説明

ウィンチ調整機構

荷物を昇降させるウィンチ(9)と、ウィンチ(9)のための調整機構(10)とを備えた構造物が開示されている。ウィンチ(9)は、クレーンアーム(5)に取り付けられ、調整機構(10)によって作業ポジションと移送ポジションとの間で限定的に移動が可能である。調整機構(10)には、ウィンチ(9)を調整するようにレバー装置(16)と共同作用する少なくとも1台の駆動装置(15)が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適には運搬物を昇降させるウィンチのアレンジ並びにウィンチ調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィンチは、クレーンアームに組み込まれると、調整機構によって作業ポジション(位置及び姿勢)と移送ポジションとの間で限定的に可動となる。この調整機構は、少なくとも1体の直線駆動装置を備えている。
【0003】
本発明は、さらに、以下に解説するようなタイプの構成を有した、特に運搬車用であるクレーンアームにも関し、さらに、クレーン柱と、クレーン柱に対して可動となるように取り付けられた少なくとも1本のクレーンアームとを備えたクレーンにも関する。
【0004】
上記のタイプの構成は、例えば、クレーンの他の部材と共に、非使用状態のウィンチを可能な限りコンパクトな形態とするポジションで運搬させる運搬車との関係で利用される。すなわち、例えば、運搬中の空気抵抗を可能な限り小さくするように、あるいは、特に建造物内で運搬車を容易に操作可能とするように運搬車の全高を減少させる。
【0005】
移送ポジションと作業ポジションとの間の制限された可動性を備えた運搬車のクレーンアームへのウィンチの基本的な取り付け方法は知られている。
【0006】
いずれにしろ、ウィンチを動かす調節機構は比較的に複雑な方法で提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の一つの目的は、複雑な設計の部材を実質的に排除し、作業ポジションと移送ポジションとの間で、ウィンチを移動させる改良された調整機構を開示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明の1好適実施形態において、ウィンチを調整するために直線駆動装置をレバー装置と相互作用させることで達成される。
【0009】
この直線駆動装置は、1実施形態では油圧式のピストン/シリンダ装置である。油圧シリンダの利点は、既に知られている。すなわち、この種の油圧式リニアモータは、高作用力を非常に安定して正確に伝達させる。なぜなら、油圧液の圧縮率が小さいからである。油圧アキュムレータ又は油圧ポンプから供給されるエネルギーは、容易に制御が可能で直線作用力に変換される。好適には本発明の実施には、少なくとも1台の複動シリンダが使用され、2方向の移動が提供される。本発明によればピストン/シリンダ装置は、レバー装置と相互作用し、ギヤホイール、歯形ラック、等々のごとき複雑設計の部材は不要である。このレバー装置は、好適にはピストン/シリンダ装置である直線駆動装置の直線運動をウィンチの回動運動に変換する。
【0010】
本発明の1実施形態によれば、レバー装置は、ウィンチのベアリング部材に対して作用する。この点に関して、担時部が少なくとも1つの回動軸と、回動軸から離れて提供されている少なくとも1つの回動式連結点とを有し、レバー装置がその回動式連結点に対して作用することが望ましい。
【0011】
本発明の1実施形態によれば、ピストンからは離れているシリンダの端部にてクレーンアームに取り付けられると、ピストン/シリンダ装置はクレーンアームと係合する。運動学的には、逆の構造とすることも本発明の範囲内である。すなわち、ピストンから離れたシリンダの端部をウィンチに取り付け、ピストンロッドの自由端をクレーンアームに取り付けることもできる。
【0012】
本発明の1好適実施形態によれば、レバー装置に少なくとも1つのニーレバー(knee lever)を含ませることができる。この場合、直線駆動装置をニーレバーの膝部に対して作用させることが望ましい。
【0013】
ピストン/シリンダ装置により提供される直線運動によって、膝関節から離れているニーレバーの2レバー端間の概念的な連結線方向で膝関節に作用する高作用力を発生させることができるため、ニーレバーの使用は効果的であることが判明した。この場合には、ニーレバーをシヤリングすればするほど作用力は強くなる。ニーレバーを備えた本発明の調整機構は、ケーブルドラムと、ケーブルドラムに巻かれたケーブルと共にウィンチの相当な総重量を作業ポジションと移送ポジションとの間で難なく移動させる。
【0014】
本発明のクレーンアームは、上述の構成を有していることを特徴とする。
【0015】
