説明

ウエハ欠陥検査装置

【課題】検査対象のシリコンウエハに表面粗さ部分があっても欠陥部分を確実に識別する。
【解決手段】近赤外光源1から単波長の近赤外散乱光線R1をシリコンウエハWに照射し、このシリコンウエハWを透過した透過光線R2がカメラレンズ2で集光され、この集光された透過光線R2を撮像用カメラ3で受光して撮像し、画像処理部4が撮像用カメラ3の撮像画像上でシリコンウエハWの表面粗さ部分となる成分を消去することにより、欠陥部分の画像が強調される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体シリコンウエハの表面及び内部に存在する、例えば微細なピンホールやクラックなどの欠陥を赤外線によって検査するためのウエハ欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のウエハ欠陥検査装置として、被検体であるシリコン基板に赤外線を照射する赤外光源のハロゲンランプと、前記シリコン基板を透過した赤外線を集光する赤外線レンズと、前記赤外線レンズにより集光された赤外線を受光して電気信号に変換して出力する赤外線カメラと、前記赤外線カメラから出力する電気信号を入力して画像信号に変換し、前記画像信号に基づいて画像を表示するモニタとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
このものにおいて、シリコン基板の一部にクラックなどの異常部分が含まれている時には、その異常部分では赤外線の透過状態が他の正常部分とは異なるために、異常部分と正常部分とで赤外線の透過状態に差異が生じ、この差異が赤外線カメラで影として捕らえられ、この赤外線画像において正常な透過部分と影の部分とのコントラスト比により異常部分の位置を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−351669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のウエハ欠陥検査装置では、ハロゲンランプから幅広い波長の赤外線をシリコンウエハに照射するため、特にシリコンウエハがケミカルエッチング後のウエハのように、該ウエハの表面全体に無数の微細な凹凸が存在する場合には、その表面粗さ部分(地肌の粗い部分)が、例えば微細なピンホールやクラックを含むキズ又は明るさむらなどの欠陥部分と混在して赤外線画像に表示され、このような地肌の粗い部分と欠陥部分とを画像処理で識別することが困難であった。
このことが欠陥検出の自動化において最大のネックとなっており、自動検査システムでの歩留まり低下と品質管理の低下が著しく問題となっている。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、検査対象のシリコンウエハに表面粗さ部分があっても欠陥部分を確実に識別すること、シリコンウエハの表面粗さ部分となる成分を確実に消去すること、安定した単波長の近赤外散乱光を簡単な構造で容易に得ること、検査対象のシリコンウエハに単波長の近赤外散乱光線を均一照射すること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、シリコンウエハに単波長の近赤外散乱光線を照射する近赤外光源と、前記シリコンウエハを透過した透過光線を集光するカメラレンズと、前記カメラレンズにより集光された透過光線を受光して撮像する撮像用カメラと、前記撮像用カメラの撮像画像上で前記シリコンウエハの表面粗さ部分となる成分を消去する画像処理部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
前述した特徴に加えて、前記近赤外光源から940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線を前記シリコンウエハに照射することを特徴とする。
【0008】
さらに前述した特徴に加えて、前記近赤外光源が、複数の発光ダイオードを互いに接近させて配置したことを特徴とする。
【0009】
さらに前述した特徴に加えて、前記発光ダイオードの出射方向に拡散板を配置したことを特徴とする。
【0010】
