説明

インホイールモータ

【課題】モータサイズを大きくすることなく低速高トルクの特性と高速回転特性を両立させたインホイールモータの提供。
【解決手段】低速高トルク用の巻線を有する第1ステータ部と、第1ステータ部の外周に隙間をあけて回転自在に配設された第1ロータ部と、高速回転用の巻線を有する第2ステータ部と、第2ステータ部の外周に隙間をあけて回転自在に配設された第2ロータ部とを備え、第1、第2ステータ部の間、及び第1、第2ロータ部の間に、漏れ磁束の干渉を防止する磁束遮蔽手段が設けられたインホイールモータであって、磁束遮蔽手段は、ステータコアに、ロータコアとの間に隙間を空けて設けられた第1磁束隔壁板と、第1磁束隔壁板とロータコアの隙間を遮蔽するように、第1磁束隔壁板を挟んでロータコアに設けられた第2、第3磁束隔壁板からなり、第1〜第3磁束隔壁板は、炭化ケイ素、カオリナイト及び、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の動力装置としての使用に適したインホイールモータに係り、より詳しくは、漏れ磁束による干渉を防止して効率を高めたインホイールモータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動車両の駆動動力装置として、車軸にブラケットを介して円環状のステータを取り付け、ホイール側にロータを固定したアウタロータ型のインホイールモータが検討されている。
インホイールモータは、一般に、ロータとして永久磁石を周方向に配設し、ステータとしてティースに巻線を巻いたコイルを有している。ステータのコイルに通電してロータを回転させると、ロータに固定されているホイールが回転する。そのホイールは、車軸にベアリングで回転自在に取り付けられているので、インホイールモータによって車輪が直接に回転駆動させられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
インホイールモータは、ロータが外側にあるので、モータサイズが同じであるインナーロータ型のモータに比べ、ロータ外形を大きくできるので高トルクが得られるというメリットがある反面、電源電圧に制限のある電気自動車においては、一次巻線の巻数を大きくできないので、要求出力を得るためには電流値を大きくせざるを得ず、電流値をある程度制限した状態では高速回転と大出力化との両立が困難であるという問題点があった。
【0004】
低速高トルク、高速回転特性の両立を図るために、特性の相異なる複数のロータを共通回転軸上に直列配置し、複数の電動機体部の各々を選択的に制御して、共通回転軸を回転駆動する電動機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記のような、共通回転軸上に特性の異なる2個のロータを直列配置し、対応する2個のステータを有する構造のモータは、2個のステータ相互の漏洩磁束の干渉が起こり、期待した特性が得られないばかりでなく、火災等の危険もはらむものであった。
このような問題に対し、2個のステータ間に絶縁体を介在させて漏洩磁束の干渉を防止しようとする試みがなされているが(例えば、特許文献3参照)、特許文献3に記載されたような方法では、磁束の漏洩を十分に遮断することができず、漏洩磁束の干渉が起こり、十分な特性が得られないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−281722号公報
【特許文献2】特開2001−218432号公報
【特許文献3】特開昭54−071310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、モータサイズを大きくすることなく低速高トルクの特性と高速回転特性を両立させたインホイールモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の電動車両用インホイールモータは、低速高トルク用の巻線を有する第1ステータ部と、第1ステータ部の外周に隙間をあけて回転自在に配設され、かつ複数の低速高トルク用の永久磁石を有する第1ロータ部と、高速回転用の巻線を有する第2ステータ部と、第2ステータの外周に隙間をあけて回転自在に配設され、かつ複数の高速回転用の永久磁石を有する第2ロータ部とを備え、第1、第2ステータ部は、車輪の車軸側に固定された共通のステータコアに直列配置され、第1、第2ロータ部は、車輪のホイール側に固定された共通のロータコアに直列配置され、第1、第2ステータ部の間、及び第1、第2ロータ部の間に、漏れ磁束の干渉を防止する磁束遮蔽手段が設けられたインホイールモータであって、磁束遮蔽手段は、ステータコアに、ロータコアとの間に隙間を空けて設けられた第1磁束隔壁板と、第1磁束隔壁板とロータコアの隙間を遮蔽するように、ロータコアに設けられた第2、第3磁束隔壁板からなり、第1〜第3磁束隔壁板は、炭化ケイ素、カオリナイト及び、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前述のように、本発明によれば、直列配置された低速高トルクに対応した第1モータ部と高速回転に対応した第2モータ部間の漏れ磁束を十分に遮断することができ、モータサイズを大きくすることなく低速高トルクの特性と高速回転特性を両立させた電動車両の動力装置としての使用に適したインホイールモータを得ることができる。
また、第1モータ部と第2モータ部間に設けられた第1磁束隔壁板は、ステータコアに固定され、更に、第2、第3磁束隔壁板によって挟み付けるように支持されているので、モータ運転中の振動及び倒れ破損が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るインホイールモータの軸線方向に直行する断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインホイールモータの軸線方向に平行な断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のインホイールモータの好ましい実施形態について、図1、2を参照して説明する。
【0012】
図1、2において、1はインホイールモータであり、図1はインホイールモータの軸線方向に直行する断面図であり、図2は軸線方向に平行な断面図である。
本発明の好ましい実施形態に係るインホイールモータ1は、低速高トルク用の第1巻線15を備えた第1ステータ部14と、第1ステータ部14の外周に微少の隙間をあけて回転自在に配設され、低速高トルク用の第1永久磁石23を有する第1ロータ部22からなる第1モータ部と、第1ステータ部14と間隔をあけて直列配置され、高速回転用の第2巻線17を備えた第2ステータ部16と、第2ステータ部16の外周に微少の隙間をあけて回転自在に配設され、高速回転用の第2永久磁石25を有する第2ロータ部24からなる第2モータ部と、モータ軸5とから構成されている。
【0013】
第1ステータ部14と第2ステータ部16は、ステータコア上に、それぞれ複数のティース12を設けた構成であり、各ティース12には絶縁物13を介して巻線が集中巻きで巻かれている。
第1ロータ部22と第2ロータ部24は、ロータコア21の内周部に、それぞれ複数の希土類磁石やフェライト磁石などの永久磁石を週方向に設けた構成となっている。
【0014】
上述のような構成を備えたインホイールモータ1は、第1ステータ部14と第1ロータ部22の組み合わせによるによる第1モータ部では、回転数が小さいときには所定の高いトルクで回転できるが、回転数が一定以上になると、最大トルクが急激に低下し、第2ステータ部16と第2ロータ部24の組み合わせによる第2モータ部では、回転数の上昇に伴って、徐々に最大トルクが低下するという、1つのモータに2つの異なる特性を有している。
このような1つのモータに2つの異なる特性を有するインホイールモータ1は、コントローラ(図示せず)で制御することにより、低速高トルクと高速回転特性を両立させている。
【0015】
本発明の好ましい実施形態に係るインホイールモータ1は、第1ステータ部14と第1ロータ部22の組み合わせによるによる第1モータ部と第2ステータ部16と第2ロータ部24の組み合わせによる第2モータ部との間に、漏れ磁束による干渉を防止するための、磁束遮蔽手段を有する。
インホイールモータ1に設けられた磁束遮蔽手段は、ステータコア11に設けられた第1磁束隔壁板30と、ロータコア21に設けられた第2磁束隔壁板32と第3磁束隔壁板34からなる。
【0016】
第1磁束隔壁板30は、第1ステータ部と第2ステータ部の間に、ステータコア11に固定配置され、ロータコア21との間に微少な間隙を有する略円盤状の形状である。
第1磁束隔壁板30の形態は、板状であり、その厚さは通常、0.5〜5mm程度、好ましくは1〜3mm程度であればよい。
【0017】
