ウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品
【課題】加工中のウェーハの割れや欠け等の破損を防ぐことができるウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】ウェーハの加工方法は、ウェーハの主面に枠状の肉厚部12を形成する肉厚部形成工程と、肉厚部12で囲まれた領域である肉薄部14を研磨する研磨工程と、を含む。
【解決手段】ウェーハの加工方法は、ウェーハの主面に枠状の肉厚部12を形成する肉厚部形成工程と、肉厚部12で囲まれた領域である肉薄部14を研磨する研磨工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、破損を防止して研磨加工を行うウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子や半導体等の電子部品は大型のウェーハから製造される。当該ウェーハは、研磨を行うことにより所望の厚さにした後に、電子部品への加工が行われる。ウェーハ研磨の際にウェーハの割れや欠け等の破損を防止するために、ウェーハ研磨の前に、ウェーハ外周部の面取り加工が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、テーブル上でウェーハを回転させ、回転している砥石の溝にウェーハを押し当て、当該ウェーハと砥石が接触する研削用溝底部へ研削水を供給しながら、ウェーハの面取り加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような研削加工方式では、研削加工中に局所的な力がウェーハに掛かるため、ウェーハが薄板の場合には、面取り加工することは困難である。
また、研削加工方式では、ウェーハを1つずつ加工処理するいわゆる枚葉式にならざるを得ないため、効率が悪く、コストが掛かる。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、加工中のウェーハの割れや欠け等の破損を防ぐことができるウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
また、効率的に加工することを可能とする電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成する肉厚部形成工程と、前記主面が前記肉厚部で囲まれた肉薄部を研磨する研磨工程と、を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
本発明によれば、ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成した後、肉厚部で囲まれた領域を研磨するようにしたため、ウェーハ加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0007】
[適用例2]前記研磨工程において、スェード系のパッドを用いて研磨することを特徴とする適用例1に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、スェード系のパッドを用いて研磨することで倣い加工が可能となるため、肉厚部が設けられていたとしても、肉厚部で囲まれた領域をムラなく研磨することができる。
【0008】
[適用例3]前記肉厚部形成工程において、エッチングで前記肉厚部を形成することを特徴とする適用例1又は2に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、エッチングで前記肉厚部を形成することができるため、複数のウェーハに一括で肉厚部を形成することができ、効率的にウェーハの加工を行うことができる。
【0009】
[適用例4]前記肉厚部形成工程において、前記ウェーハの周縁部に前記肉厚部を設けることを特徴とする適用例1から3の何れか1例に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、肉厚部をウェーハの周縁部に設けることで、ウェーハを補強することができ、加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0010】
[適用例5]前記肉厚部形成工程において、前記周縁部に設けられた肉厚部と一体となっている肉厚部を、前記ウェーハの主面の内側にも設けることを特徴とする適用例4に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、ウェーハの周縁部にのみ肉厚部を設けるのに比べて、ウェーハをさらに補強することができ、ウェーハ加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0011】
[適用例6]前記研磨工程において、前記肉厚部の少なくとも一部が残るように研磨することを特徴とする適用例1から5の何れか1例に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、研磨加工が終了した後のウェーハを用いて電子部品等を製造する場合に、当該製造工程においてウェーハが破損するのを防ぐことができ、ウェーハの扱いが容易となる。
