エアスライド装置

【課題】スライダの走行安定性が高強く、小型・軽量なエアスライド装置の構造を提供する。
【解決手段】エアスライド装置1は、スライダ案内面211、212が磁性体で形成されたレール2と、レール2の長手方向Xにレール2のスライダ案内面211、212上を非接触で移動するスライダ3と、を備えている。スライダ3は、L字型に組み合わされたスライドプレート31と、スライドプレート31およびレール2の間に介在するようにスライドプレート31に取り付けられた第一、第二のエアベアリング4A、4Bと、を備えている。第一、第二のエアベアリング4A、4Bは、磁力を発生する磁力発生部41と、磁力発生部41の周囲に配置され、圧縮空気を吐出する圧縮空気供給部42と、を備えている。圧縮空気供給部42の端面421は、磁力発生部41の端面411とともに、レール2のスライダ案内面211、212と非接触で対面する支持面40を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を非接触で移動するスライダを備えたエアスライド装置に関し、特に、レール上におけるスライダの走行安定性が高く、かつ小型・軽量化に適したエアスライド装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軽量の支持対象であっても、これを安定して非接触で支持することができる静圧気体軸受が開示されている。この静圧気体軸受は、支持対象と非接触にて対面する支持面に、それぞれ多数の細孔が形成された第一および第二の多孔面と、第一の多孔面に対して第二の多孔面を隔離する隔壁の端面と、を有している。そして、第一の多孔面の各細孔には、開口から圧縮空気を吐き出すための圧縮空気供給用ポンプが連結されており、第二の多孔面の各細孔には、開口に空気を吸い込むための空気吸引用ポンプが連結されている。また、第二の多孔面と第一の多孔面とは実質的に面一になっている。
【0003】
このような構造により、特許文献1に記載の静圧気体軸受は、圧縮空気供給用ポンプによる第一の多孔面からの圧縮空気の吐き出しと、空気吸引用ポンプによる第二の多孔面への空気の吸い込みと、自重もしくは支持対象の重さとのバランスによって、軽量の支持対象であっても、これを安定して非接触で支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−214290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スライダのスライドプレートに静圧気体軸受を取り付けて、静圧気体軸受の支持面をレール表面と対面させることにより、スライダを非接触でレール上を移動させるエアスライド装置が知られている。このようなエアスライド装置に、特許文献1に記載の静圧気体軸受を用いた場合、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の静圧気体軸受は、第二の多孔面内への空気の吸い込みにより支持対象を引き寄せるものであるため、大気圧以上の力でスライドプレートをレール表面に引き寄せることができない。このため、特許文献1に記載の静圧気体軸受は、剛性が低く、例えばスライドプレートに外力が加わり、負荷変動が生じると、レール上におけるスライダの走行が不安定になる可能性がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の静圧気体軸受では、第一の多孔面から圧縮空気を吐き出すための圧縮空気供給用ポンプとは別に、第二の多孔面内に空気を吸い込むための空気吸引用ポンプも必要となる。このため、エアスライド装置が大型・重量化する。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スライダの走行安定性が高く、かつ小型・軽量化に適したエアスライド装置の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、磁性を帯びたスライド案内面を有する相手部品を用いるとともに、スライド案内面に沿って走行するスライダに、スライド案内面に対面する支持面を備えた静圧気体軸受を少なくとも一つ設ける。この静圧気体軸受には、スライド案内面を支持面に相対的に引き寄せる磁力を発生させる磁力発生手段と、スライダ案内面と支持面との隙間に圧縮気体を吐出する圧縮気体供給手段と、を設けた。
【0010】
例えば、本発明は、相手部品に対して非接触で移動するスライダを備えたエアスライド装置であって、
前記相手部品は、磁性を帯びたスライダ案内面を備え、
前記スライダは、
前記スライダ案内面と非接触で対面する支持面を備えた静圧気体軸受を少なくとも一つ有し、
