ウイルス感染ペプチド(SEVI)のヒト精子増強剤およびその使用
本発明の主題は、ヒト前立腺酸性ホスファターゼのアミノ酸240〜290のフラグメントに対応するペプチドである。本発明はまた、核酸、抗体、薬物、および診断、ならびにウイルス疾患、特にHIV疾患の治療および診断のためのこれらの使用およびペプチドの使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ペプチド、核酸、抗体、薬物、および診断、ウイルス疾患の治療および診断、ならびにex vivoおよびin vivo遺伝子療法における診断方法、ウイルス単離技術、およびレトロウイルスベクターを使用した形質導入効率の改良のためのその使用である。
【0002】
HIV感染などのウイルス感染、特にHIV−1伝播に対する別の改良された薬物が必要とされ続けている。過去数年にHIVに対する種々の薬物が開発されているにもかかわらず、HIV感染は依然として世界的問題である。HIVによるAIDSのような多数のウイルス疾患の治療法は、依然として利用できない。ウイルスを研究および理解するための簡潔で有効な診断方法および実験ツールも必要である。
【0003】
遺伝子療法アプローチは、しばしば、標的細胞(特に、幹細胞)、レトロウイルスベクターの形質導入効率の低さによって阻まれる。形質導入効率は、標的細胞への有効な遺伝子導入に極めて重要であり、形質導入効率は、通常、レトロウイルスベクターが幹細胞における遺伝子導入に使用される場合に低い。したがって、適切な細胞に遺伝子を首尾よく送達させるための改良されたレトロウイルス形質導入系も必要である。
【0004】
本発明の根底にある問題は、ウイルス疾患および遺伝子療法に関連する上記問題を克服する、改良されたか別の薬物、診断ツール、および実験ツールを提供することである。
【0005】
驚いたことに、本発明の根底にある問題は、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチド、核酸、抗体、薬物、診断、および使用によって解決される。
【0006】
本発明のペプチドのアミノ酸配列は、式:
R1−KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK−R2
(式中、
R1はH、YGIHKQ、GIHKQ、IHKQ、HKQ、KQ、またはQであり、
R2は、独立して、−COOH、LIMY、LIM、LI、Lであり、
但し、配列番号18のペプチドを除く)によって示される。
【0007】
特に、本発明のペプチドは、配列番号1〜12のペプチドである。
【0008】
本発明のペプチドは、配列番号18のペプチドを除く、細胞のウイルス感染を促進するヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)のアミノ酸残基240〜290、より好ましくは残基247〜286のフラグメントである。番号付けは、その非プロセシング形態(プロ配列が含まれる)のタンパク質配列をいう。そのプロセシング形態のヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP;Swissprot:遺伝子座PPAP_HUMAN、アクセッションP15309)は、予測分子量が41126Daの354アミノ酸からなる(Vihko et al.;1988,Sharief & Li;1992)。タンパク質hPAP自体およびこれをコード刷る核酸は、本発明の主題ではない。D.G.Mc Neel et al.は、Cancer Research 61,5161−5167(2001)で、前立腺酸性ホスファターゼ由来のTヘルパーエピトープの同定について報告している。本発明は、hPAPフラグメントが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および他のエンベロープウイルスによる細胞感染を増強するアミロイド様線維構造を形成することができるという発見に基づく。
【0009】
以下で、その線維状のアミロイド様形態の本発明のペプチドを、「ウイルス感染の精子増強剤」に関して、「SEVI」ペプチド、または簡潔に「SEVI」という。H2O、細胞培養培地、または従来の緩衝液(PBSなど)に溶解した場合、PAPフラグメントは、自発的または撹拌後にアミロイド様線維構造を形成する。一般に、hPAPアミノ酸配列のアミノ酸240〜290の51残基区域の部分的配列を有するペプチドは、本発明の主題である。好ましくは、ペプチドは、少なくとも12、他の実施形態では、少なくとも20、25、30、または38アミノ酸を含む。ペプチドは、わずか50、好ましくはわずか47または45アミノ酸を含む。配列番号1〜12のアミノ酸配列のペプチドSEVI1〜12が特に好ましい。
【0010】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの以下の配列変異:
−N末端および/またはC末端のアミノ酸の欠失であって、ここで、ペプチドが少なくとも30、好ましくは35〜38アミノ酸からなる、欠失、
−N末端および/またはC末端の10アミノ酸まで、好ましくは1、2、3、または5アミノ酸の付加、
−5アミノ酸まで、好ましくは1、2、または3アミノ酸のアミノ酸交換であって、アミノ酸交換が保存的交換であることが好ましい、交換、
−3アミノ酸まで、好ましくは2または1アミノ酸の配列内のアミノ酸挿入または欠失
を有するSEVIペプチド由来のペプチドである。
【0011】
保存的アミノ酸交換では、アミノ酸を、類似の性質を有する別のアミノ酸に置換する。保存的アミノ酸交換は、好ましくは、以下の群のいずれか1つに含まれる:
無極性側鎖を有するアミノ酸:A、G、V、L、I、P、F、W、M
極性側鎖を有する無電荷アミノ酸:S、T、G、C、Y、N、Q
芳香族側鎖を有するアミノ酸:F、Y、W
正電荷アミノ酸:K、R、H
負電荷アミノ酸:D、E。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの以下の共有結合改変:
−好ましくはN末端でのアシル化、アセチル化、非ペプチド高分子キャリア群への結合、
−好ましくはC末端でのアミド化、非ペプチド高分子キャリア群への連結、
−好ましくはアミノ酸側鎖でのグリコシル化、
−細胞へのペプチドの取り込みを促進するアダプタータンパク質への連結または疎水性基、好ましくは脂質基、脂肪酸基、ダンシル基、カルボベンズオキシ基、またはt−ブチルオキシカルボニル基への連結、
−酸化、硫酸化、エステル化、ラクトン形成、および/またはリン酸化
を有する上記概説のSEVIペプチド由来のペプチドまたはその誘導体である。
【0013】
好ましい高分子キャリア基は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリソルベートエステル、マンナン、アミロペクチン、プルラン、自己会合疎水性化ポリサッカリドのヒドロゲルナノ粒子、ポリリジン、またはアルブミンである。
【0014】
本発明の主題はまた、SEVIペプチドのレトロペプチド、インベルソペプチド、またはレトロ−インベルソペプチドおよびSEVIペプチドの生物活性を有する多重合成によって得ることができるペプチドである。ペプチドは、少なくとも1つのD型アミノ酸ならびにイミノアミノ酸および稀なアミノ酸(ヒドロキシリジン、ホモセリン、およびオルニチンなど)を含み得る。本発明はまた、本発明のペプチド模倣物に関する。これらは、例えば、逆ペプチド結合またはエステル結合による1つまたは複数のペプチド結合の改変によって特徴づけられる。
【0015】
本発明のペプチドは、細胞のウイルス感染を促進する。本明細書中で使用する場合、「ウイルス」は、例えば、遺伝子療法のためにデザインした核酸を含み得る天然に存在するウイルスおよびウイルス粒子ならびに人工のウイルスおよびウイルス粒子をいう。好ましい実施形態では、ウイルスは、レトロウイルスおよびレトロウイルス粒子(オンコウイルス、レンチウイルス、およびフォーミーウイルスなど)である。一般に、本発明のペプチドは、特に、複製コンピテントウイルスでの標的細胞の感染を増強するのに有用である。特異的ウイルスは、HIV−1(ヒト免疫不全ウイルス1型)、HIV−2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ならびにオンコウイルス、マウス白血病ウイルス(MuLV)、およびフォーミーウイルスである。ペプチドはまた、HIV−変異形(X4、R5、および二重細胞指向性(dual−tropic)変異形など)、分子HIVクローンおよびHIV−1サブタイプの感染を促進する。ペプチドはまた、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、MuLV、エボラ、HIV−1、およびMuLV由来の異種エンベロープタンパク質でシュードタイピングしたB型肝炎ウイルス(HBV)またはレトロウイルス粒子での感染を好む。したがって、本発明のペプチドは、レトロウイルスベースの遺伝子療法系の形質導入効率を増加させる。
【0016】
本発明の他の好ましい実施形態では、ペプチドは、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびブタ熱ウイルスなど)、トガウイルス(風疹ウイルスなど)、コロナウイルス(SARSウイルスなど)、カリシウイルス(ノーウォークウイルスおよびE型肝炎ウイルスなど)、ラブドウイルス(水疱性口内炎インディアナウイルスおよび狂犬病ウイルスなど)、パラミクソウイルス(ヒトパラインフルエンザウイルスI、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、およびヒト呼吸器合胞体ウイルスなど)、フィロウイルス(マールブルグウイルスおよびエボラウイルスなど)、オルソミクソウイルス(インフルエンザA/B/Cウイルスなど)、アレナウイルス(ラッサ熱ウイルスなど)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1および2、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、7、および8など)、ポックスウイルス(ワクシニアウイルスなど)、レオウイルス(ロタウイルスなど)、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、脳心筋炎ウイルス、および口蹄疫ウイルスなど)、パポーバウイルス(ポリオーマウイルスおよび乳頭腫ウイルス(pappilom virus)など)、およびアデノウイルスでの感染を好む。
【0017】
ペプチド活性を、例えば、ルシフェラーゼアッセイまたはGFP発現アッセイで測定することができる。好ましくは、例えば、1または5μg/mlのペプチドは、ペプチドの非存在下での細胞へのウイルス感染と比較した場合、細胞へのウイルス感染を、2倍、より好ましくは3、5、または10倍に増強する。低感染効率で標的細胞を感染させた場合、通常、SEVIは、ウイルス感染率を桁違いに増強する。
【0018】
本発明の主題はまた、本発明のペプチドをコードする核酸、本発明のペプチドのための発現ベクター(プラスミド、コスミド、およびウイルスベクターなど)である。
【0019】
本発明の別の主題は、本発明のペプチドに対する特異的抗体の生成および使用である。好ましくは、これらの抗体を、治療薬として使用する。これらの抗体は、SEVIペプチドの活性を遮断し、例えば、性感染ウイルス疾患、特に、HIV−1、HIV−2、またはHBVによって伝播される疾患のようなin vivoでのウイルス粒子の伝播を妨害する。本発明の抗体は、血清からの単離またはモノクローナル抗体テクノロジーなどの公知の方法によって得ることができる。従来の方法は、実験動物に抗原を注射し、次いで、抗体形成後、血清からポリクローナル抗体を回収することである。モノクローナル抗体テクノロジーでは、無限に複製することができる骨髄腫細胞のような腫瘍細胞を、哺乳動物細胞と融合して、継続的に抗体を産生するハイブリドーマを得る。
【0020】
hPAPは、前立腺の上皮細胞中に合成され(Ostrowski et al.;1976,Risley & van Etten;1987,Hakalahti et al.;1993)、前立腺液中に分泌される(Vihko;1978,Vihko et al.;1978a,1978b)。hPAPは、アルキルおよびアリールオルトリン酸モノエステル(ホスホチロシン(Apostol et al.;1985;Vihko et al.;1993)およびヌクレオチド(Dziembor−Gryszkiewicz et al.;1978)が含まれる)を加水分解し、リンペプチドおよびリンタンパク質などの高分子を脱リン酸化することも見出された(Wasylewska et al.;1983,Li et al.;1984)。その至適pHがpH4〜6であるので、hPAPは、酸性ホスファターゼである。
【0021】
5’末端では、cDNAは32アミノ酸のシグナルペプチドをコードする。未変性hPAPは、2つの触媒的に不活性なサブユニットの二量体として存在し(Derechin et al.;1971,Luchter−Wasyl & Ostrowski 1974,Vihko et al.;1978)、これらのサブユニットは、互いに共有結合して活性酵素を形成する(Kuciel et al.;1990)。
【0022】
hPAPは、精液中に大量に分泌される(Ronnberg et al.;1981)。酵素濃度は、しばしば、前立腺癌患者で上昇し、腫瘍の進行に相関する(Choe et al.;1980,Griffiths 1980,Vihko et al.;1980,1981,and 1985)。hPAPは、前立腺特異的抗原が発見されるまで前立腺癌の主な診断マーカーであった。
【0023】
ヒト精液中に大量のhPAPが存在するので、hPAPは、生殖能力で生理学的役割を果たすことが示唆されている(Coffey & Pienta 1987)。免疫反応性hPAPは、白血球、腎臓、脾臓、胎盤、膵臓、肝臓、胃、顆粒球、好中球(Li et al.;1980,Shaw et al.;1981,Yam et al.;1981,Aumuller & Seitz,1985,Waheed et al.;1985)、男性の肛門線および尿道腺(Kamoshida & Tsutsumi 1990)、十二指腸窩上皮(Drenckhahn et al.;1987)、ならびに膵島細胞癌(Choe et al.;1978)などのいくつかの非前立腺細胞および組織で見出されている。hPAPの血清レベルは、健康な個体では非常に低いが(0〜5ng/ml)(Cusan et al.;1994)、悪性および良性の前立腺疾患でしばしば上昇する(Choe et al.;1980,Griffiths 1980,Vihko et al.;1980,1981,and 1985)。そのようなものとして、hPAP血清レベルのための免疫アッセイは、前立腺癌の疾患の進行のモニタリングに有用である。
【0024】
SEVIペプチドはウイルスまたは細胞膜に結合し、細胞へのウイルスの侵入に不可欠な過程を活性化すると推測されている。したがって、本発明のペプチド、核酸、および抗体は、ウイルス感染、前立腺機能障害、癌腫、または患者のウイルス感染に対する感受性の治療薬または診断薬として有用である。本発明のペプチド、核酸、および抗体はまた、細胞への遺伝子送達または遺伝子療法アプローチのために使用されるレトロウイルスベクターの感染性を増強するのに有用である。これらは、レトロウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV)ならびにエボラウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、およびB型肝炎ウイルスのような他のエンベロープウイルスによる許容状態の標的細胞の感染を好む。本発明のペプチドは、ウイルス粒子の感染性または融合能力(非感染CD−4+細胞へのHIV伝播を好む能力など)に対して劇的な増強効果を示す。ヒト血清中のhPAPが高濃度であり、それによりSEVIが高濃度であるので、SEVIは、恐らく、HIV血清陽性個体から健康な性交パートナーへのHIV伝播を容易にする。本発明のペプチドを、性交時のHIV−1伝播の確率についてのマーカーとして使用することができる。
【0025】
したがって、広範な治療および診断への適用にペプチドを使用し、このペプチドは、細胞へのウイルスの侵入の実施および研究のための有益な実験ツールである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、ウイルスベクター系に基づいた日常的な実験の実施または遺伝子治療アプローチのためのウイルス感染または形質導入効率の一般的増強剤としてのSEVIペプチドの使用である。ペプチドは、in vitroまたはin vivoでの細胞への遺伝子療法のためにデザインされたレトロウイルスベクターの侵入を増強する。ペプチドを、遺伝子療法のためのベクターと組み合わせて投与し、標的細胞へのベクターの侵入を媒介することができる。ペプチドは、細胞へのウイルスの取り込みを促進するので、ペプチドはin vitroでも有用である。したがって、ペプチドは、ウイルスおよびその作用機構の研究のためのツールとして有用である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、診断アプローチ、特に、HIV−1のようなウイルスの診断アプローチのためのSEVIペプチドの使用である。ウイルス粒子は、SEVIペプチドと相互作用する。したがって、SEVIペプチドを使用して、HIV感染したヒトまたはSIV感染した霊長類由来の血清、血液、血漿、精子、または組織のようなサンプルからウイルス粒子を単離することができる。HIV−1診断における1つの重要な問題は、HIV−1感染個体由来の血液または細胞サンプルからの直接的なウイルスの再単離である。日常的な診断方法と比較して、SEVIの存在下で、首尾のよいウイルス単離を数回行うことが好ましい。好ましい方法は、結合親和性アッセイおよび安全な溶液を得るためにウイルスを含むと疑われるか含むことが知られている溶液からウイルスを定量的に取り出す方法である。かかる方法では、本発明のペプチドは、好ましくは、支持体またはカラムに共有結合している。
【0028】
本発明はまた、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドに関し、かかるポリヌクレオチドは、好ましくは、DNA、RNA、ゲノムDNA、またはPNAから構成される。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよび本発明のベクターを含む遺伝子操作された宿主細胞に関する。
【0030】
組換えまたは合成SEVIペプチドを使用して、一般に、標的細胞へのレトロウイルス粒子(オンコウイルス、レンチウイルス、およびフォーミーウイルス)、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルスの侵入を増強することができる。SEVIを、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV−G)、MuLVのEnvタンパク質、HBV HBsAg(B型肝炎ウイルス表面抗原)、エボラウイルススパイクタンパク質、または異なるHIV−1、HIV−2、およびSIV変異形由来のエンベロープタンパク質のような外来エンベロープ糖タンパク質(偽粒子(pseudoparticle))を保有するレトロウイルスコア粒子の感染/形質導入率の一般的増強剤としても使用することができる。SEVIは、全ての分析したレトロウイルス粒子の感染率を好む(通常、約2〜500倍)。これにより、特に、初代細胞での以前に実行できなかった感染実験を行うことが可能である。したがって、本発明のペプチドは、in vitroでの実験ツールとして有用である。
【0031】
組換えまたは合成SEVIペプチドを、診断アプローチ(すなわち、感染個体由来のHIV−1またはSIVの単離)にも使用することができる。SEVIは、検出可能なレトロウイルス感染の閾値を少なくとも1/2〜1/3に低下させる。したがって、SEVIの存在下では、患者サンプル由来の首尾のよいウイルス再単離の感度は、SEVIの非存在下よりも高い。SEVIは、感染個体由来の複製コンピテントHIV−1の検出のためのHIV診断薬の検出限度を低下させる。例えば、SEVIは、SEVIを含まない細胞と比較して、指標細胞との同時培養によってHIV−1感染個体のPBMCからウイルスをより効率的に再単離可能である。SEVIはまた、HIV−1患者の無細胞サンプルからウイルスを効率的に再単離することが可能である。
【0032】
組換えまたは合成SEVIペプチドを使用して、レトロウイルスベクター系に基づいたex vivoまたはin vivo遺伝子療法アプローチにおける遺伝子送達率を増強することもできる。遺伝子療法、特に幹細胞のex vivo遺伝子療法のための感染性の高いレトロウイルスベクターの生成は困難な手順である。幹細胞のレトロウイルスベクターの形質導入効率も低い。しかし、SEVIの存在下では、幹細胞および幹細胞株を、レトロウイルスベクターで効率良く形質導入することができ、それにより、SEVIを含まないサンプルと比較して、より高い標的細胞への遺伝子送達効率を得ることができる。
【0033】
SEVIおよび/またはその誘導体をコードする発現ベクターを使用して、細胞株を一過性または安定にトランスフェクションし、組換えSEVIペプチドを産生し、これを細胞溶解物または上清から精製することができる。SEVIおよび/または誘導体を特異的に認識するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使用して、前立腺癌およびHIV伝播の確率のマーカーとしてヒト血清または精液中のSEVI濃度を測定することができる。SEVI特異的抗体を、医学的化合物として使用して、ヒト精子中のSEVI活性を中和し、それにより、性交によるHIV、HBV、およびHCV伝播を防止することもできる。
【0034】
本発明のペプチドを、ペプチド合成、ペプチド配列のcDNAでトランスフェクションした細胞からの精製方法、またはヒト精子から出発する精製方法によって得ることができる。好ましい方法では、精子由来の精液を、陽イオン交換クロマトグラフィおよび逆相クロマトグラフィに供する。
【0035】
本発明のペプチドまたは抗体を、好ましくは、医学処方物で使用する。医学的処方物は、1つまたは複数の本発明のペプチドもしくは抗体またはペプチドの生理学的に許容可能な塩を含む。医学的処方物は、例えば、薬物の溶解性、安定性、または無菌性に寄与するか、体内への取り込み効率を増加させる薬学的に有用な賦形剤を含むことができる。
【0036】
ペプチドまたは抗体を含む薬物の形態および組成は、投与経路に依存する。好ましくは、ペプチドまたは抗体が非分解条件下で標的部位に到達する生薬(galenic)処方物および適用形態を選択する。薬物を、注射液、点滴薬、スプレー、錠剤、座剤、クリーム、軟膏、ゲルとして局所投与することができる。ボーラスとしてか、長期にわたって繰り返して投与することが可能である。
【0037】
実施例
本発明のペプチドを、ヒト精子から出発する精製方法によって得ることができた(実施例1)。このようにして得られたペプチドを、構造解明に供した。精製ペプチドの分子量を、エレクトロスプレー質量分析計(ESI−MS)によって決定した。ABI473シークエンサーを使用したエドマン分解によって、未変性ペプチドの配列分析を行った(実施例2および3)。本発明のペプチド配列も化学合成し、合成によって調製されたペプチドの構造も解明した(実施例2および3)。これらの合成によって調製したSEVIペプチドは、インキュベーションと同時またはインキュベーション後にアミロイド様原繊維構造を形成する。これらのアミロイド様原繊維構造は、HIV−1、HIV−2、SIV’s、VSV、MuLV、およびエボラでの標的細胞の感染を依存的に活性化する(実施例4〜17)。
【0038】
本発明を、実施例によって、第1に、ヒト精液由来のペプチドライブラリー由来のペプチドフラグメントが生理学的に関連する濃度の標的細胞のHIV−1感染を好むことを証明する(実施例1および16)。際立って、SEVIペプチドは、撹拌と同時または撹拌後に溶液が混濁するようになり、沈殿が形成された場合に最も有効である(実施例4)。コンゴーレッドとの反応ならびに偏光を使用したその後の顕微鏡法(実施例5)および蛍光顕微鏡法を使用したこれらの沈殿SEVIペプチドの実験により、沈殿SEVIペプチドが原線維を形成することが示された。沈殿物がウイルス感染を促進する活性ペプチド形態を含むことが見出された(実施例4)。アルツハイマー病に関連するβ−アミロイド原線維がHIV−1感染を増強することが以前に示されている(Wojtowicz et al.;2002)。実際、電子顕微鏡法により、沈殿したSEVIペプチドが典型的な原線維からなることが確認された(実施例4)。予め形成した原線維でのシーディングにより、アミロイドタンパク質の自己集合を加速させることができることが示されている(Westermark;2005)。本発明者らはまた、少数の活性SEVIが「可溶性且つ非原線維の」ペプチドをHIV−1感染を増強する活性原線維に変換することを見出した(実施例4)。本発明は、実施例によって、共受容体の使用またはHIV−1サブタイプと無関係に合成SEVIペプチドが依存的且つ非細胞傷害性に初代細胞および細胞株におけるHIV−1感染を促進することがさらに証明する(実施例4、6〜17)。加えて、SEVIはウイルス粒子および細胞との直接的相互作用によってHIV−1感染を2〜3倍に劇的に増強することが示された(実施例14および15)。本発明を、実施例によって、SEVIはまた、HIV−1以外のレンチウイルスベクター(すなわち、サル免疫不全ウイルスおよびオンコレトロウイルスMuLV(マウス白血病ウイルス))での標的遺伝子の感染を好むことがさらに証明する(実施例17)。SEVIはまた、VSV−Gシュードタイピング粒子の感染率を増加させ、SEVIがウイルス形質導入を増強し、それにより、レトロウイルスベクター系に基づいた遺伝子療法アプローチを改良するための有用なツールであることが示された。SEVIが、HIV−1感染の検出閾値を1/3〜1/4に低下させるので、SEVIはまた、ウイルス診断、特に遺伝子型および表現型の耐性試験のためのHIV−1感染個体からのHIV−1の単離のための有益なツールであり得る。
【0039】
SEVIペプチドを、クロマトグラフィ法およびHIV−1細胞感染アッセイの使用によってヒト精液から単離することができる。本発明のペプチドの生化学的特徴づけを、質量分析法および全アミノ酸の完全な配列分析によって行った。
【0040】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0041】
