説明

ウェハチャックプレートの加工方法及び装置

【課題】 工具の切削力によるウェハチャックプレートの撓みや共振(ビビリ振動)を抑え、ウェハチャックプレートの平面度が高精度にし、ウェハチャックプレートの加工精度を向上させる。
【解決手段】 ウェハチャックプレートの裏面側のチャック面を加工する工具の切り込み方向に対向するチャックの裏面に流体を吹き付け、チャック面を工具により加工するウェハチャックプレートの加工方法及びそのための装置において、ウェハチャックプレートは回転しながら、そのチャック表面の周縁部が工具により加工される。工具の切り込み方向に対向するチャックの裏面に流体圧縮空気が吹き付けられる。そのことで、工具の切削力によるウェハチャックプレートの撓みや共振(ビビリ振動)を抑え、ウェハチャックプレートの平面度を高精度にし、ウェハチャックプレートの加工精度も向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハチャックプレートの加工方法及び装置、例えば、ウェハを真空式または静電式にチャックするためのウェハチャックプレートのチャック面を研削加工または切削加工する、ウェハチャックプレートの加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウェハを真空式または静電式にチャックするためにウェハチャックプレートが用いられている。チェックの表面には、凹凸の溝が形成され、そこに空気圧または静電力等でウェハが保持される(例えば、特許文献1の図1、図8、図11参照)。
【0003】
また、チャックの表面に凹凸の溝を形成するため、例えば特許文献2の第3−B図に記載されているように、支持板上に形成された絶縁膜の表面に凹凸をつける。このために回転砥石または切削工具を用いていた。
【0004】
さらに、本願の図2に示すように、ウェハチャックプレート20の中心部をスピンドルの回転軸21に取り付け、ウェハチャックプレート20の裏面20aにゴムシート22を円盤状またはドーナツ状に貼り付けたり、ウェハチャックプレート20の外周部20bに錘23を取り付けたり、ウェハチャックプレート20の裏面にローラ(図示せず)で押圧したりする。そして、このような状態にして、工具24によって、チャック表面20cを加工していた。
【特許文献1】特開2003−324143号公報
【特許文献2】特開昭63−95644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウェハチャックプレートは薄くて大口径であるため、そのウェハチャックプレートの周縁部を加工する場合、工具の切込みによる切削反力に伴い、ウェハチャックプレートは押し戻される方向に撓みを起こしてしまう虞があった。
【0006】
さらに、工具の送りに伴ってウェハチャックプレートの共振(ビビリ振動)が発生することがある。その場合、精度の高い加工が困難であった。
【0007】
従来のように、ウェハチャックプレートの裏面20aに円盤状またはドーナツ状にゴムシート22を貼り付けたり、外周部20bに錘23を取り付けたりしても、見かけ上の剛性は高められてはいても、共振(ビビリ振動)を防ぐことはできなかった。
【0008】
本発明は、工具の切削力によるウェハチャックプレートの撓みや共振(ビビリ振動)を抑え、ウェハチャックプレートの平面度の精度を高め、ウェハチャックプレートの加工精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ウェハチャックプレートのチャック面を加工する工具の切り込み方向に対向するチャックの裏面に流体を吹き付け、チャック面を工具により加工するウェハチャックプレートの加工方法及びそのための装置を提供するものである。
【0010】
本発明の解決手段を例示すると次のとおりである。
【0011】
(1)ウェハチャックプレートのチャック面を加工する方法において、
ウェハチャックプレートの表面側のチャック面を加工する工具の切り込み方向に対向するウェハチャックプレートの裏面に流体を吹き付けながら、チャック面を工具により加工することを特徴とする、ウェハチャックプレートの加工方法。
【0012】
(2)前述のウェハチャックプレートの加工方法において、
ウェハチャックプレートは回転しながら工具により加工されることを特徴とするウェハチャックプレートの加工方法。
【0013】
(3)前述のウェハチャックプレートの加工方法において、
前記流体は圧縮空気であることを特徴とするウェハチャックプレートの加工方法。
【0014】
(4)ウェハチャックプレートのチャック面を加工する装置において、
ウェハチャックプレートの表面側のチャック面を加工する工具と、
工具の切り込み方向に対向するウェハチャックプレートの裏面に流体を吹き付けるための流体供給部と
を有することを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。
【0015】
(5)前述のウェハチャックプレートの加工装置において、
ウェハチャックプレートの裏面の中央部がスピンドルの回転軸に取り付けられ、その回転軸の回転によりウェハチャックプレートが回転することを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。
【0016】
(6)前述のウェハチャックプレートの加工装置において、
前記流体は圧縮空気であることを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、工具の切削力によるウェハチャックプレートの撓みやビビリ振動が抑えられ、ワークであるウェハチャックプレートの平面度の精度が高められ、その結果、ウェハチャックプレートの加工精度を高めることができる。