第1磁束隔壁板30の材質は、炭化ケイ素、カオリニウムを主たる成分とし、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む材料である。
第1磁束隔壁板30の成形は、炭化ケイ素、カオリニウムを主たる成分とし、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む材料を焼成することによって行ってもよく、バインダーとなるポリマー材料を加えて板状に成形してもよい。
【0018】
第2磁束隔壁板32及び第3磁束隔壁板34は、第1磁束隔壁板30とロータコア21との微少な間隙を塞ぐように、第1磁束隔壁板30を挟んでロータコア21に設けられ、形状は円環状である。
第2磁束隔壁板32及び第3磁束隔壁板34の機能は、第1磁束隔壁板30とロータコア21との微少な間隙を塞ぐことにより、漏れ磁束の遮断を完全なものとし、インホイールモータ1の運転中の第1磁束隔壁板30の倒壊を防止する役目を果たす。
第2磁束隔壁板32及び第3磁束隔壁板34の材質は、第1磁束隔壁板30と同様に、炭化ケイ素、カオリニウムを主たる成分とし、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む材料である。
【0019】
本発明に係る第1磁束隔壁板によれば、従来行われていた絶縁物による遮蔽と異なり、第1、第2モータ部から発生する磁束の干渉を十分なレベルで防止することができる。
また、第1磁束隔壁板と回転するロータコアとの間隙を微少にすることにより、磁束の干渉防止の効果をさらに高めている。
本発明に係る磁束遮蔽手段では、さらに、第1磁束隔壁板とロータコアとの微少な間隙を塞ぐように、第2、第3磁束隔壁板を設けており、これにより、第1、第2モータ部間での相互の磁束漏洩を、ほぼ完全に遮断することができる。
【0020】
本発明に係るインホイールモータは、共通モータ軸上に特性の異なる2個のステータを直列配置し、対応する2個のロータを有する構造のモータにおいて、2個のモータ部間の磁束干渉をほぼ完全に防止できるので、モータの効率が著しく高められ、モータサイズを大きくすることなく低速高トルクの特性と高速回転特性を両立させ、電動車両の動力装置として最適なものとなっている。
【符号の説明】
【0021】
1 インホイールモータ
5 モータ軸
11 ステータコア
12 ティース
13 絶縁物
14 第1ステータ部
15 第1巻線
16 第2ステータ部
17 第2巻線
21 ロータコア
22 第1ロータ部
23 第1永久磁石
24 第2ロータ部
25 第2永久磁石
30 第1磁束隔壁板
32 第2磁束隔壁板
34 第3磁束隔壁板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速高トルク用の巻線を有する第1ステータ部と、前記第1ステータ部の外周に隙間をあけて回転自在に配設され、かつ複数の低速高トルク用の永久磁石を有する第1ロータ部と、
高速回転用の巻線を有する第2ステータ部と、前記第2ステータ部の外周に隙間をあけて回転自在に配設され、かつ複数の高速回転用の永久磁石を有する第2ロータ部とを備え、
前記第1、第2ステータ部は、モータ軸側に固定されたステータコアに直列配置され、
前記第1、第2ロータ部は、共通のロータコアに直列配置され、
前記第1、第2ステータ部の間、及び前記第1、第2ロータ部の間に、漏れ磁束の干渉を防止する磁束遮蔽手段が設けられたインホイールモータであって、
前記磁束遮蔽手段は、前記ステータコアに、前記ロータコアとの間に隙間を空けて設けられた円盤状の第1磁束隔壁板と、
前記第1磁束隔壁板と前記ロータコアの隙間を遮蔽するように、前記第1磁束隔壁板を挟んで前記ロータコアに設けられた第2、第3磁束隔壁板からなり、
前記第1〜第3磁束隔壁板は、炭化ケイ素、カオリナイト及び、白金、チタン、クロム、ロジウム、アンチモンから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことを特徴とするインホイールモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−244767(P2012−244767A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112470(P2011−112470)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(507149822)
【Fターム(参考)】