【0012】
[適用例7]適用例1に記載の加工方法で加工されたウェーハの前記肉厚部で囲まれた肉薄部に、電子部品の素子の外形を形成する外形形成工程と、前記素子を前記肉厚部から分離する分離工程と、前記素子をパッケージ内にマウントするマウント工程とを含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
本発明によれば、研磨したウェーハに肉厚部を残しておくことで、研磨したウェーハから電子部品を製造する場合にも、ウェーハが破損するのを防止することができ、ウェーハの扱いが容易となる。
【0013】
[適用例8]適用例7に記載の製造方法で製造された電子部品。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】ステップS1〜S7までの工程を経ることにより製造されたウェーハの平面図である。
【図3】図2に示すウェーハのA−A断面図である。
【図4】変形例に係る、肉厚部を外周部と外周部以外にも設けた場合のウェーハの平面図である。
【図5】図4に示すウェーハのB−B断面図である。
【図6】各パッド硬度とNAP長を有するポリッシュパッドでウェーハを研磨した場合に、肉薄部の表面全体が鏡面に仕上がったか、或いは、鏡面とならない部分が残ったか、の実験結果を示す図である。
【図7】変形例に係る一方の主面に肉厚部を形成した場合のウェーハの平面図である。
【図8】図7に示すウェーハのC−C断面図である。
【図9】肉厚部の全部又は一部を残して研磨加工が完了したウェーハを用いた、圧電振動子製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図10】肉薄部に圧電振動子の連結体の外形が形成されたウェーハの図である。
【図11】圧電振動子が搭載される電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法の手順を示すフローチャートである。このウェーハ加工方法は、水晶ウェーハを研磨加工して、ポリッシュウェーハを製造する方法である。
【0016】
まず、人工水晶を用意し、水晶の結晶軸を明確にするために行う研削加工であるランバード加工を当該人工水晶に対して行う(ステップS1)。
次に、ランバード加工後の人工水晶を、その結晶軸に対し必要な角度で、厚さ150μm程度のウェーハ状にスライスして、複数のウェーハを生成する(ステップS2)。
【0017】
次に、ウェーハの外形を加工する(ステップS3)。本実施形態では、口径3インチ程度の円板状に加工する。なお、円板状に限定されることはなく、例えば、平面形状が矩形の板状に加工してもよい。
次に、当該ウェーハのラップを行い、厚さを100μm程度にする(ステップS4)。
【0018】
次に、フォトリソグラフィ技術を使用して、ウェーハに肉薄部を形成するとともに、ウェーハの両主面の周縁部に、肉薄部よりも厚さの厚い肉厚部を形成する(肉厚部形成工程)。
具体的には、まず、ウェーハの両主面にフォトレジストを塗布する。そして、肉薄部形成用のフォトマスクを両主面に被せて、ウェーハの周縁部を除いた内側部分のフォトレジストを露光する。次に現像を行い、露光した部分を除去することにより、フォトレジストに肉薄部の外形パターンを形成する(ステップS5)。
【0019】
次に、ウェーハをエッチング液に浸漬して、フォトレジストに覆われていないウェーハの内側部分を片面あたり10μm程度エッチングすることにより、厚さ80μm程度の肉薄部を形成する(ステップS6)。この場合、複数のウェーハをエッチング液に浸漬することで、複数のウェーハに対して一括で肉薄部を形成するいわゆるバッチ処理を行うことができる。これにより、生産性が向上し、低コスト化を図ることができる。
次に、ウェーハからフォトレジストを剥離する(ステップS7)。
【0020】
図2は、上記ステップS1〜S7までの工程を経ることにより製造されたウェーハ1の平面図であり、図3は図2に示すウェーハ1のA−A断面図である。
これらの図に示すように、ウェーハ1には、両主面の周縁部に枠状の肉厚部12が形成されている。また、肉厚部12で囲まれた領域に、当該肉厚部12よりも厚さの薄い肉薄部14が形成されている。これにより、当該ウェーハ1の縦断面形状は、図3に示すようにH字型となっている。
【0021】
このように、ウェーハ1に肉厚部12を形成することにより、ウェーハ1の機械的強度が向上し、肉薄部14の破損を防ぐことができるため、その後の工程でのハンドリングが容易となる。
【0022】
次に、ポリッシュパッドを使用して、肉厚部12で囲まれた肉薄部14の領域の両面研磨加工(両面ポリッシュ加工)を行う(ステップS8、研磨工程)。この研磨は、肉薄部14の厚さが60μm程度になるまで行う。
【0023】
