説明

ウインドワイパのワイパブレード用の保護レール及び保護レールを製造する方法

本発明は、ウインドワイパのワイパブレード用の保護レールであって、ワイパブレード(10)のワイパラバーリップ(16)を保護するためにベース体(34)が設けられていて、保護すべきワイパブレード(10)に保護レール(32)を解離可能に取り付けるために固定エレメント(58,90)が設けられており、さらにベース体(34)にワイパリップ(36)が形成されている形式のものに関する。このような形式の保護レールにおいて本発明の構成では、ワイパリップ(36)が少なくともその表面領域に、滑剤を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念部に記載された、ウインドワイパのワイパブレード用の保護レール及び該保護レールを製造する方法並びに該保護レールの使用に関する。
【0002】
従来技術
特に新車を納入する場合には、取り付けられたワイパブレードのワイパストリップを汚れもしくは摩耗から保護することが必要である。このような保護は特に、ワイパストリップに保護レールを取り付けることによって行われ、この保護レールは特に、機械的な損傷に対してワイパブレードのワイパリップを保護する。
【0003】
開示されていないDE202005020650に記載された保護レールを備えたワイパブレードでは、保護レールのベース体がV字形の横断面形状をしていて、ワイパストリップのワイパリップを有しており、この場合内方に向かって張り出したウェブがワイパストリップの長手方向溝に係合している。ベース体の両側壁がV字形に収斂する保護レールの縁部には、外側にワイパリップが取り付けられている。このワイパリップによって保護レールは、車両ガラスを乾燥及びクリーニングすることができる。しかしながら保護レールはその大きな曲げ抵抗モーメントに基づいて制限された範囲でしか、十分に良好な払拭像を得ることができない。このような欠点は、次のことによってさらに増大される。すなわちこの場合保護レールのワイパリップは、ウインドワイパワイパブレードのワイパリップとは異なり、払拭運動の反転ポイントにおいて、旋回ウェブの存在しないことに基づいて、僅かな傾倒運動しか実施することができない。
【0004】
また、保護ストリップに固定された保護レールの摩擦係数は大きな値になり、これにより、乾燥運転時に保護レールが保護されるワイパブレードから回動により外れたり、ワイパモータが高められたトルクをもはやもたらすことができなかったり、ワイパ系が動かなくなったりする。
【0005】
発明の課題
ゆえに本発明の課題は、ガラス表面の払拭時に、十分に良好な払拭像を示すことができる、ウインドワイパのワイパブレード用の保護レールを提供することである。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴部記載のように構成された保護レールによって、又は保護レールを製造する方法によって有利に解決される。
【0007】
本発明による、ウインドワイパのワイパブレード用の保護レールでは、ワイパブレードのワイパラバーリップを保護するためにベース体が設けられていて、該ベース体がほぼV字形の横断面を有しており、保護すべきワイパブレードに保護レールを解離可能に取り付けるために固定エレメントが設けられており、さらにベース体にワイパリップが形成されている形式のものにおいて、ワイパリップが少なくともその表面領域に、滑剤を備えている。このように構成されていることによって、保護レールのワイパリップと払拭される表面との間における摩擦を有利に減じることができ、保護レールの払拭品質を著しく改善することができる。
【0008】
本発明による保護レールの別の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明の有利な構成では、保護レールのワイパリップが、例えば熱可塑性材料又はラバーのようなエラストマから形成されており、ワイパリップが表面において少なくとも部分的に、滑剤として滑りラッカを備えていて、該滑りラッカが固形潤滑剤と有機結合剤とを有している。択一的に、ワイパリップが滑剤として、そのエラストママトリックスに含有された固形潤滑剤粒子を有している構成も可能である。両方の場合において、滑剤の使用によって、保護レールのワイパリップと払拭される表面との間における摩擦を減じることができる。エラストマ材料から成るワイパリップの構成によって、ワイパリップの可撓性が高められ、払拭像をさらに改善することができる。
【0010】
滑剤がワイパリップのエラストママトリックスに添加される場合、場合によってはベース体へのワイパリップの結合作用が減じられてしまうことがある。このことを有利に補償するために、ワイパリップをベース体に付加的に機械式に固定することが可能である。このことは例えば、ワイパリップの、ベース体に向けられた側にフランジを形成し、該フランジがベース体の溝に係合するようにすることによって、達成される。
【0011】
保護レールの製造は、保護レールのベース体とワイパリップとを一緒に、二成分射出成形又は同時押出し成形によって製造して、互いに結合させることによって、有利に行うことができる。それというのは、このようにすると、保護レールの製造を安価に実施することができ、しかも保護レールのベース体とワイパリップとの堅固な結合が保証されるからである。
【0012】
さらに、保護レールに設けられるワイパリップを、滑剤を含有する滑りラッカの塗布前に、ワイパリップのエラストマ表面を前処理することができる。このような前処理は例えば火炎によって又は、プラズマ雰囲気やコロナ放電の作用によって行うことができる。このような前処理の後で滑りラッカを塗布すると、滑りラッカ層とワイパラバーのエラストママトリックスとを確実に結合することができる。