さらに前述した特徴に加えて、前記撮像用カメラとしてエリアセンサカメラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述した特徴を有する本発明は、近赤外光源から単波長の近赤外散乱光線をシリコンウエハに照射し、このシリコンウエハを透過した透過光線がカメラレンズで集光され、この集光された透過光線を撮像用カメラで受光して撮像し、画像処理部が撮像用カメラの撮像画像上でシリコンウエハの表面粗さ部分となる成分を消去することにより、欠陥部分の画像が強調されるので、検査対象のシリコンウエハに表面粗さ部分があっても欠陥部分を確実に識別することができる。
その結果、ハロゲンランプを用いた従来のものに比べ、欠陥検出の自動化が可能となり、自動検査システムで歩留まりを向上させるとともに品質管理の向上を図ることができる。
【0012】
さらに、前記近赤外光源から940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線を前記シリコンウエハに照射する場合には、940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線が、シリコンウエハを透過することにより、撮像用カメラの撮像画像上に欠陥部分の影とは異なる形の地肌模様が穏やかになるので、シリコンウエハの表面粗さ部分となる成分を確実に消去することができる。
その結果、欠陥部分の識別精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記近赤外光源が、複数の発光ダイオードを互いに接近させて配置した場合には、複数の発光ダイオードからそれぞれ出射される近赤外線において強弱の差が小さくなるので、安定した単波長の近赤外散乱光を簡単な構造で容易に得ることができる。
【0014】
また、前記発光ダイオードの出射方向に拡散板を配置した場合には、複数の発光ダイオードから出射される単波長の近赤外散乱光線が、拡散板を通過することで、空間的に均一に分布されるので、検査対象のシリコンウエハに単波長の近赤外散乱光線を均一照射することができる。
その結果、欠陥部分の識別精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るウエハ欠陥検査装置を示す説明図である。
【図2】実施例におけるウエハ面内部の明るさプロファイルである。
【図3】比較例におけるウエハ面内部の明るさプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るウエハ欠陥検査装置Aは、図1に示すように、検査対象のシリコンウエハWに単波長(単一波長又は固定波長)の近赤外散乱光線R1を照射する近赤外光源1と、シリコンウエハWを透過した透過光線R2を集光するカメラレンズ2と、カメラレンズ2により集光された透過光線R2を受光して撮像する撮像用カメラ3と、撮像用カメラ3の撮像画像上で画像処理を行う画像処理部4とを備えている。
【0017】
シリコンウエハWは、インゴットを薄くスライスした板であり、その表面及び内部に存在する、例えば微細なピンホールやクラックを含むキズ又は明るさむらなどの欠陥部分を検査する必要がある。検査対象としては、半導体シリコンウエハの製造過程において作成される、ラッピング処理されたウエハ、例えばケミカル(化学的)エッチングなどのエッチング処理後のウエハ、鏡面仕上げを施したウエハなどが挙げられる。
これらの中で、ケミカルエッチング後のウエハは、その表面全体に無数の微細な凹凸が存在しているため、その表面粗さ部分(地肌の粗い部分)が、微細なピンホールやクラックを含むキズ又は明るさむらなどの欠陥部分と混在して画像に表示され、それにより、このような地肌の粗い部分と欠陥部分とが画像処理などで最も識別し難いと言われている。
【0018】
近赤外光源1は、例えば約940〜960nmいずれかの単波長の近赤外線を出射する発光ダイオード(LED)1aを有し、この発光ダイオード1aを複数配置することにより、近赤外散乱光線R1をシリコンウエハWに向けて出射させることが好ましい。
その具体例としては、複数の発光ダイオード1aを互いに接近するように配置させて、これら複数の発光ダイオード1aからそれぞれ出射される近赤外線において強弱の差が生じないようにすることが好ましい。
さらに、これら発光ダイオード1aの出射方向には、拡散板1bを配置し、発光ダイオード1aから出射される近赤外散乱光線R1が拡散板1bを通過することで、空間的に均一に分布され、シリコンウエハWの表裏いずれか一方の面W1に向けて均一照射されるようにすることが好ましい。
【0019】