図6は、同図に示された各パッド硬度とNAP長(パッド厚み)を有するポリッシュパッドでウェーハ1を研磨した場合に、肉薄部14の表面全体が鏡面に仕上がったか、或いは、鏡面とならない部分が残ったか、の実験結果を示す図である。
【0024】
同図に示すように、ポリッシュパッドのパッド硬度が30〜80であり、NAP長が0.2〜1.0mmであれば、肉薄部14の表面全体を鏡面に仕上げることができる。これは、ポリッシュパッドがウェーハ1の凹凸形状に倣ういわゆる倣い加工をすることができるためである。したがって、ウェーハ1の研磨に使用するパッドのパッド硬度及びNAP長は、上記範囲内であることが好ましい。例えば、材質がスェード系である場合、パッド硬度とNAP長は上記範囲内に納まるため、スェード系のポリッシュパッドを用いて研磨するとよい。
【0025】
このような倣い加工が可能な軟質のポリッシュパッドを用いることで、ウェーハ1の肉薄部14の表面全体を鏡面に仕上げることができるとともに、肉薄部14が薄く、ウェーハ1の口径が大きいとしても、肉薄部14の破損を防止することができ、ポリッシュウェーハを歩留まり良く生産することができる。
【0026】
また、肉厚部12の厚さが肉薄部14の厚さと同じになるように研磨してもよいが、肉厚部12の全体又は一部が残るように研磨することで、このポリッシュウェーハから圧電振動子等の電子部品を製造する場合にも、肉薄部14の破損を防ぐことができるため、その後のウェーハの扱いが容易になる。
【0027】
なお、上述した実施形態のステップS8では両面ポリッシュ加工を行うとして説明したが、これに限定されることはなく、ラップ加工を行ってもよい。すなわち、ステップS8の工程は、ポリッシュやラップを含む「研磨」工程という広い概念で捉えることができる。また、両面研磨に限らず、片面研磨を行ってもよい。
【0028】
また、肉厚部は、ウェーハの周縁部に加えて、周縁部以外に設けてもよい。図4は肉厚部を周縁部以外に設けた場合のウェーハ1Aの平面図であり、図5は図4に示すウェーハ1AのB−B断面図である。これらの図に示すように、周縁部の肉厚部12に加えて、中心から外周端に向かう肉厚部12aを互いに直角になるように、十字型に4本設けてもよい。これにより、肉厚部12,12aは互いに連結して一体となり、肉厚部12,12aで囲まれた領域は、各主面で4つ形成されることとなる。このように、周縁部の肉厚部12に加えて、ウェーハ1Aの主面の内側にも肉厚部12aを設けることにより、肉厚部12のみを設ける場合よりも肉薄部14の表面積は小さくなるが、機械的強度を向上させることができる。なお、中心から外周端に向かう肉厚部12aの数は4本に限らず、任意の数を設けることができる。
【0029】
また、肉厚部は、両主面に設けずに、一方の主面にのみ設けてもよい。図7は一方の主面にのみ肉厚部を形成した場合のウェーハ1Bの平面図であり、図8は図7に示すウェーハ1BのC−C断面図である。この場合には、一方の主面は、ウェーハの周縁部のみを覆うフォトレジストをマスクとし、他方の主面は、当該主面全体を覆うフォトレジストをマスクとして、エッチングを行えばよい。
【0030】
(圧電振動子の製造方法)
次に、図9に示すフローチャートを参照して、圧電振動子製造方法の手順について説明する。当該圧電振動子製造方法では、上述したウェーハ加工方法によって研磨加工が完了したウェーハを用いて行う。当該ウェーハには、肉厚部12の全部又は一部が残っているものとする。
【0031】
まず、当該ウェーハを洗浄する(ステップS11)。
次に、当該ウェーハの両主面に、スパッタリング等によって電極となる金属膜を成膜する(ステップS12)。
【0032】
次に、ウェーハの両主面にフォトレジストを塗布した後、圧電振動素子の連結体の外形を形成するためのフォトマスクを被せて、フォトレジストを露光する。次に、現像を行い、露光した部分のフォトレジストを除去する。これにより、ウェーハの肉薄部14上のフォトレジストに、圧電振動素子の連結体の外形パターンが形成される(ステップS13)。
【0033】
次に、ウェーハをエッチング液に浸漬して、フォトレジストで覆われていない部分のウェーハが厚さ方向に貫通するまでエッチングすることにより、図10に示すように、ウェーハの肉薄部14に圧電振動素子14aの連結体の外形を形成する(ステップS14、外形形成工程)。
【0034】
次に、ウェーハからフォトレジストを剥離する(ステップS15)。
次に、圧電振動素子14a同士の連結部をダイシングする、或いは折り取ることにより、肉薄部14に形成した各圧電振動素子14aを肉厚部12から分離する(ステップS16、分離工程)。
【0035】
次に、圧電振動素子14aをパッケージにマウントし(ステップS17、マウント工程)、圧電振動素子14aの周波数調整を行って(ステップS18)、パッケージ内を気密に封止する(ステップS19)。これにより、圧電振動子が完成する。
【0036】
このような圧電振動子は、図11に示すように、GPS(Global Positioning System)、携帯電話機、時計、デジタルカメラ、ゲーム機器等の様々な電子機器に搭載することができ、当該圧電振動子は、基準周波数発生機能、フィルタ機能、圧力センサー、温度センサー、加速度センサー等のセンサー機能としての役割を果たす。