前記静圧気体軸受は、
前記スライド案内面を相対的に引き寄せる磁力を発生させる磁力発生手段と、
前記スライダ案内面と前記支持面との隙間に圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、静圧気体軸受の相手部材として、磁性を帯びたスライダ案内面を有する相手部品を用い、磁力発生手段により発生する磁力により、磁性を帯びたスライダ案内面を静圧気体軸受の支持面に相対的に引き寄せる。このため、相手部材を引き寄せる力が大気圧以下に制限される空気吸引の場合に比べて、突然の負荷変動に対する影響を低減可能な高剛性を有する静圧気体軸受を実現することができる。このため、スライダあるいは静圧気体軸受の突然の負荷変動が生じても、スライド案内面上におけるスライダの走行安定性を保持することができる。また、気体吸引用ポンプが不要となるので、エアスライド装置全体を小型・軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係るエアスライド装置1の外観図である。
【図2】図2(A)、(B)、(C)は、スライダ3の正面図、底面図、右側面図である。
【図3】図3(A)、(B)は、第一のエアベアリング4Aの外観図である。
【図4】図4(A)、(B)は、第一のエアベアリング4Aの正面図、背面図である。
【図5】図5(A)は、図4(A)に示す第一のエアベアリング4Aの右側面図であり、図5(B)は、図4(A)に示す第一のエアベアリング4AのA−A断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態に係るエアスライド装置1の動作原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係るエアスライド装置1の外観図である。また、図2(A)、(B)、(C)は、スライダ3の正面図、底面図、右側面図である。
【0015】
図示するように、本実施の形態に係るエアスライド装置1は、上面(一方のスライダ案内面)211および上面211と隣り合う一方の側面(他方のスライダ案内面)212が磁性を帯びたレール2と、レール2の長手方向(図1のX方向)にレール2のスライダ案内面211、212上を非接触で移動するスライダ3と、を備えている。
【0016】
レール2は、例えば、アルミ等で形成されたフレーム21と、フレーム21の隣り合う二面(レール2のスライダ案内面211、212)に六角穴付きボルト51および台形ナット55で固定された、2枚の磁性鋼板等のレール板22と、を備えている。レール2のスライダ案内面211、212は、2枚のレール板22の表面211、212により形成される。
【0017】
スライダ3は、断面L字形状のスライドプレート31と、スライドプレート31およびレール2のスライダ案内面211、212の間に介在するようにスライドプレート31に取り付けられた第一、第二のエアベアリング4A、4Bと、を備えている。なお、図2には、第一のエアベアリング4Aを3つ、第二のエアベアリング4Bを2つ用いた例を示しているが、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの個数は、エアスライド装置1の用途等に応じて適宜定めればよい。
【0018】
スライドプレート31は、レール2の一方のスライダ案内面211と対面する第一の面311およびレール2の他方のスライダ案内面212と対面する第二の面312を有している。このようなスライドプレート31は、例えば、2枚のプレート32A、32Bを、L字形状に組合せ、六角穴付きボルト52で固定することにより作製される。
【0019】
スライドプレート31には、第一のエアベアリング4Aをネジ止めするためのネジ穴314が、第一のエアベアリング4Aの個数に応じた数、第一の面311とその反対側の面313とを繋ぐように形成されており、また、第二のエアベアリング4Bをネジ止めするための座繰り穴316が、第二のエアベアリング4Bの個数に応じた数、第二の面312とその反対側の面315とを繋ぐように形成されている(図6参照)。
【0020】
また、スライドプレート31には、複数の通気路317A、317Bが、第二の面312とその反対側の面315とを繋ぐように形成されている。図示していないが、少なくとも一つの通気路317Aには、各第一のエアベアリング4Aに繋がるホースに圧縮空気供給用ポンプのホースを接続するためのカプラが第二の面312と反対側の面315側に装着される。一方、他の通気路317Bは、それぞれ、第二の面312側において、いずれかの第二のエアベアリング4Bの後述する圧縮空気供給路426に繋がっている。そして、第二の面312の反対側の面315側に、圧縮空気供給用ポンプのホースを接続するためのカプラが装着される(図6参照)。