実施例1−HIV−1感染促進SEVIペプチドの単離
ヒト精子からの精製
ヒト精液由来のペプチドライブラリーの調製のために、283mlヒト精子を、異なる健康なドナー(n>50)から採取した。精子の採取のために、健康なボランティアは、50〜100mlのプラスチック管に全精子を射精し、射精直後に精子を−20℃で保存した。タンパク質およびペプチドの調製のために、精子および精漿を、解凍精子の4℃で17,000×g(9600rpm)の遠心分離によって分離し、精漿を含む上清(snA)を4℃で保存した。次に、ペレットを、氷冷抽出緩衝液(1M酢酸、20mMアスコルビン酸、1mM EDTA、2M 塩化ナトリウム(pH2.0);17,000gで10分間)で2回リンスし、上清BおよびCを、上清Aと共にプールした。プールした上清A〜C(380ml)を、抽出緩衝液で760mlまで希釈し、次いで、分子量カットオフが50kDaのポリスルホン膜(Sartocon ultrasart SM 146501E−SG;Sartorius,Gottingen,Germany)を使用したダイアフィルトレーション(DF)緩衝液(0.1M酢酸、2mM アスコルビン酸、0.1mM EDTA(pH3.0))で5Lに希釈した。この溶液を、65分間で0.5lに再濃縮し、DF緩衝液で1Lに希釈し、次いで、DF緩衝液でダイアフィルトレーションを行って、60分間で9.5Lの透過液(permeate)を得た。透過液は、50kDa未満の全タンパク質およびペプチドを含み、これを、第1のクロマトグラフィ分離工程によって処理した。
【0042】
陽イオン交換クロマトグラフィ:
第1の分離のために、陽イオン交換カラム(Fractogel TSK SP 650(S),Merck,Darmstadt,Germany;粒子サイズ20〜50ミクロン;カラム体積860ml)を、水で平衡化し、0.5M NaOHおよび0.5M HClでの馴化後にpH2.5にした。透過物を水で22Lに希釈し、HClを使用してpH2.5に調整し、伝導率は4.93mS/cmであった。次いで、馴化透過物を、陽イオン交換カラム(流速:20ml/分)にロードした。水29Lでの洗浄後(pH2.5)、ペプチド/タンパク質を、以下の緩衝液を使用して溶離した(図1A):
1.0.1M クエン酸(pH3.6、体積:4.4L)
2.0.1M 酢酸+0.1 M酢酸ナトリウム(pH4.5、体積:1.5L)
3.0.1M リンゴ酸(pH5.0、体積:2.2L)
4.0.1M マロン酸(pH5.6、体積:1.5L)
5.0.1M NaH2PO4(pH6.6、体積:1.2L)
6.0.1M Na2HPO4(pH7.4、体積:1.5L)
7.1M 酢酸アンモニウム(pH7.0、体積:1.8L)
8.水(pH7.0、体積:1.5L)
9.0.1M NaOH(pH13、体積:3.0L)
【0043】
緩衝液1〜6を使用して得た溶離物により、1〜6番の溶離物を得た。溶離物7〜9をプールし、プールした溶離物を、溶離物番号7と称する。
【0044】
第1の逆相クロマトグラフィ:
第2の分離を、逆相(RP)クロマトグラフィカラム(C18、47×直径300mm、粒子サイズ10〜20ミクロン、孔サイズ30nm、Vydac,Hesperia,CA,USA)で行った(例として図1B中の溶離物7について示した)。各溶離物1〜7を、RPC18カラムに適用し、7回の異なる運転で分離し、以下の同一条件下での勾配溶離でペプチドを溶離した:
流速:40ml/分
緩衝液A:10mM HCl
緩衝液B:A+80%(v/v)アセトニトリル
勾配溶離:100%Aから60%Bまでで47.5分
60%Bから100%Bまでで2.5分。
【0045】
50mlの画分を回収し、各運転により、40ペプチドを含む画分を得た。全部で280フラクションが得られ、各画分から1.4mlの精漿等価物に相当するアリコート(画分体積0.25ml)を取り、その直後に凍結乾燥させた。元の画分を、さらなるクロマトグラフィ分離の前に、−20℃で保存した。
【0046】
画分の試験:
1.4ml精子等価物/mlを含むpHプール7由来の凍結乾燥ペプチド画分を、100単位/ml ペニシリンGおよび100μg/ml硫酸ストレプトマイシン(Pen/Strep)(Invitrogen,#15140−163)を含む33μlの無FBS(ウシ胎児血清;Invitrogen;#10270−106)無D−MEM(Invitrogen,#41965−039)中に再構成した。4000 P4−CCR5細胞(Charneau et al.;1994)を、DMEM(10%FBS、Pen/Strep)を含む全体積が100μlで96ウェルの平底プレート(Greiner;#655180)に播種した。P4−CCR5細胞は、HIV−1受容体であるCD4、CCR5、およびCXCR4を発現し、LTR−lacZ構築物を安定に含む。HIV−1でのこれらの細胞の首尾のよい感染後、ウイルス性にコードされたTatタンパク質が発現され、これは、LTRへの結合を介してウイルス遺伝子発現をトランス活性化する(Charneau et al.;1994)。したがって、Tatはまた、細胞がコードするLTR−lacZの発現を活性化し、感染細胞中で酵素β−ガラクトシダーゼが産生される。酵素活性は、ウイルス感染性に直接比例する。翌日、培地を除去し、30μlの新たな培地および10μlの溶解したペプチド画分を添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、10μlのHIV−1 NL4−3ストック(Adachi et al.;1986)を細胞に添加した。HIV−1 NL4−3を、リン酸カルシウム法を使用したプロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによって誘導した(BD Biosciences;CalPhos Mammalian Transfection Kit;#631312)。HIV−1ストックを、−80℃で保存した。感染3日後、Tropixのβ−Gal Screen Kit(Biosystem;#T1027)を使用してウイルス感染を検出した。細胞上清を破棄し、β−Gal基質およびPBSを含む40μlの1:1希釈β−Gal Screen溶液を添加した。30分のインキュベーション後、35μlの溶解細胞抽出物を、96ウェルルピプレート(Nunc;#136101)にピペットし、照度計を使用して化学発光を検出した(OrionII,Berthold detection systems)。β−ガラクトシダーゼ活性を、相対光単位/秒(RLU/s)として得た。ポジティブコントロール(ペプチドを含まない感染細胞)中で得た値を100%に設定し、全ての他の値を、(ペプチドの存在下での絶対RLU/s/ペプチドを含まない細胞から得た値の中央値)×100によって計算した。pHプール7由来の画分29の存在下で、レポーター遺伝子活性は、ペプチドを含まない感染コントロール細胞と比較して、6.8倍を超えて増加した(図2a)。これらの結果は、精液がHIV−1感染に好ましい影響を及ぼす化合物を含むことを最初に証明している。ヒト集団におけるHIV−1伝播がHIV−1感染性交パートナーと健康な性交パートナーとの間の性的接触を介して優先的に起こるので、ヒト精子中のHIV−1活性化ペプチドの存在は重要な所見である。
【0047】
HIV−1活性化ペプチドを単離するために、画分29〜31を、クロマトグラフィ技術を使用してさらに精製した。
【0048】
第2の逆相クロマトグラフィ:
第3の分離工程を、逆相(RP)クロマトグラフィカラム(C18、20×直径250mm、粒子サイズ5ミクロン、孔サイズ30nm、Vydac,Hesperia,CA,USA)で行った(図1C)。プール7由来の画分29〜31をRPC18カラムに適用し、ペプチドを、以下の条件を使用した勾配溶離で溶離した:
流速:7ml/分
緩衝液A:0.1%TFA
緩衝液B:A+80%(v/v)アセトニトリル
勾配溶離:10%A〜50%Bまで50分
60%Bから100%Bまで1分。
【0049】
全部で7mlの60個の画分を回収し、0.5%のアリコート(35μL)を凍結乾燥させた。
【0050】
次いで、クロマトグラフィ030718−1の1.4mlの精漿等価物に相当するアリコート(画分の0.5%)を、上に正確に記載したウイルス阻害アッセイで分析した。ペプチド画分40〜44の存在下で、ウイルス感染性は、コントロール細胞と比較して3〜4倍に増加した。(図1Dおよび図2B)。
【実施例2】
【0051】
実施例2−HIV感染活性化ペプチドの生化学分析
精製したペプチドおよび画分の質量分析を、製造者によって推奨された標準的条件を使用したVoyager De MALDI−TOF−MS(Applied Biosystems,Darmstadt,Germany)を使用して行った。エレクトロスプレーインターフェースを具備したSciex API III四極質量分析計(Sciex,Perkin−Elmer)(ESI−MS;図1Dを参照のこと)によって精製ペプチドの質量をさらに決定した。473A気相シークエンサー(Applied Biosystems,Weiterstadt,Germany)にて、製造者によって推奨された標準的プロトコールを使用したフェニルチオヒダントインアミノ酸のオンライン検出を使用したエドマン分解によってペプチドを配列決定した。得られた配列のデータベースアラインメント(Swiss−Protデータベース)は、ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP;アクセッション番号P15309)の前駆体(hPAP前駆体配列のアミノ酸残基247〜286(ナンバリングは、プロ配列を含むアミノ酸をいう))と100%配列が同一であった。
【0052】
以下のPAPフラグメントは、質量および/または配列決定によってヒト精漿中で検出された。
配列番号1:PAP(247〜286)
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4714,6 検出された分子量4715.3)
配列番号2:PAP(248〜286)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY(主なペプチド)
(理論上の分子量4551.4 検出された分子量4551.8)
配列番号3:PAP(249〜286)
IHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4494.4)検出された分子量4507)
配列番号4:PAP(250〜286)
HKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4381.2)検出された分子量4388)
配列番号5 PAP(251〜286)
KQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量 4244.1)
配列番号6 PAP(252〜286)
QKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量 4115.9)
配列番号7 PAP(253〜286)
KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量3987.8)
配列番号8:PAP(248〜285)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIM..
(理論上の分子量4388.3 検出された分子量4386.2)
配列番号9:PAP(248〜284)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLI...
(理論上の分子量4257.1 検出された分子量4254.3)
配列番号10:PAP(248〜283)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKL....
(理論上の分子量4143.9 検出された分子量4141.9)
配列番号11:PAP(248〜282)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK.....
(理論上の分子量4030.7 検出された分子量4028.3)
配列番号12:PAP(247〜282)
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK....
(理論上の分子量4193.9 検出された分子量193.3)
【実施例3】
【0053】
実施例3−従来のFmoc化学を使用して、選択された線状PAP/SEVIペプチドの化学合成をmg量で行った。分析逆相クロマトグラフィを使用して、合成ペプチドを精製し、その純度および同一性を、上記の方法および装置による質量および配列決定によって分析した。
【実施例4】
【0054】
実施例4−活性化PAP溶液中のアミロイド様原線維はHIV感染を増強する
Nathaniel Landauから好意的に提供を受けたCEMX174 5.25 M7細胞を、10%FBSおよびPen/Strepを含むRPMI 1640(Invitrogen;#21875,034)中で培養した。CEMX174 5.25 M7 細胞は、染色体DNAに安定に組み込まれたLTR−luc(ホタルルシフェラーゼ)およびLTR−GFP(緑色蛍光タンパク質)構築物を含む。HIV−1、HIV−2、またはSIVでのCEMX174 5.25 M7細胞の増殖感染後、ウイルストランスアクチベータータンパク質Tatが発現され、これは、LTRとの相互作用によってLucおよびGFPの発現をトランス活性化する。したがって、HIV−1感染を、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性または生きている細胞中のGFP発現の測定によって検出することができる。プロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによってHIV−1ストックを生成した(実施例1)。トランスフェクション1日後に、培地を除去し、新鮮なDMEM(10%FBS)を添加した。30時間後に上清を含むウイルス粒子を回収し、p24抗原ELISA(NIH試薬プログラム)を使用してウイルス濃度を測定した。
【0055】
最初の実験では、HIV−1感染の増強におけるSEVIの活性は非常に異なった。撹拌と同時または撹拌後に溶液が混濁するようになった場合にペプチドが最も有効であること、およびSEVI溶液の濁度がHIV感染の増強で効率的であることに留意した。活性化SEVI溶液の混濁成分の性質を解明するために、5mg/mlの濃度でリン酸緩衝化生理食塩水に含まれるPAP(248〜286)を、1000rpmでの震盪によってインキュベーションした。37℃で一晩のインキュベーション後、ペプチド溶液は混濁するようになり、原線維様構造が認められた。本SEVIペプチド調製物の不溶性の原線維または可溶性部分がHIV−1感染を活性化するかどうかを分析するために、原線維様構造を、10000gで5分間の遠心分離によって分離し、上清を回収し、ペレットを同量のPBS中に再溶解した。HIV感染に及ぼすこれらの溶液の影響を分析するために、希釈物を、無FBS DMEMを使用して96ウェルプレート中に調製した。次に、50,000 CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルの平底プレート中に播種して総体積を50μlとし(RPMI 1640、10%FBS)、10μlのペプチド希釈物を添加し、その後に体積40μlで1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原を使用して感染させた(総体積100μl)。37℃で2日間のインキュベーション後、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega;#E1501)を使用した細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってウイルス感染を決定した。簡潔に述べれば、細胞を再懸濁し、96ウェルV型プレート(Greiner;#651180)に移し、1200rpmで5分間遠心分離した。細胞上清を除去し、残りの細胞ペレットを、30μlの1×ルシフェラーゼ溶解緩衝液(Promega;#E1531)中に溶解した。20μlの溶解物を96ウェルルミプレート(Nunc;#136101)に移した後、100μlのルシフェラーゼ試薬(Promega)を添加し、照度計を使用して化学発光を検出し(実施例1を参照のこと)、相対光単位/秒(RLU/s)としてルシフェラーゼ活性を検出した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定したもの(100%)と比較して示す。図3Aに示した結果は、活性な混濁SEVIストック溶液および原線維用構造を含む再溶解ペレットのみが用量依存性にHIV−1感染を増強するのに対して、透明な上清は影響を示さなかったことを証明する。したがって、沈殿部分のみが活性なHIV−1増強形態を含む。
【0056】
アルツハイマー病に関連するβ−アミロイド原線維がHIV−1感染を増強することが以前に示されている(Wojtowicz at al.,2002)。混濁SEVI溶液がβ−アミロイド様原線維も含むことを解明するために、電子顕微鏡法を行った。図3Bに示した電子顕微鏡写真により、混濁したHIV活性化溶液がβ−アミロイド様原線維を含むのに対して、透明な上清および非活性化溶液中に原線維を検出することができないことが明らかとなった(図3Bデータ占めさず)。
【0057】
アミロイドペプチドの自己集合を、予め形成した原線維の播種によって加速することができることが示されている(Westermark et al.,2005)。少数の活性化原線維含有PAP(248〜286)が非集合PAP(248〜286)溶液を活性原線維に変換して、HIV完成を増強することも見出された(図3)。
【実施例5】
【0058】
実施例5−活性SEVI溶液中のβ−アミロイド原線維の検出
5mg/mlのPAP(248〜286)を含むリン酸緩衝化生理食塩水を、37℃で一晩の1000rpmでの震盪によってインキュベーションした。数滴の得られた活性化混濁オリゴペプチド溶液を、ポリリジンコーティングしたスライドに移し、タンパク質溶液を換気フード中にて風乾した。乾燥したタンパク質を、飽和コンゴーレッド溶液(80%エタノールおよび2M NaCl中)で染色し、80%エタノールで洗浄した。基準タンパク質およびペプチドとして、類似の濃度の可溶性の非インキュベーションPAP溶液(248〜286)およびヒトアルブミン溶液を同一のスライドに移し、同等に染色した。活性化PAP(248〜286)ペプチドが典型的なコンゴーレッド染色を示したのに対して(図4、上のパネル)、非活性化ペプチドは、コンゴーレッドと全くまたはほとんど反応せず(図4、下のパネル)、アルブミンコントロールは青色を呈した(図4)。コンゴーレッドで染色した同一のスライドを、光学顕微鏡法および蛍光顕微鏡法によって試験した。偏光を使用した従来の光学顕微鏡法は、活性化PAP(248〜286)の典型的な複屈折(二重屈折)効果を示したのに対して(図5A)、非活性化SEVIペプチド(図5B)およびアルブミンコントロール(図5C)は複屈折効果は認められなかった。コンゴーレッドでの染色および複屈折は、原線維形成の典型的な基準である(Nilsson;2004)。さらに、従来の蛍光顕微鏡法により、可溶性非活性化PAP(248〜286)(黒色、図6B)またはアルブミン(緑色、図6C)と対照的に、SEVI原線維の色および強度の顕著な相違(透明の橙色、図6A)が認められた。コンゴーレッド染色および光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、またはEM顕微鏡法を使用した活性化原線維含有PAP(258〜286)溶液および非活性化透明PAP(258〜286)溶液の間で認められた相違は、SEVI溶液がβ−アミロイド様原線維を含み、HIV感染を活性化して有利に働くことが必須であることを明らかに示す。
【実施例6】
【0059】
実施例6−HIV−1感染に及ぼす異なるSEVIペプチドのHIV−1増強効果の決定
HIV感染に及ぼす合成SEVIペプチドの影響を分析するために、サンプルを、無FBS DMEM中堅に再懸濁して、5mg/mlのストック溶液を生成し、これを1400rpm(1分あたりの回転数)にて37℃で20時間震盪し、混濁溶液を得た。ペプチド希釈物を、無FBSDMEMを使用して96ウェルプレート中に調製した。次に、5000 CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルの平底プレート中に播種して総体積を50μl(RPMI 1640、10%FBS)とし、10μlのペプチド希釈物を添加し、その後に体積40μlで30pgのHIV−1 NL4−3のp24抗原を使用して感染させた(総体積100μl)。37℃で20時間のインキュベーション後、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega;#E1501)を使用した細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってウイルス感染を決定した。簡潔に述べれば、細胞を再懸濁し、96ウェルV型プレート(Greiner;#651180)に移し、1200rpmで5分間遠心分離した。細胞上清を除去し、残りの細胞ペレットを、30μlの1×ルシフェラーゼ溶解緩衝液(Promega;#E1531)中に溶解した。20μlの溶解物を96ウェルルミプレート(Nunc;#136101)に移したのち、100μlのルシフェラーゼ試薬(Promega)を添加し、照度計を使用して化学発光を検出し(上記を参照のこと)、相対光単位/秒(RLU/s)としてルシフェラーゼ活性を検出した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定したもの(100%)と比較して示す。
【0060】
図7Bに示した全てのペプチドを、同一の条件下で溶解し、インキュベーションした。PAPフラグメント(248〜286)、PAP(250〜286)、PAP(251〜286)、PAP(252〜286)、およびPAP(253〜286)は、HIV−1感染を依存的に増強する。50μg/mlペプチドの存在下で、SEVIを含むコントロール細胞と比較して、ルシフェラーゼ活性は、約30倍に増加した(図7A)。対照的に、「スクランブルしたペプチド(scrambled peptide)」(PAPscram、SEVIペプチドと同一のアミノ酸からなるが、アミノ酸配列内に無作為に分布する)、コントロールペプチドc1〜c3、ならびにC末端およびN末端フラグメント(PAP(248〜266)およびPAP(267〜286))は、HIV−1感染に対する増強効果はなかった(図7A)。このデータは、HIV−1感染に対するSEVIの増強効果が特異的であることを示す。
【実施例7】
【0061】
実施例7−HIV−1に対するSEVIの促進効果は細胞型と無関係である。
HIV−1感染に対する増強効果が使用した細胞型に依存するかどうかを分析するために、2000個の接着TZM−bl細胞(Wei et al.;2002)またはP4−CCR5細胞および5000個のCEMX174 5.25 M7懸濁細胞を、50μlの体積で播種した。翌日、10μl SEVI(原線維PAP(250〜286))希釈物を添加し、細胞を1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させて総体積を100μlとした。感染2日後、TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞のウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して検出した。簡潔に述べれば、上清を除去し、Gal Screenを含むPBSの40μlの1:1希釈物を細胞に添加した。Gal Screenは、β−ガラクトシダーゼ基質および細胞を溶解させる成分を含む。RTで30分のインキュベーション後、30μlの細胞溶解物を、96ウェルルミプレートに移し、照度計を使用して化学発光を検出した。SEVIは、接着細胞(TZM−blおよびP4−CCR5)および懸濁細胞(CEMX174 5.25 M7)においてHIV−1感染を用量依存性に促進した(図8)。0.4μg/ml SEVIの存在下で、HIV感染は、ペプチドを含まないコントロールで得た感染率と比較して、CEMX174 5.25 M7細胞で2.1倍、P4−CCR5細胞で2.4倍、およびTZM−bl細胞で3.3倍に増強された。分析した最も高い濃度(10μg/ml)では、3つ全ての細胞型のHIV感染は、10倍を超えて増加した。ヒトPBMCおよびマクロファージでも類似の結果が得られた(図11および12)。これらのデータは、HIV−1感染に対するSEVIの促進効果が使用した細胞型と無関係であることを示す。
【実施例8】
【0062】
実施例8−SEVIは、細胞生存性または内因性LTR活性に影響を及ぼさない。
SEVIが細胞に細胞傷害効果を発揮するか、または細胞増殖を刺激するのかどうかを分析するために、4000個のTZM−bl細胞を、100μlの体積で96ウェル平底プレートに播種した。翌日、培地を90μlの新鮮な培地と置換し、SEVI(原線維PAP(250〜286))希釈物を添加し、最終体積を100μlとした。3日後、10μlの5mg/ml MTT(Sigma;#M2128)溶液を添加し、細胞を、37℃で4時間インキュベーションした。生細胞では、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼが黄色のMTT塩を青色のホルマザン結晶に酸化する(Schiff et al.;1985)。1:1 エタノール/DMSOへの結晶の溶解後、生細胞を含むサンプルは青色を呈するのに対して、死細胞由来のサンプルは透明である。光度計(Molecular Devices)を使用して、560/650nmの光学密度(OD)を測定した。図9Aに示すように、高濃度のSEVIを含むサンプル中での細胞生存度はペプチドによって影響を受けず、ペプチドが細胞傷害効果も細胞増殖の誘導も発揮しないことが示された。
SEVIはHIV−1感染を増強しないが、その代わりに、LTRをコードする細胞を活性化して、CEMX174 5.25 M7細胞またはTZM−bl/P4−CCR5細胞中のlucまたはlacZ発現をそれぞれ駆動するかもしれない。これを分析するために、TZM−bl細胞を、感染させていない異なる濃度のSEVIとインキュベーションし、内因性LTR活性を、Gal−Screenキットを使用して、3dpiで測定した。LTR活性は、分析した全てのサンプル中で等しく、SEVIが実際にHIV−1感染を増強し、使用したレポーター細胞中の内因性LTR活性を増加させないことが証明された。(図9B)。