なお、上述した圧電振動子の製造方法は、半導体等の任意の電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、ウェットエッチングによりウェーハ1の肉薄部14を形成したが、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングで肉薄部14を形成してもよい。また、エッチングに限らず、砥石で研削することにより肉薄部14を形成してもよい。
また、上記実施形態では、ウェーハ及び圧電振動素子の材料として水晶を用いたが、水晶に限定されることはなく、セラミック等、あらゆる材質を用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B………ウェーハ、12,12a,12b………肉厚部、14………肉薄部、14a………圧電振動素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、破損を防止して研磨加工を行うウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子や半導体等の電子部品は大型のウェーハから製造される。当該ウェーハは、研磨を行うことにより所望の厚さにした後に、電子部品への加工が行われる。ウェーハ研磨の際にウェーハの割れや欠け等の破損を防止するために、ウェーハ研磨の前に、ウェーハ外周部の面取り加工が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、テーブル上でウェーハを回転させ、回転している砥石の溝にウェーハを押し当て、当該ウェーハと砥石が接触する研削用溝底部へ研削水を供給しながら、ウェーハの面取り加工を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような研削加工方式では、研削加工中に局所的な力がウェーハに掛かるため、ウェーハが薄板の場合には、面取り加工することは困難である。
また、研削加工方式では、ウェーハを1つずつ加工処理するいわゆる枚葉式にならざるを得ないため、効率が悪く、コストが掛かる。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、加工中のウェーハの割れや欠け等の破損を防ぐことができるウェーハの加工方法、電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
また、効率的に加工することを可能とする電子部品の製造方法及び電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成する肉厚部形成工程と、前記主面が前記肉厚部で囲まれた肉薄部を研磨する研磨工程と、を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
本発明によれば、ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成した後、肉厚部で囲まれた領域を研磨するようにしたため、ウェーハ加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0007】
[適用例2]前記研磨工程において、スェード系のパッドを用いて研磨することを特徴とする適用例1に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、スェード系のパッドを用いて研磨することで倣い加工が可能となるため、肉厚部が設けられていたとしても、肉厚部で囲まれた領域をムラなく研磨することができる。
【0008】
[適用例3]前記肉厚部形成工程において、エッチングで前記肉厚部を形成することを特徴とする適用例1又は2に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、エッチングで前記肉厚部を形成することができるため、複数のウェーハに一括で肉厚部を形成することができ、効率的にウェーハの加工を行うことができる。
【0009】
[適用例4]前記肉厚部形成工程において、前記ウェーハの周縁部に前記肉厚部を設けることを特徴とする適用例1から3の何れか1例に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、肉厚部をウェーハの周縁部に設けることで、ウェーハを補強することができ、加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0010】
[適用例5]前記肉厚部形成工程において、前記周縁部に設けられた肉厚部と一体となっている肉厚部を、前記ウェーハの主面の内側にも設けることを特徴とする適用例4に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、ウェーハの周縁部にのみ肉厚部を設けるのに比べて、ウェーハをさらに補強することができ、ウェーハ加工中にウェーハが破損するのを防ぐことができる。
