説明

エアゾール内容物噴射装置

【課題】
エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制することにより、付着率を高めて、噴霧効率の向上を図るとともに、エアゾール内容物の吸い込みを防止する。更に、エアゾール内容物を噴射する際の噴射圧を抑制することにより、使用者が痛みや過度の冷感を感じるのを防止し、エアゾール製品の使用感を向上するとともに、エアゾール内容物を噴射する際に外部に漏れる噴射音を抑制する。
【解決手段】
エアゾール容器のステムと連通する連通路5と、この連通路5の先端部11と噴射間隔12を介して配置し連通路5の先端部11から排出するエアゾール内容物を衝突させる衝突壁13と、噴射間隔12と外部とを接続するとともに、連通路5とは同一軸線上とならないように配置して衝突壁13に開口した1本の噴出路14とを備える。噴出路14を直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmとし、衝突壁13に衝突させたエアゾール内容物を、噴出路14を介して外部に噴出可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に充填した制汗剤、頭髪用品、化粧品、消臭剤、傷薬、その他のエアゾール内容物を噴射するための、エアゾール内容物噴射装置に関するもので、特に粉末エアゾール内容物の噴射装置として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器に充填したエアゾール内容物を噴射するためのものとして、特許文献1に示す如き装置が知られている。この従来技術は、エアゾール容器のステムと接続する連通路と、この連通路の先端部に噴射間隔を介して配置する突起部と、前記噴射間隔と外部とを接続する複数個の噴射孔とを備えている。そして、エアゾール容器から前記連通路に導入したエアゾール内容物を、前記突起部に衝突させた後に、前記複数個の噴射孔を介して外部に噴射可能としている。この従来技術は、エアゾール内容物を上述の如く突起部に衝突させることにより、エアゾール内容物の粒子径を微細化し、広範囲且つ均一に噴射しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−311192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示す装置に於いては、突起部に衝突させて粒子径を微細化したエアゾール内容物が、複数個の噴射孔を介して大気中に広範囲に拡散するものとなるため、エアゾール内容物を、人体の一部等の狭い付着目的部に効率よく付着させることは困難なものとなっていた。また、上述の如く、エアゾール内容物が複数個の噴射孔を介して大気中に広範囲に拡散するものとなるため、この拡散したエアゾール内容物を使用者が吸い込みやすいという欠点を有していた。
【0005】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制することにより、人体の一部等の狭い付着目的部にエアゾール内容物を効率的に付着させるとともに、使用者がエアゾール内容物を吸い込むことを抑制しようとするものである。更に、エアゾール内容物を噴射する際の噴射圧を抑制することにより、使用者が痛みや強度の冷感を感じるのを防止し、エアゾール製品の使用感を向上するとともに、エアゾール内容物を噴射する際に外部に漏れる噴射音を抑制しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、上述の如き課題を解決するため、エアゾール容器のステムと連通する連通路と、この連通路の先端部と噴射間隔を介して配置し連通路の先端部から排出するエアゾール内容物を衝突させる衝突壁と、噴射間隔と外部とを接続するとともに、連通路とは同一軸線上とならないように配置して衝突壁に開口した1本の噴出路とを備え、この噴出路を直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmとしている。そして、衝突壁に衝突させたエアゾール内容物を、噴出路を介して外部に噴出可能とするものである。
【0007】
