインフレーターでは、部品点数が多く、かつ、溶接箇所が多いことから、簡素な構成として、製造工数及びコストを低減させる点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡素な構成として、製造工数及びコストを低減させることが可能なインフレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインフレーターは、外形形状を略円柱状とされるハウジングと、
ハウジングの略中央に配置されて、内部に伝火薬を充填させて構成されるとともに、伝火薬を点火可能なイニシエータを、ハウジングにおける軸方向に沿った一方の端壁側に配設させて構成される点火室と、
ハウジング内において、点火室の外周側を、ハウジングの軸心を中心として周方向に沿った略全域にわたって囲むように配置されるとともに、内部に、伝火薬の点火により燃焼して膨張用ガスを発生可能なガス発生剤を、充填させて構成される燃焼室と、
ハウジング内に配置されて、燃焼室内で発生した膨張用ガスを濾過して冷却するフィルタと、
ハウジングに形成されて、フィルタにより濾過された膨張用ガスを外部に吐出可能なガス吐出口と、
を備える構成とされ、
フィルタが、外形形状を略ドーナツ板状として、ハウジングにおける軸方向に沿った一方の端壁側に、配設される構成のインフレーターであって、
ハウジングが、
イニシエータ側に位置する底側部材と、イニシエータから離れた側に位置する天井側部材と、から構成されるとともに、ガス吐出口を有するアウタケースと、
アウタケースの内周側に配置されて、ハウジングの軸方向に沿った両端側を、アウタケースに当接させるように構成されるインナケースと、
を備え、
インナケースが、アウタケースに近接して配置されて軸方向をハウジングの軸方向に略沿わせて形成される略円筒状の外側筒部と、外側筒部の内側において外側筒部と同心的に配置される略円筒状の内側筒部と、外側筒部と内側筒部とにおけるハウジングの軸方向に沿った一端側を相互に連結する連結壁部と、を、備えるとともに、ハウジングの軸方向における連結壁部と対向する部位を、フィルタを配設させるための開口として、構成され、
インナケースにおいて、内側筒部が、燃焼室と点火室とを区画して、内部に伝火薬を充填させて構成されるとともに、内径寸法を、底側部材に保持されたイニシエータを嵌合可能な寸法に、設定され、
フィルタが、インナケースにおけるフィルタ側の開口を塞ぐようにして、開口に挿入させることにより、インナケースに保持され、
インナケースとフィルタとにより周囲を囲まれる領域が、ガス発生剤を充填可能として、燃焼室を構成し、
内側筒部に、伝火薬の燃焼時に発生する火炎を燃焼室内に伝播可能な連通孔が、形成され、
アウタケースとインナケースとの間に、フィルタにより濾過された膨張用ガスをガス吐出口側に案内可能なガス流路が、形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のインフレーターでは、アウタケースの内周側に配置されるインナケースが、外側筒部と内側筒部と連結壁部とを有して、断面略U字状の回転体状として構成されるとともに、外側筒部と内側筒部との間の開口部分に、フィルタを挿入させることにより、この開口部分をフィルタによって閉塞されることとなる。そして、インナケースとフィルタとにより囲まれる領域を、ガス発生剤を内部に充填させる燃焼室とし、インナケースの内側筒部に囲まれる領域を点火室としている。すなわち、本発明のインフレーターでは、燃焼室と点火室とを区画する部材を別途配設させなくともよく、また、フィルタを、外側筒部と内側筒部との間の開口部分に挿入させることにより、インナケースに保持させていることから、フィルタを保持させるための保持部材も不要となって、従来のインフレーターと比較して、部品点数も低減させることができる。また、本発明のインフレーターでは、インナケースの内側筒部は、アウタケースにおける底側部材側に配設されるイニシエータを、嵌合させる構成とされており、インナケースは、ハウジングの軸方向に沿った両端側をアウタケースに当接させるように構成されていることから、インナケースは、ハウジングの軸直交方向側へのずれ移動を、イニシエータにより抑えられ、ハウジングの軸方向側へのずれ移動をアウタケースにより抑えられるようにして、アウタケースの内周側に収納されることとなる。そのため、本発明のインフレーターでは、アウタケースとインナケースとを備える構成であっても、インナケースが、アウタケースにより軸方向側の両端と軸直交方向側とを押えられた状態で、内部で動くことなく、アウタケース内に収納されることから、製造時に、アウタケースにおける底側部材と天井側部材のみを、かしめや溶接等を利用して相互に連結させて組み付ければよく、従来のインフレーターと比較して、溶接箇所を低減させることができる。その結果、本発明のインフレーターでは、部品点数を低減させることができるとともに、製造時の溶接箇所を低減させることができることから、製造工数及び製造コストを低減させることができて、安価に製造することができる。
【0008】
したがって、本発明のインフレーターでは、簡素な構成として、製造工数及びコストを低減させることができる。
【0009】
また、この種のインフレーターでは、作動時に、燃焼室内が高圧となるが、本発明のインフレーターでは、燃焼室において、フィルタから離れた領域が、略全域にわたって、インナケースの連結壁部及び外側筒部と、アウタケースと、の二層構造とされていることから、強度を確保することができ、アウタケース及びインナケースを構成する各板材の板厚を相対的に薄くすることも可能となって、軽量化を図ることも可能となる。
【0010】
さらに、本発明のインフレーターにおいて、ガス流路に、外側筒部におけるフィルタと重なる領域に配置されるガス流出穴を配設させる構成とし、
ガス流出穴を、ガス吐出口に対して、ハウジングの軸方向側、若しくは、ハウジングの軸心を中心とした周方向側で、オフセットされて配置させる構成とすることが好ましい。
【0011】
上記構成のインフレーターでは、ガス流出穴から流出される膨張用ガスは、ガス流路内において、アウタケースの内周面に一旦当たって、偏向された状態で、ガス吐出口から外部へ吐出されることとなることから、フィルタに加えて、アウタケースの内周面によっても、膨張用ガスに含まれる残渣を捕捉することが可能となる。
【0012】
さらにまた、上記構成のインフレーターにおいて、インナケースを、合成樹脂から形成してもよいが、板金製として、プレス加工により形成する構成とすれば、強度と耐熱性とを有したインナケースを容易に製造することができ、製造コストを一層低減させることができて、好ましい。
【0013】
また、本発明のインフレーターは、インナケースの内部に、フィルタ側の開口から、ガス発生剤を充填させ、
