説明

エアゾール噴射装置

【課題】簡単な構成で噴射しやすく、より高い「冷却効果感」を得ることができるエアゾール噴射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】内部に封入された噴射剤を含む液体を、噴射流路7を介して噴射するエアゾール噴射装置である。噴射流路7の噴射口11に、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし、かつ液体を霧状に噴射する微粒子発生部12を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類、靴等の身体を覆う物品を冷却することで快適性を付与する製品がある(特許文献1)。特許文献1の靴ムレ改善スプレーは、靴の内側に、気化熱にて温度を低下させる液体を噴射する。これにより、この液体を靴の内側に噴射すると、靴内の温度を瞬時に低下させることができて、靴ムレを改善する。
【0003】
前記のような液体を噴射するための装置として、特許文献1及び特許文献2に示すようなエアゾール噴射装置がある。特許文献2に記載のエアゾール噴射装置は、ボタンの外周面の反噴射口側に、噴射流路に連通する共鳴室が設けられている。これにより、噴射口及びその近傍にて発生する噴射音が共鳴室にて増大されて、バックグランドの音量が40dBのときに噴射音を100dBとすることができる。このため、噴射音は人に聞こえ易い音量となって、噴射中であることをより認識し易くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−106724号公報
【特許文献2】特開2001−293402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被噴射物(例えば身体を覆う物品)の冷却効果を向上させるためには、特許文献1に記載された液体を被噴射物に噴射するよりも、メントールや乳酸メンチルなどの冷感素材が含まれた液体を被噴射物に噴射する方がより効果が高いと考えられるが、これらの冷感素材は一定濃度を超えると皮膚に灼熱感や刺激を与える為、使用できる濃度には上限がある。これにより、人が感じる冷却効果を最大限としたい場合は、冷感素材の濃度を、使用可能な上限の濃度に設定する必要があった。しかしながら、近年では、消費者からより高い冷却効果が望まれている。この場合、冷感素材の濃度をそれ以上高くすることができないため、冷感素材の濃度調節とは異なる要因を追加して、消費者が実際に感じる冷却効果を高めるか、若しくは心理的に冷却効果が高いように感じさせる、すなわち「冷却効果感」を高める必要がある。
【0006】
また、身体を覆う物品、特に靴の内部のように狭い閉鎖空間に対して液体を噴射する場合は、ボタンの小型化を図る必要がある。しかも、前記したように、冷却効果を高めるために冷感素材を含む液体を噴射する場合は、靴の内部において、できる限り広範囲に液体を噴射して、液体による効果が及ぶ範囲を広くする必要がある。しかしながら、前記特許文献2のようなエアゾール装置ではボタンが大型化するため、作業者が靴の内部に噴射しようとする場合、噴射しにくく、噴射エリアに偏りが生じる等して噴射エリアが狭くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、これら従来技術の問題を解決し、簡単な構成で噴射しやすく、より高い「冷却効果感」を得ることができるエアゾール噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するため、内部に封入された噴射剤を含む液体を、噴射流路を介して噴射するエアゾール噴射装置において、前記噴射流路の噴射口に、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし、かつ液体を霧状に噴射する微粒子発生部を備えたことを特徴とするエアゾール噴射装置を提供するものである。
【0009】
本発明に係るエアゾール噴射装置によれば、噴射口に微粒子発生部を備えており、この微粒子発生部は、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とする機能と、液体を霧状に噴射する機能とを併せ持つものである。すなわち、噴射口では、液体の一部を構成する液状の噴射剤が瞬時に気化することにより爆発が発生する。この爆発によって、液体が粒子化して霧となり、この霧の振動が噴射流路で共鳴して噴射音を発生する。微粒子発生部は、このときに生じる噴射音をバックグラウンドが35dBのときに90dB以上とする。その際に、微粒子発生部は、液体を霧状として噴射することができるため、噴射エリアを広範囲なものとできる。ここで、霧状とは、微小な液体粒子の総称であって、液体が蒸発凝縮した状態であり、噴射される液体が、白煙のような状態となって視認することができる状態をいう。このように、本発明では微粒子発生部により噴射音を90dB以上とできて、音の影響により心理的に高い冷却効果感を得ることができるとともに、噴射エリアを広範囲なものとできて、液体による効果が得られやすいものとなる。
