説明

ウコン酢の製造方法

【課題】 糖化やアルコール発酵の効率が低く、アルコール発酵によるアルコール性飲料および食酢の製造が難しいというウコンデンプンについて、各発酵工程での微生物管理手法を利用することで、ウコンデンプンからの商業的なウコン酢の製造方法を確立すること。
【解決手段】 加熱により糊化したウコンデンプン溶液に、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた後、アミラーゼと、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを作用させて糖化し、次いでアルコールを添加後、酢酸菌を接種して発酵させるウコン酢の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウコン酢の製造方法に関し、更に詳細には、ウコンを主原料とし、ウコンの色彩を生かしたウコン酢の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコンは香辛料、着色料ならびに健康食品素材として世界で広く利用されているショウガ科の植物であり、このものの有する黄から橙色の色彩は、これに含まれるクルクミンに由来している。このクルクミンは難水溶性で、アルコールや油分に溶解する、425nm付近に吸収波長を持つ物質である。
【0003】
これまでウコンは、その精油やクルクミンに注目した利用がなされているが、それらは主にウコンの根茎を生、あるいは乾燥・粉末化したものであった。それ以外のウコンを原料とした加工技術としては、発酵食品として、乳酸菌や紅麹菌を用いた発酵処理によりウコンの苦味など独特の風味が改善された発酵食品が知られている(特許文献1、2等)。また、植物エキスを酵母や乳酸菌で発酵処理した後、ウコン粉を加えた健康食品(特許文献3)や、ウコンにデンプンを混ぜ、紅麹菌を作用させた食材(特許文献4)なども知られている。
【0004】
このような技術背景をもとに、ウコン関連商品は健康食品ブームと連動し成長してきたが、近年は売上げが頭打ちになりつつあり、新たに市場を拡大するためには新規商品の開発が望まれている。
【0005】
一方、植物の根茎を利用する方法としては、これが有する炭水化物であるデンプンに着目し、これを発酵させてアルコール性飲料とする方法や、更にこのアルコール飲料から食酢を得る方法が知られている。そして、一般に秋ウコンや春ウコンとして流通しているウコン類は、含まれる色素「クルクミン」に由来する黄色や橙色の色調を有しており、ウコン自身がターメリックやウコン色素という名称で着色目的で食品に添加されていることも多く、ウコンの黄色い色調が生かされたアルコール飲料や食酢は、食材原料としても有用性が高いと予想される。特に、食酢は調味料のなかでも比較的市場が安定しているため、商品性が高いものといえる。
【0006】
ところで、醸造酢の一般的な製造方法は、主に(1)原料となる炭水化物を麹や酵素により糖化したのち、酵母によりアルコール発酵させ、続いて酢酸菌による酢酸発酵を経る方法と、(2)アルコールを含む原料を酢酸発酵させる方法の二つである。
【0007】
このうち、酵母によるアルコール発酵は、酵母が糖類をエタノールに変換する機能を利用したものである。一般に、炭水化物を原料とするアルコール発酵では、まず、炭水化物を糖に分解して酵母の栄養源とする必要がある。例えば米穀を原料とする清酒は、麹菌を蒸煮した米に生やし、麹菌が成長する際に生産する酵素類で米の炭水化物を糖類へと分解させ、アルコール発酵を進める。これで米のアルコール性飲料である酒が得られるが、これに酢酸菌を添加すると、酢酸発酵が行われ、酢酸が生産される。
【0008】
ところで、ウコンは、その根茎に60%をこえる炭水化物(デンプン質)を含んでいるので、これを利用してアルコール飲料や食酢を製造することを着想することは容易である。しかしながら、これまでウコンデンプン質を主原料としたアルコール飲料や食酢は報告されていない。
【0009】
この理由は、ウコンは他の食酢原料(米、とうもろこし、イモ等)のように大量生産されてはいないこと、他の食酢原料は加熱してそのまま食することが出来るものであるのに対し、ウコンは加熱しても苦く、旨味もないためにウコンそのものを食べるという習慣がなかったことが主な理由である。また、実際にウコンの根茎を使用し、サツマイモを原料とした醪の調製方法(芋焼酎製造法)に準じてアルコール発酵を試みても、糖化しにくいためアルコール濃度が上がらず、実用性のあるアルコール飲料が得られないのが現実であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−65199
【特許文献2】特開平11−299444
【特許文献3】特開2001−178410