インナケースの開口を塞ぎ可能な大きさに設定されるフィルタを、開口に挿入させて、フィルタをインナケースに保持させ、
アウタケースにおける底側部材に保持されたイニシエータを、インナケースにおける内側筒部に嵌合させ、
インナケースにおける内側筒部の内側の領域に、伝火薬を充填させて、
底側部材に保持されたイニシエータのインナケースへの嵌合後に、フィルタの外周側を覆うように配置させた天井側部材と、底側部材と、を連結させることにより、製造することができる。
【0014】
このようなインフレーターの製造方法では、開口から、インナケースの内部にガス発生剤を充填させた後、開口を塞ぐように、フィルタを開口に挿入させてインナケースに保持させれば、ガス発生剤を燃焼室内に封入することができることから、ガス発生剤の充填作業が容易である。また、本発明のインフレーターでは、インナケースにおける内側筒部が、燃焼室と点火室とを区画しており、伝火薬は、インナケースにおける内側筒部に囲まれる領域に、充填されていることから、インフレーターの製造時における伝火薬の充填作業の作業性も良好である。そのため、インフレーターを容易に製造することができる。
【0015】
そして、本発明のインフレーターの製造方法において、インナケースに、内側筒部において、連結壁部から離れた側の端部側を閉塞するような閉塞壁部を、配設させた構成とすれば、インナケースにおける内側筒部と閉塞壁部とにより囲まれる領域に、イニシエータを固着させるための開口から、伝火薬を充填し、その後、イニシエータを内側筒部に挿入させて、内側筒部に嵌合させれば、点火室を閉塞できることから、伝火薬の取り扱いが容易となり、一層容易にインフレーターを製造することが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図2】図1のインフレーターにおいて使用されるインナケースの斜視図である。
【図3】図2のインナケースの縦断面図である。
【図4】第1実施形態のインフレーターにおいて、作動時の膨張用ガスの流れを説明する概略部分拡大縦断面図である。
【図5】第1実施形態の変形例のインフレーターの概略縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図7】図6のインフレーターにおいて使用されるインナケースの斜視図である。
【図8】図7のインナケースの縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態であるインフレーターの概略縦断面図である。
【図10】図9のインフレーターにおいて使用されるインナケースの斜視図である。
【図11】図10のインナケースの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態のインフレーター1は、車両に搭載されるエアバッグ装置に使用されるもので、実施形態の場合、外形形状を扁平な略円柱状としたディスクタイプとされている。インフレーター1は、図1に示すように、外形形状を略円柱状とされるハウジング3と、ハウジング3内に配置される点火室26と、ハウジング3内における点火室26の外周側に配置される燃焼室29と、燃焼室29内に充填されるガス発生剤30と、点火室26内に充填される伝火薬27と、点火室26内に配置されて伝火薬27を点火可能なイニシエータ13と、ハウジング3内に配置されてガス発生剤30の燃焼により発生する膨張用ガスG1を濾過するためのフィルタ24と、を備えて構成されている。なお、実施形態では、ハウジング3の軸方向に沿った方向を上下方向として、ハウジング3における後述する天井壁7側を上方とし、底壁8側を下方として、説明をする。
【0018】
ハウジング3は、実施形態の場合、アウタケース4と、アウタケース4の内周側に配置されるインナケース17と、を備えて構成されている。アウタケース4は、ステンレス鋼等の鋼板を用いて形成されるもので、略円筒状の周壁5と、周壁5における軸方向の両端側を塞ぐ略円形の天井壁7及び底壁8と、を有している。周壁5における上下方向の中央よりやや下方(底壁8側)には、略四角環状のフランジ部5aが、外周面から突設されている。また、周壁5における天井壁7側であって、フランジ部5aと天井壁7との間の略中央となる部位には、ガス発生剤30が燃焼して発生した膨張用ガスG1を、外部へ吐出可能に略円形に開口したガス吐出口6が、周方向に沿った全域にわたって多数配設されている。アウタケース4は、天井壁7側であってイニシエータ13から離れた側に位置する天井側部材10と、底壁8側であってイニシエータ13側に位置する底側部材11と、から構成されている。実施形態の場合、天井側部材10は、天井壁7と周壁5におけるフランジ部5aまでの上側部位5bとを構成している。底側部材11は、底壁8と周壁5におけるフランジ部5aより下方となる下側部位5cとを構成している。また、実施形態の場合、天井側部材10と底側部材11とは、実施形態の場合、フランジ部5aの内側の領域で、内外方向で相互に重なる領域を有し、この相互に重なる領域を周方向の略全域にわたって溶接させることにより、相互に連結されている。
【0019】
また、アウタケース4の底側部材11において、底壁8の略中央となる位置には、イニシエータ13が、保持されている。イニシエータ13は、イニシエータ本体14と、イニシエータ本体14を底壁8に保持させる合成樹脂製のホルダ15と、から構成されるもので、周囲をインナケース17の後述する内側筒部19に囲まれるようにして、点火室26内に配置されている。イニシエータ本体14は、点火室26内に充填される伝火薬27に点火可能な点火部14aと、点火部14aから延びる一対の導電性ピン14bと、を有する構成とされている。ホルダ15は、外形形状を略円柱状として、イニシエータ本体14の導電性ピン14bを外部に露出させるように、イニシエータ本体14の周囲を保持するもので、実施形態の場合、6,6−ナイロン、6−ナイロン等のポリアミド樹脂に、ガラス繊維を含有させた合成樹脂製とされている。そして、実施形態の場合、アウタケース4における底側部材11と、イニシエータ本体14と、は、ホルダ15の形成時に、インサート成形により一体化されて、イニシエータ13を底側部材11に保持させている。実施形態の場合、イニシエータ13は、ホルダ15をインナケース17の内側筒部19に圧入させることにより、内側筒部19に嵌合される構成とされている。そして、実施形態では、ホルダ15の外径寸法R1(図1参照)は、実施形態の場合、インナケース17の内側筒部19の内径寸法r1(図3参照)より、若干大きくして、内側筒部19に圧入可能な寸法に、設定されている。
【0020】