【実施例9】
【0063】
実施例9−PAP誘導フラグメントがHIV−1感染率を増強する。
50μl RPMI(10%FBS)中に播種したLTR−lucおよびLTR−GFPをコードする20,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、10μlの示した原線維ペプチド希釈物とインキュベーションし、0.3ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。2日後に、第1のUV顕微鏡法(図10A)およびその後の同一サンプルの細胞溶解物のルシフェラーゼ活性の測定(図10B)によってウイルス感染率を検出した(図10B)。原線維PAP(248〜286)、PAP(251〜286)、およびPAP(253〜286)は、NL4−3感染を依存的に促進する。ペプチドを含まないコントロールサンプルの感染後、約2.6%の細胞が、44,457 RLU/sのルシフェラーゼ活性に相当するGFPを発現した(図10)。2μg/ml SEVIの存在下で、平均感染率は、4.6%(66,327 RLU/s)にほぼ倍増した。最も高濃度の50μg/mlでは、99%を超える細胞が、HIV−1に感染するようになった。これらのサンプルのルシフェラーゼ活性の中央値は、1,701,156 RLU/sであり、これは、感染の38倍増加に相当する(1,701,156 RLU/s÷コントロール細胞の44,457 RLU/s)。本発明者らのデータは、PAP誘導ペプチドがHIV−1感染細胞数を劇的に増強することを証明している。
【実施例10】
【0064】
実施例10−SEVIは、共受容体の使用と無関係にPBMCおよびマクロファージのHIV−1感染を促進する。
標的細胞を増殖感染するために、HIV−1は、細胞表面上の第1のCD4受容体および第2の分子(共受容体CCR5またはCXCR4の1つ)を必要とする(Chantry et al.;2004)。厳格にCXCR4(X4)向性を示すHIV−1 NL4−3を使用して、以前のデータを得た(Papkalla et al.;2002)。SEVIがX4およびR5向性HIV−1での初代細胞の感染も促進するかどうかを分析するために、末梢血単核細胞(PBMC)における実験を行った。Ficoll密度勾配遠心分離(Munch et al.;2002)を使用して、PBMCを全血から得た。精製PBMCを、20%FBS、10ng/ml IL−2(Stratmann)、および3μg/mlフィトヘマグルチニン(Oxoid;#30852801)を含むRPMI−1640培地中で3日間刺激した。次いで、PBMCを、1200rpmでの遠心分離によって沈殿させ、RPMI1640(10%FBS、10ng/ml IL−2)中に再懸濁した。次に、5×105細胞を、50μl RPMIに播種し、10μlのペプチド希釈物(原線維PAP(248〜286))を添加した。その後、細胞を、10、1、および0.1ngのR5向性HIV−1 005−pf−103のp24抗原(a)(Papkalla et al.;2002)およびX4向性HIV−1 NL4−3 Luc(He at al.;1995)(b)を感染させて、総体積を100μlとした。両ウイルスを、293T細胞の一過性トランスフェクションによって得、これらは、nefの代わりにルシフェラーゼ遺伝子を含む。感染3日後、細胞をペレット化し、30μlルシフェラーゼ溶解緩衝液で溶解した。20μlの溶解物および100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ルシフェラーゼ活性を検出した。ペプチド濃度の増加に伴うルシフェラーゼ活性の増加は、SEVIが、R5(図11A)およびX4(図11B)向性ウイルスによるPBMCの感染を用量依存性に促進したことを示す。例えば、1ngのR5向性HIV−1のp24抗原または10ngのX4向性HIV−1での感染後、10μg/ml SEVIを含むサンプル由来のルシフェラーゼ活性(それぞれ、28,520 RLU/sまたは589,840 RLU/s)は、ペプチドを含まないコントロールサンプル由来のレポーター活性と比較して34倍または28倍増加した(それぞれ、830 RLU/sまたは20,820 RLU/s)。
【0065】
マクロファージのHIV−1感染に及ぼすSEVIの影響を分析するために、5×105PBMCを、500μl RPMI(10%FBS、10ng/ml GM−CSF)を含む48ウェルディッシュ(Becton−Dickinson;#353078)に播種した。5日後、非接着細胞を慎重に洗浄し、GM−CSFを含む400μlの新鮮な培地を添加した。2日後に培地を除去し、130μlの新鮮な培地および20μlの原線維PAP(248〜286)希釈物を、分化マクロファージに添加し、次いで、表示量のX4向性NL4−3 Luc(a)およびR5向性005pf103 Luc(b)で感染させ、総体積を200μlとした。3日後、ルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ウイルス感染を検出した。図12に示すように、SEVIは、使用した共受容体と無関係に、マクロファージのHIV−1感染も増強した。マクロファージにおいてCXCR4発現を欠くので、X4向性NL4−3の全感染率(図12B)は、R5向性(図12A)変異形を使用した得た全感染率(図12A)と比較して減少する。
【実施例11】
【0066】
実施例−11。SEVIはHIV−1の増殖感染の閾値を低下させる。
細胞培養物中のHIV−1の増殖感染を確立するために、1つの単一の感染事象が起こらなければならない。SEVIがペプチドを含まない通常の条件下で起こらない標的細胞のHIV−1感染を可能にするかどうかを分析するために、標的細胞をSEVIとインキュベーションし、単一細胞を感染させるのに十分でないウイルス濃度で感染させた。前日に播種した4,000個のTZM−bl細胞を、50μl DMEM、10μlの原線維PAP(251〜286)希釈物中でインキュベートし、総体積100μlにてHIV−1 NL4−3(X4)およびHIV−1 NL4−3 YU−2(R5)で感染させた(Papkalla et al.,2002)。0.6pgおよび0.1pgのp24抗原は、40μlの15,625または78,125倍希釈ウイルスストック溶液に相当する。Gal Screen Kitを使用して、3日後にウイルス感染を検出した。0.1および0.6pgのX4およびR5向性HIV変異形で感染させた細胞の平均β−ガラクトシダーゼ活性は、非感染細胞(n)に類似し、ペプチドを含まないサンプル中で感染は起こらないことを示した(図13A)。対照的に、2μg/ml SEVI以上の存在下では、使用した全濃度のウイルスについて感染を容易に検出することができた。PBMC(調製については上記を参照のこと)を少量のHIVで感染させた場合、類似の結果が得られた。5×105PHA/IL−2刺激PBMCを、96 ウェルディッシュ(50μl;10%FBS、10ng/ml IL−2)に播種し、10μlのPAP(248〜286)の20μg/mlストック溶液を添加し、次いで、表示のp24抗原量のNL4−3で感染させ、最終体積を100μlとした(最終SEVI濃度:2μg/ml)。感染1日後、細胞をペレット化してペプチドおよびウイルスを除去し、SEVIを含まない200μl RPMI(20%FBS、10ng/ml IL−2)に再懸濁した。規定の時点で上清を回収し、新たな培地を添加した。p24抗原ELISAを使用して、ウイルス複製をアッセイした。SEVI含有細胞を120および12pgのp24抗原で感染させた場合、ペプチドを含まないコントロール細胞よりも速い速度およびレベルでHIV−1を複製した(図13B)。1.2pgおよび0.12pgでのPBMCの感染後、ウイルスは、SEVIを含むサンプルのみで複製されるが、ペプチドを含まないコントロール細胞では複製されなかった。PBMC細胞およびTZM−bl細胞で得たこれらのデータは、SEVIが一定量のHIV−1で標的細胞を感染させることが可能であり、同一の実験条件下で全く感染性を示さないことを証明する。どのようにして効率的にSEVIがHIV感染性を活性化するのかを分析するために、ウイルスストック溶液の10倍希釈物を使用した異なる量の原線維PAP(248〜286)の存在下でのHIV−1 NL4−3の終点滴定を、CEMX174 5.25 M7細胞で行った。ペプチドを含まないコントロール細胞中で検出可能なルシフェラーゼ活性が得られるHIV−1の最も高い希釈率は、104であった(表1)。しかし、0.4および2μg/ml SEVIの存在下で、log5希釈物またはlog6希釈物を使用した場合、HIV−1感染を検出することもできる。最も高いSEVI濃度(10μg/ml)でも、log7希釈物によって増殖感染された。したがって、SEVIは、HIV−1感染の閾値を1/2〜1/3に劇的に低下させる。ヒト精子中のHIV活性化ペプチドは、性交時のHIV−1またはHIV−2の自然の伝播で重要な意味を有し得る。性交当たりのHIV−1の伝播率は、0.1%より低い。
【実施例12】
【0067】
実施例12−SEVI媒介されたHIV−1感染の増加は絶対ウイルス感染性と相関する。
前の実験では、SEVIの存在下での感染率の増加が高いほどウイルスの接種材料またはMOI(感染効率)が低くなることを証明した。この相関をより詳細に分析するために、10μlの原線維PAP(251〜286)希釈物を4000 TZM−bl細胞(50μl)に添加した。漸減濃度のX4向性HIV−1 NL4−3およびR5向性HIV−1 YU2のp24(Papkalla et al.;2002)で感染させ、総体積を100μlとした。x軸上の各ウイルス感染用量についてのペプチドを含まないコントロールサンプル中のRLU/sとして得た絶対感染性/β−ガラクトシダーゼ活性およびy軸上の各感染用量についての10μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を加えた場合、絶対感染性とウイルス感染に対するSEVIの活性化効果との間の直接的相関を決定することができる(図14)。絶対感染率が高いほど感染のSEVI媒介増強効果は低くなり、その逆も同様であった。この相関を、高い比率の細胞(すなわち、50%)が既にコントロールサンプル中で感染される場合、SEVIは感染率を100%に増強することができるだけであり、感染率の最大増加は2倍であるという事実によって部分的に説明することができる。対照的に、細胞を低MOIで感染させる場合(すなわち、コントロール細胞における感染率2%)、SEVIは、ウイルス感染を数倍に増強することができる。
【実施例13】
【0068】
実施例13−SEVIは、いくつかのX4、R5、および二重向性HIV−1変異形、分子HIVクローン、および異なるHIV−1サブタイプの感染を促進する。
いくつかのHIV−1変異形の感染に対する増強効果を検出するために、原線維PAP(253〜286)希釈物を、10μlの体積で、前日に播種した50μlのTZM−bl細胞に添加した。NL4−3 V3組換えウイルス(Papkalla et al.;2002)、その異なる共受容体の使用、および分子HIVクローン(NIH AIDS Research and Reference Programから得た)を使用した感染を、約0.01〜0.001のMOIを使用して行い、総体積を100μlとした。Gal Screen Kitを使用して、ウイルス感染を測定した。SEVIは、共受容体の選択またはサブタイプと無関係に、試験した全てのHIV−1変異形の感染を促進させた(図15)。0.4μg/ml SEVIの存在下で、 HIV−1 LAIまたは93br025−9は、ペプチドを含まないコントロール細胞よりも2.7倍または1.9倍の効率で細胞に感染した。より高い濃度では、SEVIは、P51−Sの場合、ペプチドを含まない感染コントロールと比較して、試験した全てのウイルスの感染をより刺激し、感染性は最大で3,045%であった。HIV−1のO群単離物(Dittmar et al.;1999)および種々のHIV−1サブタイプ(NIH AIDS research and reference program)に及ぼすSEVIの影響を分析するために、CEMX174 5.25 M7細胞を、異なる濃度のSEVIの存在下で異なるMOIにて感染させた。表2に示すように、SEVIは、試験した全てのHIV−1サブタイプ(A、B、C、D、F)の感染を好み、コントロール細胞と比較したルシフェラーゼ活性の最大x倍増加は、HIV−1 92UG029で156であった。HIV−1のO群単離物を試験した場合、類似の結果を得た(表3)。
【実施例14】
【0069】
実施例14−作用機構
どのようにしてSEVIがHIV−1感染を促進するのかを除外するために、HIV envタンパク質に基づいた細胞−細胞融合アッセイを行った(Pohlmann et al.;1999)。SIV−TatおよびNL4−3 Envをコードする発現プラスミドでトランスフェクションした293T細胞を、96ウェルディッシュに播種し、異なる濃度の原線維PAP(248〜286)とインキュベーションし、CEMX174 5.25 M7細胞と同時培養し、総体積を100μlとした。293T細胞の細胞膜で発現したHIV−1 エンベロープタンパク質は、CD4および共受容体陽性CEMX174 5.25 M7細胞との融合を誘導する。293T細胞およびCEMX174 5.25 M7細胞が融合した場合、293Tは、CEMX174 5.25 M7細胞の核に拡散してウイルスTatタンパク質を発現し、CEMX174 5.25 M7細胞コードLTR−lucおよびLTR−GFP遺伝子の発現をトランス活性化する。1日後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定およびUV顕微鏡法の実施によってHIV−1 Env媒介癒合率を検出した。SEVIがHIV−1感染を強く促進する濃度でさえも、融合活性の増加は認められなかった(10μg/mlおよび0μg/mlとの比較;図16)。UV顕微鏡法により、GFP発現細胞数は、全培養サンプルで類似していることが明らかとなった。たった約2%の細胞しかGFP陽性でないので、Envは過剰発現されなかった。
【実施例15】
【0070】
実施例15−SEVIはHIVと相互作用し、細胞結合を促進する。
SEVIはウイルス粒子を結合して、その感染性を増加させるか、HIV−1感染に対する標的細胞の感受性を増強することができる。これらの可能性を区別するために、本発明者らは、ウイルスストックを種々の濃度の原線維PAP(248〜286)と少容量で5分間プレインキュベーションし、その後にウイルス/SEVI混合物を細胞培養物に添加し、それにより、50倍に希釈した。比較のために、SEVIを細胞培養物に直接添加し、その後に同一のウイルス用量で感染させた。結果は、感染効率の増加がウイルスの存在下でのSEVIの濃度にちょうど依存することを証明していた(図17A、左)。短期間のプレインキュベーション後のHIV−1/SEVI混合物の希釈により、SEVI媒介感染性の増強規模は全く減少しなかった。感染培養物の最終ペプチド濃度に関して、ウイルス感染性は50倍に増強された(図17A、右)。これらのデータにより、SEVIはウイルス粒子と直接相互作用することが示唆され、5分のインキュベーション後に大部分の結合が完了することを意味する。
【0071】
どのようにしてSEVIがHIV−1感染を増強するのかをさらに評価するために、本発明者らは、TZM−bl細胞を、原線維PAP(248〜286)の存在下または非存在下でウイルス粒子と3時間インキュベーションした。その後、強い洗浄によって非結合ウイルスを除去し、細胞に会合したp24抗原の量を、ELISAによって決定した。SEVIは、標的細胞へのHIV−1の結合を、用量依存様式で8倍まで増加させた(図17B、左)。特に、SEVIはEnvを欠くHIV−1粒子の結合も増強するが、細胞会合した全p24レベルは、野生型HIV−1粒子を使用して測定したレベルの約1/30であった(図17B、右)。これらの結果により、細胞表面へのウイルス粒子の結合の促進によってSEVIがHIV−1感染を増強することが示唆される。
【実施例16】
【0072】
実施例16−ヒト精液由来のペプチド画分がHIV−1感染を促進する。
上記のように、各ドナーから得た2−3mlの精子を分析スケールで調製し、得られた精漿調製物を、活性の決定前に単一の逆相クロマトグラフィ工程によって分離した。クロマトグラフィ条件を至適化するために、合成SEVIペプチドの保持時間を決定し、精漿画分の分画および活性の決定について考慮した。
【0073】
1ml精子等価物(Sp−Eq)を含むペプチド画分を、100μl DMEM(ストック溶液10ml Sp−Eq/ml)に溶解した。ストック溶液を、96ウェルU型プレート中でDMEMにて5倍希釈し、10μlの希釈物を、前日に96ウェル平底プレートに播種した50μl TZM−blに添加した。その後、0.1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。3日後、Gal Screen kitを使用して、感染性を測定した。元の精液中に存在する濃度に相当する濃度(1ml Sp−Eq/ml)で、両ドナー由来の画分30〜34は、HIV−1感染を劇的に増強した(例えば、ドナーB由来の画分31は、コントロールサンプルと比較して、約11倍の感染性を誘導した)(図18)。際立って、いくつかのドナー由来のペプチド混合物の200倍希釈物でさえも、HIV−1感染を効率的に増強した(ドナーAを参照のこと)。まとめると、本発明者らの結果は、十分にHIV−1感染を促進させるために必要な範囲内の濃度の活性SEVIフラグメントがヒト精子中に存在することを強く示唆する。
【実施例17】
【0074】
実施例17−SEVIは、標的細胞のSIV、HIV−2、MuLV、および偽粒子感染を増強する。
レンチウイルスのような他のレトロウイルスに及ぼすSEVIの影響を分析するために、本発明者らは、HIV−2およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を試験した。全ウイルスストックを、プロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによって生成した。HIV−2ROD10クローンをK.Strebel(Clavel et al.;1986)から入手し、アフリカミドリザル由来のSIVagm−tan1およびチンパンジー由来のSIVcpz−tan1を、B.Hahn(Birmingham,Alabama,USA)から購入した。原線維PAP(248〜286)は、HIV−2および異なるSIVの感染率を用量依存性に増強した(図19)。例えば、TZM−bl細胞を2μlのHIV−2で感染させた場合、50μg/ml SEVIにより、ウイルス感染が2倍に増加した(図19A)。SEVIはまた、TZM−bl細胞においてはSIVmacおよびSIVagm感染を好み(図19B)、CEMX174 5.25 M7細胞においてはSIVcpz感染を好んだ(図19C)。このデータは、SEVIが異なる細胞株におけるHIV−1、HIV−2、およびSIVのような異なる霊長類レンチウイルスの感染性を増強することを示す。レンチウイルス感染に対するSEVIの刺激効果がレンチウイルスEnvタンパク質に依存するかどうかを分析するために、本発明者らは、pBRHIV−1NL4.3およびpBRSIVmac239中のenv遺伝子をMuLV env遺伝子と置換して、細胞侵入を媒介するMuLV Envを発現する複製コンピテントHIV−1(MuLV−HIV)およびSIVmac239(MuLV−SIV)を生成した(Gundlach et al.;1998)。プールした原線維PAPフラグメントの存在下で、MuLV−HIVおよびMuLV−SIVの感染率は劇的に増加した(図20A)。次に、本発明者らは、MuLV エンベロープタンパク質を保有するMuLV粒子の感染に及ぼすSEVIの影響を分析した。したがって、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするenv欠失MuLV(pGC−sam−EN−Luc3;O.Wildner,Bochum,Germanyによって提供)を、pGC−sam−EN−Luc3およびpcDNA−MuLV−envでの293T細胞の同時トランスフェクションによってMuLV Envでシュードタイピングして、MLV−MLV粒子を得た。2〜50μg/mlの粒子の存在下で、MLVppは、HUH−7細胞(IPF Pharmaceuticals,Hannover,Germany由来)、PM1細胞、およびJurkat細胞(NIH AIDS research and reagent program)に、SEVIを含まないコントロール細胞よりも平均して10倍の効率で感染した(図20B)。これらのデータは、SEVIが遺伝子療法アプローチで広範に使用されるレンチウイルス(HIV、SIV)およびオンコウイルス(MuLV)の両方の感染率/形質導入率を増強することを証明する。さらに、本発明者らは、SEVIはまた、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質を保有するenvインタクトまたはenv欠損HIV−1粒子の感染を増強することを示すことができた(図21A)。VSV−Gタンパク質が細胞への有効な侵入を可能にするので、レトロウイルス遺伝子療法のベクターをシュードタイピングするためにVSV−G(Cronin et al.;2005)が広範に使用されている。さらに、SEVIはまた、エボラスパイクタンパク質を含むHIV−1粒子の感染を好んだ(Baribaud et al.;2002;図21B)。
【0075】
表1.SEVIの存在下でのHIV−1の終点滴定(endpoint titration)。CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルプレートに50μlの体積で播種し、10μlのSEVIを添加し、その後、40μlのHIV−1 NL4−3の10倍希釈物で感染させた。ルシフェラーゼアッセイキットを使用して、3、5、および7dpiで増殖感染を測定した。絶対ルシフェラーゼ活性が非感染細胞から得たものより100倍超高かった場合、細胞は増殖感染(p)されたと見なした。括弧内の数字は、感染7日後の三連の実験由来の増殖感染されたウェル数を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表2.SEVIは、異なるHIV−1 Mサブタイプの感染を好む。50μl CEMX174 5.25 M7細胞を、10μl SEVI希釈物とインキュベーションし、その後、感染CEMX174 5.25 M7細胞の濾過上清由来の予備試験を行った低MOIのHIV−1M群単離物で感染させた。感染1、2、または3日後(列7を参照のこと)、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して感染率を決定した。ペプチドを含まないコントロール感染(100%)と比較した、それぞれ25および5μg/ml SEVIの存在下での感染率を示す。コントロールサンプル中の絶対ルシフェラーゼ活性(RLU/s)を、列4に示す。25μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を計算するために、ペプチドの存在下で得られた絶対RLU/s値を、ペプチドを含まない感染コントロール細胞由来のルシフェラーゼ活性で割った。データは、二連の感染に由来した。各行は、独立して由来するウイルスストックを使用した独立した実験を示す。R5:CCR5向性変異形、X4:CXCR4向性変異形。
【0078】
【表2】
【0079】
表3.SEVIは、HIV−1 O単離物の感染を好む。50μl CEMX174 5.25 M7細胞を、10μl SEVI希釈物とインキュベーションし、その後、感染PM1細胞(1639−13470)またはCEMX174 5.25 M7細胞(Ca9,MVP5180)の濾過上清由来の低MOIの予備試験したHIV−1 O群単離物で感染させた。感染1、2、または3日後(列6を参照のこと)、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して感染率を決定した。ペプチドを含まないコントロール感染(100%)と比較した、それぞれ25および5μg/ml SEVIの存在下での感染率を示す。コントロールサンプル中の絶対ルシフェラーゼ活性(RLU/s)を、列4に示す。25μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を計算するために、ペプチドの存在下で得られた絶対RLU/s値を、ペプチドを含まない感染コントロール細胞由来のルシフェラーゼ活性で割った。データは、単一の感染に由来した。各行は、独立して由来するウイルスストックを使用した独立した実験を示す。R5:CCR5向性変異形、X4:CXCR4向性変異形。
【0080】
【表3】
【0081】
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【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】精液からのSEVIの精製。詳細については、実施例1および2を参照のこと。A)9つの異なる緩衝液およびpH条件を使用した陽イオン交換クロマトグラフィによるヒト精液のバッチ分画(プール画分I〜IX)。B)A由来のプール画分7〜9を、RP−HPLCに供し、得られた画分を、抗ウイルス活性またはプロプルス活性についてアッセイした。P4−CCR5細胞を、ペプチドの存在下または非存在下でHIV−1 NL4−3に感染させた。ウイルス感染性を、Tropix のGal Screen Kitを使用した感染3日後の細胞抽出物中のβ−ガラクトシダーゼ活性の測定によって決定した。インレット(inlet)中のクロマトグラムの影をつけた領域は、活性画分を示す。C)pHプール7由来の画分29〜31を、RP−HPLCによってさらに精製し、得られた画分を、上記のように試験した。HIV−1促進画分43を、配列および質量分析を使用して分析した。記号:n、非感染細胞;+、ペプチドを添加せず。三連の感染由来の感染性の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。D)1C由来の画分43の質量分析および配列分析により、SEVIフラグメントPAP 248〜286の単離が明らかとなった。
