説明

エアゾールキャップ

【課題】エアゾール容器本来の機能を損なうことなく押しボタンの不用意な押し下げを確実に防止し得るワンタッチ式エアゾールキャップを提供する。
【解決手段】エアゾール缶1に被せられる冠着部21、及び一対の側壁22を有するキャップ本体20と、噴射口が形成されたノズル部400を有した押しボタン30と、側壁22間に設けられた庇部24とを備え、一対の側壁22は、噴射方向とは反対側の端部において、手指による操作のための間隙224を形成しており、噴射方向側の端面は、側壁22の内側から外側へ向かうに従ってノズル部から遠ざかる方向へ延びており、庇部24は、ノズル部の上方に間隙を形成して側壁22に固定されており、押しボタン30のノズル部は、噴射口40からの噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなるように設定されていることを特徴とするエアゾールキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤等の噴霧を行なうエアゾール容器のためのエアゾールキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器は、エアゾール缶の上部に設けられたバルブステムを押し下げることにより、内容物が噴射される構造となっている。このバルブステムの押圧を容易にするため、通常、バルブステムには押しボタンが接続される。例えば図11に示すように、押しボタン(エアゾールボタン)30は、噴射口40が設けられたノズル部400と該ノズル部に延びる流路42aとを有し、バルブステムを通過した内容物を所定の噴射角で噴射させる。図示の例では、噴射口40は、噴射ピース36に設けられた微小孔で形成され、その先端側には上下に対向する一対の突出片35aが設けられている。噴射ピース36は、ノズル部400を構成する柱体34aと別体で成形され、柱体34aの先端部に埋め込んで嵌合される。この例では、押しボタン30は、エアゾールキャップ2aのキャップ本体20に支持されている。キャップ本体20は、エアゾール缶に嵌合される冠着部21と、該冠着部の両側部から起立する側壁22とを備え、押しボタン30は、両側壁22間に位置し、ヒンジ片227でキャップ本体20に接続されている。
【0003】
押しボタンは、不使用時に不用意に押し下げられないようにする必要があり、このためには、押しボタンを覆うキャップをエアゾール缶に対して脱着自在に設けたものや、エアゾール缶に固定的に装着され間に押しボタンを位置させる一対の側壁を備えたキャップが用いられている。前者の脱着式キャップは、使用の都度キャップを外す必要があり手間を要すが、後者のワンタッチ式キャップは、そのような手間を要することなく押しボタンの不用意な押し下げを防止し得るという利点を有し、近年広く用いられている。
【0004】
このワンタッチ式キャップにおける一対の側壁は、押しボタンより高い位置まで延びており、一対の側壁における噴射方向と反対側の端部は、間から押しボタンに手指を到達させるように離間しており、噴射方向側の端部は、間にノズル部を位置させるように離間している。
【0005】
近年、エアゾール式芳香剤や消臭剤の使用頻度の増大や使用空間の拡大等と共に、広角に噴射してより大量の噴射流量を得ることが求められ、これに対応して、エアゾールキャップには噴射流との接触をより確実に防止する構造が望まれる。このためには、噴射方向側の側壁端面は、側壁の内側から外側へ向かうに従って、相互に離反し、ノズル部から遠ざかる方向へ延びるように開いた形状、すなわち、一対の側壁端面が平面視で略扇状に開いた形状となるのが効果的である。
【0006】
ところが、噴射方向側の側壁端面がこのように開いた形状とされると、この端面側からも手指を押しボタンに到達させることができるようになる。その結果、使用者が誤って噴射方向側から押しボタンを押すと、噴射された薬剤が手や人体に向かって放出されるという不測の事態を生じるおそれがある。しかしながら、現在のところ、ワンタッチ式エアゾールキャップに関して、エアゾール容器本来の機能を損なうことなくこの問題に十分に対処し得るエアゾールキャップは実現されていない。
【0007】
例えば、特許文献1に記載のエアゾールキャップは、押しボタンを囲む壁部の上部を跨ぐようにガード部材を脱着自在に設け、不使用時に取り付けて押しボタンの押し下げを防止し、使用時に取り外して押しボタンの押し下げを可能とする。しかしながら、この着脱
操作は面倒であり、ガード部材を紛失するとその機能が得られなくなるという欠点がある。
【0008】
特許文献2に記載のエアゾールキャップは、ノズル部より上方に側壁間に跨る部材が配置され、噴射方向側から押しボタンに手指が到達し難い構造となっている。しかしながら、噴射口は水平に延びる筒部の奧に設けられているので、広角で流量を増大した噴射流は、側壁より手前の筒部内面に接触するおそれがある。
【0009】
特許文献3に記載のエアゾールキャップは、一対の側壁(天板部)に支持されて噴射方向側に仮止めされた板状の部材(ボタン押圧片)を備えており、このボタン押圧片は、エアゾール容器の残留ガスを排出する際に、噴射方向とは反対側へ回動され、その回動位置で両側壁に係止されて噴射ボタンを押し下げ状態に保ち、残留ガスを連続的に放出させる。このボタン押圧片は、仮止め状態で噴射方向側から押しボタンに手指を到達させ難くするが、両側壁は仮止めのための構造を必要とし、押しボタンは反転した板状のボタン押圧片で押圧される位置に上端面を配置する必要がある結果、側壁及び押しボタンの形状や寸法が限定されたものとなり、これに伴って、側壁間への到達容易性や押しボタンの操作性等、エアゾールキャップの構造も限定されたものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−113994号公報(段落0027,0028、図6,7)