【0018】
また、圧縮空気の圧力や面積を調整するだけで、加工条件の違いによる加工反力の変化に柔軟に対応することができる。
【0019】
さらに、ウェハチャックプレートに非接触でウェハチャックプレートの撓みやビビリ振動を抑えることができる。
【0020】
また、非接触であるので、チャック裏面が汚れたり傷つけられず、ゴムシートや錘を取り付けたりする手間や作業が不要となり、作業効率が上がり、ウェハチャックプレートの加工の段取りが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の好適な1つの実施例を示す。
【0022】
図1に示すように、ウェハチャックプレート10の裏面側の中央部10aをスピンドルの回転軸11に取り付ける。この場合、ネジ止めで保持してもいいし、真空チャックで保持してもよい。
【0023】
加工工具12によりウェハチャックプレート10の周縁部10bの表面側のチャック面10cを加工する。このとき、加工工具24の切り込み方向に対向するウェハチャックプレート10の裏面10dに対して、エアーノズル13から圧縮空気14を吹き付ける。
【0024】
エアーノズル13には、図示しない供給装置により圧縮空気が供給されるようになっている。
【0025】
ウェハチャックプレート10は回転しながら、そのウェハチャックプレート10の周縁部10bの表面側のチャック面10cが工具12により加工される。そのとき、工具12の切り込み方向に対向するウェハチャックプレート10の裏面10dに圧縮空気14が吹き付けられることで、工具12の切削力によるウェハチャックプレート10の撓みや共振(ビビリ振動)を抑えることができる。その結果、ウェハチャックプレート10の平面度が高精度になり、さらに、ウェハチャックプレート10の加工精度も向上する。
【0026】
また、圧縮空気14の圧力や吹き付け面積を調整するだけで、加工条件の違いによる加工反力の変化に柔軟に対応することができる。
【0027】
さらに、加工時に、エアノズル13は、ウェハチャックプレート10に非接触であるが、ウェハチャックプレート10の撓みやビビリ振動が抑えられる。そのため、ゴムシートや錘を取り付けたりする手間や作業が不要となり、作業効率が上がる。しかも、ウェハチャックプレート10の加工の段取りが容易である。
【0028】
なお、圧縮空気以外にも、洗浄液をウェハチャックプレート10の裏面10dに噴射させ、圧力を与えると共に、チャック裏面を洗浄することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るウェハチャックプレートの加工装置の一例を示す。
【図2】従来のウェハチャックプレートの加工装置を示す。
【符号の説明】
【0030】
10、20 ウェハチャックプレート
10a ウェハチャックプレートの中央部
10b ウェハチャックプレートの周縁部
10c ウェハチャックプレートの表面側のチェック面
10d ウェハチャックプレートの裏面
11、21 スピンドルの回転軸
12、24 加工工具
13 エアーノズル
14 圧縮空気
20a ウェハチャックプレートの裏面
20b ウェハチャックプレートの外周部
20c チェック面
22 ゴムシート
23 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハチャックプレートのチャック面を加工する方法において、
ウェハチャックプレートの表面側のチャック面を加工する工具の切り込み方向に対向するウェハチャックプレートの裏面に流体を吹き付けながら、チャック面を工具により加工することを特徴とする、ウェハチャックプレートの加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハチャックプレートの加工方法において、
ウェハチャックプレートは回転しながら工具により加工されることを特徴とするウェハチャックプレートの加工方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウェハチャックプレートの加工方法において、
前記流体は圧縮空気であることを特徴とするウェハチャックプレートの加工方法。
【請求項4】
ウェハチャックプレートのチャック面を加工する装置において、
ウェハチャックプレートの表面側のチャック面を加工する工具と、
工具の切り込み方向に対向するウェハチャックプレートの裏面に流体を吹き付けるための流体供給部と
を有することを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウェハチャックプレートの加工装置において、
ウェハチャックプレートの裏面の中央部がスピンドルの回転軸に取り付けられ、その回転軸の回転によりウェハチャックプレートが回転することを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載のウェハチャックプレートの加工装置において、
前記流体は圧縮空気であることを特徴とするウェハチャックプレートの加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−80440(P2008−80440A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262844(P2006−262844)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】