説明

インフレーター

【課題】製造工数・コストを抑えて全長を短く構成可能なインフレーターの提供。
【解決手段】インフレーター10は、ガス吐出口14aを有した頭部14を、端面11bから突設させてなるインフレーター本体11と、ガス吐出口から吐出されたガスを、端部22a側から流出させる金属パイプからなるディフューザー22と、を備える。ディフューザーは、端部22bに、頭部14を突出可能な挿通孔24を備えて内周側に鍔状に延びるフランジ部23を備える。インフレーター本体11は、頭部を突設させている端面11bに、フランジ部23との結合用の凸部16aからなる結合部16を備える。インフレーター本体の端面11bとフランジ部23とは、ディフューザー22の軸方向XDに沿って押圧することにより、フランジ部23を塑性変形させて結合部16にかしめて、相互に結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるエアバッグ装置に使用されるインフレーターに関し、詳しくは、略円柱状のインフレーター本体と、インフレーター本体のガス吐出口を備えた頭部側に接続される略円筒状として、ガス吐出口から吐出されたガスを、インフレーター本体の頭部から離れた端部側から流出させる金属パイプからなるディフューザーと、から構成されるシリンダタイプのインフレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダタイプのインフレーターとして、略円柱状のインフレーター本体と円筒状のディフューザーとから構成されるものがあり、インフレーター本体とディフューザーとは、インフレーター本体側に雄ねじを設け、ディフューザーに、インフレーター本体の雄ねじに対応する雌ねじを設けて、対応するねじ相互を螺合させ、ディフューザーをインフレーター本体に結合させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、図1に示すように、従来のシリンダタイプのインフレーター1として、インフレーター本体2が、外周面にガス吐出口5aを開口させた略円柱状の頭部5を、端面2bから突設させて構成され、ディフューザー7が、金属パイプから形成されて、ガス吐出口5aから吐出されたガスを、インフレーター本体2における頭部5を設けた端部2aから離れた端部7b側から流出させるように、構成されるものもあった。このインフレーター1では、インフレーター本体2の円筒状のハウジング3に、頭部5を備えた口金部4が、溶接等により固定され、口金部4の外周面4aに、二条の凹溝4bが形成され、口金部4をディフューザー7の端部7aに挿入させ、端部7aを縮径させるように凹溝4b,4bにかしめて、インフレーター本体2にディフューザー7を結合させていた。
【特許文献1】特開2006−27564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のねじ構造でディフューザーをインフレーター本体に結合させるインフレーターでは、インフレーター本体とディフューザーとに、ともに、ねじを螺刻し、さらに、結合時に緩み止めを図って結合することから、製造工数・コストを増加させてしまう。
【0005】
また、従来のディフューザーをかしめてインフレーター本体に結合させるインフレーター1では、かしめ構造であることから、かしめ用の治具を準備すれば、製造工数・コストを低減し易いものの、ディフューザー7の端部7bがぐらつかないように、インフレーター本体2の口金部4の外周面4aに、凹溝4bを設けるとともに、凹溝4bを間にしたインフレーター本体2の軸方向に沿った両縁に、ディフューザー7の内周面を支持する受け面4cを配設する必要があるため、口金部4とディフューザー7の端部7aとの長さがある程度必要となり、インフレーター1の全長が長くなって、車両に搭載するエアバッグ装置に使用されるインフレーターとしては、課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、製造工数・コストを抑えて、全長を短く構成できるインフレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るインフレーターは、ガス吐出口を有した略円柱状の頭部を、端面から突設させてなる略円柱状のインフレーター本体と、
インフレーター本体の頭部側に接続される略円筒状として、ガス吐出口から吐出されたガスを、インフレーター本体の頭部から離れた端部側から流出させる金属パイプからなるディフューザーと、
を備えて構成されるインフレーターであって、
ディフューザーが、インフレーター本体の頭部側における端部に、頭部を突出可能な挿通孔を備えて内周側に鍔状に延びるフランジ部を備え、
インフレーター本体が、頭部を突設させている端面に、フランジ部との結合用の凹部若しくは凸部からなる結合部を備え、