【0010】
前記微粒子発生部は、前記噴射流路の内径を1.0mm〜2.0mmとすることにより構成するのが好ましく、さらに、前記噴射流路の内径を1.2mm〜1.8mmとするのがより好ましい。微粒子発生部をこのような構成とすると、噴射口において噴射剤の気化が効果的に行われて、液体を霧状に噴射することができるとともに、爆発により発生する噴射音が共鳴する空間を十分に確保できて、噴射音を効果的に90dB以上とできる。しかも、噴射流路の内径サイズを前記した範囲とするだけで微粒子発生部を構成できるため、簡単な構成とすることができて、噴射しやすいものとなる。
【0011】
前記噴射流路をストレートタイプとするのが好ましい。ここで、ストレートタイプとは、噴射口と噴射流路とが直線的に繋がっていることを意味する。
【0012】
前記構成において、靴の内部側に対して前記液体を噴射するものとできる。靴は比較的硬い素材が使用され、閉鎖空間が形成されている。これにより、靴の内部側に対して液体を噴射すると、噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴し、効果的に90dB以上の音を発生させることができる。しかも、霧状となった液体は靴の内部で吹き返されて、噴射エリアを拡大することができる。
【0013】
前記噴射剤は、液化石油ガス又はジメチルエーテルとするのが好ましい。液化石油ガス(LPG)又はジメチルエーテル(DME)は、空気に触れることで瞬時に気化するものであり、爆発を効果的に発生させることができる。これにより、噴射音を90dB以上とでき、かつ、液体を霧状とする効果が得られやすいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
上に述べたように、本発明によれば、簡単な構成で噴射しやすく、より高い冷却効果感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るエアゾール噴射装置の第1実施形態を示す部分断面図である。
【図2】図1に示すエアゾール噴射装置の噴射ボタンの変形例の断面図である。
【図3】本発明に係るエアゾール噴射装置の第2実施形態を示す噴射ボタンの断面図である。
【図4】本発明に係るエアゾール噴射装置の第3実施形態を示す噴射ボタンであり、(a)は断面図、(b)は微粒子発生部の正面図である。
【図5】実施例で使用した実施品のエアゾール噴射装置の噴射ボタンを示す断面図である。
【図6】噴射流路の内径の大きさと噴射音との関係を示すグラフ図及び表である。
【図7】噴射流路の内径の大きさと冷却効果感との関係を示すグラフ図である。
【図8】噴射口からキムタオルに噴射する方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態に係るエアゾール噴射装置を具体的に説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ番号を付して説明を一部省略する。
【0017】
このエアゾール噴射装置は、液体を被噴射物としての身体装着具に噴射するものである。以下の各実施形態において、液体は、被噴射物に噴射すべき液剤と、液状の噴射剤とから構成されるものである。液剤は、エタノール等の溶剤に、メントール、乳酸メンチル等の清涼剤を配合したものであり、この液体を身体装着具に噴射することにより、身体装着具は、冷却効果を所定の時間有するものとなる。噴射剤は、液化石油ガス(LPG)又はジメチルエーテル(DME)を用いるのが好ましく、本実施形態では液化石油ガスを使用している。本実施形態では液体中の噴射剤の割合を高くしている(例えば液剤:噴射剤=3:7)。
【0018】
第1実施形態のエアゾール噴射装置は、図1に示すように、液体を収容するエアゾール容器2と、噴射ボタン1とを備える。噴射ボタン1は、いわゆるストレートタイプの噴射流路を有するものであって、上面を構成し、噴射ボタン1の押圧箇所となる波形の押圧部3と、内径側に設けられてエアゾール容器2の上端から突出するバルブ機構(図示省略)のステム5に外嵌されるステム接続部4と、外周面を構成する外周壁14と、液体の噴射口11を有する噴射ノズル15とを備えている。噴射ノズル15は、外径側が反外周壁側に向かって縮径するテーパ部と円筒部とを有しており、円筒部が外周壁に開口する水平方向孔部10に内嵌されている。噴射ノズル15の内径側は、内径Dが一定であり直線状の噴射流路となる孔部が構成されている。噴射ノズル15の先端部は、外周壁14から外周側に突出している。
