説明

インプリント用硬化性組成物、パターン形成方法およびパターン

【課題】 パターン形成性および耐熱性に優れたインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)をインプリント用硬化性組成物に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用硬化性組成物に関する。より詳しくは、各種電子デバイス、特に、半導体集積回路、フラットスクリーン、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、光ディスク、高密度メモリーディスク等の磁気記録媒体、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、等の作製に用いられる光照射を利用した微細パターン形成のためのインプリント用硬化性組成物に関するものである。
さらに、インプリント用途以外にも利用可能な硬化性組成物および新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント法では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。最近では、この両者の長所を組み合わせたナノキャスティング法や3次元積層構造を作製するリバーサルインプリント法などの新しい展開も報告されている。
【0005】
このようなナノインプリント法においては、以下のような応用技術が提案されている。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材、電子材料における絶縁膜などが挙げられる。第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro−Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。第3の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。前記の技術を始め、これらの応用に関するナノインプリント法の実用化への取り組みが近年活発化している。
【0006】
ナノインプリント法の適用例として、まず、高密度半導体集積回路作製への応用例を説明する。近年、半導体集積回路は微細化、集積化が進んでおり、その微細加工を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化が進められてきた。しかし、さらなる微細化要求に対して、微細パターン解像性、装置コスト、スループットの3つを満たすのが困難となってきている。これに対し、微細なパターン形成を低コストで行うための技術としてナノインプリントリソグラフィ(光ナノインプリント法)が提案された。例えば、下記特許文献1および特許文献3にはシリコンウエハをスタンパとして用い、25nm以下の微細構造を転写により形成するナノインプリント技術が開示されている。本用途においては数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0007】
ナノインプリント法の次世代ハードディスクドライブ(HDD)作製への応用例を説明する。HDDは面記録密度を高めることで大容量化を達成してきている。しかしながら記録密度を高める際には、磁気ヘッド側面からの、いわゆる磁界広がりが問題となる。磁界広がりはヘッドを小さくしてもある値以下には小さくならないため、結果としてサイドライトと呼ばれる現象が発生してしまう。サイドライトが発生すると、記録時に隣接トラックへの書き込みが生じ、既に記録したデータを消してしまう。また、磁界広がりによって、再生時には隣接トラックからの余分な信号を読みこんでしまうなどの現象が発生する。このような問題に対し、トラック間を非磁性材料で充填し、物理的、磁気的に分離することで解決するディスクリートトラックメディアやビットパターンドメディアといった技術が提案されている。これらメディア作製において磁性体あるいは非磁性体パターンを形成する方法としてナノインプリントの応用が提案されている。本用途においても数十nmレベルのパターン形成性と基板加工時にマスクとして機能するための高いエッチング耐性とが要求される。
【0008】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリントリ法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、特許文献4および特許文献5に記載される透明保護膜材料や、特許文献5に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、前記エッチングレジストとは異なり、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性モノマーおよび開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献6参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベイクにより加熱硬化して形成される。
また、一般にモスアイと呼ばれる反射防止構造体の作成にもナノインプリント法を用いることができる。透明性成形品の表面に、透明性素材から成る無数の微細凹凸を光の波長以下のピッチで形成することによって、光の屈折率が厚み方向に変化するようにした反射防止構造が形成できる。このような反射防止構造体は屈折率が厚み方向に連続的に変化するため、屈折率界面が存在せず、理論的には無反射とすることができる。また、波長依存性が小さく、斜め光に対する反射防止能も高いため、多層反射防止膜よりも優れた反射防止性能を備えたものとなる。
【0009】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶などの永久膜形成用途においてもナノインプリントリソグラフィは有用である。
これら永久膜用途においては、形成されたパターンが最終的に製品に残るため、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、耐擦傷性、外部圧力に対する高い機械的特性、硬度など主に膜の耐久性や強度に関する性能が要求される。
このように従来フォトリソグラフィ法で形成されていたパターンのほとんどがナノインプリントで形成可能であり、安価に微細パターンが形成できる技術として注目されている。例えば、特許文献7、8等が知られる。
【0010】
ナノインプリントを産業に利用する上では、良好なパターン形成性が要求されるが、さらに得られたパターンを利用する際にはパターンの耐久性(例えば耐熱性、耐侯性)が要求されるが、従来用いられてきたインプリント用硬化組成物では100nm以下の微細パターン形成性を有するものは知られているが、さらに耐熱性(例えば、250℃以上、さらには300℃以上)、特に、空気下での耐熱性を両立するものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】米国特許第5,259,926号公報
【特許文献4】特開2005−197699号公報
【特許文献5】特開2005−301289号公報
【特許文献6】特開2004−240241号公報
【特許文献7】特開2008−168480号公報
【特許文献8】特開2010−67621号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】S.Chou et al.:Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al,:Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決することを目的とするものであって、空気下で高温で加熱しても良好なパターンが維持可能なインプリント用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、マレイミド基を有する重合性化合物を採用することにより達成されることを見出した。具体的には、下記<1>により、好ましくは、下記<2>〜<23>により達成された。
<1>マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)を含有するインプリント用硬化性組成物。