【特許文献2】特開2002−308360号公報(段落0006〜0008、図1〜3)
【特許文献3】特開2005−306451号公報(段落0009〜0013、図1〜6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、エアゾール容器本来の機能を損なうことなく押しボタンの不用意な押し下げを確実に防止し得るワンタッチ式エアゾールキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するため、エアゾール缶上部の外周縁部に被せられる筒状の冠着部、及び該冠着部から上方へ延びる一対の側壁を有するキャップ本体と、エアゾール缶のバルブステムに接続可能であり、エアゾール缶の内容物の噴射口が形成されたノズル部を有し、バルブステムに接続した状態で前記キャップ本体の側壁間に位置する押しボタン(エアゾールボタン)と、前記キャップ本体における噴射方向側において前記一対の側壁間に設けられた庇部とを備え、前記一対の側壁は、噴射方向とは反対側の端部において、前記噴射ボタンに手指を到達させるための間隙を形成しており、噴射方向側の端面は、側壁の内側から外側へ向かうに従って前記ノズル部から遠ざかる方向へ延びており、前記庇部は、前記ノズル部の上方に間隙を形成した状態で前記一対の側壁間に固定されており、前記押しボタンのノズル部は、前記噴射口からの噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなるように設定されていることを特徴とするエアゾールキャップを提供するものである。
【0013】
本発明に係るエアゾールキャップは、エアゾール缶上部の外周縁部に被せられる筒状の冠着部と、該冠着部から上方へ延びる一対の側壁とを有するキャップ本体を備え、一対の側壁は、押しボタンを側壁間に位置させ、噴射方向とは反対側の端部において、噴射ボタ
ンに手指を到達させる間隙を形成しているので、エアゾールキャップをエアゾール缶に装着した状態で、ワンタッチで噴射を行なうことができる。また、一対の側壁は、噴射方向側の端面が、側壁の内側から外側へ向かうに従ってノズル部から遠ざかる方向へ延びているので、噴射流が側壁端面に接触するのが防止されている。
【0014】
さらに、エアゾールキャップは、キャップ本体における噴射方向側において一対の側壁間に設けられた庇部を備え、該庇部はノズル部の上方で一対の側壁間に固定されているので、噴射方向側の側壁端面が、上記噴射流との接触防止のために相互に大きく離間していても、該庇部により手指が押しボタンに到達するのが防止される。しかも、庇部は、ノズル部の上方に間隙を形成した状態で一対の側壁間に設けられているので、庇部の配置が側壁及び押しボタンの形状や寸法を限定することがなく、エアゾールキャップの構造も限定されない。また、エアゾールキャップを装着したエアゾール容器は、多くの場合、出荷時にシュリンクフィルムで包装される。これに関し、一対の側壁の端面が相互に大きく離間していると、離間箇所でフィルムが大きく撓んで皺や破損を生じるおそれがあるが、本発明においては、庇部がノズル部の上方で一対の側壁間に固定されているので、シュリンクフィルムは該庇部に支持され、皺や破損等の発生が防止される。
【0015】
さらに、前記押しボタンのノズル部は、前記噴射口からの噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなるように設定されている。水平方向の噴射角を大きくしても、側壁の噴射方向側の端面が、内側から外側へ向かうに従ってノズル部から遠ざかる方向へ延びているので、噴射流との接触が防止され、大流量の噴射を行なうことができる。なお、噴射角を垂直方向に大きくした場合は、冠着部がノズル下方に位置しており、キャップ高さの制限から冠着部とノズルとの距離が限定されるので、噴射流がノズル下方部分に接触し易くなる。
【0016】
前記押しボタンは、エアゾール缶のステムと連通し得る第1流出路(導入路)と、該第1流出路から曲折して噴射方向に延び先端に前記噴射口を形成する第2流出路(導出路)とを備え、該第2流出路は、前記噴射口が前記キャップ本体の径方向中央部に位置するように前記第1流出路の近傍位置に延びているものとすることができる。これに基づいて、エアゾールキャップを樹脂成形する際に、第2流出路形成用の第2金型を第1流出路形成用の第1金型に対して遠ざかる方向に型抜きする金型構成とすることにより、第2金型を短くすることができる。第2金型は、噴射口を形成するように細い針状部分を先端に有するので、このように短く形成することにより、針状部分の曲がりや折れ等の破損を防止して安全確実に成形を行なうことができる。
【0017】
前記押しボタンは、前記噴射口側の端面から噴射方向に延びる突出片を備え、該突出片は、前記噴射口からの噴射流に対して、水平方向への拡散を許容し、垂直方向の幅を制限するように、上下方向に対向して設けられているものとすることができる。これにより、噴射口からの噴射流は、水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなるように制御される。また、突出片の突出長さまたは対向間隔を設定することにより、噴射流の広がり形態を調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
上述のように、本発明によれば、エアゾール容器本来の機能を損なうことなく押しボタンの不用意な押し下げを確実に防止し得るワンタッチ式エアゾールキャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアゾールキャップをエアゾール缶に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したエアゾールキャップを斜め上前方から見た斜視図である。
【図3】図1に示したエアゾールキャップを斜め上後方から見た斜視図である。
