説明

ウォッシャノズル

【課題】外部から大きな衝撃力が加えられた際に、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができるウォッシャノズルを提供する。
【解決手段】洗浄液Sを噴射させるノズル体12を保持し、雄ねじ部11fが形成されたノズルハウジング11と、このノズルハウジング11を車体パネル20を介在して固定する固定手段とからなるウォッシャノズル10において、ノズルハウジング11と固定手段との間に脱落機構Dを形成し、ノズルハウジング11の下端にホース連結部15を設け、このホース連結部15に洗浄液Sを供給する弾性体のホース16を連結し、このホース16をホース連結部15の下方側に配策した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のウインドシールドガラス等に付着する雨水,泥土,塵埃等の汚れを洗浄液で洗浄する際に用いて好適なウォッシャノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のウォッシャノズルとして、図11に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このウォッシャノズル1は、図11に示すように、液体噴射口2aから洗浄液を噴射させるノズルハウジング2を有している。このノズルハウジング2の基端部2bを車体パネル8の取付孔9より裏側に突出させており、該基端部2bに形成された係止溝2cに車体パネル8の裏面8bに当接するリテーナ3を係止してある。
【0004】
そして、ノズルハウジング2の基部の外周面に形成された雄ねじ部2dにナット4を螺合することにより、車体パネル8の表面8aにパッキン5を介してノズルハウジング2を取り付けてある。
【0005】
【特許文献1】実開昭63−4866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のウォッシャノズル1では、走行中にウォッシャノズル1が外れないようにノズルハウジング2とナット4の螺合が強固になっていた。そのために、車体パネル8の外側にノズルハウジング2が突出しているので、ノズルハウジング2の軸方向に外部から大きな衝撃を受けても、ノズルハウジング2がナット4に保持固定されて該ノズルハウジング2に掛かる大きな衝撃力を緩和して吸収することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ノズルハウジングの軸方向に外部から大きな衝撃が加えられた際に、ノズルハウジングがナットから外れてその衝撃エネルギーを確実に吸収することができるウォッシャノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上端部に洗浄液を噴射させるノズル体を保持し、該ノズル体に洗浄液を供給する液体供給流路が内部に形成され、外周面に雄ねじ部が形成された円筒状のノズルハウジングと、このノズルハウジングを車体パネルを介在して固定するための固定手段とからなるウォッシャノズルにおいて、前記ノズルハウジングと固定手段との間に脱落機構を形成し、前記ノズルハウジングの下端にホース連結部を設け、このホース連結部に前記洗浄液を供給する弾性体のホースを連結し、前記ホースを前記ホース連結部の下方側に配策したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のウォッシャノズルにおいて、前記ノズルハウジングに大きな衝撃が加わり該ノズルハウジングが脱落した際に、前記ホースが配策された位置に前記ノズルハウジングが脱落するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ノズルハウジングと固定手段との間に脱落機構を形成し、ノズルハウジングの下端にホース連結部を設け、このホース連結部に洗浄液を供給する弾性体のホースを連結したことにより、ノズルハウジングの軸方向に外部から大きな衝撃が加わって、ノズルハウジングの雄ねじ部とナットの雌ねじ部の噛み合いが外れてノズルハウジングが車体パネルの下方側へ変位する際に、ノズルハウジングがホースの配策された空間に脱落するため、ノズルハウジングを他の部品に干渉させることなく車体パネルの下方側のホースの配索部分に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。また、ホースを弾性体としたことでノズルハウジングに大きな衝撃が加わり下方に変位する際、ホースが撓むのでホースが他部品に干渉せずにノズルハウジングが下方に変位することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、ノズルハウジングに大きな衝撃が加わりノズルハウジングが脱落した際に、ホースが配策された位置にノズルハウジングが変位するため、ノズルハウジングが脱落する専用のスペースを設けなくて良く、レイアウト性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態のウォッシャノズルの取付状態を示す正面図、図2は同ウォッシャノズルの取付状態を示す断面図、図3は同ウォッシャノズルのノズルハウジングの正面図、図4は同ノズルハウジングの側面図、図5は同ノズルハウジングの平面図、図6は同ノズルハウジングの雄ねじ部と該雄ねじ部に螺合されるナットの雌ねじ部のねじ山の関係を示す部分拡大説明図、図7(a)は同ノズルハウジングの底面図、図7(b)は同ノズルハウジングの下部が係止される車体パネルの取付孔を示す部分平面図、図8は同ノズルハウジングの要部の拡大断面図、図9は同ナットの断面図、図10は同ウォッシャノズルが外部からの大きな衝撃でナットから外れた状態を示す説明図である。