<2>マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)が、マレイミド構造を2つ以上有するか、または、マレイミド基と、マレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する化合物である、<1>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<3>重合性化合物(Ax)がシリコン原子を有する、<1>または<2>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<4>重合性化合物(Ax)がシリコン原子を有し、該シリコン原子は重合性化合物の(Ax)の鎖状構造中に含まれる、<1>または<2>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<5>重合性化合物(Ax)が分子中にエステル基を含有しない、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<6>重合性化合物(Ax)がシリコン原子と酸素原子が結合した構造を有する、<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<7>重合性化合物(Ax)が、マレイミド基に含まれるヘテロ原子と、シリコン原子に結合している酸素原子以外のヘテロ原子を有さない、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<8>重合性化合物(Ax)の分子量が200〜500である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<9>さらに光重合開始剤(B)を含有する、<1>〜<8>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<10>重合性基がシリコン原子に結合したビニル基である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
<11>前記重合性化合物(Ax)が一般式(Ax−5)で表される、<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
一般式(Ax−5)
【化1】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
<12>前記重合性化合物(Ax)が一般式(Ax−6)で表される、<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
一般式(Ax−6)
【化2】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
<13>一般式(Ax−5)で表される重合性化合物を含有する硬化性組成物。
一般式(Ax−5)
【化3】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
<14>一般式(Ax−6)で表される重合性化合物を含有する硬化性組成物。
一般式(Ax−6)
【化4】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
<15>一般式(Ax−5)で表される重合性化合物。
一般式(Ax−5)
【化5】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
<16>一般式(Ax−6)で表される重合性化合物。
一般式(Ax−6)
【化6】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
<17><1>〜<12>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を用いることを特徴とする、パターン形成方法。
<18><1>〜<12>のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基材またはモールド上に適応してパターン形成層を形成する工程と、
前記基材とモールドでパターン形成層を挟んで圧接する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
<19>前記モールドが多段パターンを有する、<18>に記載のパターン形成方法。
<20><17>〜<19>のいずれか1項に記載のパターン形成方法によって得られたパターン。
<21>絶縁膜材料である、<20>に記載のパターン。
<22>得られたパターンが、多段のパターンである<20>または<21>に記載のパターン。
<23><20>〜<22>のいずれか1項に記載のパターンを含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0015】
本発明の組成物をインプリント用硬化組成物として用いると、空気下で、高温で加熱しても良好なパターンが維持可能なインプリント用硬化性組成物を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0017】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートを表し、“(メタ)アクリル”はアクリルおよびメタクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。
なお、本発明でいう“インプリント”は、好ましくは、1nm〜10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm〜100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。 尚、本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0018】
[本発明のインプリント用硬化性組成物]
本発明のインプリント用硬化性組成物は、マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)を含有する。マレイミド化合物は重合開始剤なしでも光硬化可能であるが、好ましくは光重合開始剤(B)を含有する。その他、各種特性を向上させるために他の成分が任意に添加される。
【0019】
マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)
マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)としてはマレイミド構造を有していればいずれのものも用いることができるが、重合性基を2つ以上有する多官能の重合性化合物が好ましく、より好ましくはマレイミド構造を2つ以上有するか、または、マレイミド基およびマレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する化合物である。このような構造とすることでインプリントによって形成されたパターンの耐熱性が向上する。マレイミド構造を2つ以上有する場合、好ましいマレイミド基の数は結晶化抑制の観点から2〜4であり、より好ましくは2または3であり、さらに好ましくは2である。
マレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基とは、例えばエステル基と結合した炭素−炭素多重結合を有する(メタ)アクリレートのような構造を有さないという意味である。マレイミド基以外の重合性基としてはマレイミド基と共重合する重合性基でも、マレイミド基と共重合しない重合性基でもよいが、マレイミド基と共重合する重合性基が好ましい。マレイミド基以外の重合性基としては、エステル基と結合していない炭素−炭素多重結合(例えば、ビニル基、アリル基、シクロヘキセニル基、ビニルエーテル基、スチリル基)、エポキシ基、オキセタニル基が好ましく、エステル基と結合していない炭素−炭素多重結合がより好ましい。
さらに、本発明で用いる重合性化合物(Ax)は、パターンの耐熱性向上の観点から、分子中にエステル基を有さないことが好ましい。
【0020】
重合性化合物(Ax)はさらに耐熱性向上の観点からシリコン原子を有していることが好ましい。結晶化抑制の観点からシリコン原子は直鎖または分岐の鎖状構造中に有していることが好ましい。ここで、鎖状構造とは、環状構造に対する用語であり、シリコン原子を鎖状構造中に有しているとは、シリコン原子が環状構造を形成する構成原子ではないことをいう。本発明では、シリコン原子が、環状構造の置換基にも含まれないことが好ましい。
重合性化合物(Ax)中のシリコン原子の数としては1〜20個が好ましく、2〜15個がより好ましく、2〜12個がさらに好ましい。また、パターンの耐熱性向上の観点から、シリコン原子と酸素原子が結合した構造を有することが好ましく、Si−O−Si結合を有していることがさらに好ましい。
また、重合性化合物(Ax)は、経時安定性の観点からSi−O−C結合を有さないことが好ましい。さらに、重合性化合物(Ax)は、マレイミド基に含まれるヘテロ原子とシリコン原子に結合している酸素原子以外のヘテロ原子を有さないことがより好ましい。
ハロゲン原子は耐熱性の観点および加熱により腐食性ガスを発生し、装置を腐食するため重合性化合物(Ax)はハロゲン原子を含まないことが好ましい。
本発明で用いる重合性化合物(Ax)は、マレイミド基と、水素原子、炭素原子、酸素原子およびケイ素原子のみからなることが好ましい。
重合性化合物(Ax)の分子量としては100〜2000が好ましく、150〜700がより好ましく、200〜500がさらに好ましい。分子量を適性な範囲とすることで粘度を低くしつつ揮発を抑制でき、パターニング性が向上する。
【0021】
マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)は他の成分との相溶性、塗布時の欠陥抑制の観点から融点が100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、25℃において液体であることがさらに好ましい。
【0022】
重合性化合物(Ax)として、好ましくは下記一般式(Ax−1)または(Ax−2)で表される化合物である。
一般式(Ax−1)
【化7】