インナケース17は、断面形状を略U字形状とした回転体状とされるもので、詳細に説明すれば、図2,3に示すように、アウタケース4の周壁5に近接して配置されるとともに軸方向をハウジング3の軸方向に略沿わせて形成される略円筒状の外側筒部18と、外側筒部18の内側において外側筒部18と同心的に配置される略円筒状の内側筒部19と、外側筒部18と内側筒部19とにおける下端側(イニシエータ13側)を相互に連結する略ドーナツ板状の連結壁部21と、内側筒部19において連結壁部21から離れた側(天井壁7側)の端部側(上端側)を閉塞する略円板状の閉塞壁部22と、を備えて構成されている。そして、インナケース17は、外側筒部18と内側筒部19との間の領域の上方側(天井壁7側)を、開口させるように、構成されている。すなわち、インナケース17は、ハウジング3の軸方向における連結壁部21と対向する部位を、フィルタ24を配設させるための開口20として、構成されている。このインナケース17は、外径寸法(外側筒部18の外径寸法R2と一致、図3参照)を、アウタケース4における底側部材11の内径寸法r2(図1参照)より若干小さくして、底側部材11における周壁5を構成する部位に、挿入可能な寸法に設定されている。また、インナケース17は、ハウジング3の軸方向側に沿った幅寸法(上下方向側の幅寸法)W1(図3参照)を、アウタケース4における底壁8と天井壁7との間の離隔距離D1(図1参照)と略同一として、アウタケース4内への収納時に、ハウジング3の軸方向(上下方向)に沿った一端側の連結壁部21を底壁8と当接可能とし、かつ、他端側の閉塞壁部22を天井壁7と当接可能に、設定されている。実施形態の場合、内側筒部19は、内径寸法r1を、外側筒部18の内径寸法r3(図3参照)の1/3程度に、設定されている。
【0021】
インナケース17において、外側筒部18と内側筒部19との間の領域の上方の開口20は、フィルタ24により、塞がれている。すなわち、フィルタ24は、ハウジング3における軸方向に沿った一方の端壁側となる天井壁7側に、配設されている。このフィルタ24は、金網等からなるメッシュ状とされるもので、中央に、インナケース17の内側筒部19を圧入可能な開口24aを有した略ドーナツ板状として、構成されている。このフィルタ24は、燃焼室29内で発生した膨張用ガスG1に含まれる残渣を捕捉するとともに、膨張用ガスG1を冷却させるためのものである。実施形態の場合、フィルタ24は、インナケース17の開口20に圧入されることにより、インナケース17に嵌合される構成とされている。そして、実施形態の場合、フィルタ24は、外径寸法R3(図1参照)を、インナケース17の外側筒部18の内径寸法r3より、若干大きくし、かつ、開口24aの内径寸法r4(図1参照)を、インナケース17における内側筒部19の外径寸法R4(図3参照)より、若干小さくして、インナケース17の開口20に圧入可能な寸法に、設定されている。また、実施形態の場合、フィルタ24は、厚さ寸法T1(図1参照)を、インナケース17におけるハウジング3の軸方向側に沿った幅寸法(上下方向側の幅寸法)W1の1/3程度に設定されて、上面24bを、インナケース17における閉塞壁部22の上面と略面一とするように、インナケース17における外側筒部18に、圧入により固着されている。
【0022】
そして、実施形態のインフレーター1では、インナケース17において内側筒部19と閉塞壁部22とにより囲まれる領域が、点火室26を構成し、インナケース17(内側筒部19,外側筒部18,連結壁部21)とフィルタ24とにより囲まれる領域が、燃焼室29を構成している。点火室26の内部には、イニシエータ本体14の作動により着火されて燃焼し、火炎を発生可能な所定の薬剤からなる伝火薬27が、充填されている。伝火薬27は、所定の燃料を結合材等とともに混合して、押出成形やプレス成形等により所定形状(実施形態の場合、粒状)に成形されている。なお、伝火薬としては、B/KNO3に例示されるような汎用の金属粉末と酸化剤との混合物を使用することができる。内側筒部19には、フィルタ24から離れた位置であって、実施形態の場合、ハウジング3の軸方向側(上下方向)の略中央となる位置に、伝火薬27の燃焼時に発生する火炎を燃焼室29内に伝播可能な連通孔19aが、形成されている。連通孔19aは、ハウジング3の軸心C1を中心として放射状となる複数箇所(実施形態の場合、4箇所)に、形成されている。
【0023】
燃焼室29内に充填されるガス発生剤30は、伝火薬27の点火により燃焼して膨張用ガスG1を発生するもので、所定の燃料を結合材等とともに混合して、押出成形やプレス成形等により、所定形状に成形されたものを使用している。ガス発生剤30としては、通常のインフレーターにおいてガス発生剤として用いられる非アジ化系のガス発生剤を使用することができ、具体的には、グアニジン系、アミノテトラゾール系、トリアジン系、ヒドラジン系、トリアゾール系、アゾジカルボンアミド系、ビテトラゾール系等のものを使用することができる。
【0024】
インナケース17の外側筒部18において、フィルタ24と重なる上端近傍の領域には、膨張用ガスG1を流出可能なガス流出穴18aが、形成されている。ガス流出穴18aは、ハウジング3の軸心C1を中心として放射状となる複数箇所に、形成されている。実施形態の場合、ガス流出穴18aは、図2,3に示すように、連通孔19aに対して、ハウジング3の軸心C1を中心とした周方向側でずれた4箇所に、形成されている。また、実施形態の場合、ガス流出穴18aは、アウタケース4に形成されるガス吐出口6に対して、ハウジング3の軸方向側(上下方向)でオフセットされるように、ガス吐出口6よりも上方となる位置に、形成されている。また、ガス流出穴18aは、ガス吐出口6に対して、ハウジング3の軸心C1を中心とした周方向側においても、オフセットされて、配置されている。なお、図1,4では、ガス流出穴18aとガス吐出口6とは、周方向側で一致するように描かれているが、膨張用ガスG1の流れを明確に図示可能に、同一断面上に開口するように記載したもので、実際には、ガス流出穴18aとガス吐出口6とは、周方向側でずれた位置(同一断面上でともに開口しないように)に、形成されている。また、ガス流出穴18aは、ガス吐出口6より配置数が少ないものの、図4に示すように、開口径をガス吐出口6の開口径より大きく設定されて、全体の開口面積を、ガス吐出口6全体の開口面積よりも大きくするように、構成されている。
【0025】
