説明

ウッドデッキ

【課題】壁の直近までデッキ材を配置する施工を行うことができて、かつ傷んだデッキ材の交換をも簡単に行うことのできるウッドデッキを、簡単な構成によって提供すること。
【解決手段】根太20を、各デッキ材30を受承する受け部21を有したものとして金属板によって形成するとともに、この受け部21上面に係止スリット22を形成し、取付金具40を、デッキ材30の側面に固定される平板状の基部と、この基部の下部に連続的に形成されて、根太20の係止スリット22に係合する係止突起とを有したものとしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッドデッキに関し、特に、施工や補修を簡単に行えるようにしたウッドデッキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所謂ウッドデッキは、家屋の外に設置されて、家屋の一階床面とほぼ同じ床面を屋外に構成するものであり、履き物に履き替えて地面や土間に降りなくても、例えば洗濯物の干し場に部屋からそのまま出られる空間を構成する便利なものである。また、このようなウッドデッキは、土台上の根太に多数のデッキ材を取り付けただけの簡単なものであり、風雨に直接晒されることになる各デッキ材は、一定期間後に修理あるいは交換しなければならないものである。
【0003】
また、この種のウッドデッキは、構造が簡単であるから、所謂「エクステリア用品」として個別に販売されることの多いものであり、専門の施工業者に限らず、素人の日曜大工用品としても持て囃されているものでもある。換言すれば、この種のウッドデッキは、素人でも自宅に備え付け施工が行える程度の簡単な構造のものである。
【0004】
このため、この種のウッドデッキは、特許文献1等において数多くの提案が見られるが、何れも、素人でも施工できるように、種々な工夫が凝らされているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−207363号公報、要約、選択図
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたウッドデッキは、「施工後の強度及び剛性を高めるとともに、施工時間の短縮及び手間の軽減を図り、さらに、高品質化と交換作業の容易化を実現する」ことを目的としてなされたもので、図15にも示すように、「上面3u…にC形チャンネル部4…を有する根太材3…と、側面2a…にスリット2as…を有するデッキ材2…と、スリット2as…に差し込み可能な係止頭部6h…を有するボルト部材6…、及びC形チャンネル部4に収容し、かつ回り止めされるナット部材7…からなる固定具5…とを用意し、根太材3…を所定間隔おきに配するとともに、根太材3…の上面3u…にデッキ材2…を交差するように並べて配し、C形チャンネル部4に収容したナット部材7…に対して、スリット2as…に係止頭部6h…を差し込んだボルト部材6…を螺着する」という構成を有するものである。
【0007】
この特許文献1の技術によれば、「ボルト部材6」の存在を、突き合わされた二枚のデッキ材の間から探し出すのは、ちょっと難しいのではないかと思われるものの、傷んだデッキ材の修理や交換を、その両側の「ボルト部材6」を外せば行えるから、便利であると思われる。
【0008】
ところが、この種のウッドデッキは、上述したように、一階の床面から直接外に出られるようにするものであるから、図1にも示すように、家屋のどこかの壁に近接して設置されるものである。しかも、この種のウッドデッキは、家屋が完成した後に設置されることの多いものであるから、壁に近接させて一枚目のデッキ材を施工しようとする場合に、この壁が邪魔になって施工できない場合があり得る。例えば、図15中の右側のデッキ材を、その直ぐ左側に存在している壁に近接させて施工しようとすると、「ボルト部材6の係止頭部6h」が邪魔になって、当該デッキ材を壁に近接させることができず、デッキ材の側面と壁との間に隙間ができてしまうことになる。
【0009】
それだけでなく、壁にデッキ材を近接させて根太上に固定しようとしても、壁が邪魔をするため、「ボルト部材6」のドライバー等による回転操作ができず、このことによっても、デッキ材の側面と壁との間に隙間ができてしまうことになるのである。
【0010】
そこで、本発明者等は、デッキ材を壁の直近まで配置した施工が行えて、しかも傷んだデッキ材の交換をも簡単に行えるウッドデッキとするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0011】
すなわち、本発明の目的とするところは、壁の直近までデッキ材を配置する施工を行うことができて、かつ傷んだデッキ材の交換をも簡単に行うことのできるウッドデッキを、簡単な構成によって提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「土台10上に渡された根太20に多数のデッキ材30を取付金具40によって取り付けたウッドデッキ100であって、