(一般式(Ax−1)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、Rxは鎖中にヘテロ原子を含む連結基を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基である。アルキル基、アリール基およびアラルキル基は置換基を有していてもよい。)
RaおよびRbは、それぞれ、好ましくは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ、水素原子またはメチル基である。
Rxは、置換基としてマレイミド基以外の重合性基を有していてもよく、Rx上にマレイミド基以外の重合性基を有していることが好ましい。重合性基を有している場合、ビニル基が好ましい。
Rxとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基であり、無置換の炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましい。
ヘテロ原子を含む連結基としては、−O−または−CO−、ならびにこれらの組み合わせからなる基が例示される。
Rxとしてのアリール基は、フェニル基が好ましい。アリール基は、好ましくは芳香環に置換基を有する。置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましく、アルキル基が好ましい。これらの置換基の炭素数は、好ましくは1〜10である。
Rxとしてのアラルキル基は、好ましくは芳香環に置換基を有するアリール基である。芳香環はベンゼン環が好ましい。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましい。
Rxは25℃において液体とする観点から炭素数3以上のアルキル基または炭素数3以上のアルキレン基を有していることが好ましい。
【0023】
一般式(Ax−2)
【化8】

(一般式(Ax−2)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、Ryはアルキレン基もしくはアリーレン基、または、これらを組み合わせた基であり、ヘテロ原子を有する連結基で結合されていてもよい。アルキル基およびアリーレン基は置換基を有していてもよい。)
RaおよびRbは、それぞれ、好ましくは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ、水素原子またはメチル基である。
Ry中にマレイミド基以外の重合性基を有していてもよい。重合性基を有している場合、ビニル基が好ましい。
Ryとしてのアルキレン基は、炭素数1〜300のアルキレン基であることが好ましい。
ヘテロ原子を含む連結基としては、−O−または−CO−、ならびにこれらの組み合わせからなる基が例示される。
Ryとしてのアリーレン基は、フェニレン基が好ましい。
Ryは25℃において液体とする観点から炭素数3以上のアルキル基または炭素数3以上のアルキレン基を有していることが好ましい。
一般式(Ax−1)または(Ax−2)で表される化合物の具体例を以下に例示する。
Ra、Rbは前述と同義であり、好ましくは水素原子である。下記式中、n1は2〜10が好ましく、n2は1〜10が好ましく、n3は6〜20が好ましく、n4は1〜10が好ましい。
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
重合性化合物(Ax)の他の好ましい化合物として、シリコン原子を含有する化合物が挙げられる。シリコン原子を含有する化合物として、下記一般式(Ax−3)で表される化合物が好ましく、下記一般式(Ax−4)で表される化合物がより好ましい。
一般式(Ax−3)
【化11】

(一般式(Ax−3)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R1は連結基を表し、R2〜R4は、それぞれ、水素原子または置換基を表す。)
RaおよびRbは、それぞれ、好ましくは、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ、水素原子またはメチル基である。
1は、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキレン基である。
2〜R4は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、マレイミド基を含む残基、またはマレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する基であり、さらに好ましくは少なくとも1つがマレイミド基を含む残基、またはマレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する基であり、残りが水素原子または置換基である。この場合の置換基としては、アルキル基またはアリール基が挙げられる。マレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基としては、上述と同義であり、好ましい範囲も同義である。
2〜R4は、それぞれ、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数が1〜6であることがより好ましい。
2〜R4のうち少なくとも1つがビニル基であることが好ましい。
【0027】
一般式(Ax−4)
【化12】

(一般式(Ax−4)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R1は連結基を表し、R2〜R7は、それぞれ、水素原子または置換基を表す。)
1は、好ましくはアルキレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜4のアルキレン基である。
2〜R7は、それぞれ、好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、マレイミド基を含む残基、またはマレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する基であり、さらに好ましくは少なくとも1つがマレイミド基を含む残基、またはマレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する基であり、残りが水素原子または置換基である。この場合の置換基としては、アルキル基またはアリール基が挙げられる。マレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基としては、上述と同義であり、好ましい範囲も同義である。
2〜R7は、それぞれ、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数が1〜6であることがより好ましい。
2〜R7のうち少なくとも1つがビニル基であることが好ましい。
【0028】
重合性化合物(Ax)として、下記一般式(Ax−5)で表される化合物がさらに好ましく、一般式(Ax−6)で表される化合物が特に好ましい。
一般式(Ax−5)
【化13】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
11は、アルキレン基またはアリーレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基またはフェニレン基がより好ましい。
12〜R14としてのアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
12〜R14としてのアリール基は、フェニル基が好ましい。
15、R16、およびR17としてのアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
15、R16、およびR17としてのアリール基は、フェニル基が好ましい。
【0029】
一般式(Ax−6)
【化14】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
11は、アルキレン基またはアリーレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基またはフェニレン基がより好ましい。
12としてのアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
12としてのアリール基は、フェニル基が好ましい。
15、R16、およびR17としてのアルキル基は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
15、R16、およびR17としてのアリール基は、フェニル基が好ましい。
【0030】
以下に、一般式(Ax−3)〜(Ax−6)で表される化合物の具体例を以下に例示する。
Ra、Rbは前述と同義であり、好ましくは水素原子である。
【化15】

【0031】
本発明で用いられる重合性化合物(Ax)は公知の方法により合成できる。例えば、下記SCHEME1で表すように、無水マレイン酸とアミン化合物を反応させ、マレイミド構造を形成する方法が挙げられる。また、SCHEME2で表すように、アリルマレイミドとシラン化合物を反応させることによって、シリコン原子を有するマレイミド化合物が合成することもできる。
【化16】

【0032】
本発明の組成物中における、重合性化合物(Ax)の含有量としては、溶剤を除く全成分に対して30〜100質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましく、70〜98質量%がさらに好ましい。全重合性化合物中の重合性化合物(Ax)の含有量としては、40〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がより好ましく、80〜100質量%がさらに好ましい。さらに、他の重合性化合物を含む場合、これらの化合物は、後述する一般式(A1)で表される部分構造を有する化合物であることが好ましく、重合性化合物(Ax)と後述する一般式(A1)で表される部分構造を有する化合物の合計量が全重合性化合物の80質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく。98質量%以上占めることが更に好ましい。
【0033】
他の重合性化合物(A)
本発明の硬化性組成物は重合性化合物(Ax)の他に重合性化合物(A)を含有していても良い。
他の重合性化合物(A)としては、重合性化合物(Ax)と重合可能な化合物、すなわち重合性化合物(Ax)が有するマレイミド基または他の重合性基と重合できる重合性基を有する化合物が好ましい。他の重合性化合物(A)が有する重合性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エステル基と結合していない炭素−炭素多重結合(例えばビニル基、アリル基、シクロヘキセニル基、ビニルエーテル基、スチリル基、エチニル基)、(メタ)アクリレート基を有する化合物が好ましく、ビニル基、ビニルエーテル基、(メタ)アクリレート基を有する化合物がさらに好ましい。
重合性化合物(A)は重合性基を1〜6個有する化合物が好ましく、2〜4個有する化合物がより好ましい。分子内に2種以上の重合性基を有していてもよい。
パターン耐熱性向上の観点から、他の重合性化合物(A)はシリコン原子を有していることが好ましい。
他の重合性化合物(A)としては下記一般式(A1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
一般式(A1)
【化17】

(一般式(A1)中、Rx1はアルキル基またはアリール基を表す。m1は0〜2の整数を表し、m2は1〜3を表す。但し、m+n=3である。m1が2以上のとき、Rx1はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0034】
Rx1におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がさらに好ましい。
Rxにおけるアリール基としては、フェニル基またはナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基上に置換基を有していてもよいが、有していないほうが好ましい。
m1は0〜2の整数を表し、好ましくは2である。m2は1〜3の整数を表し、好ましくは1である。
一般式(A1)の部分構造は波線部で他の置換基と結合する。ただし、シリコン原子上の置換基として、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、水酸基を有さないことが経時安定性の観点から好ましい。このようなシリコン原子としては、例えば、シランカップリング剤を除く趣旨である。
一般式(A1)で表される部分構造を有する化合物としては、下記に表す化合物が例示される。
【化18】

【0035】
式(A1)で表される部分構造および他の重合性基を有する化合物としては下記の化合物が例示される。下記式中Rcは、水素原子またはメチル基を表す。
【化19】

