説明

インモールドラベル容器

【課題】本発明の目的は、インモールドラベル容器の形成において、隣接するラベルの隙間が生じることを防止し、本来、容器の本体にない新たな機能をラベルにより付与するインモールドラベル容器を提案するものである。
【解決手段】隣接するラベルと重複する部分を有するインモールドラベル容器であって、前記重複する部分の成形品肉厚を、他の重複しない部分の成形品肉厚に対して、用いるラベルの厚みの1〜5倍厚くすることにより、ラベルの均一接着に必要な熱エネルギーを溶融樹脂から供給することで、本来、容器の本体にない新たな機能をラベルにより付与するインモールドラベル容器を提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤、洗剤、トイレタリー及び食品類などの包装容器において、容器本体の形成とラベル貼りを1工程で行うことにより得られるインモールドラベル容器にあって、該ラベルをより効率よく重ね貼りすることで、容器本体に新たな機能を付与するインモールドラベル容器を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
成形と同時にラベル貼りも行うインモールドラベル容器は、製造工程短縮による能率、効率の向上やコスト削減に加えて、機能性フィルムとの組合せで容器の付加価値を高めることが行われている。すなわち容器の骨格はブロー成形や射出成形などの立体成形体が担い、たとえば、機能性フィルムとして、酸素や水蒸気などの気体の透過を妨げるバリア性フィルムをインモールドラベルに使用することで、容器本体の機能では補えない新たな機能として、内容物の酸化、劣化を低減でき、容器の使命である内容物の保護に大きく貢献できる。
【0003】
例えば、バリア性フイルムをインモールドラベルに使用したインモールドラベル容器では、前記インモールドラベルを隙間無く成形容器表面に貼り付けることで、容器単体の機能に酸素や水蒸気などの気体の透過を妨げるバリア性を有する容器を提供できる。
【0004】
前記インモールドラベルの貼合において、隣り合うラベル間に隙間ができる要因としては以下のことが考えられる。例えば、ラベルの寸法精度、ラベルの位置精度、更には成形によるラベル変形などが上げられ、特に射出インモールド形成ではラベル面を溶融樹脂が高速で流動するため、この溶融樹脂の流動がラベルの位置ずれに大きく影響を及ぼす。従ってラベル隙間面積は成形ごとに変動し、それによって容器性能、特にバリア性のバラつきが大きくなる危険性があった。
【0005】
また、バリア性以外にも、インモールドラベルの重ね貼りにより期待される機能として、高い遮光性や意匠性などがあり、バリア性と同様にインモールドラベルを隙間無く容器本体の表面に貼り付けることで、本来、容器本体にはない機能を有するインモールドラベル容器を提供できる。
【0006】
インモールドラベルを隙間無く成形容器表面に貼り付ける方法として、たとえば、特許文献1ではバリア性を有するラベルの隙間から、酸素が侵入することを防止する手段として、隣接するラベルと0.5mm重ね貼りする提案がなされている。
【0007】
しかしながら、上記方法には二つの大きな課題がある。第一はラベル貼り位置精度である。特許文献1に記載の隣接するラベル同士の0.5mm重ね貼りする方法は、ラベルを貼る容器が単純な形状である場合は、比較的精度良く隣接するラベルの重ね貼りができるが、たとえば隣接する側面同士で隙間が生じる角型トレー形状の容器では、0.5mmの寸法精度でラベルの重ね貼りすることがかなり難しい。
【0008】
第二はインモールドラベルへの不均一な熱伝導による接着力である。インモールドラベル容器の形成では、予めラベルにヒートシール剤を塗布しておくか、比較的低温で溶融するフィルムをシーラント層としたもの積層してラベルとし、ラベルの接着には成形樹脂の溶融熱を利用する。即ち、インモールドラベル容器の形成では、容器成形時に金型内にあらかじめ設置されたラベルと、容器本体を形成する溶融樹脂とが直接触れることで、ラベル面との接着がなされる。従って、ラベルの重ね貼り部分は他の重ならない部分に比べて
、熱源である容器本体を形成する前記溶融樹脂から遠くなり、その分、到達する熱量が減少し、接着が不安定になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-255185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は係る背景技術の問題に鑑みてなされたもので、インモールドラベル容器の形成において、隣接するラベルの隙間が生じることを防止し、さらに確実に金型内部で貼り付けがなされることで、本来、容器の本体にない新たな機能を有するインモールドラベル容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する為の請求項1記載の発明は、隣接するラベルと重複する部分を有するインモールドラベル容器であって、前記重複する部分の成形品肉厚が、他の重複しない部分の成形品肉厚に対して、用いるラベルの厚みの1〜5倍厚いことを特徴とするインモールドラベル容器。
【0012】
上記課題を達成する為の請求項2記載の発明は、インモールドラベル容器であって、射出成形またはブロー成形によりなされることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベル容器。
【0013】
上記課題を達成する為の請求項3記載の発明は、ラベルの表裏の材質が、インモールドラベル容器本体の成形樹脂と同じ材質で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインモールドラベル容器。
【発明の効果】
【0014】
インモールドラベル容器の形成において、隣接するラベルと重複する部分の成形品肉厚を、隣接するラベルと重複しない部分の成形品肉厚より、用いるラベルの厚みの1〜5倍厚くすることで、ラベル全体の接着の最適化が可能となり品質の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】容器正面図
【図2】容器底面図
