説明

ウォッシュオフラベル

【課題】中程度の洗浄条件下で素早く除去可能で、冷水さらには氷水中での浸漬、低温および高温への長時間の曝露、並びに高湿度への曝露のような厳しい使用条件下でのPSA特性の優れたウォッシュオフラベルを提供する。
【解決手段】水性ポリマー分散物を乾燥させることにより形成される少なくとも1つのPSA層と膜状(filmic)層とから形成されるウォッシュオフラベルとし、前記ポリマーはアルファ,ベータ−(α,β−)エチレン性不飽和モノマーの重合残基を含み、前記水性ポリマー分散物は乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド化合物をさらに含み、前記ヒドラジド化合物は少なくとも1つのヒドラジド基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜状基体および感圧接着剤(PSA)層から形成されるウォッシュオフラベル(wash−off label)であって、接着剤が、乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド化合物を有する、ウォッシュオフラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
包装用物質、特にガラス瓶および他の容器の再利用においては、それらが再利用のために処理される前に、その対象上の付属物を除去することが必要である。特に、ガラスまたはプラスチック物質が再利用プロセスに入る前に、ガラスおよびプラスチックの瓶および他の容器からラベルを除去することが必要である。環境的に好ましい目標との調和において、使用される接着剤が水系であって有機溶媒に関連する問題を回避し、かつラベル除去のプロセス自体が過剰なエネルギー消費、または危険なもしくは汚染性の化学物質の使用もしくは発生を伴わないことが望ましい。同時に、冷水中への浸漬、冷気および熱への曝露、並びに湿潤条件への曝露をはじめとする通常の使用条件下で、接着剤がラベル物質を容器に効果的に接着するのに適していることが必要である。
【0003】
国際公開第08/057926号は、アクリル系ポリマーが少なくとも1種のヒドロキシ官能性アミンで4.5より高いpHに中和されている、除去可能なアクリル系エマルションPSAを開示する。このアクリル系ポリマーは多官能性架橋性モノマーを用いて形成されることができ、それは場合によっては外部架橋剤を含むこともできる。紙またはポリマー膜ラベルに使用される場合には、ラベルが苛性水溶液中で50℃以上の温度で洗浄される場合に、PSAが除去可能だといわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第08/057926号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際公開第08/057926号は、ウォッシュオフラベルに関連する課題を解決することを試みるが、それはヒドロキシ官能性アミンの存在を必要としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水性ポリマー分散物を乾燥させることにより形成される少なくとも1つのPSA層と膜状(filmic)層とから形成されるウォッシュオフラベルとして有用な複合体であって、前記ポリマーはアルファ,ベータ−(α,β−)エチレン性不飽和モノマーの重合残基を含み、前記水性ポリマー分散物は乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド化合物をさらに含み、前記ヒドラジド化合物は少なくとも1つのヒドラジド基を有し、前記ラベルはpH13および80℃で水中に浸漬される場合に、2分以内にガラス基体から剥離する、複合体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合体は、中程度の洗浄条件下で素早く除去可能なままで、冷水さらには氷水中での浸漬、低温および高温への長時間の曝露、並びに高湿度への曝露のような厳しい使用条件下での、PSA特性の優れた保持を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において使用される場合、アクリラートのような別の用語が後に続く用語「(メタ)」の使用は、アクリラートおよびメタクリラートの双方をいう。例えば、用語「(メタ)アクリラート」とは、アクリラートまたはメタクリラートのいずれかをいい;用語「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルのいずれかをいい;用語「(メタ)アクリロニトリル」とは、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルをいい;並びに、用語「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドをいう。
【0009】
本明細書において使用される場合、「ガラス転移温度」または「Tg」は、その温度以上でガラス状のポリマーがポリマー鎖のセグメント運動をするであろう温度を意味する。ポリマーのガラス転移温度は、周知のような、そして、Bulletin of the American Physical Society, 1,3,123ページ(1956)かつ、例えば、公表された米国特許出願公開第2008/0176996号に記載されている、フォックス式(Fox equation)によって推定されうる。