根太20を、各デッキ材30を受承する受け部21を有したものとして金属板によって形成するとともに、この受け部21上面に係止スリット22を形成し、
取付金具40を、デッキ材30の側面31に固定される平板状の基部41と、この基部41の下部に連続的に形成されて、根太20の係止スリット22に係合する係止突起42とを有したものとしたことを特徴とするウッドデッキ100」
である。
【0013】
すなわち、この請求項1に係るウッドデッキ100は、図1に示すように、土台10上の根太20に多数のデッキ材30を取り付けた構造のものであり、一部を家屋の壁200に近接した状態で設置されるものである。なお、図1に示すウッドデッキ100では、各デッキ材30の周囲を飾り板50によって覆ってあるが、この飾り板50は必ずしも必要なものではなく、外したものとして構成されることもある。
【0014】
さて、この請求項1に係るウッドデッキ100を構成している根太20は、図3〜図6に示すように、各デッキ材30を受承する受け部21を有したものとして金属板によって形成したものである。図3〜図6に示す根太20は、一本について二本の受け部21を有するものであるが、この請求項1に係るウッドデッキ100では、図5及び図6の各(a)に示すように、一本であってもよいものである。そして、この受け部21の上面には、図5及び図9に示すような係止スリット22が形成してある。
【0015】
金属板によって形成した根太20は、図9にも示すように、根太20の長手方向に沿った受け部21を有しているが、各受け部21は、図6にも示すように、当該根太20の中央部の基板面から「山形状」に立ち上がるものとして折曲形成したものである。そして、この受け部21の上面には、図5及び図9に示すように、上述した係止スリット22が形成してある。
【0016】
各係止スリット22は、後述する実施形態では、デッキ材30の幅程度の長さを有するものであり、これを形成していない部分を挟んで、根太20の長手方向に直線状に形成したものである。そして、各係止スリット22の幅は、次に述べる取付金具40の差し込みができて、当該取付金具40を90度回転させれば、その係止突起42による係止が行える程度のものである。具体的には、実施形態に係る取付金具40の厚さが2.00mmのとき、係止スリット22の幅は5.5mmである。
【0017】
そして、この請求項1のウッドデッキ100では、その取付金具40が、図10〜図12に示すように、デッキ材30の側面31に固定される平板状の基部41と、この基部41の下部に連続的に形成されて、根太20の係止スリット22に係合する係止突起42とを有したものとしてある。つまり、各取付金具40は、図12の(b)に示すように、殆ど平板状のものである。
【0018】
これらの取付金具40は、次のようにして使用する。まず、各取付金具40を係止スリット22内に少し差し込んでから、その各係止突起42が係止スリット22の内側で係止できる位置で略90度回転させる。そうすると、各取付金具40は、例えば図10に示すような状態、つまり、その基部41が施工したいデッキ材30の側面31と平行状態となるから、基部41をデッキ材30の側面31に固定するのである。この場合、基部41に形成した釘穴44を利用して釘60や木ねじで、当該取付金具40のデッキ材30に対する固定を行ってもよいが、後述するように、取付金具40自体に形成してある金具固定部43を利用するようにしてもよい。
【0019】
ここで重要なことは、デッキ材30が根太20に固定すべき一番最初のもので、壁200に近接させる必要があるものである場合には、このデッキ材30を、例えば図7に示すように、作業がし易くなる分だけの距離をおいて壁200から引き離しておくことができることである。
【0020】
つまり、最初のデッキ材30を壁200に近接させて施工する場合、壁200から引き離しておいたデッキ材30と壁200との間に開口している係止スリット22内に取付金具40を差し込んで90度回転させてから、この取付金具40の基部41を壁200に向かっているデッキ材30の側面31に、釘60などを使用して固定するのである。この取付金具40の壁200近傍でのセット及び固定作業、つまりハンマーの振り下ろしやドライバーの回転操作は、対象となっているデッキ材30と壁200との間に十分な空間が存在しているから、十分行える。
【0021】
根太20との連結を行っている取付金具40のデッキ材30に対する固定が済めば、つまり、実施例のように一枚のデッキ材30を3本の根太20によって支承する場合にあっては、3個の取付金具40の固定が済めば、デッキ材30全体を壁200に近接させるのである。このとき、各取付金具40の係止突起42が各根太20側の係止スリット22内に係合したままの状態になっていて、各取付金具40が各根太20から外れることがないことは言うまでもない。なお、飾り板50を使用する場合は、その固定は、当該デッキ材30の取付作業の前に行っておくものである。
【0022】