【0019】
噴射ボタン1には、ステム接続部4の内径側に形成される孔部13に連続し、ステム5の軸方向(鉛直方向)に延びる第1噴射流路6が設けられるとともに、噴射ノズル15内に設けられ、第1噴射流路6と略直交する方向(水平方向)に延びる第2噴射流路7とが設けられる。第2噴射流路7は、その内径Dが一定となっており、断面円形としている。
【0020】
これにより、押圧部3を押圧して、ステム接続部4を介してステム5をエアゾール容器2側に押し下げることによりバルブ機構が開放し、エアゾール容器2内の液体は噴射ボタン1内に導入される。ステム5から第1噴射流路6に導入した液体は第2噴射流路7に導入され、第2噴射流路7を流通して、その先端から噴射させることができる。このように、第2噴射流路7の先端部は、液体を噴射させる噴射口11となる。ここで噴射口11とは、第2噴射流路7において例えば図1の範囲Aで示す領域をいう。すなわち、本発明における噴射口11は、第2噴射流路7の先端縁だけではなく、この先端縁を含む先端領域をいう。
【0021】
第2噴射流路7の噴射口11には微粒子発生部12を備える。微粒子発生部12は、バックグラウンドが35dBのときに噴射音を90dB以上とする機能と、液体を霧状に噴射する機能とを併せ持つものである。すなわち、噴射口11では液体の一部を構成する液状の噴射剤が瞬時に気化することにより爆発が発生する。この爆発によって、液体が粒子化して霧となり、この霧の振動が噴射流路で共鳴して噴射音を発生する。微粒子発生部12は、このときに生じる噴射音をバックグラウンドが35dBのときに90dB以上とする。その際に、微粒子発生部12は、液体を霧状として噴射することができるため、噴射エリアを広範囲なものとできる。ここで、霧状とは、微小な液体粒子の総称であって、液体が蒸発凝縮した状態であり、噴射される液体が、白煙のような状態となって視認することができる状態をいう。本発明のエアゾール噴射装置において噴射する微小な液体粒子とは、粒径が例えば10μm〜50μmの大きさを有するものをいう。
【0022】
微粒子発生部12は、第2噴射流路7の内径D(噴射流路の断面が円形である場合は直径であり、楕円である場合は短軸)を1.0mm〜2.0mmとすることにより構成され、さらに1.2mm〜1.8mmとするのがより好ましい。本実施形態では、第2噴射流路7の内径Dを1.2mmとして微粒子発生部12を構成している。微粒子発生部12をこのような構成とすると、噴射口11において噴射剤の気化が効果的に行われて、液体を霧状に噴射することができるとともに、爆発により発生する噴射音が共鳴する空間を十分に確保できて、噴射音を効果的に90dB以上とできる。しかも、第2噴射流路7の内径サイズを前記した範囲とするだけで微粒子発生部12を構成できるため、簡単な構成とすることができて、噴射しやすいものとなる。
【0023】
内径Dが1.0mmより小さいと(通常、内径サイズは0.5mm〜0.7mmである。)、十分な共鳴空間が確保できずに噴射音は90dBよりも小さくなる。また、噴射流路7で液体が詰まって気化が妨げられ、微粒子の発生が促進されずに霧状に噴射しにくくなって、噴射エリアは狭いものとなる。内径Dが2.0mmを超えると、共鳴空間が広くなりすぎて共鳴が促進されず、噴射音は90dBよりも小さくなる。また、噴射口11で液状の噴射剤が空気に触れる際に、圧力低下が不十分となり気化が妨げられ、微粒子の発生が促進されずに霧状に噴射しにくくなって、噴射エリアは狭いものとなる。
【0024】
また、効果的に噴射音を90dB以上とするためには、液体の噴射量は、1秒間に1.5g〜3.0gとするのが好ましく、さらに、2.0g〜2.5gとするのがより好ましい。
【0025】
ところで、本実施形態における液体は、身体を覆う物品に噴射されることにより、冷却効果を所定の時間有するものとなる。本発明のエアゾール噴射装置では微粒子発生部12を備えることにより、噴射音を90dB以上とすることができ、音の影響により心理的に高い冷却効果感を得ることができる。しかも、噴射エリアを広範囲なものとできて、液体による冷却効果が得られやすいものとなる。このように、使用者は、液体の成分から感じる実際の冷却効果に、液体の噴射時の噴射音から感じる冷却効果感が加わって、高い冷却効果感を得ることができる。
