説明

ウレタン樹脂組成物

【課題】ポリエレタン樹脂の有する基本特性を維持した上で、耐熱性、耐加水分解性等が良好で、作業性にも優れた電気・電子部品の防湿絶縁処理に適したウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (i)ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールとのエステル化物であるポリエステルポリオール、及び水添ポリイソプレンポリオールを含むポリオール成分、並びに
(ii)ポリイソシアネート成分
を含有するウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物及び絶縁処理された電気電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気電子部品を湿気、粉塵等を含む雰囲気や、振動、衝撃等から保護する目的で電気絶縁封止剤が用いられており、その材料としては、一般的にシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂などの低硬度で柔軟な樹脂が使用されている
これらの樹脂の内で、シリコーン樹脂は、耐熱性、可撓性、低温特性に優れているものの、透湿性が大きいため水分による影響を完全には防止できず、機械強度が小さく、更に高価であるという欠点がある。
【0003】
一方、ポリウレタン系樹脂は、その本来の特徴的な性質として、可撓性、耐摩耗性、低温硬化性、電気特性等が良好であり、電気絶縁封止剤としての用途の他に、電気、電子関係、自動車関係、土木、建築関係を始めとする広範囲の分野においてコーティング剤、接着剤などとして使用されている。
【0004】
この様なポリウレタン系樹脂を、上記した各種分野に用いる場合には、ポリオール成分の選択が重要であり、その研究が種々なされている。
【0005】
例えば、ポリオール成分として、ポリブタジエン又はその水素添加物等の利用が研究されている。更に、水添ポリイソプレンポリオール(下記特許文献1、2参照)、ヒマシ油又はその構成脂肪酸であるリシノール酸の誘導体等を含むポリオール成分(下記特許文献3〜9参照)等の使用が報告されている。
【0006】
しかしながら、これらのポリオール成分を用いる場合であっても、耐熱性、耐加水分解性、作業性などの特性を同時に満足することは困難である。
【0007】
特に、水添イソプレンポリオールは、高価で極めて高粘度であり、作業性が著しく劣るという欠点がある。可塑剤やヒマシ油を配合することも行われているが、相溶性が悪く、耐水性が低下しやすい。更に、これらの成分を添加することで、本来の特性を低下させ、更に、硬化物が減量、収縮するなどの問題も生じている。
【0008】
また、ポリウレタン系樹脂に難燃性を付与するためには、通常、臭素系難燃剤が配合されているが、これは、有害物質として環境上重大な問題がある。
【特許文献1】特開昭63−57626号公報
【特許文献2】特開平1−203421号公報
【特許文献3】特開昭56−57818号公報
【特許文献4】特開平1−319522号公報
【特許文献5】特開平4−142325号公報
【特許文献6】特開平6−295620号公報
【特許文献7】特開平6−145596号公報
【特許文献8】特開平7−102033号公報
【特許文献9】特開平7−165866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ポリウレタン樹脂の有する基本特性を維持した上で、耐熱性、耐加水分解性等が良好で、作業性にも優れた電気・電子部品の防湿絶縁処理に適したウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ウレタン樹脂組成物のポリオール成分として、特定の条件を満足するポリエステルポリオールと水添ポリイソプレンポリオールを併用することにより、上記目的を達成し得る電気・電子材料の防湿絶縁処理に適したウレタン樹脂組成物が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記のウレタン樹脂組成物及び絶縁処理が施された電気電子部品を提供するものである。
1.