【特許文献4】特開平11−299444
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記のように、ウコンデンプンでは糖化やアルコール発酵の効率が低く、アルコール発酵によるアルコール性飲料および食酢の製造が難しいという問題があり、これを解決する必要がある。
【0012】
また、一般に秋ウコンや春ウコンとして流通しているウコン類には、「クルクミン」が含まれ、これに由来する黄色や橙色の色調を有しているが、クルクミンは難水溶性であるため、食酢など、水分の多い食品で「クルクミン」の効能を訴求するには、これをなんらかの方法で可溶化する必要がある。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、各発酵工程での微生物管理手法を利用することで、ウコンデンプンからの商業的なウコン酢の製造方法を確立することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、健康食品として広く使用されているウコンを原料とし、ウコン酢を製造する方法を確立すべく鋭意研究を行った。その過程で、ウコンデンプンからの糖化効率が低いのは、米などに比べ、植物繊維や脂質が極めて多いことがその原因であることを知った。
【0015】
そこで、更に、糖化効率を高めるために、研究を行った結果、アミロースなどのデンプン糖化酵素と共に、セルロースやプロテアーゼ等の酵素を利用することにより、デンプンの糖化効率を高めることができることを見出した。
【0016】
更にまた、上記酵素の添加に先立ち、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTage)を作用させることで、ウコンの特色である黄色の色調を生かすことができることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち本発明は、加熱により糊化したウコンデンプン溶液に、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)を作用させた後、アミラーゼと、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを作用させて糖化し、次いで必要量のアルコールを添加後、酢酸菌を接種して発酵させることを特徴とするウコン酢の製造方法である。
【0018】
また本発明は、上記ウコン酢の製造方法において、エタノールの添加に先立ち、アルコール発酵を行うことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウコンを原料とし、ウコンの有効成分であるクルクミンを有効に含有し、かつ他の食酢に比べアミノ酸を多く含有するウコン酢を得ることができる。
【0020】
このものは、上記したようにクルクミンを含むため、ウコン色を示すと共に種々のアミノ酸を多く含むので、健康によい酢として極めて商品価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法によるウコン酢の製造工程を図示したものである。
【図2】アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼの作用時間を3時間とした場合の、CGTase の濃度と作用時間による色調(425nm)の変化の関係を示した図面である。図中、Aは、CGTase濃度0.2%、Bは、0.4%、Cは、0.8%である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のウコン酢は、図1に示されるように、ウコンデンプンを原料とし、これに水を加え、加熱により糊化した後、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase)を作用させる酵素処理およびアミラーゼと、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを作用させる糖化処理を行ない、更にエタノールを添加後、酢酸菌を接種して発酵させることにより製造される。
【0023】
原料であるウコンデンプンは、ウコンの根茎を乾燥、粉末化して得たものである。このウコンとしては、春ウコンであっても、秋ウコンであっても良い。
【0024】
このウコンデンプンの糊化は、上記ウコンデンプンに、その2ないし4倍の水を加え、湯せん、オートクレーブ(105℃、10分)、液内へ蒸気パイプを通す等の手段により、80ないし95℃程度の温度に加熱することにより行われる。この加熱時間は、デンプン質が糊化するのに十分な時間であればよい。
【0025】