本明細書に記載される全ての数値範囲は境界値を含みかつ個別に組み合わせ可能である。
【0010】
本発明のウォッシュオフラベルは、ポリマーがアルファ,ベータ(α,β)エチレン性不飽和モノマーの重合残基を含む、水性ポリマー分散物を乾燥させることにより形成される少なくとも1つのPSA層と、少なくとも1つの膜状層とから形成され、前記水性ポリマー分散物は乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド化合物をさらに含み、当該ヒドラジド化合物は少なくとも1つのヒドラジド基を有する。
【0011】
ウォッシュオフラベルを形成するために使用される膜状層は、単一層の膜状物質を含むことができるか、または複数層構造で形成されていてよい。膜状層を形成するために使用される物質の特性、並びにラベルの意図される用途および望まれる性能特性は、膜状層としての使用に好適な物質および構造の選択を決定することができる。複数層膜の場合には、重要な考慮事項はPSA層と接触している外側層の性質である。単純な単一層膜状層を含むラベルにおいては、その膜層は、80℃に加熱されたときに横方向または縦方向のいずれかに10%未満の収縮しか示さない標準規格のポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエステル膜から形成されるべきではない。応力を適用された(stressed)膜状層のような、剥離を促進する別の層が選択される場合には、これらの物質はPSA接触層または複数層膜の他の層として使用されることができる。複数層膜においては、PSAと接触している層ではない層の1以上が応力を適用された膜、例えば、一軸または二軸延伸ポリ塩化ビニルまたは他の延伸可能な膜であることが有利である場合があり、この応力を適用された膜は、好適なウォッシュオフ条件にかけられる場合に、丸まり、かつガラスまたはプラスチック基体からラベルを引き剥がすのを助けるであろう。
【0012】
紙およびポリマー組成物をはじめとする膜状層を形成するために、広範囲の物質が使用されうる。この物質は印刷されていても印刷されていなくても良い。これは、例えば、コロナ放電、炎、プラズマなどによって表面処理されることができ、その後に適用される層に対する改良された接着性のような望ましい特性を有する表面を提供することができる。ポリマー膜のコロナ処理および炎処理の手順は当業者に周知である。
【0013】
膜状層は単一層膜または複数層膜であることができる。複数層膜は2〜10、またはそれより多い層を含むことができる。膜状層は配向されていても良いし、配向されていなくても良い。それは透明であっても良いし、不透明であっても良い。不透明な表面材料(facestock)は一般的に後述のようなポリマーおよび1種以上の顔料を含み、所望の色を有する物質または複数層膜の1層を提供する。この目的のために有用な顔料は当該技術分野において周知である。例えば、二酸化チタンまたは他の白色顔料をポリマーに導入することにより白色膜が製造されうる。灰色または黒色膜を提供するためにカーボンブラックが使用されうる。
【0014】
膜状層の製造に使用するのに好適なポリマーは、例えば、以下の1種以上のポリマーおよびコポリマーを含むことができる:ポリオレフィン、ポリアクリラート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキレンアクリラート)、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(アルキレンビニルアセタート)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、フルオロポリマー、ポリスルホン、ポリカーボネート、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エチレンメタクリル酸のナトリウムもしくは亜鉛塩ベースのアイオノマー、ポリアクリロニトリル、アルキレン−酢酸ビニルコポリマー、またはいわゆる「バイオポリマー」、または前述のものの2種以上の混合物。膜状層は、ポリアミド6、ポリアミド11およびポリアミド12のようなポリアミド膜を含むことができる。
【0015】
本発明のラベルを形成するのに使用されうるバイオポリマーは、生物ソースから得られることができ、そして、炭水化物;多糖(デンプン、セルロース、グリコーゲン、ヘミセルロース、キチン、フルクタン イヌリン、リグニンおよび/またはペクチン物質など);ガム;タンパク質、場合によって、穀物、植物および/または動物タンパク質(グルテン(例えば、小麦由来)、ホエイタンパク質および/またはゼラチンなど);コロイド(ハイドロ−コロイド、例えば、天然ハイドロコロイド、例えば、ガムなど);他のポリ有機酸(ポリ乳酸および/またはポリガラクチク酸(polygalactic acid)など);これらの有効な混合物;および/またはこれらの有効な修飾された誘導体から選択されうる。
【0016】