インフレーター本体の端面とフランジ部とが、ディフューザーの軸方向に沿って押圧することにより、フランジ部を塑性変形させて結合部にかしめて、相互に結合されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るインフレーターでは、ディフューザーが、インフレーター本体に対して、かしめを利用して結合されているため、所定のかしめ用の治具を使用することにより、製造工数・コストを抑えて、容易に製造することが可能となる。また、インフレーター本体に対するディフューザーの結合が、インフレーター本体の凹部若しくは凸部からなる結合部を設けた端面に、ディフューザーのインフレーター本体側の端部に設けたフランジ部を、塑性変形させるようにかしめて、結合させるものであり、インフレーター本体の頭部側の端面に、凹部若しくは凸部からなる結合部を設ける必要があるものの、ディフューザー側には、フランジ部を設ける板厚分の寸法だけで、結合構造を構成でき、インフレーター本体とディフューザーとの結合部位におけるインフレーターの軸方向に沿った長さ寸法を短くできて、インフレーターをコンパクトに形成できる。
【0009】
したがって、本発明に係るインフレーターでは、製造工数・コストを抑えて、全長を短く構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のインフレーター10は、図2,3に示すように、略円柱状のインフレーター本体11と、鋼管等の金属パイプからなる略円筒状のディフューザー22と、から構成されている。
【0011】
インフレーター本体11は、略円筒状のハウジング12と、ハウジング12の一方の端部に配置される口金部13と、ハウジング12の他方の端部に配置される作動装置20と、を備えて構成されている。ハウジング12内には、窒素ガス等の不活性ガスからなる加圧ガス(コールドガス)Gが充填されている。作動装置20は、図示しない作動信号を入力させた際に、点火されるイニシエータを備えるとともに、イニシエータの点火時に燃焼ガスを発生させるガス発生剤を備えて構成され、燃焼ガスの発生時に、口金部13のハウジング12側に設けた破裂板18を破裂させて、口金部13のガス吐出口14aから加圧ガスGを吐出させることとなる。
【0012】
口金部13は、インフレーター本体11のディフューザー22側の端部11aに、ハウジング12に溶接されて配置され、インフレーター本体11の端部11aの端面11bを構成して、ハウジング12を塞ぐような円盤状の結合座部15と、結合座部15の中央から突出する頭部14と、を備えて構成されている。頭部14には、外周面に、既述したガス吐出口14aが複数開口されている。
【0013】
結合座部15には、頭部14を突設させたインフレーター本体11の端面11bに、ディフューザー22を結合させるための結合部16としての凸部16aが形成されている(図2,5参照)。実施形態の凸部16aは、頭部14を中心とした円環状として、ディフューザー22との結合強度を高めるように、突出端側の幅寸法を拡大させた台形断面とし、突出端側にインフレーター10(インフレーター本体11)の軸方向XIと直交する方向に張り出す係止縁部16bを設けて、形成されている。
【0014】
ディフューザー22は、インフレーター本体11の頭部14から離れた端部22a側からエアバッグ27を膨張させるガス(加圧ガス)Gを流出させるように構成され、インフレーター本体11の頭部14側における端部22bに、内周側に鍔状に延びるフランジ部23が形成されている。フランジ部23は、中央に、インフレーター本体11の頭部14を突出させる円形に開口した挿通孔24を備えるとともに、かしめて、インフレーター本体11の結合座部15の結合部16に結合されるかしめ部23aが形成されている。
【0015】
インフレーター本体11の端面11bの結合部16にかしめ部23aをかしめて固定する治具30は、図4のA〜Cに示すように、インフレーター本体11の結合座部15の裏面15a側を支持するように、ハウジング12を把持する支持クランプ31と、図4のB,Cに示すように、ディフューザー22内に挿入させて、フランジ部23を結合座部15に押し付ける押し型32と、を備えて構成されている。押し型32には、かしめ部23aを形成可能に、凸部16aに対応した円環状の凹部32bを備えた型面32aが形成されている。そして、治具30の使用時には、図4のAに示すように、支持クランプ31により、ハウジング12をクランプして、結合座部15の裏面15aを支持し、図4のA,Bに示すように、頭部14を挿通孔24から突出させるように、ディフューザー22のフランジ部23を、インフレーター本体11の端面11bとなる結合座部15上に、載せるとともに、図4のB,Cに示すように、ディフューザー22の軸方向(インフレーター本体11の軸方向XIと一致する)XDに沿って、押し型32を結合座部15側に押し付け、フランジ部23を凸部16aに押し付けて、凸部16aをくるむように、かしめ部23aを形成し、ついで、図4のDに示すように、押し型32を抜くとともに、支持クランプ31から取り外せば、インフレーター10を製造することができる。
【0016】
なお、インフレーター10の使用時には、図2,3の二点鎖線に示すように、ディフューザー22の端部22aを、エアバッグ27の円筒状の流入筒部27aに挿入するとともに、流入筒部27aの周囲にクランプ26を締結させて、流入筒部27aをディフューザー22に連結させてエアバッグ装置を組み立て、車両に搭載することとなる。ちなみに、実施形態のエアバッグ装置は、車両のサイドウインドの上縁側のルーフ部に搭載される頭部保護用のものである。
【0017】