【図3】<図3−1> 容器AA断面図(隣接するラベルと重複しない場合) <図3−2> 容器AA断面図(隣接するラベルと重複する場合)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を図1〜3を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明に係わるインモールドラベル容器の正面図であり、1は該容器に内容物を充填した後にフィルムで密封する為のフランジ部、2は該容器のコーナー部、3は側面部を示す。
【0018】
図2は本発明に係わるインモールドラベル容器の底面図で、4は底面部を示す。
【0019】
図3は本発明に係わるインモールドラベル容器であって、図1のAA断面図で成形品肉
厚とラベルの関係を示す。図3−1は隣接するラベルと重複しない場合で、図3−2は隣接するラベルと重複する場合を示す。
【0020】
図3−1に示すラベル(5)のように、通常のインモールドラベル容器の形成は隣接するラベルの重複、つまり重ね貼りがないので、ラベルと容器本体の接着に必要な熱エネルギーは、その熱エネルギー源である溶融樹脂の成形品肉厚が均一でも十分供給される。
【0021】
しかしながら、本発明の如く、容器本体にラベルを用いて機能性を付与する目的で、隣接するラベルが重複する重ね貼りを必要とするインモールドラベル容器の形成においては、成形品膜厚が均一であると、ラベルが重複する部分と重複しない部分では溶融樹脂の熱エネルギーに差異が生じ、その結果、インモールドラベル全体の均一な接着が出来ない可能性が高く、機能性を付与する上で品質に問題が残る。
【0022】
本発明は上記課題を解決すべく鑑みられたものであり、本発明によれば、図3−2に示すラベル重ね貼り部(6)に対応する成形品肉厚(8)が、ラベル重ね貼りのない部(5)に対応する成形品肉厚(7)より厚くすること、即ち、ラベルの接着に必要な熱エネルギー源である溶融樹脂をより多く供給することによりラベルと容器本体の接着の最適化が可能となる。
【0023】
本発明によれば、ラベル重ね貼り部(6)に対応する成形品肉厚(8)が、ラベル重ね貼りのない部(5)に対応する成形品肉厚(7)より厚ければ厚いほど熱エネルギーの供給が効果的に行われ安定したラベルの接着が可能である。しかしながら、生産性や経済性を考慮すると、ラベル重ね貼り部(6)に対応する成形品肉厚(8)は、ラベル重ね貼りのない部(5)に対応する成形品肉厚(7)に対して、用いるラベルの厚みの1〜5倍厚いことが好ましい。その背景として、発明者らの実験によると、用いるラベルの厚みの1倍以下の厚み増では、成形条件にも因るが、溶融樹脂による熱エネルギーの不足でラベル重ね貼り部(6)の接着不良が生じる。また、用いるラベルの厚みの5倍以上の厚み増では、成形サイクルタイムや樹脂の使用量増から経済的な課題が生じる。
【実施例1】
【0024】
図1(容器正面図)及び図2(容器底面図)に示すような、容器断面形状が矩形で一辺の外寸が底部で100mm、上面開口部が120mm、高さが25mm入のトレー形状で、開口部にはフィルムを貼るためのフランジ部(1)が敷設して成るインモールドラベル容器を形成した。
【0025】
上記インモールドラベル容器の形成に先立ち、厚み12μmのPETフィルムに10−1Pa条件下で厚み40nmのバリアコーティングを施し、両面から厚み20μmのポリプロピレンフィルムを積層して、接着剤層と合わせて厚み60μmのラベルを作製した。
【0026】
次に上記ラベルを用いて、上記ラベルの基材フィルムを容器展開図に加工した抜き型で打ち抜き、底部の矩形を中心にしてのその各辺に側面をそれぞれ繋げ、フランジ部を除いて容器外面を覆う形状に作製した。
【0027】
なお、インモールドラベル容器金型を、ラベル重ね貼り部(6)に対応する成形品肉厚(8)が900μm、ラベル重ね貼りのない部(5)に対応する成形品肉厚(7)が700μmになるように射出成型全体の金型を作製した。
【0028】
上記ラベルを前記射出成形金型内に挿入し、ポリプロピレン樹脂を用いて、樹脂温度210℃の条件下で射出し、インモールドラベル容器形成を行った。
【0029】
次にフランジ部に金属板を接着して酸素透過度を計測した。その結果を表1に示した。
【0030】
〔比較例1〕
インモールドラベル容器金型を、ラベル重ね貼り部(6)に対応する成形品肉厚(8)とラベル重ね貼りのない部(5)に対応する成形品肉厚(7)を同じ700μmになるように射出成型全体の金型を作製した。
【0031】
上記金型以外は実施例1と同じ条件でインモールドラベル容器形成を行い、さらに実施例1と同じ方法で酸透過度を計測した。その結果を表1に示した。
【0032】
表1に実施例1及び比較例1の酸素透過度を示す。
【表1】

【0033】
表1の結果から、インモールドラベル容器の形成において、隣接するラベルと重複する部分の成形品肉厚(8)を、隣接するラベルと重複しない部分の成形品肉厚(7)より、用いるラベルの厚みの3.3倍厚くすることで、ラベル全体の接着の最適化が可能となり品質の安定化が図れた。
【符号の説明】
【0034】
1・・・フランジ部
2・・・コーナー部
3・・・側面部
4・・・底面部
5・・・ラベル(重ね貼りなし)
6・・・ラベル重ね貼り部
7・・・ラベルの重ね貼りなし部に対応する成形品厚肉部
8・・・ラベルの重ね貼り部に対応する成形品厚肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するラベルと重複する部分を有するインモールドラベル容器であって、前記重複する部分の成形品肉厚が、他の重複しない部分の成形品肉厚に対して、用いるラベルの厚みの1〜5倍厚いことを特徴とするインモールドラベル容器。
【請求項2】
成形方法が射出成形またはブロー成形によりなされることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベル容器。
【請求項3】
ラベルの表裏の材質が、インモールドラベル容器本体の成形樹脂と同じ材質で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインモールドラベル容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−25415(P2012−25415A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164682(P2010−164682)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】