(i)ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールとのエステル化物であるポリエステルポリオール、及び水添ポリイソプレンポリオールを含むポリオール成分、並びに
(ii)ポリイソシアネート成分
を含有するウレタン樹脂組成物。
2. ポリエステルポリオールが、ダイマー酸1モルとヒマシ油系ポリオール2モルとのエステル化物、又はダイマー酸1モルと、ヒマシ油系ポリオール1モル及びその他のポリオール1モルとのエステル化物である上記項1に記載のウレタン樹脂組成物。
3. ポリエステルポリオール100重量部に対して、水添ポリイソプレンポリオールを5〜100重量部含有する上記項1又は2に記載のウレタン樹脂組成物。
4. 更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、ヒマシ油系ポリオールを5〜100重量部含有する上記項1〜3のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
5. 更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤を5〜100重量部含有する上記項1〜4のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
6. 更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、水酸化アルミニウムを5〜500重量部含有する上記項1〜5のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
7. 上記項1〜6のいずれかに記載されたウレタン樹脂組成物によって絶縁処理が施された電気電子部品。
【0012】
以下、本発明のウレタン樹脂組成物の各成分について具体的に説明する。
【0013】
ポリオール成分
本発明では、ポリオール成分としては、下記のポリエステルポリオールと水添ポリイソプレンポリオールを併用することが必要である。この様な二種類のポリオール成分を用いることによって、耐熱性、耐湿性、電気絶縁性、作業性等に優れたポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0014】
(1)ポリエステルポリオール
本発明で用いるポリエステルポリオールは、ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールとのエステル化物である。
【0015】
ダイマー酸とは、リノール酸、オレイン酸、エライジン酸、トール油脂肪酸などの不飽和脂肪酸の重合によって得られるダイマーである。一般に炭素数18の脂肪酸を原料とする関係から、主成分は炭素数36のジカルボン酸であるが、工業的に製造したものは、一部にトリマーおよびモノマーを含む。
【0016】
ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールの使用量の割合は、当量的には、ダイマー酸1モルに対して、ヒマシ油系ポリオール2モルである。また、ダイマー酸1モルに対してヒマシ油系ポリオール1モルとその他のポリオール1モルをエステル化したポリエステルポリオールも用いることができる。典型的な例として、ダイマー酸をHOOC−R−COOH、ヒマシ油系ポリオールをHO−R′−OH、その他のポリオールをHO−R″−OHとするとき、ダイマー酸1モルにヒマシ油系ポリオール2モルが反応すれば、ポリエステルポリオールHO−R′−OOC−R−COO−R′−OHが得られ、ダイマー酸1モルにヒマシ油系ポリオール1モルとその他のポリオール1モルが反応すれば、ポリエステルポリオールHO−R′−OOC−R−COO−R″−OHが得られる。これらの場合、ヒマシ油系ポリオールの量は、0.5〜2.5モル程度の幅は許容され、同様に、ヒマシ油系ポリオール以外のポリオールの量は、1.5モル程度までの幅が許容される。このような範囲であれば、副生物または未反応物も生成するが、目的とするポリエステルポリオール組成物が必要量生成するからである。
【0017】
ダイマー酸と反応させるヒマシ油系ポリオールとしては、(i) 部分脱水ヒマシ油、(ii) 部分アシル化ヒマシ油、(iii) ヒマシ油と実質的にOH基を有しない天然油脂とのエステル交換反応物、(iv) ヒマシ油脂肪酸の低分子量ポリオールとのエステル、等を用いることができる。
【0018】
これらの内で、部分脱水ヒマシ油は、ヒマシ油を硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸などの酸性触媒の存在下に加熱することにより得られるものである。
【0019】
部分アシル化ヒマシ油は、ヒマシ油を部分的にアシル化することによって得られるものである。アシル化の中ではアセチル化が最も重要であり、工業的にはアセチル化が利用されることが多い。アセチル化方法としては、ケテンを反応させる方法、氷酢酸を反応させる方法も採用できるが、工業的には無水酢酸によるアセチル化が最も有利である。