【図2】精液由来のSEVIの精製。A)pHプール7をRP−HPLCに供し、得られた画分を、抗ウイルス活性またはプロウイルス活性についてアッセイした。P4−CCR5細胞を、ペプチドの存在下または非存在下でHIV−1 NL4−3に感染させた。ウイルス感染性を、Tropix のGal Screen Kitを使用した感染3日後の細胞抽出物中のβ−ガラクトシダーゼ活性の測定によって決定した。インレット中のクロマトグラムの影をつけた領域は、活性画分を示す。B)pHプール7由来の画分29〜31を、RP−HPLCによってさらに精製し、得られた画分を、上記のように試験した。HIV−1促進画分43を、配列および質量分析を使用して分析した。記号:n、非感染細胞;+、ペプチドを添加せず。三連の感染由来の感染性の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図3】SEVIは原線維を形成する。a.CEMX174 5.25 M7細胞のHIV−1感染に及ぼす活性化合成SEVI、透明な上清、および溶解したペレットの影響。b.一晩の震盪後のSEVIおよび対応する未処理ペプチドの電子顕微鏡写真。c.活性化および非活性化SEVIおよび5%〜95%の両方の混合物によるHIV−1感染の増強。
【図4】活性化SEVIペプチドは、原線維形成を示すコンゴーレッドで染色可能である。上および下のスライド:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液を、ポリリジンコーティングしたスライドに移し、コンゴーレッドによって染色した。
【図5】活性化SEVIペプチドは、偏光を使用した光学顕微鏡において典型的な原線維の複屈折効果(二重屈折)を示す。図4に示す同一のコンゴーレッド染色スライドを、顕微鏡法のために使用した:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液。
【図6】活性化SEVIペプチドは、蛍光顕微鏡法を使用して、色および強度の相違を顕著に示す。図4に示す同一のコンゴーレッド染色スライドを、顕微鏡法のために使用した:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液。
【図7】いくつかの合成PAPフラグメントが、HIV−1感染を刺激する。A)凍結乾燥ペプチドを、FBSを含まないDMEMに再懸濁し、サーモミキサー(Eppendorf)を使用して、1,400rpmにて37℃で20時間インキュベーションした。4,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、異なる濃度のPAPフラグメントまたはコントロールペプチド(c1〜c3)とインキュベーションし、30pgのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。20時間後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用して、ウイルス感染を検出した。三連の感染由来の感染度の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。B)分析したペプチド配列を示す。
【図8】HIV−1感染に対するSEVIの刺激効果は、細胞型と無関係である。2000個の接着TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞および5000個のCEMX174 5.25 M7懸濁細胞を、50μlの体積で播種した。翌日、10μl SEVI希釈物を添加し、細胞を1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させて総体積を100μlとした。感染2日後、TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞のウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して検出し、CEMX174 5.25 M7細胞のウイルス感染性をルシフェラーゼアッセイ試験を使用して検出した。三連の感染由来の感染の平均値を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図9】SEVIは、細胞生存度または内因性LTR活性に影響を及ぼさない。A)細胞傷害性アッセイ:4000個のTZM−bl細胞を、100μlの体積で96ウェル平底プレートに播種し、翌日、培地を90μlの新鮮な培地と置換し、SEVI希釈物を添加し、最終体積を100μlとした。3日後、10μlの5mg/ml MTT溶液を添加し、細胞を、37℃で4時間インキュベーションした。その後、凍結結晶を、1:1 エタノール/DMSOに溶解し、560/650nmのODを測定した。六連のサンプル由来のODの平均値±SDを、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。B)内因性LTR活性:ペプチドとの3日間のインキュベーション後、Gal Screen Kitを使用して、内因性LTR活性を測定した。6サンプル由来のβ−ガラクトシダーゼ活性の中央値±SDを示す。RLU/s:相対光単位/秒。
【図10】PAP由来ペプチドは、CEMX174 5.25 M7細胞のHIV−1感染を劇的に増強する。50μl RPMI(10%FBS)中に播種したLTR−lucおよびLTR−GFPをコードする20,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、10μlのペプチド希釈物とインキュベーションし、0.3ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。2日後に、UV顕微鏡法の実施(A)または細胞溶解物のルシフェラーゼ活性の測定(B)によってウイルス感染率を検出した。 RLU/s:相対光単位/秒。
【図11】SEVIは、共受容体向性と無関係に、PBMCにおけるHIV−1感染を増強する。5×105個のPHA/IL−2刺激末梢血単核細胞(PBMC)を、50μl RPMI(10%FBS、10ng/ml IL−2)中に播種した。10μlのペプチド希釈物を添加し、細胞を、10、1、および0.1ngのR5向性HIV−1 005−pf−103(A)(Papkalla et al.,2002)およびX4向性HIV−1 NL4−3 Luc(B)のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。感染3日後、細胞をペレット化し、30μlルシフェラーゼ溶解緩衝液で溶解した。20μlの溶解物および100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用して、ルシフェラーゼ活性を検出した。RLU/s:相対光単位/秒。
【図12】SEVIは、マクロファージのHIV−1感染を促進する。5×105PBMCを、500μl RPMI(10%FBS、10ng/ml GM−CSF)を含む48ウェルディッシュに播種した。5日後、非接着細胞を慎重に洗浄し、GM−CSFを含む400μlの新鮮な培地を添加した。2日後に培地を除去し、130μlの新鮮な培地および20μlのペプチドを細胞に添加し、次いで、表示量のX4向性NL4−3 Luc(A)およびR5向性005pf103 Luc(B)で感染させ、総体積を200μlとした。3日後、ルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ウイルス感染を検出した。三連の実験からデータを得、これを、平均値+/−SD.RLU/s:相対光単位/秒で示す。
【図13】SEVIはHIV−1の増殖感染の閾値を低下させる。A)前日に播種した4,000個のTZM−bl細胞を、50μl DMEM、10μlのペプチド希釈物中でインキュベートし、総体積100μlにてHIV−1 NL4−3(X4)およびHIV−1 NL4−3 YU−2(R5)で感染させた(Papkalla et al.,2002)。0.6pgおよび0.1pgのp24抗原は、40μlの15,625または78,125倍希釈ウイルスストック溶液に相当する。Gal Screen Kitを使用して、3日後にウイルス感染を検出した。三連の感染由来の中央値+/−SDを示す。n、非感染細胞;RLU/s:相対光単位/秒。B)5×105PHA/IL−2刺激PBMCを、96 ウェルディッシュ(50μl;10%FBS、10ng/ml IL−2)に播種し、10μlの20μg/mlストック溶液を添加し、次いで、表示のp24抗原量のNL4−3で感染させ、最終体積を100μlとした(最終SEVI濃度:2μg/ml)。感染1日後、細胞をペレット化してペプチドおよびウイルスを除去し、SEVIを含まない200μl RPMI(20%FBS、10ng/ml IL−2)に再懸濁した。規定の時点で上清を回収し、新たな培地を添加した。p24抗原ELISA(NIH AIDS program)を使用して、ウイルス複製をアッセイした。値を、二連の感染の中央値で示す。
【図14】SEVI媒介されたHIV−1感染の増加は絶対ウイルス感染性と相関する。10μlのSEVI希釈物を4000 TZM−bl細胞(50μl)に添加した。漸減濃度のX4向性HIV−1 NL4−3およびR5向性HIV−1 YU2のp24で感染させ、総体積を100μlとした。感染2日後、ウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して測定した。ペプチドを含まない各ウイルス希釈の三連の感染由来の絶対β−ガラクトシダーゼ活性(RLU/s)の中央値(x軸)およびペプチドを含まない各コントロール感染と比較した10μg/ml SEVIの存在下でのウイルス感染のx倍増加(y軸)を示す。
【図15】SEVIは、X4、R5、および二重向性HIV−1変異形、およびいくつかの分子HIV−1クローンの感染を増強する。ペプチド希釈物を、10μlの体積で、前日に播種した50μlのTZM−bl細胞に添加した。NL4−3 V3組換えウイルス(Papkalla et al.;2002)および分子HIVクローンを使用した感染を、約0.01〜0.001のMOIを使用して行い、総体積を100μlとした。Gal Screen Kitを使用して、ウイルス感染を測定した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図16】SEVIは、HIV−1 Env媒介細胞−細胞融合に影響を及ぼさない。SIV−TatおよびNL4−3 Envをコードする発現プラスミドでトランスフェクションした293T細胞を、96ウェルディッシュに播種し、異なる濃度のSEVIとインキュベーションし、CEMX174 5.25 M7細胞と同時培養し、総体積を100μlとした。1日後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってHIV−1 Env媒介癒合率を検出した。三連の感染由来の中央値+/−SDを示す。RLU/s:相対光単位/秒。
【図17】SEVIはHIV−1粒子と相互作用し、細胞へのその結合を増強する。A)SEVIのHIV−1との相互作用。SEVIを、少容量のウイルスストックとプレインキュベーションし、その後に細胞に添加するか(□)、SEVIおよびHIV−1ストックを細胞に個別に添加した(■)。ウイルスストックとのインキュベーション中のSEVI濃度を、左のパネルに示し、総細胞培養物に関連する濃度を右のパネルに示す。B)SEVIは、細胞への野生型およびEnv欠損ウイルス粒子の結合を増強する。u、非感染細胞。データを、平均値± s.d.(n=3)で示す。
【図18】SEVI含有ペプチド画分は、HIV−1感染を促進する。精液由来のペプチド/タンパク質混合物を、単一の逆相クロマトグラフィによって分離した。HIV−1 NL4−3でのでのTZM−bl細胞の感染を、元の精液中に存在する濃度に相当するペプチド濃度(1ml精子等価物/ml)およびその5倍希釈物で行った。感染2日後の2つの代表的な精子ドナー由来のタンパク質/タンパク質画分の存在下での三連の感染から得た平均値(±SD)を、ペプチドを含まない感染(100%)と比較して示す。コントロールサンプル中のNL4−3感染の絶対感染は、約70,000 RLU/であった。
【図19】SEVIは、HIV−2およびSIVの感染を好む。TZM−bl細胞を、表示の量のSEVIの存在下で、20および2μlのHIV−2 ROD10(A)または20μlのSIVagmtan1もしくはSIVmac239(B)で感染させた。2日後、Gal Screen assayを使用して感染性を決定した。感染2日後に、CEMX174 5.25 M7におけるSIVcpztan1感染性に及ぼすSEVIの影響を決定した(C)。角括弧内の値は、三連の実験由来のペプチドを含まないコントロールサンプル(0)の絶対感染率の中央値をRLU/sで示す。丸括弧内の数字は、ペプチドを含まないコントロールサンプル中の絶対レポーター酵素活性をRLU/sで示す。
【図20】SEVIは、マウス白血病ウイルスの感染を好む。A)MuLV env を発現する複製コンピテントHIV(MuLV−HIV)またはSIV(MuLV−SIV)に及ぼすSEVIの影響。10μl SEVI溶液を、50μl CEMX174 5.25 M7細胞に添加し、その後、40μlの293Tトランスフェクション由来のウイルスストックで感染させた。感染2日後に、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して、感染性を決定した。B)MuLV Env でシュードタイピングしたMuLV粒子に及ぼすSEVIの影響。env欠損ルシフェラーゼ発現プロウイルスMLV DNA(pGC−sam−EN−Luc3;Oliver Wildner,Bochumから提供)およびMLV env発現プラスミドでの293T細胞の同時トランスフェクションによってウイルスストックを生成した。標的細胞(HUH7、Jurkat、PM1)を、50μlの体積で播種し、10μlのペプチドを添加した。その後、細胞を、40μlの非希釈ウイルスストックまたは10倍希釈のウイルスストックで感染させた。感染2日後および3日後に、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を検出した。2つの独立した実験由来の各細胞株について得た中央値+/−SDで示す。
【図21】SEVIは、VSV−Gおよびエボラ糖タンパク質保有HIVの感染を増強する。偽型産生のために、293T細胞を、envインタクト(E+)またはenv欠損(E*)ルシフェラーゼ発現HIV−1プロウイルスDNA pBRNL4−3−Lucと共に、等量のエボラ糖タンパク質をコードする発現プラスミドEBOV−GPまたはVSVのGタンパク質をコードするpHIT−VSV−Gと同時トランスフェクションした。トランスフェクションから48時間後に細胞培養物の上清を採取し、孔サイズが0.4μmのフィルターに通し、等分し、−80℃で保存した。A)TZM−bl細胞を、表示量の原線維PAP(248〜286)の存在下で、0.5または0.05μlのVSV−GシュードタイピングE+およびE* HIV−Lucで感染させた。感染2日後にGal Screen Kitを使用して感染率を決定した。B)エボラgpシュードタイピング粒子に及ぼすSEVIの影響。293T細胞を、3×104/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、37°Cにてo/nでインキュベーションした。感染前に、細胞から培地を完全に除去し、2倍濃縮したペプチド(原線維PAP(248〜286)を含む50μl培地と置換した。ペプチド添加直後に、エボラシュードタイピングウイルスの50μl連続希釈物(1:非希釈;10:10倍希釈;50:50倍希釈)で感染した。感染12時間後、培地を置換し、形質導入から72時間後に製造者(Promega,WI,USA)によって推奨されるように市販のキットを使用してルシフェラーゼ活性を決定した。
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、ペプチド、核酸、抗体、薬物、および診断、ウイルス疾患の治療および診断、ならびにex vivoおよびin vivo遺伝子療法における診断方法、ウイルス単離技術、およびレトロウイルスベクターを使用した形質導入効率の改良のためのその使用である。
【0002】
HIV感染などのウイルス感染、特にHIV−1伝播に対する別の改良された薬物が必要とされ続けている。過去数年にHIVに対する種々の薬物が開発されているにもかかわらず、HIV感染は依然として世界的問題である。HIVによるAIDSのような多数のウイルス疾患の治療法は、依然として利用できない。ウイルスを研究および理解するための簡潔で有効な診断方法および実験ツールも必要である。
【0003】
遺伝子療法アプローチは、しばしば、標的細胞(特に、幹細胞)、レトロウイルスベクターの形質導入効率の低さによって阻まれる。形質導入効率は、標的細胞への有効な遺伝子導入に極めて重要であり、形質導入効率は、通常、レトロウイルスベクターが幹細胞における遺伝子導入に使用される場合に低い。したがって、適切な細胞に遺伝子を首尾よく送達させるための改良されたレトロウイルス形質導入系も必要である。
【0004】
本発明の根底にある問題は、ウイルス疾患および遺伝子療法に関連する上記問題を克服する、改良されたか別の薬物、診断ツール、および実験ツールを提供することである。
【0005】
驚いたことに、本発明の根底にある問題は、請求項1〜25のいずれか1項に記載のペプチド、核酸、抗体、薬物、診断、および使用によって解決される。
【0006】
本発明のペプチドのアミノ酸配列は、式:
R1−KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK−R2
(式中、
R1はH、YGIHKQ、GIHKQ、IHKQ、HKQ、KQ、またはQであり、
R2は、独立して、−COOH、LIMY、LIM、LI、Lであり、
但し、配列番号18のペプチドを除く)によって示される。
【0007】
特に、本発明のペプチドは、配列番号1〜12のペプチドである。
【0008】
本発明のペプチドは、配列番号18のペプチドを除く、細胞のウイルス感染を促進するヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP)のアミノ酸残基240〜290、より好ましくは残基247〜286のフラグメントである。番号付けは、その非プロセシング形態(プロ配列が含まれる)のタンパク質配列をいう。そのプロセシング形態のヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP;Swissprot:遺伝子座PPAP_HUMAN、アクセッションP15309)は、予測分子量が41126Daの354アミノ酸からなる(Vihko et al.;1988,Sharief & Li;1992)。タンパク質hPAP自体およびこれをコード刷る核酸は、本発明の主題ではない。D.G.Mc Neel et al.は、Cancer Research 61,5161−5167(2001)で、前立腺酸性ホスファターゼ由来のTヘルパーエピトープの同定について報告している。本発明は、hPAPフラグメントが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)および他のエンベロープウイルスによる細胞感染を増強するアミロイド様線維構造を形成することができるという発見に基づく。
【0009】
以下で、その線維状のアミロイド様形態の本発明のペプチドを、「ウイルス感染の精子増強剤」に関して、「SEVI」ペプチド、または簡潔に「SEVI」という。H2O、細胞培養培地、または従来の緩衝液(PBSなど)に溶解した場合、PAPフラグメントは、自発的または撹拌後にアミロイド様線維構造を形成する。一般に、hPAPアミノ酸配列のアミノ酸240〜290の51残基区域の部分的配列を有するペプチドは、本発明の主題である。好ましくは、ペプチドは、少なくとも12、他の実施形態では、少なくとも20、25、30、または38アミノ酸を含む。ペプチドは、わずか50、好ましくはわずか47または45アミノ酸を含む。配列番号1〜12のアミノ酸配列のペプチドSEVI1〜12が特に好ましい。
【0010】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの以下の配列変異:
−N末端および/またはC末端のアミノ酸の欠失であって、ここで、ペプチドが少なくとも30、好ましくは35〜38アミノ酸からなる、欠失、
−N末端および/またはC末端の10アミノ酸まで、好ましくは1、2、3、または5アミノ酸の付加、
−5アミノ酸まで、好ましくは1、2、または3アミノ酸のアミノ酸交換であって、アミノ酸交換が保存的交換であることが好ましい、交換、
−3アミノ酸まで、好ましくは2または1アミノ酸の配列内のアミノ酸挿入または欠失
を有するSEVIペプチド由来のペプチドである。
【0011】
保存的アミノ酸交換では、アミノ酸を、類似の性質を有する別のアミノ酸に置換する。保存的アミノ酸交換は、好ましくは、以下の群のいずれか1つに含まれる:
無極性側鎖を有するアミノ酸:A、G、V、L、I、P、F、W、M
極性側鎖を有する無電荷アミノ酸:S、T、G、C、Y、N、Q
芳香族側鎖を有するアミノ酸:F、Y、W
正電荷アミノ酸:K、R、H
負電荷アミノ酸:D、E。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、少なくとも1つの以下の共有結合改変:
−好ましくはN末端でのアシル化、アセチル化、非ペプチド高分子キャリア群への結合、
−好ましくはC末端でのアミド化、非ペプチド高分子キャリア群への連結、
−好ましくはアミノ酸側鎖でのグリコシル化、
−細胞へのペプチドの取り込みを促進するアダプタータンパク質への連結または疎水性基、好ましくは脂質基、脂肪酸基、ダンシル基、カルボベンズオキシ基、またはt−ブチルオキシカルボニル基への連結、
−酸化、硫酸化、エステル化、ラクトン形成、および/またはリン酸化
を有する上記概説のSEVIペプチド由来のペプチドまたはその誘導体である。
【0013】
好ましい高分子キャリア基は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリソルベートエステル、マンナン、アミロペクチン、プルラン、自己会合疎水性化ポリサッカリドのヒドロゲルナノ粒子、ポリリジン、またはアルブミンである。
【0014】
本発明の主題はまた、SEVIペプチドのレトロペプチド、インベルソペプチド、またはレトロ−インベルソペプチドおよびSEVIペプチドの生物活性を有する多重合成によって得ることができるペプチドである。ペプチドは、少なくとも1つのD型アミノ酸ならびにイミノアミノ酸および稀なアミノ酸(ヒドロキシリジン、ホモセリン、およびオルニチンなど)を含み得る。本発明はまた、本発明のペプチド模倣物に関する。これらは、例えば、逆ペプチド結合またはエステル結合による1つまたは複数のペプチド結合の改変によって特徴づけられる。
【0015】
本発明のペプチドは、細胞のウイルス感染を促進する。本明細書中で使用する場合、「ウイルス」は、例えば、遺伝子療法のためにデザインした核酸を含み得る天然に存在するウイルスおよびウイルス粒子ならびに人工のウイルスおよびウイルス粒子をいう。好ましい実施形態では、ウイルスは、レトロウイルスおよびレトロウイルス粒子(オンコウイルス、レンチウイルス、およびフォーミーウイルスなど)である。一般に、本発明のペプチドは、特に、複製コンピテントウイルスでの標的細胞の感染を増強するのに有用である。特異的ウイルスは、HIV−1(ヒト免疫不全ウイルス1型)、HIV−2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ならびにオンコウイルス、マウス白血病ウイルス(MuLV)、およびフォーミーウイルスである。ペプチドはまた、HIV−変異形(X4、R5、および二重細胞指向性(dual−tropic)変異形など)、分子HIVクローンおよびHIV−1サブタイプの感染を促進する。ペプチドはまた、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、MuLV、エボラ、HIV−1、およびMuLV由来の異種エンベロープタンパク質でシュードタイピングしたB型肝炎ウイルス(HBV)またはレトロウイルス粒子での感染を好む。したがって、本発明のペプチドは、レトロウイルスベースの遺伝子療法系の形質導入効率を増加させる。
【0016】
本発明の他の好ましい実施形態では、ペプチドは、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、およびブタ熱ウイルスなど)、トガウイルス(風疹ウイルスなど)、コロナウイルス(SARSウイルスなど)、カリシウイルス(ノーウォークウイルスおよびE型肝炎ウイルスなど)、ラブドウイルス(水疱性口内炎インディアナウイルスおよび狂犬病ウイルスなど)、パラミクソウイルス(ヒトパラインフルエンザウイルスI、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、およびヒト呼吸器合胞体ウイルスなど)、フィロウイルス(マールブルグウイルスおよびエボラウイルスなど)、オルソミクソウイルス(インフルエンザA/B/Cウイルスなど)、アレナウイルス(ラッサ熱ウイルスなど)、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1および2、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、7、および8など)、ポックスウイルス(ワクシニアウイルスなど)、レオウイルス(ロタウイルスなど)、ピコルナウイルス(ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、脳心筋炎ウイルス、および口蹄疫ウイルスなど)、パポーバウイルス(ポリオーマウイルスおよび乳頭腫ウイルス(pappilom virus)など)、およびアデノウイルスでの感染を好む。
【0017】
ペプチド活性を、例えば、ルシフェラーゼアッセイまたはGFP発現アッセイで測定することができる。好ましくは、例えば、1または5μg/mlのペプチドは、ペプチドの非存在下での細胞へのウイルス感染と比較した場合、細胞へのウイルス感染を、2倍、より好ましくは3、5、または10倍に増強する。低感染効率で標的細胞を感染させた場合、通常、SEVIは、ウイルス感染率を桁違いに増強する。
【0018】
本発明の主題はまた、本発明のペプチドをコードする核酸、本発明のペプチドのための発現ベクター(プラスミド、コスミド、およびウイルスベクターなど)である。
【0019】
