説明

ウエストゲートバルブ

【課題】弁体の回転を規制するようにしたウエストゲートバルブを提供する。
【解決手段】回動軸13に固定される取付板17に、取付ピン23と座金24を介して弁体12が抜け出さないように取り付けられているウエストゲートバルブ11であって、取付板17と弁体12との間に、取付板17に対し弁体12が回転しないように規制する回転規制手段26を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス流路に設けられるウエストゲートバルブに関し、特に取付板に取り付けた弁体の回転を規制するようにしたウエストゲートバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からエンジンの性能を向上して低燃費化を図るために排気タービン過給機が用いられている。
【0003】
排気タービン過給機付きエンジンとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の排気タービン過給機付きエンジンは、エンジンの排気ガスを、排気タービン過給機のタービンハウジングに備えられるタービンインペラにガス入口部から導入してタービンインペラを回転し、その後の排気ガスは排気ガス出口部から排気ガス流路に排出している。又、エンジンに供給される圧縮空気の過給圧を制御するために、前記排気ガス入口部と排気ガス出口部との間にはバイパス流路が設けられ、該バイパス流路にウエストゲートバルブを設け、過給圧が設定値を越えたときに、ウエストゲートバルブを開いて、前記排気ガスの一部を、タービンインペラをバイパスさせて前記排気ガス流路に排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−254051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ウエストゲートバルブは、取付板と、該取付板に取り付けて支持された弁体とを有している。弁体のシール面に対する背面には、前記取付板を貫通する貫通軸が形成されていると共に、該貫通軸の軸心には取付ピンが形成されており、前記弁体の貫通軸を取付板に貫通させ、更に、前記取付ピンに座金を嵌合させ、座金から突出した前記取付ピンの先端をカシメ加工することで、弁体を取付板に固定している。従って、前記弁体は、前記座金との間で前記取付板を挾持するようにして取付板に取り付けられる。
【0006】
前記取付板は、前記バイパス流路を貫通する回動軸に対して溶接により固定している。そして、前記回動軸は外部に設けたアクチュエータによって回動されるようになっており、ウエストゲートバルブの弁体はアクチュエータの駆動により回動軸を介して開閉される。
【0007】
ところで、前記ウエストゲートバルブの弁体は、取付板を貫通する貫通軸に備えた取付ピンを座金に貫通させてカシメ加工することで取付板に取り付けられているため、弁体と取付板と座金の相互間には隙間が存在しており、更に、前記貫通軸及び取付ピンの回りにも隙間が存在しており、このために、弁体は排気ガスの作用を受けて取付板に対し回転する問題がある。
【0008】
弁体が回転すると、ウエストゲートバルブの取付姿勢により、弁体の重心のずれから前記貫通軸及び取付ピンに偏荷重が作用して片当たりによる偏摩耗が生じ、この偏摩耗は経時的に進行するため、弁体と取付板との間におけるガタが大きくなり、弁体の密閉性が低下する可能性がある。又、弁体と弁座面の回転方向の摺動により摩耗が生じ、アクチュエータによる過給圧コントロールに不具合を生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなしたもので、弁体の回転を規制するようにしたウエストゲートバルブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、回動軸に固定される取付板に、取付ピンと座金を介して弁体が抜け出さないように取り付けられているウエストゲートバルブであって、前記取付板と弁体との間に、前記取付板に対し前記弁体が回転しないように規制する回転規制手段を備えたことを特徴とするウエストゲートバルブ、に係るものである。
【0011】
上記ウエストゲートバルブにおいて、前記回転規制手段が、前記取付板と弁体の一方に備えた1つの被係止部と、該1つの被係止部を挟んで回転を規制するよう前記取付板と弁体の他方に備えた2つの係止部とからなっていてもよい。
【0012】
又、上記ウエストゲートバルブにおいて、前記回転規制手段が、前記取付板と弁体の一方に備えた係止穴と、該係止穴に嵌合するよう前記取付板と弁体の他方に備えた係止凸部とからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取付板に対して弁体が回転しないウエストゲートバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はエンジンに備えられる本発明のウエストゲートバルブを有する排気タービン過給機の一例を示す側面図、(b)は(a)を右側から見た背面図である。
【図2】(a)は図1(a)を左側から見た正面図、(b)は(a)をIIB−IIB方向から見た断面図である。
【図3】本発明のウエストゲートバルブの第1の実施例を示す正面図である。
【図4】本発明のウエストゲートバルブの第2の実施例を示す斜視図である。