次に、上記のように糊化させたウコンデンプンに、必要により水を加え、温度を調整した後、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(以下、「CGTase」という)を添加し、酵素反応(以下、「酵素処理I」という)を進める。
【0026】
この酵素処理Iで用いるウコンデンプン溶液の濃度は、原料であるウコン粉に対し、4倍から8倍の水となる程度が好ましく、また、使用するCGTaseの濃度は、0.4ないし1.6質量%(以下、単に「%」で示す)程度、特に0.4ないし0.8%程度が好ましい。更に、酵素処理Iでの反応温度は、50ないし60℃程度、特に55℃程度が好ましい。
【0027】
上記の酵素処理Iは、3ないし22時間程度、特に、5時間程度行うことが好ましい。
【0028】
上記の酵素処理Iにおいて、CGTaseと原料デンプンの作用により、6から8個のグルコースが環状になったオリゴ糖であるシクロデキストリンが形成される。そして、外部は親水性、内部は疎水性を示すシクロデキストリンがクルクミンを包接し、取り込むため、難溶性物質であるクルクミンを水に可溶な状態にすることができ、黄色の色調を保つことができる。
【0029】
上記の酵素処理Iを行った反応物は、次いでアミラーゼと、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを作用させて糖化反応(酵素処理II)を行う。
【0030】
このうち、アミラーゼは、デンプンの糖化作用を行う酵素であり、プロテアーゼはウコン粉中の脂質(約10%)の分解を、セルラーゼは植物繊維(約21%)の分解を行う酵素である。
【0031】
酵素処理IIでの酵素の量は、酵素処理Iで得た反応液に対し、アミラーゼで0.1〜0.3 IU/mL程度である。また、プロテアーゼの添加は、酵素処理Iの反応物に対し、0.1〜0.3 IU/mL程度である。セルラーゼの添加は、必ずしも必須ではないが、添加する場合は、1〜3 IU/mL程度とすることが好ましく、特に、1〜1.5 IU/mLとすることが好ましい。
【0032】
この酵素処理IIでの反応温度は、50ないし60℃程度、特に55℃程度が好ましく、また反応時間は、3ないし22時間程度、特に、3ないし6時間が好ましい。
【0033】
かくして得られる酵素処理IIの処理物には、次に必要量のアルコールが加えられ、酢酸発酵が行われる。
【0034】
ここで加えられるアルコールは、最終的に生成するウコン酢の酸度に対応して決められるが、一般には、酵素処理IIの処理物に対し、5ないし9容量%となる量である。また、上記酵素処理IIの生成物中には、ある程度の量の糖があるので、常法によりこの等をアルコール発酵させても良く、その場合は、生成するアルコールの量を勘案してエタノールを添加すればよい。
【0035】
この酢酸発酵は、通常の食酢の製造方法に準じて行うことができる。すなわち、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)やアセトバクター・アセチ(Acetobacter Aceti)など、公知の酢酸菌を前培養で培養した後、これをアルコールが加えられた酵素処理IIの処理物に、10〜10個/mL程度で植菌し、30〜35℃程度の温度で、2週間〜5週間程度培養すればよい。
【0036】
得られた上記培養物は、必要によりろ過等の手段によって固液分離を行い、目的のウコン酢を得ることができる。
【0037】
なお、本発明によるウコン酢製造方法の好ましい態様としては、次の条件が挙げられる。
1.酵素処理Iとして、CGTaseの濃度を原料ウコン重量(粉体分量)に対し0.2%から0.8%の範囲内とし、55℃付近で約3時間から一晩作用させる。反応物を80℃程度の湯浴に30分浸漬し、CGTaseの作用を停止する。
【0038】
2.酵素処理IIとして、セルラーゼ、アミラーゼおよびプロテアーゼ等(液化酵素類)を55℃付近で3時間ほど作用させる。反応物を80℃程度の湯浴に30分浸漬し、これら酵素の作用の停止する。
【0039】
3.酵素処理IIの反応物のエタノールの濃度を、6容量%から8容量%程度となるよう調整し、これに酢酸菌を添加して30℃付近で発酵させる。
【0040】
これら条件の中から、特に好ましい態様は、CGTase濃度を0.4%、作用時間を22時間、液化酵素類の作用時間を3時間としたものであり、酢酸菌添加後2週間で酸度4以上の酢を得ることができる。
【0041】
かくして得られるウコン酢は、サイクロデキストリンに包接されたクルクミンによるウコンの色を有するものである。また、ウコンを原料としたことにより、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、プロリン、セリン等の多くのアミノ酸を、例えば、米酢の2〜3倍含むものであり、深みのある味と、健康増進効果が期待できるものである。更に、アルコール発酵工程を入れない場合には、ある程度の糖類を含む酸ができ、飲食しやすいものである。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、各実施例において、成分分析は以下の方法で行った。