【図4】図1に示したエアゾールキャップを斜め下前方から見た斜視図である。
【図5】図1に示したエアゾールキャップの側面図である。
【図6】図1に示したエアゾールキャップの底面図である。
【図7】図1に示したエアゾールキャップの要部の斜視図である。
【図8】図7のエアゾールキャップにおける押しボタンを中心面に沿う断面と共に示す斜視図である。
【図9】図8の押しボタンを示しており、(a) は縦断側面図、(b) はその中央部の正面図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るエアゾールキャップを示す斜視図である。
【図11】従来のエアゾールキャップを斜め上前方から見た斜視図である。
【図12】図1に示したエアゾールキャップの成形型の一部を示す斜視図である。
【図13】改良されたエアゾールキャップの例の要部を示す斜視図である。
【図14】図13に示したエアゾールキャップの要部の正面図である。
【図15】従来のエアゾールボタンを示す図であり、(a) は縦断側面図、(b) は正面図である。
【図16】図15に示したエアゾールボタンの成形型の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るエアゾールキャップをエアゾール缶に装着した状態を示す斜視図であり、図2〜図6はそのエアゾールキャップを種々の角度から見た状態で示している。以下では、説明の都合上、エアゾールキャップにおける噴射方向側を前側、操作側を後側として説明する。なお、エアゾールキャップからの噴射とは、エアゾール缶の内容物を霧状に噴霧することを意味するものとする。
【0022】
エアゾール缶1は、有底円筒状の缶本体11の上部をマウティングカップ12で閉じ、その中央にバルブステム13を設けた一般的な形態のものである。缶本体11上部の外周縁部14は、缶本体11とマウティングカップ12との巻締め部となっており、ここにエアゾールキャップ2が嵌合される。
【0023】
エアゾールキャップ2は、エアゾール缶1上部の外周縁部14に被せられる筒状の冠着部21、及び該冠着部から上方へ延びる一対の側壁22を有するキャップ本体20と、エアゾール缶のバルブステム13に接続可能であり、押し下げによりバルブステムを経たエアゾール缶の内容物を噴射口40から噴射させる押しボタン30とを備えている。
【0024】
エアゾールキャップ2の冠着部21は、円筒状をなし、下端部を弾性的に変形させることにより、エアゾール缶1の外周縁部14に脱着可能となっており、通常はエアゾール缶1に装着した状態で使用される。側壁22は、冠着部21から上方へ延びる外壁221と、該外壁の上端から径方向内方へ延びる天壁222と、該天壁から下方へ延びる内壁223とを備えている。これら一対の側壁22は、噴射方向側(前側)及びこれと反対側(後側)の端部において、相互に離間して間隙を形成している。後側(操作側)の間隙224は、エアゾールの噴射操作の際に押しボタン30に手指を到達させ得る大きさで形成されている。これにより、エアゾールキャップ2をエアゾール缶1に装着したままワンタッチで噴射を行なうことができる。一対の側壁22における噴射方向側の前端壁225は、内壁223から外壁221まで平面視で略扇状に開くようにほぼ径方向に延びている。この前端壁225と冠着部21との間は、前下壁226によって覆われている。
【0025】
押しボタン30は、図7〜図9に示すように、上下方向に延びる周壁31と、該周壁の上端を覆う上壁32とを備え、下側は開放されている。周壁31における噴射方向側部分は厚肉とされ、そこに上下方向に延びるステム挿入孔33が形成されている。ステム挿入孔33の下端部は、下方へ広がるテーパ状とされ、バルブステム13の挿入が容易となっている。ステム挿入孔33の終端(上端)は、エアゾール缶の内容物を通す第1流出路(導入路)41の基端に連続しており、第1流出路41はステム挿入孔33の延長方向に延在し先端が閉塞部411となって閉塞する。
【0026】
本実施形態において、ステム挿入孔33は同一内径の直線孔で形成されている。第1流出路41は、後部内壁が傾斜した先細孔で形成されている。これにより、噴出時の流体の流れを効率良く噴射口40へ導くことができる。これらステム挿入孔33と第1流出路41は、同一軸で配置されている。ステム挿入孔33と第1流出路41は、途中に拡径部が存在しないことで、金型(図示せず)の下方向J(図8)への離型が可能となっている。ステム挿入孔33は、第1流出路41より大径で形成されることで、第1流出路41との境に段部331が形成されている。この段部331は、挿入されるバルブステム13のストッパとなる。
【0027】
押しボタン30には、第1流出路41に直交して基端を接続し、先端を周壁31外方へ開口する第2流出路(導出路)42が形成されている。第2流出路42は、同一内径の直線孔で形成され、閉塞部411よりも下方で第1流出路41に連通する。
【0028】
第1流出路41の形成された押しボタン30の前壁311には、柱体34が突設され、柱体34は、第1流出路41の中心軸C(図9)に交差(本実施形態では直交)する軸線Gに沿って延びる第2流出路42を先端面で開口させて噴射口40としている。本実施形態では、柱体34を円柱として例示するが、柱体34は、この他、楕円柱、長円柱、角柱、六角柱、八角柱等の柱状とすることもできる。
【0029】
第2流出路42は、噴射口40がキャップ本体20の径方向中央部に位置するように第1流出路41の近傍位置に延びている。これに基づいて、エアゾールキャップを樹脂成形する際に、第2流出路形成用の第2金型(後述する図12参照)を第1流出路形成用の第1金型(図示せず)に対して遠ざかる方向に型抜きする金型構成とし、この第2金型の寸法を短くすることができる。第2金型は、噴射口40及び第2流出路42を形成するように細い針状部分を先端に有するので、このように短く形成することにより、針状部分の曲がりや折れ等の破損を防止し、安全確実な成形が可能になる。