【0011】
[適用例6]前記研磨工程において、前記肉厚部の少なくとも一部が残るように研磨することを特徴とする適用例1から5の何れか1例に記載のウェーハの加工方法。
本発明によれば、研磨加工が終了した後のウェーハを用いて電子部品等を製造する場合に、当該製造工程においてウェーハが破損するのを防ぐことができ、ウェーハの扱いが容易となる。
【0012】
[適用例7]適用例1に記載の加工方法で加工されたウェーハの前記肉厚部で囲まれた肉薄部に、電子部品の素子の外形を形成する外形形成工程と、前記素子を前記肉厚部から分離する分離工程と、前記素子をパッケージ内にマウントするマウント工程とを含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
本発明によれば、研磨したウェーハに肉厚部を残しておくことで、研磨したウェーハから電子部品を製造する場合にも、ウェーハが破損するのを防止することができ、ウェーハの扱いが容易となる。
【0013】
[適用例8]適用例7に記載の製造方法で製造された電子部品。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法の手順を示すフローチャートである。
【図2】ステップS1〜S7までの工程を経ることにより製造されたウェーハの平面図である。
【図3】図2に示すウェーハのA−A断面図である。
【図4】変形例に係る、肉厚部を外周部と外周部以外にも設けた場合のウェーハの平面図である。
【図5】図4に示すウェーハのB−B断面図である。
【図6】各パッド硬度とNAP長を有するポリッシュパッドでウェーハを研磨した場合に、肉薄部の表面全体が鏡面に仕上がったか、或いは、鏡面とならない部分が残ったか、の実験結果を示す図である。
【図7】変形例に係る一方の主面に肉厚部を形成した場合のウェーハの平面図である。
【図8】図7に示すウェーハのC−C断面図である。
【図9】肉厚部の全部又は一部を残して研磨加工が完了したウェーハを用いた、圧電振動子製造方法の手順を示すフローチャートである。
【図10】肉薄部に圧電振動子の連結体の外形が形成されたウェーハの図である。
【図11】圧電振動子が搭載される電子機器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るウェーハ加工方法の手順を示すフローチャートである。このウェーハ加工方法は、水晶ウェーハを研磨加工して、ポリッシュウェーハを製造する方法である。
【0016】
まず、人工水晶を用意し、水晶の結晶軸を明確にするために行う研削加工であるランバード加工を当該人工水晶に対して行う(ステップS1)。
次に、ランバード加工後の人工水晶を、その結晶軸に対し必要な角度で、厚さ150μm程度のウェーハ状にスライスして、複数のウェーハを生成する(ステップS2)。
【0017】
次に、ウェーハの外形を加工する(ステップS3)。本実施形態では、口径3インチ程度の円板状に加工する。なお、円板状に限定されることはなく、例えば、平面形状が矩形の板状に加工してもよい。
次に、当該ウェーハのラップを行い、厚さを100μm程度にする(ステップS4)。
【0018】
次に、フォトリソグラフィ技術を使用して、ウェーハに肉薄部を形成するとともに、ウェーハの両主面の周縁部に、肉薄部よりも厚さの厚い肉厚部を形成する(肉厚部形成工程)。
具体的には、まず、ウェーハの両主面にフォトレジストを塗布する。そして、肉薄部形成用のフォトマスクを両主面に被せて、ウェーハの周縁部を除いた内側部分のフォトレジストを露光する。次に現像を行い、露光した部分を除去することにより、フォトレジストに肉薄部の外形パターンを形成する(ステップS5)。
【0019】
次に、ウェーハをエッチング液に浸漬して、フォトレジストに覆われていないウェーハの内側部分を片面あたり10μm程度エッチングすることにより、厚さ80μm程度の肉薄部を形成する(ステップS6)。この場合、複数のウェーハをエッチング液に浸漬することで、複数のウェーハに対して一括で肉薄部を形成するいわゆるバッチ処理を行うことができる。これにより、生産性が向上し、低コスト化を図ることができる。
次に、ウェーハからフォトレジストを剥離する(ステップS7)。
【0020】
図2は、上記ステップS1〜S7までの工程を経ることにより製造されたウェーハ1の平面図であり、図3は図2に示すウェーハ1のA−A断面図である。
これらの図に示すように、ウェーハ1には、両主面の周縁部に枠状の肉厚部12が形成されている。また、肉厚部12で囲まれた領域に、当該肉厚部12よりも厚さの薄い肉薄部14が形成されている。これにより、当該ウェーハ1の縦断面形状は、図3に示すようにH字型となっている。
【0021】
このように、ウェーハ1に肉厚部12を形成することにより、ウェーハ1の機械的強度が向上し、肉薄部14の破損を防ぐことができるため、その後の工程でのハンドリングが容易となる。
【0022】
次に、ポリッシュパッドを使用して、肉厚部12で囲まれた肉薄部14の領域の両面研磨加工(両面ポリッシュ加工)を行う(ステップS8、研磨工程)。この研磨は、肉薄部14の厚さが60μm程度になるまで行う。