本発明の別の主題は、本発明のペプチドに対する特異的抗体の生成および使用である。好ましくは、これらの抗体を、治療薬として使用する。これらの抗体は、SEVIペプチドの活性を遮断し、例えば、性感染ウイルス疾患、特に、HIV−1、HIV−2、またはHBVによって伝播される疾患のようなin vivoでのウイルス粒子の伝播を妨害する。本発明の抗体は、血清からの単離またはモノクローナル抗体テクノロジーなどの公知の方法によって得ることができる。従来の方法は、実験動物に抗原を注射し、次いで、抗体形成後、血清からポリクローナル抗体を回収することである。モノクローナル抗体テクノロジーでは、無限に複製することができる骨髄腫細胞のような腫瘍細胞を、哺乳動物細胞と融合して、継続的に抗体を産生するハイブリドーマを得る。
【0020】
hPAPは、前立腺の上皮細胞中に合成され(Ostrowski et al.;1976,Risley & van Etten;1987,Hakalahti et al.;1993)、前立腺液中に分泌される(Vihko;1978,Vihko et al.;1978a,1978b)。hPAPは、アルキルおよびアリールオルトリン酸モノエステル(ホスホチロシン(Apostol et al.;1985;Vihko et al.;1993)およびヌクレオチド(Dziembor−Gryszkiewicz et al.;1978)が含まれる)を加水分解し、リンペプチドおよびリンタンパク質などの高分子を脱リン酸化することも見出された(Wasylewska et al.;1983,Li et al.;1984)。その至適pHがpH4〜6であるので、hPAPは、酸性ホスファターゼである。
【0021】
5’末端では、cDNAは32アミノ酸のシグナルペプチドをコードする。未変性hPAPは、2つの触媒的に不活性なサブユニットの二量体として存在し(Derechin et al.;1971,Luchter−Wasyl & Ostrowski 1974,Vihko et al.;1978)、これらのサブユニットは、互いに共有結合して活性酵素を形成する(Kuciel et al.;1990)。
【0022】
hPAPは、精液中に大量に分泌される(Ronnberg et al.;1981)。酵素濃度は、しばしば、前立腺癌患者で上昇し、腫瘍の進行に相関する(Choe et al.;1980,Griffiths 1980,Vihko et al.;1980,1981,and 1985)。hPAPは、前立腺特異的抗原が発見されるまで前立腺癌の主な診断マーカーであった。
【0023】
ヒト精液中に大量のhPAPが存在するので、hPAPは、生殖能力で生理学的役割を果たすことが示唆されている(Coffey & Pienta 1987)。免疫反応性hPAPは、白血球、腎臓、脾臓、胎盤、膵臓、肝臓、胃、顆粒球、好中球(Li et al.;1980,Shaw et al.;1981,Yam et al.;1981,Aumuller & Seitz,1985,Waheed et al.;1985)、男性の肛門線および尿道腺(Kamoshida & Tsutsumi 1990)、十二指腸窩上皮(Drenckhahn et al.;1987)、ならびに膵島細胞癌(Choe et al.;1978)などのいくつかの非前立腺細胞および組織で見出されている。hPAPの血清レベルは、健康な個体では非常に低いが(0〜5ng/ml)(Cusan et al.;1994)、悪性および良性の前立腺疾患でしばしば上昇する(Choe et al.;1980,Griffiths 1980,Vihko et al.;1980,1981,and 1985)。そのようなものとして、hPAP血清レベルのための免疫アッセイは、前立腺癌の疾患の進行のモニタリングに有用である。
【0024】
SEVIペプチドはウイルスまたは細胞膜に結合し、細胞へのウイルスの侵入に不可欠な過程を活性化すると推測されている。したがって、本発明のペプチド、核酸、および抗体は、ウイルス感染、前立腺機能障害、癌腫、または患者のウイルス感染に対する感受性の治療薬または診断薬として有用である。本発明のペプチド、核酸、および抗体はまた、細胞への遺伝子送達または遺伝子療法アプローチのために使用されるレトロウイルスベクターの感染性を増強するのに有用である。これらは、レトロウイルス(例えば、HIV−1、HIV−2、SIV)ならびにエボラウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、およびB型肝炎ウイルスのような他のエンベロープウイルスによる許容状態の標的細胞の感染を好む。本発明のペプチドは、ウイルス粒子の感染性または融合能力(非感染CD−4+細胞へのHIV伝播を好む能力など)に対して劇的な増強効果を示す。ヒト血清中のhPAPが高濃度であり、それによりSEVIが高濃度であるので、SEVIは、恐らく、HIV血清陽性個体から健康な性交パートナーへのHIV伝播を容易にする。本発明のペプチドを、性交時のHIV−1伝播の確率についてのマーカーとして使用することができる。
【0025】
したがって、広範な治療および診断への適用にペプチドを使用し、このペプチドは、細胞へのウイルスの侵入の実施および研究のための有益な実験ツールである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は、ウイルスベクター系に基づいた日常的な実験の実施または遺伝子治療アプローチのためのウイルス感染または形質導入効率の一般的増強剤としてのSEVIペプチドの使用である。ペプチドは、in vitroまたはin vivoでの細胞への遺伝子療法のためにデザインされたレトロウイルスベクターの侵入を増強する。ペプチドを、遺伝子療法のためのベクターと組み合わせて投与し、標的細胞へのベクターの侵入を媒介することができる。ペプチドは、細胞へのウイルスの取り込みを促進するので、ペプチドはin vitroでも有用である。したがって、ペプチドは、ウイルスおよびその作用機構の研究のためのツールとして有用である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、診断アプローチ、特に、HIV−1のようなウイルスの診断アプローチのためのSEVIペプチドの使用である。ウイルス粒子は、SEVIペプチドと相互作用する。したがって、SEVIペプチドを使用して、HIV感染したヒトまたはSIV感染した霊長類由来の血清、血液、血漿、精子、または組織のようなサンプルからウイルス粒子を単離することができる。HIV−1診断における1つの重要な問題は、HIV−1感染個体由来の血液または細胞サンプルからの直接的なウイルスの再単離である。日常的な診断方法と比較して、SEVIの存在下で、首尾のよいウイルス単離を数回行うことが好ましい。好ましい方法は、結合親和性アッセイおよび安全な溶液を得るためにウイルスを含むと疑われるか含むことが知られている溶液からウイルスを定量的に取り出す方法である。かかる方法では、本発明のペプチドは、好ましくは、支持体またはカラムに共有結合している。
【0028】
本発明はまた、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドに関し、かかるポリヌクレオチドは、好ましくは、DNA、RNA、ゲノムDNA、またはPNAから構成される。
【0029】
本発明の別の態様は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターおよび本発明のベクターを含む遺伝子操作された宿主細胞に関する。
【0030】
組換えまたは合成SEVIペプチドを使用して、一般に、標的細胞へのレトロウイルス粒子(オンコウイルス、レンチウイルス、およびフォーミーウイルス)、B型肝炎ウイルス、およびC型肝炎ウイルスの侵入を増強することができる。SEVIを、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV−G)、MuLVのEnvタンパク質、HBV HBsAg(B型肝炎ウイルス表面抗原)、エボラウイルススパイクタンパク質、または異なるHIV−1、HIV−2、およびSIV変異形由来のエンベロープタンパク質のような外来エンベロープ糖タンパク質(偽粒子(pseudoparticle))を保有するレトロウイルスコア粒子の感染/形質導入率の一般的増強剤としても使用することができる。SEVIは、全ての分析したレトロウイルス粒子の感染率を好む(通常、約2〜500倍)。これにより、特に、初代細胞での以前に実行できなかった感染実験を行うことが可能である。したがって、本発明のペプチドは、in vitroでの実験ツールとして有用である。
【0031】
組換えまたは合成SEVIペプチドを、診断アプローチ(すなわち、感染個体由来のHIV−1またはSIVの単離)にも使用することができる。SEVIは、検出可能なレトロウイルス感染の閾値を少なくとも1/2〜1/3に低下させる。したがって、SEVIの存在下では、患者サンプル由来の首尾のよいウイルス再単離の感度は、SEVIの非存在下よりも高い。SEVIは、感染個体由来の複製コンピテントHIV−1の検出のためのHIV診断薬の検出限度を低下させる。例えば、SEVIは、SEVIを含まない細胞と比較して、指標細胞との同時培養によってHIV−1感染個体のPBMCからウイルスをより効率的に再単離可能である。SEVIはまた、HIV−1患者の無細胞サンプルからウイルスを効率的に再単離することが可能である。
【0032】
組換えまたは合成SEVIペプチドを使用して、レトロウイルスベクター系に基づいたex vivoまたはin vivo遺伝子療法アプローチにおける遺伝子送達率を増強することもできる。遺伝子療法、特に幹細胞のex vivo遺伝子療法のための感染性の高いレトロウイルスベクターの生成は困難な手順である。幹細胞のレトロウイルスベクターの形質導入効率も低い。しかし、SEVIの存在下では、幹細胞および幹細胞株を、レトロウイルスベクターで効率良く形質導入することができ、それにより、SEVIを含まないサンプルと比較して、より高い標的細胞への遺伝子送達効率を得ることができる。
【0033】
SEVIおよび/またはその誘導体をコードする発現ベクターを使用して、細胞株を一過性または安定にトランスフェクションし、組換えSEVIペプチドを産生し、これを細胞溶解物または上清から精製することができる。SEVIおよび/または誘導体を特異的に認識するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使用して、前立腺癌およびHIV伝播の確率のマーカーとしてヒト血清または精液中のSEVI濃度を測定することができる。SEVI特異的抗体を、医学的化合物として使用して、ヒト精子中のSEVI活性を中和し、それにより、性交によるHIV、HBV、およびHCV伝播を防止することもできる。
【0034】
本発明のペプチドを、ペプチド合成、ペプチド配列のcDNAでトランスフェクションした細胞からの精製方法、またはヒト精子から出発する精製方法によって得ることができる。好ましい方法では、精子由来の精液を、陽イオン交換クロマトグラフィおよび逆相クロマトグラフィに供する。
【0035】
本発明のペプチドまたは抗体を、好ましくは、医学処方物で使用する。医学的処方物は、1つまたは複数の本発明のペプチドもしくは抗体またはペプチドの生理学的に許容可能な塩を含む。医学的処方物は、例えば、薬物の溶解性、安定性、または無菌性に寄与するか、体内への取り込み効率を増加させる薬学的に有用な賦形剤を含むことができる。
【0036】
ペプチドまたは抗体を含む薬物の形態および組成は、投与経路に依存する。好ましくは、ペプチドまたは抗体が非分解条件下で標的部位に到達する生薬(galenic)処方物および適用形態を選択する。薬物を、注射液、点滴薬、スプレー、錠剤、座剤、クリーム、軟膏、ゲルとして局所投与することができる。ボーラスとしてか、長期にわたって繰り返して投与することが可能である。
【0037】
実施例
本発明のペプチドを、ヒト精子から出発する精製方法によって得ることができた(実施例1)。このようにして得られたペプチドを、構造解明に供した。精製ペプチドの分子量を、エレクトロスプレー質量分析計(ESI−MS)によって決定した。ABI473シークエンサーを使用したエドマン分解によって、未変性ペプチドの配列分析を行った(実施例2および3)。本発明のペプチド配列も化学合成し、合成によって調製されたペプチドの構造も解明した(実施例2および3)。これらの合成によって調製したSEVIペプチドは、インキュベーションと同時またはインキュベーション後にアミロイド様原繊維構造を形成する。これらのアミロイド様原繊維構造は、HIV−1、HIV−2、SIV’s、VSV、MuLV、およびエボラでの標的細胞の感染を依存的に活性化する(実施例4〜17)。
【0038】
本発明を、実施例によって、第1に、ヒト精液由来のペプチドライブラリー由来のペプチドフラグメントが生理学的に関連する濃度の標的細胞のHIV−1感染を好むことを証明する(実施例1および16)。際立って、SEVIペプチドは、撹拌と同時または撹拌後に溶液が混濁するようになり、沈殿が形成された場合に最も有効である(実施例4)。コンゴーレッドとの反応ならびに偏光を使用したその後の顕微鏡法(実施例5)および蛍光顕微鏡法を使用したこれらの沈殿SEVIペプチドの実験により、沈殿SEVIペプチドが原線維を形成することが示された。沈殿物がウイルス感染を促進する活性ペプチド形態を含むことが見出された(実施例4)。アルツハイマー病に関連するβ−アミロイド原線維がHIV−1感染を増強することが以前に示されている(Wojtowicz et al.;2002)。実際、電子顕微鏡法により、沈殿したSEVIペプチドが典型的な原線維からなることが確認された(実施例4)。予め形成した原線維でのシーディングにより、アミロイドタンパク質の自己集合を加速させることができることが示されている(Westermark;2005)。本発明者らはまた、少数の活性SEVIが「可溶性且つ非原線維の」ペプチドをHIV−1感染を増強する活性原線維に変換することを見出した(実施例4)。本発明は、実施例によって、共受容体の使用またはHIV−1サブタイプと無関係に合成SEVIペプチドが依存的且つ非細胞傷害性に初代細胞および細胞株におけるHIV−1感染を促進することがさらに証明する(実施例4、6〜17)。加えて、SEVIはウイルス粒子および細胞との直接的相互作用によってHIV−1感染を2〜3倍に劇的に増強することが示された(実施例14および15)。本発明を、実施例によって、SEVIはまた、HIV−1以外のレンチウイルスベクター(すなわち、サル免疫不全ウイルスおよびオンコレトロウイルスMuLV(マウス白血病ウイルス))での標的遺伝子の感染を好むことがさらに証明する(実施例17)。SEVIはまた、VSV−Gシュードタイピング粒子の感染率を増加させ、SEVIがウイルス形質導入を増強し、それにより、レトロウイルスベクター系に基づいた遺伝子療法アプローチを改良するための有用なツールであることが示された。SEVIが、HIV−1感染の検出閾値を1/3〜1/4に低下させるので、SEVIはまた、ウイルス診断、特に遺伝子型および表現型の耐性試験のためのHIV−1感染個体からのHIV−1の単離のための有益なツールであり得る。
【0039】
SEVIペプチドを、クロマトグラフィ法およびHIV−1細胞感染アッセイの使用によってヒト精液から単離することができる。本発明のペプチドの生化学的特徴づけを、質量分析法および全アミノ酸の完全な配列分析によって行った。
【0040】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0041】
実施例1−HIV−1感染促進SEVIペプチドの単離
ヒト精子からの精製
ヒト精液由来のペプチドライブラリーの調製のために、283mlヒト精子を、異なる健康なドナー(n>50)から採取した。精子の採取のために、健康なボランティアは、50〜100mlのプラスチック管に全精子を射精し、射精直後に精子を−20℃で保存した。タンパク質およびペプチドの調製のために、精子および精漿を、解凍精子の4℃で17,000×g(9600rpm)の遠心分離によって分離し、精漿を含む上清(snA)を4℃で保存した。次に、ペレットを、氷冷抽出緩衝液(1M酢酸、20mMアスコルビン酸、1mM EDTA、2M 塩化ナトリウム(pH2.0);17,000gで10分間)で2回リンスし、上清BおよびCを、上清Aと共にプールした。プールした上清A〜C(380ml)を、抽出緩衝液で760mlまで希釈し、次いで、分子量カットオフが50kDaのポリスルホン膜(Sartocon ultrasart SM 146501E−SG;Sartorius,Gottingen,Germany)を使用したダイアフィルトレーション(DF)緩衝液(0.1M酢酸、2mM アスコルビン酸、0.1mM EDTA(pH3.0))で5Lに希釈した。この溶液を、65分間で0.5lに再濃縮し、DF緩衝液で1Lに希釈し、次いで、DF緩衝液でダイアフィルトレーションを行って、60分間で9.5Lの透過液(permeate)を得た。透過液は、50kDa未満の全タンパク質およびペプチドを含み、これを、第1のクロマトグラフィ分離工程によって処理した。
【0042】
陽イオン交換クロマトグラフィ:
第1の分離のために、陽イオン交換カラム(Fractogel TSK SP 650(S),Merck,Darmstadt,Germany;粒子サイズ20〜50ミクロン;カラム体積860ml)を、水で平衡化し、0.5M NaOHおよび0.5M HClでの馴化後にpH2.5にした。透過物を水で22Lに希釈し、HClを使用してpH2.5に調整し、伝導率は4.93mS/cmであった。次いで、馴化透過物を、陽イオン交換カラム(流速:20ml/分)にロードした。水29Lでの洗浄後(pH2.5)、ペプチド/タンパク質を、以下の緩衝液を使用して溶離した(図1A):
1.0.1M クエン酸(pH3.6、体積:4.4L)
2.0.1M 酢酸+0.1 M酢酸ナトリウム(pH4.5、体積:1.5L)
3.0.1M リンゴ酸(pH5.0、体積:2.2L)
4.0.1M マロン酸(pH5.6、体積:1.5L)
5.0.1M NaH2PO4(pH6.6、体積:1.2L)
6.0.1M Na2HPO4(pH7.4、体積:1.5L)
7.1M 酢酸アンモニウム(pH7.0、体積:1.8L)
8.水(pH7.0、体積:1.5L)
9.0.1M NaOH(pH13、体積:3.0L)
【0043】
緩衝液1〜6を使用して得た溶離物により、1〜6番の溶離物を得た。溶離物7〜9をプールし、プールした溶離物を、溶離物番号7と称する。
【0044】
第1の逆相クロマトグラフィ:
第2の分離を、逆相(RP)クロマトグラフィカラム(C18、47×直径300mm、粒子サイズ10〜20ミクロン、孔サイズ30nm、Vydac,Hesperia,CA,USA)で行った(例として図1B中の溶離物7について示した)。各溶離物1〜7を、RPC18カラムに適用し、7回の異なる運転で分離し、以下の同一条件下での勾配溶離でペプチドを溶離した:
流速:40ml/分
緩衝液A:10mM HCl
緩衝液B:A+80%(v/v)アセトニトリル
勾配溶離:100%Aから60%Bまでで47.5分
60%Bから100%Bまでで2.5分。
【0045】
50mlの画分を回収し、各運転により、40ペプチドを含む画分を得た。全部で280フラクションが得られ、各画分から1.4mlの精漿等価物に相当するアリコート(画分体積0.25ml)を取り、その直後に凍結乾燥させた。元の画分を、さらなるクロマトグラフィ分離の前に、−20℃で保存した。
【0046】
画分の試験:
1.4ml精子等価物/mlを含むpHプール7由来の凍結乾燥ペプチド画分を、100単位/ml ペニシリンGおよび100μg/ml硫酸ストレプトマイシン(Pen/Strep)(Invitrogen,#15140−163)を含む33μlの無FBS(ウシ胎児血清;Invitrogen;#10270−106)無D−MEM(Invitrogen,#41965−039)中に再構成した。4000 P4−CCR5細胞(Charneau et al.;1994)を、DMEM(10%FBS、Pen/Strep)を含む全体積が100μlで96ウェルの平底プレート(Greiner;#655180)に播種した。P4−CCR5細胞は、HIV−1受容体であるCD4、CCR5、およびCXCR4を発現し、LTR−lacZ構築物を安定に含む。HIV−1でのこれらの細胞の首尾のよい感染後、ウイルス性にコードされたTatタンパク質が発現され、これは、LTRへの結合を介してウイルス遺伝子発現をトランス活性化する(Charneau et al.;1994)。したがって、Tatはまた、細胞がコードするLTR−lacZの発現を活性化し、感染細胞中で酵素β−ガラクトシダーゼが産生される。酵素活性は、ウイルス感染性に直接比例する。翌日、培地を除去し、30μlの新たな培地および10μlの溶解したペプチド画分を添加した。37℃で4時間のインキュベーション後、10μlのHIV−1 NL4−3ストック(Adachi et al.;1986)を細胞に添加した。HIV−1 NL4−3を、リン酸カルシウム法を使用したプロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによって誘導した(BD Biosciences;CalPhos Mammalian Transfection Kit;#631312)。HIV−1ストックを、−80℃で保存した。感染3日後、Tropixのβ−Gal Screen Kit(Biosystem;#T1027)を使用してウイルス感染を検出した。細胞上清を破棄し、β−Gal基質およびPBSを含む40μlの1:1希釈β−Gal Screen溶液を添加した。30分のインキュベーション後、35μlの溶解細胞抽出物を、96ウェルルピプレート(Nunc;#136101)にピペットし、照度計を使用して化学発光を検出した(OrionII,Berthold detection systems)。β−ガラクトシダーゼ活性を、相対光単位/秒(RLU/s)として得た。ポジティブコントロール(ペプチドを含まない感染細胞)中で得た値を100%に設定し、全ての他の値を、(ペプチドの存在下での絶対RLU/s/ペプチドを含まない細胞から得た値の中央値)×100によって計算した。pHプール7由来の画分29の存在下で、レポーター遺伝子活性は、ペプチドを含まない感染コントロール細胞と比較して、6.8倍を超えて増加した(図2a)。これらの結果は、精液がHIV−1感染に好ましい影響を及ぼす化合物を含むことを最初に証明している。ヒト集団におけるHIV−1伝播がHIV−1感染性交パートナーと健康な性交パートナーとの間の性的接触を介して優先的に起こるので、ヒト精子中のHIV−1活性化ペプチドの存在は重要な所見である。
【0047】
HIV−1活性化ペプチドを単離するために、画分29〜31を、クロマトグラフィ技術を使用してさらに精製した。
【0048】
第2の逆相クロマトグラフィ:
第3の分離工程を、逆相(RP)クロマトグラフィカラム(C18、20×直径250mm、粒子サイズ5ミクロン、孔サイズ30nm、Vydac,Hesperia,CA,USA)で行った(図1C)。プール7由来の画分29〜31をRPC18カラムに適用し、ペプチドを、以下の条件を使用した勾配溶離で溶離した:
流速:7ml/分
緩衝液A:0.1%TFA
緩衝液B:A+80%(v/v)アセトニトリル
勾配溶離:10%A〜50%Bまで50分
60%Bから100%Bまで1分。
【0049】
全部で7mlの60個の画分を回収し、0.5%のアリコート(35μL)を凍結乾燥させた。
【0050】
次いで、クロマトグラフィ030718−1の1.4mlの精漿等価物に相当するアリコート(画分の0.5%)を、上に正確に記載したウイルス阻害アッセイで分析した。ペプチド画分40〜44の存在下で、ウイルス感染性は、コントロール細胞と比較して3〜4倍に増加した。(図1Dおよび図2B)。
【実施例2】
【0051】
実施例2−HIV感染活性化ペプチドの生化学分析
精製したペプチドおよび画分の質量分析を、製造者によって推奨された標準的条件を使用したVoyager De MALDI−TOF−MS(Applied Biosystems,Darmstadt,Germany)を使用して行った。エレクトロスプレーインターフェースを具備したSciex API III四極質量分析計(Sciex,Perkin−Elmer)(ESI−MS;図1Dを参照のこと)によって精製ペプチドの質量をさらに決定した。473A気相シークエンサー(Applied Biosystems,Weiterstadt,Germany)にて、製造者によって推奨された標準的プロトコールを使用したフェニルチオヒダントインアミノ酸のオンライン検出を使用したエドマン分解によってペプチドを配列決定した。得られた配列のデータベースアラインメント(Swiss−Protデータベース)は、ヒト前立腺酸性ホスファターゼ(hPAP;アクセッション番号P15309)の前駆体(hPAP前駆体配列のアミノ酸残基247〜286(ナンバリングは、プロ配列を含むアミノ酸をいう))と100%配列が同一であった。
【0052】
以下のPAPフラグメントは、質量および/または配列決定によってヒト精漿中で検出された。
配列番号1:PAP(247〜286)
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4714,6 検出された分子量4715.3)
配列番号2:PAP(248〜286)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY(主なペプチド)
(理論上の分子量4551.4 検出された分子量4551.8)
配列番号3:PAP(249〜286)
IHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4494.4)検出された分子量4507)
配列番号4:PAP(250〜286)
HKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(理論上の分子量4381.2)検出された分子量4388)
配列番号5 PAP(251〜286)
KQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量 4244.1)
配列番号6 PAP(252〜286)
QKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量 4115.9)
配列番号7 PAP(253〜286)
KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY
(検出された分子量3987.8)
配列番号8:PAP(248〜285)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIM..