【0014】
図1,図2,図10に示すように、ウォッシャノズル10は、合成樹脂製で円筒状のノズルハウジング11を備えている。このノズルハウジング11はその上端部11aに位置する液体噴射口Rに球面状凹部11bを形成してあり、この球面状凹部11bに洗浄液Sを噴射させる合成樹脂製のノズル体12を摺動自在に保持してある。さらに、図2,図8に示すように、ノズルハウジング11の液体噴射口Rとノズル体12の一対の液体用流路12a,12a及び液体供給口11cに嵌め込まれた略円筒状のニップル15とは液体供給流路13でそれぞれ連通されている。尚、ノズルハウジング11に対するノズル体12の液体用流路12aの傾き、即ち、ノズル体12の液体用流路12aから噴射される洗浄液Sの噴射方向は調整できるようになっている。
【0015】
図1〜図4及び図7(a)に示すように、ノズルハウジング11の下端部11dには、複数(この実施形態では4箇所)のL字状の係止爪(係止部)14を等間隔毎にそれぞれ一体突出形成してある。このノズルハウジング11の下端部11dの各係止爪14は、図7(b)に示すインナパネル(車体パネル)20の円形の取付孔20a内に挿入されるようになっている。そして、各係止爪14の自由端14aはインナパネル20の取付孔20aの周りに突き出し形成された各係止凸部20bに係止、離脱自在になっている。即ち、図2に示すように、ノズルハウジング11の下端部11dはアウタパネル(車体パネル)21の円形の取付孔21a内を挿通して、インナパネル20の円形の取付孔20aの各係止凸部20bに係止、離脱されるようになっている。尚、アウタパネル21の取付孔21aはインナパネル20の取付孔20aより大径に形成してある。
【0016】
また、図2〜図5に示すように、ノズルハウジング11の外周面11eの中途部(中央より下側)には雄ねじ部11fを形成してある。このノズルハウジング11の雄ねじ部11fのねじ山の歯高(とがり山の高さ)H′は、図6に示すように、後述するナット18の雌ねじ部18eのねじ山の歯高(とがり山の高さ)Hよりも低く設定してある(H′<H)。さらに、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fには、フラット面(ねじ部を形成しない部分)11gを複数箇所(この実施形態では4箇所)形成してある。これらにより、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eとの噛み合いを容易に外すための脱落機構Dが構成されている。
【0017】
さらに、図1〜図5に示すように、ノズルハウジング11の外周面11eは、雄ねじ部11fから上端部11aに行くに従って外径が小さくなる円錐状に形成してある。また、図3〜図5及び図10に示すように、ノズルハウジング11の下端部11dには、ゴム製で円環状のシールパッキン(シール部材)17の基端17aを嵌め込んである。このゴム製で円環状のシールパッキン17の先端17bは、インナパネル20に圧接して該インナパネル20の取付孔20aの周りをシールするようになっている。
【0018】
図2,図9に示すように、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fに螺合される合成樹脂製のナット(固定手段)18は、インナパネル20に係止されたノズルハウジング11をアウタパネル21を挟んで固定するために該アウタパネル21の取付孔21aの内径より大きい錐状のナット本体18aと、この錘状のナット本体18aからアウタパネル21の取付孔20aを通って下方に延びる小径の薄肉円筒部18cとを備えている。この錘状のナット本体18aのノズルハウジング11の上側を外に露出させると共に保持する開口上端部18bはノズル本体18aが錘状であることから薄肉に形成された脆弱部になっている。そして、開口上端部18bの下は肉盗みによるクリアランス18hが形成されている。また、小径の薄肉円筒部18cの内周面には雌ねじ部18eを形成してある。そして、雌ねじ部18eの下方のインナパネル20側には雌ねじ部18eの外径よりも内径の大きい内周面18dを形成してある。
【0019】
さらに、ナット18のナット本体18aには環状の凹部18gを形成してある。この凹部18gには、ゴム製で円錐環状のシールパッキン(シール部材)19の基端19aを嵌め込んである。このゴム製で円錐環状のシールパッキン19の先端19bは、アウタパネル21に圧接して該アウタパネル21の取付孔21aの周りをシールするようになっている。
【0020】
また、図2に示すように、ノズルハウジング11の液体供給口11c内には略円筒状のニップル(ホース連結部)15の鍔状の基端部15aを嵌合してある。このニップル15の先端部15bには洗浄液Sを供給するホース16を連結してある。このホース16は図示しない供給ポンプの吐出側に接続されていて、該供給ポンプの作動により洗浄液タンクからの洗浄液Sをホース16及びニップル15を介してノズルハウジング11の液体供給流路13に圧送するようになっている。
【0021】
以上実施形態のウォッシャノズル10によれば、図2に示すように、ノズルハウジング11の下端部11dの各係止爪14によるインナパネル20の円形の取付孔20aの各係止凸部20bの縁部への係止状態は、ナット18の薄肉円筒部18cの下端18fがインナパネル20の表面20cに当接するまで、該ノズルハウジング11の雄ねじ部11fに該ナット18の雌ねじ部18eを螺合することにより締結固定される。これにより、ノズルハウジング11及びナット18のナット本体18aはアウタパネル21の外側に該アウタパネル21に対して略直角に突出する。
【0022】