本発明のクレーンはクレーン柱と、そのクレーン柱に対して可動となるように取り付けられた少なくとも1本のクレーンアームとを有している。クレーンは前述タイプの構成を有している。本発明の1実施形態では、クレーン柱とクレーンアームとは一体的に提供されている。
【0016】
本発明のさらなる詳細と利点は、添付の図面を利用して以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】図1aは、ウィンチがそれぞれ作業ポジションと移送ポジションにある状態で運搬車に搭載されたクレーンの側面図である。
【図1b】図1bは、ウィンチがそれぞれ作業ポジションと移送ポジションにある状態で運搬車に搭載されたクレーンの側面図である。
【図2a】図2aは、ウィンチがそれぞれ作業ポジションと移送ポジションにある状態のクレーンアームの縦断面図である。
【図2b】図2bは、ウィンチがそれぞれ作業ポジションと移送ポジションにある状態のクレーンアームの縦断面図である。
【図3】図3は、運搬車に積載された状態のクレーンの側面図である。
【図4a】図4aは、それぞれ作業ポジションと移送ポジションにあるウィンチの斜視図である。
【図4b】図4bは、それぞれ作業ポジションと移送ポジションにあるウィンチの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
【実施例】
【0019】
図1aと図1bは、運搬車1に積載されたクレーン2の概略側面図である。クレーン2は、垂直軸の周囲を旋回するクレーン柱3と、クレーン柱3に対して軸4の周囲で回動するクレーンアーム5と、クレーンアーム5に対して軸6の周囲を回動する伸縮折畳みアーム7とを含む。
【0020】
折畳みアーム7は、基本的に折畳みシリンダ8によってクレーンアーム5に対して回動する。運搬のためのクレーン自体、又は、様々な動作の実施形態に関する詳細な説明は、それらが従来と同様であるため省略する。重要な特徴は、ウィンチ9がクレーンアーム5に取り付けられた、調整機構10を有していることである。この調整機構10は、ウィンチ9を作業ポジションと移送ポジションに選択的に移動させ、即ち好適には回動させる。
【0021】
ケーブル11は、ウィンチ9に幾重かに巻き付けられる。ケーブル11は、荷重を昇降させ、伸縮式に移動させ、クレーン2のジブ(クレーンの腕)を回動させる。図1aでは、ウィンチ9は、クレーンアーム5から上方に突き出ているが、図1bでは、ウィンチ9は下方に回動して収納されている。よって図1bでは、ウィンチ9の上部は、クレーンアーム5の上面とほぼ共面状態である。図1aは、ウィンチ9の作業ポジションを示し、図2bは、ウィンチ9の移送ポジションを示す。この移送ポジションでは、クレーンの全高は減少している。しかしながら、クレーンタイプとクレーン構造によっては、図1bで示す折畳みポジションは、移送ポジション又は作業ポジションとなり得る。
【0022】
図2aと図2bは、図1aと図1bで示すクレーンアーム5のそれぞれ縦断面図であり、ウィンチ9のポジションは、作業ポジションまたは移送ポジションである。図2aは、クレーンアーム5に対するウィンチ9の折畳みポジションを示す。ウィンチ9は、少なくとも1つのケーブルドラム12を有する。
【0023】
ケーブル11は、ケーブルドラム12を回転させて巻き上げるか、あるいは巻き戻す。
【0024】
ウィンチ9は、クレーンアーム5に対して軸14の周囲で回動する担持部13を含む。レバー装置16を介してウィンチ9の担持部13を回動させるピストン/シリンダ装置15a、15bの形態である少なくとも1台の直線駆動装置15が、移送ポジションと作業ポジションとの間でウィンチ9を調整するために提供されている。
【0025】
レバー装置16は、2本のアームレバー16aと16bを備えたニーレバーを含む。ピストン/シリンダ装置(15a、15b)のピストンロッド15bの自由端は、この実施形態においては2本のレバー16aと16bの間で関節連結形態の膝部Kに直接的に作用する。膝部Kから離れた2本のレバー16aと16bの端部は、担持部13の回動関節点14aに作用し、クレーンアーム側では、関節点14bに作用する。
【0026】
図2aで示すように、ピストンロッド15bは、シリンダ15aに対して延び出た状態である。ピストンロッド15bがシリンダ15a内に戻されるとニーレバーの作用によって軸14の周囲で担持部13は、難なく回動し、図2bで示すウィンチ9のポジションに到達する。従って、図2bで示す状態は、図1aのウィンチ9の折畳みポジションに対応する。このポジションは、前述のようにクレーンのタイプによっては作業ポジションにも移送ポジションにもなる。
【0027】
図3は、クレーン2を積載した状態の運搬車1の側面図である。クレーン2は、調整手段(機構)10によって選択的に移送ポジション又は作業ポジションに移動されるウィンチ9を備えたクレーンアーム5がアレンジされている回転可能なクレーン柱3を含んでいる。
【0028】
