説明

ウエーハの研削方法

【課題】ゲッタリングシンク(gettering sink)効果を維持するとともに抗折強度を確保しつつウエーハの内部に含有している銅(Cu)等の金属原子を減少させることができるウエーハの研削方法を提供する。
【解決手段】研削装置を用いて基板10の表面にデバイスが形成されたウエーハを研削する方法であって、チャックテーブル61の保持面にウエーハの表面側を保持し、研削ホイール4を回転しつつ研削送り手段を作動して研削送りするとともに研削水を供給することによりウエーハの裏面を研削し、ウエーハを所定の厚さに研削する研削工程と、研削工程が終了した後に研削送り手段による研削送りを停止した状態で研削ホイール4を回転しつつキレート剤を混入した研削水を供給することによりウエーハの裏面をスパークアウト研削するスパークアウト研削工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のデバイスが形成された半導体ウエーハ等のウエーハのゲッタリングシンク(gettering sink)効果を維持するとともに抗折強度を確保しつつウエーハの内部に含有している銅(Cu)等の金属原子を減少させることができるウエーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる切断予定ラインによって多数の矩形領域を区画し、該矩形領域の各々にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように多数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより、個々の半導体チップを形成する。半導体チップの小型化および軽量化を図るために、通常、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々の矩形領域を切断するのに先立って、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚さに形成している。
【0003】
半導体ウエーハの裏面の研削は、通常、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドの如き適宜のボンドで固着して形成した研削砥石を、高速回転せしめながら半導体ウエーハの裏面に押圧せしめることによって遂行されている。このような研削方式によって半導体ウエーハの裏面を研削すると、半導体ウエーハの裏面に数μmのマイクロクラックからなる加工歪層が生成される。この加工歪層は、半導体デバイスの製造工程において半導体ウエーハの内部に含有した銅(Cu)等の金属原子がデバイスの近傍に遊動してメモリー機能に及ぼす悪影響を抑制するゲッタリングシンク(gettering sink)効果をもたらす機能を有することが知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−41258 A 公報
【0004】
一方、上記半導体ウエーハの裏面を研削することによって生成される加工歪層は、特に半導体ウエーハの厚さを100μm以下に研削した場合に、個々に分割された半導体チップの抗折強度が相当低減される。この研削された半導体ウエーハの裏面に生成される加工歪層を除去する対策として、研削された半導体ウエーハの裏面にポリッシングなどの研磨或いはウエットエッチング、ドライエッチングを施している。(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【特許文献2】特開2002−283211号公報
【特許文献3】特開2001−85385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、ウエーハの裏面を研削した後に研磨或いはエッチング等によって研削によって生成された加工歪層を除去すると、チップの抗折強度は安定するが、加工歪層によるゲッタリングシンク(gettering sink)効果が消失されデバイスの機能が低下するという問題がある。
一方、半導体ウエーハをケミカル メカニカル ポリッシング(CPP)加工する際にキレート剤を混入させることにより、半導体ウエーハの内部に含有している銅(Cu)等の金属原子を減少させることができることも知られている。しかるに、ウエーハの裏面を研削した後にキレート剤を混入させてケミカル メカニカル ポリッシング(CPP)加工を実施すると、半導体ウエーハの内部に含有している銅(Cu)等の金属原子を減少させることができるが、研削によって生成された加工歪層も除去されるため上述したように加工歪層によるゲッタリングシンク(gettering sink)効果が消失されてしまう。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、ゲッタリングシンク(gettering sink)効果を維持するとともに抗折強度を確保しつつウエーハの内部に含有している銅(Cu)等の金属原子を減少させることができるウエーハの研削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物を研削する研削砥石を備えた研削ホイールと、該研削ホイールを該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に研削送りする研削送り手段と、該研削砥石による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段とを具備する研削装置を用いて、基板の表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハの研削方法であって、
該チャックテーブルの保持面にウエーハの表面側を保持し、該研削ホイールを回転しつつ該研削送り手段を作動して研削送りするとともに研削水を供給することによりウエーハの裏面を研削し、ウエーハを所定の厚さに研削する研削工程と、
該研削工程が終了した後に、該研削送り手段による研削送りを停止した状態で該研削ホイール回転しつつキレート剤を混入した研削水を供給することによりウエーハの裏面をスパークアウト研削するスパークアウト研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるウエーハの研削方法においては、ウエーハの裏面を研削して所定の厚さにした後、研削送り手段による研削送りを停止した状態で研削ホイールを回転しつつキレート剤を混入した研削水を供給することによりウエーハの裏面をスパークアウト研削するスパークアウト研削工程を実施するので、研削砥石による研削加工部にキレート剤が混入された研削水が供給されるため、ウエーハの基板の内部に含有している銅(Cu)等の金属原子が減少せしめられる。また、スパークアウト研削工程が実施されたウエーハにおける基板の裏面には研削工程において生成された加工歪層が除去されるが1μm程度残存するので、ゲッタリングシンク(gettering sink)効果が維持されるとともに、抗折強度の低下も抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明によるウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