そして、シリコンウエハWの他方の面W2から透過した透過光線R2は、カメラレンズ2によって集光され、撮像用カメラ3の内部に配備された受光素子上にシリコンウエハWの像を結ぶ。
撮像用カメラ3としては、エリアセンサカメラを用いることが好ましい。
また、撮像用カメラ3に接続するモニター(図示しない)を設け、撮像用カメラ3からの電気信号を受けて撮像用カメラ3が撮像した画像を表示することにより、検査者が撮像画像から欠陥部分を目視で確認できるようにすることも可能である。
【0020】
画像処理部4は、撮像用カメラ3から出力される画像データをパーソナルコンピュータ(図示しない)で受け、パーソナルコンピュータにおいて、例えば画像データからシリコンウエハWの表面粗さ部分となる成分を消去するなどの画像処理が行われる。
【0021】
そして、本発明の実施形態に係るウエハ欠陥検査装置Aの動作を説明する。
複数の発光ダイオード1aから出射された単波長(約940〜960nm)の近赤外散乱光線R1は、拡散板1bを通過して空間的に均一に分布され、シリコンウエハWの一方の面W1に均一照射される。
それにより、近赤外散乱光線R1は、シリコンウエハWにおいて微細な欠陥部分が無い部分と、微細な欠陥部分と、シリコンウエハWの表面に存在する表面粗さ部分をそれぞれ透過し、これらの透過光線R2がカメラレンズ2によって撮像用カメラ3内の受光素子上に撮像され、この撮像画像は画像処理部4によって、後述する画像処理が行われる。
【0022】
ここで、微細な欠陥部分が無い部分は、シリコンの単結晶であるために、その画像は単波長の近赤外散乱光線R1の透過状態が常に一定であるために、一様である。
一方、微細なピンホールやクラックを含むキズ又は明るさむらなどの欠陥部分は、その部分で近赤外散乱光線R1の反射及び吸収が生じるために、欠陥部分と同じ形の「影」が発生する。
また、シリコンウエハWとして、例えばケミカルエッチング後のウエハのように、該ウエハの表面全体に無数の微細な凹凸が存在する場合には、その表面粗さ部分(地肌の粗い部分)において、近赤外散乱光線R1の反射及び吸収が生じるために、欠陥部分の「影」とは異なる形の「地肌模様」が発生する。
これらに基づいて画像処理部4で画像処理を行い、撮像画像上において、シリコンウエハWの表面粗さ部分となる成分を消去することで、欠陥部分の画像が強調される。
【0023】
このようなウエハ欠陥検査装置Aによると、検査対象のシリコンウエハAとして例えばケミカルエッチング後のウエハのように、欠陥部分を確実に識別することができて、欠陥検出の自動化が可能となる。
次に、本発明の一実施例を説明する。
【実施例】
【0024】
検査対象のシリコンウエハWとして、厚さ寸法が異なる複数のケミカルエッチング後のウエハに対し、近赤外光源1として複数の発光ダイオード1aから940nm未満の単波長の近赤外散乱光線R1が照射される実験と、940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線R1が照射される実験と、960nmよりも長い単波長の近赤外散乱光線R1が照射される実験を行った。
また、これらの比較例として、同じ条件でケミカルエッチング後のウエハに対し、ハロゲンランプから赤外線が照射される実験も行った。
【0025】
これらの実験の結果、940nm未満の単波長の近赤外散乱光線R1をケミカルエッチング後のウエハに照射した場合には、近赤外散乱光線R1が透過し難くなり、撮像用カメラ3の撮像画像は適度な明るさが得られない画像となった。
940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線R1をケミカルエッチング後のウエハに照射した場合には、近赤外散乱光線R1がそれぞれ透過し、これらの透過光線R2をカメラレンズ2で集光することにより、撮像用カメラ3の撮像画像上に、欠陥部分と同じ形の「影」と、ウエハの表面粗さ部分に相当する欠陥部分の「影」とは異なる形の「地肌模様」が穏やかになることを確認できた。
また、960nmよりも長い単波長の近赤外散乱光線R1をケミカルエッチング後のウエハに照射した場合には、近赤外散乱光線R1が透過し易くなっていき、それに伴い地肌模様が強く現れ始め、欠陥部分と表面粗さ部分を識別可能に撮像できないことが判明した。
【0026】
さらに、950nmの単波長の近赤外散乱光線R1をケミカルエッチング後のウエハに照射し、該ウエハの一部分における、ウエハ面内部の明るさプロファイル(輝度プロファイル)を実施例として図2に示す。