この状態より、万が一に、ノズルハウジング11の軸方向に外部から予め定められた値を越える大きな衝撃が加わると、図10に示すように、ナット18の薄肉円筒部18cの下端18fがインナパネル20の表面20cに突き当てられていることから、その際の衝撃力Fによりノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eとのねじ部に力が作用し、ナット18の雌ねじ部18eからノズルハウジング11の雄ねじ部11fが外れて、ノズルハウジング11がインナパネル20の下方に変位する。このとき、ノズルハウジング11の外周面11eが、インナパネル20の各係止凸部20bを折り曲げ変形させて下方に変位することになる。即ち、ノズルハウジング11がインナパネル20の内側のホース16の配索空間に入り込み、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。その結果、ノズルハウジング11及びナット18の破損を防止することができる。
【0023】
このウォッシャノズル10によれば、ノズルハウジング11の下端にホース連結部としてのニップル15を設け、このニップル15に洗浄液Sを供給するホース16を連結し、ニップル15をインナパネル20からのノズルハウジング11に下端に位置させ、ホース16をニップル15の下方側に配策したことにより、ノズルハウジング11の軸方向に外部から大きな衝撃力Fが加わって、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eの噛み合いが外れてノズルハウジング11がインナパネル20の下方側へ変位する際に、図10に示すように、ノズルハウジング11がホース16を連結したニップル15の配置位置に脱落するため、ノズルハウジング11を他の部品に干渉させることなくインナパネル20の下方側のホース16の配索部分に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0024】
また、ホース16は弾性体なので、ノズルハウジング11のインナパネル20の下方側への変位時にホース16が負荷にならず、ノズルハウジング11をインナパネル20の下方側にスムーズに変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。このため、ノズルハウジング11の脱落専用のスペースをインナパネル20の下方側に設けなくて済み、インナパネル20の下方側のスペースを有効に利用することができるため、レイアウト性が良い。
【0025】
尚、前記実施形態によれば、ウォッシャノズルを自動車のアウタパネルとインナパネルの二重構造の車体パネルに取り付ける場合について説明したが、アウタパネルだけの一重構造の車体パネル等の他の被取付体にウォッシャノズルを取り付けるようにしても良い。また、ノズルハウジングと車体パネルの固定構造をノズルハウジングに形成された雄ねじ部とナットに形成された雌ねじ部の嵌合によって固定しているが、止め輪を用いて固定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態のウォッシャノズルの取付状態を示す正面図である。
【図2】上記ウォッシャノズルの取付状態を示す断面図である。
【図3】上記ウォッシャノズルのノズルハウジングの正面図である。
【図4】上記ノズルハウジングの側面図である。
【図5】上記ノズルハウジングの平面図である。
【図6】上記ノズルハウジングの雄ねじ部と該雄ねじ部に螺合されるナットの雌ねじ部のねじ山の関係を示す部分拡大説明図である。
【図7】(a)は上記ノズルハウジングの底面図、(b)は同ノズルハウジングの下部が係止される車体パネルの取付孔を示す部分平面図である。
【図8】上記ノズルハウジングの要部の拡大断面図である。
【図9】上記ナットの断面図である。
【図10】上記ウォッシャノズルが外部からの大きな衝撃でナットから外れた状態を示す説明図である。
【図11】従来のウォッシャノズルの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10 ウォッシャノズル
11 ノズルハウジング
11f 雄ねじ部
12 ノズル体
13 液体供給流路
15 ニップル(ホース連結部)
16 ホース
18 ナット(固定手段)
18e 雌ねじ部
20 インナパネル(車体パネル)
D 脱落機構
S 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に洗浄液を噴射させるノズル体を保持し、該ノズル体に洗浄液を供給する液体供給流路が内部に形成され、外周面に雄ねじ部が形成された円筒状のノズルハウジングと、このノズルハウジングを車体パネルを介在して固定するための固定手段とからなるウォッシャノズルにおいて、
前記ノズルハウジングと固定手段との間に脱落機構を形成し、前記ノズルハウジングの下端にホース連結部を設け、このホース連結部に前記洗浄液を供給する弾性体のホースを連結し、前記ホースを前記ホース連結部の下方側に配策したことを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のウォッシャノズルにおいて、
前記ノズルハウジングに大きな衝撃が加わり該ノズルハウジングが脱落した際に、前記ホースが配策された位置に前記ノズルハウジングが脱落するようにしたことを特徴とするウォッシャノズル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−80824(P2008−80824A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259586(P2006−259586)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】