【0021】
第一のエアベアリング4Aは、スライドプレート31の第一の面311側にネジ止めされており、レール2の一方のスライド案内面211に対して非接触で、スライドプレート31からの荷重を支持し、スライドプレート31を、レール2に沿ってスライド自在に保持する。
【0022】
図3(A)、(B)は、第一のエアベアリング4Aの外観図である。また、図4(A)、(B)、および図5(A)は、第一のエアベアリング4Aの正面図、背面図、および右側面図であり、図5(B)は、図4(A)のA−A断面図である。
【0023】
図示するように、第一のエアベアリング4Aは、スライダ案内面211と非接触で対面する支持面10を有する支持体18と、支持体18が取り付けられたベースプレート43と、第一のエアベアリング4Aを揺動自在に保持するボールジョイント44と、を備えている。支持体18は、磁力を発生する手段である磁力発生部41と、磁力発生部41の周囲に配置され、圧縮空気を吐出する手段である圧縮空気供給部42と、を有している。
【0024】
磁力発生部41は、例えば円柱状に形成された永久磁石であり、例えばネオジム磁石が用いられる。なお、本実施の形態においては、磁力発生部41として円柱状の永久磁石を1つ用いているが、永久磁石の形状および数は適宜変更可能である。例えば、角柱状の永久磁石を用いてもよいし、また、後述の圧縮空気供給部42の中央部に複数の貫通穴423を形成し、これらの貫通穴423にそれぞれ永久磁石をはめ込んでもよい。
【0025】
圧縮空気供給部42は、一方の端面421から他方の端面422に繋がる貫通孔423が中央部に形成された円板状部材であり、この貫通孔423に磁力発生部41が嵌入されている。
【0026】
圧縮空気供給部42の一方の端面421は、貫通孔423に嵌入された磁力発生部41の端面411とともに、レール2の一方のスライダ案内面211と非接触で対面する支持面40を構成している。また、一方の端面421には、貫通穴423(つまり磁力発生部41)を囲む環状の溝424が形成されており、この溝424の溝底には、自成絞りによる圧縮空気吐出口425が、溝424の周方向に沿って等間隔に多数形成されている。
【0027】
圧縮空気供給部42の他方の端面422には、一方の端面421に多数形成された圧縮空気吐出口425と繋がる環状溝426が圧縮空気供給路426として形成されている。この圧縮空気供給路426の外縁にはОリング用溝428が形成されており、このОリング用溝428内に、圧縮空気供給路426からの空気漏れを防止するためのОリング47が収容される。また、圧縮空気供給部42の他方の端面422には、圧縮空気供給部42をベースプレート43に固定するための六角穴付きボルト53が締結されるネジ穴427が形成されている。
【0028】
ベースプレート43は、圧縮空気供給部42と略同じ外径の円板状部材であり、圧縮空気供給部42のネジ穴427に対応する位置に、一方の端面431から他方の端面432に繋がる座繰り穴433が形成されている。ベースプレート43の他方の端面432を圧縮空気供給部42の他方の端面422に接触させた状態で、六角穴付きボルト53を、この座繰りネジ穴433に挿入して圧縮空気供給部42のネジ穴427に螺合させることにより、圧縮空気供給部42がベースプレート43に固定される。この際、圧縮空気供給部42の貫通孔423に嵌入された磁力発生部41の他方の端面412を接着剤によりベースプレート43の他方の端面432に接着するようにしてもよい。
【0029】
ベースプレート43の一方の端面431には、ボールジョイント44をベースプレート43に固定するための六角穴付きボルト54が締結されるネジ穴434が形成されている。
【0030】
ベースプレート43の他方の端面432は、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426の外縁に形成されたОリング用溝428内のOリング47と当接している。これにより、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426に充填された圧縮空気が、圧縮空気供給部42の圧縮空気吐出口425以外の領域、つまり、圧縮空気供給部42の他方の端面422とベースプレート43の他方の端面432との当接部分から外部に漏れるのを防止している。
【0031】