【0020】
ヒマシ油と実質的にOH基を有しない天然油脂とのエステル交換反応物としては、両者を通常行われるエステル交換反応、たとえば、水酸化アルカリ、アルカリ金属アルコラート、炭酸ソーダ等のアルカリ触媒やリサージなどの触媒の存在下、180〜260℃、15分〜6時間の反応条件下にエステル交換して得られる反応物が用いられる。
【0021】
なお、実質的にOHを有しない天然油脂としては、アマニ油、キリ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、荏ごま油、くるみ油、米ぬか油、綿実油、つばき油、オリーブ油、らっかせい油などの植物油、牛脂、豚脂、魚脂、肝脂、鯨脂などの動物性が例示できる。
【0022】
ヒマシ油脂肪酸の低分子量ポリオールとのエステルとしては、ヒマシ油と低分子量ポリオールとのエステル化物、ヒマシ油脂肪酸またはそのアルキルエステルと低分子量ポリオールとのエステル化物などがあげられる。ここで低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネアペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、多官能ポリエーテルポリオールなどのポリオール、あるいはこれらのポリオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物などが例示できる。
【0023】
ヒマシ油系ポリオールは、上記した(i)〜(iv)の場合にも、1分子当り官能基数が2.5以下、特に2.4以下であるものが好ましい。1分子当りの官能基数が2.5を越えると、実質的にヒマシ油と同等になってダイマー酸とのエステルの粘度が高くなるので好ましくない。一方、1分子当りの官能基数が極端に少なくなると実質的にモノオールとなるので、下限はおのずから制約があり、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上である。
【0024】
ヒマシ油系ポリオール以外のポリオールとしては、ヒマシ油、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、多官能ポリエーテルポリオールなどのポリオール、あるいはこれらのポリオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物などを例示できる。
【0025】
ポリエステルポリオールを得るためのエステル化反応は、不活性ガス雰囲気下に、上記各成分を無触媒下または金属系触媒や酸性触媒の存在下に加熱反応させることにより達成できる。反応温度は160〜250℃程度、好ましくは180〜240℃程度とし、反応時間は2〜24時間程度とすることが多い。
【0026】
本発明で用いるポリエステルポリオールは、数平均分子量が300〜5000程度であることが好ましく、500〜3000程度であることがより好ましく、800〜2000程度であることが更に好ましい。
【0027】
(2)水添ポリイソプレンポリオール
水添ポリイソプレンポリオールとしては、数平均分子量が300〜25000程度、好ましくは、500〜20000程度、さらに好ましくは、700〜10000程度で、分子両末端にOH基を有するポリイソプレンポリオールの二重結合部分に、白金、バナジウム等の水素化触媒を用いて水素添加したものを用いることができる。
【0028】
水素化率は、50〜100%程度であることが好ましく、70〜100%程度であることがより好ましい。この水素化率が低すぎる場合には、満足な耐熱性が得られない可能性があるので、好ましくない。
【0029】
このような水添ポリイソプレンポリオールの市販品としては、例えば、出光興産(株)の「エポール」数平均分子量:2200、水添率:100%がある。
【0030】
本発明では、水添ポリイソプレンポリオールの使用量は、上記したポリエステルポリオール100重量部に対して、5〜100重量部程度とすることが好ましく、20〜80 重量部程度とすることがより好ましい。
【0031】
上記割合でポリエステルポリオールと水添ポリイソプレンポリオールを組み合わせて用いることによって、ポリエステルポリオールの有する電気絶縁性、耐熱性、耐湿性等と、水添ポリイソプレン系ポリオールの有する耐熱性、耐湿性が発揮され、更に、作業性も改善されて、良好な特性を有するウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
(4)ヒマシ油系ポリオール
本発明では、上記したポリエステルポリオールと水添ポリイソプレンポリオール以外に、必要に応じて、ヒマシ油系ポリオールを用いることができる。ヒマシ油系ポリオールを用いることによって、ウレタン樹脂組成物を低粘度化して、部品の間隙に浸透しやすくなり、耐衝撃性が向上し、更に、気泡の抜けが良くなり防湿性能が向上する。
【0033】