【0036】
さらに本発明では、他の重合性化合物を含んでいてもよく、ビニルエーテル基を有する他の重合性化合物が好ましい。このような化合物としては、公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリル基を有する重合性化合物としては、(メタ)アクリル基を1〜6個有する化合物が好ましく、粘度、硬化性の観点から(メタ)アクリル基を2〜3個有する化合物がより好ましい。
(メタ)アクリル基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチルエチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレートが例示される。
【0038】
(メタ)アクリル基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。
本発明で好ましく用いることのできる(メタ)アクリル基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0039】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、p−またはm−キシリレンジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0040】
(メタ)アクリル基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
(メタ)アクリレート基を有する繰り返し単位および/または(メタ)アクリレート基を有する末端基を含んでいるポリマー化合物も好適に用いることができる。
【0042】
上記(メタ)アクリレート化合物のうち、アクリレート化合物の方が硬化性の観点から好ましく、組成物に含まれる全(メタ)アクリレート化合物中アクリレート化合物が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい
【0043】
また、モールドとの剥離性を向上させる目的で、フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物(但し、化合物(Ax)に該当するものを除く)を含有することが好ましい。
本発明におけるフッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、フッ素原子、シリコン原子、または、フッ素原子とシリコン原子の両方を有する基を少なくとも1つと、重合性官能基を少なくとも1つ有する化合物である。重合性官能基としてはメタアクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、ビニルエーテル基が好ましい。
【0044】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、低分子化合物でもポリマーでもよい。
【0045】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物がポリマーである場合、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位と、共重合成分として側鎖に重合性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。また、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位が、その側鎖、特に、末端に重合性基を有していてもよい。この場合、前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する繰り返し単位の骨格については、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、例えばエチレン性不飽和結合含基由来の骨格を有していることが好ましく、(メタ)アクリレート骨格を有している態様がより好ましい。また、シリコン原子を有する繰り返し単位は、シロキサン構造(例えばジメチルシロキサン構造)などのように、シリコン原子自体が繰り返し単位を形成していてもよい。重量平均分子量は2000〜100000が好ましく3000〜70000であることがより好ましく、5000〜40000であることが特に好ましい。
【0046】
本発明のインプリント用硬化性組成物中における含有量は、特に制限はないが、硬化性向上の観点や、組成物の低粘度化の観点から、全重合性化合物中、0.1〜20質量%が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましく、0.5〜10質量%がさらに好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。
【0047】
フッ素原子を有する重合性化合物
フッ素原子を有する重合性化合物が有するフッ素原子を有する基としては、フロロアルキル基およびフロロアルキルエーテル基から選ばれる含フッ素基が好ましい。
前記フロロアルキル基としては、炭素数が2〜20のフロロアルキル基が好ましく、4〜8のフロロアルキル基より好ましい。好ましいフロロアルキル基としては、トリフロロメチル基、ペンタフロロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ヘキサフロロイソプロピル基、ノナフロロブチル基、トリデカフロロヘキシル基、ヘプタデカフロロオクチル基が挙げられる。
【0048】
本発明では、フッ素原子を有する重合性化合物が、トリフロロメチル基構造を有するフッ素原子を有する重合性化合物であることが好ましい。トリフロロメチル基構造を有することで、少ない添加量(例えば、10質量%以下)でも本発明の効果が発現するため、他の成分との相溶性が向上し、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する上、繰り返しパターン形成性が向上する。
【0049】
前記フロロアルキルエーテル基としては、前記フロロアルキル基の場合と同様に、トリフロロメチル基を有しているものが好ましく、パーフロロエチレンオキシ基、パーフロロプロピレンオキシ基を含有するものが好ましい。−(CF(CF3)CF2O)−などのトリフロロメチル基を有するフロロアルキルエーテルユニットおよび/またはフロロアルキルエーテル基の末端にトリフロロメチル基を有するものが好ましい。
【0050】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物が有する全フッ素原子の数は、1分子当たり、6〜60個が好ましく、より好ましくは9〜40個、さらに好ましくは12〜40個、特に好ましくは12〜20個である。
【0051】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物は、下記に定義するフッ素含有率が20〜60%のフッ素原子を有する。フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物が重合性化合物である場合、フッ素含有率が20〜60%であることが好ましく、さらに好ましくは35〜60%である。該化合物が重合性基を有するポリマーの場合、フッ素含有率がより好ましくは20〜50%であり、さらに好ましくは20〜40%である。フッ素含有率を適性範囲とすることで他成分との相溶性に優れ、モールド汚れを低減でき且つ、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが向上する上、繰り返しパターン形成性が向上する。本明細書中において、前記フッ素含有率は下記式で表される。
【0052】
【化20】

【0053】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物のフッ素原子を有する基の好ましい一例として、下記一般式(I)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。このような部分構造を有する化合物を採用することにより、繰り返しパターン転写を行ってもパターン形成性に優れ、かつ、組成物の経時安定性が良好となる。
【0054】
一般式(I)
【化21】

一般式(I)中、nは1〜8の整数を表し、好ましくは4〜6の整数である。
【0055】
前記フッ素原子とシリコン原子のうち少なくとも一方を有する重合性化合物の好ましい他の一例として、下記一般式(II)で表される部分構造を有する化合物が挙げられる。もちろん、一般式(I)で表される部分構造と、一般式(II)で表される部分構造の両方を有していてもよい。
【0056】
一般式(II)
【化22】

一般式(II)中、L1は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、L2は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m1およびm2の少なくとも一方は1である。m3は1〜3の整数を表し、pは1〜8の整数を表し、m3が2以上のとき、それぞれの、−Cp2p+1は同一であってもよいし異なっていてもよい。
前記L1およびL2は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。また、前記アルキレン基は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していてもよい。前記m3は、好ましくは1または2である。前記pは4〜6の整数が好ましい。
【0057】
以下に、本発明で用いる光硬化性組成物で用いられる前記フッ素原子を有する重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する単官能重合性化合物が挙げられる。また、前記フッ素原子を有する重合性化合物としては、2,2,3,3,4,4−ヘキサフロロペンタンジ(メタ)アクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフロロヘキサンジ(メタ)アクリレートなどのフロロアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを有する2以上の重合性官能基を有する多官能重合性化合物も好ましい例として挙げられる。
また、含フッ素基、例えばフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物も好ましく用いることができる。
フロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を1分子中に2つ以上有する化合物として好ましくは下記一般式(III)で表される重合性化合物である。
【化23】