最初のデッキ材30を壁200に近接させた後に、今度は当該デッキ材30の壁200とは反対側の側面31に対して、上述したのと同様にして取付金具40による固定を行う。この反対側の側面31に対する作業は、当該側面31がデッキ材30の幅分壁200から離れているため、容易に行えることは当然である。また、各デッキ材30についてその両方の側面31について取付金具40による固定を行わなければならないが、そうしないと、デッキ材30が片側で浮いてしまうためである。
【0023】
2番目のデッキ材30の取付を行うには、図8の(a)に示すように、この2番目のデッキ材30を最初のデッキ材30から少し離した状態にしておいて壁200側の側面31への取付金具40の固定を行い、これが済んだときに当該2番目のデッキ材30を最初のデッキ材30に近接させ、上述したのと同様にすればよい。以下、所定の枚数になるだけデッキ材30の根太20に対する固定を行い、最後に必要な飾り板50の固定を行えば、当該ウッドデッキ100の施工は完了するのである。
【0024】
なお、一本の根太20に二本以上の受け部21があって、各受け部21に係止スリット22が形成してある場合には、取付金具40の挿入位置を、一方の側面31と他方の側面31とに分けると良い。何故なら、二枚のデッキ材30の間で、各取付金具40が重ならないから、デッキ材30の間に大きな隙間を形成しなくて済むからである。しかしながら、取付金具40自体は薄く形成したものであるから、2枚の取付金具40が両デッキ材30の間で重なったとしても、それ程大きな問題とはならない。
【0025】
さて、特定のデッキ材30の交換を行いたい場合には、壁200とは反対側端部にあるデッキ材30から順に、壁200とは反対側に移動させるのである。このとき、各取付金具40は、根太20の係止スリット22に対して係止されてはいるが移動可能になっているから、特定のデッキ材30に至るまでその操作を繰り返す。特定のデッキ材30の周囲に十分な空間ができれば、各取付金具40の取り外しを行って特定のデッキ材30の交換を行えば、デッキ材30の交換作業が容易に行える。勿論、新しいデッキ材30については、取付金具40による固定を前述したように行うのである。
【0026】
なお、このデッキ材30の交換作業を始める際に、少なくとも最初のデッキ材30は根太20から外さなければならないが、特定のデッキ材30の交換後に再び取り付ければよい。
【0027】
従って、この請求項1に係るウッドデッキ100は、壁200脇に対するデッキ材30の取付が容易になっているし、傷んだデッキ材30の交換をも簡単に行えるものとなっているのである。
【0028】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載のウッドデッキ100について、
「受け部21上面に、さらに係止穴23を形成したこと」
である。
【0029】
すなわち、この請求項2に係るウッドデッキ100は、図5及び図6の各(a)に示すように、係止スリット22を形成した各受け部21上面に、さらに係止穴23を形成したものであり、この係止穴23をも利用して、デッキ材30の根太20に対する取付金具40による固定が行えるようにするものである。
【0030】
各係止穴23は、図5、図9、図10及び図14に示すように、係止スリット22に比較すれば短いものであり、取付金具40に設けた係止突起42の、係止穴23内への挿入と、ある程度の範囲内の移動と、係止穴23に対する係止が行えるようにするものである。
【0031】
このような係止穴23が係止スリット22の近傍に形成してあれば、各取付金具40によるデッキ材30の一方の側面31の固定を行ってから当該デッキ材30を所定位置まで移動させた後に、デッキ材30の他方の面の側面31の別の取付金具40による固定が行えることになる。しかも、各係止穴23は係止スリット22に比較すれば短いものであるから、一本の受け部21について当該係止穴23と係止スリット22とを形成しても、受け部21の、デッキ材30支承のための強度を低下させることは殆どない。
【0032】
なお、この係止穴23に対する取付金具40の固定方法や移動方法、デッキ材30の他方の側面31に対する取付金具40の固定方法は、上述した請求項1で説明した係止スリット22の場合と同様である。
【0033】
従って、この請求項2に係るウッドデッキ100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、デッキ材30の両側面31における取付金具40による固定を、より一層効果的に行えるものとなっているのである。
【0034】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載のウッドデッキ100について、
「根太20の一本について受け部21を複数形成するとともに、一つの受け部21について係止スリット22を形成し、他の受け部21上面については係止穴23を形成したこと」
である。
【0035】
根太20の一本について受け部21を複数形成するのは、一つの受け部21に請求項1のウッドデッキ100で採用していた係止スリット22を形成し、他の受け部21に請求項1のウッドデッキ100では採用していなかった係止穴23を形成したいからであり、各係止穴23を採用するようにしたのは、各受け部21に係止スリット22を複数形成すると、根太20自体の強度が弱くなる可能性があるからである。