ある実施形態においては、バイオポリマー膜はセルロース、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース)またはポリ乳酸から選択されるバイオポリマーから形成されるものである。膜状層は、実質的に連続した、好ましくは、不織のおよび/または絡まった構造のセルロースを含む膜をベースにすることができる。本発明の膜状層は、非微生物セルロース、例えば、非溶媒和流体中(例えば、これに限定されないが、N−メチルモルホリン−N−オキシド(NMMO)およびLiClとフタル酸ジメチル(DMP)との混合物)のセルロース系物質分散物から再生されたセルロースを含むことができる。1つの具体的な例は「ビスコース」であり、これは苛性ソーダ中のセルロースキサントゲン酸ナトリウムである。分散物からのセルロースは、好適な処理(例えば、ビスコースのための好適な試薬が希硫酸でありうる試薬の添加)および、このように形成されたセルロースを任意に押し出すことによってその場でセルロースを再生することにより膜にキャストされうる。本明細書においては、このようなセルロースは再生セルロースと称され、本発明の好ましい膜は再生セルロースを含む。簡単には、本発明の膜は実質的に木材ソースからのセルロースを含み、最も好ましくは、セルロース系物質の少なくとも90%は木材ソースからのものである。ある好適なセルロースベースの膜は、NatureFlex(商標)再生セルロース膜(イノビアフィルム;Innovia Films)である。
【0017】
本発明のある実施形態においては、膜状層のプラスチック膜は応力を適用されておらず(すなわち、延伸されていない)、一方で、他のものにおいては、それは少なくとも一方向に延伸されていることができる。複数層膜においては、複数層の1つだけ、または複数層の全部より少ない層が一軸または二軸延伸されていてよい。2以上の層が延伸されている複数層膜の場合には、これらの層は全て本質的に同じ方向に延伸されていて良く、または異なる層が相対的に互いに異なる方向で延伸されていて良い。
【0018】
複数層膜の層の1つだけに(または全部より少ない層に)、特に、最下膜層(すなわち、接着剤層に最も近い層)に収縮可能に延伸された膜を使用すること、および他の層の1以上に、非収縮性膜、すなわち、熱で固定した寸法安定膜を使用することが可能である。この膜層は、積層接着剤、すなわち、ポリウレタンベースの接着剤のような一液または二液型積層接着剤、および感圧接着剤または熱活性化可能な接着剤の手段によって互いに結合されることもできる。収縮可能に延伸されたポリマーの例には、一軸または二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)膜、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)膜、およびポリ塩化ビニル(PVC)膜が挙げられる。
【0019】
本発明のある実施形態においては、膜状層、または複数層膜の少なくとも接着剤層を有する層は、接着剤層の適用前に、例えば、コロナ処理、炎前処理、プラズマ前処理もしくは化学グラフト化によって、または、例えば、塩素化ポリオレフィン、塩素化ゴム、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、塩素化ポリプロピレンもしくは重合されたエチレン/アクリルアミドコモノマーを含む接着促進介在層の助けを伴って処理されうる。
【0020】
ウォッシュオフラベルは、水性ポリマー分散物を乾燥させることにより形成される少なくとも1つの感圧接着剤層を含む。その分散物のポリマーは、α,β−エチレン性不飽和モノマーの重合残基を含む。PSAは、少なくとも1つのヒドラジド基を含むヒドラジド化合物も、乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量で含み、かつ他の一般的なまたは有用な成分、例えば、限定されないが、粘着付与剤、可塑剤、界面活性剤(個別の成分としてまたは重合性界面活性剤モノマーの重合残基として含む)、開始剤、連鎖移動剤、多価金属イオン塩、消泡剤、増粘剤、レオロジー改変剤、顔料、ワックス、充填剤および湿潤剤の1種以上をさらに含むことができる。ワックスがPSAに組み込まれる場合には、それはワックスの水性分散物の形態であり得る。
【0021】
ある実施形態においては、ラベルは、膜状層の同じ面上にPSAの2以上の層を含むことができ、ここで、接着されるべき基体(すなわち、ガラスまたはプラスチック容器)と接触するPSAの層は、乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量で、少なくとも1つのヒドラジド基を有するヒドラジド化合物を含むPSAである。このような外側PSA層と膜状層との間の他のPSA層は、他方の層と類似の組成のものでありうるか、または他のPSA層はヒドラジドなしで形成されることができ、かつ別の望ましい特性のために選択されうる。PSAの複数層が使用される場合には、その複数層は、当該技術分野において知られた好適な手段によって、例えば、カーテンコーティング操作などによって、膜状層上にコーティングされうる。
【0022】
乳化重合による水不溶性ラテックスポリマーの水性分散物の製造は当該技術分野において周知である。乳化重合の実施は、D.C.Blackley、Emulsion Polymerization(Wiley,1975)に、およびH.Warson,The Applications of Synthetic Resin Emulsions,チャプター2(Ernest Benn Ltd.,ロンドン 1972)に詳細に論じられている。重合方法および有用な重合助剤、例えば、分散剤、開始剤、連鎖移動剤などが周知であり、例えば、公表されている米国特許出願公開第2008/0176996号に記載されている。