【0030】
柱体34の先端面には突出片35が、軸線G(図8)に沿う方向に突出して設けられる。該突出片は、噴射口からの噴射流に対し、その断面における一方向の幅を制限し且つ該幅方向に直交する方向への拡散を許容する。本実施形態では、突出片35は、上下方向に対向して一対設けられており、突出片35相互の間隙350は、噴射口40からの噴射流に対して、水平方向への拡散を許容し、垂直方向の幅を制限する。これにより、噴射口40からの噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなり、水平方向に広がる扇形の噴射パターンが得られる。
【0031】
この突出片35の対向縁部351(図7)は、対向方向に直行する方向に見た幅W(図9(b))が噴射口の直径と略同幅とされている。このように突出片の幅が噴射口と略同幅
となるように小さくされているので、噴射流に対する抵抗が小さい。その結果、広角な噴霧を可能としながら噴射の直進性及び噴射流量の確保に優れ、多量の薬剤を遠くまで噴射することができる。また、噴射流が噴射口近傍に滞留したり付着したりすることによる液だれが防止されるという効果、並びに、内容物が流路で詰まりを生じるのが防止されると
いう効果(特にパウダー入り内容物の場合にその効果が大きい)も得られる。具体的には、この突出片35の対向縁部351の幅Wは、噴射口40の直径に対して1〜2倍とするのが望ましい(図9(b) 参照)。対向縁部351の幅Wが噴射口の直径より小さいと、樹脂成型の際に後述する第2金型の型抜きが困難となる。また、対向縁部351の幅Wが噴射口の直径の2倍を超えると、突出片が噴射流に及ぼす抵抗が大きくなり、噴射の直進性及び噴射流量が低下する。
【0032】
この突出片35は、突出長さまたは対向間隔を設定することにより、噴射流の広がり形態を調整することができる。エアゾールキャップ2をエアゾール缶に装着して噴射を行なったときの噴射流Fの例を図2に概略的に示す。また、突出片35が向き合う面は、軸線Gに沿って延びる壁面からなるので、樹脂成形の際に、第2流出路の流出方向への中子の離型も可能となる。このように、本実施の形態では、従来は別部品で設けていた噴射口を、押しボタン30に一体成形することが可能となる。その結果、部品点数、組立工数を削減することができる。
【0033】
押しボタン30における噴射方向(軸線G)に沿って延びる部分、すなわち、押しボタン30の前壁311、柱体34及び突出片35における第2流出路42、噴射口40及び間隙350を囲む部分は、内容物噴射のためのノズル部400を構成している。そして、前述のようにノズル部400は押しボタン30に一体成形され、このため、図2に示すように、本実施の形態における噴射口40は、別部品の噴射ピースに設けていた従来品(図11)に比べて、エアゾールキャップ2の略中央に位置している。
【0034】
前述のように一対の側壁22の前端壁225は、平面視で略扇状に開くように延びている。すなわち、側壁の前端壁225は、内側から外側へ向かうに従って、相互に離反し、ノズル部400(特にその噴射口40)に対して遠ざかる方向へ延びた状態となっている。これにより、ノズル部400が一体成形されて噴射口40がエアゾールキャップ2の略中央に位置していても、噴射流が側壁前端面に接触するのを防止することができる。この接触防止効果は、噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きい場合にも有効に作用する。
【0035】
前端壁225の径方向外端縁は、図2に示すように相互に距離L離反している。この距離Lは、20mm以上とするのが好ましく、より好ましくは43mm以上である。距離Lが20mmより小さいと、噴射流への接触防止効果が十分に得られない。一方、距離Lが43mm以上であれば、噴射流の水平方向の噴射角を特に大きくした場合であっても、噴射流への接触防止効果を十分に得ることができる。距離Lの最大値は、側壁22の外壁221直径に相当する。
【0036】
なお、柱体34は、第2流出路42の長さを確保して噴射口40からの噴射を安定させるが、前壁311の厚さや第2流出路42の加工精度が十分であれば、柱体34を省略し、前壁311における第2流出路42の端面を噴射口とすることもできる。この場合は、前壁311から延びる突出片35の間隙350によって、噴射パターンが決められる。
【0037】
押しボタン30は、キャップ本体20の一対の側壁22間に位置しており、前下壁226から延びるヒンジ片227(図2)が押しボタン30の前端下部に結合され、押圧によって該ヒンジ片227が弾性的に撓むことにより、上下方向に回動可能となっている。押しボタン30の周壁31における操作側の端部には、上下方向に延びる凹部312(図3)が形成されている。これに対応してキャップ本体20の冠着部21における操作側の端部には、上下方向に延びる凸部212が設けられ、凹部312を上下方向にガイドするようになっている。これにより、押しボタン30は、手指で押し下げることにより凸部212に案内されヒンジ片227を中心に下方へ回動し、押し下げを解除することにより元の
位置へ復帰する。
【0038】
本実施形態では、キャップ本体20は外径が60mm、高さが50mmであり、エアゾールボタン30は前後の長さが36mm、左右の幅が24mm、高さが7mmであり、柱体34は直径が1.3mm、軸線G方向の突出長さが0.5mm、導出路42の直径は0.4mm、突出片35は厚さが1.2mm、軸線G方向の突出長さが2.5mmとなっている。これらの値は、エアゾール容器またはエアゾールキャップの機能や用途に応じて適宜変更され、例えば導出路の直径は0.4〜1mmとされ、好ましくは0.4〜0.8mmであり、突出片35の軸線G方向の突出長さは1mm〜5mmとされる。
【0039】