【0036】
つまり、各係止スリット22は、図5に示すように、互いに近接し合った長いものであるから、このような係止スリット22を多数受け部21に形成することは、根太20の強度を弱くする可能性があるからである。各係止穴23は、請求項2の説明で述べたように、係止スリット22に比較すれば短いものであり、取付金具40に設けた係止突起42の、係止穴23内への挿入と、ある程度の範囲内の移動と、係止穴23に対する係止が行えるようにするものである。
【0037】
また、各係止穴23の形状については、取付金具40の挿入及び係止が行えるのであればどのような形状であっても構わないものであり、後述する実施形態で例示するような挿入切欠23aを有するもの(図14の(a)参照)は勿論、この挿入切欠23aを有さない直線状のもの(図14の(c)参照)でも、また三角形状(図14の(b)参照)のものであってもよいものである。
【0038】
さて、最初のデッキ材30を壁200に近接させて施工する場合、請求項1に係るウッドデッキ100において説明したように、壁200から引き離しておいたデッキ材30と壁200との間に開口している係止スリット22内に取付金具40を差し込んで90度回転させてから、この取付金具40の基部41を壁200に向かっているデッキ材30の側面31に、釘60などを使用して固定するのである。この取付金具40の壁200近傍でのセット及び固定作業、つまりハンマーの振り下ろしやドライバーの回転操作は、対象となっているデッキ材30と壁200との間に十分な空間が存在しているから、十分行える。
【0039】
根太20との連結を行っている取付金具40のデッキ材30に対する固定が済めば、デッキ材30全体を壁200に近接させるのである。このとき、各取付金具40の係止突起42が各根太20側の係止スリット22内に係合したままの状態になっていて、各取付金具40が各根太20から外れること、及び飾り板50の固定は、当該デッキ材30の取付作業の前に行っておくことは前述した通りである。
【0040】
最初のデッキ材30を壁200に近接させると、デッキ材30の壁200とは反対側の側面31の外側に係止穴23が現れる。そこで、当該反対側側面31と根太20との連結を、係止穴23に係合させた取付金具40により行う。この係止穴23に対する取付金具40の係止作業や、反対側側面31に対する取付金具40の固定作業は、当該側面31がデッキ材30の幅分壁200から離れているため、容易に行えることは当然である。
【0041】
2番目のデッキ材30の取付を行うには、図8の(a)に示すように、この2番目のデッキ材30を最初のデッキ材30から少し離した状態にしておいて壁200側の側面31への取付金具40の固定を行い、これが済んだときに当該2番目のデッキ材30を最初のデッキ材30に近接させ、反対側側面31に対する係止穴23を利用した取付金具40の固定作業を行えばよい。以下、所定の枚数になるだけデッキ材30の根太20に対する固定を行う。
【0042】
なお、一本の根太20に二本以上の受け部21があって、一方の受け部21に係止スリット22が形成してあって、他方の受け部21に係止穴23が形成してある場合には、取付金具40の挿入位置を、係止スリット22と係止穴23とに交互に分けると良い。何故なら、二枚のデッキ材30の間で、各取付金具40が重ならないから、デッキ材30の間に大きな隙間を形成しなくて済むからである。しかしながら、取付金具40自体は薄く形成したものであるから、2枚の取付金具40が両デッキ材30の間で重なったとしても、それ程大きな問題とはならない。
【0043】
さて、特定のデッキ材30の交換を行いたい場合には、壁200とは反対側端部にあるデッキ材30から順に、壁200とは反対側に移動させ、特定のデッキ材30に至るまでその操作を繰り返す。特定のデッキ材30の周囲に十分な空間ができれば、各取付金具40の取り外しを行って特定のデッキ材30の交換を行えば、デッキ材30の交換作業が容易に行えることは、前述した請求項1に係るウッドデッキ100の場合と同様である。
【0044】
従って、この請求項3に係るウッドデッキ100は、壁200脇に対するデッキ材30の取付が容易になっているし、傷んだデッキ材30の交換をも簡単に行えるものとなっているだけでなく、取付金具40を係止した状態でデッキ材30の移動が行える係止スリット22と、固定だけを目的とした係止穴23とを採用したから、根太20の受け部21の剛性を十分確保できるものとなっている。
【0045】
さらに、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載のウッドデッキ100について、
「係止スリット22の一部に、取付金具40の係止突起43が挿入できる挿入切欠22aを形成したこと」
である。
【0046】
この請求項4に係るウッドデッキ100の根太20では、例えば図5、図10、及び図14に示すように、その受け部21に形成してある係止スリット22の一部に、取付金具40の係止突起43が挿入できる挿入切欠22aが形成してある。
【0047】