【0013】
保護レールは、車両の搬送中又は保管中において車両のワイパブレードを保護するのに有利に適している。
【0014】
実施例
次に図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による保護レールの第1実施例を断面して示す斜視図である。
【図2】本発明による保護レールの第2実施例を断面して示す斜視図である。
【図3】図2に示された保護レールの変化実施例を示す断面図である。
【0016】
図1には、本発明の1実施形態の基本的な構造が示されている。ワイパブレード10はワイパストリップ14を有しており、このワイパストリップ14は、旋回ウェブ18を介してヘッドストリップ20と結合されたワイパラバーリップ16を備えている。ヘッドストリップ20は、互いに反対側に位置する2つの長手方向溝24を有しており、両長手方向溝24はウェブ22を形成していて、長手方向溝24内にはそれぞれ、バー形状もしくはビーム形状をした扁平な弾性の保持エレメント26が挿入されている。この保持エレメント26は長手方向において、ワイパブレード10がワイパアーム(図示せず)の圧着力下で適宜な圧力分布をもって車両ガラスと接触するように、予め曲げられている。
【0017】
ワイパブレード10はさらにスポイラ12を有しており、このスポイラ12は保持エレメント26に向かって、内方に向けられた2つの長手方向溝28を有しており、この両長手方向溝28内には保持エレメント26が係合し、これによって保持エレメント26はスポイラ12をワイパブレード10に保持している。ワイパラバーリップ16に向かってスポイラ12の長手方向溝28は、内側を向いたリブ30によって画成される。
【0018】
保護レール32はV字形横断面を有するそのベース体34で、ワイパリップ16とヘッドストリップ20の隣接する部分とを取り囲んでおり、その結果ワイパストリップ14は一方では保護レール32によってかつ他方ではスポイラ12によって、周囲環境からの影響に対して保護されている。保護レール32は新車の保管前に取り付けられ、顧客への納車直前に外される。
【0019】
保護レール32はそのV字形に開くベース体34の縁部に、外方に向かって延びるフランジ54を有しており、このフランジ54には保持成形部58が続いており、この保持成形部58は脚60で、保持エレメント26の領域においてスポイラ12の側方に突出する部分を、取り囲んでいる。保護レール32を容易な取付けを目的としてスポイラ12に良好にクリップ結合できるようにするために、脚60はその自由な長手方向縁部に条片62を有しており、この条片62はスポイラ12の外輪郭から離れる方向に曲げられている。この条片62は、組み付けられた状態において脚60とフランジ54との間でスポイラ12に保持される保護レール32の取付け・取外しを容易にする。
【0020】
クリーニング及び乾燥機能を加えるために、保護レール32はワイパリップ36を有している。このようになっていると、ワイパリップ16又は車両ガラスを損傷することなしに、ウインドワイパを納車の前に操作することができる。この場合ワイパリップ36は例えば熱可塑性のエラストマ又はゴム材料から成っている。保護レール32の製造中にベース体34及びワイパリップ36は例えば、同時押出し成形又は2成分射出成形によって一緒に形成及び硬化される。
【0021】
保護レール32のワイパリップ36はしかしながら、ワイパブレード10のワイパラバーリップ16とは異なった払拭特性を示す。その理由は、ワイパリップ36は直接かつ全面的に保護レール32のベース体34に配置されているのに対して、ワイパラバーリップ16は旋回ウェブ18を介してヘッド部分20とフレキシブルに結合されているからである。これによって、ワイパラバーリップ16は払拭運動中に、払拭される表面に対して傾けられて運動し、単にワイパラバーリップ16の外縁部だけで、払拭される表面に接触する。これとは異なり、ワイパリップ36はその払拭運動中に払拭される表面に対して程度の差こそあれ全面的に、ベース体34とは反対側のワイパ面で、払拭される表面に接触している。従って、ワイパリップ36と払拭される表面との間において強い付着が生じる。
【0022】
発生する強い摩擦係数を、ワイパリップ36の受入可能な払拭像(Wischbild)が得られるほどに、減じるために、ワイパリップ36は少なくとも、払拭される表面と接触する領域に、潤滑剤を備えている。これは例えば、ワイパリップ36の外輪郭に滑りラッカ(Gleitlack)を塗布することによって行うことができる。
【0023】
被覆層37は単にワイパリップ36の、払拭される表面に向けられた側にだけ設けられている。しかしながらまた択一的に、ワイパリップ36のほぼ垂直に方向付けられた側壁に、滑りラッカ製の被覆層37を部分的に又は全面的に設けることも可能である。
【0024】
この場合滑りラッカは少なくとも1つの固形潤滑剤と少なくとも1つの有機結合剤とを有している。固形潤滑剤としては例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製及びPE製又はシリコン製の粒子が挙げられる。滑りラッカは、水ベースのラッカとして、又は有機溶剤をベースにしたラッカとして構成されていることができる。この場合、一成分ラッカ系も二成分ラッカ系のいずれを使用することも可能である。滑りラッカは液体状態で、既に完成したワイパリップ36のエラストマ成形体に、例えば吹付け、浸漬、ブラシ塗り、ローラ塗り又は刷毛塗りによって塗布され、乾燥によって硬化される。ワイパリップ36における滑りラッカの接着強度もしくは付着性を改善するために、ワイパリップ36は滑りラッカの塗布前に活性化されることができる。これは例えば火炎処理によって、又は適宜なプラズマ又はコロナ放電による処理によって行うことができる。