(一般式(III)中、R1は水素原子、アルキル基、ハロゲン原子またはシアノ基を表し、水素原子またはアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
Aは(a1+a2)価の連結基を表し、好ましくはアルキレン基および/またはアリーレン基を有する連結基であり、さらにヘテロ原子を含む連結基を含有していても良い。ヘテロ原子を有する連結基としては−O−、−C(=O)O−、−S−、−C(=O)−が挙げられる。これらの基は本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において置換基を有していても良いが、有していない方が好ましい。Aは、炭素数2〜50であることが好ましく、炭素数4〜15であることがより好ましい。
a1は1〜6の整数を表し、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1または2である。
a2は2〜6の整数を表し、好ましくは2または3、さらに好ましくは2である。
2およびR3はそれぞれ単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表す。m1およびm2はそれぞれ、0または1を表し、m3は1〜3の整数を表す。)
a1が2以上のとき、それぞれのAは同一であってもよいし、異なっていても良い。
a2が2以上のとき、それぞれのR2、R3、m1、m2、m3は同一であっても良いし、異なっていても良い。
Rfはフロロアルキル基、フロロアルキルエーテル基を表し、好ましくは炭素数1〜8のフロロアルキル基、炭素数3〜20のフロロアルキルエーテル基である。
フッ素原子を有する重合性化合物がポリマーの場合、前記フッ素原子を有する重合性化合物を繰り返し単位として含有するポリマーが好ましい。
他の成分との相溶性の観点からフッ素原子を有する重合性化合物はシリコン原子を含有していないことが好ましい。
【0059】
以下に、本発明で用いる光硬化性組成物で用いられるフッ素原子を有する重合性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記式中におけるR1はそれぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子およびシアノ基のいずれかである。
【0060】
【化24】

