説明

ウォーム及びウォーム製造金型

【課題】
従来のプラスチックス製ウォームは、直接性能に影響しないように薄肉部が存在しないが、金型のパーディングラインが複雑な三次元曲面であるために、金型製作加工は難しく、製造コストが高く、製造周期が長い。また、多く生産すると、金型のパーティングラインの合わせ面に磨耗が生じ、磨耗面からウォームの歯面に突起やバリが発生し、駆動ユニット又は減速装置の騒音性能などに影響する。
【解決手段】
本発明のウォームは通常のウォームを軸垂直平面で切断した基本ウォーム部と、その切断面の形状を境目にして軸方向に薄肉にならない所定の厚さまで引延して形成した平板部とを合成した構造とし、金型のパーティングラインを単純なフラットパーティングラインを設けることで、薄肉部をなくしただけではなく、複雑な三次元曲面をなくしたことで、金型加工が容易にでき、多く生産しても摩耗による装置への影響が出なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動ユニット又は減速装置などに用いられるウォーム及びウォーム製造金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウォームギヤは、ウォームとそれに合うウォームホィールを組合せた伝動機構であり、他の歯車機構に比べて同じ体積で高減速比が得られるので、ウォームギヤは駆動ユニット又は減速装置の基礎部品として古くから使用されている。元々ウォームは金属製で切削、研削、及び転造加工などにより作られたが、自動車、OA機器など分野では、軽量化、低コスト、大量生産などを追究するために、近年では、射出成形法によるプラスチック製のウォームが使用されるようになっている。
【0003】
プラスチック製のウォームを製造する金型は、簡単な作り方として、ウォームの軸線より、平面でウォームを二つに割るようにして、その平面を金型のパーティングライン(金型の固定側型板と可動側型板の分割線のこと、又は型と型の合わせ面のこと。PLとも言う)として、それぞれ金型の固定側と可動側入子にして、その中にウォームの形状を作り、成形後可動側の入子を開いて、ウォーム製品を取り出す構造ができる。
【0004】
しかし自動車、OA機器などの分野では、駆動ユニット又は減速装置を滑らかに伝動すること及び騒音を抑えるために、上記のウォーム歯の表面にパーティングラインにより発生する段差やバリは許されない。ウォームの金型入子は一体に作り、成形の後は金型入子を回転しながらウォーム製品取り出すことが要求されている。つまり、ウォーム軸断面でパーティングラインを作ることができず、ウォームの端面でパーティングラインを作るしかない。
【0005】
しかしながら、図5に示すように、ウォームの端面2において簡単なフラットパーティングラインによりウォーム1を作るときに、ウォームの歯が螺旋状なものの場合は、必ずフラット端面に斜めに薄肉の部分3が発生する。駆動ユニット又は減速装置作動中、その薄肉の部分は欠けて脱落し、噛み合っている歯車に挟まれ、伝動の支障になり、駆動ユニット又は減速装置は機能しなくなることがある。
【0006】
上記のような状況を回避するために、図6のような薄肉修正形ウォーム4が開発されている。この薄肉修正形ウォーム4は、図5のウォーム1の端面薄肉部分3をカットし、角の部分を丸めた形状5に修正されるため、伝動の支障がなく、本来のウォームの機能は発揮できる。
【0007】
しかし、図6の薄肉修正型ウォーム4は、螺旋面のウォームの歯6を円滑に連結及び高精度の位置決めのために、そのウォームの金型は、図7のように金型のパーティングラインが、螺旋面のウォーム輪郭線に沿った複雑な三次元曲面になり、固定側と可動側の入子とも合わせ面の加工要求が厳しく、金型製作は難しいために、製造コストが高く、製造周期が長いなどの欠点がある。また、この薄肉修正型ウォーム金型を用いて、ウォームを多く生産する過程で、金型のパーティングラインの合わせ面に磨耗が生じやすいため、金型の耐久性は悪く、磨耗面からウォームの歯面に突起又はバリが発生し、駆動ユニット又は減速装置の騒音性能などに影響することもあった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に述べたように、自動車、OA機器分野の駆動ユニット又は減速装置に使用されるプラスチックス製ウォームは、使用性能を満たした薄肉部のないウォームが開発されたが、金型のパーディングラインが複雑な三次元曲面であるために、固定側と可動側の入子とも合わせ面の加工精度の要求が厳しい。それにより、金型製作加工は難しいために、製造コストが高く、製造周期が長いなどの欠点がある。また、多く生産すると、金型のパーティングラインの合わせ面に磨耗が生じやすいため、金型の耐久性は悪く、磨耗面からウォームの歯面に突起又はバリが発生し、駆動ユニット又は減速装置の騒音性能などに影響することもあった。