また、連通路は、複数本設けるものであっても良い。このように複数本の連通路を設けることにより、複数本の連通路のうちの1本が目詰まりを起こしたとしても、目詰まりを起こしていない他の連通路を介してエアゾール内容物を噴射間隔内に導入することが可能となり、エアゾール内容物の噴射不能状態が生じるのを防止することが可能となる。特に、エアゾール内容物として粉末系内容物を用いる場合には、水系内容物やアルコール、ケロシン等の非水系内容物を用いる場合と比較して、連通路内にエアゾール内容物が堆積しやすいものとなり、連通路内に於ける目詰まりが起こりやすいものとなる。そこで、連通路を複数本形成し、一の連通路が目詰まりを生じても、他の連通路を介してエアゾール内容物を確実に噴射方向へ移送できるようにしておくことが好ましい。
【0008】
また、連通路は、1本のみ設けるものであっても良い。このように形成することにより、連通路を複数本形成する場合と比較して、製造工程を簡易なものとすることが可能となるとともに、連通路内に流入するエアゾール内容物の流量を抑制することが可能となり、噴射圧の抑制効果を高めることが可能となる。
【0009】
また、噴射間隔は、下端縁を最下端に設けた噴出路の下端縁と同一平面に配置したものであっても良い。このように形成することにより、噴射間隔から噴出路へのエアゾール内容物の流動を円滑なものとすることが可能となり、噴射間隔の下端縁を噴出路の下端縁よりも低い位置に配置する場合と比較して、エアゾール内容物が噴射間隔の下端縁に堆積しにくいものとなり、エアゾール内容物を無駄なく効率的に噴射することが可能となる。また、噴射間隔内に於ける目詰まりの発生を防止することが可能となるとともに、エアゾール内容物が固まりになって噴射されることもなく、エアゾール製品の使用感を向上させることが可能となる。特に、エアゾール内容物として粉末系内容物を用いる場合には、前述の如くエアゾール内容物の堆積が生じやすいものとなるため、噴出路の下端縁と噴射間隔の下端縁を同一平面とすることにより、エアゾール内容物の堆積を抑制することが好ましい。なお、特許請求の範囲及び本明細書中に於いて、上端、下端等の位置を示す用語は、エアゾール容器の正立状態を基準として用いる。
【0010】
また、噴射間隔は、下端縁を噴出路の下端縁よりも低い位置に配置したものであっても良い。このように形成することにより、噴射間隔の下端縁を噴出路の下端縁と同一平面に配置する場合と比較して、噴射間隔の形成高さを高くすることが可能となる。そのため、噴射間隔の容積も大きいものとなり、この大きい噴射間隔内で、衝突壁に衝突したエアゾール内容物の粒子径の微細化を確実に行うことが可能となる。
【0011】
また、エアゾール内容物は、粉末系内容物であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述の如く構成したものであって、連通路の先端部から排出されるエアゾール内容物を、噴射間隔を介して衝突壁に衝突させることにより、エアゾール内容物を微粒子状に粉砕するとともに装置内で気化膨張させ、エアゾール内容物の噴射圧力を抑制することが可能となる。そのため、過度の噴射圧力により使用者が痛みや強い冷感を感じる虞れもなく、エアゾール製品の使用感を向上させることが可能となる。また、上述の如くエアゾール内容物を装置内で気化膨張させることにより、外部に漏れる噴射音を小さくすることが可能となるため、例えば制汗剤や消臭剤等を使用する場合等に於いて、外部に噴射音を聞かれたくないような場合にも、噴射音の外部への漏れを心配することなく、快適な使用が可能となる。また、ペットや乳幼児等に対してエアゾール製品を使用する場合にも、噴射音による恐怖感を与える虞れがないものとなる。
【0013】
また、エアゾール内容物を外部に噴出させるための噴出路を、上記連通路とは同一軸線上とならないように配置しているため、連通路から流出したエアゾール内容物が、衝突壁に衝突せずに噴出路から外部に噴出することがなく、上記衝突壁にエアゾール内容物を確実に衝突させることが可能となり、上記のエアゾール内容物の微粒子化、気化膨張による噴射圧力の抑制を確実なものとすることが可能となる。
【0014】
また、上述の如く衝突壁に衝突させて粒子径を微細化し噴射圧力を抑制したエアゾール内容物を、前記衝突壁に開口した直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmの噴出路を介して外部に噴射するものとしているため、上記噴出路に於いてエアゾール内容物の噴射パターンを狭くすることが可能となる。そのため、噴射されるエアゾール内容物の粒子径が微細なものであっても、エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制し、制汗剤等の人体用のエアゾール内容物を、人体の一部等の狭い付着目的部に限定して付着させることができ、付着率も高めることが可能となる。また、エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制することにより、使用者がエアゾール内容物を吸い込んでしまう虞れもないものとなり、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1を示す断面図。