図4aと図4bは、ウィンチ9の作業ポジションと移送ポジションとをそれぞれ示す斜視図である。少なくとも1台の直線駆動装置15をピストン/シリンダ装置(15a、15b)として有し、レバー装置16を2つのニーレバー16aと16bとして有した調整機構10が利用される。担持部13に取り付けられ、ケーブルドラム12を有するウィンチ9は、軸14の周囲で回動できるように取り付けられている。ピストン/シリンダ装置(15a、15b)は、ニーレバーの膝部Kに対して直接作用する。担持部13は、軸14とは分離され、レバー16bが作用する回動式関節点14aを有する。他方のレバー16aは、クレーンアーム5に関連して関節点14bに関節連結されている。
【0029】
図4bは、ウィンチ9の回動後のポジションを示す。ピストンロッド15bは、シリンダ15aに対して延び出たポジションである。2本のレバー16aと16bを備えたレバー装置は、ピストンロッド15bの直線運動を、担持部13に取り付けられたウィンチ9の回動運動に変換する。回動角は、0°から180°が好適であり、さらに好適には0°から約90°である。
【0030】
本発明は、以上の典型的な実施形態には限定されず、「請求の範囲」によってカバーされる実施形態の全変形および全均等物を含む。上下等、明細書あるいは図面で表される位置関係は適宜可変である。一般的に、ウィンチは、移送ポジションと作業ポジションとの間で直線運動または回動運動あるいはそれらを組み合わせて限定的に運動することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役用のウィンチと、該ウィンチ用の調整機構とを備えた構造物であって、
クレーンアームに取り付けられると、前記調整機構によって、前記ウィンチは、作業ポジションと移送ポジションとの間で限定的に移動することができ、
前記調整機構は、少なくとも1台の直線駆動装置を備えており、
該直線駆動装置(15)は、レバー装置(16)に作用してウィンチ(9)を調整することを特徴とする構造物。
【請求項2】
レバー装置(16)は、直線駆動装置(15)の直線運動をウィンチ(9)の回動に変換するように設計されていることを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項3】
レバー装置(16)は、ウィンチ(9)の担持部(13)に対して作用することを特徴とする請求項1記載の構造物。
【請求項4】
担持部(13)は、少なくとも1つの回動軸(14)と、該回動軸(14)とは離れて提供された少なくとも1つの回転関節点(14a)とを有しており、レバー装置(16)は、該回転関節点(14a)に対して作用することを特徴とする請求項3記載の構造物。
【請求項5】
レバー装置(16)は、少なくとも1本のニーレバー(16a、16b)を含んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の構造物。
【請求項6】
直線駆動装置(15)は、ニーレバー(16a、16b)の膝部(K)に対して作用することを特徴とする請求項5記載の構造物。
【請求項7】
ウィンチ(9)は、クレーンアーム(5)の軸方向に対して略平行に、軸(14)の周囲を回動できるように該クレーンアーム(5)に取り付けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の構造物。
【請求項8】
直線駆動装置(15)は、油圧式のピストン/シリンダ装置(15a、15b)であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の構造物。
【請求項9】
ウィンチ(9)は、荷重ケーブル(11)が巻き付けられる少なくとも1体のケーブルドラム(12)を有していることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の構造物。
【請求項10】
クレーンアーム(5)は、請求項1から9に記載の構造物を利用していることを特徴とする運搬車用のクレーンアーム。
【請求項11】
クレーン柱と、該クレーン柱に対して可動であるように取り付けられた少なくとも1本の請求項10記載のクレーンアームとを備えたクレーン。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2010−526001(P2010−526001A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504374(P2010−504374)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/AT2008/000135
【国際公開番号】WO2008/134783
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504297618)パルフィンガー アーゲー (3)
【Fターム(参考)】