ヒマシ油系ポリオールとしては、前述したダイマー酸と反応させる際に用いることができるヒマシ油系ポリオールと同様の成分を一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0034】
ヒマシ油系ポリオールは、平均官能基数 2.2〜3.5程度、好ましくは2.4〜 3.2程度であって、数平均分子量400〜1500程度、好ましくは500〜1000程度のものを用いることができる。例えば伊藤製油(株)製のH−35、Y−403(いずれも商標名)等を用いることができる。
【0035】
ヒマシ油系ポリオールの使用量は、前記したポリエステルポリオール100重量部に対して、5〜60重量部程度とすることが好ましく、5〜50重量部程度とすることがより好ましく、5〜40重量部程度とすることが更に好ましい。この様な配合量とすることによって、耐湿性などを低下させることなく、耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0036】
(5)その他のポリオール
本発明では、更に、必要に応じて、その他のポリオールを配合することができる。この様なポリオールとしては、特に限定はなく、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブタジエンポリオール等の他、ヒマシ油等のトリグリセライドまたはそのアルコールのエステル交換物等の誘導体;酸とアルコール成分との重縮合により得られるポリエステルポリオール;;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール等の低分子ポリオール;水添ヒマシ油脂肪酸、水添ポリブタジエンポリオール等の水添物等を用いることができる。これらのポリオールは、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0037】
これらのポリオール成分の使用量は、ウレタン樹脂組成物の特性を低下させないように適宜決めれば良く、通常、ポリエステルポリオール100重量部に対して80重量部程度以下とすればよい。
【0038】
ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分としては、特に限定はなく、公知のウレタン樹脂組成物に用いられている各種のポリイソシアネートから適宜選択して用いればよい。この様なイソシアネート成分の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3、5、5−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシリレンジイソシアネート、3、3’−ジイソシアネートプロピルエーテル、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジフェニルエーテル−4、4’−ジイソシアネートなどのポリイソシアネート:カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート等の前記ポリイソシアネートから誘導される末端イソシアネート基を有するプレポリマーなどが挙げられる。これらのポリイソシアネート成分は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0039】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分の混合割合は、特に限定的ではないが、通常、NCO/OHの当量比が0.80〜1.20程度、好ましくは、0.85〜1.15程度となる範囲とすればよい。
【0040】
ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤
本発明のウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤を配合することができる。この様な含リン難燃剤としては、例えば、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのハロゲン原子を含有しないリン酸エステルを用いることができる。具体例としては、TCP、TXP、PX−110、PX−200(いずれも商標名、大八化学工業(株)製)等が挙げられる
上記したハロゲン原子を含まない含リン難燃剤を配合することによって、ウレタン樹脂組成物に難燃性が付与されると共に、可撓性も向上する。また、この含リン難燃剤は、ハロゲン原子を含有しないので、焼却時にダイオキシンが発生せず、環境に対する悪影響が少ない。
【0041】
ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。該含リン難燃剤の使用量は、上記したポリエステルポリオール100重量部に対して60重量部程度以下であることが好ましい。また、十分な可撓性と難燃性を付与するためには、5重量部程度以上であることが好ましい。特に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、5〜40重量部程度であることが好ましく、5〜30重量部程度であることがより好ましく、5〜20重量部程度であることが更に好ましい。含リン難燃剤の配合量が多すぎると、ウレタン樹脂組成物の耐湿性が低下するので注意が必要である。