【0023】
水性ポリマー分散物を製造するのに使用されるα,β−エチレン性不飽和モノマーは、合成樹脂エマルション技術において従来使用されるものであることができる。アクリル系モノマーは、感圧接着剤組成物として使用されるラテックスポリマーを製造するのに好ましい。アクリル系モノマーの例には、(メタ)アクリル酸の(C−C24)アルキルエステルが挙げられる。本発明に使用されるポリマーを形成するのに使用されうる(メタ)アクリル酸のエステルの(C−C24)アルキル基の例には、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル基などが挙げられる。具体的な例としては、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸sec−ブチルおよびメタクリル酸t−ブチルが挙げられる。本ラテックスポリマーの製造においては、(メタ)アクリル酸の(C−C12)アルキルエステルが好ましい。
【0024】
水性ポリマー分散物の製造におけるアクリル系モノマーとのコモノマーとして少ない割合(すなわち、全モノマー成分の5重量%未満)で有用な他のモノエチレン性不飽和重合性モノマーには、ハロゲン化ビニリデン、ハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエステル、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル、並びにエチレンとこのようなビニルエステルとの混合物、アルコールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ジエチレングリコールモノエチルもしくはモノブチルエーテルメタクリラート、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸の(C−C10)アルキルエステル、およびアクリル酸の高次のオリゴマー、スチレンおよびアルキル置換スチレン並びにビニル芳香族、例えば、アルファ−メチルスチレン、エチレンと他のアルキルオレフィン、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテンなどとの混合物、ビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−クロロエチルエーテルなどが挙げられる。
【0025】
アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソ−オクチルが特に好ましいモノマーである。ある好ましい実施形態においては、ポリマーは、50℃を超えるホモポリマーTgを有する少なくとも1種の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー、例えば、メタクリル酸メチルまたはスチレンもしくは他のスチレン系モノマーを0.25〜5%含む。
【0026】
水性ポリマー分散物を製造するのに有用な、さらなるモノエチレン性不飽和重合性コモノマーには、ヒドロキシ官能性ビニルモノマー、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ブタンジオール、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。有用なモノマーのさらなる例には、不飽和脂肪族ジカルボン酸の部分エステル、特にこのような酸のアルキルハーフエステルが挙げられる。このような部分エステルの例は、アルキル基が1〜6の炭素原子を含む、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のアルキルハーフエステルである。このグループの化合物の代表的なものには、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、およびマレイン酸モノメチルが挙げられる。少量の他の成分、例えば、接着促進コモノマーも使用されうる。
【0027】
水性ポリマー分散物の形成において(メタ)アクリラートおよび他のモノマーと共重合されうるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸、および高次アクリル酸オリゴマー、およびこれらの混合物、エタアクリル酸、イタコン酸、アコニチン酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、アルファ−クロロアクリル酸、ケイヒ酸、メサコン酸およびこれらの混合物が挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和カルボン酸が、水性ポリマー分散物のモノマーの全重量を基準にして、10重量%、5重量%または3.5重量%の上限から0.1重量%、0.25重量%または0.5重量%の下限までの範囲の量を構成するのが好ましい。
【0028】
モノエチレン性不飽和モノマーに加えて、少なくとも2つのアルファ,ベータ−エチレン性不飽和部位を有するα,β−エチレン性不飽和モノマー、すなわち、ジ−または多−エチレン性不飽和モノマーが、少ない割合で、第1段階ポリマーの製造におけるコモノマーとして使用されうる。しかし、本発明のウォッシュオフラベルにおいて有用なPSAを形成するために、何らかの多エチレン性不飽和モノマーを使用することは必須ではなく、特定の好ましい実施形態においては、PSAはこのような多エチレン性不飽和モノマーを使用せずに製造される。