第1実施形態のインフレーター1では、アウタケース4とインナケース17との間であって、インナケース17の外側筒部18に形成されるガス流出穴18aと、アウタケース4における周壁5とインナケース17の外側筒部18との間の隙間と、が、フィルタ24により濾過された膨張用ガスG1をガス吐出口6側に案内するガス流路31を構成している。そして、第1実施形態のインフレーター1では、燃焼室29内で発生した膨張用ガスG1は、図4に示すように、フィルタ24により濾過されて、残渣を捕捉され、かつ、冷却された状態で、ガス流出穴18aから流出し、インナケース17の外側筒部18と、アウタケース4の天井側部材10における周壁5を構成する部位と、の間の隙間からなるガス流路31を経て、ガス吐出口6から、放射状に、外部へ吐出されることとなる。
【0026】
なお、実施形態の場合、インナケース17は、ステンレス鋼等からなる平板状の板金素材を、絞り加工や孔開け加工等によるプレス加工により、形成されている。ちなみに、内側筒部19に形成される連通孔19aや、外側筒部18に形成されるガス流出穴18aは、絞り加工前に予め孔開け加工しておいてもよいし、内側筒部19や外側筒部18を絞り加工により形成した後に、形成してもよい。
【0027】
次に、第1実施形態のインフレーター1の製造について、説明をする。イニシエータ13は、アウタケース4における底側部材11と予め一体化させておく。まず、インナケース17を、閉塞壁部22を下方に向けるように反転させ、周囲を内側筒部19に囲まれたイニシエータ13を圧入させるための開口17a(図3参照)から、伝火薬27を、内側筒部19と閉塞壁部22とに囲まれる領域(点火室26)に充填させる。その後、底側部材11を上下で反転させた状態で上方から被せるようにして、インナケース17の開口17aに、イニシエータ13のホルダ15を圧入させて、イニシエータ13をインナケース17に固着させて、点火室26を閉塞させると同時に、インナケース17とアウタケース4における底側部材11とを連結させる。次いで、インナケース17及び底側部材11を、インナケース17の閉塞壁部22を上方に向けるように反転させて、開口20から、外側筒部18,内側筒部19,連結壁部21に囲まれる領域に、ガス発生剤30を充填させる。その後、開口20に、フィルタ24を圧入させて、フィルタ24をインナケース17に固着させて、燃焼室29を閉塞させる。さらに、フィルタ24の外周側を覆うように、アウタケース4の天井側部材10を上方から被せ、天井側部材10と底側部材11とを、フランジ部5aの内側で相互に重なる領域において、溶接させれば、天井側部材10と底側部材11とを連結させることができて、インフレーター1を製造することができる。
【0028】
第1実施形態のインフレーター1では、エアバッグ装置とともに車両に搭載された状態で、図示しないリード線を経て、制御装置からの作動信号が入力されると、イニシエータ本体14が、伝火薬27を燃焼させるように作動して、伝火薬27からの火炎を、連通孔19aを経て燃焼室29内に伝播させることにより、燃焼室29内に充填されるガス発生剤30を燃焼させることとなる。そして、ガス発生剤30を燃焼させて発生する膨張用ガスG1が、フィルタ24とガス流路31とを経て、ガス吐出口6からインフレーター1外部へ吐出されて、エアバッグ装置のエアバッグを膨張させることとなる。
【0029】
そして、第1実施形態のインフレーター1では、アウタケース4の内周側に配置されるインナケース17が、外側筒部18と内側筒部19と連結壁部21とを有して、断面略U字状の回転体状として構成されるとともに、外側筒部18と内側筒部19との間の開口部分(開口20)に、フィルタ24を圧入(挿入)させることにより、この開口20をフィルタ24によって閉塞されることとなる。そして、インナケース17とフィルタ24とにより囲まれる領域を、ガス発生剤30を内部に充填させる燃焼室29とし、インナケース17の内側筒部19に囲まれる領域を点火室26としている。すなわち、第1実施形態のインフレーター1では、燃焼室29と点火室26とを区画する部材を別途配設させなくともよく、また、フィルタ24を、外側筒部18と内側筒部10との間の開口20に圧入(挿入)させることにより、インナケース17に固着(保持)させていることから、フィルタを保持させるための保持部材も不要となって、従来のインフレーターと比較して、部品点数も低減させることができる。また、第1実施形態のインフレーター1では、インナケース17の内側筒部19は、アウタケース4における底側部材11側に配設されるイニシエータ13(ホルダ15)を、圧入(嵌合)させる構成とされており、インナケース17は、ハウジング3の軸方向に沿った両端側(連結壁部21及び閉塞壁部22)を、アウタケース4における底壁8及び天井壁7と当接させるように構成されていることから、インナケース17は、ハウジング3の軸直交方向側へのずれ移動を、イニシエータ13(ホルダ15)により抑えられ、ハウジング3の軸方向側へのずれ移動をアウタケース4により抑えられるようにして、アウタケース4の内周側に収納されることとなる。そのため、第1実施形態のインフレーター1では、アウタケース4とインナケース17とを備える構成であっても、インナケース17が、アウタケース4により軸方向側の両端と軸直交方向側とを押えられた状態で、内部で動くことなくアウタケース4内に収納されることから、製造時に、アウタケース4における底側部材11と天井側部材10のみを、溶接を利用して相互に連結させるように組み付ければよく、従来のインフレーターと比較して、溶接箇所を低減させることができる。その結果、第1実施形態のインフレーター1では、部品点数を低減させることができるとともに、製造時の溶接箇所を低減させることができることから、製造工数及び製造コストを低減させることができて、安価に製造することができる。
【0030】
したがって、第1実施形態のインフレーター1では、簡素な構成として、製造工数及びコストを低減させることができる。
【0031】
また、この種のインフレーターでは、作動時に、燃焼室内が高圧となるが、第1実施形態のインフレーター1では、燃焼室29において、フィルタ24から離れた領域が、略全域にわたって、インナケース17の連結壁部21及び外側筒部18と、アウタケース4と、の二層構造とされていることから、強度を確保することができ、アウタケース4及びインナケース17を構成する各板材の板厚を相対的に薄くすることも可能となって、軽量化を図ることも可能となる。
【0032】