【図5】(a)は本発明のウエストゲートバルブの第3の実施例を示す斜視図、(b)は(a)の正面図である。
【図6】(a)は本発明のウエストゲートバルブの第4の実施例を示す正面図、(b)は(a)をVIB−VIB方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0016】
図1、図2はエンジンに備えられる本発明のウエストゲートバルブを有する排気タービン過給機の一例を示すもので、排気タービン過給機100のタービンハウジング1には、エンジンの排気マニホールドからの排気ガスが、タービンスクロール部2の排気ガス入口部3に導かれており、タービンスクロール部2に供給される排気ガスによってタービンインペラ4が回転される。圧縮機ハウジング5の圧縮機スクロール6内には、前記タービンインペラ4と同軸の圧縮機インペラ(図示せず)が設けてあり、圧縮機インペラの回転により軸中心の空気取入口7aから取り入れた空気を圧縮し、圧縮した空気は圧縮空気取出口7bからエンジンに供給されてエンジンを過給するようになっている。
【0017】
図1(b)に示す如く、前記タービンインペラ4を駆動した排気ガスは、排気ガス出口部8から排気ガス流路9に排出される。又、エンジンに供給される圧縮空気の過給圧を制御するために、前記排気ガス入口部3と排気ガス出口部8との間に排気ガスをバイパスさせるバイパス流路10を設けると共に、バイパス流路10に設けた弁座面10aに当接してバイパス流路10の開閉を行うウエストゲートバルブ11を設けている。ウエストゲートバルブ11は、エンジンへの過給圧が設定値を越えると、図2に示すウエストゲートバルブ11の弁体12が開かれて、排気ガスの一部がタービンインペラ6をバイパスしてバイパス流路10から排気ガス流路9に送られるようになっている。
【0018】
前記ウエストゲートバルブ11を回動する回動軸13は、バイパス流路10を貫通してタービンハウジング1の外部に導かれており、回動軸13の外側端部には、レバー14を介して前記回動軸13と平行な駆動ピン15がクランク状に固定されている。前記駆動ピン15には図1に示す如く、前記駆動ピン15を押し引きすることにより前記レバー14を介して回動軸13を回動するアクチュエータ16が接続されている。アクチュエータ16は、圧縮空気の過給圧が設定値を越えたときに、ウエストゲートバルブ11を開いて、前記排気ガスの一部をタービンインペラ4をバイパスさせて、前記排気ガス入口部3から排気ガス流路9に排出する。アクチュエータ16としては空気駆動によるダイヤフラム式駆動装置が用いられる。
【0019】
前記ウエストゲートバルブ11は、図2(b)、図3に示す如く、前記回動軸13に固定された取付板17と、該取付板17に取り付けられた弁体12とを有している。
【0020】
前記取付板17は、円板状の支持板18と、該支持板18の外側に一体に形成されて、前記回動軸13が嵌合する前記支持部18の面と平行な嵌合穴19を有する固定部20とから構成されている。21は前記回動軸13と溶接固定するために前記固定部20に備えた溶接穴である。
【0021】
前記弁体12は、シール面12aの背面側に、前記取付板17の支持板18の中心に備えた貫通穴18aに貫通するよう突出した貫通軸22を形成していると共に、該貫通軸22の軸心には取付ピン23が形成されている。前記弁体12の貫通軸22を支持板18の貫通穴18aに貫通させ、更に、前記取付ピン23に座金24を嵌合させて、座金24から突出した前記取付ピン23の先端をカシメ加工することでカシメ部23'を形成することにより、前記弁体12は、前記座金24との間で支持板18を挾持するようにして取付板17に取り付けられる。
【0022】
尚、前記取付板17の支持板18には、図2、図3に示すように、円板状の支持板18と略同径の座金24が取付られており、一方、取付板17と一体の固定部20の長手方向中心は、前記支持板18の中心に対して距離Xだけ偏心(オフセット)しており、このため、図3に示すように、前記支持板18が偏心した側の上面における座金24の外側には平坦部25が現われている。
【0023】
前記したように、取付ピン23により座金24を介して取付板17に取り付けた弁体12は、取付板17及び取付ピン23との間に隙間を有しているために、弁体12が排気ガスの作用を受けて回転する問題がある。
【0024】
本発明では、前記取付板17と弁体12との間に、回転規制手段26を設けて、前記取付板17に対して前記弁体12が回転しないように規制した。
【0025】
図2、図3は、前記回転規制手段26の第1の実施例を示しており、前記取付板17を1つの被係止部50と見做し、前記支持板18から固定部20に連なる部分の一側の被係止辺27aと他側の被係止辺27bに対応して前記取付板17を挟むように、前記弁体12に、2つの係止部51a,51bを突設している。図3中、28は、前記支持板18における平坦部25に対して弁体12の軸中心を挟んで反対側の位置の支持板18の外周に、外方へ突出して設けた押え凸部である。
【0026】
図4は、本発明の第2の実施例を示しており、図4の実施例では、弁体12に、支持板18側(図4の上側)へ突出した1つの被係止部50が設けてあり、前記取付板17における前記他側の被係止辺27bに近接した位置の支持板18の外周に外方へ突出した係止部51aを設け、該係止部51aと前記他側の被係止辺27bとからなる2つの係止部51a,51bによって前記被係止部50を挟むようにしている。
