説明

ウレテロレノスコープ

【課題】ウレテロレノスコープは、遠位端に器具ヘッドが配置されたシャフトを有する。
【解決手段】この器具ヘッドは、遠位方向に向かうにつれて連続して先細に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載された構成要件を備えるウレテロレノスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
ウレテロレノスコープは、尿管や腎盂の領域における経尿道診断のために用いられる。この器具は、尿管や腎杯から尿結石を摘出するために頻繁に利用される。そのために、多くの場合弾性に構成されるウレテロレノスコープの中空シャフトが、尿管口から尿管内の尿結石まで挿入され、そこで、中空シャフトに挿通された結石採取かごによって尿結石を直接摘出することができ、または、結石が大きい場合には事前にたとえばレーザゾンデによって破砕される。特に尿管の内径が非常に小さいときや、たとえば尿管狭窄症のような尿管狭窄があるときは、尿管を取り囲んでいる粘膜がウレテロレノスコープの挿入時に外傷を負う危険があり、あるいは穿孔される危険さえある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上を背景とする本発明の課題は、尿管の内部で組織を一層保護しながら動かすことが可能であるウレテロレノスコープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1に記載された構成要件を備えるウレテロレノスコープによって解決される。このウレテロレノスコープの好ましい発展形態は、従属請求項、以下の説明、ならびに図面に記載されている。
【0005】
本発明に係るウレテロレノスコープはシャフトを有する。これは、剛性に構成しても弾性に構成してもよい中空シャフトである。しかしながら、中空シャフトは弾性の構成が好ましく、これにより、中空シャフトをその長手方向に対して横向きに屈曲可能となる。中空シャフトの遠位端には器具ヘッドが配置される。この器具ヘッドは、中空シャフトの一部としてもよく、または、中空シャフトの遠位端にある別個の部分として設けてもよい。器具ヘッドには、観察光学系および照明手段のための案内通路が開口される。これに加えて、器具ヘッドには、治療目的のために用いられる器具のための少なくとも1つの器具通路も開口される。
【0006】
本発明の基本的思想は、本発明に係るウレテロレノスコープの器具ヘッドを、遠位方向に向かうにつれて先細に形成するように構成することにある。したがって、器具ヘッドはその遠位端で最小の断面積を有し、この断面積が近位方向に向かって最大の断面積になるまで無段階に増加し、器具ヘッドのこの最大の断面積は、中空シャフトの断面積に実質的に相当するのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
このような器具ヘッドの構成は、本発明に係るウレテロレノスコープが、従来公知のウレテロレノスコープに比べて小さな抵抗で粘膜を保護しながら尿管へ入り、尿管内を進むことができるという点で好ましく、このとき器具ヘッドは尿管を拡張器のように外傷の発生を防止しつつ拡張させる。これにより、組織の外傷の発生ないし穿孔の危険が大幅に減少する。
【0008】
器具ヘッドを連続的に先細にする方法は、基本的に任意である。たとえば、器具ヘッドを円錐状または角柱状に先細にすることができ、あるいは、少なくとも1つの部分的な円周面セクションで円錐状に先細にし、および/または少なくとも1つの別の部分的な円周面セクションで直線状に傾斜させて先細にすることができる。器具ヘッドは、実質的に直径上で互いに反対を向く2つの円周面セクションで、楔形に先細にすることを意図するのが好ましい。したがって、器具ヘッドは、互いに正反対を向く2つの円周面セクションでそれぞれ傾斜を形成して構成してもよく、これにより、器具ヘッドのこれらの円周面セクションの外套面は2つの平面を形成する。これらの平面は、器具ヘッドの中心軸に対して、遠位方向に向かうにつれて、器具ヘッドの中心軸に向かって程度の差こそあれ尖った遠位端を形成するように、傾斜する。
【0009】
器具ヘッドは、その遠位端を頂点または頂辺を形成するように先細にしないのが好ましい。これに代えて、器具ヘッドの遠位端では、典型的には器具ヘッドの中心軸に対して垂直な端面を形成するのが好ましい。すなわち、器具ヘッドは遠位方向に向かうにつれて先細に形成されるが、器具ヘッドの遠位端は、端面によって、外傷の発生を防止するように尖らせずに構成される。