【図2】図1のA−A線部分の部分拡大断面図。
【図3】図1のB−B線部分の部分拡大断面図。
【図4】実施例2を示す断面図。
【図5】図4のC−C線部分の部分拡大断面図。
【図6】図4のD−D線部分の部分拡大断面図。
【図7】実施例3の連通路を示す部分断面図。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1を図1〜図3において説明すると、(1)は押釦で、内部中央の上下方向には、エアゾール容器(図示せず)のステム(図示せず)と連通する導入路(2)を設けている。そして、押釦(1)の上端に設けた押圧部(3)を押圧することにより、上記押釦(1)を介して前記ステムを押し下げてエアゾール容器のバルブ機構(図示せず)を開弁し、エアゾール内容物を上記導入路(2)内に導入可能としている。
【0017】
また、上記導入路(2)の垂直方向には、上記導入路(2)と図1に示す如く基端部(4)を接続する連通路(5)を、図2、図3に示す如く、センターポスト(6)の外周に等間隔で4本設けている。この連通路(5)の形成について説明すると、前記押釦(1)には、図1に示す如く、外周面の一側から導入路(2)に向かって側部開口(7)を開口するとともに、この側部開口(7)内にセンターポスト(6)を配置している。このセンターポスト(6)の外周面には、軸方向に4本の連通溝(9)を凹設している。また、上記側部開口(7)には、図1に示す如く、ノズル体(8)の基端側を装着固定可能としている。そして、このノズル体(8)の内周面(10)により、図1、図2に示す如くセンターポスト(6)の外周面に設けた4本の連通溝(9)を被覆することにより、4本の連通路(5)を形成している。
【0018】
また、上記連通路(5)は、直径0.3mm〜2.0mmとすることが好ましい。この連通路(5)の直径を0.3mm未満とすると、連通路(5)内においてエアゾール内容物が目詰まりを起こしやすいものとなる。また、この連通路(5)の直径を2.0mmより大きなものとすると、連通路(5)内に於けるエアゾール内容物の流量が多すぎるものとなり、噴射圧の抑制効果が不充分なものとなる。
【0019】
また、本実施例に於いては前述の如く、センターポスト(6)の外周面の上下左右に4本の連通路(5)を形成している。このように複数本の連通路(5)を形成することにより、複数本の連通路(5)のうちの1本が目詰まりを起こしたとしても、目詰まりを起こしていない他の連通路(5)を介してエアゾール内容物を噴射方向に移送することが可能となり、エアゾール内容物の噴射不能状態が生じるのを防止することが可能となる。特に、エアゾール内容物として、粉末系内容物を用いる場合には、水系内容物やアルコール、ケロシン等の非水系内容物を用いる場合と比較して、連通路(5)内にエアゾール内容物が堆積しやすいものとなり、連通路(5)内に於ける目詰まりが起こりやすいものとなる。そこで、連通路(5)を複数本形成し、一の連通路(5)が目詰まりを生じても、他の連通路(5)を介してエアゾール内容物を確実に噴射方向に移送できるようにしておくことが好ましい。
【0020】
また、本実施例に於いては図2に示す如く、上記連通路(5)の断面形状を略正方形としている。なお、本実施例に於いてはこのように、連通路(5)の断面形状を略正方形としているが、他の異なる実施例に於いては、三角形、長方形、正円形、楕円形等の任意の断面形状を採用することが可能である。
【0021】
また、図1に示す如く、上記連通路(5)の先端部(11)とは噴射間隔(12)を介して、衝突壁(13)を配置している。この衝突壁(13)は、前記ノズル体(8)の内面に設けたものであり、ノズル体(8)を前記側部開口(7)に装着した状態で、前記連通路(5)の先端とは噴射間隔(12)を介して配置されるように、寸法を調整して形成している。
【0022】
本発明に於いてはこのように、連通路(5)の先端部(11)と噴射間隔(12)を介して衝突壁(13)を配置しているため、連通路(5)の先端部(11)から排出されるエアゾール内容物を、噴射間隔(12)を介して衝突壁(13)に衝突させることが可能となる。そのため、衝突によってエアゾール内容物を微粒子状に粉砕するとともに装置内で気化膨張させ、噴射圧力を抑制することが可能となる。そのため、過度の噴射圧力により使用者が痛みや強い冷感を感じる虞れもなく、エアゾール製品の使用感を向上させることが可能となる。