(理論上の分子量4388.3 検出された分子量4386.2)
配列番号9:PAP(248〜284)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLI...
(理論上の分子量4257.1 検出された分子量4254.3)
配列番号10:PAP(248〜283)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKL....
(理論上の分子量4143.9 検出された分子量4141.9)
配列番号11:PAP(248〜282)
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK.....
(理論上の分子量4030.7 検出された分子量4028.3)
配列番号12:PAP(247〜282)
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK....
(理論上の分子量4193.9 検出された分子量193.3)
【実施例3】
【0053】
実施例3−従来のFmoc化学を使用して、選択された線状PAP/SEVIペプチドの化学合成をmg量で行った。分析逆相クロマトグラフィを使用して、合成ペプチドを精製し、その純度および同一性を、上記の方法および装置による質量および配列決定によって分析した。
【実施例4】
【0054】
実施例4−活性化PAP溶液中のアミロイド様原線維はHIV感染を増強する
Nathaniel Landauから好意的に提供を受けたCEMX174 5.25 M7細胞を、10%FBSおよびPen/Strepを含むRPMI 1640(Invitrogen;#21875,034)中で培養した。CEMX174 5.25 M7 細胞は、染色体DNAに安定に組み込まれたLTR−luc(ホタルルシフェラーゼ)およびLTR−GFP(緑色蛍光タンパク質)構築物を含む。HIV−1、HIV−2、またはSIVでのCEMX174 5.25 M7細胞の増殖感染後、ウイルストランスアクチベータータンパク質Tatが発現され、これは、LTRとの相互作用によってLucおよびGFPの発現をトランス活性化する。したがって、HIV−1感染を、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性または生きている細胞中のGFP発現の測定によって検出することができる。プロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによってHIV−1ストックを生成した(実施例1)。トランスフェクション1日後に、培地を除去し、新鮮なDMEM(10%FBS)を添加した。30時間後に上清を含むウイルス粒子を回収し、p24抗原ELISA(NIH試薬プログラム)を使用してウイルス濃度を測定した。
【0055】
最初の実験では、HIV−1感染の増強におけるSEVIの活性は非常に異なった。撹拌と同時または撹拌後に溶液が混濁するようになった場合にペプチドが最も有効であること、およびSEVI溶液の濁度がHIV感染の増強で効率的であることに留意した。活性化SEVI溶液の混濁成分の性質を解明するために、5mg/mlの濃度でリン酸緩衝化生理食塩水に含まれるPAP(248〜286)を、1000rpmでの震盪によってインキュベーションした。37℃で一晩のインキュベーション後、ペプチド溶液は混濁するようになり、原線維様構造が認められた。本SEVIペプチド調製物の不溶性の原線維または可溶性部分がHIV−1感染を活性化するかどうかを分析するために、原線維様構造を、10000gで5分間の遠心分離によって分離し、上清を回収し、ペレットを同量のPBS中に再溶解した。HIV感染に及ぼすこれらの溶液の影響を分析するために、希釈物を、無FBS DMEMを使用して96ウェルプレート中に調製した。次に、50,000 CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルの平底プレート中に播種して総体積を50μlとし(RPMI 1640、10%FBS)、10μlのペプチド希釈物を添加し、その後に体積40μlで1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原を使用して感染させた(総体積100μl)。37℃で2日間のインキュベーション後、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega;#E1501)を使用した細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってウイルス感染を決定した。簡潔に述べれば、細胞を再懸濁し、96ウェルV型プレート(Greiner;#651180)に移し、1200rpmで5分間遠心分離した。細胞上清を除去し、残りの細胞ペレットを、30μlの1×ルシフェラーゼ溶解緩衝液(Promega;#E1531)中に溶解した。20μlの溶解物を96ウェルルミプレート(Nunc;#136101)に移した後、100μlのルシフェラーゼ試薬(Promega)を添加し、照度計を使用して化学発光を検出し(実施例1を参照のこと)、相対光単位/秒(RLU/s)としてルシフェラーゼ活性を検出した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定したもの(100%)と比較して示す。図3Aに示した結果は、活性な混濁SEVIストック溶液および原線維用構造を含む再溶解ペレットのみが用量依存性にHIV−1感染を増強するのに対して、透明な上清は影響を示さなかったことを証明する。したがって、沈殿部分のみが活性なHIV−1増強形態を含む。
【0056】
アルツハイマー病に関連するβ−アミロイド原線維がHIV−1感染を増強することが以前に示されている(Wojtowicz at al.,2002)。混濁SEVI溶液がβ−アミロイド様原線維も含むことを解明するために、電子顕微鏡法を行った。図3Bに示した電子顕微鏡写真により、混濁したHIV活性化溶液がβ−アミロイド様原線維を含むのに対して、透明な上清および非活性化溶液中に原線維を検出することができないことが明らかとなった(図3Bデータ占めさず)。
【0057】
アミロイドペプチドの自己集合を、予め形成した原線維の播種によって加速することができることが示されている(Westermark et al.,2005)。少数の活性化原線維含有PAP(248〜286)が非集合PAP(248〜286)溶液を活性原線維に変換して、HIV完成を増強することも見出された(図3)。
【実施例5】
【0058】
実施例5−活性SEVI溶液中のβ−アミロイド原線維の検出
5mg/mlのPAP(248〜286)を含むリン酸緩衝化生理食塩水を、37℃で一晩の1000rpmでの震盪によってインキュベーションした。数滴の得られた活性化混濁オリゴペプチド溶液を、ポリリジンコーティングしたスライドに移し、タンパク質溶液を換気フード中にて風乾した。乾燥したタンパク質を、飽和コンゴーレッド溶液(80%エタノールおよび2M NaCl中)で染色し、80%エタノールで洗浄した。基準タンパク質およびペプチドとして、類似の濃度の可溶性の非インキュベーションPAP溶液(248〜286)およびヒトアルブミン溶液を同一のスライドに移し、同等に染色した。活性化PAP(248〜286)ペプチドが典型的なコンゴーレッド染色を示したのに対して(図4、上のパネル)、非活性化ペプチドは、コンゴーレッドと全くまたはほとんど反応せず(図4、下のパネル)、アルブミンコントロールは青色を呈した(図4)。コンゴーレッドで染色した同一のスライドを、光学顕微鏡法および蛍光顕微鏡法によって試験した。偏光を使用した従来の光学顕微鏡法は、活性化PAP(248〜286)の典型的な複屈折(二重屈折)効果を示したのに対して(図5A)、非活性化SEVIペプチド(図5B)およびアルブミンコントロール(図5C)は複屈折効果は認められなかった。コンゴーレッドでの染色および複屈折は、原線維形成の典型的な基準である(Nilsson;2004)。さらに、従来の蛍光顕微鏡法により、可溶性非活性化PAP(248〜286)(黒色、図6B)またはアルブミン(緑色、図6C)と対照的に、SEVI原線維の色および強度の顕著な相違(透明の橙色、図6A)が認められた。コンゴーレッド染色および光学顕微鏡法、蛍光顕微鏡法、またはEM顕微鏡法を使用した活性化原線維含有PAP(258〜286)溶液および非活性化透明PAP(258〜286)溶液の間で認められた相違は、SEVI溶液がβ−アミロイド様原線維を含み、HIV感染を活性化して有利に働くことが必須であることを明らかに示す。
【実施例6】
【0059】
実施例6−HIV−1感染に及ぼす異なるSEVIペプチドのHIV−1増強効果の決定
HIV感染に及ぼす合成SEVIペプチドの影響を分析するために、サンプルを、無FBS DMEM中堅に再懸濁して、5mg/mlのストック溶液を生成し、これを1400rpm(1分あたりの回転数)にて37℃で20時間震盪し、混濁溶液を得た。ペプチド希釈物を、無FBSDMEMを使用して96ウェルプレート中に調製した。次に、5000 CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルの平底プレート中に播種して総体積を50μl(RPMI 1640、10%FBS)とし、10μlのペプチド希釈物を添加し、その後に体積40μlで30pgのHIV−1 NL4−3のp24抗原を使用して感染させた(総体積100μl)。37℃で20時間のインキュベーション後、ルシフェラーゼアッセイ系(Promega;#E1501)を使用した細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってウイルス感染を決定した。簡潔に述べれば、細胞を再懸濁し、96ウェルV型プレート(Greiner;#651180)に移し、1200rpmで5分間遠心分離した。細胞上清を除去し、残りの細胞ペレットを、30μlの1×ルシフェラーゼ溶解緩衝液(Promega;#E1531)中に溶解した。20μlの溶解物を96ウェルルミプレート(Nunc;#136101)に移したのち、100μlのルシフェラーゼ試薬(Promega)を添加し、照度計を使用して化学発光を検出し(上記を参照のこと)、相対光単位/秒(RLU/s)としてルシフェラーゼ活性を検出した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定したもの(100%)と比較して示す。
【0060】
図7Bに示した全てのペプチドを、同一の条件下で溶解し、インキュベーションした。PAPフラグメント(248〜286)、PAP(250〜286)、PAP(251〜286)、PAP(252〜286)、およびPAP(253〜286)は、HIV−1感染を依存的に増強する。50μg/mlペプチドの存在下で、SEVIを含むコントロール細胞と比較して、ルシフェラーゼ活性は、約30倍に増加した(図7A)。対照的に、「スクランブルしたペプチド(scrambled peptide)」(PAPscram、SEVIペプチドと同一のアミノ酸からなるが、アミノ酸配列内に無作為に分布する)、コントロールペプチドc1〜c3、ならびにC末端およびN末端フラグメント(PAP(248〜266)およびPAP(267〜286))は、HIV−1感染に対する増強効果はなかった(図7A)。このデータは、HIV−1感染に対するSEVIの増強効果が特異的であることを示す。
【実施例7】
【0061】
実施例7−HIV−1に対するSEVIの促進効果は細胞型と無関係である。
HIV−1感染に対する増強効果が使用した細胞型に依存するかどうかを分析するために、2000個の接着TZM−bl細胞(Wei et al.;2002)またはP4−CCR5細胞および5000個のCEMX174 5.25 M7懸濁細胞を、50μlの体積で播種した。翌日、10μl SEVI(原線維PAP(250〜286))希釈物を添加し、細胞を1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させて総体積を100μlとした。感染2日後、TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞のウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して検出した。簡潔に述べれば、上清を除去し、Gal Screenを含むPBSの40μlの1:1希釈物を細胞に添加した。Gal Screenは、β−ガラクトシダーゼ基質および細胞を溶解させる成分を含む。RTで30分のインキュベーション後、30μlの細胞溶解物を、96ウェルルミプレートに移し、照度計を使用して化学発光を検出した。SEVIは、接着細胞(TZM−blおよびP4−CCR5)および懸濁細胞(CEMX174 5.25 M7)においてHIV−1感染を用量依存性に促進した(図8)。0.4μg/ml SEVIの存在下で、HIV感染は、ペプチドを含まないコントロールで得た感染率と比較して、CEMX174 5.25 M7細胞で2.1倍、P4−CCR5細胞で2.4倍、およびTZM−bl細胞で3.3倍に増強された。分析した最も高い濃度(10μg/ml)では、3つ全ての細胞型のHIV感染は、10倍を超えて増加した。ヒトPBMCおよびマクロファージでも類似の結果が得られた(図11および12)。これらのデータは、HIV−1感染に対するSEVIの促進効果が使用した細胞型と無関係であることを示す。
【実施例8】
【0062】
実施例8−SEVIは、細胞生存性または内因性LTR活性に影響を及ぼさない。
SEVIが細胞に細胞傷害効果を発揮するか、または細胞増殖を刺激するのかどうかを分析するために、4000個のTZM−bl細胞を、100μlの体積で96ウェル平底プレートに播種した。翌日、培地を90μlの新鮮な培地と置換し、SEVI(原線維PAP(250〜286))希釈物を添加し、最終体積を100μlとした。3日後、10μlの5mg/ml MTT(Sigma;#M2128)溶液を添加し、細胞を、37℃で4時間インキュベーションした。生細胞では、ミトコンドリアデヒドロゲナーゼが黄色のMTT塩を青色のホルマザン結晶に酸化する(Schiff et al.;1985)。1:1 エタノール/DMSOへの結晶の溶解後、生細胞を含むサンプルは青色を呈するのに対して、死細胞由来のサンプルは透明である。光度計(Molecular Devices)を使用して、560/650nmの光学密度(OD)を測定した。図9Aに示すように、高濃度のSEVIを含むサンプル中での細胞生存度はペプチドによって影響を受けず、ペプチドが細胞傷害効果も細胞増殖の誘導も発揮しないことが示された。
SEVIはHIV−1感染を増強しないが、その代わりに、LTRをコードする細胞を活性化して、CEMX174 5.25 M7細胞またはTZM−bl/P4−CCR5細胞中のlucまたはlacZ発現をそれぞれ駆動するかもしれない。これを分析するために、TZM−bl細胞を、感染させていない異なる濃度のSEVIとインキュベーションし、内因性LTR活性を、Gal−Screenキットを使用して、3dpiで測定した。LTR活性は、分析した全てのサンプル中で等しく、SEVIが実際にHIV−1感染を増強し、使用したレポーター細胞中の内因性LTR活性を増加させないことが証明された。(図9B)。
【実施例9】
【0063】
実施例9−PAP誘導フラグメントがHIV−1感染率を増強する。
50μl RPMI(10%FBS)中に播種したLTR−lucおよびLTR−GFPをコードする20,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、10μlの示した原線維ペプチド希釈物とインキュベーションし、0.3ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。2日後に、第1のUV顕微鏡法(図10A)およびその後の同一サンプルの細胞溶解物のルシフェラーゼ活性の測定(図10B)によってウイルス感染率を検出した(図10B)。原線維PAP(248〜286)、PAP(251〜286)、およびPAP(253〜286)は、NL4−3感染を依存的に促進する。ペプチドを含まないコントロールサンプルの感染後、約2.6%の細胞が、44,457 RLU/sのルシフェラーゼ活性に相当するGFPを発現した(図10)。2μg/ml SEVIの存在下で、平均感染率は、4.6%(66,327 RLU/s)にほぼ倍増した。最も高濃度の50μg/mlでは、99%を超える細胞が、HIV−1に感染するようになった。これらのサンプルのルシフェラーゼ活性の中央値は、1,701,156 RLU/sであり、これは、感染の38倍増加に相当する(1,701,156 RLU/s÷コントロール細胞の44,457 RLU/s)。本発明者らのデータは、PAP誘導ペプチドがHIV−1感染細胞数を劇的に増強することを証明している。
【実施例10】
【0064】
実施例10−SEVIは、共受容体の使用と無関係にPBMCおよびマクロファージのHIV−1感染を促進する。
標的細胞を増殖感染するために、HIV−1は、細胞表面上の第1のCD4受容体および第2の分子(共受容体CCR5またはCXCR4の1つ)を必要とする(Chantry et al.;2004)。厳格にCXCR4(X4)向性を示すHIV−1 NL4−3を使用して、以前のデータを得た(Papkalla et al.;2002)。SEVIがX4およびR5向性HIV−1での初代細胞の感染も促進するかどうかを分析するために、末梢血単核細胞(PBMC)における実験を行った。Ficoll密度勾配遠心分離(Munch et al.;2002)を使用して、PBMCを全血から得た。精製PBMCを、20%FBS、10ng/ml IL−2(Stratmann)、および3μg/mlフィトヘマグルチニン(Oxoid;#30852801)を含むRPMI−1640培地中で3日間刺激した。次いで、PBMCを、1200rpmでの遠心分離によって沈殿させ、RPMI1640(10%FBS、10ng/ml IL−2)中に再懸濁した。次に、5×105細胞を、50μl RPMIに播種し、10μlのペプチド希釈物(原線維PAP(248〜286))を添加した。その後、細胞を、10、1、および0.1ngのR5向性HIV−1 005−pf−103のp24抗原(a)(Papkalla et al.;2002)およびX4向性HIV−1 NL4−3 Luc(He at al.;1995)(b)を感染させて、総体積を100μlとした。両ウイルスを、293T細胞の一過性トランスフェクションによって得、これらは、nefの代わりにルシフェラーゼ遺伝子を含む。感染3日後、細胞をペレット化し、30μlルシフェラーゼ溶解緩衝液で溶解した。20μlの溶解物および100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ルシフェラーゼ活性を検出した。ペプチド濃度の増加に伴うルシフェラーゼ活性の増加は、SEVIが、R5(図11A)およびX4(図11B)向性ウイルスによるPBMCの感染を用量依存性に促進したことを示す。例えば、1ngのR5向性HIV−1のp24抗原または10ngのX4向性HIV−1での感染後、10μg/ml SEVIを含むサンプル由来のルシフェラーゼ活性(それぞれ、28,520 RLU/sまたは589,840 RLU/s)は、ペプチドを含まないコントロールサンプル由来のレポーター活性と比較して34倍または28倍増加した(それぞれ、830 RLU/sまたは20,820 RLU/s)。
【0065】
マクロファージのHIV−1感染に及ぼすSEVIの影響を分析するために、5×105PBMCを、500μl RPMI(10%FBS、10ng/ml GM−CSF)を含む48ウェルディッシュ(Becton−Dickinson;#353078)に播種した。5日後、非接着細胞を慎重に洗浄し、GM−CSFを含む400μlの新鮮な培地を添加した。2日後に培地を除去し、130μlの新鮮な培地および20μlの原線維PAP(248〜286)希釈物を、分化マクロファージに添加し、次いで、表示量のX4向性NL4−3 Luc(a)およびR5向性005pf103 Luc(b)で感染させ、総体積を200μlとした。3日後、ルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ウイルス感染を検出した。図12に示すように、SEVIは、使用した共受容体と無関係に、マクロファージのHIV−1感染も増強した。マクロファージにおいてCXCR4発現を欠くので、X4向性NL4−3の全感染率(図12B)は、R5向性(図12A)変異形を使用した得た全感染率(図12A)と比較して減少する。
【実施例11】
【0066】
実施例−11。SEVIはHIV−1の増殖感染の閾値を低下させる。
細胞培養物中のHIV−1の増殖感染を確立するために、1つの単一の感染事象が起こらなければならない。SEVIがペプチドを含まない通常の条件下で起こらない標的細胞のHIV−1感染を可能にするかどうかを分析するために、標的細胞をSEVIとインキュベーションし、単一細胞を感染させるのに十分でないウイルス濃度で感染させた。前日に播種した4,000個のTZM−bl細胞を、50μl DMEM、10μlの原線維PAP(251〜286)希釈物中でインキュベートし、総体積100μlにてHIV−1 NL4−3(X4)およびHIV−1 NL4−3 YU−2(R5)で感染させた(Papkalla et al.,2002)。0.6pgおよび0.1pgのp24抗原は、40μlの15,625または78,125倍希釈ウイルスストック溶液に相当する。Gal Screen Kitを使用して、3日後にウイルス感染を検出した。0.1および0.6pgのX4およびR5向性HIV変異形で感染させた細胞の平均β−ガラクトシダーゼ活性は、非感染細胞(n)に類似し、ペプチドを含まないサンプル中で感染は起こらないことを示した(図13A)。対照的に、2μg/ml SEVI以上の存在下では、使用した全濃度のウイルスについて感染を容易に検出することができた。PBMC(調製については上記を参照のこと)を少量のHIVで感染させた場合、類似の結果が得られた。5×105PHA/IL−2刺激PBMCを、96 ウェルディッシュ(50μl;10%FBS、10ng/ml IL−2)に播種し、10μlのPAP(248〜286)の20μg/mlストック溶液を添加し、次いで、表示のp24抗原量のNL4−3で感染させ、最終体積を100μlとした(最終SEVI濃度:2μg/ml)。感染1日後、細胞をペレット化してペプチドおよびウイルスを除去し、SEVIを含まない200μl RPMI(20%FBS、10ng/ml IL−2)に再懸濁した。規定の時点で上清を回収し、新たな培地を添加した。p24抗原ELISAを使用して、ウイルス複製をアッセイした。SEVI含有細胞を120および12pgのp24抗原で感染させた場合、ペプチドを含まないコントロール細胞よりも速い速度およびレベルでHIV−1を複製した(図13B)。1.2pgおよび0.12pgでのPBMCの感染後、ウイルスは、SEVIを含むサンプルのみで複製されるが、ペプチドを含まないコントロール細胞では複製されなかった。PBMC細胞およびTZM−bl細胞で得たこれらのデータは、SEVIが一定量のHIV−1で標的細胞を感染させることが可能であり、同一の実験条件下で全く感染性を示さないことを証明する。どのようにして効率的にSEVIがHIV感染性を活性化するのかを分析するために、ウイルスストック溶液の10倍希釈物を使用した異なる量の原線維PAP(248〜286)の存在下でのHIV−1 NL4−3の終点滴定を、CEMX174 5.25 M7細胞で行った。ペプチドを含まないコントロール細胞中で検出可能なルシフェラーゼ活性が得られるHIV−1の最も高い希釈率は、104であった(表1)。しかし、0.4および2μg/ml SEVIの存在下で、log5希釈物またはlog6希釈物を使用した場合、HIV−1感染を検出することもできる。最も高いSEVI濃度(10μg/ml)でも、log7希釈物によって増殖感染された。したがって、SEVIは、HIV−1感染の閾値を1/2〜1/3に劇的に低下させる。ヒト精子中のHIV活性化ペプチドは、性交時のHIV−1またはHIV−2の自然の伝播で重要な意味を有し得る。性交当たりのHIV−1の伝播率は、0.1%より低い。
【実施例12】
【0067】
実施例12−SEVI媒介されたHIV−1感染の増加は絶対ウイルス感染性と相関する。
前の実験では、SEVIの存在下での感染率の増加が高いほどウイルスの接種材料またはMOI(感染効率)が低くなることを証明した。この相関をより詳細に分析するために、10μlの原線維PAP(251〜286)希釈物を4000 TZM−bl細胞(50μl)に添加した。漸減濃度のX4向性HIV−1 NL4−3およびR5向性HIV−1 YU2のp24(Papkalla et al.;2002)で感染させ、総体積を100μlとした。x軸上の各ウイルス感染用量についてのペプチドを含まないコントロールサンプル中のRLU/sとして得た絶対感染性/β−ガラクトシダーゼ活性およびy軸上の各感染用量についての10μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を加えた場合、絶対感染性とウイルス感染に対するSEVIの活性化効果との間の直接的相関を決定することができる(図14)。絶対感染率が高いほど感染のSEVI媒介増強効果は低くなり、その逆も同様であった。この相関を、高い比率の細胞(すなわち、50%)が既にコントロールサンプル中で感染される場合、SEVIは感染率を100%に増強することができるだけであり、感染率の最大増加は2倍であるという事実によって部分的に説明することができる。対照的に、細胞を低MOIで感染させる場合(すなわち、コントロール細胞における感染率2%)、SEVIは、ウイルス感染を数倍に増強することができる。