同様に、ハロゲンランプで照射した比較例で、ウエハの一部分における、ウエハ面内部の明るさプロファイルを比較例として図3に示す。
図2に示される実施例の明るさプロファイルによれば、ケミカルエッチング後のウエハにおいて表面粗さ部分(地肌の粗い部分)による輝度差があるものの、その輝度幅が狭くてバラツキが小さいため、欠陥部分による輝度差が発生した場合には、容易に識別できる。
これに対して、図3に示される比較例の明るさプロファイルによれば、ケミカルエッチング後のウエハにおいて表面粗さ部分(地肌の粗い部分)による輝度差が幅広くてバラツキが大きいため、欠陥部分による輝度差が一緒に発生した場合には、識別が困難である。
【0027】
このような本発明の実施例に係るウエハ欠陥検査装置Aによると、単波長の近赤外散乱光線R1を透過させた時に、撮像用カメラ3の撮像画像上に欠陥部分の影とは異なる形で表面粗さ部分に相当する「地肌模様」が発生し、特に940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線R1を照射した時には、表面粗さ部分に相当する「地肌模様」が穏やかになるため、表面粗さ部分となる成分を確実に消去することができるという利点がある。
【0028】
さらに、近赤外光源1として複数の発光ダイオード1aを互いに接近するように配置すると、これら複数の発光ダイオード1aからそれぞれ出射される近赤外線において強弱の差が小さくなるため、安定した単波長の近赤外散乱光線R1を簡単な構造で容易に得ることができるという利点がある。
【0029】
また、複数の発光ダイオード1aの出射方向に拡散板1bを配置すると、これら発光ダイオード1aから出射される近赤外散乱光線R1が拡散板1bを通過することで、空間的に均一に分布されるため、検査対象のシリコンウエハWに近赤外散乱光線R1を均一照射することができるという利点がある。
【0030】
なお、近赤外光源1として複数の発光ダイオード1aから単波長の近赤外散乱光線R1が出射される場合を説明したが、これに限定されず、発光ダイオード1aとは異なる光源を用いても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 近赤外光源 1a 発光ダイオード
1b 拡散板 2 カメラレンズ
3 撮像用カメラ 4 画像処理部
R1 近赤外散乱光線 R2 透過光線
W シリコンウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハ(W)に単波長の近赤外散乱光線(R1)を照射する近赤外光源(1)と、
前記シリコンウエハ(W)を透過した透過光線(R2)を集光するカメラレンズ(2)と、
前記カメラレンズ(2)により集光された透過光線(R2)を受光して撮像する撮像用カメラ(3)と、
前記撮像用カメラ(3)の撮像画像上で前記シリコンウエハ(W)の表面粗さ部分となる成分を消去する画像処理部(4)とを備えたことを特徴とするウエハ欠陥検査装置。
【請求項2】
前記近赤外光源(1)から940〜960nmいずれかの単波長の近赤外散乱光線(R1)を前記シリコンウエハ(W)に照射することを特徴とする請求項1記載のウエハ欠陥検査装置。
【請求項3】
前記近赤外光源(1)が、複数の発光ダイオード(1a)を互いに接近させて配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ欠陥検査装置。
【請求項4】
前記発光ダイオード(1a)の出射方向に拡散板(1b)を配置したことを特徴とする請求項4記載のウエハ欠陥検査装置。
【請求項5】
前記撮像用カメラ(3)としてエリアセンサカメラを用いたことを特徴とする請求項1〜4記載のいずれかに記載されたウエハ欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2648(P2012−2648A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137336(P2010−137336)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000214928)直江津電子工業株式会社 (37)
【出願人】(500487837)ミクロ技研株式会社 (16)
【Fターム(参考)】