挿入切欠22aは、これが形成してある係止スリット22の幅が各取付金具40の係止突起42の両端間の寸法よりも小さくても、各取付金具40における両係止突起42の係止スリット22内への挿入を、係止スリット22の長さ方向に回転させることなく行えるようにするものであり、各デッキ材30の取付金具40を使用した根太20に対する固定を容易にするものである。
【0048】
換言すれば、各取付金具40の係止スリット22内への挿入操作が、取付金具40の基部41がデッキ材30の側面31と平行になったままでも、係止突起42が挿入切欠22a内を通ることによって行えるのであり、各係止スリット22に形成した挿入切欠22aは、各デッキ材30の根太20に対する固定作業をより一層簡単にするものである。そのために、各挿入切欠22aが係止スリット22の端部側に形成してあれば、取付金具40を側面31に固定した後のデッキ材30の移動距離を十分取ることができるから、より好ましい。
【0049】
従って、この請求項4に係るウッドデッキ100は、上記請求項1〜請求項3のそれと同様な機能を発揮する他、挿入切欠22aが存在している係止スリット22に対する取付金具40の挿入を容易にしていて、デッキ材30の根太20に対する固定作業をより一層容易なものとしているのである。
【0050】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項2〜請求項4のいずれかに記載のウッドデッキ100について、
「係止穴23の一部に、取付金具40の係止突起43が挿入できる挿入切欠23aを形成したこと」
である。
【0051】
この請求項5に係るウッドデッキ100の根太20では、例えば図5、図10、及び図14に示すように、その受け部21に形成してある係止穴23の一部に、取付金具40の係止突起43が挿入できる挿入切欠23aが形成してある。
【0052】
挿入切欠23aは、これが形成してある係止穴23の幅が各取付金具40の係止突起42の両端間の寸法よりも小さくても、各取付金具40における両係止突起42の係止穴23内への挿入を、回転させることなく行えるようにするものであり、各デッキ材30の取付金具40を使用した根太20に対する固定を容易にするものである。
【0053】
換言すれば、各取付金具40の係止穴23内への挿入操作が、取付金具40の基部41がデッキ材30の側面31と平行になったままでも、係止突起42が挿入切欠23a内を通ることによって行えるのであり、各係止穴23に形成した挿入切欠23aは、各デッキ材30の根太20に対する固定作業をより一層簡単にするものである。そのために、各挿入切欠23aが係止穴23の端部側に形成してあれば、取付金具40を側面31に固定した後のデッキ材30の移動距離を十分取ることができるから、より好ましい。
【0054】
従って、この請求項5に係るウッドデッキ100は、上記請求項2〜請求項4のそれと同様な機能を発揮する他、挿入切欠23aが存在している係止穴23に対する取付金具40の挿入を容易にしていて、デッキ材30の根太20に対する固定作業をより一層容易なものとしているのである。
【0055】
そして、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載のウッドデッキ100について、
「取付金具40の基部41の一部に、デッキ材30の側面に固定される金具固定部43を設けたこと」
である。
【0056】
すなわち、この請求項6のウッドデッキ100では、使用されるべき各取付金具40が金具固定部43を有していて、この金具固定部43をデッキ材30の側面31側に直接打ち込むことにより、当該取付金具40のデッキ材30に対する固定が行えるようにしたものである。
【0057】
具体的には、図13に示すように、各取付金具40の基部41の一部に金具固定部43を一体化するようにするのであるが、この金具固定部43は基部41に対してほぼ直交したものであるとよい。何故なら、当該取付金具40がデッキ材30の側面31に固定されたときに、金具固定部43が側面31内に完全に侵入した状態になっていた方が、各デッキ材30の根太20に対する固定を効果的に行えるようにするからである。勿論、金具固定部43を側面31内に侵入させるには、取付金具40の基部41をハンマー等で側面31側に打ち付ければよく、釘60等が全く不要になっていることは言うまでもない。
【0058】
この金具固定部43は、基部41とほぼ直交していさえすれば、どのような形状であってもよいが、図13の(b)に示すように、基部41の上部を単に折曲して金具固定部43とするのが最も簡便な方法である。勿論、この金具固定部43はデッキ材30の側面31内に侵入させなければならないから、図13の(c)に示すように、先を尖らせておくのがよい。
【0059】
従って、この請求項6に係るウッドデッキ100は、上記請求項1〜請求項5のそれとどうような機能を発揮する他、取付金具40の金具固定部43を利用することによって、釘やネジを不要とした取付金具40の取り付けが行えるのである。
【発明の効果】
【0060】
以上、説明した通り、本発明においては、