キャップ本体20はさらに、一対の側壁22間に設けられた庇部24を備えている。庇部24は、一対の側壁22の前上端に固定された状態でこれらの間に円弧状に延びている。したがって、側壁22における噴射方向側の端面が、噴射流との接触防止のために相互に大きく離間していても、庇部24により手指が押しボタンに到達するのが防止される。しかも、庇部24は、押しボタン30のノズル部400の上方、本実施形態では前壁311及び柱体34の上方に、間隙25(図7、図3)を形成した状態で一対の側壁間に固定されている。したがって、押しボタン30は、従来技術について説明したような側壁による可動支持や押しボタンの連続押し下げ用配置を必要とせず、庇部の配置が側壁及び押しボタンの形状や寸法を限定することがない。
【0040】
庇部24は、図4及び図5に示すように、下面に補強リブ241を備えている。補強リブ241は、庇部24に沿って一体的に形成され、一対の側壁22間に延びて端部が側壁22に達しており、庇部24に作用する外力への対抗力を強めている。特に、庇部24は一対の側壁間の延在方向に長く延びるので、この方向に延びる補強リブ241は、外力に対する対抗力を効率的に付与する。また、補強リブ241の端部が側壁22に達していることにより、補強リブに作用する外力は側壁によっても支持され、補強効果がより高くなる。さらに、エアゾール容器をシュリンクフィルムで包装する場合に、シュリンクフィルムは側壁22間において庇部24によって支持されるので、皺や破損等の発生が防止される。
【0041】
庇部24は、上端面が側壁22の上端面と同じ高さに設けられており、側壁22と庇部24が上端面で連続したシンプルな優れた外観を呈する。このように庇部24の上端面を側壁22の上端面と同じ高さに設けた場合は、図示のように補強リブ241を庇部24の下面に設ける他、庇部24における上端面以外の上面に設けることもできる。
【0042】
さらに、本実施形態においては、庇部24の長さ方向の中央部に隆起部242が設けられている。この庇部24の中央部は、樹脂成形の際に金型に流入する樹脂が両側壁側から出会う箇所であり、ウェルドラインを発生し易く、発生しなくても局部的な強度低下を招くことがある。隆起部242は、ここに樹脂を集中することにより、強度を確保する作用をなす。
【0043】
エアゾールボタンの第2流出路(導出路)42は、噴射口40がキャップ本体20の径方向中央部に位置するように第1流出路(導入路)41の近傍位置に延びている。これに基づいて、エアゾールキャップを樹脂成形する際に、第2流出路42形成用の第2金型を第1流出路形成用の第1金型に対して遠ざかる方向に型抜きする金型構成とし、この第2金型の寸法を短くすることができる。図12は、第2金型4Mの要部を示している。この第2金型4Mは、突出片35を形成する中央部分41Mと、噴射口40及び第2流出路42を形成する針状部分42Mとを備えている。また、中央部分41Mには、柱体34を形成するための凹部411Mが設けられている。図では、左右対称に配置される中央部分41Mの一方を示し、他方は一点鎖線により略記している。樹脂成形時には、一対の中央部
分41M及び針状部分42Mで囲まれた領域が突出片35の一部を形成し、一対の中央部分41Mの凹部411M及び針状部分42Mで囲まれた領域が柱体34を形成する。第2金型は、この針状部分42Mを短く形成することにより、曲がりや折れ等の破損を防止し、安全確実な成形を可能とする。図示のように、この第2金型4Mはまた、一対の中央部分41Mが相互に接近して位置し、且つ、針状部分42Mに対し軸方向に広い面積で接触するので、中央部分41Mが針状部分42Mを直近位置で広範囲に亘って支持することができ、支持が堅固であり、繰り返される成形作業に対して高い耐久性を有する。
【0044】
また、エアゾールボタンがキャップ本体と一体成形される場合は、エアゾールボタン単独の場合に比べて、成形品の寸法増大と共に金型が大きくなり、金型のうち噴射口を形成する針状部分にかかる成形圧が高くなるので、該圧力によって針状部分が傾いたり破損したりすることがある。したがって、エアゾールボタンがキャップ本体と一体成形される場合は、金型、特に針状部分にはより高い耐久性が要求されることとなる。しかし、上述のようにこの実施形態では針状部分の支持が堅固であり、高い耐久性を有するので、キャップ本体との一体成形により針状部分に高い圧力がかかっても、確実な成形が可能となる。
【0045】
このエアゾールキャップ2を用いるには、エアゾール缶1における缶本体11上部の外周縁部14に冠着部21を嵌合すればよい。これにより、ステム挿入孔33にエアゾール缶1のバルブステム13が挿入される。そして、側壁22間の後方の間隙224に手指を延ばして押しボタン30の上壁32を押すと、押しボタン30はヒンジ片227を中心に回動して下降し、バルブステム13を押し下げる。これにより、エアゾール缶1の内容物は、第1流出路41から第2流出路42を経て、噴射口40から噴射され、一対の突出片35間の間隙350によって水平方向に広く拡散された噴射流となる。そして、押しボタン30への押圧力を解除すれば、押しボタン30はヒンジ片227の弾性で元の位置へ戻り、バルブステム13が上昇して噴射が停止する。
【0046】
図10は、本発明の他の実施形態に係るエアゾールキャップを示す斜視図である。このエアゾールキャップ2aは、冠着部21及び側壁22を有したキャップ本体20、並びにバルブステムに接続可能な押しボタン30を備える基本的な構成が先の実施形態と同じである。但し、この実施形態では、側壁22の天壁222から段差を伴ってより低い位置に庇部24aが設けられている。庇部24aは、平板状に延び、側壁22側の端部から噴射方向側へ僅かに上昇するように傾斜している。この傾斜は噴射流の広がりに沿う方向となるので、噴射流が庇部24aに接触するのをより確実に防止することができる。庇部24aは、一対の補強リブ241aを備えている。一対の補強リブ241aは、庇部24aの延在方向を垂直に横切る方向、すなわち、側壁22の前端から前方へ延びている。補強リブ241aは、側壁22と庇部24aとの段差の高さで設けられており、これにより、十分な高さに基づいて高い補強効果を奏する。また、補強リブ241aの上端面は、側壁22の上端面に連続し庇部24aの上面に達することにより、シンプルな優れた外観を呈する。