【0061】
シリコン原子を有する重合性化合物
前記シリコン原子を有する重合性化合物が有するシリコン原子を有する官能基としては、トリアルキルシリル基、鎖状シロキサン構造、環状シロキサン構造、籠状シロキサン構造などが挙げられ、他の成分との相溶性、モールド剥離性の観点から、トリメチルシリル基またはジメチルシロキサン構造を有する官能基が好ましい。他の成分との相溶性の観点からシリコン原子を有する重合性化合物はフッ素原子を含有していないことが好ましい。
シリコン原子を有する重合性化合物としては3−トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシメチルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(メタ)アクリロイル基を末端あるいは側鎖に有するポリシロキサン(例えば信越化学工業社製X−22−164シリーズ、X−22−174DX、X−22−2426,X−22−2475)などが挙げられる。
【0062】
本発明の硬化性組成物に含まれる重合性化合物は、全重合性化合物の平均でマレイミド基を 0.5〜3個/分子、好ましくは1〜2個/分子の割合で有することが好ましく、全重合性化合物の平均でビニル基を0.5〜5個/分子、好ましくは1〜3個/分子の割合で有することが好ましい。また、本発明の硬化性組成物に含まれる重合性化合物は、全重合性化合物の平均で、ケイ素原子を、1〜7個/分子、好ましくは1〜5個/分子の割合で有することが好ましい。
【0063】
重合開始剤(B)
本発明で用いる光硬化性組成物には、光重合開始剤が含まれることが好ましい。本発明に用いられる光重合開始剤は、光照射により上述の重合性化合物を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができるが、ラジカル重合開始剤がより好ましい。また、本発明において、光重合開始剤は複数種を併用してもよい。
【0064】
本発明に用いられる光重合開始剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01〜15質量%であり、好ましくは0.1〜12質量%であり、さらに好ましくは0.2〜7質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0065】
本発明で使用されるラジカル光重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。この中でもアセトフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。
アセトフェノン系化合物として好ましくはヒドロキシアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、アミノアセトフェノン系化合物が挙げられる。ヒドロキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、Irgacure(登録商標)184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、Irgacure(登録商標)500(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン)、Darocur(登録商標)1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン)が挙げられる。
ジアルコキシアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)が挙げられる。
アミノアセトフェノン系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1)、Irgacure(登録商標)379(EG)(2−ジメチルアミノー2ー(4メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン、Irgacure(登録商標)907(2−メチル−1[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンが挙げられる。
アシルフォスフィンオキサイド系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、Irgacure(登録商標)1800(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、BASF社から入手可能なLucirinTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)、Lucirin TPO−L(2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド)が挙げられる。
オキシムエステル系化合物として好ましくはBASF社から入手可能なIrgacure(登録商標)OXE01(1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、Irgacure(登録商標)OXE02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
【0066】
なお、本発明において「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0067】
−界面活性剤−
本発明で用いる光硬化性組成物には、界面活性剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる界面活性剤の含有量は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%であり、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。二種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001〜5質量%の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化を招きにくい。
【0068】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤、Si系界面活性剤およびフッ素・Si系界面活性剤の少なくとも一種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤とSi系界面活性剤との両方または、フッ素・Si系界面活性剤を含むことがより好ましく、フッ素・Si系界面活性剤を含むことが最も好ましい。尚、前記フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましい。
ここで、“フッ素・Si系界面活性剤”とは、フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
このような界面活性剤を用いることによって、半導体素子製造用のシリコンウエハや、液晶素子製造用のガラス角基板、クロム膜、モリブデン膜、モリブデン合金膜、タンタル膜、タンタル合金膜、窒化珪素膜、アモルファスシリコーン膜、酸化錫をドープした酸化インジウム(ITO)膜や酸化錫膜などの、各種の膜が形成される基板上に本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布したときに起こるストリエーションや、鱗状の模様(レジスト膜の乾燥むら)などの塗布不良の問題を解決するが可能となる。また、モールド凹部のキャビティ内への本発明で用いる光硬化性組成物の流動性の向上、モールドとレジストとの間の剥離性の向上、レジストと基板間との密着性の向上、組成物の粘度を下げる等が可能になる。特に、本発明のインプリント用硬化性組成物は、前記界面活性剤を添加することにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
【0069】
本発明で用いることのできる、非イオン性のフッ素系界面活性剤の例としては、商品名 フロラード FC−430、FC−431(住友スリーエム(株)製)、商品名サーフロン S−382(旭硝子(株)製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100((株)トーケムプロダクツ製)、商品名 PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA Solutions, Inc.)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18 (いずれも(株)ネオス製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451 (いずれもダイキン工業(株)製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、F780F(いずれもDIC製)が挙げられる。
また、非イオン性の前記Si系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂(株)製)、メガファック(DIC製)、KP−341(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
また、前記フッ素・Si系界面活性剤の例としては、商品名 X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも、信越化学工業(株)製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも、DIC製)が挙げられる。
【0070】
−酸化防止剤−
さらに、本発明で用いる光硬化性組成物には、公知の酸化防止剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる酸化防止剤の含有量は、重合性化合物に対し、例えば、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.2〜5質量%である。二種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0071】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0072】
−重合禁止剤−
さらに、本発明で用いる光硬化性組成物には、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤を含めることにより、経時での粘度変化、異物発生およびパターン形成性劣化を抑制できる傾向にある。重合禁止剤の含有量としては、全重合性化合物に対し、0.001〜1質量%であり、より好ましくは0.005〜0.5質量%、さらに好ましくは0.008〜0.05質量%である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。重合禁止剤は用いる重合性化合物にあらかじめ含まれていても良いし、組成物にさらに追加してもよい。
本発明に用いうる好ましい重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、フェノチアジン、フェノキサジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、ニトロベンゼン、ジメチルアニリン等が挙げられる。特に酸素が共存しなくても効果が高いフェノチアジン、4−メトキシナフトール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカルが好ましい。
【0073】
−溶剤−
本発明の硬化性組成物には、種々の必要に応じて、溶剤を用いることができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜200℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
本発明の組成物中における前記溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中99質量%以下の範囲で添加することができる。本発明の組成物をインクジェット法で基板上に適用する場合、溶剤は、実質的に含まない(例えば、3質量%以下)ことが好ましい。一方、膜厚500nm以下のパターンをスピン塗布などの方法で形成する際には、20〜99質量%の範囲で含めてもよく、40〜99質量%が好ましく、70〜98質量%が特に好ましい。
【0074】
−ポリマー成分−
本発明の組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性化合物よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
本発明の硬化性組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点からも、さらにポリマー成分を含有していてもよい。前記ポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性化合物との相溶性の観点から、2000〜100000が好ましく、5000〜50000がさらに好ましい。ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。本発明の組成物において溶剤を除く成分中、分子量2000以上の化合物の含有量が30質量%以下であると、パターン形成性が向上することからは、該成分は、少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0075】
本発明の硬化性組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0076】
本発明の硬化性組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。また、前記各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0077】
本発明の硬化性組成物は溶剤を除く全成分の混合液の粘度が100mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1〜70mPa・s、さらに好ましくは2〜50mPa・s、最も好ましくは3〜30mPa・sである。
本発明の硬化性組成物は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性なチッソ、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、−20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
【0078】
[パターン形成方法]
次に、本発明のインプリント用硬化性組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)の形成方法について説明する。本発明のパターン形成方法では、本発明のインプリント用硬化性組成物を基板または支持体(基材)上に設置してパターン形成層を形成する工程と、前記パターン形成層表面にモールドを圧接する工程と、前記パターン形成層に光を照射する工程と、を経て本発明の組成物を硬化することで、微細な凹凸パターンを形成することができる。
ここで、本発明のインプリント用硬化性組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させることが好ましい。具体的には、基材(基板または支持体)上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を設置し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体(基材上にパターン形成層が設けられたもの)を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。本発明のパターン形成方法による光インプリントリソグラフィは、積層化や多重パターニングもでき、通常の熱インプリントと組み合わせて用いることもできる。