【0023】
また、上述の如くエアゾール内容物を装置内で気化膨張させてから外部に噴射することにより、外部に漏れる噴射音を小さくすることが可能となるため、例えば制汗剤や消臭剤等を使用する場合等に於いて、外部に噴射音を聞かれたくないような場合にも、噴射音の外部への漏れを心配することなく、快適な使用が可能となる。また、ペットや乳幼児等に対してエアゾール製品を使用する場合にも、噴射音による恐怖感を与える虞れがないものとなる。
【0024】
また、上記噴射間隔(12)は、形成幅を1.0mm〜3.0mm、形成高さを1.0mm〜5.0mmとするのが好ましい。上記噴射間隔(12)の形成幅が1.0mm未満の場合又は噴射間隔(12)の形成高さが1.0mm未満の場合には、衝突壁(13)に衝突させて微粒子状に粉砕したエアゾール内容物を気化膨張させるための空間も狭すぎるものとなる。そのため、噴射圧の抑制効果が不充分なものとなり、使用者が過度の噴射圧により痛みや強度の冷感を感じる虞れがあるとともに、外部に漏れる噴射音も大きくなる虞れがある。また、上記噴射間隔(12)の幅が3.0mmを超える場合又は噴射間隔(12)の形成高さが5.0mmを超える場合には、連通路(5)の先端部から衝突壁(13)までの距離が遠すぎるものとなるため、噴射間隔(12)内に於いて気化膨張するエアゾール内容物の量が多すぎるものとなり、噴射圧が小さすぎるものとなる。そのため、噴射間隔(12)内に多量のエアゾール内容物が残留するものとなり、十分な量のエアゾール内容物を噴射できなくなるおそれがある。また、噴射間隔(12)内の残留粉末によって、連通路(5)や、前記衝突壁(13)に後述の如く配置する噴出路(14)において、目詰まりが生じやすいものとなる。
【0025】
また、上述の如くノズル体(8)の衝突壁(13)に衝突させて粒子径を微細化したエアゾール内容物は、通常の場合、粒子径の大きなエアゾール内容物と比較して大気中に拡散しやすいものとなる。そして、このようなエアゾール内容物の大気中への拡散が生じると、人体の一部等の狭い付着目的部にエアゾール内容物を付着させることが困難となるとともに、エアゾール内容物の付着率が低下してしまうものとなる。また上述の如く大気中に拡散した粒子径の微細なエアゾール内容物を、使用者が吸い込む虞れもある。
【0026】
そこで、本願発明に於いては、前記ノズル体(8)の衝突壁(13)に直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmの噴出路(14)を図1に示す如く開口し、前述の如く衝突壁(13)に衝突させて粒子径を微細化したエアゾール内容物を、上記噴出路(14)を介して外部に噴出するものとしている。このように直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmの噴出路(14)を介してエアゾール内容物を外部に噴射することにより、上記噴出路(14)に於いてエアゾール内容物の噴射パターンを狭くすることが可能となる。そのため、噴射されるエアゾール内容物の粒子径が微細なものであっても、エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制し、制汗剤等の人体用のエアゾール内容物を、人体の一部等の狭い付着目的部に限定して付着させることができ、付着率も高めることが可能となる。また、エアゾール内容物の大気中への拡散を抑制することにより、使用者がエアゾール内容物を吸い込む虞れも少ないものとなり、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【0027】
また、上記噴出路(14)は、図1及び図3に示す如く、前記連通路(5)とは同一軸線上とならないように形成している。このように形成することにより、連通路(5)から流出したエアゾール内容物が、衝突壁(13)に衝突せずに噴出路(14)から外部に噴出することがなく、上記衝突壁(13)にエアゾール内容物を確実に衝突可能とし、前述のエアゾール内容物の微粒子化、気化膨張による噴射圧力の抑制を確実なものとする。
【0028】