また、ベースプレート43には、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路436に繋がる通気路437が形成されている。この通気路437の開口438は、ベースプレート43の側面436に形成されている。そして、この開口438には、図示していないが、スライドプレート31の通気路317Aにおいて圧縮空気供給用ポンプのホースに連結されたホースを通気路437に繋ぐためのカプラが装着される。これにより、圧縮空気供給用ポンプからの圧縮空気が、スライドプレート31の通気路317Aおよびベースプレート43の通気路437を介して、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426に供給され、圧縮空気供給部42の圧縮空気吐出口425から、レール2のスライダ案内面211に向けて噴出する。
【0032】
ボールジョイント44は、ボールヘッド442を有するボールスタッド441と、ボールヘッド442を回動自在に収容するボールソケット443と、ボールソケット443に一体的に形成された固定プレート444と、第一のエアベアリング4Aをスライドプレート31(図6参照)に固定するための固定用ナット445と、を備えている。
【0033】
ボールスタッド441は、雄ネジ部448が形成されたスタッド部449と、スタッド部449の一方の端面4492に一体的に形成されたボールヘッド442と、を有している。
【0034】
スタッド部449の他方の端面4491には、六角レンチ用の六角穴4493が形成されている。また、スタッド部449の、ボールヘッド442側(雄ネジ部148とボールヘッド142との間)の外周には、外周面から張り出したフランジ4494が形成されている。第一のエアベアリング4Aをスライドプレート31へ取り付ける前、固定用ナット445は、このフランジ4494と当接するまで、スタッド部449の雄ネジ部448にねじ込まれている。第一のエアベアリング4Aをスライドプレート31へ取り付ける際には、スライドプレート31に形成されたネジ穴314に、第一の面311側から、スタッド部449のネジ部448をねじ込んだ後、六角穴4493内へ六角レンチを差し込んでスタッド部449の回転を阻止しながら、固定用ナット445を、スライドプレート31の第一の面311に接触するまで回転させる。これにより、第一のエアベアリング4Aがスライドプレート31の第一の面311側に取り付けられる(図6参照)。
【0035】
ボールソケット443は、例えば、以下のように形成される。すなわち、一方の端面が固定プレート444により塞がれるように固定プレート444と一体的に形成された円筒部材の内部にボールスタッド441のボールヘッド442を挿入し、この状態で、この円筒部材の開口側を可締める。ボールソケット443にはコマ4431が配置されており、ボールソケット443に収容されたボールヘッド442は、このコマ4431によって支えられる。
【0036】
固定プレート444には、ベースプレート43のネジ穴434に対応する位置にボルト挿入用の貫通孔4441が形成されている。この貫通孔4441に六角穴付きボルト54を挿入して、六角穴付きボルト54をベースプレート43のネジ穴434に螺合させることにより、ボールジョイント44がベースプレート43に取り付けられる。
【0037】
第二のエアベアリング4Bは、スライドプレート31の第二の面312側にネジ止めされており、レール2の他方のスライド案内側面212に対して非接触で、スライドプレート31を、レール2に沿ってスライド自在に支持する。
【0038】
第二のエアベアリング4Bが図3〜図5に示す第一のエアベアリング4Aと異なる点は、支持面40がレール2の他方のスライダ案内面212と非接触で対面していること、ベースプレート43とボールジョイント44とが省略されてスライダ3に直接固定されていること、および、スライドプレート31の通気路317Bが圧縮空気供給路426に直結していることである(図6参照)。スライドプレート31の座繰り穴316は、第二のエアベアリング4Bの圧縮空気供給部42のネジ穴427と対応する位置に形成されている。また、スライドプレート31の複数の通気路317A、317Bのうち、第一のエアベアリング4Aに圧縮空気を供給するための通気路317A以外の通気路317Bは、いずれかの第二のエアベアリング4Bの圧縮空気供給部42に繋がる位置に形成されている。六角穴付きボルト55を、この座繰り穴316にスライドプレート31の第二の面312と反対側の面315から挿入し、圧縮空気供給部42のネジ穴427に螺合させることにより、第二のエアベアリング4Bがスライドプレート31の第二の面312に固定される。