そして、エアバッグ装置の作動時には、インフレーター10の作動装置20に点火信号が入力されて、ハウジング12内に作動装置20の燃焼ガスが噴出され、破裂板18が破裂することから、ハウジング12内の加圧ガスGが、インフレーター本体11の頭部14のガス吐出口14aから吐出され、さらに、ディフューザー22の端部22aから流入筒部27aに流出されて、エアバッグ27が、収納部位から展開膨張し、サイドウインドの車内側を覆うように、配置されることとなる。
【0018】
そして、実施形態のインフレーター10では、ディフューザー22が、インフレーター本体11に対して、かしめを利用して結合されているため、所定のかしめ用の治具30を使用することにより、製造工数・コストを抑えて、容易に製造することが可能となる。また、インフレーター本体11に対するディフューザー22の結合が、インフレーター本体11の凸部16aからなる結合部16を設けた端面11bに、ディフューザー22のインフレーター本体11側の端部22bに設けたフランジ部23を、塑性変形させるようにかしめて、結合させるものである。すなわち、実施形態のインフレーター10では、インフレーター本体11の頭部14側の端面11bに、凸部16aからなる結合部16を設ける必要があるものの、ディフューザー22側には、フランジ部23を設ける板厚分の寸法tだけで、結合構造を構成でき、インフレーター本体11とディフューザー22との結合部位におけるインフレーター本体11(インフレーター10)の軸方向XIに沿った長さ寸法L(図2参照)を短くできて、インフレーター10をコンパクトに形成できる。
【0019】
したがって、実施形態のインフレーター10では、製造工数・コストを抑えて、全長を短く構成することができる。
【0020】
なお、実施形態では、インフレーター本体11の端面11bに設けた結合部16として、円環状の凸部16aとしたものを例示したが、図6に示すように、結合座部15から円錐台形に突出する凸部16cを複数設けて、結合部16Aとしてもよい。ちなみに、これらの凸部16cでも、先端側の外径寸法D2が元部側の外径寸法D1より大きくして、フランジ部23との結合強度を高めるように、係止縁部16bを備えている。
【0021】
また、図7に示すように、円環状の凸部16aを、頭部14の周囲に、二重に形成して、結合部16Bとしてもよい。
【0022】
さらに、結合座部15に設ける結合部16Cとして、図8に示すように、頭部14の周囲に、円環状に凹んだ凹部16dを設けて、フランジ部23のかしめ部23aを、凹部16d内に係止させるように、形成してもよい。この結合部16Cでも、凹部16dの凹んだ底面16f側が、凹部16dの開口16e側より、幅寸法を広げており、凹部16dの周縁に、フランジ部23との結合強度を高めるように、インフレーター10の軸方向XIに直交する方向に張り出す係止縁部16bが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のインフレーターを示す部分拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のインフレーターを示す部分拡大断面図である。
【図3】実施形態のインフレーターを示す概略断面図である。
【図4】実施形態のインフレーターの製造工程を順に説明する図である。
【図5】実施形態のインフレーターのインフレーター本体における頭部側の平面図である。
【図6】実施形態の変形例のインフレーター本体における頭部側の平面図である。
【図7】実施形態の他の変形例のインフレーターを示す部分拡大断面図である。
【図8】実施形態のさらに他の変形例のインフレーターを示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1,10…インフレーター、
2,11…インフレーター本体、
5,14…頭部、
5a,14a…ガス吐出口、
16,16A,16B,16C…結合部、
16a,16c…凸部、
16d…凹部、
7,22…ディフューザー、
23…フランジ部、
23a…かしめ部、
24…挿通孔、
30…(かしめ用の)治具、
XI,XD…(インフレーター本体やディフューザーの)軸方向。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス吐出口を有した略円柱状の頭部を、端面から突設させてなる略円柱状のインフレーター本体と、
該インフレーター本体の前記頭部側に接続される略円筒状として、前記ガス吐出口から吐出されたガスを、前記インフレーター本体の前記頭部から離れた端部側から流出させる金属パイプからなるディフューザーと、
を備えて構成されるインフレーターであって、
前記ディフューザーが、前記インフレーター本体の頭部側における端部に、前記頭部を突出可能な挿通孔を備えて内周側に鍔状に延びるフランジ部を備え、
前記インフレーター本体が、前記頭部を突設させている端面に、前記フランジ部との結合用の凹部若しくは凸部からなる結合部を備え、
前記インフレーター本体の端面と前記フランジ部とが、前記ディフューザーの軸方向に沿って押圧することにより、前記フランジ部を塑性変形させて前記結合部にかしめて、相互に結合されていることを特徴とするインフレーター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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