【実施例13】
【0068】
実施例13−SEVIは、いくつかのX4、R5、および二重向性HIV−1変異形、分子HIVクローン、および異なるHIV−1サブタイプの感染を促進する。
いくつかのHIV−1変異形の感染に対する増強効果を検出するために、原線維PAP(253〜286)希釈物を、10μlの体積で、前日に播種した50μlのTZM−bl細胞に添加した。NL4−3 V3組換えウイルス(Papkalla et al.;2002)、その異なる共受容体の使用、および分子HIVクローン(NIH AIDS Research and Reference Programから得た)を使用した感染を、約0.01〜0.001のMOIを使用して行い、総体積を100μlとした。Gal Screen Kitを使用して、ウイルス感染を測定した。SEVIは、共受容体の選択またはサブタイプと無関係に、試験した全てのHIV−1変異形の感染を促進させた(図15)。0.4μg/ml SEVIの存在下で、 HIV−1 LAIまたは93br025−9は、ペプチドを含まないコントロール細胞よりも2.7倍または1.9倍の効率で細胞に感染した。より高い濃度では、SEVIは、P51−Sの場合、ペプチドを含まない感染コントロールと比較して、試験した全てのウイルスの感染をより刺激し、感染性は最大で3,045%であった。HIV−1のO群単離物(Dittmar et al.;1999)および種々のHIV−1サブタイプ(NIH AIDS research and reference program)に及ぼすSEVIの影響を分析するために、CEMX174 5.25 M7細胞を、異なる濃度のSEVIの存在下で異なるMOIにて感染させた。表2に示すように、SEVIは、試験した全てのHIV−1サブタイプ(A、B、C、D、F)の感染を好み、コントロール細胞と比較したルシフェラーゼ活性の最大x倍増加は、HIV−1 92UG029で156であった。HIV−1のO群単離物を試験した場合、類似の結果を得た(表3)。
【実施例14】
【0069】
実施例14−作用機構
どのようにしてSEVIがHIV−1感染を促進するのかを除外するために、HIV envタンパク質に基づいた細胞−細胞融合アッセイを行った(Pohlmann et al.;1999)。SIV−TatおよびNL4−3 Envをコードする発現プラスミドでトランスフェクションした293T細胞を、96ウェルディッシュに播種し、異なる濃度の原線維PAP(248〜286)とインキュベーションし、CEMX174 5.25 M7細胞と同時培養し、総体積を100μlとした。293T細胞の細胞膜で発現したHIV−1 エンベロープタンパク質は、CD4および共受容体陽性CEMX174 5.25 M7細胞との融合を誘導する。293T細胞およびCEMX174 5.25 M7細胞が融合した場合、293Tは、CEMX174 5.25 M7細胞の核に拡散してウイルスTatタンパク質を発現し、CEMX174 5.25 M7細胞コードLTR−lucおよびLTR−GFP遺伝子の発現をトランス活性化する。1日後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定およびUV顕微鏡法の実施によってHIV−1 Env媒介癒合率を検出した。SEVIがHIV−1感染を強く促進する濃度でさえも、融合活性の増加は認められなかった(10μg/mlおよび0μg/mlとの比較;図16)。UV顕微鏡法により、GFP発現細胞数は、全培養サンプルで類似していることが明らかとなった。たった約2%の細胞しかGFP陽性でないので、Envは過剰発現されなかった。
【実施例15】
【0070】
実施例15−SEVIはHIVと相互作用し、細胞結合を促進する。
SEVIはウイルス粒子を結合して、その感染性を増加させるか、HIV−1感染に対する標的細胞の感受性を増強することができる。これらの可能性を区別するために、本発明者らは、ウイルスストックを種々の濃度の原線維PAP(248〜286)と少容量で5分間プレインキュベーションし、その後にウイルス/SEVI混合物を細胞培養物に添加し、それにより、50倍に希釈した。比較のために、SEVIを細胞培養物に直接添加し、その後に同一のウイルス用量で感染させた。結果は、感染効率の増加がウイルスの存在下でのSEVIの濃度にちょうど依存することを証明していた(図17A、左)。短期間のプレインキュベーション後のHIV−1/SEVI混合物の希釈により、SEVI媒介感染性の増強規模は全く減少しなかった。感染培養物の最終ペプチド濃度に関して、ウイルス感染性は50倍に増強された(図17A、右)。これらのデータにより、SEVIはウイルス粒子と直接相互作用することが示唆され、5分のインキュベーション後に大部分の結合が完了することを意味する。
【0071】
どのようにしてSEVIがHIV−1感染を増強するのかをさらに評価するために、本発明者らは、TZM−bl細胞を、原線維PAP(248〜286)の存在下または非存在下でウイルス粒子と3時間インキュベーションした。その後、強い洗浄によって非結合ウイルスを除去し、細胞に会合したp24抗原の量を、ELISAによって決定した。SEVIは、標的細胞へのHIV−1の結合を、用量依存様式で8倍まで増加させた(図17B、左)。特に、SEVIはEnvを欠くHIV−1粒子の結合も増強するが、細胞会合した全p24レベルは、野生型HIV−1粒子を使用して測定したレベルの約1/30であった(図17B、右)。これらの結果により、細胞表面へのウイルス粒子の結合の促進によってSEVIがHIV−1感染を増強することが示唆される。
【実施例16】
【0072】
実施例16−ヒト精液由来のペプチド画分がHIV−1感染を促進する。
上記のように、各ドナーから得た2−3mlの精子を分析スケールで調製し、得られた精漿調製物を、活性の決定前に単一の逆相クロマトグラフィ工程によって分離した。クロマトグラフィ条件を至適化するために、合成SEVIペプチドの保持時間を決定し、精漿画分の分画および活性の決定について考慮した。
【0073】
1ml精子等価物(Sp−Eq)を含むペプチド画分を、100μl DMEM(ストック溶液10ml Sp−Eq/ml)に溶解した。ストック溶液を、96ウェルU型プレート中でDMEMにて5倍希釈し、10μlの希釈物を、前日に96ウェル平底プレートに播種した50μl TZM−blに添加した。その後、0.1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。3日後、Gal Screen kitを使用して、感染性を測定した。元の精液中に存在する濃度に相当する濃度(1ml Sp−Eq/ml)で、両ドナー由来の画分30〜34は、HIV−1感染を劇的に増強した(例えば、ドナーB由来の画分31は、コントロールサンプルと比較して、約11倍の感染性を誘導した)(図18)。際立って、いくつかのドナー由来のペプチド混合物の200倍希釈物でさえも、HIV−1感染を効率的に増強した(ドナーAを参照のこと)。まとめると、本発明者らの結果は、十分にHIV−1感染を促進させるために必要な範囲内の濃度の活性SEVIフラグメントがヒト精子中に存在することを強く示唆する。
【実施例17】
【0074】
実施例17−SEVIは、標的細胞のSIV、HIV−2、MuLV、および偽粒子感染を増強する。
レンチウイルスのような他のレトロウイルスに及ぼすSEVIの影響を分析するために、本発明者らは、HIV−2およびサル免疫不全ウイルス(SIV)を試験した。全ウイルスストックを、プロウイルスDNAでの293T細胞の一過性トランスフェクションによって生成した。HIV−2ROD10クローンをK.Strebel(Clavel et al.;1986)から入手し、アフリカミドリザル由来のSIVagm−tan1およびチンパンジー由来のSIVcpz−tan1を、B.Hahn(Birmingham,Alabama,USA)から購入した。原線維PAP(248〜286)は、HIV−2および異なるSIVの感染率を用量依存性に増強した(図19)。例えば、TZM−bl細胞を2μlのHIV−2で感染させた場合、50μg/ml SEVIにより、ウイルス感染が2倍に増加した(図19A)。SEVIはまた、TZM−bl細胞においてはSIVmacおよびSIVagm感染を好み(図19B)、CEMX174 5.25 M7細胞においてはSIVcpz感染を好んだ(図19C)。このデータは、SEVIが異なる細胞株におけるHIV−1、HIV−2、およびSIVのような異なる霊長類レンチウイルスの感染性を増強することを示す。レンチウイルス感染に対するSEVIの刺激効果がレンチウイルスEnvタンパク質に依存するかどうかを分析するために、本発明者らは、pBRHIV−1NL4.3およびpBRSIVmac239中のenv遺伝子をMuLV env遺伝子と置換して、細胞侵入を媒介するMuLV Envを発現する複製コンピテントHIV−1(MuLV−HIV)およびSIVmac239(MuLV−SIV)を生成した(Gundlach et al.;1998)。プールした原線維PAPフラグメントの存在下で、MuLV−HIVおよびMuLV−SIVの感染率は劇的に増加した(図20A)。次に、本発明者らは、MuLV エンベロープタンパク質を保有するMuLV粒子の感染に及ぼすSEVIの影響を分析した。したがって、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするenv欠失MuLV(pGC−sam−EN−Luc3;O.Wildner,Bochum,Germanyによって提供)を、pGC−sam−EN−Luc3およびpcDNA−MuLV−envでの293T細胞の同時トランスフェクションによってMuLV Envでシュードタイピングして、MLV−MLV粒子を得た。2〜50μg/mlの粒子の存在下で、MLVppは、HUH−7細胞(IPF Pharmaceuticals,Hannover,Germany由来)、PM1細胞、およびJurkat細胞(NIH AIDS research and reagent program)に、SEVIを含まないコントロール細胞よりも平均して10倍の効率で感染した(図20B)。これらのデータは、SEVIが遺伝子療法アプローチで広範に使用されるレンチウイルス(HIV、SIV)およびオンコウイルス(MuLV)の両方の感染率/形質導入率を増強することを証明する。さらに、本発明者らは、SEVIはまた、水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質を保有するenvインタクトまたはenv欠損HIV−1粒子の感染を増強することを示すことができた(図21A)。VSV−Gタンパク質が細胞への有効な侵入を可能にするので、レトロウイルス遺伝子療法のベクターをシュードタイピングするためにVSV−G(Cronin et al.;2005)が広範に使用されている。さらに、SEVIはまた、エボラスパイクタンパク質を含むHIV−1粒子の感染を好んだ(Baribaud et al.;2002;図21B)。
【0075】
表1.SEVIの存在下でのHIV−1の終点滴定(endpoint titration)。CEMX174 5.25 M7細胞を、96ウェルプレートに50μlの体積で播種し、10μlのSEVIを添加し、その後、40μlのHIV−1 NL4−3の10倍希釈物で感染させた。ルシフェラーゼアッセイキットを使用して、3、5、および7dpiで増殖感染を測定した。絶対ルシフェラーゼ活性が非感染細胞から得たものより100倍超高かった場合、細胞は増殖感染(p)されたと見なした。括弧内の数字は、感染7日後の三連の実験由来の増殖感染されたウェル数を示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表2.SEVIは、異なるHIV−1 Mサブタイプの感染を好む。50μl CEMX174 5.25 M7細胞を、10μl SEVI希釈物とインキュベーションし、その後、感染CEMX174 5.25 M7細胞の濾過上清由来の予備試験を行った低MOIのHIV−1M群単離物で感染させた。感染1、2、または3日後(列7を参照のこと)、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して感染率を決定した。ペプチドを含まないコントロール感染(100%)と比較した、それぞれ25および5μg/ml SEVIの存在下での感染率を示す。コントロールサンプル中の絶対ルシフェラーゼ活性(RLU/s)を、列4に示す。25μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を計算するために、ペプチドの存在下で得られた絶対RLU/s値を、ペプチドを含まない感染コントロール細胞由来のルシフェラーゼ活性で割った。データは、二連の感染に由来した。各行は、独立して由来するウイルスストックを使用した独立した実験を示す。R5:CCR5向性変異形、X4:CXCR4向性変異形。
【0078】
【表2】
【0079】
表3.SEVIは、HIV−1 O単離物の感染を好む。50μl CEMX174 5.25 M7細胞を、10μl SEVI希釈物とインキュベーションし、その後、感染PM1細胞(1639−13470)またはCEMX174 5.25 M7細胞(Ca9,MVP5180)の濾過上清由来の低MOIの予備試験したHIV−1 O群単離物で感染させた。感染1、2、または3日後(列6を参照のこと)、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して感染率を決定した。ペプチドを含まないコントロール感染(100%)と比較した、それぞれ25および5μg/ml SEVIの存在下での感染率を示す。コントロールサンプル中の絶対ルシフェラーゼ活性(RLU/s)を、列4に示す。25μg/ml SEVIの存在下での感染のx倍増加を計算するために、ペプチドの存在下で得られた絶対RLU/s値を、ペプチドを含まない感染コントロール細胞由来のルシフェラーゼ活性で割った。データは、単一の感染に由来した。各行は、独立して由来するウイルスストックを使用した独立した実験を示す。R5:CCR5向性変異形、X4:CXCR4向性変異形。
【0080】
【表3】
【0081】
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【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】精液からのSEVIの精製。詳細については、実施例1および2を参照のこと。A)9つの異なる緩衝液およびpH条件を使用した陽イオン交換クロマトグラフィによるヒト精液のバッチ分画(プール画分I〜IX)。B)A由来のプール画分7〜9を、RP−HPLCに供し、得られた画分を、抗ウイルス活性またはプロプルス活性についてアッセイした。P4−CCR5細胞を、ペプチドの存在下または非存在下でHIV−1 NL4−3に感染させた。ウイルス感染性を、Tropix のGal Screen Kitを使用した感染3日後の細胞抽出物中のβ−ガラクトシダーゼ活性の測定によって決定した。インレット(inlet)中のクロマトグラムの影をつけた領域は、活性画分を示す。C)pHプール7由来の画分29〜31を、RP−HPLCによってさらに精製し、得られた画分を、上記のように試験した。HIV−1促進画分43を、配列および質量分析を使用して分析した。記号:n、非感染細胞;+、ペプチドを添加せず。三連の感染由来の感染性の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。D)1C由来の画分43の質量分析および配列分析により、SEVIフラグメントPAP 248〜286の単離が明らかとなった。
【図2】精液由来のSEVIの精製。A)pHプール7をRP−HPLCに供し、得られた画分を、抗ウイルス活性またはプロウイルス活性についてアッセイした。P4−CCR5細胞を、ペプチドの存在下または非存在下でHIV−1 NL4−3に感染させた。ウイルス感染性を、Tropix のGal Screen Kitを使用した感染3日後の細胞抽出物中のβ−ガラクトシダーゼ活性の測定によって決定した。インレット中のクロマトグラムの影をつけた領域は、活性画分を示す。B)pHプール7由来の画分29〜31を、RP−HPLCによってさらに精製し、得られた画分を、上記のように試験した。HIV−1促進画分43を、配列および質量分析を使用して分析した。記号:n、非感染細胞;+、ペプチドを添加せず。三連の感染由来の感染性の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図3】SEVIは原線維を形成する。a.CEMX174 5.25 M7細胞のHIV−1感染に及ぼす活性化合成SEVI、透明な上清、および溶解したペレットの影響。b.一晩の震盪後のSEVIおよび対応する未処理ペプチドの電子顕微鏡写真。c.活性化および非活性化SEVIおよび5%〜95%の両方の混合物によるHIV−1感染の増強。
【図4】活性化SEVIペプチドは、原線維形成を示すコンゴーレッドで染色可能である。上および下のスライド:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液を、ポリリジンコーティングしたスライドに移し、コンゴーレッドによって染色した。
【図5】活性化SEVIペプチドは、偏光を使用した光学顕微鏡において典型的な原線維の複屈折効果(二重屈折)を示す。図4に示す同一のコンゴーレッド染色スライドを、顕微鏡法のために使用した:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液。
【図6】活性化SEVIペプチドは、蛍光顕微鏡法を使用して、色および強度の相違を顕著に示す。図4に示す同一のコンゴーレッド染色スライドを、顕微鏡法のために使用した:活性化沈殿SEVIペプチド(A)、非活性化可溶性SEVI(B)、およびアルブミン(C)の溶液。
【図7】いくつかの合成PAPフラグメントが、HIV−1感染を刺激する。A)凍結乾燥ペプチドを、FBSを含まないDMEMに再懸濁し、サーモミキサー(Eppendorf)を使用して、1,400rpmにて37℃で20時間インキュベーションした。4,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、異なる濃度のPAPフラグメントまたはコントロールペプチド(c1〜c3)とインキュベーションし、30pgのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。20時間後、ルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用して、ウイルス感染を検出した。三連の感染由来の感染度の平均値(±SD)を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。B)分析したペプチド配列を示す。
【図8】HIV−1感染に対するSEVIの刺激効果は、細胞型と無関係である。2000個の接着TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞および5000個のCEMX174 5.25 M7懸濁細胞を、50μlの体積で播種した。翌日、10μl SEVI希釈物を添加し、細胞を1ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させて総体積を100μlとした。感染2日後、TZM−bl細胞またはP4−CCR5細胞のウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して検出し、CEMX174 5.25 M7細胞のウイルス感染性をルシフェラーゼアッセイ試験を使用して検出した。三連の感染由来の感染の平均値を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図9】SEVIは、細胞生存度または内因性LTR活性に影響を及ぼさない。A)細胞傷害性アッセイ:4000個のTZM−bl細胞を、100μlの体積で96ウェル平底プレートに播種し、翌日、培地を90μlの新鮮な培地と置換し、SEVI希釈物を添加し、最終体積を100μlとした。3日後、10μlの5mg/ml MTT溶液を添加し、細胞を、37℃で4時間インキュベーションした。その後、凍結結晶を、1:1 エタノール/DMSOに溶解し、560/650nmのODを測定した。六連のサンプル由来のODの平均値±SDを、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。B)内因性LTR活性:ペプチドとの3日間のインキュベーション後、Gal Screen Kitを使用して、内因性LTR活性を測定した。6サンプル由来のβ−ガラクトシダーゼ活性の中央値±SDを示す。RLU/s:相対光単位/秒。
【図10】PAP由来ペプチドは、CEMX174 5.25 M7細胞のHIV−1感染を劇的に増強する。50μl RPMI(10%FBS)中に播種したLTR−lucおよびLTR−GFPをコードする20,000個のCEMX174 5.25 M7細胞を、10μlのペプチド希釈物とインキュベーションし、0.3ngのHIV−1 NL4−3のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。2日後に、UV顕微鏡法の実施(A)または細胞溶解物のルシフェラーゼ活性の測定(B)によってウイルス感染率を検出した。 RLU/s:相対光単位/秒。
【図11】SEVIは、共受容体向性と無関係に、PBMCにおけるHIV−1感染を増強する。5×105個のPHA/IL−2刺激末梢血単核細胞(PBMC)を、50μl RPMI(10%FBS、10ng/ml IL−2)中に播種した。10μlのペプチド希釈物を添加し、細胞を、10、1、および0.1ngのR5向性HIV−1 005−pf−103(A)(Papkalla et al.,2002)およびX4向性HIV−1 NL4−3 Luc(B)のp24抗原で感染させ、総体積を100μlとした。感染3日後、細胞をペレット化し、30μlルシフェラーゼ溶解緩衝液で溶解した。20μlの溶解物および100μlのルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を使用して、ルシフェラーゼ活性を検出した。RLU/s:相対光単位/秒。
【図12】SEVIは、マクロファージのHIV−1感染を促進する。5×105PBMCを、500μl RPMI(10%FBS、10ng/ml GM−CSF)を含む48ウェルディッシュに播種した。5日後、非接着細胞を慎重に洗浄し、GM−CSFを含む400μlの新鮮な培地を添加した。2日後に培地を除去し、130μlの新鮮な培地および20μlのペプチドを細胞に添加し、次いで、表示量のX4向性NL4−3 Luc(A)およびR5向性005pf103 Luc(B)で感染させ、総体積を200μlとした。3日後、ルシフェラーゼアッセイ試薬を使用して、ウイルス感染を検出した。三連の実験からデータを得、これを、平均値+/−SD.RLU/s:相対光単位/秒で示す。
【図13】SEVIはHIV−1の増殖感染の閾値を低下させる。A)前日に播種した4,000個のTZM−bl細胞を、50μl DMEM、10μlのペプチド希釈物中でインキュベートし、総体積100μlにてHIV−1 NL4−3(X4)およびHIV−1 NL4−3 YU−2(R5)で感染させた(Papkalla et al.,2002)。0.6pgおよび0.1pgのp24抗原は、40μlの15,625または78,125倍希釈ウイルスストック溶液に相当する。Gal Screen Kitを使用して、3日後にウイルス感染を検出した。三連の感染由来の中央値+/−SDを示す。n、非感染細胞;RLU/s:相対光単位/秒。B)5×105PHA/IL−2刺激PBMCを、96 ウェルディッシュ(50μl;10%FBS、10ng/ml IL−2)に播種し、10μlの20μg/mlストック溶液を添加し、次いで、表示のp24抗原量のNL4−3で感染させ、最終体積を100μlとした(最終SEVI濃度:2μg/ml)。感染1日後、細胞をペレット化してペプチドおよびウイルスを除去し、SEVIを含まない200μl RPMI(20%FBS、10ng/ml IL−2)に再懸濁した。規定の時点で上清を回収し、新たな培地を添加した。p24抗原ELISA(NIH AIDS program)を使用して、ウイルス複製をアッセイした。値を、二連の感染の中央値で示す。
【図14】SEVI媒介されたHIV−1感染の増加は絶対ウイルス感染性と相関する。10μlのSEVI希釈物を4000 TZM−bl細胞(50μl)に添加した。漸減濃度のX4向性HIV−1 NL4−3およびR5向性HIV−1 YU2のp24で感染させ、総体積を100μlとした。感染2日後、ウイルス感染性を、Gal Screen Kitを使用して測定した。ペプチドを含まない各ウイルス希釈の三連の感染由来の絶対β−ガラクトシダーゼ活性(RLU/s)の中央値(x軸)およびペプチドを含まない各コントロール感染と比較した10μg/ml SEVIの存在下でのウイルス感染のx倍増加(y軸)を示す。