また、上記噴出路(14)は前述の如く、直径0.1mm〜3.0mm、長さを0.2mm〜20.0mmとする。噴出路(14)の直径を3.0mmより大きくしたり、噴出路(14)の長さを0.2mm未満とすると、エアゾール内容物の噴射パターンを十分に狭くすることができず、エアゾール内容物が大気中に拡散しやすいものとなる。そのため、人体の一部等の狭い付着目的部へのエアゾール内容物の効率的な付着が困難になるとともに、大気中に拡散したエアゾール内容物を、使用者が吸い込む虞れが大きいものとなる。また、噴出路(14)の直径を0.1mm未満としたり、噴出路(14)の長さを20.0mmより大きくすると、噴射パターンが小さすぎるものとなるため、エアゾール内容物が付着目的部に液滴となって付着するものとなる。その結果、エアゾール内容物による気化潜熱が過大なものとなり、冷感が強くなりすぎて、使用感の悪化を招く虞れがある。
【0029】
また、本実施例に於いては、図1及び図3に示す如く、噴射間隔(12)の下端縁(15)を噴出路(14)の下端縁(16)よりも低い位置に配置している。このように形成することにより、噴射間隔(12)の下端縁(15)を噴出路(14)の下端縁(16)と同一平面に配置する場合と比較して、噴射間隔(12)の形成高さを高くすることが可能となる。そのため、噴射間隔(12)の容積も大きいものとなり、この大きい噴射間隔(12)内で、衝突壁(13)に衝突したエアゾール内容物の粒子径の微細化を確実に行うことが可能となる。
【実施例2】
【0030】
前記実施例1に於いては、図1及び図3に示す如く、噴射間隔(12)の下端縁(15)を噴出路(14)の下端縁(16)よりも低い位置に形成しているが、本実施例2に於いては、図4及び図6に示す如く、噴射間隔(12)の下端縁(15)が噴出路(14)の下端縁(16)と同一平面となるように形成している。このように形成することにより、噴射間隔(12)から噴出路(14)へのエアゾール内容物の流動を円滑なものとすることが可能となり、実施例1の如く、噴射間隔(12)の下端縁(15)を噴出路(14)の下端縁(16)よりも低い位置に配置する場合と比較して、エアゾール内容物が噴射間隔(12)の下端縁(15)に堆積しにくいものとなり、エアゾール内容物を無駄なく効率的に噴射することが可能となる。また、噴射間隔(12)内に於ける目詰まりの発生を防止可能となるとともに、エアゾール内容物が固まりになって噴射されることもなく、エアゾール製品の使用感を向上させることが可能となる。特に、エアゾール内容物として粉末系内容物を用いる場合には、前述の如くエアゾール内容物の堆積が生じやすいものとなるため、本実施例の如き構成を採用するのが好ましい。
【実施例3】
【0031】
また、前記実施例1に於いては図2に示す如く、連通路(5)をセンターポスト(6)の外周面の上下左右に1本ずつ、計4本形成し、前記実施例2に於いては図5に示す如く、連通路(5)をセンターポスト(6)の外周面の上部及び左右に1本ずつ、計3本形成しているが、本実施例3に於いては、図7に示す如く、連通路(5)をセンターポスト(6)の上部に1本のみ形成している。このように連通路(5)を1本のみ形成することにより、連通路(5)を複数本形成する場合と比較して、製造工程を簡易なものとすることが可能となるとともに、連通路(5)内に流入するエアゾール内容物の流量を抑制することが可能となり、噴射圧の抑制効果を高めることが可能となる。
【0032】
なお、本発明のエアゾール内容物噴射装置は、例えば、パウダースプレー(制汗剤)、ヘアセットスプレー、ヘアトリートメントスプレー、ヘアカラースプレー、頭髪用つや出しスプレー、ヘアトニック、フレグランススプレー、日焼け止めスプレー、化粧水、ボディーローション、ネイルリムーバー、コールドスプレー、ボディースプレー、筋肉消炎剤、水虫薬、傷薬、防曇剤、除菌・消臭剤、ガラスクリーナー、帯電防止剤等に用いることが可能である。また、本発明のエアゾール内容物噴射装置は、前述の如くエアゾール内容物の粒子径の微細化を確実に行うことが可能なものであるから、粒子径を微細化して噴射することが好ましいとされる粉末系溶剤の噴射装置として、好適なものである。
【0033】
そして、本発明のエアゾール内容物噴射装置及び従来例のエアゾール内容物噴射装置を用いて、エアゾール内容物の付着率の向上効果、スプレーパターンの拡大防止効果、噴射圧の抑制効果、噴射音の抑制効果及び粒子径の微細化効果を実証する比較実験を行った。本発明及び従来例のエアゾール内容物噴射装置の主な仕様は、表1に示す通りである。
【0034】
【表1】

【0035】
本実験に於いては、前記実施例1〜3に対応する形状のエアゾール内容物噴射装置を、本発明の実施例として用いた。即ち、実施例1として、センターポスト(6)の外周面の上下左右に連通路(5)を計4本設けたエアゾール内容物噴射装置を用いた。また、本発明の実施例2として、センターポスト(6)の外周面の上部及び左右に連通路(5)を計3本設けたエアゾール内容物噴射装置を用いた。また、実施例3として、センターポスト(6)の上部に連通路(5)を1本のみ設けたエアゾール内容物噴射装置を用いた。