図1には本発明に従って構成された研削装置の斜視図が示されている。
図1に示す研削装置1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0010】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0011】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたユニットハウジング321と、該ユニットハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための駆動手段としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はユニットハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状のマウンター324が設けられている。なお、マウンター324には、周方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔(図示していない)が形成されている。このマウンター324の下面に研削ホイール4が着脱可能に装着される。この研削ホイール4は、環状の支持部材41と、該環状の支持部材41の下面に同一円周上に装着された複数個の研削砥石42とからなっており、支持部材41が上記マウンター324の下面に締結ボルト325によって装着される。
【0012】
図1に示す研磨装置は、上記研磨ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削送り手段5を備えている。この研削送り手段5は、直立壁22の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ねじロッド51を具備している。この雄ねじロッド51は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材52および53によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材52には雄ねじロッド51を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ54が配設されており、このパルスモータ54の出力軸が雄ねじロッド51に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には鉛直方向に延びる貫通雌ねじ穴(図示していない)が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド51が螺合せしめられている。従って、パルスモータ54が正転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ54が逆転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0013】
上記ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構6が配設されている。チャックテーブル機構6は、チャックテーブル61と、該チャックテーブル61の周囲を覆うカバー部材62と、該カバー部材62の前後に配設された蛇腹手段63および64を具備している。チャックテーブル61は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面である保持面611に被加工物であるウエーハを図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。また、チャックテーブル61は、図示しないチャックテーブル移動手段によって図1に示す被加工物載置域24と上記スピンドルユニット32を構成する研削ホイール4と対向する研磨域25との間で移動せしめられる。蛇腹手段63および64はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段63の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はカバー部材62の前端面に固定されている。蛇腹手段64の前端はカバー部材62の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル61が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段63が伸張されて蛇腹手段64が収縮され、チャックテーブル61が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段63が収縮されて蛇腹手段64が伸張せしめられる。
【0014】
図1に示す研削装置1は、上記研削ホイール4の研削砥石42による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段7を具備している。この研削水供給手段7は、純水を供給管71を介して上記スピンドルユニット32に供給する。また、図1に示す研削装置1は、研削水供給手段7によって供給される研削水にキレート剤を混入せしめるキレート剤供給手段8を具備している。このキレート剤供給手段8は、キレート剤を上記供給管71に送る。上記研削水供給手段7およびキレート剤供給手段8からスピンドルユニット32に供給された研削水およびキレート剤が混入された研削水は、後述する図4および図5に示すように回転スピンドル322に設けられた通路322a、マウンター324に設けられた通路324a、研削ホイール4の環状の支持部材41に設けられた通路41aを介して研削砥石42による研削加工部に供給される。
【0015】
図1に示す研削装置1は以上のように構成されており、以下研削装置1によりウエーハの裏面を研削する研削方法について説明する。