【0079】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、光ナノインプリント法により微細なパターンを低コスト且つ高い精度で形成すること可能である。このため、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて形成されていたものをさらに高い精度且つ低コストで形成することができる。例えば、基板または支持体上に本発明の組成物を塗布し、該組成物からなる層を露光、硬化、必要に応じて乾燥(ベーク)させることによって、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜や、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。特に本発明のインプリント用硬化性組成物を用いて形成されたパターンは、エッチング性にも優れ、フッ化炭素等を用いるドライエッチングのエッチングレジストとしても好ましく用いることができる。
【0080】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)や電子材料の基板加工に用いられるレジストにおいては、製品の動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることが望ましい。このため、本発明のインプリント用硬化性組成物中における金属または有機物のイオン性不純物の濃度としては、1ppm以下、好ましくは100ppb以下、さらに好ましくは10ppb以下にすることが好ましい。
【0081】
以下において、本発明のインプリント用硬化性組成物を用いたパターン形成方法(パターン転写方法)について具体的に述べる。
本発明のパターン形成方法においては、まず、本発明の組成物を基材上に適応してパターン形成層を形成する。
本発明のインプリント用硬化性組成物を基材上に適用する方法としては、一般によく知られた適用方法を採用できる。
本発明の適用方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法、あるいはインクジェット法などにより基材上に塗膜あるいは液滴を適用することができる。また、本発明の組成物からなるパターン形成層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.03μm〜30μm程度である。また、本発明の組成物を、多重塗布により塗布してもよい。インクジェット法などにより基材上に液滴を設置する方法において、液滴の量は1pl〜20pl程度が好ましく、液滴を間隔をあけて基材上に配置することが好ましい。さらに、基材と本発明の組成物からなるパターン形成層との間には、例えば平坦化層等の他の有機層などを形成してもよい。これにより、パターン形成層と基板とが直接接しないことから、基板に対するごみの付着や基板の損傷等を防止することができる。尚、本発明の組成物によって形成されるパターンは、基材上に有機層を設けた場合であっても、有機層との密着性に優れる。
【0082】
本発明のインプリント用硬化性組成物を塗布するための基材(基板または支持体)は、種々の用途によって選択可能であり、例えば、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板など特に制約されない。また、基材の形状も特に限定されるものではなく、板状でもよいし、ロール状でもよい。また、後述のように前記基材としては、モールドとの組み合わせ等に応じて、光透過性、または、非光透過性のものを選択することができる。
【0083】
次いで、本発明のパターン形成方法においては、パターン形成層にパターンを転写するために、パターン形成層表面にモールドを押接する。これにより、モールドの押圧表面にあらかじめ形成された微細なパターンをパターン形成層に転写することができる。
また、パターンを有するモールドに本発明の組成物を塗布し、基板を押接してもよい。
本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基材の少なくとも一方に、光透過性の材料を選択する。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基材の上に本発明の硬化性組成物を塗布してパターン形成層を形成し、この表面に光透過性のモールドを押接し、モールドの裏面から光を照射し、前記パターン形成層を硬化させる。また、光透過性基材上に硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基材の裏面から光を照射し、硬化性組成物を硬化させることもできる。
前記光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0084】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。前記モールド上のパターンは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであればよい。具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0085】
本発明において光透過性の基材を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの基板などが例示され、特に制約されない。また、モールドの形状も特に制約されるものではなく、板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0086】
本発明のパターン形成方法で用いられるモールドは、硬化性組成物とモールド表面との剥離性を向上させるために離型処理を行ったものを用いてもよい。このようなモールドとしては、シリコン系やフッソ系などのシランカップリング剤による処理を行ったもの、例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSXや、住友スリーエム(株)製のNovec EGC−1720等、市販の離型剤も好適に用いることができる。
【0087】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、本発明のパターン形成方法では、通常、モールド圧力を10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にある。また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にある点からも好ましい。モールド圧力は、モールド凸部の硬化性組成物の残膜が少なくなる範囲で、モールド転写の均一性が確保できる領域を選択することが好ましい。
【0088】
本発明のパターン形成方法中、前記パターン形成層に光を照射する工程における光照射の照射量は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて適宜決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。光照射の前段階として、真空状態にしておくと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制、モールドと硬化性組成物との密着性向上に効果があるため、真空状態で光照射してもよい。また、本発明のパターン形成方法中、光照射時における好ましい真空度は、10-1Paから常圧の範囲である。
【0089】
本発明の硬化性組成物を硬化させるために用いられる光は特に限定されず、例えば、高エネルギー電離放射線、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。高エネルギー電離放射線源としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニヤーアクセレーター、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線が工業的に最も便利且つ経済的に使用されるが、その他に放射性同位元素や原子炉等から放射されるγ線、X線、α線、中性子線、陽子線等の放射線も使用できる。紫外線源としては、例えば、紫外線螢光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯、太陽灯等が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、EUVが含まれる。また、LED、半導体レーザー光、あるいは248nmのKrFエキシマレーザー光や193nmArFエキシマレーザーなどの半導体の微細加工で用いられているレーザー光も本発明に好適に用いることができる。これらの光は、モノクロ光を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(ミックス光)でもよい。
【0090】
露光に際しては、露光照度を1mW/cm2〜50mW/cm2の範囲にすることが望ましい。1mW/cm2以上とすることにより、露光時間を短縮することができるため生産性が向上し、50mW/cm2以下とすることにより、副反応が生じることによる永久膜の特性の劣化を抑止できる傾向にあり好ましい。露光量は5mJ/cm2〜1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。5mJ/cm2未満では、露光マージンが狭くなり、光硬化が不十分となりモールドへの未反応物の付着などの問題が発生しやすくなる。一方、1000mJ/cm2を超えると組成物の分解による永久膜の劣化の恐れが生じる。
さらに、露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御してもよい。
【0091】
本発明のパターン形成方法においては、光照射によりパターン形成層を硬化させた後、必要におうじて硬化させたパターンに熱を加えてさらに硬化させる工程を含んでいてもよい。光照射後に本発明の組成物を加熱硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分間が好ましく、15〜45分間がさらに好ましい。
【0092】
[パターン]
上述のように本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)やエッチングレジストとして使用することができる。本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、耐熱性、誘電率特性に優れ、絶縁膜材料として有用である。本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンの残膜を除去し、銅などの配線材料をパターン内に導入することで、複雑なフォトリソグラフィ、エッチング工程を経ることなくデバイスの作成が可能となる。更に、本発明では、モールドに忠実な矩形のパターンを形成できるので、通常フォトリソグラフィ、エッチング工程を繰り返して形成される多段の配線パターン(デュアルダマシン)も、本発明の硬化組成物を用い、多段パターンを有するモールドでパターン形成を行い、得られたパターンを絶縁膜として利用することで少ない工程で多段の配線形成が可能となる。
【0093】
本発明のパターン形成方法によって形成されたパターンは、エッチングレジストとしても有用である。本発明のインプリント用組成物をエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基材として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコンウエハ等を用い、基材上に本発明のパターン形成方法によってナノオーダーの微細なパターンを形成する。その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基材上に所望のパターンを形成することができる。本発明の硬化性組成物は、特に酸素を含有するガスによるドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0095】
重合性化合物Ax1の合成
末端にアミノプロピル基を有するポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、KF−8010、官能基当量430g/mol)15gをNMP50mlに溶解させ、これに氷冷下無水マレイン酸3.76gをNMP30mlに溶解させた溶液を少しづつ加えた。室温で2時間攪拌した後、酢酸エチル200ml加え、これを水洗、乾燥、濃縮した。得られた油状物に無水酢酸40ml、酢酸ナトリウム4.15gを加え85℃で7時間反応させた。反応液を氷に注ぎ1時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、乾燥、濃縮し、油状物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合性化合物Ax1を5g得た。NMRより求めたジメチルシロキサン繰返し単位s1の平均値は11であり、数平均分子量は916であった。
【0096】
重合性化合物Ax2の合成
ポリジメチルシロキサンのかわりに1,3−ビス(アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを用いた以外は重合性化合物Ax1の合成と同様の手法で重合性化合物Ax2を合成した。重合性化合物Ax2は室温で固体であり、融点は49℃であった。
【0097】
重合性化合物Ax4の合成
無水マレイン酸9.8gを酢酸エチル200mlに溶解させ、これに氷冷下アミノプロピルトリエトキシシラン22.1gを滴下した。室温で2時間反応させた後、溶剤を濃縮して、無色固体を32g得た。
1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン21.9gをメタノールに溶解させ、これに氷冷下濃硫酸0.46gを添加した。氷冷下30分攪拌した後、得られた無色固体を15g加えた。氷冷下1時間攪拌した後、水3.4gを加え、室温で4時間反応させた。反応液から水相を除去し、これに濃硫酸1.15gを加え室温で30分攪拌した。反応液に酢酸エチル200ml加え、水洗、乾燥、濃縮してオイル21gが得られた。得られたオイル10gに無水酢酸20ml、酢酸ナトリウム2.1g加え、80℃で4時間反応させた。反応液を氷に注ぎ1時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、乾燥、濃縮し、油状物を得た。これをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合性化合物Ax4を3g得た。
重合性化合物Ax6の合成
1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの代わりにヘキサメチルジシロキサンを用いた以外は、重合性化合物Ax4の合成と同じ手法で合成した。
【0098】
同様の手法を用いて重合性化合物Ax3、Ax7を合成した。Ax5はAldrich社製の市販品を用いた。Ax8は、ヒドロキシプロピルマレイミドとアクリル酸クロリドから合成した。
【0099】
硬化性組成物の調整
下記表に示す材料を混合し、さらに、重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルフリーラジカル(東京化成社製)を重合性化合物に対して100ppm(0.01質量%)となるように加えて調整し、本発明の硬化性組成物A1〜A12および比較例の硬化性組成物B1〜B3を得た。
【化25】