【0029】
ある実施形態においては、PSAは複数段階プロセスにおいて形成されることができ、この複数段階プロセスにおいては、第1段階ポリマーの製造後、1以上の後の段階の重合が行われ、ここでは、モノマーは、少なくとも2つのα,β−エチレン性不飽和部位を有する少なくとも1種のモノマーを含むα,β−エチレン性不飽和モノマーを含み、前記追加のモノマーは低い水溶解性を有し、かつ水不溶性ラテックスポリマーの第1段階水性分散物中に分散される。追加の多官能性α,β−エチレン性不飽和モノマーが、第1段階ポリマーの全重量を基準にして、10重量%または7.5重量%の上限から、0.25重量%または0.5重量%の下限までの範囲の量を構成することが好ましい。この種の複数段階ポリマーは公表された米国特許出願公開第2008/0176996号および第2008/0281005号に記載されている。
【0030】
水性ポリマー分散物を形成するために使用されるモノマーは、−20℃未満、−30℃未満、または−40℃未満のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーを形成するような割合で選択され使用されることが好ましい。配合されたPSAが、接着剤の特に意図される用途および得られるラベル複合体に望まれる特性を示すであろうように、これらのおよび他のTg値は選択される。
【0031】
水性ポリマー分散物は、従来の界面活性剤および重合性界面活性剤(例えば、エチレン性不飽和界面活性剤モノマー)をはじめとする界面活性剤を用いて重合されうる。ポリマーは単一段階ポリマーとしてまたは複数段階ポリマーとして形成されうる。複数段階ポリマー(段階数「i」)が望まれる場合には、1以上の第1段階(段階1)、1以上のその後の段階(段階2〜段階i−1)、または最終段階(段階i)、例えば、これらの任意の組み合わせおよびこれらの段階の全ての形成に重合性界面活性剤が使用されうる。好適な重合性界面活性剤は公表された米国特許出願公開第2003/0149119号および第2006/0235131号に記載されており;例としては、ノニルフェノキシプロペニルポリエトキシ化スルファート(例えば、Daiichi CorpからのHITENOL(商標))、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム(例えば、Henkel CorpからのTREM(商標)LF−40)が挙げられる。
【0032】
本発明のある実施形態においては、水性ポリマー分散物は、(i)−40℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上のモノマーを少なくとも40重量%;および(ii)30℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上の軟質親水性非イオン性モノマーを10〜50重量%;含むエマルションポリマーを含む。このエマルションポリマーは1種以上のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマーを0.1〜10重量%さらに含むことができる。ポリマーは公表された米国特許出願公開第2008/0176996号に記載された第1段階ポリマーに対応することができる。ある実施形態においては、軟質親水性モノマーは30℃未満のホモポリマーTgおよび25℃で2%以上の水溶解性を有する(例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、酢酸ビニル)。
【0033】
本発明の別の実施形態においては、PSA層は(i)水性ポリマー分散物、および(ii)PSAの乾燥重量を基準にして、下限1重量%、5重量%および10重量%から上限25重量%、30重量%および55重量%で、約35,000未満の数平均分子量および約40℃を超える軟化点(ASTM試験方法#E−2867によって決定される)を有する1種以上のポリマー系添加剤を含むことができる。ポリマー系添加剤は水性ポリマー分散物中で重合されうるか、またはポリマー系添加剤は水性ポリマー分散物にブレンドされ得るかもしくは他の方法で添加されうる。好適なポリマー系添加剤は米国特許第4,912,169号および公表された米国特許出願公開第2006/0142493号に記載されており、この後者は重合性界面活性剤の使用を伴って製造されたポリマー系添加剤を記載する。
【0034】
さらなる実施形態においては、PSA層は、上述のような、(i)−40℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上のモノマーを少なくとも40重量%;および(ii)30℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上の軟質親水性非イオン性モノマーを10〜50重量%;含むエマルションポリマーを含み、さらに上記種類のポリマー系添加剤を含むことができる。この実施形態は、ラベルがポリオレフィン容器、例えば、ポリエチレン瓶上に使用される場合に、特に好ましい。
【0035】