【0047】
エアゾールキャップ2aの押しボタン30は、ノズル部400aを構成する柱体34aが、周壁31の前壁311から前方へ長く延びて、径方向に冠着部21付近まで達しており、柱体34aの軸線Gに沿って延びる第2流出路42aを先端面で開口させて噴射口40としている。柱体34aの前端面には、上下方向に対向する一対の突出片35aが設けられている。突出片35aは、先の実施形態と同様に構成されており、両突出片35aの間隙350が、噴射口40からの噴射流に対して、水平方向への拡散を許容し、垂直方向の幅を制限することにより、水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きく水平方向に広がる扇形の噴射パターンを形成する。
【0048】
エアゾールキャップ2aを樹脂成形する場合は、先の実施形態と同様にして、キャップ
本体20と押しボタン30とを一体成形することができる。但し、柱体34aが長く延びているので、第2流出路42に沿って型抜きされる第2金型も長く延びることとなる。したがって、第2流出路42の径を噴射口40より大きくすることにより第2金型の径を太くして強度を増すのが望ましい。この場合は、噴射口40及び突出片35aを構成する噴射ピース36は別部材として成形し、柱体34aの先端部に嵌合等により結合する。
【0049】
このエアゾールキャップ2aにおいても、一対の側壁22における噴射方向側の前端壁225は、内壁223から外壁221まで平面視で略扇状に開くようにほぼ径方向に延びており、前端壁225と冠着部21との間は、前下壁226によって覆われている。したがって、一対の側壁22の前端壁225は、側壁の内側から外側へ向かうに従って、相互に離反し、ノズル部400から遠ざかる方向へ延びた状態となっている。これにより、噴射流が側壁端面に接触するのが防止され、この接触防止効果は、水平方向に広い噴射流の場合にも有効に作用する。このエアゾールキャップ2aは、先の実施形態と同様にして用いることができるので、その説明を省略する。
【0050】
ところで、エアゾール缶のバルブステムを押し下げるためにエアゾール容器の上部に備えられるエアゾールボタンは、エアゾール缶に装着されるエアゾールキャップと別体に形成され、或いは、キャップ本体と共に成形され一体としてエアゾールキャップを形成する。
【0051】
従来の通常のエアゾールボタンは、断面円形の噴射口からエアゾール缶の内容物を噴射していたので、噴射流も断面円形となっていた。しかしながら、上述したように、近年、広角に噴射してより大量の噴射流量を得る等の要請から、噴射流が水平または垂直に扁平な断面を有するように噴射部分を構成したものが、提案され用いられてきている。この構成によれば、エアゾール容器からの噴射流を扁平方向に直交する方向に移動することにより、広範囲への噴射を効率よく行なうことができる。
【0052】
図15は、従来のエアゾールボタンの一例を示している(特公昭42−9484号公報参照)。このエアゾールボタン300は、エアゾール缶のバルブステムに沿うように延びる導入路301と、該導入路から曲折して延びる導出路302とを備えている。エアゾールボタンの噴射側の端部には、上下方向に対向する一対の突出片304が設けられ、両突出片304の間には、水平方向に延びる間隙305が形成されている。導出路302終端の噴射口303は、間隙305の奧側の端面に開いている。間隙305は、噴射口303からの噴射流に対して、水平方向への拡散を許容し、垂直方向の幅を制限することにより、水平方向に扁平な噴射パターンを形成する。この扁平な噴射パターンは、広範囲の噴射や細長い箇所への噴射に有利である。
【0053】
このエアゾールボタン300を樹脂成形する場合、成形型は、導入路301に沿って型抜きされる第1金型と、導入路から遠ざかる方向へ導出路302に沿って型抜きされる第2金型とが使用される。図16は、第2金型5Mの一例の要部を示している。この第2金型5Mは、突出片304間の間隙305を形成するための水平方向に延びるプレート状部分51Mと、噴射口303を形成するための針状部分52Mと、突出片305前方の空所307を形成するための円板状部分53Mとを備えており、針状部分52Mは、プレート状部分51Mの奧側の端部から後方へ延びている。図では、左右対称に配置される金型部分の一方を示し、他方は一点鎖線により略記している。プレート状部分51M及び針状部分52Mは、途中に拡径部が存在しないことで、第1金型から遠ざかる方向への離型が可能となっている。また、噴射口303がバルブステム(導入路301)の近傍に配置されていることにより、金型の針状部分52Mが短く形成され、その結果、針状部分の曲がりや折れ等の破損が防止され、安全確実な成形が可能となっている。
【0054】
しかしながら、このエアゾールボタン300は、水平方向に扁平な噴射パターンを得るために、一対の突出片304が水平方向に広い幅を有するように形成されている。その結果、一対の突出片304の対向縁部306は、対向方向に直交する方向に見た幅が噴射口の直径よりも著しく大きくなっていた(この例では約6倍)。その結果、噴射流は、噴射口から出た後に間隙305内で強い抵抗を受けることになる。これにより、噴射の直進性が悪く噴射流量が低下し、薬剤を遠くまで噴射するのが困難となる。また、噴射流が噴射口近傍に滞留したり付着したりすることによって液だれが生じたり、内容物が流路で詰まりを生じたりする畏れがある。特にパウダー入り内容物の場合、乾燥によりパウダーが流路に残留して詰まりを生じる傾向が強い。