【0023】
図6は、同図に示された各パッド硬度とNAP長(パッド厚み)を有するポリッシュパッドでウェーハ1を研磨した場合に、肉薄部14の表面全体が鏡面に仕上がったか、或いは、鏡面とならない部分が残ったか、の実験結果を示す図である。
【0024】
同図に示すように、ポリッシュパッドのパッド硬度が30〜80であり、NAP長が0.2〜1.0mmであれば、肉薄部14の表面全体を鏡面に仕上げることができる。これは、ポリッシュパッドがウェーハ1の凹凸形状に倣ういわゆる倣い加工をすることができるためである。したがって、ウェーハ1の研磨に使用するパッドのパッド硬度及びNAP長は、上記範囲内であることが好ましい。例えば、材質がスェード系である場合、パッド硬度とNAP長は上記範囲内に納まるため、スェード系のポリッシュパッドを用いて研磨するとよい。
【0025】
このような倣い加工が可能な軟質のポリッシュパッドを用いることで、ウェーハ1の肉薄部14の表面全体を鏡面に仕上げることができるとともに、肉薄部14が薄く、ウェーハ1の口径が大きいとしても、肉薄部14の破損を防止することができ、ポリッシュウェーハを歩留まり良く生産することができる。
【0026】
また、肉厚部12の厚さが肉薄部14の厚さと同じになるように研磨してもよいが、肉厚部12の全体又は一部が残るように研磨することで、このポリッシュウェーハから圧電振動子等の電子部品を製造する場合にも、肉薄部14の破損を防ぐことができるため、その後のウェーハの扱いが容易になる。
【0027】
なお、上述した実施形態のステップS8では両面ポリッシュ加工を行うとして説明したが、これに限定されることはなく、ラップ加工を行ってもよい。すなわち、ステップS8の工程は、ポリッシュやラップを含む「研磨」工程という広い概念で捉えることができる。また、両面研磨に限らず、片面研磨を行ってもよい。
【0028】
また、肉厚部は、ウェーハの周縁部に加えて、周縁部以外に設けてもよい。図4は肉厚部を周縁部以外に設けた場合のウェーハ1Aの平面図であり、図5は図4に示すウェーハ1AのB−B断面図である。これらの図に示すように、周縁部の肉厚部12に加えて、中心から外周端に向かう肉厚部12aを互いに直角になるように、十字型に4本設けてもよい。これにより、肉厚部12,12aは互いに連結して一体となり、肉厚部12,12aで囲まれた領域は、各主面で4つ形成されることとなる。このように、周縁部の肉厚部12に加えて、ウェーハ1Aの主面の内側にも肉厚部12aを設けることにより、肉厚部12のみを設ける場合よりも肉薄部14の表面積は小さくなるが、機械的強度を向上させることができる。なお、中心から外周端に向かう肉厚部12aの数は4本に限らず、任意の数を設けることができる。
【0029】
また、肉厚部は、両主面に設けずに、一方の主面にのみ設けてもよい。図7は一方の主面にのみ肉厚部を形成した場合のウェーハ1Bの平面図であり、図8は図7に示すウェーハ1BのC−C断面図である。この場合には、一方の主面は、ウェーハの周縁部のみを覆うフォトレジストをマスクとし、他方の主面は、当該主面全体を覆うフォトレジストをマスクとして、エッチングを行えばよい。
【0030】
(圧電振動子の製造方法)
次に、図9に示すフローチャートを参照して、圧電振動子製造方法の手順について説明する。当該圧電振動子製造方法では、上述したウェーハ加工方法によって研磨加工が完了したウェーハを用いて行う。当該ウェーハには、肉厚部12の全部又は一部が残っているものとする。
【0031】
まず、当該ウェーハを洗浄する(ステップS11)。
次に、当該ウェーハの両主面に、スパッタリング等によって電極となる金属膜を成膜する(ステップS12)。
【0032】
次に、ウェーハの両主面にフォトレジストを塗布した後、圧電振動素子の連結体の外形を形成するためのフォトマスクを被せて、フォトレジストを露光する。次に、現像を行い、露光した部分のフォトレジストを除去する。これにより、ウェーハの肉薄部14上のフォトレジストに、圧電振動素子の連結体の外形パターンが形成される(ステップS13)。
【0033】
次に、ウェーハをエッチング液に浸漬して、フォトレジストで覆われていない部分のウェーハが厚さ方向に貫通するまでエッチングすることにより、図10に示すように、ウェーハの肉薄部14に圧電振動素子14aの連結体の外形を形成する(ステップS14、外形形成工程)。
【0034】
次に、ウェーハからフォトレジストを剥離する(ステップS15)。
次に、圧電振動素子14a同士の連結部をダイシングする、或いは折り取ることにより、肉薄部14に形成した各圧電振動素子14aを肉厚部12から分離する(ステップS16、分離工程)。
【0035】
次に、圧電振動素子14aをパッケージにマウントし(ステップS17、マウント工程)、圧電振動素子14aの周波数調整を行って(ステップS18)、パッケージ内を気密に封止する(ステップS19)。これにより、圧電振動子が完成する。
【0036】