【0042】
水酸化アルミニウム
本発明のウレタン樹脂組成物には、更に、必要に応じて、水酸化アルミニウムを配合することができる。水酸化アルミニウムを配合することによって、難燃性、熱伝導性等を更に向上させることができる。水酸化アルミニウムとしては、粒径0.1〜100μm程度のものを用いることが好ましい。
【0043】
水酸化アルミニウムの使用量は、多すぎると粘度が高くなって注型作業性が低下するので、上記ポリエステルポリオール100重量部に対して500重量部程度以下とすることが好ましい。また、難燃性、熱伝導性等を十分に向上させるためには、ポリエステルポリオール100重量部に対して、5重量部程度以上とすることが好ましい。即ち、水酸化アルミニウムの使用量は、ポリエステルポリオール100重量部に対して5〜500重量部程度とすることが好ましく、50〜300重量部程度とすることがより好ましい。
【0044】
その他の成分
本発明のウレタン樹脂組成物には、その他、必要に応じて、可塑剤、粘着付与剤、硬化促進剤、着色剤、鎖延長剤、架橋剤、フィラー、顔料、充填材、難燃剤、ウレタン化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、水分吸着剤、消泡剤、防かび剤、シラン系やチタン系カップリング剤などの各種の添加剤を配合することができる。これらの成分の使用量は、その使用目的に応じて、ウレタン樹脂組成物の所望の特性を阻害することのないよう、通常の添加量と同程度の範囲内から適宜決めればよい。
【0045】
ウレタン樹脂組成物
本発明のウレタン樹脂組成物は、上記したポリオール成分とポリイソシアネート成分を必須の成分とする二液性組成物である。これら以外の成分については、ポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれか一方又は両方に配合すればよいが、水酸化アルミニウムなどのポリイソシアネート成分と反応する可能性のある成分については、通常は、ポリオール成分中に添加される。
【0046】
本発明のウレタン樹脂組成物は、可撓性、耐摩耗性、低温硬化性、電気特性等のウレタン樹脂の優れた基本特性を維持した上で、耐熱性、耐湿性(耐加水分解性)が大きく改善され、更に、注型作業などの作業性も良好である。
【0047】
本発明のウレタン樹脂組成物は、この様な優れた特性を利用して、コンデンサ、トランス等の部品、実装回路板などの電気電子機器の絶縁処理に好適に用いることができ、これらの電気電子部品に対して、耐熱性に優れた防湿絶縁皮膜を形成することができる。
【0048】
例えば、一般に知られている注型法によって、本発明のウレタン樹脂組成物を電気電子部品に注型し、硬化させることによって、耐湿性、耐熱性などに優れた絶縁処理を施すことができる。
【0049】
注型後の硬化反応は、室温下又は加熱下において行うことができる。例えば、加熱硬化を行う場合、通常、60〜120℃の温度で加熱することが好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明のウレタン樹脂組成物は、耐熱性、耐湿性等が良好で、作業性にも優れた組成物であり、例えば、各種の電気電子部品の絶縁処理に好適に用いることができる。また、ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤を配合する場合には、環境に対して悪影響を及ぼすことなく、難燃性、可撓性等を向上させることができる。
【0051】
本発明のウレタン樹脂組成物を用いて絶縁処理を施された電気電子部品は、良好な電気絶縁性と共に、優れた耐熱性、耐湿性等を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0053】
実施例1
下記表1に示す配合割合(重量部)でポリオール成分、含リン難燃剤及び水酸化アルミニウムを含むA剤と、ポリイソシアネート成分からなるB剤を、NCO/OH(当量比)=1/1の割合で混合してウレタン樹脂組成物を調製した。
【0054】
表1に記載した各成分の具体的内容は下記の通りである。
*ポリオール成分:
(1)ポリエステルポリオール(商標名:1598U、伊藤製油(株)製)
下記のダイマー酸1モルに対して、ヒマシ油系ポリオール1モルとポリエーテルポリオール1モルをエステル化したポリエステルポリオール(水酸基価(mgKOH/g):80、酸価(mgKOH/g):1.5、粘度(mPa.s):2710)
(a)ダイマー酸:オレンイン酸を重合して得られたダイマー75%、トリマー20%及びモノマー5%からなる市販のダイマー酸(酸価:193mgKOH/g、粘度:9000mPa・s(25℃)、官能基数:2)