【0055】
このように噴射口の前方に広い幅の一対の突出片を配置するのは、特開2001−205145号公報にも示されているように、水平方向、上下方向等の扁平な噴射パターンを得る上で必要な構造と考えられてきたのであるが、その結果、適正で安定した噴射流を得るのが困難となっていた。
【0056】
また、エアゾールボタン300を樹脂成形するための第2金型5Mは、図16に示すように、プレート状部分51Mが水平方向に薄く広く延びているので、金型のこの部分の強度が劣る。しかも、針状部分52Mは、プレート状部分51Mの後端部のみで支持されるので、支持が脆弱である。これらの結果、プレート状部分51M及び針状部分52Mの曲がりや折れ等の破損を生じやすく、繰り返される成形作業に対する耐久性に欠けるという問題があった。
【0057】
したがって、これらの問題を解決し、適正で安定した噴射流を得ることができ、且つ樹脂成形の際の金型が耐久性に優れるエアゾールボタン及びエアゾールキャップを提供することが望まれる。
【0058】
この要請に応える改良されたエアゾールボタンとして、エアゾール缶のバルブステムに接続可能であり、エアゾール缶の内容物の噴射口が形成されたノズル部を有したエアゾールボタンであって、内容物をバルブステムから前記噴射口を経てエアゾールボタン外へ導くための流路と、前記噴射口の周縁部から噴射方向に延びる突出片とを備え、前記流路は、バルブステムに沿って延びる導入路と、該導入路を横切る方向へ曲折し前記噴射口に開いた導出路とを備えており、前記噴射口はバルブステムの近傍に配置されており、前記突出片は、噴射方向を横切る方向を対向方向として対向配置され、噴射流に対して前記対向方向への拡散を制限し、前記対向方向に垂直な方向への拡散を許容するように対向縁部が位置しており、該対向縁部は、対向方向に直交する方向に見た幅が前記噴射口の直径と略同幅とされていることを特徴とするエアゾールボタンを提供することができる。
【0059】
また、上記要請に応える改良されたエアゾールキャップとして、上記エアゾールボタンをキャップ本体に一体的に形成したエアゾールキャップ、または、上記エアゾールボタンを別体として備えたエアゾールキャップを提供することができる。この場合、前記噴射口はキャップ本体の径方向略中央部に位置することとなる。
【0060】
上記の改良されたエアゾールボタンは、内容物をバルブステムから噴射口を経てエアゾールボタン外へ導くための流路を備え、該流路は、バルブステムに沿って延びる導入路と、該導入路を横切る方向へ曲折し前記噴射口に開いた導出路とを備えている。これにより、噴射口から噴射される内容物の噴射方向が決められる。
【0061】
上記エアゾールボタンはさらに、噴射口の周縁部から噴射方向に延びる突出片を備え、該突出片は、噴射方向を横切る方向を対向方向として対向配置され、噴射流に対して対向方向への拡散を制限し、対向方向に垂直な方向への拡散を許容するように対向縁部が位置
している。この突出片の対向配置により、噴射流は、拡散許容方向の噴射角が規制方向の噴射角より大きくなり、拡散許容方向に広い扁平な噴射パターンが得られる。この噴射パターンは、扁平方向を横切る方向に噴射流を移動させることにより迅速に広範囲に噴射を行なうことができる。また、扁平形状に対応した細長い箇所への噴射を行なうのも容易である。
【0062】
さらに、突出片の対向縁部は、対向方向に直交する方向に見た幅が噴射口の直径と略同幅とされている。このように突出片の幅が噴射口と略同幅となるように小さくされているので、噴射流に対する抵抗が小さい。その結果、広角な噴霧を可能としながら噴射の直進性及び噴射流量の確保に優れ、多量の薬剤を遠くまで噴射することができる。また、噴射流が噴射口近傍に滞留したり付着したりすることによる液だれが防止されるという効果、並びに、内容物が流路で詰まりを生じるのが防止されるという効果(特にパウダー入り内容物の場合にその効果が大きい)も得られる。これらにより、適正で安定した噴射流を得ることができる。
【0063】
エアゾールボタンを樹脂成形するための金型は、噴射口及び導出路を形成する部分が針状に細長く延びている。これに関し、本発明においては、突出片の対向縁部の幅が小さくされているので、金型は、例えば図12に示すように、突出片を形成するように隣り合う部分(41M)が相互に接近して位置し、且つ、突出片を形成する部分(41M)と針状部分(42M)との接触面積が大きい形状となる。その結果、針状部分(42M)を支持する部の強度が高いとともに、針状部分(42M)を直近位置で広範囲に亘って支持することができるため、支持が堅固となり、金型は、繰り返される成形作業に対して高い耐久性を有することとなる。
【0064】
この突出片の対向縁部の幅は、噴射口の直径に対して1〜2倍とするのが望ましい。対向縁部の幅が噴射口の直径より小さいと、樹脂成形の際に第2金型の型抜きが困難となる。また、対向縁部の幅が噴射口の直径の2倍を超えると、突出片が噴射流に及ぼす抵抗が大きくなり、噴射の直進性及び噴射流量が低下する。
【0065】
上記の改良されたエアゾールキャップは、上記構造のエアゾールボタンを備える結果、上記と同様の作用効果を奏する。
【0066】
上述のようにして、適正で安定した噴射流を得ることができ、且つ樹脂成形の際の金型が耐久性に優れるエアゾールボタン及びエアゾールキャップを提供することができる。
【0067】