このような圧電振動子は、図11に示すように、GPS(Global Positioning System)、携帯電話機、時計、デジタルカメラ、ゲーム機器等の様々な電子機器に搭載することができ、当該圧電振動子は、基準周波数発生機能、フィルタ機能、圧力センサー、温度センサー、加速度センサー等のセンサー機能としての役割を果たす。
なお、上述した圧電振動子の製造方法は、半導体等の任意の電子部品の製造方法にも適用することができる。
【0037】
なお、上述した実施形態では、ウェットエッチングによりウェーハ1の肉薄部14を形成したが、ウェットエッチングに限らず、ドライエッチングで肉薄部14を形成してもよい。また、エッチングに限らず、砥石で研削することにより肉薄部14を形成してもよい。
また、上記実施形態では、ウェーハ及び圧電振動素子の材料として水晶を用いたが、水晶に限定されることはなく、セラミック等、あらゆる材質を用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B………ウェーハ、12,12a,12b………肉厚部、14………肉薄部、14a………圧電振動素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成する肉厚部形成工程と、
前記肉厚部で囲まれた肉薄部を研磨する研磨工程と、
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記研磨工程において、
スェード系のパッドを用いて研磨することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記肉厚部形成工程において、
エッチングで前記肉厚部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
前記肉厚部形成工程において、
前記ウェーハの周縁部に前記肉厚部を設けることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
前記肉厚部形成工程において、
前記周縁部に設けられた肉厚部と一体となっている肉厚部を、前記ウェーハの主面の内側にも設けることを特徴とする請求項4に記載のウェーハの加工方法。
【請求項6】
前記研磨工程において、
前記肉厚部の少なくとも一部が残るように研磨することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項7】
請求項1に記載の加工方法で加工されたウェーハの前記肉薄部に、電子部品の素子の外形を形成する外形形成工程と
前記素子を前記土手部から分離する分離工程と、
前記素子をパッケージ内にマウントするマウント工程と
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法で製造された電子部品。
【請求項1】
ウェーハの主面に枠状の肉厚部を形成する肉厚部形成工程と、
前記肉厚部で囲まれた肉薄部を研磨する研磨工程と、
を含むことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記研磨工程において、
スェード系のパッドを用いて研磨することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
前記肉厚部形成工程において、
エッチングで前記肉厚部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
前記肉厚部形成工程において、
前記ウェーハの周縁部に前記肉厚部を設けることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
前記肉厚部形成工程において、
前記周縁部に設けられた肉厚部と一体となっている肉厚部を、前記ウェーハの主面の内側にも設けることを特徴とする請求項4に記載のウェーハの加工方法。
【請求項6】
前記研磨工程において、
前記肉厚部の少なくとも一部が残るように研磨することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のウェーハの加工方法。
【請求項7】
請求項1に記載の加工方法で加工されたウェーハの前記肉薄部に、電子部品の素子の外形を形成する外形形成工程と
前記素子を前記土手部から分離する分離工程と、
前記素子をパッケージ内にマウントするマウント工程と
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法で製造された電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−86208(P2013−86208A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228907(P2011−228907)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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