図2には、本発明に従って加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図が示されている。図2に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚さが700μmのシリコンからなる基板100の表面100aに複数のストリート101が格子状に形成されているとともに、該複数のストリート101によって区画された複数の領域にIC、LSI等のデバイス102が形成されている。このように構成された半導体ウエーハ10は、デバイス102が形成されているデバイス領域104と、該デバイス領域104を囲繞する外周余剰領域105を備えている。このように構成された半導体ウエーハ10における基板100の表面100aには、図2に示すように保護部材11を貼着する(保護部材貼着工程)。
【0016】
保護部材貼着工程を実施することにより半導体ウエーハ10における基板100の表面100aに保護部材11を貼着したならば、基板100の裏面100bを研削して半導体ウエーハ10を所定の厚さに形成する研削工程を実施する。この研削工程は、上記図1に示すように研磨装置1の被加工物載置域24に位置付けられているチャックテーブル61の保持面611上に半導体ウエーハ10の保護部材11側を載置し(従って、半導体ウエーハ10は基板100の裏面100bが上側となる)、図示しない吸引手段によってチャックテーブル61上に半導体ウエーハ2を吸着保持する。このようにしてチャックテーブル61上に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、図示しないチャックテーブル移動手段を作動してチャックテーブル61を矢印23aで示す方向に移動し研磨域25に位置付ける。そして、図4に示すように研削ホイール4の複数の研削砥石42の外周縁がチャックテーブル61の回転中心P1、即ち半導体ウエーハ10の中心を通過するように位置付ける。
【0017】
このように研削ホイール5とチャックテーブル61に保持された半導体ウエーハ10が図4に示す位置関係にセットされたならば、チャックテーブル61を図4において矢印61aで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、上記スピンドルユニット32のサーボモータ323を駆動して研削ホイール4を矢印4aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、上記研削送り手段5のパルスモータ54を正転駆動し研削ホイール4を矢印4bで示すように下降して研削送りする。この結果、研削ホイール4の複数の研削砥石42が半導体ウエーハ10の上面である基板100の裏面100bに所定の圧力で押圧し、基板100の裏面100bは全面に渡って研削される。この研削工程においては、上記研削水供給手段7が作動して研削水がスピンドルユニット32の回転スピンドル322に設けられた通路322a、マウンター324に設けられた通路324a、研削ホイール4の環状の支持部材41に設けられた通路41aを介して研削砥石42による研削加工部に供給される。このようにして研削工程を実施すると、半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bには上述した研削によって厚さが2μm程度の加工歪層が生成される。
【0018】
上述した研削工程を実施することにより、半導体ウエーハ10における基板100が所定の厚さ(例えば100μm)に達したら、上記研削送り手段5のパルスモータ54を正転駆動を停止し、研削送りを停止した状態でチャックテーブル61を図5において矢印61aで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、研削ホイール4を矢印4aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転するスパークアウト研削を実施する(スパークアウト研削工程)。このスパークアウト研削工程においては、上記研削水供給手段7およびキレート剤供給手段8を作動し、キレート剤が混入された研削水をスピンドルユニット32の回転スピンドル322に設けられた通路322a、マウンター324に設けられた通路324a、研削ホイール4の環状の支持部材41に設けられた通路41aを介して研削砥石42による研削加工部に供給する。この結果、半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bは僅かに研削され、上記研削工程において生成された加工歪層が1μm研削され、加工歪層の厚さが1μm程度となる。このスパークアウト研削工程においては、研削砥石42による研削加工部にキレート剤が混入された研削水が供給されるので、基板100の内部に含有している銅(Cu)等の金属原子が減少せしめられる。なお、スパークアウト研削工程において研削砥石42による研削加工部に供給されるキレート剤が混入された研削水には、界面活性剤やクエン酸を混入することにより基板100への濡れ性が向上するため更に効果的である。また、スパークアウト研削工程が実施された半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bには上記研削工程において生成された加工歪層が1μm程度残存するので、ゲッタリングシンク(gettering sink)効果が維持されるとともに、抗折強度の低下も抑えられる。
【0019】
次に、本発明によるウエーハの研削方法の他の実施形態について、図6乃至図8を参照して説明する。なお、図6乃至図8に示す研削方法を実施するには、上記研削ホイール4の研削砥石42は径の小さいものが用いられる。
ここで、上記チャックテーブル61に保持された半導体ウエーハ10と研削ホイール4を構成する研削砥石42の関係について、図6を参照して説明する。チャックテーブル61の回転中心P1と研削砥石42の回転中心P2は偏芯しており、研削砥石42の外径は、上記図2に示す半導体ウエーハ10のデバイス領域104と余剰領域105との境界線106の直径より小さく境界線106の半径より大きい寸法に設定され、環状の研削砥石42がチャックテーブル61の回転中心P1(半導体ウエーハ10の中心P2)を通過するようになっている。
【0020】