【0009】
したがって、本発明は従来のウォームが持っていた問題を解決しようとするもので、ウォームの歯に欠けて落ちることがないような薄肉部分が存在せず、製造し易く、低コストで、耐久性の良いウォーム及びウォーム製造金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明にあっては、通常のウォームを軸垂直平面で切断した基本ウォーム部と、その切断面の形状を境目にして軸方向に薄肉にならない所定の厚さまで引き伸ばして形成した平板部とを合成した、ウォームの噛み合う性能に影響しない新型のウォームを発明した。
また、前記新型ウォームの製造金型として、軸垂直平面を金型のパーティングラインに設定し、少なくとも平面から放電法又は電鋳法により作った、基本ウォーム部を形成するウォームキャビティを持つ可動側金型入子と、ウォーム平板部を形成する可動側金型入子のパーティングラインのキャビティ形状に合う平板キャビティを持つ固定側金型入子から構成することを特徴とする製造金型を発明した。
また、新型ウォームの製造金型において、可動側金型入子のキャビティのPL面に発生する薄肉部を欠けて壊れることがないように拡大して修正した形状があり、固定側の入子のPL面上のキャビティ形状は可動側金型入子PL面上のキャビティ形状より若干大きくした固定側金型入子を持つことを特徴とする新型ウォーム製造金型を発明した。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウォームは通常のウォームを軸垂直平面で切断した基本ウォーム部と、その切断面の形状を境目にして軸方向に薄肉にならない所定の厚さまで引延して形成した平板部とを合成した構造とし、金型のパーティングラインを単純なフラットパーティングラインを設けることで、薄肉部をなくしただけではなく、複雑な三次元曲面をなくしたことで、金型加工が容易にでき、多く生産しても磨耗による装置への影響が出なくなり、金型の製造コストの低減、製造周期の短縮、高品質なウォーム製品の大幅なコスト削減が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳しく説明する。図1は本発明のウォーム11を側面から見た図である。この図1に示したように、本発明のウォーム11は、通常のウォームを軸線CLの垂直断面A-Aで切断した基本ウォーム部8と、その切断面の形状を境目にして軸方向に薄肉にならない所定の厚さまで引き伸ばして形成した平板部10とを合成したウォームである。基本ウォーム部8にある薄肉部分9は、平板部10と合成することにより、全体の新型ウォーム11として存在しなくなり、また平板部10の形状は基本ウォーム部切断面の形状から引き伸ばして形成したもので、ウォームホイールと噛み合い時の干渉は発生しない。なお、平板部10の厚さは欠けて壊れないようにするために、0.2mm以上にすることが望ましい。
【0013】
本発明の新型ウォームの製造金型18は、図2に示したように、少なくとも可動側金型入子12、固定側金型入子13により構成され、金型の分割面であるパーティングラインは、単純な平面A-Aに設定している。また、新型ウォーム製品の中心軸部に軸穴がある製品の場合、センターピン14及び突出しスリーブ15が必要となる。
【0014】
可動側金型入子12では、平面となるPL面からウォーム電極をウォームの螺旋状に放電する方法で、一体型のウォームキャビティ12bが製作される(その他、電鋳による製法もある)。そのとき、可動側金型PL面に図3に示したabcdfa曲線のよう断面形状が形成される。さらにこの金型の薄肉部になっているbcd曲線部を欠けて壊れないようにaed曲線までに修正し最終的にPL面の断面形状はaedfaのような形状になる。この可動側金型入子12のキャビティ12bは製品新型ウォーム11の基本ウォーム部8を形成する。
【0015】
固定側金型入子13では、PL面において、図3に示すような可動側金型入子PL面の断面形状はaedfaのような形状を逆転写し、図4に示したafdeaのような形状で、PL面に垂直方向に薄肉にならない程度の深さまで平板状なキャビティ13bを製作し、さらにそのキャビティの底面に注入口13cを設けてある。この固定側金型入子13のキャビティ13bは製品新型ウォーム11の平板部10を形成する。また、固定側金型入子13のPL面上のキャビティ形状は可動側金型入子PL面上のキャビティ形状より若干大きくして、固定側金型と可動側金型の位置がずれた時にも薄肉部が発生しない対策を取る。