この状態において、スライドプレート31の通気路317Bは、それぞれ、第二のエアベアリング4Bの圧縮空気供給部42に繋がっているため、スライドプレート31の各通気路317Bに接続された圧縮空気供給用ポンプからの圧縮空気の供給を開始すると、スライドプレート31の通気路317Bを介して、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426に供給され、圧縮空気供給部42の圧縮空気吐出口425から、レール2の他方のスライダ案内面212に向けて噴出する。このとき、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426の外縁に形成されたОリング用溝428内のOリング47がスライドプレート31の第二の面312に当接しているため、圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426に充填された圧縮空気が、圧縮空気供給部42の圧縮空気吐出口425以外の領域、つまり、圧縮空気供給部42の他方の端面422とスライドプレート31の第二の面312との当接部分から外部に漏れ出すことはない。
【0039】
つぎに、以上のような構造を有するエアスライド装置1の動作原理を説明する。図6は、本発明の一実施の形態に係るエアスライド1の動作原理を説明するための図である。なお、図6には図示していないが、スライドプレート31の通気路317A、317Bには、それぞれ、第二の面312の反対側の面315側から圧縮空気供給用ポンプのホースがあらかじめ接続されている。
【0040】
スライドプレート31の第一、第二の面311、312に取り付けられた第一、第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40が、それぞれレール2の一方のスライダ案内面211および他方のスライダ案内面212と対面するようにして、スライドプレート31をレール2に近付けると、第一、第二のエアベアリング4A、4Bの磁力発生部41の磁力mにより、第一、第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40がそれぞれレール2のスライダ案内面211、212に引き寄せられて吸着する。これにより、スライドプレート31がレール2上に安定に保持される。
【0041】
この状態において、図示していない圧縮空気供給用ポンプにより圧縮空気を供給すると、第一のエアベアリング4Aの圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426には、スライドプレート31の通気路317Aおよびベースプレート43の通気路437を介して圧縮空気が供給され、第二のエアベアリング4Bの圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426には、スライドプレート31の通気路317Bを介して圧縮空気が供給される。これにより、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路426が圧縮空気で充満し、圧縮空気吐出口425からレールのスライダ案内面211,212に向けて圧縮空気aが吐き出される。そして、第一、第二のエアベアリング4A、4Bは、レール2のスライダ案内面211、212から引き離され、圧縮空気aの圧力、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの磁力発生部41の磁力m、およびスライダ3の重さ等がバランスする位置(第一のエアベアリング4Aは支持面40とレール2の一方のスライダ案内面211との隙間がt1となる位置、第二のエアベアリング4Bは支持面40とレール2の他方のスライダ案内面212との隙間がt2となる位置)にそれぞれ位置決めされる。これにより、第一および第二のエアベアリング4A、4Bは、レール2に対して非接触でスライダ3からの荷重を支持し、スライダ3を、レール2の長手方向(図1および図6のX方向)にスライド自在に保持する。
【0042】
このとき、第二のエアベアリング4Bは、スライドプレート31の第二の面312に直付けで固定されているので、第二のエアベアリング4Bの支持面40とレール2の一方の側面212との隙間がt2となるように維持されることにより、スライドプレート31は、スライドプレート31の第二の面312とレール2の一方の側面212との隙間をt3に維持したままレール2上を非接触で移動する。
【0043】
一方、第一のエアベアリング4Aは、ボールジョイント44を介してスライドプレート31の第一の面311に取り付けられているので、例えばレール2の寸法精度が低く、レール2の一方のスライダ案内面211が他方のスライダ案内面212に対して若干傾いているような場合でも、ボールジョイント44が、ボールヘッド142の中心周りの方向dに、ベースプレート43、圧縮空気供給部42および磁力発生部41を一体として揺動させ、ボールスタッド441に対する支持面40の傾きdを自動調節する。これにより、第一のエアベアリング4Aの支持面40とレール2の一方のスライダ案内面211との隙間がt1で均一に保たれるように調芯される。