次に、図6に示すようにチャックテーブル61を矢印61aで示す方向に300rpmで回転しつつ、上記スピンドルユニット32のサーボモータ323を駆動して研削ホイール4を矢印4aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、上記研削送り手段5のパルスモータ54を正転駆動し、研削ホイール4を図7において矢印4bで示すように下降して研削送りする。この結果、半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bには、図8に示すようにデバイス領域104に対応する領域が研削除去されて所定厚さ(例えば30μm)の円形状の凹部104bに形成されるとともに、外周余剰領域105に対応する領域が残存されて環状の補強部105bに形成される(研削工程)。この研削工程においては、上記研削水供給手段7を作動し、研削水をスピンドルユニット32の回転スピンドル322に設けられた通路322a、マウンター324に設けられた通路324a、研削ホイール4の環状の支持部材41に設けられた通路41aを介して研削砥石42による研削加工部に供給する。このようにして研削工程を実施すると、半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bに形成された凹部104bの底面には上述した研削によって厚さが2μm程度の加工歪層が生成される。
【0021】
上述した研削工程を実施することにより、半導体ウエーハ10における基板100が所定の厚さ(例えば30μm)に達したら、上記研削送り手段5のパルスモータ54を正転駆動を停止し、研削送りを停止した状態でチャックテーブル61を図8において矢印61aで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、研削ホイール4を矢印4aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転するスパークアウト研削を実施する(スパークアウト研削工程)。このスパークアウト研削工程においては、上記研削水供給手段7およびキレート剤供給手段8を作動し、キレート剤が混入された研削水をスピンドルユニット32の回転スピンドル322に設けられた通路322a、マウンター324に設けられた通路324a、研削ホイール4の環状の支持部材41に設けられた通路41aを介して研削砥石42による研削加工部に供給する。この結果、半導体ウエーハ10の基板100の裏面100bに形成された円形状の凹部104bの底面が僅かに研削され、上記研削工程において生成された加工歪層が1μm研削され、加工歪層の厚さが1μm程度となる。このスパークアウト研削工程においては、研削砥石42による研削加工部にキレート剤が混入された研削水が供給されるので、基板100の内部に含有している銅(Cu)等の金属原子が減少せしめられる。なお、スパークアウト研削工程において研削砥石42による研削加工部に供給されるキレート剤が混入された研削水には、上述した実施形態と同様に界面活性剤やクエン酸を混入することにより基板100への濡れ性が向上するため更に効果的である。また、スパークアウト研削工程が実施された半導体ウエーハ10における基板100の裏面100bには上記研削工程において生成された加工歪層が1μm程度残存するので、ゲッタリングシンク(gettering sink)効果が維持されるとともに、抗折強度の低下も抑えられる。このように図6乃至図8に示す実施形態においては、半導体ウエーハ10の基板100の裏面100bにおけるデバイス領域104に対応する領域を研削してデバイス領域104の厚さを所定厚さに形成するとともに、半導体ウエーハ10の裏面における外周余剰領域105を残存させて環状の補強部105bを形成することにより、デバイス領域104の厚さを例えば30μmという極めて薄く形成しても剛性が維持され、ウエーハの搬送等の取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるウエーハの研削方法を実施するための研削装置の斜視図。
【図2】本発明によるウエーハの研削方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図3】図2に示す半導体ウエーハの表面に保護部材を貼着した状態を示す斜視図。
【図4】本発明によるウエーハの加工方法における研削工程の説明図。
【図5】本発明によるウエーハの加工方法におけるスパークアウト研削工程の説明図。
【図6】本発明によるウエーハの加工方法の他の実施形態を示す平面図。
【図7】本発明によるウエーハの加工方法における研削工程の他の実施形態を示す説明図。
【図8】本発明によるウエーハの加工方法におけるスパークアウト研削工程の他の実施形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1:研削装置
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
32:スピンドルユニット
322:回転スピンドル
323:サーボモータ
324:マウンター
4:研削ホイール
42:研削砥石
5:研削送り手段
54:パルスモータ
6:チャックテーブル機構
61:チャックテーブル
7:研削水供給手段
8:キレート剤供給手段
10:半導体ウエーハ
11:保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルの保持面に保持された被加工物を研削する研削砥石を備えた研削ホイールと、該研削ホイールを該チャックテーブルの保持面に対して垂直な方向に研削送りする研削送り手段と、該研削砥石による研削加工部に研削水を供給する研削水供給手段とを具備する研削装置を用いて、基板の表面に複数のストリートが格子状に形成されているとともに該複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハの研削方法であって、
該チャックテーブルの保持面にウエーハの表面側を保持し、該研削ホイールを回転しつつ該研削送り手段を作動して研削送りするとともに研削水を供給することによりウエーハの裏面を研削し、ウエーハを所定の厚さに研削する研削工程と、
該研削工程が終了した後に、該研削送り手段による研削送りを停止した状態で該研削ホイール回転しつつキレート剤を混入した研削水を供給することによりウエーハの裏面をスパークアウト研削するスパークアウト研削工程と、を含む、
ことを特徴とするウエーハの研削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−109006(P2008−109006A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292221(P2006−292221)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】