【0043】
(1)グルコース濃度
グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用い、定量した。
【0044】
(2)エタノール濃度
国税庁所定分析法に基づき、ガスクロマトグラフにより分析した。
【0045】
(3)酸度
食酢品質表示規準(日本農林規格)に基づき行った。すなわち、試料xmLに蒸留水100mLを加え、0.5Nの水酸化ナトリウム溶液でpH8.2になるまで滴定し、以下の式により酸度として求めた。
酸度=((0.03×a×F)/x)×100
a:0.5N水酸化ナトリウム溶液の滴定量
x:試料量
F:0.5N水酸化ナトリウム溶液のファクター
【0046】
(4)ブリックス(Brix)
溶液の屈折率を、20℃のショ糖溶液の重量百分率濃度(W/W%)に換算した目盛と定義される。本実施例では、ブリックスを糊化ウコンの液化の程度の目安とした。すなわちアミラーゼによるデンプンの液化に伴う糖の生成やプロテアーゼによるタンパク質の分解で生成したペプチドおよびアミノ酸、セルラーゼによる繊維の分解による糖の生成により、糊化ウコンが液化する程度をブリックスで示した。
【0047】
実 施 例 1
(1)ウコンデンプンの酵素処理
ウコン粉(秋ウコン)に、4倍量の水を加えて湯せんにより加熱し、内部温度が90℃となってから15分保持した。
【0048】
このウコン粉糊化物に、当初のウコン粉の重量に対して8倍量の水を加えて60℃程度まで温度を下げた後、0.2〜1.6%のサイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTage)(商品名:コンチザイム/天野エンザイム(株)社製)を加え、55〜60℃で22時間静置した[酵素処理I]。
【0049】
サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTage)を添加した後では、添加前より色調が濃くなり、クルクミンの吸収波長と同じ425nmの吸光度を測定した結果、CGTageの添加量および作用時間に比例して高い値を示した。
【0050】
酵素処理Iが終了後、反応系の温度を80℃まで加熱し、CGTageを失活させた。次いでこれにアミラーゼ(天野エンザイム株式社製)、プロテアーゼ(ナガセケムテックス株式会社社製)およびセルラーゼ(天野エンザイム株式社製)をそれぞれ、0.3 IU/mL、0.1 IU/mLおよび1.5 IU/mL加え、55〜60℃で所定時間静置し液化ウコンを得た[酵素処理II]。
【0051】
この酵素処理II後の色調は、CGTage濃度が0.4%以上のとき、アミラーゼ、プロテアーゼおよびセルラーゼ作用時間に反比例し、作用時間が長くなることでシクロデキストリンによる色調安定効果が失われることが判った。
【0052】
酵素処理II後の糊化ウコンの液化程度は、糊化ウコンの一部をろ過して得られた液のブリックスを測定することで判断した。すなわち、酵素処理IIの後、1時間毎にブリックスを測定した。その結果、表1に示すように、CGTage濃度0.2%〜1.6%のいずれにおいても、ブリックスは3時間程度で一定になった。
【0053】
【表1】

【0054】
そこでアミラーゼ、プロテアーゼおよびセルラーゼの作用時間を3時間とした場合の、CGTase の濃度および作用時間による色調(425nm)の変化を確認した。その結果を図2に示す。
【0055】
表1の結果などから、酵素処理IIの時間を3時間とすることで、CGTaseによる色調保持の効果を損なうことなく、液化ウコンを得られることが明らかとなった。
【0056】
(2)酢酸発酵
上記(1)で得た液化ウコン(CGTase添加量は、0.4%、反応時間は22時間)100mLに対し、全体のエタノール濃度が6容量%から8%容量程度になるよう99.5%エタノール溶液を添加し、よくかくはんした。
【0057】
次いで、予め栄養培地(グルコース、ポリペプトン、酵母エキスを各1%、エタノールを2%含む)で前培養しておいた酢酸菌(Acetobacter pasteurianus)を蒸留水にけん濁させた酢酸菌液を加え、30℃で静置した。酢酸菌液は、200mLの上記栄養培地中、30℃で、3日間前培養を行いった培養液から10mLを取り、これを100mLの蒸留水にけん濁させたものであり、この酢酸菌液を、液化ウコン100mLにつき1mL加えた。
【0058】
エタノール濃度を8%とした液化ウコン液では、酢酸培養の開始から、2週間後で、また、エタノール濃度を6%とした液化ウコン液では、4週間後に、それぞれ酸度4以上のウコン酢が得られた。