【0044】
以上、本発明の実施の形態を説明した。
【0045】
本実施の形態によれば、磁力発生部41の磁力mにより、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40に磁性体のレール2を相対的に引き寄せる。このため、空気吸引によりスライドプレートをレールに引き寄せるタイプ(つまり、エアベアリングの支持面にレールを引き寄せる力が大気圧以下に制限される場合)のエアスライド装置に比べて、より大きな力で第一および第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40にレール2を相対的に引き寄せることが可能となる。このため、負荷変動に対する剛性をより高くすることができ、スライダ3に突然の負荷変動が生じても、スライドプレート31をレール2上で安定して走行させることができる。また、空気吸引用ポンプが不要となるので、エアスライド装置1全体を小型・軽量にできる。さらに、図6に示すように、スライダ3をレール2上の所望の位置により正確に静止させることが可能となり、位置決め機能を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、レール2の側面のうち、直交する側面を、磁性を帯びたスライダ案内面211、212として構成し、これらのスライダ案内面211、212に対して、剛性の高い第一および第二のエアベアリング4A、4Bを配置している。このため、横方向および縦方向のいずれの方向からの外力がスライダ3に加わっても、スライダ3をレール2上で安定して走行させることができる。
【0047】
また、本実施の形態では、レール2の一方のスライダ案内面211に第一のエアベアリング4Aを引き寄せる力を発生する磁力発生部41を中央に配置し、この磁力発生部41の外周側を囲むように、レール2の一方のスライダ案内面211から第一のエアベアリング4Aを引き離す力を発生する圧縮空気供給部42を配置している。同様に、レール2の他方のスライダ案内面212に第二のエアベアリング4Bを引き寄せる力を発生する磁力発生部41を中央に配置し、この磁力発生部41を囲むように、レール2の他方のスライダ案内面212から第二のエアベアリング4Bを引き離す力を発生する圧縮空気供給部42を配置している。このため、例えば、レール2のスライダ案内面211、212に対して支持面40を傾ける方向の外力が第一および第二のエアベアリング4A、4Bに加わった場合でも、支持面40の外周領域において、この傾きを解消するように、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40とレール2のスライダ案内面211、212とを相対的に引き離す力が作用するため、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの支持面40とレール2のスライダ案内面211、212との隙間tを維持しながら、レール2のスライダ案内面211、212上においてスライダ3をより安定に走行させることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、磁力発生部41に永久磁石を用いている。空気吸引によりスライドプレートをレールに引き寄せるタイプのエアスライド装置では、例えば故障等によりポンプが停止した際に、スライドプレートをレールから引き離す力とともに、スライドプレートをレールに引き寄せる力も働かなくなるため、スライダがレールから脱落する可能性がある。このため、脱落防止措置として、レールの両側面を挟むように、3枚のスライドプレートをコの字形状に組み合わせてスライダを作成するなどの工夫が必要であり、スライダの大型化・重量化を招いていた。これに対して、本実施の形態によれば、永久磁石により、スライドプレート31をレール2に引き寄せる磁力mが常に作用しているため、圧縮空気供給用ポンプが停止しても、第一および大事のエアベアリング4A、4Bとレール2とが互いに吸着する。このため、特別な脱落防止措置をとらなくても、スライダ3をレール2に保持させることが可能となる。したがって、レール2の両側面を挟むコの字形状の採用など、レール2からのスライダ3の脱落防止のための工夫が不要となるため、スライダ3を、より小型、より軽量なL字型とすることができる。また、スライダ3の作成に必要なスライドプレート31の枚数が削減されるため、そのコストを抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、ボールジョイント44が、第一のエアベアリング4Aの支持面40とレール2のスライダ案内面211との隙間t1を均一に保つように、ボールスタッド441に対する支持面40の傾きdを調節するので、レール2のスライダ案内面211の傾きに対して、第一のエアベアリング4Aを自動調芯することができる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0051】