【0025】
択一的に、ワイパリップ36の材料マトリックスに、乾燥潤滑剤としての滑剤を少なくともワイパリップ36の、払拭される表面に向けられた領域において点火することも可能であり、このようすると、ワイパリップ36の表面近傍の領域に位置する乾燥潤滑剤粒子によって、同様に、ワイパリップ36の摩擦係数が減じられる。乾燥潤滑剤としては、この場合においても、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びPE又はシリコンから成る粒子が適している。
【0026】
図2には、本発明の第2実施形態による保護レールが示されている。この場合、図1におけると同じ構成部材は同一符号で示されている。
【0027】
図2に示された実施形態による保護レール32は特に単純に構成され、かつ安価である。この保護レール32はそのベース体34に、内方に向かって張り出したリブ90を有しており、これらのリブ90は旋回ウェブ18の側部における長手方向溝92に係合している。保護レール32の、リブ90を越えてスポイラ12に向かって突出している部分は、保持エレメント26に支持されており、その結果ワイパストリップ14はその周囲を周囲環境に対して保護されている。
【0028】
特に、ワイパリップ36の材料マトリックスが乾式潤滑剤を有している場合には、ワイパリップ36が付加的な機械式の固定装置を用いて保護レール32のベース体34に固定されていると有利である。そのためにワイパリップ36は、図3に示されているように、フランジ39を有しており、これらのフランジ39は、ベース体34の対応する溝41に係合している。ベース体34におけるワイパリップ36のこのような機械式の固定は、図1に示された保護レール32の実施形態においても設けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドワイパのワイパブレード用の保護レールであって、ワイパブレード(10)のワイパラバーリップ(16)を保護するためにベース体(34)が設けられていて、該ベース体(34)がほぼV字形の横断面を有しており、保護すべきワイパブレード(10)に保護レール(32)を解離可能に取り付けるために固定エレメント(58,90)が設けられており、さらにベース体(34)にワイパリップ(36)が形成されている形式のものにおいて、ワイパリップ(36)が少なくともその表面領域に、滑剤を備えていることを特徴とする、ウインドワイパのワイパブレード用の保護レール。
【請求項2】
ワイパリップ(36)が熱可塑性材料又はラバーから形成されている、請求項1記載の保護レール。
【請求項3】
ワイパリップ(36)が表面において少なくとも部分的に、滑剤として滑りラッカを備えていて、該滑りラッカが固形潤滑剤と有機結合剤とを有している、請求項1又は2記載の保護レール。
【請求項4】
ワイパリップ(36)が滑剤として、そのエラストママトリックスに含有された固形潤滑剤粒子を有している、請求項1記載の保護レール。
【請求項5】
固形潤滑剤がPTFE又はシリコンである、請求項3又は4記載の保護レール。
【請求項6】
ワイパリップ(36)が払拭される表面に接触する領域にだけ、滑剤を備えている、請求項1から5までのいずれか1項記載の保護レール。
【請求項7】
ワイパリップ(36)が少なくとも1つのフランジ(39)を有しており、該フランジ(39)がベース体(34)におけるワイパリップ(36)の機械式の固定のために、ベース体(34)の溝(41)に係合している、請求項1から6までのいずれか1項記載の保護レール。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の保護レールを製造する方法であって、保護レール(32)のワイパリップ(36)に滑剤を設けることを特徴とする、保護レールを製造する方法。
【請求項9】
保護レール(32)のベース体(34)をワイパリップ(36)と一緒に、二成分射出成形又は同時押出し成形によって製造して、互いに結合させる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ワイパリップ(36)の表面に、火炎による表面処理又は、プラズマ雰囲気又はコロナ放電の作用による表面処理を施し、次いで滑剤として滑りラッカを塗布する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
ワイパリップ(36)の材料に、乾式潤滑剤である滑剤を添加する、請求項8又は9記載の方法。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項記載の保護レールの使用であって、保護レールを、車両の搬送中又は保管中において車両のワイパブレードを保護するために使用すること特徴とする、保護レールの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−545490(P2009−545490A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523220(P2009−523220)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055806
【国際公開番号】WO2008/015052
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】