【0016】
センターピン14は、ウォームの軸穴を形成する部品であり、右側の先端部はバリが出ないように先端の平面は固定側金型入子13の底面に接触している。
【0017】
上記のような可動側金型入子12、固定側金型入子13、センターピン14及び突出しスリーブ15の組合せた新型ウォームの製造金型18の成形プロセスは、まず注入口13cから、溶融したプラスチックがキャビティ13bとウォームキャビティ12bに充填され、そして保圧、冷却硬化後、可動側金型入子12が矢印Vの方向へ移動し、固定側金型入子13の中に形成した新型ウォーム11の平板部10を固定側金型入子13から離型する。その後、可動側金型入子12がR矢印方向に回転する同時に、センターピン14は回り止めされた新型ウォーム11を矢印S方向へ移動し、可動側金型入子12から離型したら、突出しスリーブ15より新型ウォーム11をセンターピン14から分離し、新型ウォーム11の成形は完成である。
【0018】
新型ウォームを金型から取り出す時に、ネジとナットのような相対運動なので、可動側金型入子12が固定し、センターピン14と新型ウォーム11が回転しながら、S方向へ移動して可動側金型入子12から離型した後に、スリーブ15の突出しにより、製品新型ウォーム11を金型12から分離する構造も考えられる。
【0019】
以上のように、本発明のプラスチック製ウォームは、適切な位置に単純なフラットパーティングラインを設けることで、薄肉部を消しただけではなく、複雑な三次元曲面がなくなったことで、金型加工が容易にでき、多く生産しても摩耗によるウォームに突起又はバリが出なくなり、解決しようとする課題を解決できた。
【0020】
また、本発明を実施するための最良の形態として、新型ウォーム製品の中心軸部に軸穴があることについて、解説したが、ウォームの両端部、又は片側に軸を設計する場合にしても、前記金型の基本構造は変わらず、応用できると考えられる。
【0021】
その他、溶融した材料を金型に充填して冷却・硬化して製品を取り出して作ることは、ダイカストへの応用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のウォーム
【図2】本発明のウォームの製造金型
【図3】可動側金型PL面形状
【図4】固定側金型PL面形状
【図5】薄肉のあるウォーム
【図6】薄肉修正形ウォーム
【図7】薄肉修正形ウォームの金型
【符号の説明】
【0023】
8 基本ウォーム部
9 薄肉部
・ 平板部
・ 本発明のウォーム
・ 可動側金型入子
・ 固定側金型入子




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常のウォームを軸垂直平面で切断した基本ウォーム部と、その切断面の形状を境目にして軸方向に薄肉にならない所定の厚さまで引伸ばして形成した平板部とを合成した、ウォームの噛み合う性能に影響しないことを特徴とするウォーム。
【請求項2】
請求項1に記載したウォームの製造金型として、軸垂直平面を金型のパーティングラインに設定し、少なくとも平面から放電法又は電鋳法により作った、前記基本ウォーム部を形成するウォームキャビティを持つ可動側金型入子と、前記平板部を形成する前記可動側金型入子のパーティングラインのキャビティ形状に合う平板キャビティを持つ固定側金型入子から構成することを特徴とするウォーム製造金型。
【請求項3】
請求項2に記載したウォームの製造金型において、前記可動側金型入子のキャビティのパーティングライン面に発生する薄肉部が欠けて壊れないように拡大して修正した形状と、前記固定側金型入子のパーティングライン面上のキャビティ形状が前記可動側金型入子パーティングライン面上のキャビティ形状より若干大きくした固定側金型入子を持つことを特徴とするウォーム製造金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−97683(P2009−97683A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272022(P2007−272022)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(301053383)株式会社ニュートン (6)
【Fターム(参考)】