「土台10上に渡された根太20に多数のデッキ材30を取付金具40によって取り付けたウッドデッキ100であって、
根太20を、各デッキ材30を受承する受け部21を有したものとして金属板によって形成するとともに、この受け部21上面に係止スリット22を形成し、
取付金具40を、デッキ材30の側面31に固定される平板状の基部41と、この基部41の下部に連続的に形成されて、根太20の係止スリット22に係合する係止突起42とを有したものとしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、
壁200の直近までデッキ材30を配置する施工を行うことができて、かつ傷んだデッキ材30の交換をも簡単に行うことのできるウッドデッキ100を、簡単な構成によって提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るウッドデッキ100を壁200の近傍に設置した状態を示す部分斜視図である。
【図2】同ウッドデッキ100の平面図である。
【図3】同ウッドデッキ100の縦断面図である。
【図4】同ウッドデッキ100を構成している根太20に直交する方向からみた断面図である。
【図5】図2の1−1線に沿ってみた図であり、(a)は根太20が一本の受け部21を有する場合の部分拡大図、(b)は根太20が二本の受け部21を有する場合の部分拡大図である。
【図6】図4の2−2線に沿ってみた図であり、(a)は根太20が一本の受け部21を有する場合の部分拡大図、(b)は根太20が二本の受け部21を有する場合の部分拡大図である。
【図7】壁200近傍のデッキ材30の施工を行う場合の説明図であり、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図8】図7に示した次の施工を行う場合の説明図であり、(a)は二枚目のデッキ材30を施工する場合の平面図、(b)は三枚目のデッキ材30を施工する場合の縦断面図である。
【図9】同ウッドデッキ100を構成している土台10上の根太20とデッキ材30との関係を示す斜視図である。
【図10】同ウッドデッキ100において採用されている係止スリット22と係止穴23とを示す根太20の部分斜視図である。
【図11】同ウッドデッキ100の係止スリット22と係止穴23の端部を示す部分拡大斜視図である。
【図12】同ウッドデッキ100において使用している取付金具40の一例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図13】同ウッドデッキ100において使用している取付金具40の他の例を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図14】同ウッドデッキ100において採用される係止穴23を示すもので、(a)は挿入切欠23aを有する場合の平面図、(b)は三角形状の挿入切欠23aを有する場合の平面図、(c)は挿入切欠23aを有さない場合の平面図である。
【図15】特許文献1に示された技術を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に係るウッドデッキ100について説明するが、この実施形態のウッドデッキ100は、上記各請求項に係る発明の全てを含むものである。
【0063】
図1には、施工が完了した本発明に係るウッドデッキ100の斜視図が示してあるが、このウッドデッキ100は、壁200に近接して施工されていて、引き戸210を開けば家屋内から当該ウッドデッキ100上に直接出られるようにしているものである。なお、このウッドデッキ100は、そのデッキ材30の周囲を飾り板50によって囲むようにしているが、この飾り板50は必ずしも必要なものではなく、飾り板50がない状態でウッドデッキ100とされることもあるものである。
【0064】
このウッドデッキ100を施工するには、図1〜図4、及び図7〜図9に示したように、施工場所に土台10を設置するが、この土台10としては、複数の根太20を水平に支持できるものであれば、何であっても構わない。なお、この実施形態の土台10は、図7にも示したように、筋交いを使用して補強してある。
【0065】
本実施形態の根太20は、金属板をプレス加工して形成したもので、例えば、図5及び図6に示したように、一本の受け部21を有する場合と、複数の受け部21を有する場合がある。この受け部21は、その上面にて後述する各デッキ材30を直接的に受承するものであり、当該上面は他の受け部21のそれと共働して一つの水平面を構成するものである。勿論、この金属製の根太20は、図6等に示したように、ボルトナット24を使用して土台10側に取り付けられるものである。
【0066】
デッキ材30を直接的に受承する各受け部21には、後述する係止スリット22が単独で形成される場合(図9参照)、係止スリット22と後述する係止穴23とが交互に形成される場合(図5の(b)参照)、係止スリット22と係止穴23とが同時に形成される場合(図5の(a)参照)があるが、何れの場合も、少なくとも係止スリット22が形成される。
【0067】