例えば、上記の実施の形態では、第一、第二のエアベアリング4A、4Bの圧縮空気供給部42として、自成絞りによる圧縮空気吐出口425が多数形成された圧縮空気供給部42を用いているが、本発明はこれに限定されない。このような圧縮空気供給部42の代わりに、オリフィス絞り、表面絞り等により圧縮空気の吐出口が、支持面40を構成する表面421に多数形成された圧縮空気供給部を用いてもよい。あるいは、支持面40を構成する表面に、圧縮空気供給路426に繋がる多孔質焼結層が形成された圧縮空気供給部を用いてもよい。
【0052】
また、上記の実施の形態では、第一および第二のエアベアリング4A、4Bの磁力発生部41として永久磁石を用いているが、電磁石を第一および第二のエアベアリング4A、4Bの磁力発生部41として用いてもよい。
【0053】
また、上記の実施の形態では、第一のエアベアリング4Aの調芯機構として、ボールジョイント44を用いているが、本発明はこれに限定されない。第一のエアベアリング4Aの支持面40とレール2のスライダ案内面211との隙間t1を均一に保つように支持面40の傾きを自動調節できるものであれば、その他のものを用いてもよい。例えば、弾性体を介してスライドプレート31の第一の面311に第一のエアベアリング4Aを取り付けることにより、第一のエアベアリング4Aの支持面40とレール2のスライダ案内面211との隙間t1を均一に保つようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態においては、ボールジョイント44を有する第一のエアベアリング4Aの支持面40をレール2の上面側のスライダ案内面211に対面させ、ボールジョイント44を有していない第二のエアベアリング4Bの支持面40をレール2の側面側のスライダ案内面212に対面させているが、エアスライド装置1の用途等に応じて、ボールジョイント44を有する第一のエアベアリング4Aの支持面40をレール2の側面側のスライダ案内面212に対面させ、ボールジョイント44を有していない第二のエアベアリング4Bの支持面40をレール2の上面側のスライダ案内面211に対面させてもよい。また、スライダ3に取り付けられているすべてのエアベアリングを、ボールジョイント44を有する第一のエアベアリング4Aとしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、レール2上でスライダ3を非接触で移動させるエアスライド装置1を例にとり説明したが、本発明は、レール2を有するエアスライド装置に限らず、スライダ3を案内するスライダ案内面を有する部品(例えばテーブル)を有するエアスライド装置であれば適用可能である。
【0056】
また、上記の実施の形態では、レール2との隙間に空気層を形成し、この空気層を介してスライダ3を非接触で移動させるエアベアリング4A、4Bを、スライダ3に用いた場合を例にとり説明したが、本発明は、レール2との隙間に気体層を形成し、この気体層を介してスライダ3を非接触で移動させる静圧気体軸受を、スライダ3に用いたものであればよい。
【符号の説明】
【0057】
1:エアスライド装置、2:レール、3:スライダ、4A:第一のエアベアリング、4B:第二のエアベアリング、18:支持体、21:フレーム、22:レール板、31:スライドプレート、32A、32B:プレート、40:支持面、41:磁力発生部、42:圧縮空気供給部、43:ベースプレート、44:ボールジョイント、47:Oリング、51、52、53、54:六角穴付きボルト、55:台形ナット、211:スライダ案内面(レール2の上面)、212:スライダ案内面(レール2の一方の側面)、311:スライドプレート31の第一の面、312:スライドプレート31の第二の面、313:第一の面311と反対側の面、314:スライドプレート31のネジ穴、315:第二の面312と反対側の面、316:スライドプレート31の座繰り穴、317A、317B:スライドプレート31の通気路、411、412:磁力発生部41の端面、421、422:圧縮空気供給部42の端面、423