図2〜図9に示した例は、上記の改良されたエアゾールボタン及びエアゾールキャップに相当するものである。図13は、改良されたエアゾールキャップの要部の他の例を示す斜視図であり、図14は、図13で示すエアゾールキャップの正面図である。図示の部分は、図7〜図9等に示したエアゾールボタン30の前壁311から前方へ延びる部分を示している。このエアゾールキャップ2aにおいては、突出片35aが、柱体34aの両側で軸線Gに沿う方向に突出し、水平方向に対向して一対設けられている。突出片35a相互の間隙350aは、噴射口40aからの噴射流に対して、上下方向への拡散を許容し、水平方向の幅を制限する。これにより、噴射口40aからの噴射流は、上下方向の噴射角が水平方向の噴射角より大きくなり、上下方向に広い扁平な噴射パターンが得られる。突出片35aの対向縁部351aは、対向方向に直交する方向に見た幅が噴射口の直径と略同幅とされている。このように突出片の幅が噴射口と略同幅となるように小さくされているので、噴射流に対する抵抗が小さく、その結果、噴射の直進性及び噴射流量の確保に優れ、多量の薬剤を遠くまで噴射することができる。この実施形態では、柱体34aの前端面は、突出片35aの両側に位置する上側部分341aと下側部分342aとが前後方向に同じ位置に設けられている。また、突出片35aの幅方向外側には、該突出片に垂直に
前後方向へ延びる補強板37aが設けられている。
【0068】
このエアゾールキャップ2aを樹脂成形するための金型は、突出片35aの対向縁部351aの幅が小さくされているので、先の実施形態について説明したのと同様に、突出片35aを形成するように隣り合う部分が相互に接近して位置することとなり、その結果、針状部分を直近位置で広範囲に亘って支持し、支持が堅固となり、繰り返される成形作業に対して高い耐久性を有することとなる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。上記実施形態では、エアゾールキャップを例に説明したが、同様の構成を有するエアゾールボタンをキャップ本体と一体または別体として形成することにより、エアゾールキャップについて述べたのと同様の作用効果を奏することができる。変更例としては、例えば、庇の強度が十分であれば、補強リブを省略することもできる。また、噴射方向側からの手指の挿入を防止でき、シュリンクフィルムの支持が可能であれば、庇は延在方向の一部を切り欠いた形状とすることもできる。さらに、上記の改良されたエアゾールボタン及びエアゾールキャップの作用効果を得る上で、庇は必ずしも必要ではなく、これを省略することもできる。
【0070】
噴射流は、垂直方向に広がる噴射パターン、或いは水平及び垂直に同等に広がる噴射パターンとすることもできる。前者の噴射パターンは、例えば、一対の突出片を水平方向に対向させることにより形成することができる。後者の噴射パターンは、例えば、噴射口より径の大きい円形孔を中心部に有した突出片を設けることにより、或いは、突出片を省略して噴射口から直接噴射する構成とすることにより、形成することができる。
【0071】
押しボタンは、キャップ本体に対して上下方向に回動可能に結合する他、キャップ本体の上部から下方へ凹入する凹部にガイドされて上下方向に摺動可能に設けることもでき、この場合は、例えば凹部に配置されたばね等の弾性部材により上方へ弾性力を付与した構造とすることができる。
【0072】
キャップ本体、押しボタン、突出片は、全てを一体成形する他、その一部または各々を別個に成形し、相互に接着、嵌合、ねじ止め等により結合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1:エアゾール缶
2,2a:エアゾールキャップ
13:バルブステム
20:キャップ本体
21:冠着部
22:側壁
24,24a:庇部
30:押しボタン
40:噴射口
241,241a:補強リブ
400,400a:ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール缶上部の外周縁部に被せられる筒状の冠着部、及び該冠着部から上方へ延びる一対の側壁を有するキャップ本体と、
エアゾール缶のバルブステムに接続可能であり、エアゾール缶の内容物の噴射口が形成されたノズル部を有し、バルブステムに接続した状態で前記キャップ本体の側壁間に位置する押しボタンと、
前記キャップ本体における噴射方向側において前記一対の側壁間に設けられた庇部とを備え、
前記一対の側壁は、噴射方向とは反対側の端部において、前記噴射ボタンに手指を到達させるための間隙を形成しており、噴射方向側の端面は、側壁の内側から外側へ向かうに従って前記ノズル部から遠ざかる方向へ延びており、
前記庇部は、前記ノズル部の上方に間隙を形成した状態で前記一対の側壁間に固定されており、
前記押しボタンのノズル部は、前記噴射口からの噴射流の水平方向の噴射角が垂直方向の噴射角より大きくなるように設定されていることを特徴とするエアゾールキャップ。
【請求項2】
前記押しボタンは、エアゾール缶のステムと連通し得る第1流出路と、該第1流出路から曲折して噴射方向に延び先端に前記噴射口を形成する第2流出路とを備え、該第2流出路は、前記噴射口が前記キャップ本体の径方向中央部に位置するように前記第1流出路の近傍位置に延びていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾールキャップ。
【請求項3】
前記押しボタンは、前記噴射口側の端面から噴射方向に延びる突出片を備え、該突出片は、前記噴射口からの噴射流に対して、水平方向への拡散を許容し、垂直方向の幅を制限するように、上下方向に対向して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾールキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−30799(P2012−30799A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168179(P2010−168179)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【特許番号】特許第4694648号(P4694648)
【特許公報発行日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】