【0010】
器具ヘッドの遠位端を形成する端面には、観察光学系のための案内通路と照明手段のための案内通路とを開口させるのが好ましい。したがって、これらの器具の部分では、観察光学系の観察域および照明手段の照明域が、器具ヘッドの他の領域によって制約されることがない個所に配置される。観察光学系および照明手段のための案内通路は、端面において、そこに配置される光透過性の端窓および/またはレンズによって閉鎖してもよい。そのほか、光学系と照明手段とを覆うと共に少なくともこれらの領域で光透過性であるカバーによって、端面全体を形成すると好ましい場合もある。
【0011】
ウレテロレノスコープは、通常、器具の内部を通る少なくとも1つの器具通路を有する。器具通路により、治療の目的で、補助器具を手術領域まで挿通することができる。少なくとも1つのこのような器具通路は、本発明に係るウレテロレノスコープでも設けるのが好ましい。この器具通路は、楔形に傾斜して構成された円周面セクションの1つに開口させるのが好ましい。器具通路は、その内法空間の断面が傾斜して構成されたこの円周面セクションに全面的に位置するように、配置してもよい。器具通路に挿通される器具が、器具ヘッドの遠位側の端面に配置される光学系ないし照明手段の視野および照明域に収まることを保証するために、器具通路は、典型的には、観察光学系および照明手段のできる限り近傍に配置される。この目的で、本発明に係るウレテロレノスコープでは、器具通路を、傾斜した円周面セクションから器具ヘッドの端面にかけての境界エッジと交差するように配置するのが好ましい。
【0012】
本発明に係るウレテロレノスコープは、2つの器具通路を有するのが特に好ましく、楔形に傾斜して構成された円周面セクションの1つに、1つの器具通路を開口させるのが好ましい。このような構成は、本発明に係るウレテロレノスコープを特に尿結石の砕石術に適したものにする。ただ1つの器具通路を備えるウレテロレノスコープでは、比較的大きい尿結石を破砕するとき、尿結石の破砕のために用いられるゾンデを使用後に器具通路から取り出して、尿結石の破片を回収するための結石採取かごを手術領域まで案内できるようにすることが必要である。これに対し、2つの器具通路が存在することで、尿結石を破砕するためのゾンデを一方の器具通路に残しておくことが可能になる。したがって、普通であれば常に必要となる器具通路内でのゾンデと結石採取かごとの入れ替えが不要になる。これは、尿結石摘出のための手術をするときの著しい時間的な利得を意味する。手術者のみならず患者も、これにより大いに負担が軽減される。両方の器具通路は、すでに前述したように、該当する傾斜した円周面セクションから器具ヘッドの端面にかけての境界エッジとそれぞれ交差するように配置するのが好ましい。
【0013】
本発明に係るウレテロレノスコープの拡張特性を一層向上させるために、器具ヘッドは、それぞれの楔形の円周面セクションの間に位置する少なくとも1つの円周面セクションでも、遠位方向に向かうにつれて先細に形成するのが好ましい。この目的で、この円周面セクションを、角柱状にまっすぐ傾斜させて構成してもよく、または、円錐状に先細にすることを意図するのも好ましい。
【0014】
レーザゾンデは、経尿道における結石摘出のときの砕石器に特に適する。本発明に係るウレテロレノスコープにおいても、器具通路を通って案内されるレーザゾンデの使用を意図する。このレーザゾンデは、ウレテロレノスコープのシャフトに近位側で続く制御ハウジングに固定可能であるのが好ましい。このような方策により、レーザゾンデがシャフトの内部で望ましくない変位をするのを防止することができる。このような変位は、レーザゾンデが誤って作動したときに、場合によりシャフトの破損を招く。制御ハウジングのレーザゾンデを固定可能な特性は、制御ハウジングがそれ自体としてウレテロレノスコープの取扱いのために利用されるという点で好ましい。
【0015】
レーザゾンデは、器具通路の内部で、器具通路の長手方向について限定された範囲で変位可能であるのが好ましい。これに関連して、器具通路の外部の作業位置から器具通路の内部の位置へ、およびこれとは逆へ、レーザゾンデの変位経路を意図してもよく、器具通路の内部の位置は、レーザの意図しない作動により器具を損傷させないように選択するのが好ましい。
【0016】