【0027】
図5は、本発明の第3の実施例を示しており、図5の実施例では、弁体12に、支持板18側(図4の上側)へ突出させた1つの被係止部50を設け、又、前記取付板17における前記支持板18の外周に、前記被係止部50を挟むように外方へ突出した2つの係止部51a,51bを設けた場合を示している。この時、2つの係止部51a,51bの一方(図5(a)では51a)は、前記平坦部25に対して弁体12の軸中心を中心に反対側に位置している。又、図5に代えて、前記支持板18の外周における前記係止部51aの位置に1つの被係止部50を設け、該被係止部50を挟むように、弁体12に、支持板18側(図4の上側)へ突出させた2つの係止部50,51bを設けてもよい。
【0028】
以下に、上記した第1の実施例乃至第3の実施例の作動を説明する。
【0029】
図2〜図5に示す如く、前記取付板17と弁体12の一方に備えた1つの被係止部50と、該1つの被係止部50を挟んで回転を規制するよう前記取付板17と弁体12の他方に2つの係止部51a,51bを設けた回転規制手段26を備えたことにより、弁体12はA方向とB方向のいずれの方向にも回転が規制されるので、従来問題となっていた弁体12が回転することによる偏摩耗の問題を確実に防止することができる。
【0030】
又、前記ウエストゲートバルブ11では、ウエストゲートバルブ11とタービンハウジング1及び弁座面10aの製作誤差を解消するために、前記取付板17の固定部20の嵌合穴19に回動軸13を嵌合させ、弁体12のシール面12aを弁座面10aに押付けた状態において、前記溶接穴21を埋めるように溶接部21aを形成するようにして、取付板17と回動軸13を固定している。
【0031】
溶接時には、前記弁体12のシール面12aが弁座面10aに密着するように取付板17を押し付けた状態で前記溶接を行う必要があるが、図2(a)に示すように、溶接作業は排気ガス流路9の狭い空間から行う必要があるため、取付板17を安定して押し付けることが難しい。
【0032】
しかし、前記支持板18の平坦部25に対して弁体12の軸中心を挟んで反対側の位置の支持板18に押え凸部28を設けたことにより、図3に示すような二股の押え具29を用いて、前記押え凸部28と平坦部25を同時に押すことにより、取付板17を確実に押し付けることができる。又、図5に示したように、前記支持板18における平坦部25に対し、弁体12の軸中心を挟んで反対側位置に係止部51aか位置するように設けた場合には、該係止部51aと前記平坦部25を押え具29により同時に押付けることができる。
【0033】
図6は、本発明の第4の実施例を示しており、図6の実施例では、前記取付板17の下面(弁体12側)には係止穴30が形成してあり、又、前記弁体12には前記係止穴30に嵌合するように突出した係止凸部31を設けることで、回転規制手段26を構成している。上記係止穴30と係止凸部31を設ける位置は任意に選定することができる。尚、前記弁体12に係止穴30を設け、該係止穴30に嵌合するように支持板18の下面(弁タイ側)に係止凸部31を設けてもよい。
【0034】
図6に示す第4の実施例では、前記取付板17と弁体12の一方に備えた係止穴30と、該係止穴30に嵌合する係止凸部31を前記取付板17と弁体12の他方に設けたので、前記係止穴30と係止凸部31の係合により、弁体12はA方向とB方向のいずれの方向にも回転が規制され、よって、従来問題となっていた弁体12が回転することによる偏摩耗の問題を確実に防止することができる。
【0035】
尚、本発明のウエストゲートバルブは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、排気タービン過給機付きエンジン或いはその他のエンジン等の種々の排気ガス流路に設けられるウエストゲートバルブに適用することができること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
11 ウエストゲートバルブ
12 弁体
13 回動軸
17 取付板(被係止部)
23 取付ピン
24 座金
26 回転規制手段
30 係止穴
31 係止凸部
50 被係止部
51a,51b 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸に固定される取付板に、取付ピンと座金を介して弁体が抜け出さないように取り付けられているウエストゲートバルブであって、前記取付板と弁体との間に、前記取付板に対し前記弁体が回転しないように規制する回転規制手段を備えたことを特徴とするウエストゲートバルブ。
【請求項2】
前記回転規制手段が、前記取付板と弁体の一方に備えた1つの被係止部と、該1つの被係止部を挟んで回転を規制するよう前記取付板と弁体の他方に備えた2つの係止部とからなることを特徴とする請求項1に記載のウエストゲートバルブ。
【請求項3】
前記回転規制手段が、前記取付板と弁体の一方に備えた係止穴と、該係止穴に嵌合するよう前記取付板と弁体の他方に備えた係止凸部とからなることを特徴とする請求項1に記載のウエストゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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