説明

インプリント用テンプレート及びインプリント方法

【課題】テンプレートをパターンから離型する工程において、パターンが破壊することを防止するインプリント用テンプレート及びインプリント方法を提供する。
【解決手段】本実施形態によれば、インプリント用テンプレートは、1面に凹凸パターンを有するテンプレートであって、光透過性を有する基材と、前記基材上に設けられ、前記凹凸パターンの凸部となる樹脂層とを備えている。前記樹脂層は、第1波長の光の照射により収縮して体積が小さくなり、前記第1波長とは異なる第2波長の光の照射により膨張して体積が大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント用テンプレート及びインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細パターンを低コストに形成するための技術として、光ナノインプリント法が知られている。これは、基板上に形成したいパターンに対応する凹凸を有するテンプレートを、基板表面に塗布された光硬化性有機材料層に押しつけ、これに光照射を行って有機材料層を硬化させ、テンプレートを有機材料層から離型することで、パターンを転写する方法である。
【0003】
しかし、テンプレートを有機材料層から離型する工程において、テンプレートの凹凸パターンの側壁に接触している有機材料層に摩擦力がかかり、有機材料層のパターンが破壊されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−232356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パターンの破壊を防止するインプリント用テンプレート及びインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、インプリント用テンプレートは、1面に凹凸パターンを有するテンプレートであって、光透過性を有する基材と、前記基材上に設けられ、前記凹凸パターンの凸部となる樹脂層とを備えている。前記樹脂層は、第1波長の光の照射により収縮して体積が小さくなり、前記第1波長とは異なる第2波長の光の照射により膨張して体積が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係るインプリント用テンプレートの縦断面図である。
【図2】同実施形態に係るインプリント方法を説明する工程断面図である。
【図3】同実施形態に係るインプリント方法を説明する工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るテンプレート10の一部の縦断面図である。テンプレート10は後述するインプリント処理に使用されるものであり、一方の面に凹凸パターンを有している。図1に示すように、テンプレート10は、基材11と、基材11上に設けられた樹脂層12とを備えている。
【0010】
基材11は、光透過性を有しており、例えば石英ガラスで形成されている。
【0011】
基材11及び樹脂層12は凹凸パターンを成している。この凹凸パターンは、後述するインプリント処理において被加工基板上に形成するパターンに対応した形状になっている。
【0012】
図1に示すように、樹脂層12はテンプレート10の凹凸パターンの凸部に対応した凸形状パターンになっている。また、テンプレート10の凹凸パターンの凹部では基材11の表面が露出している。これは、インプリント処理時に、インプリント材料を硬化させるための光が、樹脂層12に遮られず、インプリント材料に十分到達できるようにするためである。
【0013】
樹脂層12は、光の照射により収縮/膨張する性質を有している。具体的には、樹脂層12は、波長λ1の光を照射することにより収縮して体積が小さくなる。また、樹脂層12は、波長λ1とは異なる波長λ2の光を照射することにより膨張して体積が大きくなる。
【0014】
樹脂層12は、基材11(石英ガラス)に対する密着性がよい材料が好ましく、主成分として、UV硬化性を有する樹脂材料を用いる。樹脂層12は、市販の半導体用UV硬化性樹脂、EB硬化性樹脂、または市販のナノインプリント用光硬化性樹脂等に、アゾベンゼンを添加して形成される。アゾベンゼンを重量比で5wt%添加した場合、波長350nm(=λ1)のUV光(紫外線)を所定時間照射することで、樹脂層12は収縮し、体積が10%程度小さくなる。また、収縮した(体積が小さくなった)状態の樹脂層12に波長440nm(=λ2)のUV光を所定時間照射すると、樹脂層12は膨張し、体積は元に戻る。
【0015】
基材11上にアゾベンゼンを添加した樹脂材を塗布し、この樹脂材を電子ビーム(Electron Beam)描画装置または一般の半導体露光装置を使用して露光・現像して加工するか、あるいはナノインプリントの手法を使って加工することで、樹脂層12の凹凸パターンを形成することができる。
【0016】
次に、このようなテンプレート10を使用したインプリント処理について、図2(a)〜(c)及び図3(a)〜(c)を用いて説明する。テンプレート10の樹脂層12にはアゾベンゼンが添加されているものとする。
【0017】
図2(a)に示すように、被加工基板20上にインプリント材料21を塗布する。インプリント材料21は、例えばアクリルモノマー等の液状の光硬化性有機材料である。なお、インプリント材料21を硬化させる光の波長は、樹脂層12を収縮させる光の波長とは異なるものとする。インプリント材料21を硬化させる際に樹脂層12が収縮すると、被加工基板20上に所望のサイズのパターンを形成できなくなるためである。
【0018】
この例では、インプリント材料21は波長300nmのUV光で硬化するものとする。
【0019】
図2(b)に示すように、塗布されたインプリント材料21に、テンプレート10の凹凸パターン面を接触させる。このとき、テンプレート10の樹脂層12は通常状態(収縮していない状態)であるものとする。
【0020】
図2(c)に示すように、液状のインプリント材料21は、テンプレート10の凹凸パターンに従って流動して入り込む。
【0021】
図3(a)に示すように、凹凸パターン内にインプリント材料21が充填された後、波長300nmのUV光をテンプレート10の裏面側(図中上側)から照射する。UV光はテンプレート10の基材11を透過してインプリント材料21に到達し、インプリント材料21を硬化させる。このとき、樹脂層12の体積に変化は無い。