【0100】
これらの化合物の融点は、以下のとおりである。
Ax1:25℃において液体
Ax2:49℃
Ax3:25℃において液体
Ax4:25℃において液体
Ax5:28℃
Ax6:25℃において液体
Ax7:25℃において液体
Ax8:25℃において液体
【0101】
K1:2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド(BASF社製、Lucirin TPO−L)
K2:(2−ジメチルアミノー2ー(4メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルフェニル)ブタン−1−オン(BASF社製、Irgacure379EG)
【0102】
【化26】

R1:1,3−ビス(クロロプロピル)テトラメチルジシロキサンとアクリル酸より合成
R2:Gelest社製、SIA0210
R3:Gelest社製、SIT8725
R4:Aldrich社製、トリエチレングリコールジビニルエーテル
R5(参考用化合物): 1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン93gをメタノール13gに溶解させ、これに氷冷下濃硫酸2gをゆっくり加えた。30分攪拌した後、氷冷下これに3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン46gをゆっくり加えた。室温で1時間攪拌した後水14gを加え5時間反応させた。水層を分離し、有機層を水洗した後、有機層に濃硫酸4.9gを加え室温で30分攪拌した。水層を除き、有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、濃縮すると粗生成物が得られた。これを減圧蒸留精製すると化合物R5が50g得られた。
【0103】
<パターン耐熱試験>
モールドとして、線幅40nm、溝深さが60nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がオプツールDSX(ダイキン工業社製)で処理された石英モールドを用いた。
信越化学社製KBM−5103で処理されたシリコン基板上に前記硬化性組成物の2μlの液滴を複数1cm間隔の正方配列で配置し、これに前述のモールドをのせて液滴をモールドに充填させた。窒素気流下水銀ランプ光にて、露光量500mJ/cm2で硬化させ、硬化後、ゆっくりモールドを剥がしパターンを得た。
得られたパターンを、窒素下で300℃および350℃、ならびに、空気下で300℃および350℃の条件で、それぞれ、1時間加熱し、耐熱試験を行った。耐熱試験後のパターン形状を走査型電子顕微鏡で観察し、以下のように評価した。
A:モールドに忠実な矩形パターンが得られた。
B:パターントップが丸みを帯びていたが、パターン高さはモールド溝深さの90%以上であった。
C:パターントップが丸みを帯びており、パターン高さはモールド溝深さの70%以上90%未満であった。
D:パターントップが丸みを帯びており、パターン高さはモールド溝深さの50%以上70%未満であった。
E:パターントップが明らかに丸みを帯び、かつ、パターン高さがモールド溝深さの50%未満であった。
【0104】
【表1】

【0105】
本発明の硬化性組成物A5を用い、インクジェット装置として、富士フイルムダイマティックス社製、インクジェットプリンターDMP−2831を用いて、シリコンウェハ上にノズルあたり1plの液滴量で、100μm間隔の正方配列となるように、吐出タイミングを制御して光硬化性組成物を信越化学社製KBM−5103で処理されたシリコンウェハ上に吐出した。この際、吐出される硬化組成物の温度が25℃となるように調整した。硬化性組成物A5の25℃における粘度は12mPa・sであった。このウェハに線幅25nm、溝深さが40nmの矩形ライン/スペースパターン(1/1)を有し、パターン表面がオプツールDSX(ダイキン工業社製)で処理された石英モールドをのせて液滴をモールドに充填させた。窒素気流下モールド側から水銀ランプを用い500mJ/cm2の条件で露光して硬化させ、ゆっくりとモールドを離し、パターンを得た。
得られたパターンを前述の40nmのパターンと同じ方法によりパターン耐熱試験を行ったところ、40nmのパターンと同じ結果が得られた。
本発明の硬化性組成物A5を用い、パターンのない平坦なモールドを用いた以外は前述のパターン耐熱試験と同様の手法により、硬化膜を得た。この硬化膜の比誘電率を水銀プローブ法により測定したところ2.8であり、絶縁膜等に用いられる低誘電率材料としても好適であった。
【0106】
上記結果から明らかなとおり、本発明の組成物を用いた場合、100nm以下の微細パターン形成性に加えて高い耐熱性を達成できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の硬化性組成物は、高温(例えば、250℃以上、さらには、300℃以上)で加熱しても良好なパターン維持可能であるため、永久膜用途、特に、絶縁膜、封止剤等の用途に好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)を含有するインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
マレイミド構造を有する重合性化合物(Ax)が、マレイミド構造を2つ以上有するか、または、マレイミド基と、マレイミド基以外の重合性基であって、エステル基を有さない重合性基を有する化合物である、請求項1に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
重合性化合物(Ax)がシリコン原子を有する、請求項1または2に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
重合性化合物(Ax)がシリコン原子を有し、該シリコン原子は重合性化合物の(Ax)の鎖状構造中に含まれる、請求項1または2に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
重合性化合物(Ax)が分子中にエステル基を含有しない、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
重合性化合物(Ax)がシリコン原子と酸素原子が結合した構造を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
重合性化合物(Ax)が、マレイミド基に含まれるヘテロ原子と、シリコン原子に結合している酸素原子以外のヘテロ原子を有さない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
重合性化合物(Ax)の分子量が200〜500である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
さらに光重合開始剤(B)を含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
重合性基がシリコン原子に結合したビニル基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
前記重合性化合物(Ax)が一般式(Ax−5)で表される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
一般式(Ax−5)
【化1】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
【請求項12】
前記重合性化合物(Ax)が一般式(Ax−6)で表される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
一般式(Ax−6)
【化2】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
【請求項13】
一般式(Ax−5)で表される重合性化合物を含有する硬化性組成物。
一般式(Ax−5)
【化3】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
【請求項14】
一般式(Ax−6)で表される重合性化合物を含有する硬化性組成物。
一般式(Ax−6)
【化4】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
【請求項15】
一般式(Ax−5)で表される重合性化合物。
一般式(Ax−5)
【化5】

(一般式(Ax−5)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12〜R14は、それぞれ、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。)
【請求項16】
一般式(Ax−6)で表される重合性化合物。
一般式(Ax−6)
【化6】

(一般式(Ax−6)中、RaおよびRbは、それぞれ、水素原子またはアルキル基を表し、R11はヘテロ原子を有さない連結基を表し、R12は、アルキル基、アリール基、ビニル基、または−O−Si(R15)(R16)(R17)で表される基である。R15〜R17は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはビニル基である。xは0〜2の整数であり、yは1〜3の整数であり、x+y=3である。)
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を用いることを特徴とする、パターン形成方法。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を基材またはモールド上に適応してパターン形成層を形成する工程と、
前記基材とモールドでパターン形成層を挟んで圧接する工程と、
前記パターン形成層に光を照射する工程と、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項19】
前記モールドが多段パターンを有する、請求項18に記載のパターン形成方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載のパターン形成方法によって得られたパターン。
【請求項21】
絶縁膜材料である、請求項20に記載のパターン。
【請求項22】
得られたパターンが、多段のパターンである請求項20または21に記載のパターン。
【請求項23】
請求項20〜22のいずれか1項に記載のパターンを含む電子デバイス。

【公開番号】特開2013−46003(P2013−46003A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184530(P2011−184530)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】