【0026】
さらに、身体を覆う物品を靴として、靴の内部側に対して前記液体を噴射すると、一層高い冷却効果感を得ることができる。靴は、比較的硬い素材が使用され、閉鎖空間が形成されている。これにより、靴の内部側に対して液体を噴射すると、噴射口11から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴し、効果的に90dB以上の音を発生させることができる。しかも、霧状となった液体は靴の内部で吹き返されて、噴射エリアを拡大することができる。
【0027】
このように、本発明に係るエアゾール噴射装置によれば、簡単な構成で噴射しやすく、より高い冷却効果感を得ることができる。
【0028】
図2は、前記第1実施形態のエアゾール噴射装置の変形例を示す。図2のエアゾール噴射装置は、噴射口の形態が前記第1実施形態に係るエアゾール噴射装置と異なる。このエアゾール噴射装置は、図2に示すように、噴射ノズル15を省略したものであり、水平方向孔部10に取り付けられる装着体16を有するものである。装着体16は、鍔部18と、円筒部20とから構成されており、円筒部20が水平方向孔部10に内嵌されることにより、装着体16が装着されている。鍔部18及び円筒部20の内径面にて軸方向孔部26が形成され、この軸方向孔部26が第2噴射流路7となる。
【0029】
この変形例では噴射口11は、例えば図2の範囲Aで示す領域をいう。このように、変形例では、噴射口11が外周壁14よりも内径側に位置する。そして、この噴射口11に微粒子発生部12を備える。本変形例では、微粒子発生部12は、第2噴射流路7の先端部に設けられる。すなわち、軸方向孔部26の内径を例えば1.8mmとすることにより、微粒子発生部12が構成される。
【0030】
図3は、本発明の第2実施形態に係るエアゾール噴射装置を示す。このエアゾール噴射装置は、第2噴射流路17の形態及び微粒子発生部22が前記第1実施形態に係るエアゾール噴射装置と異なる。
【0031】
第2実施形態の第2噴射流路17は、噴射流路6と略直交する方向(水平方向)に延びて、その先端が開口状となっている。第2噴射流路17は、内径が一定(例えば、0.9mm)であり直線状の流路を構成する第1部20と、第1部20よりも小径(例えば、0.8mm)であり直線状の流路を構成する第2部24と、第2部24の先端部から拡径してベル状となる第3部25とを有する。
【0032】
第2実施形態のエアゾール噴射装置も、第2噴射流路17の噴射口21(例えば、図3の範囲A)に、微粒子発生部22を備えている。本実施形態では、微粒子発生部22は、第2噴射流路17の第2部24と第3部25とで構成されている。すなわち、第2噴射流路17に導入された液体は、第2部24にて圧力が高められ、第3部25にて噴射剤が空気に触れる量を多くすることができる。このため、第2部24と第3部25とで気化を促進することができ、その際に生じる爆発による噴射音を90dB以上とすることができる。しかも、第3部25にて共鳴を促進させることができるとともに、流体を四方に拡散させることができて、霧状に噴射させて、噴射エリアを大きくすることができる。
【0033】
図4は、本発明の第3実施形態に係るエアゾール噴射装置を示す。このエアゾール噴射装置は、第2噴射流路27の形態及び微粒子発生部32が前記第1実施形態に係るエアゾール噴射装置と異なる。
【0034】
第3実施形態の第2噴射流路27は、その内径が一定であり直線状の流路となっている。この第2噴射流路27流路の内径は、例えば、2.1mmである。
【0035】
第3実施形態のエアゾール噴射装置も、図4(a)に示すように、第2噴射流路27の噴射口31に微粒子発生部32を備えている。本実施形態では、微粒子発生部32は、第2噴射流路27の先端縁に張設されたフィルム部材にて構成されている。フィルム部材は、図4(b)に示すように、全体にわたって多数の孔部40が形成されている。これにより、噴射口31に導入された液体が噴射される際、液体は孔部40を通過して微小な粒子となって、霧状に噴射されて、噴射エリアを大きくすることができる。それとともに、噴射口31において、爆発によって発生する噴射音がフィルム部材にて共鳴され、噴射音を90dB以上とすることができる。
【実施例】
【0036】