さらに、第1実施形態のインフレーター1では、インナケース17の外側筒部18において、フィルタ24と重なる領域に形成されるガス流出穴18aが、ガス吐出口6に対して、ハウジング3の軸方向側(上下方向側)、及び、ハウジング3の軸心C1を中心とした周方向側で、オフセットされて配置されている。そのため、第1実施形態のインフレーター1では、ガス流出穴18aから流出される膨張用ガスG1は、ガス流路31内において、アウタケース4における周壁5の内周面に一旦当たって、偏向された状態で、ガス吐出口6から外部へ吐出されることとなることから、フィルタ24に加えて、アウタケース4の周壁5の内周面によっても、膨張用ガスG1に含まれる残渣を捕捉することができる。なお、実施形態では、ガス流出穴18aは、ガス吐出口6に対して、ハウジング3の軸方向側と軸心C1を中心とした周方向側との両方でオフセットされているが、勿論、ガス流出穴を、ガス吐出口に対して、軸方向側でのみ、あるいは、周方向側でのみ、オフセットさせるように配置させてもよい。また、上記点を考慮しなければ、勿論、ガス流出穴を、ガス吐出口に対して、軸方向側及び周方向側で略一致した位置に、配置させる構成としてもよい。
【0033】
さらにまた、第1実施形態のインフレーター1では、インナケース17を、板金製として、プレス加工により形成していることから、耐熱性を有する金属製のインナケース17を容易に製造することができ、製造コストを一層低減させることができる。勿論、インナケースを鋳造等から形成してもよい。
【0034】
また、第1実施形態のインフレーター1は、製造時に、開口20から、インナケース17の内部にガス発生剤30を充填させた後、開口20を塞ぐようにフィルタ24をインナケース17に圧入させれば、ガス発生剤30を燃焼室29内に封入することができることから、ガス発生剤30の充填作業が容易である。また、第1実施形態のインフレーターでは、インナケース17における内側筒部19が、燃焼室29と点火室26とを区画しており、伝火薬27は、インナケース17における内側筒部19に囲まれる領域に、充填されることから、製造時における伝火薬27の充填作業の作業性も良好である。そのため、第1実施形態では、インフレーター1を容易に製造することができる。
【0035】
さらにまた、第1実施形態のインフレーター1では、インナケース17の内側筒部19に、連結壁部21から離れた側の端部側を閉塞するような閉塞壁部22が、配設されている。そのため、第1実施形態のインフレーター1では、インフレーター1の製造時に、インナケース17における内側筒部19と閉塞壁部22とにより囲まれる領域に、イニシエータ13のホルダ15を固着させるための開口17aから、伝火薬27を充填し、その後、イニシエータ13のホルダ15を内側筒部19に圧入させれば、点火室26を閉塞できることから、伝火薬27の取り扱いが容易となり、一層容易にインフレーター1を製造することができる。
【0036】
勿論、このような点を考慮しなければ、図5に示す変形例のインフレーター1Aのように、インナケース17Aとして、閉塞壁部を備えない構成のものを使用してもよい。このインフレーター1Aでは、インナケース17Aが閉塞壁部を備えず、内側筒部19Aの上方側を開口させている構成以外は、インフレーター1と同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「A」を付して詳細な説明を省略する。また、このインフレーター1Aでは、インナケース17Aは、ハウジング3Aの軸方向(上下方向)に沿った一端側の連結壁部21Aをアウタケース4Aの底壁8Aに当接させた状態で、他端側の内側筒部19Aの上端を、アウタケース4Aの天井壁7Aに当接可能に、構成されている。このような構成のインフレーター1Aは、製造時に、まず、インナケース17Aにおけるイニシエータ13Aを固着させるための開口17aに、底側部材11Aに保持された状態のイニシエータ13Aのホルダ15Aを圧入させて、イニシエータ13Aをインナケース17Aの内側筒部19Aに固着させる。その後、インナケース17Aの開口20から、外側筒部18A,内側筒部19A,連結壁部21Aに囲まれる領域に、ガス発生剤30Aを充填させ、開口20Aに、フィルタ24Aを圧入させて、フィルタ24Aをインナケース17Aに固着させて、燃焼室29Aを閉塞させる。次いで、インナケース17Aにおいて内側筒部19Aに囲まれる領域に、上方の開口から、伝火薬27Aを充填させた後、フィルタ24Aの外周側を覆うように、アウタケース4Aの天井側部材10Aを上方から被せ、天井側部材10Aと底側部材11Aとを、フランジ部5aの内側で相互に重なる領域において、溶接させれば、インフレーター1Aを製造できる。
【0037】
なお、第1実施形態のインフレーター1では、インナケース17が閉塞壁部22を備えていることから、フィルタ24は、必然的に、イニシエータ13から離れた側に配置されることとなるが、インフレーター1Aのごとく、閉塞壁部を備えない構成のインナケース17Aを使用する場合、イニシエータを、フィルタに近接して、フィルタに外周側を囲まれるような領域(図1において、インナケース17の閉塞壁部22が配置される領域)に、配置させることも可能となる。このような構成の場合、フィルタは、イニシエータとともに、底壁側に配置され、インナケースの連結壁部が、天井壁側に配置されることとなる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態であるインフレーター33について、説明をする。インフレーター33は、図6に示すように、ハウジング3Bを構成するアウタケース34とインナケース17Bとの外形形状を若干異ならせる以外は、上述のインフレーター1と同様の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「B」を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
アウタケース34は、ステンレス鋼等の鋼板を用いて形成されるもので、前述のアウタケース34と同様に、略円筒状の周壁35と、周壁35における軸方向の両端側を塞ぐ略円板状の天井壁37及び底壁38と、を有しており、周壁35における軸方向側の略中央に、ガス発生剤30Bを燃焼させて発生する膨張用ガスG2を外部に吐出可能なガス吐出口36を、周方向に沿った全域にわたって、多数配設させている。また、アウタケース34は、前述のアウタケース4と同様に、天井壁37側であってイニシエータ13Bから離れた側に位置する天井側部材40と、底壁38側であってイニシエータ13B側に位置する底側部材41と、から構成されている。天井側部材40は、天井壁37と周壁35とを構成しており、底側部材41は、底壁38を有するとともに、底壁38の外周縁から上方に延びて周壁35の内周側に配置されるフランジ部41aを、備えている。そして、天井側部材40と底側部材41とは、天井側部材40における周壁35から延びるように形成される延設部位40aを、底壁38の下面側に圧接させるようにかしめることにより、相互に連結されている。
【0040】
第2実施形態のインフレーター33においても、底壁38の略中央に、イニシエータ13Bが保持されており、イニシエータ13Bは、前述のインフレーター1と同様に、合成樹脂製のホルダ15Bを介して、底側部材41と一体化されている。