本発明に係るウレテロレノスコープでは、少なくとも1つの器具通路が洗浄通路を形成するのがさらに好ましい。すなわち、この器具通路は、洗浄液供給配管と接続可能である。このため、制御ハウジングには、相応の接続部を設けるのが好ましい。この接続部を介して洗浄液を手術領域へ誘導することができ、場合により、洗浄液をそこから再び戻るように誘導することができる。
【0017】
ウレテロレノスコープが、共に洗浄通路を形成する2つの器具通路を有し、洗浄液を両方の器具通路を介して手術領域へ誘導し、洗浄液をそこから再び戻るように誘導することができると、特に大きな洗浄液の容積流量を実現することができる。しかしながら、このような方法では断続的な洗浄しか可能ではない。連続的な洗浄を行えるようにするため、ウレテロレノスコープのさらに別の好ましい実施形態は、一方の器具通路を洗浄液の送り流路として利用し、他方の器具通路を洗浄液の戻り流路として利用することを意図する。
【0018】
次に、図面に示されている実施形態を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】遠位側のシャフトの端部を拡大して図示する、ウレテロレノスコープを模式的に示す側面図である。
【図2】図1のウレテロレノスコープの器具ヘッドを模式的に示す斜視図である。
【図3】図2の器具ヘッドを示す正面図である。
【図4】図2の器具ヘッドを示す側面図である。
【図5】図2の器具ヘッドを図4に対して90°だけ回転させて示す第2の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すウレテロレノスコープは、器具を取り扱うために利用される制御ハウジング2を有しており、その遠位端にはシャフト4が配置されている。シャフト4は弾性の中空シャフトとして構成される。シャフト4の遠位端には、器具ヘッド6が配置されている。
【0021】
制御ハウジング2を起点として、図1には図示しないが、照明手段のための案内通路8と、観察光学系のための案内通路10と、2つの器具通路12,14と、がシャフト4を通って延びる。案内通路8,10ならびに器具通路12,14は、すべて器具ヘッド6に開口されている(図2および図3)。尿結石摘出のために、器具通路12,14の一方は、制御ハウジング2に固定可能な図示しないレーザゾンデを案内してもよい。そのとき、器具通路12,14の他方は、同じく図示しない結石採取かごのためのアクセス部として使用される。結石採取かごは、器具通路12,14を通して手術領域へ案内することができる。
【0022】
器具ヘッド6は、シャフト4の遠位端に取り外し不能に固定された領域16を有している。この領域16の遠位側には、領域16がシャフト4に固定されたときにシャフト4の遠位側の外部に位置する器具ヘッド6の領域18が、段部17を形成しながら続いている。段部17は、器具ヘッド6が段部17でシャフト4と等しい外周断面を有するように、すなわちそこでシャフト4と同一直線上に並ぶように、寸法を決められている。
【0023】
領域18では、器具ヘッド6の遠位端を形成する端面20に向かう遠位方向に沿って、器具ヘッド6の断面積が連続して減少している。この点で、器具ヘッド6は、組織を保護しながら尿管を押し広げることができるいわば拡張器を形成している。
【0024】
端面20の断面積は、シャフト4の遠位端の断面積よりも明らかに小さい。すなわち、器具ヘッド6はその遠位方向に向かうにつれて、ないしは端面20に向かう方向に沿って、先細に形成されている。このような先細の構成は、実質的に、器具ヘッド6の直径上で互いに反対を向く2つの円周面セクション22,24を平坦な面とする形態で、遠位方向に向かうにつれて楔形に尖った遠位端を形成することによって得られる。これらの平面は、器具ヘッド6の中心軸Aに対して、実質的に等しい傾斜角をなしている(図4)。これに加えて、器具ヘッド6は、円周面セクション22,24の間に位置する円周面セクション26,28でも先細に形成されている。ただし、円周面セクション26,28における器具ヘッド6の先細の構成は、円錐状であるか、ないしは、これらの円周面セクション26,28の湾曲した外套面により形成されて、円周面セクション26の外套面は、遠位方向に向かうにつれて円周面セクション28よりも大きく器具ヘッド6の中心軸Aに近づいて、遠位端を形成する。
【0025】
端面20には、円周面セクション28に隣接する観察光学系の縁部領域に案内通路8が開口されており、これに対し、照明手段のための案内通路10は、円周面セクション26に隣接する端面20の縁部領域に開口されている。
【0026】