:圧縮空気供給部42の貫通孔、424:圧縮空気供給部42の溝、425:圧縮空気吐出口、426:圧縮空気供給部42の圧縮空気供給路、427:圧縮空気供給部42のネジ穴、428:圧縮空気供給部42のOリング用溝、431、432:ベースプレート43の端面、433:ベースプレート43の座繰り穴、434:ベースプレート43のネジ穴、436:ベースプレート43の側面、437:ベースプレート43の通気路、438:通気路437の開口、441:ボールスタッド、442:ボールヘッド、443:ボールソケット、444:固定プレート、445:固定用ナット、448:スタッド部449の雄部、449:ボールスタッド141のスタッド部、4431:コマ、4441:固定プレート444のネジ穴、4491、4492:スタッド部449の端面、4493:スタッド部449の六角穴、4494:スタッド部449のフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部品に対して非接触で移動するスライダを備えたエアスライド装置であって、
前記相手部品は、磁性を帯びたスライダ案内面を備え、
前記スライダは、
前記スライダ案内面と非接触で対面する支持面を備えた静圧気体軸受を少なくとも一つ有し、
前記静圧気体軸受は、
前記スライド案内面を前記支持面に相対的に引き寄せる磁力を発生させる磁力発生手段と、
前記スライダ案内面と前記支持面との隙間に圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、を有する
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアスライド装置であって、
前記磁力発生手段が前記支持面の中央に配置され、当該磁力発生手段の外周側を囲むように、前記圧縮気体供給手段が配置されている
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエアスライド装置であって、
前記磁力発生手段は、磁石であり、
前記圧縮空気供給手段は、一方の端面に圧縮空気吐出口が少なくとも一つ形成され、当該一方の端面の中央部に前記磁力発生手段の挿入穴が形成された板状部材であり、
前記支持面は、
前記磁石の端面と、前記板状部材の前記一方の端面とを含んで構成されている
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエアスライド装置であって、
前記磁石は、少なくとも一つの永久磁石からなる
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のエアスライド装置であって、
前記相手部材は、互いに異なる方向の二面のスライダ案内面を備え、
前記静圧気体軸受を複数備え、
前記スライダは、
前記二面のスライダ案内面のうちの一方のスライダ案内面と対面する第一の面、および、他方のスライダ案内面と対面する第二の面を備えたL字形状のスライドプレートを有しており、
前記複数の静圧気体軸受は、
前記支持面が前記一方のスライダ案内面と対面するように前記第一の面に取り付けられた、少なくとも一つの第一の静圧気体軸受と、
前記支持面が前記他方のスライダ案内面と対面するように前記第二の面に取り付けられた、少なくとも一つの第二の静圧気体軸受と、を含む
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエアスライド装置であって、
前記第一の静圧気体軸受は、
当該第一の静圧気体軸受の前記支持面と前記一方のスライダ案内面との隙間を均一に保つための調芯手段を有する
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項7】
請求項6に記載のエアスライド装置であって、
前記調芯手段は、
前記第一の静圧気体軸受を前記第一の面に対して角度自在に取り付けるためのボールジョイントである
ことを特徴とするエアスライド装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか一項に記載のエアスライド装置であって、
前記第二の静圧気体軸受は、前記第二の面に固定されている
ことを特徴とするエアスライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113345(P2013−113345A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258333(P2011−258333)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】