【0036】
また、本実験に於いては、連通路、衝突壁及び噴射間隔を備えていない従来公知のエアゾール内容物噴射装置を、比較例1、2として用いた。即ち、比較例1として、直径0.5mm、長さ0.5mmのノズルのみを設けたエアゾール内容物噴射装置を用いた。また、比較例2として、直径0.5mm、長さ1.0mmのノズルの先端に、基端部の直径1.0mm、先端部の直径1.5mm、長さ4.5mmのテーパー状の噴出路を設けたエアゾール内容物噴射装置を用いた。
【0037】
また、この実験に於ける付着率の測定方法を以下に説明する。まず、実施例および比較例のエアゾール内容物噴射装置をエアゾール容器本体に取り付けるとともに、エアゾール容器本体との離間距離15cmの位置に、30cm×30cmの正方形状の濾紙により形成した測定用パネルを配置する。そして、この測定用パネルに向かって、エアゾール内容物の噴射装置からエアゾール内容物を10秒間噴射する。そして、この噴射の完了から60秒後に上記測定パネルに付着しているエアゾール内容物の重量を、噴射されたエアゾール内容物(噴射剤を除く。)の総重量で割った値を100分率で示したものを、付着率として評価した。
【0038】
また、この実験に於けるスプレーパターンの拡大防止効果の測定方法を以下に説明する。まず、実施例及び比較例のエアゾール内容物噴射装置をエアゾール容器と接続し、エアゾール容器との離間距離15cmの位置に、アクリル板を設置した。そして、このアクリル板に向かって、エアゾール内容物噴射装置からエアゾール内容物を3秒間噴射した直後に、アクリル板に付着したエアゾール内容物の縦幅及び横幅を測定した。
【0039】
また、この実験に於ける噴射圧の測定方法を以下に説明する。まず、実施例および比較例のエアゾール内容物噴射装置をエアゾール容器と接続するとともに、エアゾール容器との離間距離15cmの位置に直径15cmの円盤状のステンレス板よりなる測定用パネルを配置する。この状態で、上記測定用パネルに向かって、エアゾール内容物噴射装置からエアゾール内容物を5秒間噴射させる。そして、上記測定用パネルに接続したひずみゲージ式荷重変換器(北東衝機工業製・T25)により、測定パネルに加えられた荷重を測定し、その最大値を噴射圧として評価した。
【0040】
また、この実験に於ける噴射音の測定方法を以下に説明する。実施例および比較例のエアゾール内容物噴射装置をエアゾール容器に取り付けた状態で、エアゾール内容物を5秒間噴射させ、エアゾール容器本体との離間距離15cmの位置に配置した普通騒音計(小野計測器社製・LA−215)の音検知部によって測定される音圧レベルの最大値を噴射音の音圧レベルとして評価した。
【0041】
また、この実験に於ける平均粒子径の測定は、JIS Z8825−1(粒子径解析−レーザー回折法−)に基づき、レーザー回折式粒度分布測定装置 (シスメック社製・スプレーテックRTS500)を用いて行った。
【0042】
なお、上記いずれの実験についても、表1に示す如く、各比較例及び実施例について、3回ずつ実験を行い、その平均値を上記3回の実験結果の下欄に示した。以下、この平均値に基づいて説明する。
【0043】
表1の結果から明らかな通り、まず付着率に於いて、本発明の実施例1〜3は、何れも比較例1及び比較例2と比較して、著しく高いものとなっている。このように、本発明のエアゾール内容物噴射装置は、比較例1及び比較例2のエアゾール内容物噴射装置よりもエアゾール内容物の付着率が高いものであるから、制汗剤等の人体用のエアゾール内容物を、人体の一部等の狭い付着目的部に限定して付着させることができる。また、使用者がエアゾール内容物を吸い込んでしまう虞れも少ないものとなり、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【0044】
また、スプレーパターンの拡大防止効果の実験に於いて、比較例1、2のスプレーパターンは、いずれも30mm×30mmとなっているのに対して、本実施例1、2に於いてはいずれも25mm×25mm、本実施例3に於いては20mm×20mmとなっており、本実施例1〜3の方が比較例1、2よりもスプレーパターンが狭くなっている。この実験結果からも、本実施例1〜3のエアゾール内容物噴射装置が、比較例1、2のエアゾール内容物噴射装置よりも、エアゾール内容物の付着率及び拡散抑制効果が高いことが明らかである。