【0022】
インプリント材料21の硬化後、図3(b)に示すように、波長350nmのUV光を照射して樹脂層12(テンプレート10の凸形状パターン部分)を収縮させる。既にこの状態ではインプリント材料12は硬化されているので、樹脂層12が収縮することにより、インプリント材料21と樹脂層12との間に隙間30ができる。
【0023】
図3(c)に示すように、テンプレート10をインプリント材料21から離型する。テンプレート10(樹脂層12)の凹凸パターンの側壁とインプリント材料21との間には隙間があるため、インプリント材料21にはテンプレート10の凹凸パターンの側壁による摩擦力が発生しない。そのため、テンプレート10を離型する際にインプリント材料21のパターンが破壊されることを防止できる。
【0024】
そして、テンプレート10をインプリント材料21から離型した後、テンプレート10の樹脂層12に波長440nmのUV光を照射して、樹脂層12を膨張させ、元の体積(サイズ)に戻す。樹脂層12を膨張させる処理は、図2(b)に示すテンプレート10をインプリント材料21に接触させる工程の前であればいつ行ってもよい。
【0025】
図2(a)〜(c)、図3(a)〜(c)に示す工程を繰り返すことで、被加工基板20上に所望の凹凸パターンを有するインプリント材料21を複数形成することができる。
【0026】
このように、波長の異なる光により収縮/膨張する樹脂層12を含む凹凸パターンを有するテンプレート10を用いることにより、インプリント処理のテンプレート離型時にテンプレート10とインプリント材料21との間に隙間30を設けることができ、これにより被加工基板上のパターンが破壊することを防止できる。
【0027】
上記実施形態では、インプリント材料21を硬化させる光の波長は、樹脂層12を収縮させる光の波長とは異なるとしたが、さらに樹脂層12を膨張させる光の波長と異なってもよい。インプリント材料21を硬化させる際に、樹脂層12の体積が変動する(大きくなる)ことを防止するためである。
【0028】
上記実施形態では、テンプレート10を基材11及び樹脂層12を備える構成としたが、樹脂層12が光透過性を有する場合は、樹脂層12のみで構成してもよい。但し、その場合、テンプレート10全体が収縮/膨張することになり、テンプレート10の位置合わせが困難になり得る。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 テンプレート
11 基材
12 樹脂層
20 被加工基板
21 インプリント材料
30 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1面に凹凸パターンを有するインプリント用テンプレートであって、
光透過性を有する基材と、
前記基材上に設けられ、前記凹凸パターンの凸部となる樹脂層と、
を備え、
前記樹脂層は、第1波長の光の照射により収縮して体積が小さくなり、前記第1波長とは異なる第2波長の光の照射により膨張して体積が大きくなり、第1体積の状態で前記第1波長の光を所定時間照射されると前記第1体積より小さい第2体積に変化し、前記第2体積の状態で前記第2波長の光を所定時間照射されると前記第2体積から前記第1体積に変化し、アゾベンゼンを含み、前記第1波長は350nm、前記第2波長は440nmであり、
前記凹凸パターンの凹部では、前記基材の表面が露出していることを特徴とするインプリント用テンプレート。
【請求項2】
1面に凹凸パターンを有するインプリント用テンプレートであって、
光透過性を有する基材と、
前記基材上に設けられ、前記凹凸パターンの凸部となる樹脂層と、
を備え、
前記樹脂層は、第1波長の光の照射により収縮して体積が小さくなり、前記第1波長とは異なる第2波長の光の照射により膨張して体積が大きくなることを特徴とするインプリント用テンプレート。
【請求項3】
前記樹脂層は、第1体積の状態で前記第1波長の光を所定時間照射されると前記第1体積より小さい第2体積に変化し、前記第2体積の状態で前記第2波長の光を所定時間照射されると前記第2体積から前記第1体積に変化することを特徴とする請求項2に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項4】
前記凹凸パターンの凹部では、前記基材の表面が露出していることを特徴とする請求項2又は3に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項5】
前記樹脂層はアゾベンゼンを含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のインプリント用テンプレート。
【請求項6】
前記第1波長は350nmであり、前記第2波長は440nmであることを特徴とする請求項5に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のインプリント用テンプレートを用いたインプリント方法であって、
被加工膜上に光硬化性材料を塗布する工程と、
前記テンプレートの前記凹凸パターンを前記光硬化性材料に接触させる工程と、
前記テンプレートを接触させた状態で前記光硬化性材料に前記第1波長とは異なる第3波長の光を照射し、前記光硬化性材料を硬化させる工程と、
前記第3波長の光の照射後に、前記樹脂層に前記第1波長の光を照射する工程と、
前記テンプレートを前記光硬化性材料から離型する工程と、
を備えることを特徴とするインプリント方法。
【請求項8】
前記テンプレートを前記光硬化性材料に接触させる前、又は前記テンプレートを前記光硬化性材料から離型した後に、前記樹脂層に前記第2波長の光を照射することを特徴とする請求項7に記載のインプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−238706(P2012−238706A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106410(P2011−106410)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】