本発明のエアゾール噴射装置を実際に製造して、噴射時に発生する噴射音の大きさを測定する実験を行った。噴射ボタンの実際の長さ寸法は、図5に示すようなサイズとした。エアゾール噴射装置として、サンプルA〜Iを製造し、サンプルA〜Gは、ストレートタイプの噴射流路を有しており、図6に示すように噴射口の内径を0.7mm、1.0mm、1.2mm、1.6mm、1.8mm、2.4mm、2.6mmとした。サンプルH、Iは、いわゆるメカニカルブレークアップタイプの噴射流路を有しており、噴射流路の内径が0.5mm、0.6mmとした。サンプルB、C、D、Eが実施例、サンプルA、F〜Iが比較例である。なお、噴射ボタン以外の構成については全てのサンプルにおいて共通とした。具体的には、噴射装置にて噴射される液体は、被噴射物に噴射すべき液剤(表1)と、液状の噴射剤(液化石油ガス(LPG))の比率を3:7とし、100mlのブリキ缶に充填した。噴射ボタンを押し下げたときに開孔するステム孔(図示せず)は、孔径0.6mm×1とし、液体の1秒間の噴射量は、2.0〜2.5gであった。サンプルA〜F、H、Iについては、靴の内側に向けて噴射した場合の噴射音と、噴射対象物がない状態で噴射した場合の噴射音とを測定した。サンプルGについては、靴の内側に向けて噴射した場合の噴射音のみを測定した。
【表1】

【0037】
次に実験方法について説明する。靴の履き口に騒音計(株式会社三商製:Model STM-102)のマイクをセットし、噴射口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして各噴射装置を配置した。この状態で、靴の内側に2秒間液体を噴射して、噴射音の最大値を測定した。噴射対象物がない場合も、噴射口とマイクとの距離が約10cmとなるようにして2秒間液体を噴射して、噴射音の最大値を測定した。なお、バックグラウンドの音量が35dB以下の条件で測定した。各サンプル6回測定し、それらを平均した結果を図6に示す。図6のグラフにおいてハッチングなしは、靴の内側に向けて噴射した場合を示し、ハッチングありは噴射対象物がない状態で噴射した場合を示す。
【0038】
図6に示すように、ストレートタイプの噴射流路を有するものでは、靴の内側に向けて噴射した場合も、噴射対象物がない場合も、サンプルD(内径1.6mm)をピークとして、内径が1.6mmよりも小さくなるほど噴射音が小さくなり、内径が1.6mmよりも大きくなるほど噴射音が小さくなる山形の傾向を示している。これにより、内径が1.0mm〜2.0mmである場合に最も大きな噴射音となるものと考えられる。
【0039】
サンプルH、Iにおいてメカニカルブレークアップタイプの噴射流路を有するものでも、ストレートタイプと同様の傾向が見られるものと考えられる。すなわち、サンプルH(内径0.5mm)よりもサンプルI(内径0.6mm)の方で噴射音が大きくなっている。これにより、メカニカルブレークアップタイプでもストレートタイプと同様の傾向がみられると考えられ、内径を1.0mm〜2.0mmとしたときに噴射音の大きさが最も大きくなるものと考えられる。
【0040】
次に、靴の内側に向けて噴射した場合と、噴射対象物がない状態で噴射した場合とを比較すると、全てのサンプルにおいて、噴射対象物がない状態で噴射した噴射音よりも靴の内側に向けて噴射した噴射音が大きいことがわかる。特に、サンプルB、C、D、Eで90dB以上の噴射音となっている。これは、噴射口から発生する音が靴の内部側に形成された閉鎖空間を反射して共鳴するからであると考えられる。特に、サンプルB(内径1.0mm)では噴射対象物がない状態での噴射音は74.7dBであり、靴の内側に噴射した噴射音は95.5dBに達している。サンプルC(内径1.2mm)では噴射対象物がない状態での噴射音は72.5dBであり、靴の内側に噴射した噴射音は95.9dBに達している。つまり、本発明のように構成されたエアゾール噴射装置において、効果的に90dB以上の噴射音を得るためには、靴の内側に噴射することが特に効果的であることがわかった。
【0041】
次に、サンプルA〜Gのエアゾール噴射装置、ロールを被塗布部位に回転させて液体を直接被塗布部位に塗布する装置(以下、ロールという)、ポンプ機構によりミスト状に液体を噴霧する装置(以下、ポンプミストという)を用いて、7人の被験者が、被噴射物(靴・衣類)に液体を噴射する行為によって冷却効果の感じ方に違いがあるか官能評価を行った。夫々の被験者は、各サンプルA〜G、ロール、及びポンプミストを用いて流体を実際に被噴射物に噴射又は塗布した後被噴射物を装着して、その際に感じられる冷却効果感を評価し、100点までの点数をつけた。点が高いほど冷却効果感が高いものとする。
【0042】