【0041】
インナケース17Bは、外側筒部18Bに形成されるガス流出穴の位置及び形状以外は、前述のインナケース17と同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「B」を付して詳細な説明を省略する。そして、このインナケース17Bも、アウタケース34内への収納時に、ハウジング3Bの軸方向に沿った一端側となる連結壁部21Bを底壁38と当接可能とし、かつ、他端側の閉塞壁部22Bを天井壁37と当接可能に、設定されている。インナケース17Bの外側筒部18Bは、開口20Bの周縁となる上端近傍の領域を、部分的に切り欠いて構成されている。実施形態の場合、切欠部18bは、ハウジング3Bの軸心C2を中心として放射状となる3箇所に、形成されており(図7,8参照)、それぞれ、外側筒部18Bの周長の略1/6程度を切り欠かれて、形成されている。また、これらの切欠部18bは、図6に示すように、開口20Bにフィルタ24Bを圧入させた際に、フィルタ24Bと重なる領域のみに、形成されており、ガス吐出口36に対して、ハウジング3Bの軸方向側(上下方向側)でオフセットされて配置されている。そして、実施形態のインナケース17Bでは、この切欠部18bが、ガス流出穴を構成しており、切欠部18bは、全体の開口面積を、ガス吐出口36全体の開口面積より大きくするように、設定されている。
【0042】
第2実施形態のインフレーター33では、アウタケース34とインナケース17Bとの間であって、インナケース17Bの外側筒部18Bに形成されるガス流出穴としての切欠部18bと、アウタケース34における周壁35とインナケース17Bの外側筒部18Bとの間の隙間と、が、フィルタ24Bにより濾過された膨張用ガスG2をガス吐出口36側に案内するガス流路42を構成している。そして、この第2実施形態のインフレーター33においても、インナケース17Bとフィルタ24Bとにより囲まれる領域から構成される燃焼室29B内で発生した膨張用ガスG2は、図6に示すように、フィルタ24Bにより濾過されて、残渣を捕捉され、かつ、冷却された状態で、切欠部18b(ガス流出穴)から流出し、インナケース17Bの外側筒部18Bと、アウタケース34の周壁35との間の隙間と、からなるガス流路42を経て、ガス吐出口36から、放射状に、外部へ吐出されることとなる。
【0043】
また、この第2実施形態のインフレーター33も、前述のインフレーター1と同様に、イニシエータ13Bを圧入させるための開口17aから伝火薬27Bを点火室26B内に充填させ、インナケース17Bの開口17aにホルダ15Bを圧入させてイニシエータ13Bとインナケース17Bとを固着させた後、インナケース17Bの開口20Bからガス発生剤30Bを充填させ、開口20Bにフィルタ24Bを圧入させた後、アウタケース34の天井側部材40の延設部位40aを底壁38の下面側に圧接させるようにかしめれば、製造することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態であるインフレーター44について、説明をする。インフレーター44は、図9に示すように、ハウジング3Cを構成するアウタケース45とインナケース17Cとの外形形状を若干異ならせる以外は、上述のインフレーター1と同様の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「C」を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
アウタケース45は、ステンレス鋼等の鋼板を用いて形成されるもので、略円筒状の周壁46と、周壁46における軸方向の両端側を塞ぐ略円板状の天井壁47及び底壁48と、天井壁47から上方に突出するように形成される略円筒状のガス吐出部49と、を有している。ガス吐出部49は、天井壁47から連なるように上方に延びるとともに、先端側を閉塞されて形成されるもので、外径寸法を周壁46より小径として、軸心を周壁46と一致させるように、構成されている。また、実施形態の場合、ガス吐出部49は、外径寸法を、インナケース17Cの内側筒部19Cの外径寸法よりも若干大きくして構成されている。そして、ガス吐出部49には、ガス発生剤30Cを燃焼させて発生する膨張用ガスG3を外部に吐出可能なガス吐出口50が、ハウジング3Cの軸心C3を中心として放射状に、複数形成されている。また、アウタケース45は、前述のアウタケース4,34と同様に、天井壁47側であってイニシエータ13Cから離れた側に位置する天井側部材51と、底壁48側であってイニシエータ13C側に位置する底側部材52と、から構成されている。天井側部材51は、天井壁37と周壁35とガス吐出部49とを構成している。底側部材52は、外形形状を略円板状とされて底壁48を構成している。そして、天井側部材51と底側部材52とは、天井側部材51における周壁46から延びるように形成される延設部位51aを、底壁48の下面側に圧接させるようにかしめることにより、相互に連結されている。
【0046】
第3実施形態のインフレーター44においても、底壁48の略中央に、イニシエータ13Cが保持されており、イニシエータ13Cは、前述のインフレーター1,33と同様に、合成樹脂製のホルダ15Cを介して、底側部材52と一体化されている。
【0047】
インナケース17Cは、外側筒部18Cにガス流出穴を配設させず、内側筒部19Cにおける上下方向側の幅寸法を異ならせている以外は、前述のインナケース17と同一の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「C」を付して詳細な説明を省略する。インナケース17Cの内側筒部19Cは、閉塞壁部22Cと天井壁47との間に隙間を設けるように、ハウジング3Cの軸方向側に沿った幅寸法(上下方向側の幅寸法)W2を、外側筒部18Cにおける上下方向側の幅寸法W3より小さくして、構成されている(図11参照)。実施形態の場合、内側筒部19Cの上下方向側の幅寸法W2は、外側筒部18Cの上下方向側の幅寸法W3の5/6程度に設定されている。また、外側筒部18Cの上下方向側の幅寸法W3は、アウタケース45内への収納時に、ハウジング3Cの軸方向に沿った一端側の連結壁部21Cを底壁48と当接可能とし、かつ、他端側の上端を天井壁47と当接可能な寸法に、設定されている。
【0048】