本発明の利点を達成するために、PSAを形成するのに使用される水性ポリマー分散物は、少なくとも1つのヒドラジド基を有するヒドラジド化合物を、乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量で含まなければならない。好ましくは、PSAは、少なくとも1つのヒドラジド基を有するヒドラジド化合物を、乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−5〜3×10−4、または2.5×10−5〜3×10−4、または5×10−5〜2.5×10−4当量で含む。ヒドラジド化合物がアジピン酸ジヒドラジド(ADH)である実施形態においては、例えば、ADHは、乾燥接着剤の重量を基準にして、0.01〜5重量%の量で、好ましくは、0.1〜3重量%、または0.25〜3重量%、または0.5〜2.5重量%の量で存在しなければならない。
【0036】
本発明の好ましい実施形態においては、水性ポリマー分散物はカルボニル官能基を含まないが、このカルボニル官能基は、存在する場合には、ヒドラジド官能基との縮合反応またはこのような基との他の反応を受けうるであろう。しかし、水性ポリマー分散物中に存在するカルボニル官能基がある場合には、得られる感圧接着剤は上記の要件を満たすように、水性ポリマー分散物中でこのようなヒドラジド官能基とカルボニル基との間の何らかの反応の後で、充分な遊離のヒドラジド官能基を有しているべきである。すなわち、水性ポリマー分散物は、ヒドラジド官能基との縮合反応を受けうるカルボニル官能基に対して、乾燥接着剤1グラムあたり1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド官能基分モル過剰で存在する量のヒドラジド官能基を含む。
【0037】
ある実施形態においては、ヒドラジド化合物は2以上のヒドラジド官能基を含む。ヒドラジド化合物はC−C10ジカルボン酸ジヒドラジドでありうる。本発明において使用するのに特に好適なジヒドラジドはシュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドおよびイソフタル酸ジヒドラジドである。アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジドが好ましい。1種類のジヒドラジド化合物が使用されることができ、または1種以上のジヒドラジドの組み合わせが使用されうる。
【0038】
ウォッシュオフラベルはPSA層のコーティングを膜状層の表面に適用することにより製造される。この適用は、当該技術分野において知られているあらゆる好適な手段によって行われうる。膜上へのPSAのローディングまたはコーティング量は、ガラスもしくはポリエチレンの瓶もしくは他の容器のようなガラスまたはプラスチック基体への適用に好適なラベルを形成するような量であり、例えば、15〜20g/mである。この適用方法およびローディング量は当業者に周知である。
【0039】
本発明のウォッシュオフラベルは、pH13および80℃の水に浸漬されると、2分以内にガラス基体から剥離する。しかし、中性pHおよび50℃未満の温度で水に浸漬されると、このラベルは8時間以上ガラス基体に接着したままであろう。このラベルは、FINAT試験方法FTM1によって測定される場合、少なくとも2.3ニュートン/cm(N/cm)、あるいは、少なくとも3N/cm、少なくとも6N/cm、または少なくとも8ニュートン/cmの、ガラスからの24時間乾燥接着剥離;並びに、FINAT試験方法FTM1によって測定される場合、少なくとも2N/cm、あるいは、少なくとも3N/cmの、ポリエチレン(PE)からの24時間乾燥接着剥離を有する。洗浄溶液は、例えば、水中1.5%〜2%NaOH溶液から形成されうる。
【実施例】
【0040】
以下の表に示されるように、一連のラベルが製造され、接着剥離(peel adhesion)およびウォッシュオフ特性について試験された。膜状層は(1)ROBOND商標PS−8915アクリル系水性分散物ポリマー(ローム アンド ハース カンパニー、米国、フィラデルフィア)感圧接着剤単独で、(2)1重量%のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を含むROBOND PS−8915接着剤で、または(3)1重量%のADHおよび1重量%のアニオン性カルナウバワックスエマルションを含むROBOND PS−8915接着剤で、コーティングされた。それぞれの場合においては、コーティング剤は0.185重量%のACRYSOL商標RM−8Wレオロジー改変剤(ローム アンド ハース カンパニー)を含んでいた。追加の成分は、PSAの全重量を基準にして、示された重量パーセントで存在する。
【0041】
試験された膜はポリエチレンテレフタレート(PET)膜(25μおよび50μ)、ポリプロピレン(PP)膜(55μ)、ポリエチレン(PE)膜(45μ)、ポリラクチド(PLA)膜(40μ)、アセタート膜(50μ)および共押出配向収縮膜(50μ)であった。共押出ポリエチレンテレフタレート(PETG)と考えられる最後の膜は、製造者によると、水中、95℃、30秒で75%の横方向(TD)収縮を有する。コーティングされた膜はガラス板およびガラス瓶に適用された。表に示されるように、膜と接着剤とのそれぞれの組み合わせについて、複数のサンプルが試験された。
ガラス板を用いて、FINAT試験方法FTM1に従って、接着剥離が試験された。
【0042】