図7に示すように、ロールとポンプミストは冷却効果感が低かった。一方、サンプルB、C、D、Eで80点以上の点数が得られている。サンプルD(内径1.6mm)をピークとして、内径が1.6mmよりも小さくなるほど冷却効果感が小さくなり、内径が1.6mmよりも大きくなるほど冷却効果感が小さくなる山形の傾向を示している。この傾向は、図6の噴射音の大きさ及び内径の関係と一致している。これにより、噴射音が大きいほど高い冷却効果感を得ることができることがわかった。すなわち、噴射音が大きいサンプルB、C、D、Eが、最も大きな冷却効果感を得ることができ、しかも靴の内側に噴射するとさらに大きな噴射音が得られることから、サンプルB、C、D、Eを靴の内側に噴射した場合に最も高い冷却効果感を得られる。
【0043】
次に、本発明のエアゾール噴射装置にて噴射した液体の分散状態を確認する実験を行った。本実験は、サンプルA〜Gに加えて、噴射口の内径0.3mmを有するサンプルJ、噴射口の内径4.0mmを有するサンプルKについても行った。実験方法は、図8に示すように、噴射口から約30cm離れた位置にキムタオルを配置し、キムタオルに0.5秒間液体を噴射して、キムタオルにおける噴射エリア(液体の広がり度合い)、液体の集中度合い(粒子の大きさ)を観察した。その結果を表2に示す。
【表2】

【0044】
サンプルA〜Eにて噴射した液体は、きれいな粒子になり、キムタオルが濡れる面積は適度に広く、全体的に均一に近いものであった。サンプルF、Gは、きれいな粒子になるが、粒がやや大きく、キムタオルが濡れる面積は、適度に広いものの、中央部にやや集中している。サンプルJは、きれいな粒子にならず、濡れる面積も狭く、中央に液体が集中した。サンプルKは、きれいな粒子にならず、ミストの粒径が大きいため、噴射の痕は縦に長い楕円状になり、かつ一部に液が集中した。これにより、内径サイズが小さすぎたり(本実施例では0.3mm)、大きすぎたり(本実施例では4.0mm)すると、きれいな粒子にならず、しかも噴射エリアは狭くなってしまう。これにより、きれいな粒子となり、噴射エリアが広範囲に及ぶ噴射口の内径範囲は、0.7mm〜2.4mmであることがわかった。
【0045】
以上の各実験から、バックグラウンドが35dBのときに噴射音を90dB以上とし、かつ液体を霧状に噴射するためには、噴射口の内径範囲を1.0mm〜2.0mmとすればよいことがわかった。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。噴射流路は、ストレートタイプではなく、いわゆるメカニカルブレークアップタイプでもよい。第2実施形態や第3実施形態のエアゾール噴射装置でも、第1実施形態の変形例のように噴射ノズルを有さないタイプの噴射ボタンとすることができる。液体の成分は問わず、清涼剤が含まれていないものであってもよい。第2噴射流路の断面形状は円形に限らず、楕円、多角形等種々の形状とすることができ、長さ寸法は種々のものとできる。
【符号の説明】
【0047】
6、7、17、27 噴射流路
11、21、31 噴射口
12、22、32 微粒子発生部
D 内径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に封入された噴射剤を含む液体を、噴射流路を介して噴射するエアゾール噴射装置において、
前記噴射流路の噴射口に、バックグラウンドが35dBのときの噴射音を90dB以上とし、かつ液体を霧状に噴射する微粒子発生部を備えたことを特徴とするエアゾール噴射装置。
【請求項2】
前記微粒子発生部は、前記噴射流路の内径を1.0mm〜2.0mmとして構成したことを特徴とする請求項1のエアゾール噴射装置。
【請求項3】
前記微粒子発生部は、前記噴射流路の内径を1.2mm〜1.8mmとして構成したことを特徴とする請求項1のエアゾール噴射装置。
【請求項4】
前記噴射流路をストレートタイプとしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項のエアゾール噴射装置。
【請求項5】
靴の内部側に対して前記液体を噴射するものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項のエアゾール噴射装置。
【請求項6】
前記噴射剤は、液化石油ガス又はジメチルエーテルであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項のエアゾール噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115792(P2012−115792A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269713(P2010−269713)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】