受け部21に形成される各係止スリット22は、図5の(a)、図7及び図9に示したように、デッキ材30の幅程度の長さを有するもので、これが形成されない部分を置いて受け部21上に多数かつ直線状に配列されるものである。この係止スリット22の長さは、デッキ材30の幅程度にする必要性がなくて自由に設定できるのであるが、この係止スリット22の長さ範囲内でデッキ材30に固定した後述する取付金具40を移動させたときに、ハンマーやドライバーの操作が行えるのであれば十分である。一般的なデッキ材30は20cm〜30cm程度の幅を有するものであって、この長さ範囲内であればハンマーやドライバーの操作が行えるから、各係止スリット22をデッキ材30の幅程度の長さを有したものとしておけば、一枚のデッキ材30について、取付金具40による根太20側への連結と移動を効果的に行えることになる。
【0068】
また、受け部21に形成される各係止スリット22をデッキ材30の幅程度の長さを有したものとするとともに、これが形成されていない部分を置いて直線状に配置すれば、各受け部21のデッキ材30を支承するための剛性を係止スリット22を形成したことによって損なうことがないから、好ましいことになる。勿論、各係止スリット22そのものの幅については、後述する板状の取付金具40の挿入ができるものであれば十分である。
【0069】
さらに、これら各係止スリット22の端部両側に、図5及び図10にも示したように、挿入切欠22aを形成することがある。これらの挿入切欠22aは、図10に示したように、後述する取付金具40の係止突起42を、当該取付金具40の基部41が係止スリット22の長さ方向に直交した状態のままで挿入できるようにするものであり、取付金具40の固定作業をより容易にするためのものである。
【0070】
一方、受け部21に形成される係止穴23は、図5及び図6にも示すように、上述した係止スリット22より短くしたものであり、当該係止穴23に取付金具40の係止突起42を係止させたまま、この取付金具40の移動を長い範囲で行うことを想定していないものである。また、この係止穴23については、図10等に示したように、係止スリット22側の挿入切欠22aと同様な機能を期待する挿入切欠23aを形成することもある。
【0071】
この係止穴23については、図14の(a)に示したように、実施形態に係るような挿入切欠23aを有するものの他、図14の(b)に示したように、三角形状の挿入切欠23aを有するもの、あるいは、図14の(c)に示したように、挿入切欠23aを有さない単純な「スリット状」を有するものが適用される。
【0072】
さて、上述した根太20が一本の受け部21を有する場合には、これに係止スリット22のみを連続して形成する他、図5及び図6の各(a)に示したように、係止スリット22の端部近傍に係止穴23をも形成することがなされる。一本の受け部21に係止スリット22のみを形成する場合は、一つの係止スリット22を使用して一枚のデッキ材30の両側を二つの取付金具40によって固定しなければならないから、この係止スリット22の長さをデッキ材30の幅の2倍にしておくとよい。
【0073】
一本の受け部21に係止スリット22と係止穴23を形成する場合は、図5及び図6の(a)に示したように、係止スリット22の長さをデッキ材30の幅程度にするとともに、この係止スリット22の端部近傍に係止穴23を形成するとよい。この場合には、一つの係止スリット22に係合させた取付金具40によってデッキ材30の一方の側面31を固定してから当該デッキ材30を移動させ、これによって露出してきた係止穴23(次の係止スリット22の近傍に形成してあるもの)に、取付金具40によってデッキ材30の他の側面31の固定を行うのである。
【0074】
根太20が複数の受け部21を有する場合は、図5及び図6の各(b)、あるいは図7〜図11に示したように、一方の受け部21に係止スリット22を形成しておき、他の受け部21に係止穴23を形成すればよい。この場合には、上記各係止スリット22及び係止穴23を効果的に使用することができ、特に、壁200にデッキ材30を近接させる場合、施工を容易にするものである。この場合には、各係止スリット22及び係止穴23に、図10に示したような挿入切欠22a及び23aが形成してあれば、取付金具40によるデッキ材30の根太20に対する固定作業を効率的に行える。
【0075】
ところで、デッキ材30は、所謂「無垢材」を採用して形成されることが多いが、本実施形態で採用しているデッキ材30は、所謂間伐材を使用した心材の表面に化粧材を貼付して形成したもので、間伐材の利用を図るようにしたものである。勿論、両側面31(当該デッキ材30の長さ方向に沿う面)にも化粧材を貼付してある。
【0076】
以上のデッキ材30を根太20に固定するための取付金具40は、図10〜図13に示したように、種々なタイプのものが採用されるが、基本的には、図12に示したように、デッキ材30の側面31に固定される平板状の基部41と、この基部41の下部に連続的に形成されて、根太20の係止スリット22に係合する係止突起42とを有したものであって、平板状のものである。
【0077】