(b)ヒマシ油系ポリオール:ヒマシ油を酸性硫酸ソーダ存在下に減圧状態で190〜250℃で加熱反応させて製造した部分脱水ヒマシ油(水酸基価:137mgKOH/g、粘度:490mPa・s(25℃))
(c)ポリエーテルポリオール:水酸基価:112mgKOH/g、官能基数:2、MW:1000のポリエーテルポリオール(商標名:Diol−1000、三井化学製)
(2)水添ポリイソプレンポリオール(商標名:エポール、出光興産(株)製)
末端にOH基を有する水添ポリイソプレンポリオール(数平均分子量:1200、水添率:100%)
(3)ヒマシ油系ポリオール(部分脱水ヒマシ油、商標名:ユリックH−35、伊藤製油(株)製)
水酸基価160mgKOH/g、官能基数:2.5、MW:950
(4)ポリブタジエンポリオール(商標名:R−45HT,出光興産(株)製)
数平均分子量:2800、官能基数:2.3、ヨウ素価:398、水酸基価:46mgKOH/g
*水酸化アルミニウム
昭和電工(株)製、H−32、平均粒径:8μm
*含リン難燃剤(商標名:PX−110、大八化学工業(株)製)
キシレニルホスフェートを主成分とするリン酸エステル(リン含有量7.8%)
*ポリイソシアネート成分(商標名:ミリオネートMTL、日本ポリウレタン(株)製)
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート。
【0055】
表1に示す各ウレタン樹脂組成物を用いて下記の各方法で各種特性を測定した。
【0056】
まず、各ウレタン樹脂組成物を、110mm×110mm×3mmの成形用型、又は内径30mm、高さ10mmの成形用型に注入し、その後、下記の方法で各樹脂組成物の作業性、硬度、耐湿性、耐熱性及び熱伝導性の試験を行った。尚、以下の試験の内で硬化物を用いる試験については、60℃で16時間加熱した後、室温で1日放置して硬化させた試料を用いた。結果を表1に示す。
【0057】
・作業性:
A剤とB剤との混合液を110mm×110mm×3mmの成形用型に注型し、底部まで流れ込み気泡ないものを○(良好)、少し気泡が残るものを△(普通)、流れ込まないものを×(不良)と判定した。
【0058】
・柔軟性:
JISK6253の方法に従って、A型硬さ試験によって硬化物の23℃および−20℃での硬さを測定した。23℃における硬度が15以上のものを○(良好)、15未満のものを×(不良)と判定した。また、−20℃での硬度が90を越えるものを×(不良)と判定した。
【0059】
・耐湿性
硬化物を121℃・100%RHのプレッシャークッカー装置で100時間処理した後、23℃での体積抵抗率を測定した。抵抗率が1×1011Ω・cm以上のものを○(良好)、1×1011Ω・cm未満のものを×(不良)と判定した。
【0060】
・耐熱性:
硬化物を120℃の炉に2000時間放置した後、室温に戻して硬度を測定した。室温での初期硬度に対する変化率が±10%以内を○(良好)、それを越える場合を×(不良)と判定した。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ダイマー酸とヒマシ油系ポリオールとのエステル化物であるポリエステルポリオール、及び水添ポリイソプレンポリオールを含むポリオール成分、並びに
(ii)ポリイソシアネート成分
を含有するウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステルポリオールが、ダイマー酸1モルとヒマシ油系ポリオール2モルとのエステル化物、又はダイマー酸1モルと、ヒマシ油系ポリオール1モル及びその他のポリオール1モルとのエステル化物である請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオール100重量部に対して、水添ポリイソプレンポリオールを5〜100重量部含有する請求項1又は2に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、ヒマシ油系ポリオールを5〜100重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、ハロゲン原子を含まない含リン難燃剤を5〜100重量部含有する請求項1〜4のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
更に、ポリエステルポリオール100重量部に対して、水酸化アルミニウムを5〜500重量部含有する請求項1〜5のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載されたウレタン樹脂組成物によって絶縁処理が施された電気電子部品。

【公開番号】特開2006−316216(P2006−316216A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142563(P2005−142563)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(391003624)サンユレック株式会社 (28)
【Fターム(参考)】