【0059】
得られたウコン酢は、次のような特徴を有するものであった。すなわち、色調の面では、原料としたウコンの持つ、黄色から橙色に似た色調を有する特徴を有し、また、成分の面では、アミノ酸を豊富に含み、ウコン由来のクルクミンをも含むという特徴を有するものであった。また、味覚の面では、酸度4以上であるにも関わらず、米酢や穀物酢と比べて甘みが感じられるとともに一般にウコン加工商品に感じられる苦味は少なく、飲みやすいというという感想を得た。更に、春ウコン酢と秋ウコン酢はそれぞれ風味が異なっており、春ウコン酢は柑橘系の華やかで甘い香りを呈し、すっきりとした味わいを持っており、秋ウコン酢は原料の香りを持ちつつ甘味が感じられる酢となっていた。
【0060】
実 施 例 2
加工練りカラシの製造
実施例1で得た秋ウコン酢を用い、下記組成で加工練りカラシ(本発明品)を調製した。また、比較として、下記組成の比較加工練りカラシ(比較品1、比較品2)を調製した。
【0061】
< 組 成 >
本発明品1:
マスタード粉 18.5%、秋ウコン酢 10%、水あめ10%、食塩6%、
水 バランス
比較品1:
マスタード粉 18.5%、醸造酢 10%、水あめ10%、食塩6%、
水 バランス
比較品2:
マスタード粉 18.5%、醸造酢 10%、水あめ10%、食塩6%、
ウコン粉0.01%、水 バランス
【0062】
加工練りカラシの原料には、原料割合で10%程度の醸造酢が添加されている。また多くの加工練りカラシ市販品では着色目的でウコン粉(原料名ターメリックなど)が使われているが、ウコン酢を代替とした練りカラシ(本発明品1)は、比較品1(醸造酢を使いウコン粉を添加していない練りカラシ)よりも発色が良く、さらに市販品と比較しても同程度の発色が認められた。また、比較品2(醸造酢を使い、市販品と同程度のウコン粉を添加した練りカラシ)と比べても、そん色ない発色の練りカラシが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のウコン酢は、サイクロデキストリンに包接されたクルクミンを有し、また、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、バリン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、プロリン、セリン等の多くのアミノ酸を、米酢の2〜3倍含むものである。
【0064】
従って、本発明のウコン酢は、深みのある味と、健康増進効果が期待できるものであり、食酢や健康食品として食品工業において広く利用できるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱により糊化したウコンデンプン溶液に、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた後、アミラーゼと、プロテアーゼおよび/またはセルラーゼを作用させて糖化し、次いでアルコールを添加後、酢酸菌を接種して発酵させることを特徴とするウコン酢の製造方法。
【請求項2】
サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの添加量が、ウコンデンプン(固形分)に対し、0.4ないし0.8質量%である請求項1記載のウコン酢の製造方法。
【請求項3】
サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの作用を、50〜60℃の温度で行う請求項1または2記載のウコン酢の製造方法。
【請求項4】
アミラーゼの添加が、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた反応物に対し、0.1〜0.3 IU/mLである請求項1ないし3の何れかの項記載のウコン酢の製造方法。
【請求項5】
プロテアーゼの添加が、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを作用させた反応物に対し、0.1〜0.3 IU/mLである請求項1ないし4の何れかの項記載のウコン酢の製造方法。
【請求項6】
糖化後のアルコール添加量が、6〜8容量%である請求項1ないし5の何れかの項記載のウコン酢の製造方法。
【請求項7】
得られたウコン酢の425nmにおける吸光度が、1.0〜2.2である請求項1ないし6の何れかの項記載のウコン酢の製造方法。



【図1】
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【図2】
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