各取付金具40の基部41は、これを釘60やネジによってデッキ材30の側面31に固定する場合には、図12に示したように、これに釘穴44が形成されるものである。しかしながら、図13に示したように、この基部41に金具固定部43を積極的に形成して釘穴44を省略し、当該基部41をハンマー等でデッキ材30の側面31に打ち付けるようにすることにより、金具固定部43を側面31内に侵入させて、当該取付金具40によりデッキ材30の根太20への固定が行えるように実施してもよい。
【0078】
係止突起42は、基部41と同一面内にて左右に突出するものとして形成したものであり、根太20に形成してある係止スリット22または係止穴23から挿入されて、これらの係止スリット22または係止穴23の裏面側に係止されることになるものである。ここで、係止スリット22または係止穴23が挿入切欠22aまたは23aを有さない場合には、当該取付金具40は、係止スリット22または係止穴23に対してその長さ方向と平行になるようにして係止スリット22または係止穴23内に挿入され、各係止突起42が係止スリット22または係止穴23内に完全に入ってから90度回転するのである。そうすれば、各係止突起42と基部41との間にある「頸部」に受け部21が係合するから、当該取付金具40の根太20に対する係止がなされ、かつ係止スリット22または係止穴23内でのある程度の移動が許容されることになる。
【0079】
これに対して、係止スリット22または係止穴23が挿入切欠22aまたは23aを有する場合には、当該取付金具40は、基部41をデッキ材30の側面31に平行にしたまま、係止スリット22または係止穴23内に挿入される。つまり、この場合の取付金具40は、各係止突起42が係止スリット22または係止穴23内に完全に入ってから90度回転させる必要のないものであり、基部41をデッキ材30の側面31に平行にしたまま挿入しても各係止突起42と基部41との間にある「頸部」に受け部21を係合し得るのである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のような本発明に係るウッドデッキ100は、所謂「日曜大工製品」としても採用できるものであり、販売店の一つの商品アイテムとすることができて、販売店の売り上げ向上を図ることができるものでもある。
【0081】
また、このウッドデッキ100では、間伐材を使用したデッキ材30をその部品として構成することができるため、処理に困っている間伐材の商品としての利用範囲を広げることもできるものである。
【符号の説明】
【0082】
100 ウッドデッキ
10 土台
20 根太
21 受け部
22 係止スリット
22a 挿入切欠
23 係止穴
23a 挿入切欠
24 ボルトナット
30 デッキ材
31 側面
40 取付金具
41 基部
42 係止突起
43 金具固定部
44 釘穴
50 飾り板
60 釘
200 壁
210 引き戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台上に渡された根太に複数のデッキ材を取付金具によって取り付けたウッドデッキであって、
前記根太を、前記各デッキ材を受承する受け部を有したものとして金属板によって形成するとともに、この受け部上面に係止スリットを形成し、
前記取付金具を、前記デッキ材の側面に固定される平板状の基部と、この基部の下部に連続的に形成されて、前記根太の係止スリットに係合する係止突起とを有したものとしたことを特徴とするウッドデッキ。
【請求項2】
前記受け部上面に、さらに係止穴を形成したことを特徴とする請求項1に記載のウッドデッキ。
【請求項3】
前記根太の一本について前記受け部を複数形成するとともに、一つの受け部について前記係止スリットを形成し、他の受け部上面については係止穴を形成したことを特徴とする請求項1に記載のウッドデッキ。
【請求項4】
前記係止スリットの一部に、前記取付金具の係止突起が挿入できる挿入切欠を形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のウッドデッキ。
【請求項5】
前記係止穴の一部に、前記取付金具の係止突起が挿入できる挿入切欠を形成したことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載のウッドデッキ。
【請求項6】
前記取付金具の基部の一部に、前記デッキ材の側面に固定される金具固定部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のウッドデッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−99242(P2011−99242A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254109(P2009−254109)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000128038)株式会社エヌ・エス・ピー (33)
【Fターム(参考)】