インナケース17Cでは、図10,11に示すように、外側筒部18Cにはガス流出穴は形成されていないが、閉塞壁部22Cが外側筒部18Cの上端より下方に配置されていることから、フィルタ24Cを開口20Cに圧入させた際に、フィルタ24Cの内周面側に、内側筒部19Cに覆われない領域が生ずることとなる(図9参照)。そして、実施形態のインナケース17Cでは、この閉塞壁部22Cの上面と外側筒部18Cの上端との間の段差(隙間)の領域17bから、膨張用ガスG3が流出されることとなる。そして、この第3実施形態のインフレーター44においても、閉塞壁部22Cと天井壁47との間の隙間の領域17bは、ガス吐出口50に対して、ハウジング3Cの軸方向側(上下方向側)でオフセットされて配置されている。また、この第3実施形態のインナケース17Cにおいても、隙間の領域17bは、開口20Cにフィルタ24Cを圧入させた際に、フィルタ24において内側筒部19Cから露出される内周面側の領域を、ガス吐出口50全体の開口面積より大きくさせるように、設定されている。
【0049】
第3実施形態のインフレーター44では、アウタケース45とインナケース17Cとの間であって、インナケース17Cにおける閉塞壁部22Cと、アウタケース45のガス吐出部49と、に囲まれる領域が、フィルタ24Cにより濾過された膨張用ガスG3をガス吐出口50側に案内するガス流路53を、構成している。そして、この第3実施形態のインフレーター44においても、インナケース17Cとフィルタ24Cとにより囲まれる領域から構成される燃焼室29C内で発生した膨張用ガスG3は、図9に示すように、フィルタ24Cにより濾過されて、残渣を捕捉され、かつ、冷却された状態で、閉塞壁部22Cと天井壁47との間の隙間の領域17cから流出し、ガス流路53(ガス吐出部49)を経て、ガス吐出口50から、放射状に、外部へ吐出されることとなる。
【0050】
また、この第3実施形態のインフレーター44も、前述のインフレーター1,33と同様に、イニシエータ13Cを圧入させるための開口17aから伝火薬27Cを点火室26C内に充填させ、インナケース17Cの開口17aにホルダ15Cを圧入させてイニシエータ13Cとインナケース17Cとを固着させた後、インナケース17Cの開口20Cからガス発生剤30Cを充填させ、開口20Cにフィルタ24Cを圧入させた後、アウタケース45の天井側部材51の延設部位51aを底壁48の下面側に圧接させるようにかしめれば、製造することができる。
【0051】
第3実施形態のインフレーター44では、ガス吐出口50は、周壁46の領域ではなく、天井壁47から上方に突出するように形成されるガス吐出部49に、形成されており、インナケース17の隙間の領域17cに対して、ハウジング3Cの軸方向側(上下方向側)で、オフセットされて配置されている。そのため、第3実施形態のインフレーター44においても、隙間の領域17cから流出される膨張用ガスG3は、ガス吐出部49の内周面に一旦当たって、偏向された状態で、ガス吐出口50から外部へ吐出されることとなることから、フィルタ24Cに加えて、ガス吐出部49の内周面によっても、膨張用ガスG3に含まれる残渣を捕捉することができる。
【0052】
なお、実施形態のインフレーター1,1A,33,44では、フィルタ24,24A,24B,24Cを、外径寸法をインナケース17,17A,17B,17Cにおける外側筒部18,18A,18B,18Cの内径寸法より若干大きくし、かつ、開口24aの内径寸法をインナケース17,17A,17B,17Cにおける内側筒部19,19A,19B,19Cの外径寸法より若干小さくして、内側と外側との両方で、インナケース17の開口20に圧入させる構成とされている。フィルタが保持されれば、フィルタのインナケースへの圧入態様は、実施形態に限られるものではなく、外径寸法のみを外側筒部の内径寸法より若干大きくし、開口の内径寸法を内側筒部を挿通可能に設定して、外側のみでインナケースの開口に圧入させる構成としてもよく、さらには、逆に、開口の内径寸法のみを内側筒部の外径寸法より若干小さくし、外径寸法を外側筒部に挿通可能な寸法に設定して、内側のみでインナケースの開口に圧入させる構成としてもよい。なお、フィルタのインナーケースへの保持態様は、圧入に限られるものではなく、例えば、フィルタの外周面に雄ねじ溝を形成し、インナケースにおける外側壁部の内周面に対応する雌ねじ溝を形成して、ねじ結合により、フィルタをインナケースに保持させる構成としてもよい。
【0053】
また、実施形態のインフレーター1,1A,33,44では、イニシエータ13,13A,13B,13C(ホルダ15,15A,15B,15C)を、インナケース17,17A,17B,17Cにおける内側筒部19,19A,19B,19Cに圧入させることにより、内側筒部19,19A,19B,19Cにホルダ15,15A,15B,15Cを固着させているが、ホルダの内側筒部への固着態様は、圧入に限られるものではなく、ホルダを内側筒部に対して嵌合可能であれば、適宜別の手段を用いることができる。
【0054】
さらに、実施形態のインフレーター1,1A,33,44では、イニシエータ13,13A,13B,13Cは、ホルダ15,15A,15B,15Cを合成樹脂製として、アウタケース4,4A,34,45の底側部材11,11B,41,52と一体的に構成されるものの、イニシエータの底側部材への固着態様はこれに限られるものではなく、例えば、イニシエータのホルダを金属製として、溶接を利用して底側部材に固着させ、イニシエータを底側部材に保持させる構成としてもよい。
【0055】
さらにまた、実施形態では、外形形状を略円板状とされたディスクタイプのインフレーターを例に採り説明したが、本発明は、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプのインフレーターにも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,33,44…インフレーター、
3,3A,3B,3C…ハウジング、
4,4A,34,45…アウタケース、
6,6A,6B,50…ガス吐出口、
10,10A,40,51…天井側部材、
11,11B,41,52…底側部材、
13,13A,13B,13C…イニシエータ、
17,17A,17B,17C…インナケース、
18,18A,18B,18C…外側筒部、
18a…ガス流出穴、
18b…切欠部(ガス流出穴)、
19,19A,19B,19C…内側筒部、
19a…連通孔、
20,20A,20B,20C…開口、
21,21A,21B,21C…連結壁部、
22,22B,22C…閉塞壁部、
24,24A,24B,24C…フィルタ、
26,26A,26B,26C…点火室、
27,27A,27B,27C…伝火薬、
29,29A,29B,29C…燃焼室、
30,30A,30B,30C…ガス発生剤、
31,42,53…ガス流路、
G1,G2,G3…膨張用ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形形状を略円柱状とされるハウジングと、