【0045】
また、表1の実験結果から分かる通り、噴射音についても、本発明の実施例1〜3は、何れも比較例1、比較例2と比較して、小さくなっている。従って、本実施例のエアゾール内容物噴射装置は、比較例1、2のエアゾール内容物噴射装置と比較して、エアゾール製品の使用感に優れたものである。
【0046】
また、表1の実験結果から分かる通り、噴射圧についても連通路(5)を1本のみ形成した本発明の実施例3は、比較例1、2と比較して、はるかに低いものとなっている。また、連通路(5)を4本形成した本発明の実施例1及び連通路(5)を3本形成した本発明の実施例2は、比較例1と比較して、噴射圧が低いものとなっている。このことから明らかな通り、本発明のエアゾール内容物噴射装置は、過度の噴射圧力により使用者が痛みや強い冷感を感じる虞れもなく、エアゾール製品の使用感を向上させることが可能となるものである。
【0047】
なお、本発明の実施例1、2については、比較例2と比較して、噴射圧が高くなっている。これは、本発明の実施例1、2が、比較例2よりもスプレーパターンを狭くしており、その分エアゾール内容物の拡散が少なく、エアゾール内容物が付着目的部に集中的に噴射されていることに起因するものと考えられる。しかしながら、上記実施例1、2の噴射圧は、比較例2と同様に5.0gfを下回るものであり、使用者が痛みや強い冷感を感じる程のものではない。そして、実施例1、2に於いては、上述の如くエアゾール内容物の拡散が少ない分、エアゾール内容物の付着率は比較例1、2よりも遥かに向上している。
【0048】
また、エアゾール内容物の平均粒子径については、表1の実験結果から分かる通り、本発明の実施例1〜3は、いずれも20.0μm〜25.0μmの間となっている。これに対して、比較例1に於いては、平均粒子径が11.3μmであり、平均粒子径が15.0μmを下回っている。そのため、平均粒子径が小さすぎるものとなり、エアゾール内容物が大気中に拡散し、使用者がエアゾール内容物を吸い込んでしまう危険性が高くなるおそれがある。また、比較例2に於いては、平均粒子径が33.6μmであり、平均粒子径が30.0μmを上回っている。そのため、平均粒子径が大きすぎるものとなり、エアゾール内容物が液滴となって付着目的部に付着するものとなり、その際の気化潜熱により、使用者が過度の冷感を感じるおそれがある。
【符号の説明】
【0049】
5 連通路
11 先端部
12 噴射間隔
13 衝突壁
14 噴出路
15 下端縁
16 下端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のステムと連通する連通路と、この連通路の先端部と噴射間隔を介して配置し連通路の先端部から排出するエアゾール内容物を衝突させる衝突壁と、噴射間隔と外部とを接続するとともに、連通路とは同一軸線上とならないように配置して衝突壁に開口した1本の噴出路とを備え、この噴出路を直径0.1mm〜3.0mm、長さ0.2mm〜20.0mmとし、衝突壁に衝突させたエアゾール内容物を、噴出路を介して外部に噴出可能としたことを特徴とするエアゾール内容物噴射装置。
【請求項2】
連通路は、複数本設けることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項3】
連通路は、1本のみ設けることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項4】
噴射間隔は、下端縁を最下端に設けた噴出路の下端縁と同一平面に配置したことを特徴とする請求項1のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項5】
噴射間隔は、下端部を噴出路の下端縁よりも低い位置に配置したことを特徴とする請求項1のエアゾール内容物噴射装置。
【請求項6】
エアゾール内容物は、粉末系内容物であることを特徴とする請求項1のエアゾール内容物噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274949(P2010−274949A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128039(P2009−128039)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(398039945)ニベア花王株式会社 (9)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】