【図15】SEVIは、X4、R5、および二重向性HIV−1変異形、およびいくつかの分子HIV−1クローンの感染を増強する。ペプチド希釈物を、10μlの体積で、前日に播種した50μlのTZM−bl細胞に添加した。NL4−3 V3組換えウイルス(Papkalla et al.;2002)および分子HIVクローンを使用した感染を、約0.01〜0.001のMOIを使用して行い、総体積を100μlとした。Gal Screen Kitを使用して、ウイルス感染を測定した。三連の感染由来の感染性の平均値を、ペプチドの非存在下で測定した平均値(100%)と比較して示す。
【図16】SEVIは、HIV−1 Env媒介細胞−細胞融合に影響を及ぼさない。SIV−TatおよびNL4−3 Envをコードする発現プラスミドでトランスフェクションした293T細胞を、96ウェルディッシュに播種し、異なる濃度のSEVIとインキュベーションし、CEMX174 5.25 M7細胞と同時培養し、総体積を100μlとした。1日後、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性の測定によってHIV−1 Env媒介癒合率を検出した。三連の感染由来の中央値+/−SDを示す。RLU/s:相対光単位/秒。
【図17】SEVIはHIV−1粒子と相互作用し、細胞へのその結合を増強する。A)SEVIのHIV−1との相互作用。SEVIを、少容量のウイルスストックとプレインキュベーションし、その後に細胞に添加するか(□)、SEVIおよびHIV−1ストックを細胞に個別に添加した(■)。ウイルスストックとのインキュベーション中のSEVI濃度を、左のパネルに示し、総細胞培養物に関連する濃度を右のパネルに示す。B)SEVIは、細胞への野生型およびEnv欠損ウイルス粒子の結合を増強する。u、非感染細胞。データを、平均値± s.d.(n=3)で示す。
【図18】SEVI含有ペプチド画分は、HIV−1感染を促進する。精液由来のペプチド/タンパク質混合物を、単一の逆相クロマトグラフィによって分離した。HIV−1 NL4−3でのでのTZM−bl細胞の感染を、元の精液中に存在する濃度に相当するペプチド濃度(1ml精子等価物/ml)およびその5倍希釈物で行った。感染2日後の2つの代表的な精子ドナー由来のタンパク質/タンパク質画分の存在下での三連の感染から得た平均値(±SD)を、ペプチドを含まない感染(100%)と比較して示す。コントロールサンプル中のNL4−3感染の絶対感染は、約70,000 RLU/であった。
【図19】SEVIは、HIV−2およびSIVの感染を好む。TZM−bl細胞を、表示の量のSEVIの存在下で、20および2μlのHIV−2 ROD10(A)または20μlのSIVagmtan1もしくはSIVmac239(B)で感染させた。2日後、Gal Screen assayを使用して感染性を決定した。感染2日後に、CEMX174 5.25 M7におけるSIVcpztan1感染性に及ぼすSEVIの影響を決定した(C)。角括弧内の値は、三連の実験由来のペプチドを含まないコントロールサンプル(0)の絶対感染率の中央値をRLU/sで示す。丸括弧内の数字は、ペプチドを含まないコントロールサンプル中の絶対レポーター酵素活性をRLU/sで示す。
【図20】SEVIは、マウス白血病ウイルスの感染を好む。A)MuLV env を発現する複製コンピテントHIV(MuLV−HIV)またはSIV(MuLV−SIV)に及ぼすSEVIの影響。10μl SEVI溶液を、50μl CEMX174 5.25 M7細胞に添加し、その後、40μlの293Tトランスフェクション由来のウイルスストックで感染させた。感染2日後に、ルシフェラーゼアッセイキットを使用して、感染性を決定した。B)MuLV Env でシュードタイピングしたMuLV粒子に及ぼすSEVIの影響。env欠損ルシフェラーゼ発現プロウイルスMLV DNA(pGC−sam−EN−Luc3;Oliver Wildner,Bochumから提供)およびMLV env発現プラスミドでの293T細胞の同時トランスフェクションによってウイルスストックを生成した。標的細胞(HUH7、Jurkat、PM1)を、50μlの体積で播種し、10μlのペプチドを添加した。その後、細胞を、40μlの非希釈ウイルスストックまたは10倍希釈のウイルスストックで感染させた。感染2日後および3日後に、細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を検出した。2つの独立した実験由来の各細胞株について得た中央値+/−SDで示す。
【図21】SEVIは、VSV−Gおよびエボラ糖タンパク質保有HIVの感染を増強する。偽型産生のために、293T細胞を、envインタクト(E+)またはenv欠損(E*)ルシフェラーゼ発現HIV−1プロウイルスDNA pBRNL4−3−Lucと共に、等量のエボラ糖タンパク質をコードする発現プラスミドEBOV−GPまたはVSVのGタンパク質をコードするpHIT−VSV−Gと同時トランスフェクションした。トランスフェクションから48時間後に細胞培養物の上清を採取し、孔サイズが0.4μmのフィルターに通し、等分し、−80℃で保存した。A)TZM−bl細胞を、表示量の原線維PAP(248〜286)の存在下で、0.5または0.05μlのVSV−GシュードタイピングE+およびE* HIV−Lucで感染させた。感染2日後にGal Screen Kitを使用して感染率を決定した。B)エボラgpシュードタイピング粒子に及ぼすSEVIの影響。293T細胞を、3×104/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、37°Cにてo/nでインキュベーションした。感染前に、細胞から培地を完全に除去し、2倍濃縮したペプチド(原線維PAP(248〜286)を含む50μl培地と置換した。ペプチド添加直後に、エボラシュードタイピングウイルスの50μl連続希釈物(1:非希釈;10:10倍希釈;50:50倍希釈)で感染した。感染12時間後、培地を置換し、形質導入から72時間後に製造者(Promega,WI,USA)によって推奨されるように市販のキットを使用してルシフェラーゼ活性を決定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:
R1−KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK−R2
(式中、
R1はH、YGIHKQ、GIHKQ、IHKQ、HKQ、KQ、またはQであり、
R2は、独立して、−COOH、LIMY、LIM、LI、Lであり、
但し、配列番号18を除く)
のペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号1〜12:
配列番号1(SEVI−1;PAP247〜286):
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号2(SEVI−2;PAP248〜286):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号3(SEVI−3;PAP249〜286):
IHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号4(SEVI−4;PAP250〜286):
HKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号5(SEVI−5;PAP251〜286):
KQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号6(SEVI−6;PAP252〜286):
QKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号7(SEVI−7;PAP253〜286):
KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号8(SEVI−8;PAP248〜285):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIM、
配列番号9(SEVI−9;PAP248〜284):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLI、
配列番号10(SEVI−10;PAP248〜283):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKL、
配列番号11(SEVI−11;PAP248〜282):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK、
配列番号12(SEVI−12;PAP249〜282):
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK
から選択されるアミノ配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
ヒト前立腺酸性ホスファターゼのアミノ酸残基240〜290の任意のフラグメントであるペプチドであって、該ペプチドが、配列番号18のペプチド(GGVLVNEILNHMKRATQI)を除いて、細胞のウイルス感染を促進する、ペプチド。
【請求項4】
少なくとも1つの以下の改変:
−N末端および/またはC末端のアミノ酸の欠失であって、ここで、ペプチドが少なくとも35アミノ酸からなる、欠失、
−N末端および/またはC末端の10アミノ酸までの付加、
−5アミノ酸までのアミノ酸交換、
−3アミノ酸までの配列内のアミノ酸挿入または欠失
を含み、
ここで、改変ペプチドが、細胞のウイルス感染を促進する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
少なくとも20アミノ酸を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記少なくとも1つの改変が、アシル化、アセチル化、非ペプチド高分子キャリア群への結合、アミド化、グリコシル化、細胞へのペプチドの取り込みが促進されるアダプタータンパク質への連結、酸化、疎水性基への連結、硫酸化、および/またはリン酸化から選択され、該修飾ペプチドが細胞のウイルス感染を促進する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
細胞のウイルス感染を促進する、レトロペプチド、インベルソペプチド、レトロ−インベルソペプチドであるペプチド、少なくとも1つのD型アミノ酸を含む変異形(variant)、ペプチド模倣物または請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドの多重合成によって得ることができるペプチド。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドの発現のための発現ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の発現ベクターを含む単離細胞。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドに対する抗体。
【請求項12】
配列番号18のアミノ酸配列を有するペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを含む薬物。
【請求項13】
遺伝子療法のためのワクチンまたはベクターをさらに含む、請求項12に記載の薬物。
【請求項14】
注射液、点滴薬、スプレー、錠剤、座剤、クリーム、軟膏、またはゲルの形態の請求項12または13に記載の薬物。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド,請求項11に記載の抗体,請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む診断薬。
【請求項16】
キャリアまたは支持体に共有結合した請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項17】
ウイルス感染、前立腺機能障害、癌腫、または患者のウイルス感染に対する感受性の治療または診断のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターの使用。
【請求項18】
前記ウイルス感染がレトロウイルスの1つである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記ウイルス感染が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、マウス白血病ウイルス(MuLV)、フォーミーウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス(HBVまたはHCV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、MuLV、またはエボラによるウイルス感染である、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
性交時に個体がウイルス、特にHIVに感染する確率を決定するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項21】
遺伝子療法のためにデザインしたウイルス、ウイルス粒子、ベクター、および/またはin vitroまたはin vivoでのウイルスベースのワクチンの細胞への侵入を促進するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項22】
ウイルスまたはウイルス粒子の単離のための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項23】
in vitroまたはin vivoで細胞への遺伝子療法のためにデザインしたウイルス、ウイルス粒子、またはベクターで細胞を感染する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で細胞をウイルス、ウイルス粒子、またはベクターとインキュベーションする工程を含む、方法。
【請求項24】
ウイルスまたはウイルス粒子を単離する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドをキャリアまたは支持体に付着させる工程、ウイルスまたはウイルス粒子が付着したペプチドに結合する条件下で該キャリアまたは支持体を溶液と接触させる工程、該溶液から該キャリアまたは支持体を分離する工程、任意に、結合したウイルスまたはウイルス粒子を洗浄および溶離する工程、ならびに、任意に、ウイルスおよびウイルス粒子の結合数を決定する工程を含む、方法。
【請求項25】
精子由来のペプチドのライブラリーおよび該ライブラリーの画分の調製を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの合成方法。
【請求項1】
アミノ酸配列:
R1−KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK−R2
(式中、
R1はH、YGIHKQ、GIHKQ、IHKQ、HKQ、KQ、またはQであり、
R2は、独立して、−COOH、LIMY、LIM、LI、Lであり、
但し、配列番号18を除く)
のペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、配列番号1〜12:
配列番号1(SEVI−1;PAP247〜286):
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号2(SEVI−2;PAP248〜286):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号3(SEVI−3;PAP249〜286):
IHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号4(SEVI−4;PAP250〜286):
HKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号5(SEVI−5;PAP251〜286):
KQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号6(SEVI−6;PAP252〜286):
QKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号7(SEVI−7;PAP253〜286):
KEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIMY、
配列番号8(SEVI−8;PAP248〜285):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLIM、
配列番号9(SEVI−9;PAP248〜284):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKLI、
配列番号10(SEVI−10;PAP248〜283):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKKL、
配列番号11(SEVI−11;PAP248〜282):
GIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK、
配列番号12(SEVI−12;PAP249〜282):
YGIHKQKEKSRLQGGVLVNEILNHMKRATQIPSYKK
から選択されるアミノ配列を有する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
ヒト前立腺酸性ホスファターゼのアミノ酸残基240〜290の任意のフラグメントであるペプチドであって、該ペプチドが、配列番号18のペプチド(GGVLVNEILNHMKRATQI)を除いて、細胞のウイルス感染を促進する、ペプチド。
【請求項4】
少なくとも1つの以下の改変:
−N末端および/またはC末端のアミノ酸の欠失であって、ここで、ペプチドが少なくとも35アミノ酸からなる、欠失、
−N末端および/またはC末端の10アミノ酸までの付加、
−5アミノ酸までのアミノ酸交換、
−3アミノ酸までの配列内のアミノ酸挿入または欠失
を含み、
ここで、改変ペプチドが、細胞のウイルス感染を促進する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
少なくとも20アミノ酸を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
前記少なくとも1つの改変が、アシル化、アセチル化、非ペプチド高分子キャリア群への結合、アミド化、グリコシル化、細胞へのペプチドの取り込みが促進されるアダプタータンパク質への連結、酸化、疎水性基への連結、硫酸化、および/またはリン酸化から選択され、該修飾ペプチドが細胞のウイルス感染を促進する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
細胞のウイルス感染を促進する、レトロペプチド、インベルソペプチド、レトロ−インベルソペプチドであるペプチド、少なくとも1つのD型アミノ酸を含む変異形(variant)、ペプチド模倣物または請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドの多重合成によって得ることができるペプチド。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドの発現のための発現ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の発現ベクターを含む単離細胞。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドに対する抗体。
【請求項12】
配列番号18のアミノ酸配列を有するペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドを含む薬物。
【請求項13】
遺伝子療法のためのワクチンまたはベクターをさらに含む、請求項12に記載の薬物。
【請求項14】
注射液、点滴薬、スプレー、錠剤、座剤、クリーム、軟膏、またはゲルの形態の請求項12または13に記載の薬物。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド,請求項11に記載の抗体,請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む診断薬。
【請求項16】
キャリアまたは支持体に共有結合した請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項17】
ウイルス感染、前立腺機能障害、癌腫、または患者のウイルス感染に対する感受性の治療または診断のための、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチド、請求項11に記載の抗体、請求項8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターの使用。
【請求項18】
前記ウイルス感染がレトロウイルスの1つである、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記ウイルス感染が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、マウス白血病ウイルス(MuLV)、フォーミーウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルス(HBVまたはHCV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、MuLV、またはエボラによるウイルス感染である、請求項17または18に記載の使用。
【請求項20】
性交時に個体がウイルス、特にHIVに感染する確率を決定するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項21】
遺伝子療法のためにデザインしたウイルス、ウイルス粒子、ベクター、および/またはin vitroまたはin vivoでのウイルスベースのワクチンの細胞への侵入を促進するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項22】
ウイルスまたはウイルス粒子の単離のための請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの使用。
【請求項23】
in vitroまたはin vivoで細胞への遺伝子療法のためにデザインしたウイルス、ウイルス粒子、またはベクターで細胞を感染する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの存在下で細胞をウイルス、ウイルス粒子、またはベクターとインキュベーションする工程を含む、方法。
【請求項24】
ウイルスまたはウイルス粒子を単離する方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドをキャリアまたは支持体に付着させる工程、ウイルスまたはウイルス粒子が付着したペプチドに結合する条件下で該キャリアまたは支持体を溶液と接触させる工程、該溶液から該キャリアまたは支持体を分離する工程、任意に、結合したウイルスまたはウイルス粒子を洗浄および溶離する工程、ならびに、任意に、ウイルスおよびウイルス粒子の結合数を決定する工程を含む、方法。
【請求項25】
精子由来のペプチドのライブラリーおよび該ライブラリーの画分の調製を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドの合成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2009−524420(P2009−524420A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551787(P2008−551787)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050727
【国際公開番号】WO2007/085630
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508223871)ヴィロ ファルマソイティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050727
【国際公開番号】WO2007/085630
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508223871)ヴィロ ファルマソイティカルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】
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