該ハウジングの略中央に配置されて、内部に伝火薬を充填させて構成されるとともに、該伝火薬を点火可能なイニシエータを、前記ハウジングにおける軸方向に沿った一方の端壁側に配設させて構成される点火室と、
前記ハウジング内において、該点火室の外周側を、前記ハウジングの軸心を中心として周方向に沿った略全域にわたって囲むように配置されるとともに、内部に、前記伝火薬の点火により燃焼して膨張用ガスを発生可能なガス発生剤を、充填させて構成される燃焼室と、
前記ハウジング内に配置されて、前記燃焼室内で発生した前記膨張用ガスを濾過して冷却するフィルタと、
前記ハウジングに形成されて、前記フィルタにより濾過された前記膨張用ガスを外部に吐出可能なガス吐出口と、
を備える構成とされ、
前記フィルタが、外形形状を略ドーナツ板状として、前記ハウジングにおける軸方向に沿った一方の端壁側に、配設される構成のインフレーターであって、
前記ハウジングが、
前記イニシエータ側に位置する底側部材と、前記イニシエータから離れた側に位置する天井側部材と、から構成されるとともに、前記ガス吐出口を有するアウタケースと、
該アウタケースの内周側に配置されて、前記ハウジングの軸方向に沿った両端側を、前記アウタケースに当接させるように構成されるインナケースと、
を備え、
該インナケースが、前記アウタケースに近接して配置されて軸方向を前記ハウジングの軸方向に略沿わせて形成される略円筒状の外側筒部と、該外側筒部の内側において前記外側筒部と同心的に配置される略円筒状の内側筒部と、前記外側筒部と前記内側筒部とにおける前記ハウジングの軸方向に沿った一端側を相互に連結する連結壁部と、を、備えるとともに、前記ハウジングの軸方向における前記連結壁部と対向する部位を、前記フィルタを配設させるための開口として、構成され、
前記インナケースにおいて、前記内側筒部が、前記燃焼室と前記点火室とを区画して、内部に前記伝火薬を充填させて構成されるとともに、内径寸法を、前記底側部材に保持された前記イニシエータを嵌合可能な寸法に、設定され、
前記フィルタが、前記インナケースにおける前記フィルタ側の開口を塞ぐようにして、該開口に挿入させることにより、前記インナケースに保持され、
前記インナケースと前記フィルタとにより周囲を囲まれる領域が、前記ガス発生剤を充填可能として、前記燃焼室を構成し、
前記内側筒部に、前記伝火薬の燃焼時に発生する火炎を前記燃焼室内に伝播可能な連通孔が、形成され、
前記アウタケースと前記インナケースとの間に、前記フィルタにより濾過された前記膨張用ガスを前記ガス吐出口側に案内可能なガス流路が、形成されていることを特徴とするインフレーター。
【請求項2】
前記ガス流路が、前記外側筒部における前記フィルタと重なる領域に配置されるガス流出穴を、備える構成とされ、
該ガス流出穴が、前記ガス吐出口に対して、前記ハウジングの軸方向側、若しくは、前記ハウジングの軸心を中心とした周方向側で、オフセットされて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインフレーター。
【請求項3】
前記インナケースが、板金製として、プレス加工により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインフレーター。
【請求項4】
外形形状を略円柱状とされるハウジングと、
該ハウジングの略中央に配置されて、内部に伝火薬を充填させて構成されるとともに、該伝火薬を点火可能なイニシエータを、前記ハウジングにおける軸方向側の一方の端壁側に配設させて構成される点火室と、
前記ハウジング内において、該点火室の外周側を、前記ハウジングの軸心を中心として周方向に沿った略全域にわたって囲むように配置されるとともに、内部に、前記伝火薬の燃焼により燃焼して膨張用ガスを発生可能なガス発生剤を、充填させて構成される燃焼室と、
前記ハウジング内に配置されて、前記燃焼室内で発生した前記膨張用ガスを濾過して冷却するフィルタと、
前記ハウジングに形成されて、前記フィルタにより濾過された前記膨張用ガスを外部に吐出可能なガス吐出口と、
を備える構成とされ、
前記フィルタが、外形形状を略ドーナツ板状として、前記ハウジングにおける軸方向に沿った一方の端壁側に、配設される構成のインフレーターの製造方法であって、
前記ハウジングが、
前記イニシエータ側に位置する底側部材と、前記イニシエータから離れた側に位置する天井側部材と、から構成されるとともに、前記ガス吐出口を有するアウタケースと、
該アウタケースの内周側に配置されて、前記ハウジングの軸方向に沿った両端側を、前記アウタケースに当接させるように構成されるインナケースと、
を備え、
該インナケースが、前記アウタケースに近接して配置されて軸方向を前記ハウジングの軸方向に略沿わせて形成される略円筒状の外側筒部と、該外側筒部の内側において前記外側筒部と同心的に配置される略円筒状の内側筒部と、前記外側筒部と前記内側筒部とにおける前記ハウジングの軸方向に沿った一端側を相互に連結する連結壁部と、を、備えるとともに、前記ハウジングの軸方向における前記連結壁部と対向する部位を、前記フィルタを配設させるための開口として、構成され、
前記内側筒部に、前記伝火薬の燃焼時に発生する火炎を前記燃焼室内に伝播可能な連通孔が、形成され、
前記アウタケースと前記インナケースとの間に、前記フィルタにより濾過された前記膨張用ガスを前記ガス吐出口側に案内可能なガス流路が、形成され、
前記インナケースの内部に、前記フィルタ側の開口から、前記ガス発生剤を充填させ、
前記インナケースの開口を塞ぎ可能な大きさに設定される前記フィルタを、前記開口に挿入させて、前記フィルタを前記インナケースに保持させ、
前記アウタケースにおける前記底側部材に保持された前記イニシエータを、前記インナケースにおける前記内側筒部に嵌合させ、
前記インナケースにおける前記内側筒部の内側の領域に、前記伝火薬を充填させて、
前記底側部材に保持された前記イニシエータの前記インナケースへの嵌合後に、前記フィルタの外周側を覆うように配置させた前記天井側部材と、前記底側部材と、を連結させることを特徴とするインフレーターの製造方法。
【請求項5】
前記インナケースが、前記内側筒部において、前記連結壁部から離れた側の端部側を閉塞するような閉塞壁部を、有していることを特徴とする請求項4に記載のインフレーターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−30608(P2012−30608A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169411(P2010−169411)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】