器具通路12は、主として円周面セクション22で器具ヘッド6から外部に開放されるように配置されている。ただし、この器具通路12は、観察光学系の案内通路8と観察光学系の案内通路10との間に位置している円周面セクション22に隣接する縁部領域で、端面20と交差している。これに対応して、器具通路14は、その開口部が、円周面セクション24と、これに隣接する観察光学系の案内通路8と照明手段の案内通路10との間にある端面20の縁部領域と、の双方と交差するように、器具ヘッド6から外部に開放されている。観察光学系の案内通路8および照明手段の案内通路10のごく近傍に器具通路12,14がこのように配置されているため、器具通路12,14を通って案内される器具が、観察光学系および照明手段の観察域および照明域に収まることが保証される。
【符号の説明】
【0027】
2 制御ハウジング
4 シャフト
6 器具ヘッド
8 案内通路
10 案内通路
12 器具通路
14 器具通路
16 領域
17 段部
18 領域
20 端面
22 円周面セクション
24 円周面セクション
26 円周面セクション
28 円周面セクション
A 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端に器具ヘッド(6)が配置されたシャフト(4)を備えるウレテロレノスコープにおいて、
前記器具ヘッド(6)は、遠位方向に向かうにつれて連続して先細に形成されたウレテロレノスコープ。
【請求項2】
前記器具ヘッド(6)は、実質的に直径上で互いに反対を向く2つの円周面セクション(22,24)で楔形に先細に形成された請求項1に記載のウレテロレノスコープ。
【請求項3】
前記器具ヘッド(6)の遠位端に、端面(20)が形成された請求項1または請求項2に記載のウレテロレノスコープ。
【請求項4】
前記端面(20)に、観察光学系のための案内通路(8)と照明手段のための案内通路(10)とが開口された請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項5】
楔形に傾斜して構成された前記円周面セクション(22,24)の少なくとも一方に、器具通路(12,14)が開口された請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項6】
楔形に傾斜して構成された前記円周面セクション(22,24)の両方に、それぞれ器具通路(12,14)が開口された請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項7】
前記器具ヘッド(6)は、少なくとも楔形に傾斜して構成された前記円周面セクション(22,24)の間に位置する円周面セクション(26,28)で、遠位方向に向かうにつれて先細に形成された請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項8】
前記器具通路(12,14)の一方の内部で、レーザゾンデが案内される構成とされ、
該レーザゾンデは、前記シャフト(4)に近位側で隣接した制御ハウジング(2)に固定可能である請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項9】
前記レーザゾンデは、前記器具通路(12,14)の内部で、前記器具通路(12,14)の長手方向について限定された範囲で変位可能である請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項10】
少なくとも1つの前記器具通路(12,14)は、洗浄通路を形成する請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。
【請求項11】
一方の前記器具通路(12,14)は、洗浄液送り流路を形成し、他方の前記器具通路(12,14)は、洗浄液戻り流路を形成する請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載のウレテロレノスコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214121(P2010−214121A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62170(P2010−62170)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(594008556)リチャード ウルフ ゲーエムベーハー (19)
【氏名又は名称原語表記】Richard Wolf GmbH
【Fターム(参考)】