ウォッシュオフは、ラベルが接着されたガラス瓶を、pH13で80℃の水中に配置することにより試験された。洗浄液は水中2%NaOH溶液を使用することにより調製された。ガラス板から膜が離れた時点が観察され、表に示されるように記録された。表中で使用される記号は:AF=接着破壊−わずかに接着;CF=凝集破壊−幾分かの接着;MF=混合破壊(接着および凝集破壊);AFB=裏当てからの接着破壊−強い接着;AFB=擦ることなく指で容易に除去されうる;剥離=瓶からのラベルの離層;並びに、min、hrs、wkはそれぞれ、分、時間、および週である。
【0043】
表中のデータは、膜状ラベルが共押出PET収縮膜のような膜である場合の、ラベル構築物の有効性を示す。これに対して、PSA層でコーティングされる膜状層が標準規格のPP、PEまたはPET(すなわち、80℃で加熱した際に、横または縦方向のいずれかにおいて10%未満しか収縮しない)である場合には、得られるラベルは、上述のような劣ったウォッシュオフ特性を有する。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

+PENTAPLAST(商標)SF−E649/15配向収縮膜(Klockner Pentaplast、ドイツ、ハイリゲンロート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの膜状層と;
水性ポリマー分散物を乾燥させることにより形成される少なくとも1つの感圧接着剤層と;
を含むウォッシュオフラベルであって、
前記ポリマーはα,β−エチレン性不飽和モノマーの重合残基を含み、前記水性ポリマー分散物は乾燥接着剤1グラムあたりヒドラジド官能基1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド化合物をさらに含み、前記ヒドラジド化合物は少なくとも1つのヒドラジド基を有し、
前記ラベルはpH13および80℃で水中に浸漬される場合に、2分以内にガラス基体から剥離する;
ウォッシュオフラベル。
【請求項2】
ヒドラジド化合物が1分子あたり2以上のヒドラジド基を有する、請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
ヒドラジド化合物がC−C10ジカルボン酸ジヒドラジドである、請求項2に記載のラベル。
【請求項4】
ヒドラジド化合物が、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、およびイソフタル酸ジヒドラジド、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載のラベル。
【請求項5】
水性ポリマー分散物が、(a)−40℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上のモノマーの残基を少なくとも40%;および(b)30℃未満のホモポリマーTgを有する1種以上の軟質親水性非イオン性モノマーの残基を10〜50%;含む、請求項1に記載のラベル。
【請求項6】
水性ポリマー分散物が、さらに、1種以上のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマーの残基を0.1〜10重量%含む、請求項1に記載のラベル。
【請求項7】
膜状層が単一層膜または複数層膜を含み、前記単一層膜または複数層膜が、ポリオレフィン、ポリアクリラート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリ(アルキレンアクリラート)、ポリ(エチレンビニルアルコール)、ポリ(アルキレンビニルアセタート)、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、フルオロポリマー、ポリスルホン、ポリカーボネート、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エチレンメタクリル酸のナトリウムもしくは亜鉛塩ベースのアイオノマー、ポリアクリロニトリル、アルキレン−酢酸ビニルコポリマー、もしくはバイオポリマー、または前述のものの2種以上の混合物から形成される層を含む、請求項1に記載のラベル。
【請求項8】
膜状層が、炭水化物、多糖、デンプン、セルロース、グリコーゲン、ヘミセルロース、キチン、フルクタン イヌリン リグニン、ペクチン物質、ガム、穀物タンパク質、植物タンパク質、動物タンパク質、グルテン、ホエイタンパク質、ゼラチン、コロイド、ハイドロ−コロイド、ポリ乳酸、およびポリガラクチク酸、並びにこれらの混合物、ブレンドまたは組み合わせからなる群から選択されるバイオポリマーから形成される少なくとも1つの層を含む、請求項7に記載のラベル。
【請求項9】
ラベルが、FINAT試験方法FTM1で測定される場合に、少なくとも3ニュートン/cmの、ガラスからの24時間乾燥接着剥離を有する、請求項1に記載のラベル。
【請求項10】
水性ポリマー分散物が、ヒドラジド官能基との縮合反応を受けうるカルボニル官能基に対して、乾燥接着剤1グラムあたり1×10−6〜5×10−4当量のヒドラジド官能基分モル過剰で存在する量のヒドラジド官能性化合物を含む、請求項1に記載のラベル。

【公開番号】特開2011−34067(P2011−34067A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−151627(P2010−151627)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】